07/05/25 10:23:24 mzZO9rft
―蕨さん側の回想―
3年A組の蕨さんは溜め息をついていた。
ど~も最近隣の席の飛島君が変なんだな。
飛島穂高君は大学病院のひとり息子で、天が四物も与えた果報者だ。
とっても頭の出来がよろしいので、教科書なんか流し読みしただけで理解してしまう。
ほとんどまぐれでこの県下でも名高い私立・彰英高校に入ってしまった蕨さんは、
なんで自分が3年までこの学校にいられたのかもよくわからない。
そりゃ、蕨さんなりに、一生懸命勉強しているんだけどさ……。
特に数学に至っては、なんというか……その、努力がなかなか結果に結びつかないんだな~。
そーゆー事ってよくあるよね……?
とっても無残な点数を取ってしまう蕨さんだが、生まれつきマイペースな性格なので、
それまでは何とかけなげに明るく生きてきたわけなんだが。
席替えで飛島君の隣に移ってから、さすがの蕨さんも何度か気持ちをへこまされる羽目になっていた。
飛島君は平然と楽々と満点を取った上、蕨さんの無残な点数を見るや、とても冷たい一瞥を浴びせてくる。
―猿だ! 絶対に私のこと猿だと思ってるよ! この人……。
細かい事でいつまでも落ち込まない蕨さんだが、さすがに猿と見られた時は心穏やかに過ごせない程、
暗~い気分にもなってしまうんだな……。
打ちひしがれた蕨さんはトボトボ学校を後にする。 だけど生来マイペースな性格なので、あまり落ち込みを引きずらない。
「いいんだ。死んだば~ちゃんも言ってたしな。『人は人、自分は自分』
さぁ、幸い今日はプロジ○クトXの放送日だ! N○Kに感謝しながらテレビを見よう! そうしよう!」
そんなこんなで蕨さんは心の均衡を保てているんだが、最近飛島君の様子が今度はおかしいんだ。
最初に『マユが~~』がくれたクッキーを分けてくれた恩もあるし、元々困ってる人をほっとけない蕨さんは、
ついついタイミング悪く飛島君に付き合ってしまう。無論、会話が弾むわけもない。
どうやら飛島君は、親に進路を反対されたり、人格を否定されたりして、人生初めて受ける理不尽さに、戸惑い怒っているらしい。