零総合 捌 at EROPARO
零総合 捌 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
06/08/06 23:51:03 1dR9uF2/
2ゲト

3:名無しさん@ピンキー
06/08/07 02:05:02 fYEwAtTw
>>1

4:名無しさん@ピンキー
06/08/07 14:37:42 jFijSl9W
>>1
乙shot

5:名無しさん@ピンキー
06/08/07 21:18:00 ImK9lufb
乙。

6:名無しさん@ピンキー
06/08/08 00:30:08 M1NQvUlK
ないす

7:名無しさん@ピンキー
06/08/10 23:41:18 79CnUuwd


8:名無しさん@ピンキー
06/08/12 23:37:11 nv5Jo3tQ
スレ立て乙です
これからも盛り立てていきましょう

9:名無しさん@ピンキー
06/08/16 01:59:39 WFQ5n98m


10:名無しさん@ピンキー
06/08/16 05:25:18 QBjC99JW
書きたいのにネタがないときた
リクエストとか受けつけてみてもいいだろうか
エロは相変わらず無理ぽい



11:名無しさん@ピンキー
06/08/16 13:48:42 CQkgmyOJ
澪繭極上甘々とか澪セメってのがソソル

12:名無しさん@ピンキー
06/08/16 22:02:54 mo0DOVy5
確かに澪攻めみたい、最近なかったよね?

13:名無しさん@ピンキー
06/08/17 00:53:49 L7m1gVUy
おまいらよくぞ言った。俺も澪繭みてー。
だってパンツ撮影してんだよ?普通それより先に進むって!!

14:名無しさん@ピンキー
06/08/18 00:54:32 jJzbv0rl
澪繭みたいな。まぁ気長に待つしかないのかね…

15:名無しさん@ピンキー
06/08/20 13:00:42 Q0saKOhj
このスレってエロパロなの?w
前スレにエロいSSってあったか?

16:クスリ(4)
06/08/20 23:04:04 DYsm3R2W
すいません。
全スレあふれたので、そこからの続きです。
=======================================================

がこん!(じゃりっ)
(いっ……。)
いやというほど勢いよく、壁に側頭部を打ちつけた。
髪の毛と壁紙がこすれる音も聞こえた。
一瞬、意識が飛ぶ。
リバウンドした頭は、ベッドの上に落ちた。
ずりりっ。
散らばった意識の中で、体を引き寄せられる感覚。
気がつくと、ベッドの上に、仰向けに澪に組み敷かれていた。
「いった、頭いた……。」
打ち付けたところをさすろうと手を伸ばしかけたが、右腕はのしかかる
澪の体の下に入ってしまっていて、動かせない。
起き上がろうとしたが、それも難しい。
「澪、ちょっと、まって……。」
もがいたが、しっかりと組み敷かれていて動けない。
左手、左足は澪の体の下から外れていたが、
それでも、体勢を入れ替えるのは難しそうだ。
はーっ。はーっ。はーっ。
首筋に押し当てられた澪の口から、いやに熱い吐息が繰り返し噴出す。
それが繭の肌を刺激する。
ぞくぞくするような痺れが、繭の体を斜めに走った。
同時に気がつく。
澪の体の下に入ってしまった、右足の太もも。
そこにちょうど、澪の腰が、またがるように乗っている。
その腰の滑らかな動きに。


17:クスリ(5)
06/08/20 23:04:35 DYsm3R2W
(え……? え……?)
ありえないと思った。でも事実。
澪がゆっくりとその場所を、繭の体に押し付け、体を上下させている……。
はーっ。はーっ。
続いている、荒い呼吸。
先月の初め。七夕の夜に、自室に飾られた短冊に、こっそりと書いた願いことを思い出した。
『澪が私を必要としてくれますように』
願いがかなったのだろうか?
薬は使った。確かに。家の屋根裏から出てきた。
小さな木製の丸い筒に入った、漢方薬のようなもの。
掠れて見えない薬の名前。なんとか丸。
一粒飲んでみると、夏の暑さに疲れた体に、みるみる力が戻ってきた。
思ったのだ。これってもしかして、精力剤みたいなもの?
じゃあ、澪に飲ませたら、どうなるのかな? たとえば、今の10倍くらい。
その結果がこれだった。
邪道だと自分でも思う。でも、今はやってよかったと思う。
澪が私をほしがっている。それがわかって、うれしかった。
「澪……? どうしたの? 重いよ、どいて……?」
心にもないことを言ってみる。果たして、澪の返事は。
「ごめん、お姉ちゃん……。」
相変わらず熱い吐息。
「無理。」
その言葉と同時に、唇を吸われた。呼吸が合わずに息が詰まる。
でもうれしい。自分の体に回された腕に力が込められるのを感じた。
うれしい。幸せだ。
澪の唇が首筋をとおり、体に降りていくのを感じながら、
繭は体の力を抜いた。


18:クスリ(6)
06/08/20 23:06:07 DYsm3R2W
それから、一週間。
部屋の中はエアコンが効いて涼しかったが、
絡み合う少女の体は汗ばんで、互いの肌をすり合わせるたびに、
湿った音を立てた。
白い蛍光灯の光に照らされる、細いからだ、二人分。
「ごめんなさい……。ごめんなさい……。」
泣きながら誤り続ける澪。でも行為はやめられず、体を動かし続ける。
「大丈夫、澪。気持ちいいよ。」
ベッドに体を横たえ、自分の体を求め続ける妹の髪をなでながら、
繭は明日は薬を増やしてみようとぼんやり思った。
薬はまだ、たくさんあった。

おわり

===============================
というわけで、前スレ終了しました。


19:名無しさん@ピンキー
06/08/21 01:13:16 qgrwMExC
「ごめん、お姉ちゃん。無理」
の台詞にハァハァしますた

ゴチ!

20:名無しさん@ピンキー
06/08/21 03:29:47 d+ucR0l6
澪エロすぎるwwwwwGJ!

21:名無しさん@ピンキー
06/08/21 09:35:38 XwAPEkWS
澪の「あ、だめ、ほんとあっつい。やーもー」がリアル!
繭の「気持ちいいよ」が可愛すぎ!

GJすぎ!

22:名無しさん@ピンキー
06/08/21 11:07:07 r/IGa1+Z
>>18
乙!前スレ埋めも乙!
ところで・・どうも飲んでるのが万葉丸みたいだしコレ、実は繭が薬のせいと思って
るだけで実は澪マジだったりしてw

俺は個人SSサイト群で澪繭に目覚めた口だけど本当いいもんだよなハァハァ(;´Д`)
>>10 ギャグも待ってるから!

23:名無しさん@ピンキー
06/08/22 00:22:28 l7G9IS9M
gj

24:名無しさん@ピンキー
06/08/23 01:29:00 zevKHqRF
>>18
GJ!
ホント 皆神村は神だらけだぜ!フゥハハハーハァー

25:名無しさん@ピンキー
06/08/23 10:55:15 k6ULjQS1
皆、神

26:名無しさん@ピンキー
06/08/23 22:26:44 9M5KFao9
久し振りに紅い蝶のプロローグを見たのだが

「お姉ちゃん、イッちゃ駄目ぇ」


の声に無駄な妄想力が掻き立てられた


27:名無しさん@ピンキー
06/08/24 10:34:20 Vs+2rCBc
>>521
>HNが取り扱いジャンルの好きなキャラ名っぽい。
ここが既にイタイ管理人の代名詞だからなあ。でも>>523も言ってるけどあんまり
馴れ合い杉ると同類扱いされる事あるって。色々付き合いとかもあるから難しい
だろうけど上手くカンガレ。

28:名無しさん@ピンキー
06/08/24 10:43:32 Vs+2rCBc
うわココか!誤爆スマ疎

29:名無しさん@ピンキー
06/08/24 12:56:04 bG+zuu2F
>>26

澪ごめん・・・先にイッ・・・

30:名無しさん@ピンキー
06/08/24 15:08:07 OkEgciFU
>>29
いくらイッても、澪の事許すから…

31:名無しさん@ピンキー
06/08/24 16:07:33 866tEwv/
イクのも一緒だよね約束だよね

32:名無しさん@ピンキー
06/08/24 21:19:54 B+XuaiPo
一緒にイこう・・・もっと深くもっと、もっと・・

33:名無しさん@ピンキー
06/08/24 21:48:08 WrrprWT6
ギャグの人動きないな

34:名無しさん@ピンキー
06/08/26 02:57:41 8o6CtW56
じゃあ俺が…ww
暖めてる話はあるのだが、技量が付いてこない

35:名無しさん@ピンキー
06/08/28 19:06:53 w9gCQnXF
>>34大丈夫!自分を信じるんだ!

36:名無しさん@ピンキー
06/08/29 21:53:00 YCIs3Igx
そうだ!自信を持て!

37:名無しさん@ピンキー
06/09/04 01:25:17 kXs0E3hb
さて、そろそろ保守が必要か。

38:名無しさん@ピンキー
06/09/04 20:19:10 X4NpX1kI
 いつか読んだ人がひっくり返るくらいすんごいエロを書いて
神様と崇められたいと半年前から思っている今日この頃。
 何か投稿しようと考えてはいるのだが・・・なかなか
上手く書けないものだねえ・・・。

39:名無しさん@ピンキー
06/09/05 15:30:21 D/W7V8+2
>>38
ずっと・・・待ってるから・・・

40:名無しさん@ピンキー
06/09/09 21:01:47 Qf/C26qe
保守

41:名無しさん@ピンキー
06/09/14 00:38:34 TJr70ToB
澪・・・どこなの・・・

42:名無しさん@ピンキー
06/09/14 09:02:10 11ix0OHx
ここに…いるよお姉ちゃん

43:名無しさん@ピンキー
06/09/14 22:13:09 WP6sih9e
儀式を…続けろ

44:名無しさん@ピンキー
06/09/15 04:56:17 2GOwtf22
絡み合う儀式を…

45:名無しさん@ピンキー
06/09/15 21:22:13 MeZOuYSP
さもないと…

46:名無しさん@ピンキー
06/09/15 22:36:08 /UDitnAa
螢の命はないものと知れ

47:名無しさん@ピンキー
06/09/16 00:53:15 BP5MDuCp
怜・深紅・澪・繭「そこはまぁどうでもいいです」

48:名無しさん@ピンキー
06/09/16 02:18:28 8/bBiyC3
怜・深紅・澪・繭「だってヘタレだし…」
怜「じゃあ、みんなで『絡み合う儀式』をしよっか」
深紅「パーティですか?」
澪「え…えぇっ? 怜さん何を言っ……んっ」
繭に唇を塞がれる澪
繭「パーティじゃなくていいんじゃない?
上手くカップリングができてるし★」
怜「カップリングって…w 深紅は相違ない?」
深紅「あ…えと…、ありません(赤面)」


49:名無しさん@ピンキー
06/09/16 20:24:40 UXSDQs8p
螢「お、俺も・・・」

50:名無しさん@ピンキー
06/09/16 20:37:10 OkBmgBNt
優雨「やらないか」

51:名無しさん@ピンキー
06/09/16 22:01:26 P25MAkSq
真壁「うほっ」

52:名無しさん@ピンキー
06/09/17 01:35:48 iMrOiztm
優雨「こいつをどう思う?」

53:名無しさん@ピンキー
06/09/17 05:10:50 M4gWAvxD
螢「すごく・・・イカ臭いです・・・」

54:名無しさん@ピンキー
06/09/19 07:01:09 f6wJZJG8
なんだこいつらwwww

55:名無しさん@ピンキー
06/09/19 10:25:33 jo8vaWWt
パシャ・・・ボワァーン

掘り続ける男たち
-1000000000point

56:名無しさん@ピンキー
06/09/20 01:16:34 Un4xJwXG
パシャ…ボワァ~ン


絡み合う女たち
100000000point

57:名無しさん@ピンキー
06/09/21 22:41:51 Kyf4P3ov
怜「優雨・・・やだ恥ずかしい・・・。ああん、そんなところを
  触らないで。・・・・・・あ、どうして螢さんがここにいるの?!
  深紅のお兄さんまで・・・!!」

 4Pも5Pもいらっしゃい。

58:名無しさん@ピンキー
06/09/21 23:15:38 X3ho9fLK
真冬兄さんはあっちで霧絵さんとソフトSN中なので参加できません
あしからず

59:名無しさん@ピンキー
06/09/21 23:18:17 X3ho9fLK
微妙に間違った、SNってなんだよSMだよ信号雑音比ってなんだよ
縄で吊ってくる

60:名無しさん@ピンキー
06/09/21 23:23:20 e4pf+W8v
>>59
真壁「マタワタシヲオイテ"イク"ノ」

61:名無しさん@ピンキー
06/09/22 04:12:52 yXbMLjwa
ケイ「イカシテ」
優雨「イカシテイイノ?」

62:名無しさん@ピンキー
06/09/24 19:38:04 7Hy6vTwv
澪「叔父さんキモい…」
繭「失せろ・・・」

63:名無しさん@ピンキー
06/09/24 20:10:15 NCBwBppf
騙しリンクや広告の少ない優良アダルトサイトリンク集
URLリンク(geocities.yahoo.co.jp)


64:名無しさん@ピンキー
06/09/25 04:44:38 XzxNLtxL
鏡華「秋人さまにはわたくしがいるじゃありませんか」


65:名無しさん@ピンキー
06/09/28 05:15:10 hYADXQBf
ケイ「俺はゥホられたいんだ」

66:名無しさん@ピンキー
06/09/28 16:31:01 GxdYXSn1
樹月「確かにウホッぽい体格をしていらっしゃる」


67:名無しさん@ピンキー
06/09/30 01:18:42 lfmXXkTW
禊になりそこねた男「俺の方がウホっぽいぞ」

68:名無しさん@ピンキー
06/10/01 02:49:45 4jAGNMYj
「どうしよ…おねえちゃんとこんなことになっちうなんて…」
「ん?澪はイヤ?」
「そうじゃないけど…」
「けど…?」
「これからどうしよ…でも、みんなの前に出れないよ…今までおはようのキスとか、ありがとのキスとかしてたけど、もうできない…」
「何で?」
「こ、こいびとのキス、になっちゃう…し…」
「私と恋人じゃ澪はイヤ?」
「そんなことない…けど、みんなにばれちゃったらどうしよ…」
「私は全然かまわないけど」
「ダメ!ダメだよ!」
「どうして?」
「どうしてって…おかしいから…」
「どこが?」
「おねえちゃんと恋人なんて、やっぱり変だし」
「私は澪が大好きだよ。澪も私のことが好きでしょ?だったらどこも変じゃないよ」
「そ…かな…でも、お母さんが知ったら…」

69:名無しさん@ピンキー
06/10/01 02:50:27 4jAGNMYj
「うーん。そうだね。お母さんは厄介かな」
「でしょー?」
「なら、いつもと変わらないようにすれば大丈夫」
「うう、できるかな…おねえちゃんのことすごく意識しちゃいそ…」
「私はいつもと同じにできるよ。だから、澪もきっとできる」
「そーかなー」
「そーだよー」
「でも……」
「でも?」
「でも…」
「でも、何?」
「でも、でも…」
「だから、何なの?」
「でも…いきそ…」
「あ、そう」
「い、いくよぅ…」
「そーなんだ」
「いくっ!いくっ!」
   (びくっ、びくっ、びくっ、びくっ…)
「(ププ。かわいー)」
「あっ、あっ、あっ…………」
   (がくん、がくん、がくん…)

70:名無しさん@ピンキー
06/10/01 02:51:31 4jAGNMYj
「……………」
「……………」
「…で?」
「………ふぇ?」
「…で、何?」
「……あれ、なんの話だっけ…」
「いつも通りしてればばれない、ってとこまで。それで、澪がでも、って言ったの」
「そっか…でも…なんだっけ…あ、でも私、顔に出やすいから、すぐバレるかも」
「私はもう絶対に絶対に澪を失いたくない。だから、完璧にできる。澪は別れたい?」
「そんなことは…」
「だったら、完璧にできる。みんなの前ではいつもどおり、二人でいるときは恋人。それでいいでしょ?」
「うーん、自信ないなあ」
「大丈夫、大丈夫だから」
「でも…」
「ん?」
「でも…」
「でも、何?」
「でも…いきそ…」


71:名無しさん@ピンキー
06/10/01 09:53:03 ycmZO3L7
GJ!!
澪カワユスハァハァ

72:名無しさん@ピンキー
06/10/01 15:39:30 XM3GPTNl
・・・やっぱり・・・やっぱり、きてくれた・・・
GJ!

73:名無しさん@ピンキー
06/10/02 03:40:25 1CVdQAra
GJ。いきそ…。
ここも寂れちまったなあ。
誰か良作があるサイト教えてくれないか。探してもホモばかりでつまらん。


74:名無しさん@ピンキー
06/10/02 06:52:49 ALF4Gyxt
>>70
ああ、この二人はいいねぇ~
GJ!

>>73
やっぱ新作が出ないと駄目かな・・・・・
青発売の頃が一番盛り上がってたよね・・・

と、久しぶりに見たので記念カキコっすw

75:名無しさん@ピンキー
06/10/04 00:08:23 NPrG0O/J
>73

 俺様のところへ来い!一日10人しかこないので、
団子とお茶を用意して待ってやる。

 今は全く動いていないサイトにある「真冬・螢×深紅」の話が
すごかったなぁ・・・・・・(興奮)。

76:名無しさん@ピンキー
06/10/04 15:02:58 Q7jY8u5X
>>73
零サーチは行ったか? 良質な姉妹ものとか結構あるぞ。
俺はとてもお世話になっています。

77:名無しさん@ピンキー
06/10/04 20:22:59 U+B7Br3K
>>75
見てみたいな。URL晒す勇気ある?

>>76
行った。ざっと見たけどどれもぱっとしないというか(なら自分で書けという話だが)
なんかもう「殺して……」みたいなポエムっぽいのは飽き飽きしてる

78:名無しさん@ピンキー
06/10/04 20:58:44 PkUvOcUN
いやいや、ポエム系(あと夢)なんて厨房サイトにしかないぞWw
人気ランキング見るだけとか探し方悪いんでね?

79:名無しさん@ピンキー
06/10/04 22:13:09 NPrG0O/J
>77
 すまん。URLを晒す勇気はない・・・。見せてみて、自分の作品が
面白いかどうか本音を聞いてみたい気はするのだが。
(ヒント・当然人気ランキングには入っていない)
 ポエムや夢やホモやオチがない話は書いてないぞvv
 
 零サーチで一つ一つしらみつぶしに探すと、中々いいサイトが
「更新お知らせ」をせずに細々やってるとこがあるよね。
 日記すら放置しているところが多いが・・・。休止も・・・。

80:名無しさん@ピンキー
06/10/04 23:51:03 7FW6DDN1
しょっちゅう更新するようなサイトはカテゴリ上位にきてランキングに入って
くる仕様だからなYOMI系サーチは。逆にSS一本で更新とか更新早い良サイト
なんかはそういう事やらない。
だからこそ人気ランキングは当てにしすぎちゃいかんのだ。

>>79
放置や休止してるサイトはもう情熱とかあんまないんだろうから
触れないでやれ。

81:名無しさん@ピンキー
06/10/05 00:08:23 EQRcY0QW
>>79
なんかその書き方だとポエム・夢・ホモ・オチ無し→全部有り、って意味にも読めるぞw

82:79名無しさん@ピンキー
06/10/05 23:03:18 tLb+QocL
>>81
 うわっ本当だ!文章表現がまだまだ未熟やなー。出直してくるよ・・・。
 

83:名無しさん@ピンキー
06/10/06 20:10:23 4EsOqCCR
しらみつぶしに探してみたが大変だ。一本読んだくらいじゃわからない
かといってオススメサイトを教えてもらうわけにもいかないし、根気よく探すしかないか

84:名無しさん@ピンキー
06/10/07 03:50:14 Ts6Mkhmm

(ここは・・・・・・・・?)

ゆっくりと瞼を開かれた目に刺激が強すぎる程の光が飛び込んでくる。

久しぶりに目に映る現実世界の光景。

澪は少しの間部屋の天井を見つめていた・・・・・・

そして、視界がまだぼやける瞳を擦りながら澪は自分が横になっていることを認識する。

(病院・・・・・・?)

部屋全体を覆う白一色の景色と、隣に置かれた人の居ないベッドが澪にそう思わせた。

(何で病院に居るんだろう・・・・・?)

澪は白い天井をまだ慣れぬ目でぼんやり見つめながら経緯を思い起こそうとする。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(・・・・・・分からない・・・・・・・・・・)

記憶の糸口を見つけようと必死になるものの、
考えれば考えるほど掴めそうな何かは遠ざかっていく・・・・・

最後に見た物は何だったのか・・・・・?
とてもおぞましい光だった気がする・・・・・

頭が重く、鈍い痛みのような物が澪を苦しめる。

(今、何時だろう?・・・・・)

外に映る景色は闇に覆われてはいなかったので、早朝か夕暮れであろう。

自分の頭の横に置かれた棚の上の時計は7時40分を表示している。

午前か午後か分からないデジタル時計。

おそらく朝であろう・・・・・
注意深く耳を澄ませば窓ガラスごしにも聞こえる鳥の囀りがそう思わせる。

(どうしてここに・・・・・・・)

先程浮かび上がった疑問が再び澪の思考を巡り出す。

・・・・・・・・・・・・・・・

やはり何も分からない・・・・・・
頭の中には記憶が浮かぶことはなく、代わりに鈍い痛みのような物に支配されるだけ・・・・・

(駄目だ・・・・・・・・)

澪は諦めると自分にかけられているシーツを被り直し、
また目を閉じようとする。

自分がどこに居るかも分からない。
なぜ病院に寝かされているのかも分からない。
何も分からない。
今分かる事は自分の名前だけ・・・・・・

85:名無しさん@ピンキー
06/10/07 03:53:40 Ts6Mkhmm

ふいに静寂を破るドアの開く音。
部屋に入ってきた人影が澪のすぐ側まで来る。

「澪!・・・・・・気が付いたの?」

自分の名前を呼ぶその声に澪はゆっくりと窓を見ていた視界をそちらに移す。

目に涙を溜めて今にも泣きそうな顔で自分の名を呼ぶ女性・・・・・・

なぜ自分が起きたことが分かったのか不思議にも思った。

だが、自分の腕に医療機器から伸びたチューブが何本か繋がっていることに気づくと、
澪はそれ以上考えることをやめた。

「良かった・・・・・・・・このまま目が覚めないのかと思って心配したよ。
お医者さんも原因が分からないって言ってたから・・・・・・
でも、悪い箇所は無いから意識が戻ればすぐ退院できるんだって。」

女性は嬉しそうな声で澪の手を取り喜んでいる。

目を合わせた澪が気まずそうに何かを言おうと口を動かす。

「ん?・・・・澪、どうしたの?どこか痛い?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰なんでしょうか?・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人とも少しの間、時が止まったようにピクリとも動かなかった。
特に相手の女性はその第一声に相当な衝撃を受けているようであった。

「・・・・・・・え?・・・・・・・・澪、どうしたの?・・・・・私よ!」

先程までとはうって変わって喜びの表情は消え、代わりにその顔色は戸惑いを含んだ険しい物に変わる。

澪は耐えられなくなったのか、目を逸らしてしまう。

「あの・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・・・思い出せないんです・・・・・・・
何でここに居るのか・・・・・・・・・・あなたが誰なのか・・・・・・・・・・・・・・・
自分の名前は分かるのに・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・・・・」

澪は辛そうに目を閉じ、握られた手から逃れようと手を離す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・そんな・・・・・・・・・澪!・・・・・・・私よ!
繭だよ!・・・・・・・あなたの双子の姉!」

繭は澪に向かって鋭い声をあげ、必至に訴える。

しかし、それを聞いても澪は更に硬く目を閉じるだけであった。

「ごめんなさい・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・
何があったのかも分からない・・・・・・・・・・・・・・・
どこに居るのかも・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたのことも・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。」

86:名無しさん@ピンキー
06/10/07 03:56:32 Ts6Mkhmm

澪はただひたすらに懺悔を繰り返すだけであった。

「・・・・・澪・・・・・・・・ほんとに思い出せないの?・・・・・・・・・
記憶が無いの?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私のことも・・・・・・・・・・・覚えてないの?・・・・・・・・」

繭は哀願するような眼差しを澪に向ける。

「・・・・ごめんなさい・・・・・・・」

澪はその目を見ることが出来ず謝るだけであった。

「謝らなくていいから・・・・・・・仕方ないよね・・・・・・・・・
でも、澪、きっと思い出せると思うから、大丈夫だからね・・・・・・・
私、ちょっと先生の所へ行って来るね。」

繭はそう言うと先程入ってきた扉から出て行こうとする。

「あっ・・・澪。
悪いところはないから目が覚めればすぐに退院出来るって先生が言ってるから、
今日落ち着いたら私と一緒に家に帰ろうね。
家に戻ればきっとすぐに思い出すと思うし。」

そこまで言うと繭は部屋を出て行く。

再び病室が静寂に包まれ、一人になる澪・・・・・・

(姉・・・・・・・・・)

繭の言っている事が嘘ではないのは分かる。
それを疑うには自分とあまりにも顔が似すぎていた。

(思い出せない・・・・・)

しかし、それをどう受け止めて良いのかが記憶の失われた澪にはなす術が無かった。
仕方の無い事であるが・・・・・・・

いったい何があってこうなってしまったんだろう。
何か酷く気分の悪くなる事があった気がする・・・・・
もしかしたら思い出さない方が良いのかもしれない。

だが、思い出せないのはもっと怖いと澪は思った。

(また来た時、あの人に聞いてみよう・・・・・・・何か知ってそうな感じだったし・・・・・・)

(姉さん・・・・・・か・・・・・・・・)

何も分からない危機に陥っている時に自分を知っている人が居てくれる。
自分を気遣い心配してくれる人が居る。

今の澪にとってこれがどれほど心強かった事か・・・・・
思い出と言う絆に頼れない今は、自分と同じ顔をしている外見での繋がりも嬉しく思えた。


87:名無しさん@ピンキー
06/10/07 03:59:20 Ts6Mkhmm

(繭・・・・・・・・・綺麗な人だったな・・・・・・・)

自分と同じ顔をしているといのうに変な話であるが澪は素直にそう思えた。

(姉さん・・・・・・・・あの人とどんな生活を私はしていたのかな・・・・・・)

体の具合はどこも悪くないと聞いて安心したせいなのか、
今現在、記憶が無い澪にとって唯一の拠り所たる所以か・・・・・
澪は繭との絆にふつふつと興味が湧いてきた。


しばらくすると、繭は一人の医者を連れて戻ってきた。

医師は形式的に簡単な検査、問診を済ます。
何も異常が無い事を確認すると、澪の腕を拘束しているチューブやらをすべて取り外した。

「記憶があやふやな事以外は特に異常が無い様だし、後は我々が面倒を見るより、
家族や友人と一緒に居た方が改善する見込みがあるだろう。」

医師は退院許可を出すと、眠そうに欠伸を一つして病室から出て行った。

繭は頭を下げてお礼を言い、部屋を出て行くのを見届ける。

「澪、大丈夫?今すぐ帰る?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

澪は少し考える。

「はい・・・・・・一時間くらいで用意出来ると思うので、待ってて貰っていいですか?」

着替えて、出かける用意をして自分の物と思われる荷物をまとめるのにそれくらいはかかるだろう。

「澪・・・・・・・・・そんな喋り方はやめて欲しいな・・・・・・
しょうがないことだけど・・・・・・・・お願いね。」

澪は物悲しげな繭の顔を見ると申し訳なさそうに俯く。

「あ、ごめんなさい・・・・・・・・
でも、すぐにはちょっと無理かもしれない・・・・・ごめん。」

澪はゆっくりと体を起こす。

「まあ、しょうがないか・・・・・・・じゃ、澪、着替えここに置いておくから、
荷物は服くらいだし、私、外の待合室で待ってるから、用意出来たら来てね。
退院手続きも済ませておくから。」

そこまで言うと繭は笑顔を返して出て行った。

また病室を静寂が包む・・・・・


88:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:02:47 Ts6Mkhmm

澪は拳を握り、力を入れてみる。
寝起からそんなに経ってはいないので完全には力が入らないが、体が何ともないことは確認できる。

「よし!」

澪は勢い良くベッドから降りると、歯ブラシとタオルを持ち部屋を出て洗面所を探す。

着替えも手早く済ませると、そそくさ荷物をまとめて部屋を再び出た。

件の待合室に向かうため階段を降りると、繭が受付で手続きをしている最中であった。
繭は澪に気付くと、手招きをする。

「早かったね。今手続き終わったとこだよ。」

「うん・・・・・荷物もほとんど無かったし・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「それじゃ、帰ろう澪・・・・・・・・私達の家に。」

二人は病院を出てバスに乗り、家の近くのバス亭で降りた。

乗車中、繭は車内から見える外の景色をあれこれと澪に説明した。
あの公園は昔良く遊んだ場所だとか、今はアパートが見えるその土地は
私達が幼い頃は本屋であったことなど・・・・・

しかし、そのどれを聞いても澪の記憶を呼び覚ます物にはなり得なかった・・・・

澪の反応が薄いのを見た繭は少し悲しそうな顔をしていた・・・・・
それを見ていると澪も悲しくなった・・・・・

「ここが私達の家だよ・・・・」

そう言って繭が足を止めた先には、表札に『天倉』と書かれた家が建っている。

玄関を開けて、ただいまと言う繭。

澪は何と言おうか迷った・・・・・
が、繭の事を思い、澪もただいまと言った。

繭はおかえりと笑顔で出迎えた。

「今、親は居るんですか?・・・・・・他に住んでいる人は?・・・・・・」

澪が靴を脱ぎながら繭に尋ねる。

少しの沈黙の後、繭は答える。

「ただいまって言ったけど、今は家には誰も居ないの。
お母さんは体が悪くて、澪が居た病院じゃない他の施設が良い病院に入院してるの。
まだ当分退院は出来なさそう・・・・・・・・・・・・
兄弟は私達だけよ。
それで・・・・・・・・・・お父さんは・・・・・・・その・・・・・・・・
居ないわ・・・・・・・」

言いにくそうに繭は最後の言葉を切る。


89:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:05:37 Ts6Mkhmm

「そうなんだ・・・・・・ごめん・・・・・・・・忘れてて・・・・・・」

繭の醸す空気で即座に理解をした澪。
仕方の無いことだが謝らずにはいられなかった・・・・・

「気にすることないよ・・・・・・・・それより澪、二階の手前の部屋が澪の部屋だから、荷物を置いてゆっくり
してていいよ。お昼は私が作るから、それまで自分の部屋で休んでて・・・・・・何か思い出せるかもしれないし。
でも、無理して思い出そうとしなくてもいいからね。」

そこまで言うと繭は笑顔を向ける。

繭の気遣いが嬉しかった。
澪は素直に甘える事にした。
早く自分が住まいとしていた部屋を見てみたい。記憶を取り戻したいというのもあったのだが・・・・・

「姉さん・・・・・」

「何?・・・・・・」

「ありがとう。」

そう言うと、澪は二階の部屋に向かった。

部屋のドアを開ける。
中の光景には・・・・・・
見覚えは無い。

足を踏み入れ大きく息を吸い込む・・・・・
違和感を覚える臭いなどはしない・・・・・
ここは間違いなく自分の部屋なのだろう。

ベッドの上に荷物を置き、そのまま隣に腰をかける。

部屋の中をゆっくりと見渡す・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
が、何も思い出すことは出来ない。

ただ無機質なカラスの鳴き声だけが窓越しに聞こえてきた。

枕元に置いてある少し汚れた白いうさぎの人形に目が留まる。
何を思うわけでもなくそれを手に取る澪。

『みおとわたしの8さいのたんじょうび』

人形の背中には黒いマジックでそう書いてあった。
字が書きやすい場所ではないので仕方ないが、それでも子供が書いた物であることはすぐに分かった。

「姉さん・・・・・・・」

その人形を胸に抱きしめる澪。

人形を抱えたまま自分の物であろう机に向かう。

机の上に立てかけられている写真に目が留まる。


90:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:08:14 Ts6Mkhmm

幼い二人の写真。
片方が後ろからもう片方を抱き、満面の笑みで・・・・・
抱かれている方は少し困っている感じだが嬉しそうである。

(私達だよね・・・・・・後ろが私だろうな・・・・・・きっと・・・・・・
撮ったのは誰だろう?・・・・・・・・・お母さんかな・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ほんとに同じ顔だ・・・・・・・・・・・・・・・・・)

昔から仲が良かったのだと言う事を認識させられて澪は酷く安心した。
そして、一刻も早く姉のことを全部思い出したい、
思い出して絆を取り戻したいと願った。

だが、それらを見てもほとんど記憶の回復に進展は無さそうであった・・・・・

澪は一つ深い溜息をついた・・・・・

棚の参考書や本に目を流して、机の引き出しに手をかける。

・・・・・・・・・・・・・・・

開かない・・・・・・・

鍵がかけられている。

鍵の場所など知らないので、澪はすぐに諦めると、ベッドに寝そべった。

(何で忘れてるんだろう・・・・・・お昼の時に姉さんに聞いてみよう・・・・)

澪は久しぶりに動いて疲れたのか、そのまま眠りに落ちていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「澪!お昼出来たよ!」

ドアの外から自分を呼ぶ声で目を覚ます。

寝てしまっていたことに気付くと澪はすぐに返事を返す。

「今行きます。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人だけの食事・・・・・

「良かった。澪が戻ってきてくれて。
一人で食べるの寂しかったから・・・・・・
どう?・・・・何か思い出せそう?」

澪はその問いに申し訳無さそうにゆっくりと首を横に振る。

「そっか・・・・・・・・・・・気にしなくて良いよ。
ゆっくり思い出していけばいいんだから・・・・・」

繭は優しく澪をなだめる。


91:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:11:50 Ts6Mkhmm

「あの・・・・・・・私何で記憶がないのかな?
何か原因があると思うのですけど、姉さん知ってるよね?」

箸を置き、気になっていた疑問を繭に向ける。

「それは・・・・・・・・・・・」

繭は知っていた。
確証があるわけではないが、確信していた・・・・・・その原因を・・・・・・

あの村で、あの場所を見て、それで・・・・・・・・・・
それを澪に告げて良いものか・・・・・・・
あんな怖い思いをした辛い出来事を今の澪に語るには酷な気がしてならなかった。

「一週間前くらいにね、私と一緒に昔良く遊んだある場所に遊びに行って・・・・・・・
澪はそこで頭を打って・・・・・・・・・・それが原因だと思う。」

繭は気まずそうに澪の目から逃れる。

それを見た澪は腑に落ちない思いを抱きながらもそれ以上追求はしなかった。
もしかしたら問い詰めてはいけないことかもしれない。
記憶の無い澪にはそれを判断する術が無かったので無難な選択をするしかなかった・・・・・

「そう・・・・・・・」

澪はそう答えると無言で箸を進める。

「澪の記憶が戻らないうちは私の口から言うことじゃない気がするの・・・・・・
詳しい話は澪の記憶が少しでも戻ってからにしたいな。」

「分かりました。」

澪はこれも素直に従うことにした。

「みお!もういい加減その時々出る丁寧な口調やめてよ。」

繭は少し可笑しそうな顔で抗議する。

「え?・・・・・・・でも、何か不自然な感じがして・・・・・・ごめん・・・・・・」

「ぷっ・・・・・・・・部屋で色々と見たと思うけど、私達はすっごい仲の良い姉妹だって評判なんだからね。
何をするにもずっと一緒に居たんだから。私の自慢の妹だよ。」

繭は照れもせず言う。

「そうなんだ。ありがとう・・・・姉さん。」

少し気恥ずかしそうに澪は答える。
確かに歳の近い兄弟で余所余所しいのは酷く可笑しい。
ましてや同じ歳なら尚更だろう。
澪は言葉に気をつけることにした。

しかし一番の理由は他人行儀な言葉を使ってしまった時に繭が浮かべる寂しそうな顔を見たくなかったからである。


92:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:15:49 Ts6Mkhmm

その後、家事の手伝いをしながら、澪はずっと繭と一緒に居た。
色々な事を聞いたし、話してくれた。
仲の良い姉妹なのだということが本当に実感できた。
そして、今までの思い出が無くても、たった半日一緒に居るだけでどんどん繭の事が好きになった。
晩御飯が終わる頃にはすっかり打ち解け妙なぎこちなさも解消してしまった。

「姉さん、私今日はもう部屋に戻って、もう少し頑張ってみる。
きっと何か思い出せると思うし、色々姉さんのこと思い出したいから・・・・・・」

澪は笑顔を作り繭にそう言った。

「澪・・・・・・・・
分かった。今日はもうそのままゆっくり休んでて良いから。
明日からはちゃんと家事やってもらうけどね。」

「は~い」

澪は叱られた子供のように返事を返すと、二人、目を合わせクスクス笑う。

「澪・・・・・・・・私がついてるから・・・・・・ずっと一緒に居るから
大丈夫だからね。」

繭が真剣な顔つきに戻る。

「うん、ありがとう姉さん。おやすみなさい・・・・・・」

挨拶を交わし階段を上がり部屋に戻ると、澪はすぐに手当たり次第に棚にあった本を漁った。
特に自分が過去に書いた日記を見つけると、それを最初から食い入るように読んでいった・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(駄目だ・・・・・・・・・何か出て来そうな感じはするけど、決定的な何かが足りない気がする・・・・・)

姉さんは頭を打って、と言ったがおかしい・・・・・・

医者も言っていたが、特に悪いところは無いと言っていた。
姉さんも最初はそう言っていた。

頭を打って記憶が無いのとは違う。

(それにしても・・・・・・私の日記・・・・・・・姉さんのことばかり書いてある。)

澪は昔の自分の日記を読んで可笑しくなった。
自分の日記のはずなのに書かれているのは繭の事ばかりであった。

(私も本当に姉さんの事が好きだったんだろうな・・・・・・)

先程まで一緒に居た繭の顔を思い浮かべる。
それは記憶が無い澪の脳裏に新しく焼き付いた新鮮な物であった。


93:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:18:40 Ts6Mkhmm

澪は今日は取り合えず寝ることにした。

記憶を失くした原因については腑に落ちないことがあったが、
それよりも今は思い出す方が先決である。
家に帰ってきてすぐは緊張していたせいもあってか澪は体が疲れていた。
すぐにでも眠れそうである。

ベッドに入ると部屋の明かりを消して目を閉じる・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

眠ろうとするが、どうしても記憶を戻そうと頭を使ってしまい眠る事が出来ない。
体は疲れているのだが・・・・・

繭はゆっくり思い出せば良いと言った。
しかし、澪は不安だった。
自分が一番親しい人と過ごしていても、
一番落ち着く場所に居ても一向に状況が改善する兆しが見えてこない。

忘れていて思い出せないのではなく、消え去ってしまったのではないだろうか・・・・・・
思い出すも何も頭の中に無い物はどう足掻こうが取り戻せない。

それを思うと澪は酷く不安に駆られた。
自分が酷く不安定な場所をふらふら宙に浮いているようだった。

「姉さん・・・・・・もう寝たかな・・・・・・」

澪は急に無性に繭の顔が見たくなった。

ゆっくり体を起こすと暗闇に慣れた目で明かりを点けることなく部屋を出て階段を降りて行く。

繭は既に寝巻きに着替えて寝る準備を済ませたとこであった。

「姉さん・・・・・・」

繭は澪の不安気な表情をすぐに汲み取る。

「澪・・・・・眠れないのね・・・・・・・・・」

「うん・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今日は私と一緒に寝ようか?」

その言葉に澪は少し驚いて目を大きくするが、

「うん・・・・・・・そうして貰えると嬉しい・・・・・
一人だと色々考え込んじゃって・・・・・」

「しょうがないよね・・・・・・・・・・じゃ、今日は澪の部屋で一緒に寝よう。」


94:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:20:43 Ts6Mkhmm

一階の明かりをすべて消し、二階に上がり二人で同じベッドに入る。

少し暑い・・・・・・が、一人でいるよりは全然マシである。

「ごめんね、一緒に寝たいなんて、子供みたいなこと言って・・・・」

澪が舌を出して可愛く謝る。

「ふふ、澪が入院する前は毎日一緒に寝てたよ。」

「え!?・・・・・・それ本当?」

「ふふ・・・・さあ・・・・・・・」

「姉さん、私の記憶が無いから適当な事言ってない?」

「言ってないよ、だから明日からも一緒に寝ましょうね。」

繭の目は明らかにからかいの色を含んでいる。

「嘘付きはこうしてやる!」

澪は寝ている繭のわき腹を擽り始める。

「あはははは!澪!やめて!・・・・・・嘘よ!冗談だから!
私が悪かったわ!・・・・・」

思いがけぬ攻撃にすぐ白旗を振る繭。

「よろしい・・・・・・」

「はあ、はあ。」

擽り地獄から逃れる事の出来た繭の吐息は荒い・・・・

「死ぬかと思った・・・・・」

「ごめん、ごめん。
でも、ほんとに暫く一緒に寝てくれると嬉しいな・・・・・」

「澪がそうしたいなら私は良いよ。
だって毎日一緒に寝てたしね!」

「まだ言うか~!」

澪は再び繭に襲い掛かろうとする。

「ストップ!!はい、すいませんでした!
もう寝ましょう!・・・・おやすみ澪。」

捲くし立てる様に言うと繭はそっぽ向いて逃げてしまった。

「うん・・・・おやすみ」

その様子を見届け澪もまた目を瞑り眠ろうとする。


95:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:23:08 Ts6Mkhmm

一緒に居るだけで、先程までの不安が嘘のようである。

澪は静かに体の向きを変えて繭の背中を見つめる。

(姉さん・・・・・・・・・・・・姉さんが居てくれて良かったよ・・・・・・
すぐに思い出せなくてごめんね・・・・・私だけ忘れてるなんて酷いよね・・・・・
でも、きっとそのうち思い出せるだろうし・・・・
それに・・・・・・・もし思い出せなくてもまた新しい絆を作っていけば良いんだよね・・・・・)

澪には確信があった。
この人だったら・・・・・・
繭とだったらまた絆を作っていけると。
今度は絶対に切れることなどない強い二人だけの絆を築いていけると・・・・・

(おやすみ・・・・・姉さん。)

繭の背中を愛しそうに見つめ、心の中でおやすみと・・・・・


そして、今度は先程とは違いすぐに澪は眠りに落ちていくことが出来た。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ここは?・・・・・・・・・・・」

澪は気が付くと真っ暗な闇の中を一人彷徨っていた・・・・・

「どこ?・・・・・姉さん・・・・・・・夢?」

訳の分からない場所に急に放り出された澪はどうして良いのか分からずオロオロしている。

まるで、今の自分を象徴するかのように何も無い世界。

夢にしてはやたら現実感がある周囲を埋めている闇の質感。

後ろも前も分からぬ空間で澪は途方に暮れていた・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

周りに纏わり付くように出ていた白い霧が突然目の前の上空で集まり始める。

突然の変化に驚き恐怖の色を映し出す澪の表情。
目の前で起こっている現象を澪は目を離すことなくに見つめていた。

やがてそれは大きな髑髏のような顔に姿を変え澪を見据えているようだった。


96:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:26:54 Ts6Mkhmm

「何?・・・・・・これ・・・・・・・・・」

得体の知れぬ物を目の当たりにして澪の表情が更に恐怖の色に染まる。

『みお・・・・・・』

突如恨めしい声が聞こえてくる。
目の前の髑髏が喋っているのだろうか・・・・
声は周囲全体から届いてくるように感じられた。

『みお、我々はお前を絶対に許さん!!』

怒りに震えるその声は続ける。

『お前だけが運命の呪縛から逃れ幸せになるなど絶対に許さん!!』

「誰!?・・・・・運命??いったい何なのよ!!」

声を荒げる澪。
突然の糾弾の声に状況が全く把握出来ずにいる・・・・・

そんな澪にお構い無しに闇は話し続ける。


『ある者は何も分からず切り刻まれ深い闇に放り込まれた・・・・・・愛する者に最後の言葉も残せずに・・・・・
またある者は掟に従い、愛するものを殺し、発狂して自分もその身を奈落へと投げ落とした・・・・・
課せられた運命に順じていったのだ・・・・・
お前だけが運命から逃れることなど決してさせはせん!!』

「だから何だって言うの!!?」

『故に我々はあの最後の時に我々の怨嗟の声を聞きそして覗いたお前に呪いをかけた!!』

「呪い・・・・・・?」

『そうだ!!お前の命の灯火は次の新月の刻限を迎えた時に消え去る!!』

澪は何が起こっているのか理解できなかった。

「嘘!・・・・そんな!!」

現実では無いと言い聞かせても、あまりにも残酷な宣告に軽い眩暈を覚える。

『嘘ではない!!
だが案ずる事は無い!!
良いか!心して聞くが良い!!
我々はお前にその呪縛から逃れる術を用意してやったのだ!』

「な、何?」

『我々は儀式の呪縛から逃れたお前が恨めしい!!
故にお前には掟通り儀式に従い姉を殺してもらう!!!
これを遂行せねば先刻告げた通りお前の命は尽き果てる!!』


97:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:29:39 Ts6Mkhmm

次々に受け入れがたい事を澪に浴びせかける闇からの声。

「姉さんを殺す?・・・・・・・そんな馬鹿なことできるわけないじゃない!!」

澪は金きり声に近い声をあげていた。

『出来なければ貴様は死ぬ!!!!
まあ、我々はどちらでも良いがな!
運命という呪縛の苦渋をお前に散々味わせたいだけだ!!
我々と同じようにな!!!!
故に刻限を設けた!!!
せいぜい苦しむことだ!!!!』

「そんなこと誰が信じるもんか!!私がいったい何をしたのよ!!!」

『ククク、分からぬか!!!お前のその記憶を封じ込めたのも我々よ!!
姉を殺しやすいように敢えて一切の記憶を封印してやったのだ!!!
感謝するが良い!!!』

それを聞いて澪は体を支配していた恐怖がすぐさま怒りに変じる・・・・・・

「ふざけないで!!!!!!早く元に戻しなさい!!!」

『だまれ!!貴様はせいぜい苦しむんだな!!!
お前のもがき苦しむ様楽しませて貰うぞ!!!!』

そこまで言うと、目の前の髑髏は四散し始める。

「待ちなさい!!!待て!!!!」

澪は懸命に足を進めるが全く進むことが出来ない。

やがて、完全に見えなくなると周りの闇も白く染まり始め何も見えなくなる・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はっ!・・・・・・・・・・」

澪が目を覚ますと先程の光景は無く、自室のベッドの上に座っていた。

「夢?・・・・・・・・・・いや・・・・・・・・・あんなに現実的なのは・・・・・・・・・」

澪は先程の事を思い出す。

私は死ぬ・・・・・・
姉さんを殺さないと死んでしまう・・・・・・


「ほんとに私が今記憶が無いのがさっきの奴の仕業だとすれば・・・・・・
夢じゃないの?・・・・・・・・・・それじゃ・・・・・・
まさかほんとに・・・・・・・私・・・・・・・・・わたし・・・・・・・・・・」

澪は知らずしてポロポロと涙が零れていた。

外に目をやると、月明かりが差し込んでいる・・・・・・

(三日月・・・・・あれは・・・・・・・・・後・・・・・二日!)


98:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:32:45 Ts6Mkhmm

澪に絶望の刻限を告げる右半身が欠けた三日月・・・・・・
月はただ静かに冷たい光を放っている。

泣き止まない瞳で隣で寝ている繭の寝顔を見る。

(姉さんを・・・・・殺せば・・・・・・)

澪は即座に考えを振り払い首を振る。

(そんなことは出来ない・・・・出来るはずない・・・・・
姉さん・・・・・私・・・・・どうしよう?・・・・・・うぅ・・・・・・
死にたくないよ・・・・・姉さんと一緒に生きて居たい・・・・・・
どうすれば・・・・・・・・)

声を押し殺して澪はただ泣いていた・・・・・・

「・・・・・澪・・・・・・」

澪の異変に気付いてか繭は目を覚ましていた・・・・・・・・

澪は体を起こした繭に磁石のように吸い寄せられると、その胸で泣いた。

「姉さん・・・・・姉さん・・・・・私・・・・・・」

「澪、落ち着くまでこうしてるから・・・・・・
無理に思い出さなくてもいいから・・・・・・・
私が付いてる。
澪の側にずっと居るから・・・・・・」

(違う!!・・・・・・・・違うの!!)

澪は先程見た夢の内容を言葉にしようと口元まで出掛かる。
が、それを言う事が出来なかった・・・・・

「ずっと一緒に居てくれる?・・・・・・何があっても私のこと見捨てないよね?・・・・・」

澪は縋る様な目で繭を見る。

「澪・・・・・・・約束するよ。
何があっても澪と私はずっと一緒だよ・・・・・絶対に・・・・
記憶なんて関係ない。澪は澪だよ・・・・・」

繭の迷いの無い言葉が今の澪には嬉しかった。
自分の記憶が戻らなくても繭から伝わってくるその溢れる優しさと想いだけで、
自分も愛することが出来た・・・・・

故に澪は決意を固めた。
姉には告げず、明日自分の記憶が失なわれた時の事を聞き出し、呪いを解く手ががりを見つけに行く。
鍵は必ず記憶が失われた場所にあるはずなのだから・・・・

「姉さん・・・・・ありがとう。
大好き・・・・・」

「澪・・・・・・・私も澪のことが世界で一番好きよ・・・・・」


99:名無しさん@ピンキー
06/10/07 04:35:27 Ts6Mkhmm
過疎が進行しているようなので、
職人様の降臨を切望しつつ、お供え物をば・・・・・

と思ったが長いよ・・・・・・・・orz
ダラダラ申し訳ないです。

やっぱり新作出ないとですね・・・・

100:名無しさん@ピンキー
06/10/07 11:55:20 uAIrHmhN
澪は「姉さん」なんて呼ばないだろ

101:名無しさん@ピンキー
06/10/07 15:22:28 G6TnkESD
まだ読んでないけどすげぇ大作が投下されたよかん
今読めないから帰ってから読むぞ!>>99乙!!

102:名無しさん@ピンキー
06/10/07 16:03:48 G6TnkESD
とか言いながら読んでしまった(;´Д`)
この話、続く・・んだよね?
この姉妹というより同級生同士って感じの新鮮さ、良い!
>>100
記憶をなくしてよそよそしくなってるからだと思われ。
他人と思える人にいきなり「お姉ちゃん」とは言えないしなw

103:名無しさん@ピンキー
06/10/07 22:56:43 J6pjWw3i
>>99
職人様キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
読みごたえがあっていいっす!
続きが待ちきれない~!

104:名無しさん@ピンキー
06/10/07 23:22:23 jzgDA7tE
>>99GJ!
このままエロも是非!
俺的には虚の中の人のテンションに笑ってしまったw
えらいハイだなW

105:名無しさん@ピンキー
06/10/08 03:31:59 qNiR04sv
>>99
GJ!
偽の記憶(とは限らないかw)を刷り込もうとする繭にワロス
繭ならやりかねないけどね
ギャグなら『毎日セクース三昧だったの!』とか言って
襲いかかってそうだ

106:名無しさん@ピンキー
06/10/11 22:08:18 Eu1PFzOm
>>99gj

107:名無しさん@ピンキー
06/10/17 22:29:11 kz7NUkbB
双子保守!

108:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:07:51 TcOaRvcH
職人様来てない・・・・・(´・ω・`)
読んでくれてる方々どうもです。

>>98の続き
  ↓

109:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:11:34 TcOaRvcH

目が覚める・・・・・・・

昨日必死になって何かを思い起こそうとしていた部屋とは別の部屋・・・・・

(そっか・・・・・姉さんの部屋に押しかけたんだっけ・・・・)

先刻目を覚ました病院とは違う風景に安堵の溜息を一つ吐く澪。
この部屋に入った時は寝る前で電気を付けなかったので、今の澪には初めての風景である。

(昨日は・・・・・・・)

眠りの中で見た悪夢。
受け入れ難い事実を告知された事が澪の脳裏に呼び覚まされた。

目にヒリヒリと腫れぼったいような痛みを感じる・・・・・・

涙を流し尽くして繭に抱かれていたことを思い出す澪。

(姉さん・・・・・・)

澪はすぐに体を起こして隣に目をやる、が、そこには繭の姿は無い。

沈みかけた気持ちを払拭しようと繭の姿を求めたが既にこの部屋には居ないようだ・・・・

今も記憶の回復に進展は無いように感じる。
それはあの悪夢での宣告が真実である事を澪に実感させて止まない物であった。

それでも澪は涙を流す事はなかった。

夜中に繭の胸の中で決意した事、その事に迷いは無かった。
記憶が無くても芯の強さは以前と変わってはいなかった・・・・・

それは記憶を失くす前、あの村で繭を守りたい一心で突き進んだ澪と同じであった。
今の澪にはそれが分からなくても・・・・・・

(姉さん・・・・・・今日で最後・・・・・・・・おもいっきり甘えても良いよね?)


110:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:13:46 TcOaRvcH

澪はもう今日はずっと繭の側に居ようと思った。
ほんとはずっと・・・・・一日中抱きしめていたい程であった。

不安?
愛しさ?
両方か?・・・・・

今の澪にはそれもどうでも良かった。

一階に向かおうとベッドを降りる澪。

繭はキッチンで朝食を作っている最中であった。

フライパンの音に紛れた澪の気配を背後に感じ取ると振り返って挨拶をする繭。

「澪・・・・・・おはよう。あの後・・・・眠れた?」

繭の笑顔が澪には何だか眩しかった。

「うん・・・・・・姉さんのおかげで・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・

「そっか・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あっ、ご飯、澪の好きなスクランブルエッグにしたから、食べて元気出して!」

繭が努めたように明るい声で澪に話しかける。


「私の好きな・・・・・・・そう・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もうちょっとで出来るから顔洗ってきなよ。」

無言で頷くと、澪は洗面所に向かう。

繭が出来上がった物をテーブルに並べていると、やがて澪が戻ってくる。


111:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:16:58 TcOaRvcH

「姉さん、ごめんね。今日から家事手伝うって言ったのに、一人で作らせちゃって・・・・・」

「澪・・・・・あれは半分冗談で言ったようなものだから気にしなくて良いよ。
記憶が戻ったら手伝ってくれれば良いから・・・・・・」

少し慌てたように繭がフォローを入れる。

「私は・・・・・・・・・・・・・・私の記憶は・・・・・・・・・・・・」

澪の声は少しだけ震えているようだ。

「え?・・・・・何?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「な、何でもない!ごめん姉さん!・・・・・・・・それより食べて良いかな?
昨日泣き疲れたせいかお腹空いちゃった・・・・・」

「うん。澪のご飯大盛りにしといたから。」

「いや・・・・・・・そこまではお腹空いてはないんだけどなぁ・・・・・・・」

テーブルに置かれた茶碗にてんこ盛りのご飯を見て不安になる澪。

「あれ?澪はいつも朝はこれくらい食べてたのになぁ。」

昨日寝る前に澪をからかってきた時と同じ目。

「姉さん!」

「な、何?・・・・・」

澪は繭を鋭い視線で睨む。

「そんなわけないでしょ~!!!」

しゃもじ片手の繭に襲い掛かる澪。

「きゃ!」

繭はすぐに捕まってしまい小さな悲鳴をあげる。


112:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:18:58 TcOaRvcH

また擽られるかと体を強張らせたがそうではないようだ・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「姉さん・・・・・・・・」

後ろから繭を抱きしめたまま澪は呟く。
その体は僅かに震えてるようだ・・・・・・・・・

「澪・・・・・・・・・・」

繭は自分の体の前に回された澪の右手にそっと自分の左手を添える。

感触を右手の甲に感じた澪が少し体を跳ねさせる・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがて小さな震えも治まる。

このまま・・・・・・・昨日の事を打ち明けてしまったら自分は楽になるかもしれない。
でも、絶対に言えない。
それを知ったら姉さんは・・・・・・・・・・
そんなのは絶対駄目。

繭の温もりを感じ取りながら澪は思考を巡らす。

ふっと表情を緩める澪。

キッチン台に置かれている鏡に二人の姿が映っている。

「ふふ・・・・・姉さんのそのエプロン姿。
私達何か新婚夫婦みたいだね?」

「え?・・・・・・何言い出すのよ澪・・・・・・・」

笑いながらも少しだけ頬を染めてしまう繭。

その表情が鏡のせいで澪に隠すことも出来ず余すことなく見られてしまう・・・・・


113:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:21:01 TcOaRvcH

「そのエプロン可愛いね。」

繭が身に付けている物は、薄いピンクの下地に小さな苺が散りばめられたエプロン。

「澪が私達の誕生日にくれたんだよ・・・・・・・12歳になる時に・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そうなんだ・・・・・・・」

忘れている事にまた寂しさが少しだけ込み上げてくる澪。

(違う!・・・・・・・・・あいつらのせいで!・・・・・・あいつらが・・・・・)

また小刻みに震えだす澪の体。

「澪?・・・・・・・・」

その異変に繭は気付く。

「ごめん・・・・ご飯冷めちゃうよね・・・・・・食べよう、姉さん。」

澪は少しだけ名残惜しそうに繭を開放してやるとテーブルに着く。

するとすぐさま、自分の前に盛られたご飯の上半分を箸で掴むと繭の茶碗に付け足す。

「ちょっと!澪!」

「私達は双子。同じ量食べられるはずだよ、ね~えさん。」

してやったりと澪が意地悪い笑みを浮かべる。

「うぅ・・・・・・・」

目の前に盛られたご飯に何も言えなくなる繭。

「いいわよ!食べてやろうじゃない!」

やけくそになっている繭に思わず笑ってしまう。

「前の澪はこんな意地悪じゃなかったのに・・・・・・」

「それじゃ、きっと姉さんが悪いんだね、うふふ・・・・・」


114:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:23:47 TcOaRvcH

(楽しい・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一人じゃない食事がこんなに楽しいなんて・・・・・・・)

澪と同じ事を繭も思っていた。

普段の1.5倍の量に楽しい食事の時間は長かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「う、動けない・・・・・・」

繭が辛そうにお腹を押さえて訴える。

「だ、大丈夫?」

苦笑いを浮かべて訊ねる澪。

「だ、駄目・・・・・・・」

澪もお腹が少し苦しいが繭ほどではなかった。
なので後片付けはすべて澪一人で行った。

片付けが終わると澪は昨日の様に自室に篭り記憶を呼び覚まそうと努力はしなかった。
その代わりソファーで休憩している繭の隣に座って寄り添っていった・・・・・・

正午までとりわけ会話は無かった・・・・・・

そしてまだ全くお腹の空かない二人は昼食はパスすることで意見が一致した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同じ感覚で時を刻んでいく時計を見ていると澪は切なくなった。

(一日って短いな・・・・・・・もう午後になっちゃった・・・・・・・・・・
さっき起きたばっかりなのに・・・・・・・・・・)



その後も午前と同じように二人は肩を寄せ合っていた。

天気の良い午後であった。
エアコンが無ければ汗だくになっているだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


115:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:25:48 TcOaRvcH

「姉さん・・・・・・・・」

澪がポツリと呟く。

「ん?・・・・・・」

自分の肩に頭を預けている澪の方に顔を向ける繭。

「わたし・・・・・・・・・・・
私、思い出さないと駄目かな?・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「澪・・・・・・・・・・・」

「何かね・・・・・・・・・・・・思い出せないと姉さんにほんとの妹だと思って貰えない
んじゃないかって・・・・・・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「澪・・・・・・・・・・・・・昨日も言ったよ。
記憶が無くったって、澪が私の事忘れたって・・・・・・・
澪は澪だよ・・・・・・・私のたった一人の妹だよ・・・・・・」

「姉さん・・・・・・・・」

込み上げてくる目頭を熱くする物を見られまいと澪は繭の胸に顔を埋める。


116:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:27:15 TcOaRvcH

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もうすぐ夏休みも終わりだね・・・・・・・」

澪の頭を撫でながら繭が言う。

「そうだね・・・・・・・・・・・」

「澪の記憶が無いって知ったら皆びっくりするかな・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そう・・・・・・かもね・・・・・・・・」

明日で死ぬかもしれない澪にはどうでも良いことであったかもしれない・・・・・
何も考えることなく澪は返事を返した。

「澪はクラスの人気者だったから、またすぐに慣れるよ。きっと・・・・・・
私も付いてるし、大丈夫だからね。」

繭の気遣いが嬉しかった。
そして自分の不安のせいで繭まで暗い気持ちにさせたくないと澪は思った。

「うん・・・・・怖いから、学校でも姉さんの側にずっと居るね・・・・・私・・・・・・・・・ずっと・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ふふ・・・・・良いよ・・・・・・澪」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(これで良いんだ・・・・・・・・・最後くらい私も楽しく過ごしていたい・・・・・・・
姉さんの悲しむ顔なんて見たくないから・・・・・・・・・)


117:名無しさん@ピンキー
06/10/18 04:30:25 TcOaRvcH
間が空いた割に短くてすいません・・・・orz
次はもう少し書いてから投下しようかと・・・・・・
では出来た時にまたですノシ
(いつになるやら・・・・・)


118:名無しさん@ピンキー
06/10/18 11:39:05 2bsM5BLq
うおおGJ!
続きくるまで待ち続けます

119:名無しさん@ピンキー
06/10/18 12:42:22 UHzBQz5P
いやはやGJ。黒百合って素晴らしい

ところで、ここは絵の投下はアリ?
自作なんだが…

120:名無しさん@ピンキー
06/10/18 14:43:16 yG5XP7DP
>>119
以前のスレでは結構あったはず・・・・
お好きにやって盛り上げてくだされ。

121:名無しさん@ピンキー
06/10/18 18:25:55 ZOffmiRg
新婚さんみたいだねって軽く言っちゃう澪が女ったらしに見えるww>>117GJ!!
続きは気長に待ってまつ。
>>119 ぜひ。

122:名無しさん@ピンキー
06/10/19 00:12:21 QSx9gDb2
>>117
乾いた心にオアシスが広がった!
続きを楽しみにしてるよっ

>>119
投下とぅ~か

123:名無しさん@ピンキー
06/10/19 18:13:38 UXjVcVZJ
119だがヘタレスマソ
千歳たんとょぅι"ょ姉妹のつもり
URLリンク(p.pita.st)
ろだの関係で画像が横倒れになってます。ごめん

124:名無しさん@ピンキー
06/10/20 01:21:51 1pdqrdL/
>>123
うおー超乙!
もっとないのー?(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)

125:名無しさん@ピンキー
06/10/20 01:50:15 LgHNfCmi
>>123

 すげー!!!

 画像がもうちょい小さければもっといい!!!

126:名無しさん@ピンキー
06/10/20 06:44:12 XeZF0aDr
っ640×480
URLリンク(p.pita.st)
茜たんと薊たんが大好きな俺は多分異常なんだ

127:名無しさん@ピンキー
06/10/21 17:26:56 VAwWLZou
ウヒャーみんなGJ!!!!!!!

128:名無しさん@ピンキー
06/10/23 00:48:11 6MFAS/80
>>126
イイヨイイヨー
澪達が来る前はこんな事をしていたんだな

129:名無しさん@ピンキー
06/10/23 09:09:30 jebjnIVQ
>>126
ハアハァしすぎて血管が切れた

130:名無しさん@ピンキー
06/10/23 09:39:11 UWw2xQG6
>>126
ハァハァしてたら本当に鼻血出た

131:名無しさん@ピンキー
06/10/27 18:08:58 takLTwbc
>>117はやく続きを…

132:名無しさん@ピンキー
06/10/28 00:59:13 Me1BFUVu
>>126
すげえ!!GJ!!
好みの絵です!ノートPC横にして見ましたともwええw
エロイの書きたくなるw

>>131
いや・・・・・・ほんと申し訳ないです・・・・
遅くて・・・・・・

>>116の続き
  ↓

133:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:01:28 Me1BFUVu

楽しい時間は短く感じる。

澪は今日ほどこの言葉を憎いと思ったことは無かったように思う。

明日で終わりが訪れるかもしれないからだろうか・・・・・

(違う・・・・・・・・この時間がずっと続くと分かっていたって・・・・・
私は・・・・・・姉さんと居られる事をきっと幸せに思う・・・・・・・・・)

既に太陽は沈み、外は薄い闇が支配する刻限であった。

二人は夕飯の準備をしていた。
夕飯がいつもより遅くなった原因は、夕方前にお腹が空き軽食を簡単に取ってしまったためである。

澪はこの夕飯の時にどうしても繭に聞かねばならない事があった。



「やっぱり甘口は物足りなくない?」

ちっとも辛くないカレーに少し不満を漏らす澪。

「私辛いの駄目なの・・・・・・・舌がヒリヒリする感じが・・・・・」

「あ・・・・そう・・・・・」

それならしょうがないか、と澪は食事を進める。

「・・・・・お姉ちゃん、真面目な話しても良い?
どうしても答えて欲しい事なの・・・・・・・」

澪の言葉に繭は頷きスプーンを置く。
それを見て澪は自分の聞きたい事が繭にも知れていることを確信する。

「私はどこへ行ったせいで、記憶が失くなったのかな?・・・・・・
理由は別に良いの・・・・・・・・・頭を打ったわけではないだろうし・・・・・・
だけど、場所だけは教えて欲しい。それで何か思い出せるかもしれないし・・・・・」

繭は予想していたことながら直接澪の口からそれを聞くと、少し辛そうな表情を浮かべる。


134:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:05:47 Me1BFUVu

少しの間押し黙っていたが、やがて重たい口を開く繭。

「うん・・・・・・・・昨日バスで通ったけど、アパートがあった右の道から入った○○山
のふもとの所・・・・・・・川があって、昔そこで良く遊んだのよ・・・・・私達。」

話す間も繭の悲しそうな表情は変わらない。

澪は繭の返答に想像以上の収穫を得ることができた。
場所だけでなく、そこへの行き方も聞く事が出来たのは今の澪にとって重要な事であった。

「結構近い場所だったんだね・・・・・・・・・・
記憶を取り戻せるかもしれないしそのうち行ってみないとなぁ・・・・・・」

無論明日に出発するつもりであったが澪は曖昧に返事を返しておく。

「その時は私も一緒に付いて行くからね。」

思わぬ繭の返答にギョッとする澪。

「駄目!、駄目!・・・・・・いや・・・・・・・・・
良いよ、近いし私一人で行けるから・・・・・・・・」

不自然な程に反応を示してしまった事に後悔しつつも、
澪は繭の同行の申し出を拒絶する。

「でも・・・・・・・澪は記憶が戻ってないし・・・・・・
あそこには・・・・・・・ほんとはもうあまり行って欲しくないの・・・・・」

心底自分を心配してくれている繭の眼差し。
澪は罪悪感に駆られ始めた・・・・・・・・・が、絶対に一緒に行くわけにはいかない・・・・・・・

(だって・・・・・・・・・・)

もし、駄目だったら私は死ぬ時を姉さんの側で・・・・・・・・・・・・
それに姉さんを危ない目に合わせるわけにはいかない。

尋常ならざる者が待ち受けていることはあの日見た夢からも容易に想像することができる。


135:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:08:19 Me1BFUVu

「分かった・・・・・・・・・・行く時は姉さんに一緒に来てもらうから・・・・・・・
心配しないで。」

嘘を吐くのが少し辛いが、仕方の無いことだと澪は自分に言い聞かせる。

「良かった・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(ごめんね・・・・・姉さん・・・・・・)

21:03を時計の針は指していた。

二人は食事を終えると、一緒に片付けをした。

澪は食器を流しに運ぶ繭を見て、病院で再会した時から気になっていたことを尋ねる事にした。
今まで聞かなかったのは何でだろう?・・・・・・・・聞いちゃいけない気がしたから?・・・・・・・

「姉さん・・・・・・・」

「ん?・・・・・・・・」

作業を休めることなく繭は返事を返す。

「その・・・・・・・・足怪我してるの?・・・・・・・」

歩く時に常に片足をかばっているのは気にせずとも目に付いてしまう。

繭の表情はみるみる曇り始める・・・・・・・

「うん・・・・・・・・・・・・小さい時にね・・・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・」

繭は言葉を喉に詰まらせ、洗い物をしていた手を止める。

返事を待っていた澪は驚いた。

繭はそこまで言うと言葉を続けることはなく、代わりに大粒の涙を溢し始めたのである。

「ね、姉さん・・・・・・・・・・」

「ごめん・・・・・・ごめんね、澪・・・・・・・・」

澪は自分の手が濡れているのも構わず、すぐに繭を抱きしめた。


136:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:10:45 Me1BFUVu

やはり良い予感はしていなかった・・・・・・・
聞いてはいけないことだったのだろう・・・・・・

「姉さん・・・・・・・ごめん、変な事聞いちゃって・・・・・・・・・・・・・」

澪は泣き続ける繭を強く抱き締めていた。

「違うの!・・・・・・澪は悪くないの!・・・・・・・・・・・・・
記憶が無いんだから気にしないで・・・・・・・・ごめんね、急に泣いたりして・・・・・・・・」

澪はゆっくりと屈むと怪我をしている繭の足を優しく包む・・・・・・

「これも・・・・・・・私のせいで怪我したんだよね・・・・・・・きっと・・・・・・・
早く治るように・・・・・・・・・」

眼下で優しく自分の足を撫で続けてくれる澪が更に滲んで見えてしまう。
繭は口に手を当て、声をあげてしまうのを必死に堪えていた。

そして、この怪我の理由を澪には絶対に思いだして欲しくなかった。
これ以上澪を縛り続けて苦しめたくはなかった・・・・・・・

泣き続ける繭を澪は優しく包んでいた。

昨日、今日と繭に幾度と無く慰めてもらっていた澪であったが、今は不思議な感じである。
全く逆の立場になっている事を思うと、やはり双子であることを認識させられる。

足が不自由な姉を連れて行くわけにはいかない・・・・・・・
そして、繭のためにも絶対に帰ってこなくてはならない・・・・・・・

澪は自分の腕の中で泣き続ける繭を肌で感じながらより一層決心を固める。
自分が守ってあげなくては、という慈愛の念に駆られる。

繭が落ち着くと、
澪は少し躊躇うところがあったが、
お風呂に一緒に入ろうと誘う。
少しでも長く一緒に居られる時間が欲しかったのだ。

今回は繭も特にからかう事も無く返事を返す・・・・・・・
二人は一緒に風呂につかると寝る準備を整える。
澪の予定通り、今日二人はトイレ以外はほとんど同じ場所に共に居た。

到底満足には程遠いものであったが、それでも一日の間で出来る限りの最善を尽くしたつもりであった。


137:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:17:10 Me1BFUVu

今日は澪の部屋で二人は寝ることにした・・・・・・・

新月の前日・・・・・・・・
曇ってはいないのだが、
月明かりはほとんど感じられず、外は暗かった。

夜は時として人の心を不安に陥らせる・・・・・・・・・
今の澪ももし一人であったら震えだしていたかもしれない。

布団の中で繭の手を探し当てると澪はその手をしっかりと握った。

「姉さん・・・・・・・・・・おやすみなさい・・・・・・・・」

「おやすみ・・・・・・・・・・澪・・・・・・」

澪の体温が繭に流れ込んでいく・・・・・・・
繭の温もりが澪の手に伝わってくる・・・・・

お互いの存在を相手がしっかりと感じている。



(神様・・・・・・・・・・私達を離さないで・・・・・・・・・・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

30分くらいたったであろうか・・・・・

日付は変わっていた。

遂に新月の0時まで一日をきってしまった。

もはや、澪には迷いは無かった。
心残りがあるとすれば・・・・・・・・・・・・・・
思い出せなかったこと・・・・・・・・・・・・・・
繭とのかけがえの無い思い出を共有できなかった事・・・・・・・・・・

そこまで考えると澪は頭を振る。

(これで・・・・・・・・私が呪いを解いて、また帰ってくれば・・・・・・・
その時はまた前と同じになっているはず!・・・・・・そうだよね?、姉さん・・・・)


138:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:20:20 Me1BFUVu

布団の中の温もりは心底心地良かった。
澪の固い決心を揺るがす程に・・・・・・・・

澪も深い眠りに落ちていくのに時間はかからなかった・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そのまま朝日が再び顔を出す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

目を閉じていただけだったように、澪は目を覚ますとすぐに脳まで覚醒させる。

時刻はまだ朝の6時半・・・・・・・

音を立てずに横を向くと、眠っている繭の姿を確認する。

「姉さん・・・・・・・」

囁くように澪は呼びかけてみる。

繭から返事は無い。
まだ眠っているようだ・・・・・・・

それを確認すると、澪はそっとベッドを抜け出す。

繭を起こさない様注意を払いながら、少ない持ち物を抱え自分の部屋を出て行く・・・・・・・
細心の注意を払いドアを閉めると、その顔は決意に彩られた表情に変わる。

そのまま、階段を降りようとするがふいに足が止まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

繭が寝ていると思われる自分の部屋のドアを見つめる。

何かを思いついたようにドアの前に立つ澪・・・・・・

「姉さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私ね・・・・・・・今日の夜中に死んじゃうかもしれないんだ・・・・・・・」


139:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:23:20 Me1BFUVu

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「でも、きっと帰ってくる・・・・・・・・・・・・・・・また姉さんと一緒に居たいから・・・・・・
今度会う時は・・・・・・・・・・・・・・姉さんの知ってる澪だよ・・・・・・・
そしたら・・・・・・今度こそずっと一緒だよ・・・・・・・・私達・・・・・・・・」

「ありがとう、姉さん・・・・・・・・・・・
さ、・・・・・・・・さよなら・・・・・・・・・」

言いたくは無かった別れの挨拶・・・・・・
なのになぜか口から出てしまった・・・・・・・・

澪は聞えるはずのない程囁くようにそれらを言うと静かに階段を降りて行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だが、この時澪は知る由も無かった・・・・・

あの悪夢を
絶望の宣告をされたあの夢を
呪いの内容を
あの髑髏はあの時、繭の夢にも現れていたことを・・・・・・・
悪魔は澪と同じく運命の呪縛から逃れた姉も許しはしなかったことを・・・・・・
繭をも絶望の葛藤に追い詰めていたことを・・・・・・・・


昨日ベッドに入ってから繭は一睡もしていなかった。
澪の呼び掛けにも眠ったふりをしてやり過ごしていた。
澪が階段を降りていくのを確認すると繭はパチリと目を開ける。

澪は洗面所で支度を整え、ダイニングに戻るとソファーに座っている人影に飛び上がりそうなほど驚く。

「ね、姉さん!!・・・・」

座ったまま澪の目を真っ直ぐ見つめる繭・・・・・


140:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:24:21 Me1BFUVu

「こんなことだろうと思ってたよ・・・・・・・・・
私が分からないとでも思った?・・・・・・・・・・
生まれた時からずっと一緒に居るのに。」

決して責め立てるような口調ではない・・・・・

「うん・・・・・・・何か・・・・・・・隠し事は出来ない気がしてた・・・・・・
でも・・・・・・・・姉さんにはやっぱり来て欲しくない・・・・・・・・」

澪は呪いの事は繭は知らないと思っている。
が、内容まで知っている繭は当然その申し出を了承するはずが無かった・・・・・

「大丈夫よ・・・・・・・
それに、今度は私が澪を助ける番だよ・・・・・・」

俯きながら繭が小声で言う。

「今度?・・・・・・・」

意味深な言葉に疑問の念を抱く澪。

「ううん・・・・・何でも無い・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

無言で見つめ合う二人・・・・・・・・・・・

「危ない目に合うかもしれないよ?」

「構わないわ・・・・・・・・・・・
記憶の無い澪を一人では行かせられない。」


141:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:29:47 Me1BFUVu

澪が表情を緩める。

「分かった・・・・・・・・・・
ほんとはそう言って貰ってすごく嬉しい・・・・・・」

その言葉に誘われるように繭も表情を緩める。

明かりを点けてはいないが表情は見えずともお互い相手の緊張が解けているのが分かる。

しかし、二人にはもう一つ迷うことがあった。

姉に呪いの内容を告白すべきなのかどうか?・・・・・・・

妹に自分は呪いの内容を知っていることを告白すべきかどうか?・・・・・・

二人とも少しだけ考えると取り敢えずは保留することにした。

姉が呪いを解く術を知れば最悪の結末を迎えてしまうかもしれない・・・・・・
澪にはそれが怖かった。

妹が知れば私を絶対に付き添わせてはくれまい・・・・・・
繭にはそれが怖かった。

何も食べずに行っても結局お腹が空いて食事を取るハメになるので、
二人は食事を簡単に済ますと、残ったご飯を丸めていくつか持って出かける事にした。





10年以上も離れずに一緒に居た報いなのか・・・・・・・
運命は再会を果たした双子を何事も無く再び共に居させる事を許さなかった。
あの日、あの村に関わってから、ピタリと合っていた二人の歯車が大きく狂い始めていた。

二人は先の見えぬ運命に怯えるも未来に淡い期待を抱き、最愛の相手と共に再びその場所へと向かった。


142:名無しさん@ピンキー
06/10/28 01:32:59 Me1BFUVu
前と同じくらいしか書いてない・・・・・orz
読んでくれてる方ほんますいません・・・・・

何でこんなに長くなったんだろう・・・・?
そして、この先はまだ1行も書いてませんw・・・・orz
続きが出来たらまたですノシ

143:名無しさん@ピンキー
06/10/28 13:04:39 jB0E+CMU
>>142
ちょっと長いせいか所々微妙にちぐはぐな流れになってたり、
思い出の場所は澪繭の家からは遠い事等ツッコミどころはあるけど・・・

GJGJTJGJGJ!足の傷を撫ぜる描写、澪繭の特権だな。えろくて大好きだ。
しかも珍しくアクション要素が絡みそうなSSで先が楽しみ。
俺敵には長いもむしろ嬉しいし、wktkしながら続き待ってるノ

144:名無しさん@ピンキー
06/10/30 06:57:23 j8AKo6SS
>>142
続きキテター!GJです!
長いの大歓迎っすよ。是非是非。
私も小ネタを投下させていただきます。

『お姉ちゃん(と紗重)の18番』

夏。いつものごとくおねえちゃんに異変が起こっている。
小刻みに震えてるし、目は虚ろ。ヤク中みたいで怖い。
この季節にはいつもこーなのよねーと、
春の陽気にやられてしまった愉快な人間に対して抱くような感想を一人ごちる。

とりあえず心配しておこう。
「お姉ちゃん、どうしたの!?お姉ちゃん!」
まあ大体わかってるんだけどね。ほら、くるよいつものセリフ。3,2,1,
「マタワタシヲオイテイクノ」
はいきたー。紗重おりてきたー。
「!!!お姉ちゃん!?お姉ちゃん!!?」
いや、ぜんぜん驚いてないんだけどね。いつものことだし。

「澪・・・ずっと一緒だよね(八重・・・ずっと一緒だよね)」
今更そんなに激しく求めなくても毎晩(自主規制
「うん、ずっと一緒だよ。でもね、あの、今は用があるの。ごめんねお姉ちゃん!また後で!」
「澪・・・(八重・・・じゃあ私も一緒に)」
さみしげな目でこちらを見るお姉ちゃん。しかし狂気入った笑顔しててこわい;
そういえば私の中に八重はまだ居るのかな。
もし居るんなら早く出てってほしい。さっさと引越し~。ぱんぱん。

と、お姉ちゃんから例の瘴気が出始めているのが見える。
「・・・澪・・・足が痛いよ・・・おいてかないで(八重・・・ドウシテオイテイッタノ)」
零の刻じゃブースターついてんじゃないかって位の健脚ぶりだった気がするんだけど、気のせい?;

・・・って、いけない。オオツグナイおきそうな位瘴気でまくってるし。とりあえずなだめなきゃ;
「・・・わかったよお姉ちゃん。私だってほんとは一人で用事に行くより、お姉ちゃんと一緒に行きたい」
「本当・・・?(嘘だ!!!!!!!!!)」
こわい。こわすぎるよお姉ちゃん;いや、紗重;
「本当だって!・・・お姉ちゃん、私達の愛の深さを考えてみて・・・二人が離れるなんてありえないと思わない!?☆」
「・・・うぅ・・・澪ぉ!!!大好きぃ!・・・ぐすっ・・・そうだよね!・・・ありないよね!」
「ありえないよ!☆だって・・・」

・・・だってお姉ちゃん・・・・・・ワープしてくるもの;;;;;;;;;;;;

おわり

145:名無しさん@ピンキー
06/10/31 23:23:11 UrX4Mws6
(^ω^;)ウーン

146:名無しさん@ピンキー
06/11/01 02:04:04 sY5YC0nk
続きキテター!

酒入り過ぎて、読めるような状況じゃないから
後でゆっくりと両者とも読ませていただきまする☆


147:名無しさん@ピンキー
06/11/06 22:54:05 ZhqykQp1
待つ身はつらいな

148:名無しさん@ピンキー
06/11/11 23:45:00 R8nppr1X
保守age

149:名無しさん@ピンキー
06/11/13 10:10:36 Bj2KxL0x
続きを・・早くつづきヲク..レ...

150:名無しさん@ピンキー
06/11/16 22:55:23 eCX0viav
期待

151:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:13:45 Ids8Tzx1
>>143
すいません・・・・・としか言い様が無いです・・・・orz
ただ、設定は全く一緒にしようとは思っては無いです。
ってかゲームが今手元に無いので確認したくてもできないです・・・・orz

>>141の続き
 ↓

152:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:15:11 Ids8Tzx1

今にも雨が降り出しそうな空の下を無言のまま目的の場所へ向かい歩き進める二人。
家を出てから数十分は歩いているが、まだ会話は一つも交わされていなかった。

夏の終わりの湿った空気が纏わりつきじっとりと汗が滲み出てくる。



「姉さん・・・・・・・」

蝉の鳴き声に紛れて先に口を開いたのは澪の方であった。

家を出てからの空気を悟っていた故か、話しかけられる事が無いと思っていた繭は
不意の呼びかけに少しだけ過剰に反応してしまう。

「え?何?・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

しかし、澪の口から続く言葉は無く・・・・・

「・・・・・何でも無い・・・・・・」

ボソリと呟くように言うと澪はすぐに視線を前に戻して再び歩き始める。

繭も何も言う事なく横に並んで歩くだけであった・・・・・
何を話しかけて良いのかが分からなかった。

澪に降りかかった現実をもし知っていなければ躊躇する理由は無かったのだろうが、
今日で死ぬかもしれないと自覚しているであろう澪に対して、
かけるべき言葉がすぐに思いつかなかった・・・・・

そんな自分の無力さを切に実感してしまうが、それでも澪の側に居られるだけで嬉しかった。

(・・・・澪を助けられるのは私だけ・・・・・・)

隣を歩く澪に気付かれないように薄い笑みを浮かべる繭・・・・・
自分でも笑いが込み上げる理由ははっきりとは分からなかった・・・・・・


153:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:17:32 Ids8Tzx1

「この道を入ってずっと真っ直ぐ行って登った所だよ。」

繭は整備されていない道の前に立つと前方を指差す。

繭が指差す先には木で覆われた小高い山がある。
木が生い茂り、日の光がほとんど届かないような場所であった。

少しの間足を進めることなく先を見つめ立ち竦む澪。

「なんか怖そうだね・・・・・」

そうは言うものの澪の目には恐怖の色は窺えない。
現在の境遇を思えば・・・・・・・
これから先に自分の身に起きる事を考えれば当たり前の事かもしれないのだが・・・・・

しかし今の澪が気になるのは自分の事では無かった。

体を繭の方に向け真っ直ぐに姉の顔を見据える澪。

「姉さん、ほんとに付いてきてくれるの?
危ない目に合うかもしれないんだよ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その問いに短い溜息を付く繭。

「出かける前にも言ったよ・・・・・
立場が逆だったら澪はどうするの?
私一人で勝手に行かせてくれるの?」

「そ、それは・・・・・・・」

痛いところを突かれて何も言えなくなる澪。

「ね・・・・それはもう良いから・・・・・・
それにね!この際はっきりさせておくけど、
私は澪の姉なのよ!・・・・・・・・・・
それなら可愛い妹を危ない所へ一人でなんて行かせるわけにいかないでしょう!?」

「姉って・・・・・・・・・・・・・・
双子なんだから生きてる時間は変わらないでしょ?」

膨れている繭を少しだけからかう様に澪はそう言い放つ。


154:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:19:20 Ids8Tzx1

「駄目駄目!妹が年上の姉の言う事聞くのは当たり前なんだから、
私が付いて行くって言ったら、もう澪には逆らう権利は無いわ!」

「ふ~ん・・・・・・そういう事言うんだ?」

意地悪そうな顔で繭の顔を覗き込む澪。

「姉さん知ってる?
双子は先に生まれた方が妹になるしきたりも世の中にはあるんだよ。」

「え?・・・・・・・」

「つ~ま~り~、私が姉さんの姉さんかもしれなかったって事。」

「いや・・・それは・・・・でも・・・・・・」

「まゆちゃん、危ないから姉さんが帰るまでお家で大人しくしてなさい!」

いきなり名前で呼ばれ顔を赤らめてしまう繭。

「な、何よ~!
い、今は私が澪の姉なのよ!!それは絶対だから!」

照れ隠しに声を大にして抗議を返す繭。

その対応が可愛くて、澪は口に片手をあてクスクスと笑い出す。

「あはは!はいはい。ごめん姉さん。
でも双子なのに何か不公平じゃない?」

「な。何がよ?・・・・・」

繭は疑心を抱いて澪の言葉を待つ。

「だって、お母さんのお腹に居た時から考えれば生きている時間は一秒たりとも変わらないわけだから、
一日交代で私の方が姉になっても良くないかな?なんて・・・・・・」

「良くないです!!!」

即座に大声で否定する繭。

「いや・・・冗談、冗談」


155:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:20:32 Ids8Tzx1

「もう駄目!私の言う事は絶対聞かなきゃ許さないから!」

「絶対って・・・・う~ん・・・・・でも姉さんが私の事想ってくれてる限りは
全然構わないけど。」

屈託の無い微笑で繭を見つめる澪。

「え?・・・・・・」

そんな澪の表情をまともに見ていると繭はまた赤面してしまう・・・・・

「あ?でも、ご飯毎日作れとか洗い物一人で全部やれ!とかはちょっと・・・・・・」

「わ、私がそんなこと言うわけないでしょ!」

さっきからからかわれっぱなしの繭は即座に切り上げようと会話を強引に断ち切る。

「良かった。今日も帰ったら一緒にご飯作ろうね・・・・・・」

澪のその言葉に繭は言葉なくコクリと頷く。

「姉さん・・・・・私から離れないでね・・・・・・・」

「うん・・・・・」

先程の澪の言葉が繭の頭の中で再生される。
・・・・・・・お腹の中に居た時からずっと一緒・・・・・・

(そう・・・・私たちはずっと一緒・・・・・二人で一つ。
これからも・・・・・ずっと。
絶対に・・・・・)

先程よりも二人の間の距離が縮まる。


馬鹿話をしながら山のふもとへ辿り着く。

顔を見合わせ、何かを確認するように頷いた。
二人は木が生い茂っている空間へと足を踏み入れる・・・・
木々によって太陽の光が遮られた瞬間に妙な違和感を感じる澪・・・・・
日の光だけではなく、何か・・・・・何か空気が変わった・・・・・・


156:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:21:22 Ids8Tzx1

周囲から聞こえる音も先程までのすずめや小鳥の高い鳴き声とは異なり、
梟やらカラスのものと思われる声が支配する。

「涼しいね・・・・・・・」

澪は少し前まで汗をかいていた肌から既にそれが引いている事に気付く。
それは日陰に入ったせいだけでは無かった・・・・・

「うん・・・・・・・・」

繭は知らないうちに澪の手を握っていた。

歩いている地面はなぜか湿り気を帯びている。
ここ最近雨など降っていないはずなのに・・・・・・

空気が肌に纏わり付く・・・・・
木々が微かな風に揺れ不気味な音を奏でる・・・・・

「うぅ・・・・・や、やっぱり姉さんに付いてきて貰って良かった・・・・・
でも、ここほんとに昔良く遊んだ場所なの?」

周囲の雰囲気を肌で感じた澪が不思議に思い尋ねる。

「うん、昔はこんなに木は無かったし、もっと明るくて気持ち良い感じだったんだけど・・・・」

今の感じる風景からは繭の言っている事はとても信じ難い。

「今日は天気もあまり良くな・・・!!!ひゃっ!!!」

会話の途中で突然繭が悲鳴をあげる。

「姉さん!どうしたの!?」

その声に驚いた澪が強張った表情で尋ねる。

「ご、ごめん・・・・水滴が頭に落ちてきただけ・・・・・・
ちょっとびっくりしただけだから・・・・・・」

自分の頭に手をやりながら少し申し訳ない顔をする繭。

「なんだ~・・・・何か居たのかと思ったよ~・・・・・」

ホッと胸を撫で下ろす澪。
しかし、安心したような言動とは裏腹に二人の握り合った手はより一層力を増していた。


157:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:22:41 Ids8Tzx1

二人は注意深く奥へと侵入していく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もうすぐ川があると思うから・・・・・
そこを越えたとこが・・・・・・・」

繭はそこまで言うと言葉を切る。

やがて水の流れる音がどこからとも無く聞こえてくる・・・・・・

前方に聳え立つ大木を通り過ぎ、視界が開けた目の前に繭の言うとおり小さな川があり、
緩やかに水が流れている。

これが子供の頃に遊んだという川であろう・・・・・

「水が綺麗だね・・・・・」

澪の言う通り川の水は澄んでいて、浅い底が余裕で見える程であった。

「昔は二人で中に入って遊んだりもしたからね・・・・・・」


風が音をたてて通り過ぎる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

………………………………………………………………

・・・良く、ここで・・・・だよね・・・・・・・

………………………………………………………………

「え!?」

澪が驚いたように後ろに居た繭の方を振り返る。


158:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:25:08 Ids8Tzx1

「どうしたの?」

不思議そうに尋ねる繭。

(確かに声が聞こえたと思ったんだけど・・・・・)

………………………………………………………………

足、大丈夫?痛くない?・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少しね・・・・・・・でも平気・・・・・・・・

………………………………………………………………

聞こえる・・・・・・・・

少し先にある石の上からだろうか?

人影は全く見当たらないが、女性二人の会話が耳に入ってくる。

幻聴だろうか・・・・・・・

澪は再び繭の方を振り返る。

しかし、繭は相変わらず不思議そうな表情を澪に返してくるだけである・・・・

(私にだけ聞こえてるの・・・・・・)

………………………………………………………………

お姉ちゃん?・・・・・・・・

………………………………………………………………

やがて声は遠くなっていくと、先へと続く道へと消えていったように感じる・・・・・・

(何?・・・・・・・・それに・・・・・・この声は・・・・・・・・・・・)

自分達以外には誰も居るはずはないのに耳に届く声・・・・・
それも聞き覚えのあるその声・・・・・・・・


159:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:26:24 Ids8Tzx1

「澪?・・・・・・・どうしたの?・・・・・・・」

心配そうに繭が顔を覗き込んでくる。
繭の呼びかけに現実に引き戻される澪。

「ごめん・・・・・・大丈夫・・・・・・・先に行こうか・・・・・・・」

返事を返さず足を進める澪を不安に思う繭であったが、黙って付いていくことにする・・・・・

奥へと進むにつれ、周囲は暗さを増していく。
そして、同じ歩幅で澪に合わせて歩いていた繭が足を止めてしまう・・・・・・
すぐにそれに気づいた澪は自分も足を止め振り返る。

「姉さん・・・・・・どうしたの?」

怪訝そうな顔で繭を気遣う。

「この先は・・・・・・澪、やっぱり行かない方が良いかもしれない。」

今更引き返すことなど澪には出来ない。
出来るはずが無い・・・・・・

「姉さん・・・・・・でも・・・・・私は・・・・・・・」

「澪にはほんとに行って欲しくないの・・・・・・・
でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
澪は行くんだよね・・・・・・・・・
だから一緒に・・・・・・私も付いて行くから・・・・・・」

澪は表情を緩めると、優しい顔を浮かべて繭に近づく。
震えるその手をそっと握る。

「うん・・・・・・・行かなきゃならないの・・・・・・
姉さんの事もきっと私が守ってみせる。それに私も・・・・・・
姉さんが付いてるから大丈夫!」

安心させるように最後の言葉を力強く言い放ち、澪はニッコリと微笑んだ。

「うん・・・・・・」

ぎこちないものではあったが繭もその顔に笑顔を作る。

お互いの意思を再確認すると、二人は更に歩を進めて行く。


160:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:27:40 Ids8Tzx1

上り坂を注意深く踏みしめ登っていく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「こんな所に鳥居が・・・・・」

(この先に神社でもあるのだろうか・・・・・・・)

澪は少しだけ繭の方を見ると、目の前に佇む所々黒ずんでいる赤い鳥居をくぐる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザアアアアァ・・・・・・・・

はっきりと感じた。

今まで感じていた肌に微かに纏わり付いていた嫌な空気が急に重たくなったのを・・・・・・
偉く実体感を持った生温い風。

澪は思わず身震いしてしまった。

背後から繭の声が聞こえる。

「やっぱり・・・・・・・まだ・・・・・・・・・」

繭がポツリと漏らす・・・・・・

「え?・・・・・・・・」

澪が聞き返すが繭はまるで言っては無かったかのように反応を示さない。

無言のまま更に奥へと進む姉妹。

やがて小高い丘の上に出る。

そこで澪は信じられないといった表情を浮かべる。

まだ正午になるかならないかくらいの時間のはずなのだが、
空が暗いのだ。


161:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:28:40 Ids8Tzx1

「嘘・・・・・・・・・」

木々で光が完全に遮られていたせいか、澪はいつの間に空が闇に変わったのか
が分からなかった。


………………………………………………………………

地図から・・・た村・・・・・・

………………………………………………………………

(また・・・・・・・・)

澪の耳にまたも誰も居ないはずの場所から声が届く。

「ここは、ずっと前に無くなった村。」

澪に話しかけるわけでもなく繭がポツリと漏らす。

「ね、姉さん・・・・・・・・これは?・・・・・・・
どうして空があんなに暗いの・・・・・?」

繭の背後の方に見える怪しい光を放つ松明の炎がユラユラと揺れている。

「分からない・・・・・・・・けど、この間澪と来た時も・・・・・・・
同じだった。」

繭が言うその以前の記憶が無い澪は不安に駆られ始めた。

(私は・・・・・・ここでいったい・・・・・・・・・)

やはり姉を連れてくるべきではなかったのではないか?
と後悔の念が再び沸き起こってくる。

それ程周囲の光景は異様であり、空間を支配している空気は異質な物に感じられる。

しかし、もうどうしようもない・・・・・・・

ここまで来てしまったからには共に進むしか道はないだろう。


162:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:30:00 Ids8Tzx1

二人は坂を慎重に下っていく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「姉さん、足大丈夫?」

下り坂は足にも相当負担がかかることを知っている澪が怪我を負った繭の足を気遣う。

「うん・・・・・大丈夫・・・・」

ここに来るまで澪は自分の焦る気持ちを抑え、繭のために比較的ゆっくり歩くように配慮していた。

坂を下りると、木造の建物が並んでいる。

「姉さん・・・・どこへ行ったら良いか分かる?
何か手ががりになりそうな場所とか?・・・・」

澪は左手にある家を見つめながら、繭に意見を求める。

「ごめん・・・・・前来たときは色々あって・・・・・どこをどう歩いたのか全然覚えて無いの・・・・
でも、最初はこの家に入って・・・・・その・・・・・・・」

それ以上は言葉が続かない繭。

「分かった。それじゃ取り敢えずここに入ってみよう・・・・・
人は居なさそうだけどね・・・・・」

自分でそう言いつつも廃屋を見ながら引きつった笑みを澪は浮かべる。
中は明かりがありそうな気配も無い。

「ごめんください・・・・・・・・」

一応澪は形式的な挨拶をしてドアを開ける。

中はカビた匂いなのか埃っぽい匂いが鼻につく・・・・・・

澪は持ってきた荷物の中からライトを取り出し室内を一通り照らす。
家の中は予想以上に廃れており、やはり明かりも無く、遠くは良く確認することが出来ない。


163:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:31:22 Ids8Tzx1

「姉さん、離れないでね・・・・」

繭の腕を確認するように一度しっかりと握る澪。
声を出すことなくコクリと頷く繭。

ペンライトの照らす先に向かって二人は足を進める。

「その・・・・・・」

自分のすぐ後ろを歩く繭からの声。

「なに?」

一度足を止め、振り向く澪。

「その・・・・・・ここは、もしかしたらあり得ない物に遭遇するかもしれないの・・・・・」

「え?」

意味深な言葉に目を大きくする澪だが、それ程驚いたわけではない。

先程から何度か耳に入ってきた聞こえるはずのない声・・・・・
それにこの家に入ってから、強烈な視線を先程からずっと感じている。

得体の知れない何かが居ることは間違いないとは澪も確信していた。

「気をつけないとね・・・・・」

そう言って澪は廊下のような所を進んでいく。

風も感じられないのに微かに揺れている暖簾を掻い潜り、奥の部屋の前に立つ。
目の前にある薄汚れた扉。

「ふぅ~・・・・・」

澪は扉に手をかけると重い溜息を一つ吐く。

自分の手を握る繭の手に力が込められていることからも、この扉の向こうには何かが
待ち受けている予感を強く感じる。

「開けるよ。」


164:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:33:31 Ids8Tzx1

返事を待たずに澪は扉を開ける。

開けた途端風を感じたわけではないが、生暖かい何かが自分のすぐ横を通り過ぎていく感覚に襲われた。

慎重に、ゆっくりと部屋の中をライトで照らしつつ足を踏み入れていく。
廊下より静まり返った感じがするのが逆に気味が悪い・・・・・・

下は畳であったが、靴を脱ぐ必要も無いであろう・・・・・
というよりとても脱いで歩く気になれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『・・・・なぜ?・・・・・・』

左手の方から女性の声が聞こえてくる。

また幻聴かと思いそちらにライトを向け澪は驚愕する。

「・・・・・・ひっ!」

ライトの先には薄っすらと髪の長い女性の人影が映っている・・・・・
白い服にスカートのような物を履いているだろうか・・・・・
服の種類までは把握できない。


『・・・・・なぜ?・・・・・・・・なぜ?戻ってきたの?・・・・・・・・』

女性の姿は動くことなく二人に話しかけてくるようだ・・・・・・・

「姉さん・・・・」

繭の方に目をやると、固く目を閉じ震えていた。

『・・・・・・早く・・・・・・・出て行きなさい・・・・・・・・・・・
ここは・・・・・・来てはいけない・・・・・・・・・・・・・・・・・』

敵意のような物は女性からは感じられない。
近づいてくる気配も無い。


165:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:36:20 Ids8Tzx1

澪は少し安心したのか、こちらから話しかけようと試みる。

「何か危険なんでしょうか?・・・・・・」

言ってはみたものの自分の声が相手に通じるのかは分からない。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・危ない・・・・・すぐに逃げなさい・・・・・・・
ここは・・・・・・・もう・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

女の声はどこか苦しそうでくぐもっていて聞き取りにくい。

「もう?・・・・・・」

『すぐそこに!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早く!逃げなさい!!・・・・・・・・・』

突然の危機迫る声。

「え?・・・・」

何かを背後に感じて澪は恐る恐る後ろを振り向く・・・・・・

「!!!」

そこには真っ白な髪を蓄え、身に髑髏のような瘴気を纏った怨霊のような姿があった。

「姉さん!!」

その存在に気付くことなく未だ目を閉じている繭を澪はすぐさま自分の後ろへ強引に引っ張る。

次の瞬間、前方の怨霊は腹の底まで響き渡るような怨めしい声を発しながら襲い掛かってくる。

「くっ・・・・・」

自分の背後に座り込んでしまった繭が居るため澪にはなす術がなかった・・・・・・

突然澪に引き倒された繭には事態が把握できない。

「みお!!・・・・・・・みお~!!!・・・・」

繭の叫びが澪の耳に届く。

(駄目・・・・・・何も見えない・・・・・・・・・・・)

体の力が一気に外へ逃げていくのを感じると、視界すらも塞がれて何も分からなくなる澪。
そのままなす術も無く瞼が閉じられていく・・・・・

(ねえ・・・・・さん・・・・・・・逃げて・・・・・・・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

166:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:38:16 Ids8Tzx1

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(ここは?・・・・・・・・・)

澪はあの日見た悪夢と同じような場所に立っていた・・・・・

(また・・・・・・・あの夢・・・・・・・・)

先日見た悪夢の中に再び迷い込んだのだと澪は認識する。
周囲には何も無く、ただ闇がどこまでも続いているような空間。

『澪・・・・・・・・どうした!?
姉を殺める決心はついたか!?・・・・・ククク』

耳に聞こえてきたのはあの時と同じ声・・・・・
しかし、今度は姿はどこにもなく、周囲の暗闇から聞こえてくるだけである。

「姉さん・・・・・・姉さんをどうしたのよ!!!?」

先程までの事を思い出し、姉の安否が猛烈に気がかりになる。

『安心するが良い、お前が殺せるように無論まだ生きておるわ!』

「ふざけるな!!そんな事私は絶対にしない!!!」

どこに向かって叫べば良いのかは分からないが、あらぬ限りの声を澪は振り絞った。

『は~はっは!!!いつまでそう言っているつもりだ!?
気付いてないかもしれんが、もうそれ程時間は無いぞ!!』

「え?・・・・・・」

『まあ良い!!貴様が悶え死ぬのを見届けるも、
貴様が喜々として姉を殺すでもどちらでも構わんがな!!』

澪は歯が欠けそうな程に体に力が込められ怒りに震える。

しかし、何かを思いついたように力が抜ける。


167:名無しさん@ピンキー
06/11/18 03:39:18 Ids8Tzx1

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「私が・・・・・・私が死ねば、姉さんは助かるの?
姉さんは無事にここから出られるのね!?」

『ほう?・・・・・・最早諦め自ら死を選ぶと言うのか!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ククク・・・・・・さあな?・・・・・・・・・・・
潔く死を迎えられてはつまらんからな!!
せいぜい悩んで絶望を背負って死ぬが良い!!!』

そこまで言うと気配は薄くなりやがてその存在は感じられなくなる・・・・・・

澪は腸が煮えくり返る思いであった。
握った拳は痛いほど爪が食い込んでいる。

(絶対に姉さんには手出しさせない!!)

周りの闇が徐々に白んでいく・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゆっくりと目を開ける・・・・・
木の床が目の前に見える。

すぐに澪は自分がどこかで横たわっている事を認識する。
目の焦点を合わせると体をゆっくりと起こす・・・・・

「生きてる・・・・・・・・・・・・・・」

辺りを見回す。

「姉さん・・・・・・姉さん!!」

自身の安否よりも姉のそれが気になる・・・・・

返事は返ってはこない・・・・・
木製の格子が行く手を塞いでいる。

誰かを閉じ込めるために作られた場所なのだろうか?



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