07/06/17 02:39:55 oH5EQbW3
「いいじゃない、美咲ちゃん。せっかく教えてくれるんだし~」
「そのとーり。男子一人に女の子四人の勉強会ってのは、シナリオ分岐イベントの王道じゃないかね?」
椎名さんの説明に不服そうな円谷さんに、左右から声が掛けられる。
全体的にのんびりとした口調の背が高い女の子のフォローと、それとは対照的に小学生と言われても違和感ない身長の女の子の微妙なフォロー。
なんというか、こういった言い方はなんだが、円さんとは異なりどことなく、お馬鹿な印象を受ける。
特に背のちっちゃい方の子からは、なにやら前述したオタ系の友人と同じ雰囲気が伝わってくる。
そのちっちゃい子の方が、こちらを見てニヘラ、という感じの笑顔を浮かべ
「とは言った物の、すでに彼はマリリンルートに一直線!って感じかなぁ?」
「な、なんで私の名前が出てくるのよ!?」
「声が大きいですわよ!」
注意する円谷さんだが、椎名さんは聞く耳を持たないようだ。
うわ、本当に「ですわよ」なんて語尾を使う人がいるんだ、と感心する僕の目の前で、マリアの追及を背の小さな女の子はのらりくらりとと交わしてゆく。
「んー、けれどねえ。わざわざ別の学年の順位表をすべてチェックするとは、なかなかにあり得ませんよー?」
「だ、そ、それは知り合いだから…」
「知り合いだから、って?下手な言い訳だなー。
ともあれお兄さん。かなり好感度は高いですよ?このまま着実にフラグを立てていけばアイキャッチ画面がマリリン単独の絵になるのは遠くないよー?」
「ア、 アイキャッチって……えっと……」
「ああ、私は長曽我部 一美。らき☆すたのこなたに似てるって言われるおにゃのこです!」
「一美ちゃん、それってどういう意味?」
いや、なんとなく意味はわかる。つまり現状を恋愛シミュレーションに例えるなら、僕が椎名さんとくっつくようなエンディングに向かっている、ということなのだろう。
けれど今一確信が持てず、訊き返す。が、僕の問いに帰ってきたのは一美ちゃんからの返事ではなく、別方向からの追及だった。
「一美……『ちゃん』?」
椎名さんだった。
彼女の眼は少し釣り目勝ちで、ただ見られているだけでも時々睨まれているような錯覚を受けるが、この瞬間、僕は確実に睨まれていた。
「えっと……。な、何か質問?」
「ん?えーあるわよ先生ぇ、質問が。なんで一美だけちゃん付なのか、とか?」
……なぜと言われて、僕は首をひねる。
いや、理由は単純だった。苗字が呼びにくいからだ。長曽我部なんてリアルで見たのは初めてな名前だ。
それに外見的にも小学生な上、全体的に寝起きの子猫のような愛嬌なる造詣の顔をした彼女に『さん』付はイメージに合わない。
深い理由はなかった。
が、それを説明するより早く
「……ロリコン。
美咲、ここ教えて」