06/08/05 08:40:08 NzRE1rgO
今度ぽかーんとしたのは友理だった。あんなに急接近したのだから、仁希も少しくらいたじろいでく
れてもいいと思うのだが、お互いの関係はどこまでも色気のない状態で進んでいく。
(まったく……どーしたもんだか……)
毎度のことながら深い深い溜息を吐き、今日の勉強ははかどらないかもしれないと思いながら、友理
は部屋のドアを閉めた。
一方の仁希は自分の部屋に帰ると、友理の部屋から取ってきた問題集を机の上に広げて、格闘していた。
いつもならすらすらと解ける因数分解が、なぜか間違ってばかりでたじたじである。
その理由は、先程の友理の赤面顔が頭の中でちらついて離れないからだ。
薄いピンク色だった顔色がみるみる紅色に染まっていく過程が新鮮で、そしてなぜだか動揺している友
理の様子が恥じらっているようで、仁希にはまるで知らない人のように感じられた。
……こ、これは、どーしたことだ! 昔から知ってる幼馴染の友理を―
一瞬―かわいいと思ってしまった……
怒っている人をかわいいと思うこと自体どうなんだろうと思うし、今までそんなことを思ったこともな
かったのに人間の感情とは摩訶不思議である。
この感情はかわいい動物の赤ちゃんを見ると、ドキドキしてときめく感じと似ていると思った。
それは一体―どーゆーことなのか……
(やべ~自分がわからない……)
仁希は頭を抱えてしまった。
難解な数学の公式よりも難しい。容易く解けないものが人生にはあることを、初めて知った。
勉強も手につかないし、今日はなんだか眠れないかもしれないと思う仁希であった。
《たじろぎの……?》終り
妄想のバビロン第二部はまだまだ続く