【不可抗力】女の子と二人きりになってしまったat EROPARO
【不可抗力】女の子と二人きりになってしまった - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
07/04/17 23:15:37 FbVk4TrZ
>>382がいまだに続きを書かない件

451:名無しさん@ピンキー
07/04/18 21:40:01 HN80RhRP
おいおいいつからこんなに人少なくなったんだ?

452:名無しさん@ピンキー
07/04/18 23:16:28 KGHKV1SN
>>451
だって、ここは「女の子と二人きりになってしまった」スレだから。

453:名無しさん@ピンキー
07/04/19 00:05:46 CkDlZPhI
誰がうまいこと(ry

そうだよな、不可抗力だよな…

454:382
07/04/19 23:27:39 byP7usEM
いや、ごめんな。
一回PC飛んだせいで原稿消えて
書いてるんだけど纏まらなくてな…もう少しまってくれ

455:名無しさん@ピンキー
07/04/20 00:35:05 siGbQbJF
こうして収集のつかない>>382の漂流が始まりましたとさ

456:名無しさん@ピンキー
07/04/20 04:46:13 tNjd7q2X
物語の終盤が近づき、もうすぐ二人っきりの世界になります。
(これがなきゃスレ違いだもんなぁ)

>>382さん
勝手なお願いですが、もう二日だけSSの投下待ってもらえますか?
今週末までにはなんとか・・

457:名無しさん@ピンキー
07/04/20 04:46:57 tNjd7q2X
櫓の上から、憎むべき長野の旗印が観えた。

その敵兵の行軍は、比喩などでは決してなく、地が振るえ唸っている。

武忠は、ちらりと隣にいる主の顔を見やる。

「(怖気づいては・・いないな)」

以前共に戦ったときは、草原の上で暴れまわっていた主君を頼もしく思った。

しかし今回は野戦ではなく、敗色濃厚の籠城戦だ。

武忠の気持ちを知ってか知らずか、月の表情は変わらない。

「(大殿の・・・子か)」

青葉では、慕っていた大殿を救うことができず、途轍もなく口惜しい思いをしたが、

せめて、この忘れ形見だけはもう失いたくない。

心の底から願う。

「(大殿・・・ どうか殿、月様を見守っていて下され )」

458:満月
07/04/20 04:47:41 tNjd7q2X
半里ほど遥か彼方に、敵勢が見下ろせた。

「(ここで少し防衛したら、本丸に戻る。)」

武義に言われた言葉を、心中繰り返す。

「(ん?)」

武忠が、私のことを見た気がした。

「(武義の・・・お父さん) 」

敵陣への視線を動かさずにして、気付かないふりをする。

「そろそろ・・・・・来ますぞ」

ここで初めて、武忠の方に振り向く。

法螺貝の音が遠くから聞こえた。

敵が喚声を上げて、突進してくる。

心臓がどきどきしてきた。

この高鳴りは、どうか高揚感であってほしい。

「来ますぞぉぉ!!!」

私もあわてて弓の準備をする。

「構えてー」

私の声に、櫓の者が弓を構える。

「弓を  構えろぉぉぉ!!!」

五十間先の櫓も弓矢を引きはじめた。

敵が目前に迫ってきた。

459:満月
07/04/20 04:48:45 tNjd7q2X
「戦が・・・始まったか」

「武義殿。この戦、勝てるのでありましょうか?」

「右に同じく、不安でござる」

本丸にて、武義・足軽小隊長・弓小隊長の三人が並んで戦況を眺める。

「大丈夫です。策が成功すれば、敵は必ず壊滅する」

不安がらせないよう、自信たっぷりに答える。

この外山軍の司令部に伝令が報告が来た。

「敵の先鋒は長野軍 ただいま力押しで攻めているところ、若様と武忠様による弓の斉射で防いでおります」

「了解した」

そんな情報など、ここからの眺めだけで一目瞭然だったが、

-若様と武忠様による弓の斉射で防いでおります-

この言葉に、月が乱戦の中で戦っているということを実感する。

「(大丈夫 月様は父上と同じぐらい御強い 私が不安がってどうする?)」

まだまだ戦は始まったばかり。

武義は司令官としての務めを果たさなければならなかった。

460:満月
07/04/20 04:49:32 tNjd7q2X
「撃てぃー!! 撃ちつくせー!! そこぉ!! 門に登らせるなぁ!!」

「あの櫓だ!! 火を放て! すぐだ 今すぐだぁ!!」

「うわあ  燃えてるぞ! その水たるで消火しろ!」

「構わん!! そんな暇あったら、撃てぃ!! ここにある矢、全て使うぞ!!」

「中に! とにかく城内に入れ!! そっちの空堀のほうにも散らばれー!!」

「入れさすなああぁぁ!!!!」

兵力にものを言わせの力攻めでは、激戦を極めることが多い。

「武忠! そろそろ頃合ではないの? 後ろの方だいぶ燃えてる!」

「そうですな あと二十、矢を射たら、退きましょうぞ」

「うん!」

優に百を超える数弓を引き、極度の疲労で腕が痛い。

「(みんなも! 同じなんだから!)」

「殿。しんがりは某が勤めます。炎に囲まれる前に、そこのつるを使ってお逃げくだされ」

「有無を言わさぬって顔だね。うん、分かった」

「新造!小平太! 殿をお連れしろ!」

「「はっ!」」

「武忠!気をつけてね!」

そう言い残し、櫓から降りていく。

「・・・ありがたきお言葉」

矢をもう一束手に取り、月に逃がす時間を作った。

461:満月
07/04/20 04:50:23 tNjd7q2X
「月様。御無事そうで何よりです」

「えへ~  がんばったよ」

武忠の顔を見てにぱっと笑う。

「次はここでたたかうんだよね?」

「はい この場で敵を迎え撃ち、二の丸を敵兵で埋め尽くします」

月は弓から槍へと武具を持ち替える。

休む時間もなく、武忠が長野の兵を引き連れる形で戻ってきた。

「武忠殿!援護するでござる!」

弓小隊長の合図で敵の足を止める。

「父上、大丈夫ですか?」

「わしを誰だと思ってるんじゃい」

そういいながら、柵を乗り越す。

「若様。武忠殿。ここは我々に任せ休息を取ってください」

足軽小隊長が手先を引き連れ、肉弾戦を挑みにいく。

この場には三人が残された。

462:満月
07/04/20 04:51:47 tNjd7q2X
「そろそろ言ってもいいよね 二の丸に何があるの?」

そう月が訊き、武忠もじっと見据えた。

「いくつか落とし穴を仕掛けました、罠にかかり士気を挫かせたところで、こちらから攻撃したいと思います」

武義が答える。

「その策は、成功するのか?」

「・・・父上。私を誰の子と考えておられるのですか?」

してやったり。そう言い返し、月もおかしそうに笑っている。

二の丸が、長野の旗で染まってきた。

「(そろそろ・・・!)」

早すぎても成果が落ちるし、遅すぎても味方の損害が増すだけ。

「軍太鼓を打て!」

ドーン! ドーン!

周りの空気が震える。

「(頼むっ!)」

地中から爆発音がし、ひとつ、またひとつと、大穴が開く。

敵兵は神隠しのように消えていった。

463:満月
07/04/20 04:53:04 tNjd7q2X
「うわあああ!!」

「ここはどこじゃあ!」

「おい!地面が抜けたぞ!」

阿鼻叫喚の図が出来上がった。

落とされたものは呻き声をあげ、残されたものは恐怖で顔が歪む。

味方すら何が起こったのかと一驚している。

「月様!突撃しましょう!」

月もそのさまにびっくりしていたが、

武義の言葉で正気を取り戻し、うなずく。

ここだ。ここが勝機だ。

「武義! 行くよ! 私から離れないでね!」

「はい!」

外山軍の反撃が始まった。

464:満月
07/04/20 04:54:13 tNjd7q2X
「うおおおおおお!!!」

「てやあああああ!!!」

統率の乱れた長野兵は、月・武忠を中心とする軍勢に次々と討たれてゆく。

音のように早く武忠が槍を振りまわせば、月も光のように速く敵を倒してゆく。

武義も敵に一槍浴びせようとするのだが、

前にいる二人の掃拭で無人の野を駆けるに等しい。

しかし、自分の起てた策が成功していくのを、ゆっくりと実感していった。

「(これほど上手くいくとは・・一番驚いているのはもしかしたら私かもしれないな)」

這いつくばってまで逃げようとする敵に対し、こう思った。

「これならいけそうだよ!」

勝利を確信したかのような顔で月が振り向いた。

「二度と、若葉を攻めようと思わせないぐらい、大打撃を与えましょう!」

「いっくよぉー!」

外山軍大優勢の中、二の丸を奪還していった。

465:満月
07/04/20 04:55:46 tNjd7q2X
「うわああ! 逃げろ!」

「とりあえず城から出ろお!」

混乱を極め、長野の兵はほうほうのていで陣まで戻ろうとした。

ところが、そこで見たものは信じられない光景だった。

「志藤だ!志藤の陣まで逃げ込め!」

「そうか ここの軍ならまだ無傷だ」

志藤の兵は鉄砲を構え、敵からの攻勢を防ごうとするように見えた。

ゴオオオン!!

轟音が響き渡る。

あれ?外山はもうすぐ近くまで来ているのか?

ゴオオオン!!

もう一度炸裂する。

友が血しぶきをあげた。

「お、おい 俺らは外山じゃねえよ!! 長野!! 長野!!」

表情一つ変えず、狙いを定めてゆく。

「おい 聴こえているのか! 俺らは長野だ 志藤に味方するものだ!!」

ゴオオオン!!

石につまづいた訳でもないのに、体が前のめりに倒れる。

何も理解することなく、長野の一兵卒は絶命した。

466:名無しさん@ピンキー
07/04/20 11:12:04 TAmZyBPR
wktkwktkwktkwktk

467:名無しさん@ピンキー
07/04/20 16:46:32 at5cDPJI
wktk
いつも早い時間ですが無理せずに頑張ってください

468:満月
07/04/21 23:58:40 NdVOa1E9
さも愉快そうに笑う男がいた。

「まさか外山が長野を討ってくれようとはな」

「はっ、怨敵・長野家もこれで壊滅でありましょう」

「彦根の倅にも驚いたわい。鮮やかな策じゃ」

間も無く、長野家当主の討ち死にの報が入ってきた。

配下と思われる人物も、目を細める。

「外山・長野を屠り、これで念願かなったりですな」

「わっはっは。外山はまだ屠っておらぬ。そちも気が早すぎるな」

もともと志藤は、長野を討ち取る算段だった。

意図せず計画が狂ってしまったが、

元気いっぱいの長野が滅びたことは、好事以外のなにものでもない。

若葉城の罠も外され、後は多勢で攻め入るだけだ。

「彦根親子の処遇はどういたしますか?二人とも近隣に名を馳せておりますが」

「武の武忠、智の武義といわれておったな・・・共に殺してかまわぬ」

「それは何故にでございましょうか?」

「捕らえても、わしの家臣になることは考えられぬ

 知らぬか?別の異名で‘忠義の彦根親子’と呼ばれておるぞ」

その配下は恐縮する。

「そろそろ、動くぞ」

志藤の当主は、采配を振りかざした。

「外山月・彦根親子の首を必ずや獲ってこい」

「はっ、かしこまりました」

469:満月
07/04/21 23:59:37 NdVOa1E9
「これは・・・どういうことなんだ?」

武義はつぶやく。

逃げまどう長野が志藤にやられている。

「(長野も・・・裏切られたのか

 いや、もともとこういう手筈だったかもしれない)」

まさか、このような展開になろうとは。

しかし指揮するものとして、どんな事態であれ次の行動を決めなくてはならない。

「月様!父上!追撃を中止します!」

城外に打って出ているものを、引き上げさせた。

武義の許に、月と武忠がやってくる

「武義、どうするの?」

月が訊いた。

今度は、志藤が攻めてくる。

門が破れ、櫓が燃え落ちたこの場所で戦うのは得策ではない。

かといって、本丸に戻るのも癪だ。

「(くそっ)」

先ほどまで勝ち戦だった。そのはずだった。

「・・・志藤がやってきたぞ」

武忠の言葉に遠くを眺めると、士気の高い軍勢が攻めてくるのが見える。

「武義、どうするの?」

もう一度訊く。先程より心細く聴こえた。

「・・・っ とりあえずここで迎え撃ちましょう」

すでに長くなっている月の影に目を落として、武義は答えた。

470:満月
07/04/22 00:00:54 NdVOa1E9
疲れを知らない志藤軍を相手に、早くも苦戦に陥っていた。

月と武忠の奮戦も、十倍もの違う兵の数に焼け石に水でしかない。

「おぬしの首、もらったああっ!!」

「ぐっ うるさーい!」

華麗に敵槍を捌くが、疲労の色は隠せないでいる。

「月様っっ!」

武義が援護する。

「武義!来ないで、怪我するよ!」

「そんなこと言ってはおれませぬ!」

槍が折れ、二人とも帯の刀に持ち替える。

「武義殿!そなたの首も貰いうける!」

「だめー! 絶対だめー!」

身を挺して、最愛の部下を護る。

「月様。いったんお下がりください。息が乱れております」

「だって、攻めてくるよお」

「でもも、だってもありません。後ろで一休みしてください」

武義は無理にでも主君を後方に下がらせた。

471:満月
07/04/22 00:01:49 KiMrbe6n
陽が沈む。

その夕焼けは、戦場をなお異世界の物へと変えている。

武忠は後ずさりの格好で息子の前まで近寄って訊く。

「武義、第二の策は?」

「・・・・・」

策などないのは分かっていた。

自分自身の決意を固めるために、そう聞いたかもしれない。

「二の次、三の次を考えろと言い聞かせたであろう」

「・・・申し訳・・・ございません」

武義が謝る。

「・・・その言葉は禁句だ。お前が謝っても、戦況は変わらない」

「・・・・・」

「殿に対しても、そう答えるのか? そう答えられ、殿はどのようなお気持ちになる」

「・・・・・」

想像し、胸が痛む。

「考えろ。お前ならばできるはずだ」

「・・・父上?」

「殿を救う方法を考えろといったのだ。そのためにわしは時間を稼ぐ」

「・・・!」

472:満月
07/04/22 00:02:35 KiMrbe6n
事を悟る。

「・・・わしの命は、大殿と共に散るべきだった

 大殿の娘と、武義、お前の成長が見られただけでも、存分に満足じゃ」

「・・・・・」

「ここはもう落ちる。本丸へ戻れ」

「・・なればっ! 父上も一緒に!!」

「この夕陽をわしの墓場と決めた。決めたことは覆さん」

「・・・・・」

「武義、殿を託すぞ」

武忠は、軍を撤退させる最後の合図を送った。

「ほれ、そこでお前を見つめているものがいるぞ」

「・・・・・」

「しっかりな・・・」

戦う相手が居なくなり、

敵兵はその場に残されていた武忠ただ一人に襲い掛かった。

473:満月
07/04/22 00:03:56 NdVOa1E9
本丸に戻る途中、声をかけた。

「武忠は大丈夫なの?」

「父上は・・・すぐに戻ると言っていました」

月も馬鹿ではない。

その言葉の意味を瞬時に理解する。

「そっか・・・」

また沈黙が支配する。

武義は父のこと、戦のこと、そして最悪の事態のとき月を逃がすこと。

いろいろなことを考えていた。

若葉城の周りは断崖絶壁。

猫一匹、逃げ出す場所は無い。

それゆえ、二の丸からしか攻め口の無い敵に、絶妙な罠が仕掛けられたが、

追い詰められると袋のねずみになる。

「(どうすればいいんだ)」

武義は、決して見つからない答えを探していた。

474:満月
07/04/22 00:05:39 NdVOa1E9
「武義……どうするの?」

蚊の鳴くような声で、今日何度目かの質問をする。

「・・・館に籠り、敵を迎え撃ちましょう」

本当は、自分の非を詫び月を抱きしめたかった。

父の声を思い出し、寸前で思いとどめる。

「もう……二十人、三十人しか残っていないよ」

「・・・・・」

かける言葉を捜す。

見つからなかった。

「武義……どうなるの?」

「・・・大丈夫です・・・月様が敵を倒せばいいのではありませんか」

「……そうだよね。私がやっつければいいよね」

悔しい。

配慮に欠けた言葉と、無力な自分にまったく情けなくなってくる。

敵がまたもや喚声を上げてやってくる

再び夢を見ることができたら、この音はとんでもない悪夢になるだろう。

「皆の衆を館へと集めさせます」

月の顔を見ることができなくなり、逃げ出すように集合をかけに行った。

475:満月
07/04/22 00:06:35 KiMrbe6n
武義はわたしの気持ちなんかぜんぜんわかっていないんだろう。

ほんとに何にもわかっていない。

死んだってかまわない。そばにいて欲しいだけなのに。

タッタッタッタ

足音が聞こえる。

こっちに来るのは誰? 武義? 

「若様! 武義様に大広間で戦うようにとの指示を受けました

 冥途の土産に今一度、‘月の舞’を見せてくだされ」

5人の兵士がやってきた。

ふんだ。

命が惜しいんなら、とっとと降参しちゃいなさい。

わっ。もう志藤の連中がやってきた。

武義が言ってた。

わたしがやっつけないと、何にも始まらない。

わたしがやっつけないと、何にも終わらない。

476:満月
07/04/22 00:08:49 KiMrbe6n
とっぷりと日が暮れ、松明もかざしていない。

そんな薄暗がりの中、月は闘っていた。

「ぐはあ!」

爆裂音と共に最後の従者が倒される。

「へっ これで5人目!」

月の周りには誰もいなくなった。

「お、おい。こいつって、やっぱり外山の殿様だべか?」

「紅い甲冑、その幼さ、そしてかわいらしい女の子。間違いなく 外山月 だな」

「ひょっはー! おれらついているなあ。これでたらふく飯がくえるぜえ!」

「待て、こいつ確か、かなりのツワモノじゃねーか?」

「そうだな、噂ではそう聞いている。だが・・・」

銃口を月に向ける。

「この人数なら、さすがに敵わねえだろう」

ある者は槍、ある者は刀を構える。

十数人を指揮し、足軽頭と思われる人物は鉄砲を手に持っていた。

「(ちくしょうっ!)」

怯えと悔しさが混ざり合い、言葉が出てこない。

「はやく首をとっちまおうぜ、大将!」

「首はいつでも取れるからなあ。んん?」

男は卑猥な笑みを浮かべていた。

477:名無しさん@ピンキー
07/04/22 00:40:07 RT2n/3x+
ここで待たされるのか…続きを…早くっ…!

478:名無しさん@ピンキー
07/04/22 00:56:45 KGM2HUEV
wktkがとまらない

479:名無しさん@ピンキー
07/04/22 01:06:34 ktfx85S5
うおお、ここで止まるのか……
生殺しだああああ

480:満月
07/04/22 05:31:34 KiMrbe6n
「まず武器を奪い取れ。そして鎧を脱がせろ」

「「おう」」

大将の意図を汲み取り、男たちはじりじりと詰め寄る。

多勢に無勢。

周りを囲まれ、応戦むなしく月は刀を奪われた。

「それ!組み伏せろ!」

月の倍近くの丈があろう男が、押し花のように圧し掛かる。

「ぐっ くぅ……」

力を振り絞っても、びくとも動かない。

「足を持て! そっちの足もだ!」

何人もの野獣が月に群がる。

部屋の暗さに、自分が何をされているのかわからない。

しかし男達の汗の臭いに、ものすごく嫌悪感を感じたことは理解できた。

「上衣を取れ!袴をひきちぎれ!」

あまりの恐怖に頭が働かなくなってきた。

「(武義…………助けて!!)」

481:満月
07/04/22 05:33:10 KiMrbe6n
戦える者は館へと呼びかけ、怪我している者には投降を勧めた。

敵衆は、既に本丸のあちらこちらに攻め入っている。

全ての目算が狂う。

「もう集める味方すらいない・・・」

ふと、父の声が聞こえてきた。

―武義、殿を託すぞ―

「(父上?)」

周りを見渡す。

当然だが、父の姿など無い。

「託された以上、守らなくてはな」

武義はそうつぶやくと、急に血の気が引いてきた。

ひどい胸騒ぎだった。

482:満月
07/04/22 05:33:56 KiMrbe6n
「(私は 何をしているんだ!)」

走った。

「(月様には私が附いてやらなければ)」

闇の中、月の姿を探す。

館まで戻ると、最早そこは敵の手に落ちていた。

「月様! 月様!」

外山の兵だと気づかれてしまうが、

そう叫ばずにはいられない。

「おーい まだ外山が残っていたぞお!!」

「こっちだあ! こっちだあ!」

館に逃げ込むようにして、振り切る。

「月様ああ!!」

喉が潰れるのも気にせず叫ぶ。

館の中を駆け回る。

「……たけよし……」

「・・・!」

聴きなれた声がする。

大広間の方だ。

武義は突入した。

483:満月
07/04/22 05:36:03 KiMrbe6n
いつもなら月が座る‘当主の座’と呼ばれるところに、男達が集っている。

その固まりの中で、苦しさに悶えながら自分の名を呼んでいた。

「うおおおおお゙お゙お゙お゙お゙!!」

何も考えない。

そこにいる‘モノ’を、切って 伐って 斬った。

「なんじゃあ!てめえ」

「このやろう!これでも喰ら・・うぎゃああ!」

「月様あ!!」

少女の手を取る。

ひどく脱力していた。

「月様! 逃げますよ!」

そう合図をかけると、手に少し力が入ったような気がした。

月を引っ張り、渡り廊下の方へ走る。

「一等首だぞ!その小娘を逃がすなあ!!」

暗闇であり、また館の構造を熟知していた武義は、

奥に、奥にと、逃げ延びることができた。

484:満月
07/04/22 05:36:56 KiMrbe6n
最奥である月の部屋までたどり着いた。

全速力で走ったので、呼吸が荒い。

「月様」

肩で息をしながら月の体を抱擁した。

甲冑は外されており、肌着一枚だった。

「……へへ 助けてくれると思ってた」

武義に抱き返す。

遠方から月を探す怒声が聞こえてきた。

その声量に比例して、抱きしめる力を強くする。

「いつまで、こうしていられるかな」

「・・・何処かに隠れましょうか」

できるだけ時間を引き延ばしたかった。

月が見上げる。

「そだね……私についてきて」

月も同じ気持ちだった。

二人は、敵に発見されないようこっそりと、あるところに向かった。

485:満月
07/04/22 05:38:49 KiMrbe6n
「月様。兵糧庫はすぐ見つかってしまいますよ」

「えへ まかせといて」

月はするすると柱を登り、抜け穴から天井裏へと消えていった。

「ほら 登ってきて」

武義は月と同じように天井裏へと移動する。

「少し、狭いですね」

「ぜいたく言わないの」

月は、逆に狭いことが嬉しそうに言う。

「まさか、このような場所があるなんて知りもしませんでした」

「私も落とし穴があるなんて知らなかったから、これでおあいこだね」

下には大量の食料がある。

この建物なら燃やされることもないだろう。

見つかりにくい上に、その点でも武義は安心する。

「みんな、いなくなっちゃったね」

月は身を寄せながらつぶやいた。

486:名無しさん@ピンキー
07/04/22 09:08:04 RT2n/3x+
つ…ついにふたりっきり…っ!wktkwktk!

487:名無しさん@ピンキー
07/04/22 12:06:55 KGM2HUEV
焦らすなああああああああああああああああああああああああ

488:満月
07/04/22 23:35:18 KiMrbe6n
何人かの駆け足が聞こえてきた。

月を背中から抱きしめながら、小声で確認する。

「月様。お静かに」

「うん」

まもなくして、敵兵が侵入してくる。

「・・・」

「………」

二人とも息を殺す。

「探せえ! 探せえ!」

兵糧庫の中を、隅々まで探索している。

全てをひっくり返した。米俵も麦袋も。

「・・・」

「………」

「どうだ、見つかったか?」

「いや、こっちにはいねえ」

「やっぱり武器庫の方か?」

「そっちはさっき探した。長屋の方に行ってみようぜ」

足音が遠ざかる。

「・・・」

「………」

「・・・」

「えへへ……どきどきした」

武義は何も聞こえなくなってからも

主を膝に乗せたまま、体勢をかえずにいた。

489:満月
07/04/22 23:36:09 KiMrbe6n
あれから時間が経った。

格子窓からは人も見えなくなったし、喧騒も聞こえない。

「(一旦、撤収させたな)」

敵を感じないということは、これほどまでに安心するものなのであろうか。

月の様子を見た。

月は、自分のおなかに巻かれた手をいじくって遊んでいる。

可愛らしいものだ。

心地良い首もとの匂いをかぎながら、武義は語り始めた。

「私の尊敬する人物の話をします」

沈黙が破られ、遊びをやめる。

「月様。楠木正成公をご存知ですか?」

「……えっと 名前なら聞いたことある。どんな人だっけ?」

「・・・今から200年ほど前、室町に政権が誕生する頃のお話しです

 彼は幾多の同士と共に、鎌倉幕府の打倒を狙っていました」

「うん」

490:満月
07/04/22 23:36:58 KiMrbe6n
「正成公はお強いです。城をいくつも落としていきました

 だけど、幕府も黙ってはおりません。

 反乱者として、鎮圧に向かいます。こうして戦況は膠着状態になりました」

「うん」

「数年たち、とうとう幕府側は本気で彼を倒そうとします

 彼の本城である千早の城に百万といわれる大軍勢を派遣します」

「百……万?」

「はい。それに対して正成公の軍は僅か一千

 勝敗の行方は誰の目にも明らかでした」

「………」

「千早城が難攻不落というわけではありません

 この若葉城と同じぐらいでしょうか

 しかし、正成公は数多の戦術を使い

 一ヶ月、二ヶ月、そして三ヶ月と幕府軍を翻弄します」

「………」

491:満月
07/04/22 23:37:54 KiMrbe6n
「この城は落とせぬとして、とうとう幕府軍は撤退しました

 こうして正成公は勝利します」

「………」

「同じ采配を振るう者として、私とはえらく違いますね」

少し自虐じみて言う。

「……そんなことないよ」

武義の温もりを感じながら、月は否定する。

「楠木正成より、ずーっと ずぅーっと立派だよ」

「・・・」

「武義は私のために、いろんな事がんばってくれたし

 うん。楠木正成より立派。私がそう決めたんだから」

「・・・」

「……なに?私の言うことが間違っているというの?」

「・・いえ・・・そうでは、そうではございません」

またさらに強く腕に力を込めた。

492:満月
07/04/22 23:38:47 KiMrbe6n
時間が流れる。

武義はまだ眠っていないようだ。

愛する人に抱きしめられ、火照る体が夜風に冷やされて気持ちいい。

「武義……起きてる?」

「はい」

声が聴きたくて、質問してみた。

「武義……あのね……」

「はい」

「……私、子供が欲しかった」

「・・・」

「私の子供にね、剣の練習させるの」

「・・・」

「そしてうんと強くなって、武義なんか簡単にやっつけちゃうんだから」

「・・そうですね」

「もちろん、政治や文学も学ばせるよ」

「・・・」

「……そのときは、武義が教えてあげてね」

「・・・・はい わかりました」

「あとね……あとね……」

「・・・」

胸が締め付けられ、目頭が熱くなる。

そんな武義は、自分でも信じられない言葉を発した。

493:満月
07/04/22 23:39:36 KiMrbe6n
「子供を・・作りましょうか」

「……え?」

「私と月様で子供を作ろうといったのです」

「……うん」

月が自分に恋焦がれていたことは知っていた。

家臣としての理性が上回り、こちらからの愛情表現はできずに居たが

今となっては、もう関係ない。

「月明かりのあるところへ移りましょう」

格子窓から唯一月光が入る場所へと抱き上げ移動させる。

その場所に小さな体を横たわらせた。丁寧に。

仰向けになった月は窓からの光に目を細める。

昨日より一段と丸い、満月だった。

「きれいなお月様ですね」

「……うん」

「月様もお綺麗ですよ」

「……うん ありがと」

あまりにも可愛らしくなり、胸元にそっと口付けをする。

少女の香りが頭の中を支配した。

494:満月
07/04/22 23:40:31 KiMrbe6n
「とっても良い匂いがします」

「どんな……匂い?」

「女の子の、月様の匂いです。これ以上良い匂いは知りません」

「そ、そう」

はにかみながら微笑んだ。

「床は冷たいですし、下だけ脱がしますね」

簡素な麻の下着を少しずつ脱がす。

「……っ」

恥ずかしさのあまり、股を両手で隠す。

「そこを押さえられては、子供はできませんよ」

「だって、……恥ずかしいよぅ」

膝を立てて抵抗する月に対し、胸元に手を這わせる。

「……ぁあ……」

月の体にちょうど良い大きさの乳房は、とても柔らかだった。

さするたびに、吐息が漏れる。

「……ん……ぁ……」

何回か揉むと、緊張がほぐれたように見えた。

「下のほうにいきますね」

胸への愛撫をやめ、続いて月の両手をゆっくりとどかした。

495:満月
07/04/22 23:41:14 KiMrbe6n
綺麗な割れ目が見えた。

その線に従って、上下に指を動かす。

「ひゃぁ、んぁ、ふぁぁっ!?」

こんな感覚は初めてだった。

そしてなんでここまでの嬌声がでるのかと驚いていた。

「ん、ふぁあ、くぅ、んああ!」

「月様。気持ちいいですか?」

「うぅん、いいぃっ、すごくっ、ああぁ、きもちいっっ!!」

「大好きです。月様」

「うんっ!はぁぅっ、わたしもぉ、だいっ、だいぃっ、だい好き!!」

吐く息も切れ切れになったところで、今度はその秘裂に口をあてがう。

「ぁぁ、そこは、おしっこする所だから、汚いよぅ」

「大丈夫です、汚くないですよ」

先程より、強烈な女の匂いのする場所に舌でつつく。

「んんああぁ!たけよしぃぃ!!たけよしいぃぃっ!!」

月は武義の頭をわしづかみにし、精一杯押さえつける。

「いいぃ、いぃいよおぉ!」

時間はたっぷりある。

永遠と攻め続けていようかと思ったが、

武義は早く月の中に入りたいという欲望に負けた。

496:満月
07/04/22 23:41:59 KiMrbe6n
顔を強引に掴まれていたため、こちらも強引に引き剥がす。

「はっ! あっ! はっ! たけよしぃ?」

「そろそろ、貞操をいただいても、いいですか?」

「うんっ」

確認の言葉を貰うと、武義も下着を脱いだ。

月を想う気持ちが下半身に表れていた。

安心させようと頬に軽く口づけし、月の腰を抱えた。

湿り気を帯びた場所に狙いを定める。

「いきますよ、月様」

「武義、来て」

一気に破ろうとした。

だが、あまりにも狭すぎて前に進めない。

「……くぅぅっ!!」

相当きついのだろう。

閉じた目から、涙が流れていた。

いったん抜こうと考えたが、それは月に気づかれてしまった。

「駄目! 抜いちゃ駄目! 動いてっ!」

「月様・・・」

「これは命令だから。命令だからね」

月は、自分の体に欲情してくれる武義に、気持ちよくなって欲しいと思っていた。

497:満月
07/04/22 23:43:15 KiMrbe6n
「分かりました。動きますね」

理性が全て吹っ飛んだ。

全ての体重を乗せ、前に進んだ。

「んんんっっ!」

何かが破れた感触がした。

一休止もはさまず、今度は腰を引く。

「はぁっ、んんんああ!」

腰を打ちつける。

「うあぁぁっっ!」

腰を引く。

「あああぁっっ!」

何度も何度も何度も、容赦なく律動する。

「はあぁん! ふぁああん! んんんんっっっ! あついいいぃぃっ!

 なんかぁっ、あつくぅぅ、気持ちよくうぅっ、なってきたよおおぉ! 

二人とも全力で腰を振っていたので、限界が、絶頂が近づいてきた。

「気持ちいいぃい!気持ちいいよぉぅぅ!たけよしっ!きてええええ!」

「月様あ! 月ぃ! 月い!」

「ふああっ、んあああっっ、あああああぁぁ!!たけよしぃぃっっ!!たけよしいいいいぃぃぃっっ!!」

月の望んだ子供の素が、胎内に注ぎ込まれる。

「はぁああ、たけよしのがぁ、きている……」

幸せをかみ締めながら、月は意識を失った。

498:名無しさん@ピンキー
07/04/23 00:07:51 4p8guvhh
月タンハァハァハァハァハァハァハァハァ

499:名無しさん@ピンキー
07/04/23 01:17:16 0Rhttl5p
とりあえず上げとく

500:名無しさん@ピンキー
07/04/23 02:12:04 ujpIace7
あ、続きがきてた!まってたようっひょー

501:満月
07/04/23 05:06:17 pxSJEd1X
もうじき夜が明ける。

功をあせる早起きな者も、ちらほらと見えてきた。

昨日は夜遅い事もあって、身を隠すことができたが

今日は無理だろう。

「月様・・・」

やさしい表情で眠っていた。

「・・・」

月は間違いなく死ぬ。

さらし首にされるか、磔にされるか、

もしかしたらまた、散々辱めを受けてから・・かもしれない。

そうなるぐらいだったら、月の体を敵から隠した方が遥かにましだ。

「・・・」

すっと鞘から刀を抜く。

冷たい刃を月の首筋に近づける。

「・・・」

いくつかの選択肢がある。

この兵糧庫に火を放つか、掘った落とし穴の更に深くに埋葬するか、

周りの崖から飛び降りるか・・・

いずれにせよ、月にこれ以上の恐怖は与えたくなかった。

眠っている今なら・・・

502:満月
07/04/23 05:06:56 pxSJEd1X
「・・・」

寝顔を見つめる。

相も変わらず、優しそうな表情だ。

自然と涙がこぼれてきた。

寝顔が霞む。

袖でぬぐった。

寝顔がまたはっきりと見えた。

また・・涙があふれてきた。

「・・・」

悔しい。とんでもなく悔しい。

自分の責任で、月を死なせるのだ。殺すのだ。

溢れ続ける涙をそのままにして刀を構える。

月に教えてもらった上段の構えだ。

月に教えてもらった、いろいろなことを思い出す。

月に教えて差し上げた、いろいろなことを思い出す。

いっしょに領内を視察したときの事を思い出す。

いっしょにご飯を食べたときの事を思い出す。

「月様・・」

心を鬼にする。

握る手に力を込める。

「・・・御免っ!」

503:満月
07/04/23 05:07:33 pxSJEd1X




刀は振り切られなかった。

首寸前のところで、太刀筋は止まっていた。

自分には月を殺せないことを悟った。

「月様・・・」

寝息をしているのが聞こえて安堵した。

目を閉じ、その寝息に耳を澄ませる。

すぅー すぅー と聴こえる

いつまでも、こうしていたかった。

504:満月
07/04/23 05:08:14 pxSJEd1X
朝が来た。

外が騒がしくなる。

「武義・・・どうするの?」

自分で自分に質問する。

やはり、この台詞は月でなければいけない。

言い方を替える。

「武義・・・どうするのだ?」

父に言われた気がした。

「(父上、私はどうすればよろしいのですか?)」

もう、この世にはいないであろう者を頼る。

―考えろ。お前ならばできるはずだ―

父の言葉が浮かんだ。

「(父上! そうは仰いますけど・・!)」

反論してみたが、意味のなさに気づいた。

「(そうです。その通りです。私がなんとかしないと)」

月がごろんと寝返りを打つ音が聞こえた。

「(考えろ。私ならばできるはずだ)」

505:満月
07/04/23 05:08:59 pxSJEd1X
日が高くなる。

月はもう起きていて、武義に抱っこされていた。

昨晩と同じように、またお腹にある武義の手でごそごそと遊んでいる。

会話はなかった。

いつまで、ここにいるつもりなのだろうか。

志藤兵は太陽の恩恵を受け、大捜索を開始している。

武義は決心の息を深く吐いた。

「月様。出陣しますよ」

「………………うん」

武義は甲冑を身に着ける。

月は肌着の上から武義の振袖を羽織った。

大きくてぶかぶかだったが、仕方のないことだった。

「月様。私を信じて突き進んでください。分かりましたね」

「うん、わかったけど……私の得物は?」

「武器など無くて結構です」

506:満月
07/04/23 05:09:36 pxSJEd1X
武義は抜け穴から下を窺い、兵糧庫に誰もいないことを確かめる。

「行きますよ」

ひょいっと下まで降りる。

月もあの夜からだを重ねあった場所を眺めた後、名残を振り切るようにして下に降りた。

兵糧庫の入り口から外を見渡す。

「うわっ こんなにいっぱい居たんだ」

「・・・そのようですね」

全軍が、この本丸に入っているのではないかというぐらい、ひしめき合っていた。

そのうちの一隊が、この兵糧庫目掛けて進んでくる。

「やれやれ、散々探したでしょうに・・」

「武義 くるよ」

天井裏に戻る気はなかった。突き進む。

「月様。走りますよ!」

「分かった。武義!」

507:満月
07/04/23 05:10:09 pxSJEd1X
私たちは敵軍勢の中、一直線に走った。

矢張りというべきか、周りの敵兵全てが追いかけてくる。

「・・・・・・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・!」

何を言っているのか聞こえない。

どうせ聞こえていたとしても、我々には最早関係ないことだ。

「もう少しです!月様!」

「うん!」

崖に向かった。その場に立つと立ち眩みがしてしまいそうなほどの高さがある断崖に向かった。

前から敵兵一人がやってくる。

508:満月
07/04/23 05:11:11 pxSJEd1X
勝てないこともないが、構っていたら後ろに追いつかれる。

「うおおおお!」

残り一本の刀を投げつける。

「ひぃ!」

敵が怯んだ。

その間に、走る。

ひたすら走る。

とうとう崖の淵まで辿り着くことができた。

案の定、立ち眩みがしてきた。

下は森とはいえ、この高さからなら百命に一命も無い。

敵が迫ってくる。

考えている余裕は無い。

月の体を抱く。

そしてそのまま・・・

飛び降りた。

509:満月
07/04/23 06:57:07 pxSJEd1X
「それにしても、月さんの料理はどんどん上手くなるねえ」

「えへー まだまだお袋さんにはかないませんよ」

私は今、宴会の場にいる。

夜桜を楽しもうと、村の仲間たちに誘われたのだ。

「この団子って、月さんが作ったものかい」

「そうですよー おいしいでしょー」

「あっはっは 月さん見ながら、月見団子。風情があるねえ」

「おまえさん!これは花見団子じゃないのかね!?」

私にちょっかいがかかるのを見かねて、お袋さんが怒る。

私は桜を見上げた。

「(あれから、三回桜が咲いたね)」

誰に言うでもなく、胸の中でつぶやいた。

腕に目をやる。あの時ついた傷跡だ。

そこに手のひらを当て、目を閉じる。

「(なんで、私、生きていられたのかな)」

それは、今でも不思議に思うことだ。

510:満月
07/04/23 06:57:47 pxSJEd1X
ウワーン ウワーン

子供の泣き声が聞こえる。

「ははうえ~ だんご落としてしまいました」

そう言って、私に抱き甘えてくる。

「また、作ってあげるからね。男の子は泣いちゃだめ」

この子は、命を賭してまで私を守ってくれた人の忘れ形見だ。

ほら、口元の辺りとか似ているでしょ。

「おーい 月さーん 煮物くれー」

「はーい ただいま」

私が鍋のところまで行くとき、一陣の風が舞った。

雲が吹き飛ばされると、まあるいお月さまが出てきた。

あの時の事は決して良い思い出ではない。

だけど、悪い思い出でもなかった。

大切な思い出だった。

                         ―完―

511:名無しさん@ピンキー
07/04/23 06:59:47 pxSJEd1X
満月
>>395-404
>>407-409
>>416-423
>>438-445
>>457-465
>>468-476
>>480-485
>>488-497
>>501-510

満月(外伝)
>>429-432

長文を読んでくださってありがとうございます。
そしてwktkしてくれた方、執筆する原動力となりました ありが㌧
文章力や作品の良し悪しは置いといて、非常に楽しんで物語を書けましたと思います。
そのせいか、後半になればなるほどテンポ重視で味気ない文章になってしまいましたが
まあそれも「テンポ重視」なんでしゃーないっすね
次、なんか書くとしたら、もうちっと短いSS書きます
あとエロ表現、難いわ。もっと精進せねば。
書いていて思ったんだが文字の変換ミス

○一三郎の死 
×一三郎ノシ

とか一人で爆笑してた

いやあ、書くのって楽しいねえ
またすぐに作品作ると思うんで、そのときはよろしく

ノシ

512:名無しさん@ピンキー
07/04/23 10:20:55 GunHr9os
お疲れ様です
良いもの読ませていただきました




513:名無しさん@ピンキー
07/04/23 15:48:12 4p8guvhh
>>511
(´;ω;`)ウウッ……たけよしぃぃぃぃぃぃぃ!



GJ!!!!!

514:名無しさん@ピンキー
07/04/23 16:45:13 h3jr4Q/k
たけよしぃぃぃぃぃぃぃぃ!
感動ってレベルじゃ・・・・・・ねーぞ・・・・・・
God Job!!!

515:名無しさん@ピンキー
07/04/23 21:15:38 0ukQm2Q4
GJ!乙でした~
たけよし…。・゚・(ノД`)・゚・。ウワアアァァ-ン

気がむいたらいいので次回作wkt-kしてまってます

516:名無しさん@ピンキー
07/04/23 23:38:39 E3SnqXgl
GJ!

517:名無しさん@ピンキー
07/04/24 12:36:17 24quKxt4
たけよしぃ…(´;ω;`)ウッ
GJGJ

518:名無しさん@ピンキー
07/04/24 15:45:38 sVwpMFBq
>>511
たけよしぃぃぃぃぃぃぃお前は真の漢だったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!・゚・(ノД`)・゚・。ウワアアァァ-ン

519:名無しさん@ピンキー
07/04/27 01:31:33 njymcz/s
圧縮回避保守

520:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 00:23:54 6McLzcBh
説明しよう。

ある日、宇宙人が現れたんだ。

その宇宙人が言うには、

全世界中の男30億人、女30億人を、

それぞれ30億ペアで、ある白い個室に24時間監禁するらしい。

その白い部屋は縦、横、高さ、それぞれ10m。

1ペア1部屋。全部で30億部屋。

どうしてこんなことが分かるかって?

それは、全地球人の頭の中にそういう映像が流れたんだから仕方ないじゃないか。

もちろん僕も見た。

本当にびっくりしたよ。

こんなこと前代未聞だもんね。

全世界中のメディアは、こぞってこの問題を取り上げた。

今では、新聞記事の半分・テレビでは一日10時間もの量、この手の話題だ。

決行は、日本時間で今日の夜8:00から明後日の夜8:00まで。

さて、どうなることやら。

521:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 00:25:06 6McLzcBh
世の中にはもちろん変な人もいる。

日本国政府は、各自防衛用の武器を持つことを推奨している。

それはそうだろうな。

どれだけ犯罪を犯しても、捕まえる人がいない。

自分の身の安全は、自分で守らなくてはいけないのだ。

僕の女友達も、この手のことを心配している。

見ず知らずの人に、強姦されるんじゃないかって。

僕は、包丁と電気スタンガンを持つように言った。

それでも彼女は不安らしい。

一緒になるのが僕だったら良いのにねと言ってくれた。

嬉しかったが、そんなのは30億分の1だから期待しない方が良いだろう。

おっと、もうすぐその8時がやってくる。

ペアになるのは誰だろう?

ノルウェーの美少女か、中国の若奥さんか、タンザニアのお婆さんかもしれない。

アメリカの国務長官だったらいやだな。問答無用で撃ってきそうだ。

日本語で意思疎通が図れる相手は、30億分の6000万。

2%か。少ないな。

7時59分になった。

僕は戦う意思はないので、武器は持たないでおく。

僕の家族4人は、だんだん意識が遠のいているようだ。

そして……ぼくも……マドロミノナカニ……

522:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 00:26:12 6McLzcBh
ここは、どこだろう……

そうだ。あれだったな。

宇宙人のヘンタイチックな実験だ。

部屋の白さで気づいた。

僕は、腕時計を見る。

8時……40分。

8時からじゃなかったのかよ。

あ!

そんなことはどうでもいい。

僕のペアは誰なんだ!!

がばっと起き上がった。

「…………!!」

なんか左手の方から声が聞こえた。

左に振り向く。

僕とめいいっぱい離れた場所から、その少女は刃渡り30cmもあるナイフを構えていた。

金髪。蒼い瞳。絹のような白い肌の少女。

10歳ぐらいだろうか?

感じのいい赤と黒とベージュのブラウスを着ている。

523:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 00:26:52 6McLzcBh
「グッドモーニング」

トーイックで400点台の僕は、なけなしの英語を使ってみた。

「…………!!」

あれ?できるだけ笑顔で言ってみたつもりなんだけどなあ。

「ニーハオ。……は違うか。中国系じゃないもんなあ」

少女は変わらず僕を睨みつけてくる。

えーとあと、フランス語話す人も結構いるようだから……

「ボンジュール」

こころなしか、驚いたように見えた。

「……Bonjour Monsieur」

おお! 今なんかボンジュールって聞こえたような気がするぞ!

この娘はフランス人、もしくはフランス語がしゃべれる人だ。

「……Me comprenez-vous?」

む、こんぷれぶー? ごめんフランス語分からないんだ。

「Quel est votre nom?」

「ア、アイキャンノット、アンダースタンド、フランス……語」

フランス語ってなんていうんだっけ。

それでもこちらの意図は気づいてくれたらしい。……なんかがっかりしたような表情をしている。

524:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 00:27:34 6McLzcBh
「キャンユースピーク、イングリッシュ?」

こういう時、ドゥユーのほうが良かったのかな? でもどっちでもいいや。

「……Je ne comprends pas」

ああ、駄目だ。コミュニケーションは無理っぽい。

こんなことだったら、世界十ヶ国語フレーズ集持ってくればよかったなぁ。

テレビでそんなこと言っていたような気がしてきたけど、もう遅いな。

兎にも角にも、その物騒なものはしまって欲しい。

どうしたらいいんだ?

「その、ナイフ、下に、下に、置いて」

身振り手振りで、ナイフを放すように言う。

少女は何も言わずに睨んでくる。

「だから、その、ナイフを、あーもう、置いて欲しいんだってば」

「Eloignez-vous」

「だから、何言っているのか分からないの。そのナイフをしまって欲しいの」

交戦意思を表さないように優しく語りかけながら、少女のもとへ寄る。

「Eloignez-vous!」

「そのナイフ、奪い取っちゃうよ」

「Arretez!!!」

少女の全力での嫌がりように、僕もビビった。

「あーわかったわかった。ナイフは取らない。取らないから大丈夫だよ」

両手を頭の上に上げる(世界共通の?)降伏のポーズをとりながら、僕はあとずさる。

525:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 00:28:46 6McLzcBh
何をやっているんだ僕は。こんな小さな子を怖がらせてどうする。

こうして僕たちは対角線上に向かい合った。

10m四方……ルート2が1.414だから、14mの距離を保っているわけか。

そんなしょうもないことを考えながら時間をつぶした。

暇だな……あぁ腹も減ってきたな。

ポケットの中の携帯食料を探ってみる。

あれ? ねえ。何で無いんだ? あれだけ家族で確認しあったのに。

……。

そっか。24時間は飲まず食わずで過ごせってことね。

ったく。宇宙人の考えることは良く分からん。

ごろんと横になる。

10m上空を見ると……換気扇?みたいなものがあった。

これで空調を整えているわけか。ほんと準備が良いな。

ほかにもなんか無いのかな?

真っ白な部屋をぐるっと眺めてみる。

なんだ……あれ?

なんか輪っかみたいのがある。

咳払いをして、これから動くぞという合図を少女に送ったあと、その輪っかに向かって歩き始めた。

ん、これは。

ドアの取っ手だ。

さっきまで、全然気づかなかったぞ。

向こう側は部屋なのか?

526:名無しさん@ピンキー
07/04/28 00:36:24 sDe+PLue
なんという生殺し

527:名無しさん@ピンキー
07/04/28 00:42:31 YwSFqKub
規制(だったとしたら)用支援

528:名無しさん@ピンキー
07/04/28 00:57:02 6McLzcBh
>>520
ごめんなさい 24時間だから

× 決行は、日本時間で今日の夜8:00から明後日の夜8:00まで。
○ 決行は、日本時間で今日の夜8:00から明日の夜8:00まで。

ですね





529:名無しさん@ピンキー
07/04/28 01:00:37 C/CK22Dp
支援

530:名無しさん@ピンキー
07/04/28 03:32:22 QyY2u/HM
wktk

531:名無しさん@ピンキー
07/04/28 10:52:42 NI70khXw
これは期待

532:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:04:54 6McLzcBh
「うっ!」

ドアを引くと、全面真っ赤な部屋が現れた。

大きさは2mぐらいの立方体。

部屋の高さが低いこともあって、圧迫感を感じるし、

何より、その血を彷彿とさせる赤さが気味悪い。

「ここは……トイレなのか?」

どんな感性を持っているのだろう。

その部屋の中心には、片手いっぱいに広げたほどの穴があり、

すぐ隣にはトイレットペーパーと思わしきものが3つ置いてある。

無論、それらも赤い。

嫌悪感からかドアを閉めようとした時、

ドアのすぐ近くにあるモノが落ちていた。

「りんご……」

トイレに落ちていた2つのりんご。

本物のりんごかどうか確認するために、拾ってみる。

ずっしりと重く、甘酸っぱい香りが漂ってきた。

「…………ハハ」

もう何がなんだかわかんない。

これを二人で分けろってか?

533:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:08:59 6McLzcBh
あとに何にも残されていないか確認した後、ドアを閉めた。

「ヒュイーン」

入るときは気がつかなかったが、面白い音がするもんだな。

ドアを開ける。

「………」

ドアを閉める。

「ヒューイン」

もっかいドアを開ける。

「………」

もっかいドアを閉める。

「ヒュイーン」

―なるほど。

534:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:09:39 6McLzcBh
「ほら。りんごが2つあったよ」

両の手に一つずつ、同じ大きさのりんごを持ってみせる。

「お腹すいているんだったら……食べよっか」

ドアと少女との間は、5,6歩の距離がある。

その距離を詰めることなく、優しく呼びかけた。

「……」

少女は、右手に横たわっていたナイフを思い出したように構える。

うーん。そんなに怖いのかな? 僕。

「おっ。ちょうど良いじゃん。そのナイフで切らせてくれよ」

言葉の意味の1%も伝わると思ってはいないが、

この雰囲気のまま、また沈黙することが嫌だったため会話を続ける。

「そのナイフで、こう、ザックン、ザックンと」

りんごを切る真似をする。

535:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:10:44 6McLzcBh
「……」

表情一つ、動き一つ変えない女の子はひたすら僕を睨む。

伝わっているのか?

ゆっくりと近づいていく。

「……」

しかし少女のほうもまた、ナイフを持ったままゆっくりと壁伝いに逃げていってしまう。

……

まだ避けられてはいるが、先程よりも抵抗が少ないかな。

「りんごをここにおいておくね」

その少女の‘元’いた部屋の角にりんごを2つ置き、僕は反対側の部屋の角へと戻っていく。

自分用を除いた1つだけを置こうかとも考えたが、誠意を見せたくて2つにした。

536:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:19:00 6McLzcBh
何もすることが無くなり、腕時計の針だけが怠慢そうに働く。

仕事や趣味のことを思い返したりもしてみたが、これがなかなか時間の潰しにならない。

本でも持ってくれば良かったな。かなり暇だ。

そういえば、僕の友達は「このリュックサックを背負っていくぜ」とか言っていたな。

そのリュックサックを見てみると、中はお菓子だらけだったが……。不憫な奴め。

まあ僕も人のことは言えんが。

ポケットの中をごそごそと探した。

使い込まれた赤いパスポートと、

公営ギャンブルに行くときによく貰ってくる短い鉛筆が出てきた。

そうだった。日記を書きとめようとして、こんなのも入れたんだったな。

パスポートをメモ帳代わりにするのもどうかとも思うが、僕はそういう人なのだ。

他には……とまた手を突っ込む。

537:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:19:36 6McLzcBh
いろいろと入れたような覚えもあるが、もう、アメのひとつも出てこなかった。

仕方なくパスポートをパラパラとめくってみる。

仕事の関係上、成田と上海の名が刻まれたハンコがいくつもあったが、

余白の部分もだいぶ残されている。

そうだ。

僕はうつ伏せになり、右手に鉛筆を持ち、少女を見つめる。

自称、絵心のある僕は一本一本の線を丁寧に、

且つ、ジャパニーズアニメのようなユーモアも加え、顔を描いてゆく。

その少女は、淡泊な部屋の白さに相反し、昂然と輝きを主張するりんごに目を置いている。

つまりは横を向いている。

フランス少女の横顔もなかなか様になっているじゃない。

紙自体が小さいので、書き上げるのも早かった。

これ見たら、この女の子も喜ぶかな?

黒く染まったパスポートの中身をひらひらとさせつつ、男は少女に(性懲りもなく)近づいていった。

538:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:20:39 6McLzcBh
「どうかな? 上手く書けているでしょう」

「……」

この男に対する身の危険が薄まったのか、相手に気を使うことを覚えたのかはわからない。

ナイフを手に取ること無く、描かれた自分をまじまじと見入った。

「……C'est maladroit」

ひさびさに、およそ5時間ぶりに、少女の可愛らしい声が聞こえてきた。

褒めているのか、貶しているのか、その表情からは判らないが、感想を言ってくれているのだとは思う。

「Un stylo」

と言って、今度は手を差し出してきた。

ん? 握手か?

そーか そーか 親愛なる握手ですな。

僕は小さな手を壊さないように握りしめた。

「Non!」

ちょっと顔を紅潮させ、僕の手を振り解いた。

あれ? スキンシップはまだ早かったかな? でもそれを求めたのはこの女の子だし……

などと思っていたら、なにか、そのパスポートに書く真似をしている。

ああ、そっか。鉛筆を貸して欲しいのかな?

539:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:21:34 6McLzcBh
後ろポケットにしまった、細く短い鉛筆を彼女の手に渡す。

「~♪」

穏やかなメロディの鼻歌を交えながら、少女の描かれたイラストの下に、

できるだけ大きく文字を書き込む。

L I A

女の子らしい工夫を凝らした文字だ。

「Lia」

こう言った少女は、胸を2回ポンポンとたたく。

「リア……ちゃん?」

名前だ。

こうした些細なことでも、初めて会話が成立したと言う事実に、嬉しさがこみ上げる。

「リア」

もう一度、はっきりと口に出す。

少女も同じ思いなんだろう。

目を細めさせ、何度も頷いた。

540:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:22:40 6McLzcBh
「モリ」

僕の名前は鈴木守彦です。とは言わず、

リアと同じく、最大限に簡潔な言葉を選ぶ。

そして胸をポンポンと。

リアも言いたいことは分かってくれたようだ。

「Mori」

顔を覗き込まれ、声が脳内に響く。

うおっ。こ、これ、なんつーんだ? 超っ嬉しいわ。

え? いやオレ、別にロリ属性があるわけじゃねーのに、

なんか、にやけた顔が止まらん。うお、こりゃやべぇ。

声をかけた瞬間、慌ただしく、(一人称まで替えて)、顔を背ける男に、リアはキョトンとなる。

「すー はー すー はー うん大丈夫。大丈夫ですから。ノープロブレムってやつだ」

「Mori?」

「あっ、そういえば、お互いの国の名前も聞いていなかったね」

一呼吸おいて、僕は訊く。

「フランス?」

「……?」

分かんなかったのかな、と同じ発音を繰り返してみた。

「フランス?」

「……?」

541:La-Piece~ラピエス~
07/04/28 22:23:40 6McLzcBh
あれ……分かんないみたいだ。

発音が悪いのかな?

どう伝えようか、思案に耽っていると、パスポートに目が留まった。

そうだフランスの国旗を書いてみよう。

長方形の枠を横に三等分に分け、左と右を薄く塗りつぶす。

うんっ。いい出来だ。……イタリアに見えないこともないが、これは仕方ない。

この絵を見せながら、再度、

「フランス?」

と芸の無い一単語で質問。

「Je suis venu de……France」

僕のハイテンションぶりに動じることなしに、

リアは、問いに答えてくれた。

最後の言葉をとてもわかりやすく。

542:名無しさん@ピンキー
07/04/28 22:59:02 4KFgZrPq
wktkwktk

543:名無しさん@ピンキー
07/04/28 22:59:27 ZXKuZOZA
二人っきりスレに無口スレを併せたかのような話だな。コミュニケーション一つ取るのにこれほど萌えるとは。続き超wktk!

544:名無しさん@ピンキー
07/04/29 00:30:31 NLJq/Tb0
これは萌える。

545:名無しさん@ピンキー
07/04/29 06:28:48 iLiMfgS9
wktk

546:名無しさん@ピンキー
07/04/29 06:34:46 AEVpOm/d
冒頭にちょっと出てきた女友達もこんなやりとりを
してるかと思えばそれはそれで萌える。

547:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:28:46 9n8KVxh9
それから、僕たちは絵を描きあいながら時間を過ごした。

パスポートの残りのページが心許なかったが、リアの軽やかなハミングを聞いているうちに、

お絵かきは単なるきっかけに過ぎないと思い知らされた。

「~♪」

楽しそうだね。それは何の曲だろう。

小学校の音楽の授業で教えてもらったのかな?

よし、僕も何か歌ってやろう。

コホン。ス~、

「ミミファソ ソファミレ ドドレミ ミ~レレ」

ベートーヴェンの第9番、喜びの歌だ。

有名だから知っていると思うが……、

「mi mi fa sol sol fa mi ré do do re mi ré~do do」

僕より美しい音色を操り、リアは満面の笑みで返してくれた。

「~♭」

「~♪」

それからも幾多のクラシックを合唱し、この場は音楽会へと変貌した。

548:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:29:40 9n8KVxh9
まだ手のつけられていないりんごを、男がウサギさんに変えようとした時に、

ソレは起こった。

ここに来て8時間、一日の3分の1が経過した時である。

部屋の上方、換気扇の辺りから、

大きな琥珀色の水晶がいきなり降りてきて、男の腰のところの高さで急停止。

何かのスクリーンのようでもあったし、単に鏡かもしれない。

音も有ったか無かったか、男も少女も分からない。

二人は正常な感覚を忘れつつある。

部屋のど真ん中にある水晶は、

男の胸を目掛け、部屋の白さになお負けじとするほどの、純銀の輝きを放つビームを放ってくる。

563。

ビームの放たれた場所から、10進法の数字が浮かび上がる。

刃渡り30cmのナイフにも、

267、と。

そして、少女にもその輝きはあった。

32。

549:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:31:16 9n8KVxh9
男は、何の数字だろうと考える間もない。

数字をはじき出し、その役割を終えんとした輝きは光を失い、代わりに中央の水晶から変動をもたらす。

光が上空に伸び、円柱のカーテンを作り上げる。

換気扇から、また、ナニカ、現れはじめた。

円盤状の火花を溢れさせながら、行き場の無い烈風が男の身を突き刺す。

何も見えない光の中から、何かを感じさせる闇が舞い降りる。

まさにそれは、堕天使の降臨。

黒豹へと形を変えたソレは、862の数字を顕現させていた。

二人は、それが3者の戦闘力の合計であることも知らずに。

550:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:33:19 9n8KVxh9
「リア!」

呼ぶよりも早く、リアは腕にしがみつく。

「mori」

僕たちを繋ぐ、唯一の意味なす単語が交わされた。

くそっ! なんなんだ。あの動物みたいなものは!

リアと最初に出会ったときとは比べ物にならないぐらいの敵意、いや殺意が全身に突き刺さってくる。

リアもそれを感じ取っているのだろう。

これでもかと言うほど、体が小刻みに震えている。

獣の目が光る。

……もしかすると、僕の方が震えているのかもしれない。

恐怖で頭が混乱してきた。

「mori……」

がぁー。僕なんかに頼るなっちゅーねん。

僕も、ほら、目ん玉と心臓が全速力で飛び出しているぐらい、見たらわかるっしょ。

わ、わっ! そんなにくっつかないでくれよ。 これでも剣道2級なんだZE!

そ、そんなこと考えている場合じゃ……来たあ!!

迫りくるつむじ風と同時に、獣は喉元を一掻きせんと飛び跳ねる。

551:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:34:24 9n8KVxh9
「うおおっ!」

間一髪だ。間一髪、避けきった。

へへ。オレにもこんな動きが……ぬおおおっ!

獣は2撃目、3撃目と繰り広げる。

ちょ、待って。リアが。

リアが引っ付いていて、思うように動きが取れない。

「リア! 逃げるぞ!!」

リアをひょいと胸に抱えると、狭い空間の中、逃げ場を求めた。

あーもう、どこか、どこか!

ドアの取っ手が見えた。

ここに、取り合えず!

んっ、んっ。んんっ! なんだこれ。開かねえ!

チィ、ホント、勘弁してくれよ。

「moriii!!」

叫びが聞こえた刹那、

グルン。

僕の視界が弾む。

何が起きたのか理解する前に、

「ぐッはあ!」

白い壁に叩きつけられていた。

552:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:35:14 9n8KVxh9
……あかんわ。背骨、イッちゃっているかも。

…………

じゃねえー! リア、リアはどこに!

意識が朦朧とするが、血まなこになってリアを探す。

ドアの前では、リアを下ろしていたから、一緒に投げ飛ばされることは無かったはずだ。

だんだんと、目の焦点が合ってくる。

圧倒的な力の差、逃げ惑うリア。

よかった、まだ殺られていない。

僕も立ち上がらなくっちゃ。

「ゴプ。ゴホッ、ゲホッ」

身を起こした途端、鉄の味が口の中に広がってくる。

553:La-Piece~ラピエス~
07/04/29 16:36:33 9n8KVxh9
見ると、まさか、吐血している自身がいた。

「リア……」

リアは、何処かからナイフを拾い上げ、僕の目の前まで駆けて来る。

「mori!」

息を切らしながら、それを僕に握りさせる。

それは、彼女ができる精一杯の役割。

僕ニ、ドウシロト言ウンダ?

「―mori!!」

涙を流しながら、懇願するように叫ぶ。

ウワ……アノ獣、マタボクニ向カッテ、突進シテクルヨ。

仕方ナイナア……

リアは立派に務めを果たした。

ナレバ、僕も!

554:名無しさん@ピンキー
07/04/29 17:30:10 HOKEjChI
急展開ktkr

555:名無しさん@ピンキー
07/04/29 18:37:22 NLJq/Tb0
ちょwww一体何が起こってるんだ!?

556:名無しさん@ピンキー
07/04/29 18:51:18 NEqDs8h6
久々にきたらわずかに活気付いてるな
>>382は未だに書かないのか・・・

557:名無しさん@ピンキー
07/04/29 21:10:33 iLiMfgS9
w-k-t-k

558:名無しさん@ピンキー
07/04/29 23:23:34 AHBWdy6H
wktkwktk

559:名無しさん@ピンキー
07/04/30 03:02:50 tNalR/f+
wktk!

560:名無しさん@ピンキー
07/04/30 03:04:31 5xCC8ATJ
さて、wktkが止まらなくてスレ更新しながらもう3時になってしまった訳だが…
このリビドーはどうすればいいんだろうか

561:名無しさん@ピンキー
07/04/30 04:11:52 GuwbHU4O
wktk

562:名無しさん@ピンキー
07/04/30 12:53:21 F1Uv/puN
wktk

563:名無しさん@ピンキー
07/04/30 14:48:41 NlPb4qxb
まさかこのまま続きが投下されないなんてことは無いよね…?

ワッフルワッフル!

564:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:06:21 4Tx8id7x
ナイフの刃を‘切り裂く’動作を意味する親指側ではなく、

‘叩き壊す’動作を意味する小指側に構える。

こちらの本気が伝わったのか、漆黒の獣は間合いを測る。

リアはできるだけ遠くまで離れ、固唾を呑んでいる。

リア……

もし僕がやられたら、リアの身に危険が及ぶことなど、容易に想像つく。

なにがなんでも、というレベルではない。

全てを賭けて、この獣を倒さねばならないのだ。

眉間、喉、そのどちらかにこいつを入れる。

ただ、それだけのこと。

勝負一瞬。

先に動いたのは、驚いたことに自分からだった。

「ふおおおおッ!!」

重心を低くし、襲い掛かる。

対する獣は、体重で押し潰さんと、フォークボールのように急角度で降ってくる。

「―――ィィィィィィ!!」

565:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:07:19 4Tx8id7x
「ハァ……ッ、ハァ……ッ」

死合はあっけなかった。

僕のナイフは確実に獣の喉元を捕らえている。

この獣自体、得体の知れないものだが、これ以上ダメージを与える方法など僕は知らない。

言わば、自画自賛の出来だった。

一方、僕の方は……

――無傷。

いや、かすり傷の一つはあるかもしれないが、僕の完全勝利だ。

上手くは説明できないが、敵の攻撃の瞬間、身を引いたのが勝因だっただろう。

運が良かったか、敵の体重がそのままナイフにベクトルを……もういい、あまり説明したくない。

勝ったんだから良いじゃないか。

獣はゆっくりと光を帯び始め、無数の蛍となって消えていった。

息を整える暇もなく、歓喜の声が、僕を祝福してくれた。

「Mori~」

とてとてと走ってきたと思ったら、その速度を落とすことなく力いっぱい抱きついてきた。

リアの腕には、引っかき傷がいくつか見受けられた。

「リア……」

そう一言言うと、僕はリアの頭に手を回した。

566:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:08:12 4Tx8id7x
「ヒュイーン」

ドアの閉じてゆく音が聞こえた。

……そっか。あれから疲れて眠ってしまったんだ。

としたら、さっきのはリアかな?

……

そういや、りんご結局食べられなかったから、リアおなか空いてるだろう。

ぐぅ~。

僕もおなかが空いていた。

……

ん? 柑橘系の酸っぱい匂いがするぞ。

何か、来る。

「ぐふっ」

腹が圧迫され、

「もごっ」

スッパーイ。なんじゃこりゃ。

強烈な酸味にびっくりし、僕は目を開けた。

リアがおなかの上に乗っかって、何かを僕の口に押しこんでいるのが見える。

この苦味が残る後味。さてはグレープフルーツだな。

……っていうか、どこにあったんだ、そんなの?

567:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:08:58 4Tx8id7x
手をベタベタにさせながら、

リアは、黄色いソフトボールから果肉をえぐり取っていく。

そして、また僕の口元に……

「わあ。一人で食べられるから、いいよ。」

‘お手’をする格好で手のひらを差し出してみたものの、そんなことはと眼中におかず、ねじり入れる。

ゆ、指まで入っているじゃないか!?

「~♪」

あ~あ、鼻歌まで唄い出しちゃったよ。

……

仕方ないので、このお姫様の気の済むまで放っておくことにした。

モグモグ。

二人でグレープフルーツ1個分食べ終わると、リアはもう1個と手を伸ばす。

2個あるらしい。

あ、そういえば。

「これどこにあったの?」

僕はグレープフルーツを指差し、疑問の表情をする。

「Ici」

なんやら、よーわからんつぶやきの後、リアはドアのほうを指差した。

……会話、出来ているのか?

おなかの上にいるリアをゆっくりと降ろして、ドアへと向かった。

568:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:10:08 4Tx8id7x
戦いの時みたいに、鍵は掛かっていなかった。

「………」

無音の開く音。

部屋の狭い空間を見つめる。

……はぁ

予感が当たっていた。今度は全面黄色の世界。

塗装工の人が来て、ペンキの塗り替えをしたんだな、きっと。

もう、深く考えることは止めにして、そう結論付ける。

今、何時ぐらいなんだろう?

腕の時計を見ると、11時過ぎを指している。

獣との戦いが午前の方の4時だったから……それなりに眠れたことになるのかな?

はて? リアも眠ったんだろうか。

質問してみようかと思ったが、

その大きな目の下に隈を作ることなく、ほくほく顔でグレープフルーツを食べていた為、どうやら杞憂らしい。

569:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:11:08 4Tx8id7x
元いた場所に寝転びなおし、さっきの獣についていろいろと考えてみた。

やっぱり、あれは運が良かっただけだよなあ。

対峙しあった時、明らかに僕より力が上であることを感じた。

あの一戦を想像してみても、再度同じように勝てる自信は欠片ほどもない。

ちょうど4時だったよな。

昨日の夜8時にここに来たことになっているから、ピッタシ8時間経過したことになるのか。

ん? 1日の3分の1。

なんかイヤ~な予感がしてきた。

次の8時間後は……

もう一度、腕時計を見る。

11時30分。

顔面からサァーっと血の気が失われていった。

570:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:12:52 4Tx8id7x
「リア!」

僕の推測をリアに伝えることにした。

不安を共有したいという訳ではなく、備えのための最善な行動をしただけに過ぎない。

リアの前でパスポートを広げ、数直線を使って解説する。

丁寧に、分かり易く状況を示すと、リアも段々と真剣な顔つきに変わってゆく。

判ってくれたようだ。

次は、今からどうすべきかを考えなくてはいけない。

……

さっきはドアが開けられなかった。

戦闘中は鍵がかけられるのだろう。

そう考えると、今のうちにリアを個室の中に入れるべきか?

……

赤い部屋が黄色くなるぐらいだ。個室で何が起こるかわからない。その方法は却下。

じゃあ、その逆。個室の中に僕。個室の外にリア。

……ありえねえ。ありえなさすぎて、思わず笑っちゃったよ。

ふぅ。離れ離れになるのは論外。

じゃあ、二人とも個室の中へ……

未知と言うのは怖いもんだな。

この大きな白い部屋も危険だと思うが、どうなるか分からないという不安の方が嫌だった。

571:La-Piece~ラピエス~
07/05/01 05:14:32 4Tx8id7x
長々と考えたが、先の読めない以上、やっぱり待ち受けるしか術が無いっぽい。

わ。もうすぐ時間だ。

僕はナイフの握りを確かめる。

リアは……

あーあ、抱きつかないでくれよと説明したのに、思いっきり腰に抱きついちゃっているよ。

放せ。とは言わない。言えなかった。

リアの温もりのおかげで、僕も心のぎりぎりを保っているからだ。

「……」

「……」

…………

短針に長針が重なった。

572:名無しさん@ピンキー
07/05/01 11:10:21 2m1xc/Cu
これはなんという緊迫感と生殺し

573:名無しさん@ピンキー
07/05/01 14:04:45 pJyEFS1h
続きがきてる~
w-k-t-k-

574:名無しさん@ピンキー
07/05/01 16:10:34 zf8wwIub
wktkってレベルじゃねーぞ

575:名無しさん@ピンキー
07/05/01 17:22:10 9aAWc2Jc
リアはあはあリアはあはあ

576:名無しさん@ピンキー
07/05/01 17:22:53 9aAWc2Jc
あ!ごめ…あげちゃった死のう

577:名無しさん@ピンキー
07/05/01 19:47:04 tI+kBp72
wktk

578:名無しさん@ピンキー
07/05/02 00:49:32 +JBHR99t
これは素晴らしい

579:名無しさん@ピンキー
07/05/02 04:42:20 XdSsBxnl
違ってたらごめんだけど、前に孕ませスレで書いてなかった?

580:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:49:42 W1Fubwz8
男の憶測は当たっていた。

またもや、水晶が何も無い空間から光を集め合成されてゆく。

加速度による物理法則を無視して、急降下、急停止。

しかし、ここからは違う。

焼太刀のような赤みがかったビームを、男と少女の両名に。

男、473。

少女、180。

二人にとっては、何も意味を持たない数字。

解析を完了した水晶は、ビームを止める。

続いて、やはり、日の出の光が溢れると、

653が、ふっと現れ3秒間。

それも消えると、時同じくして全てが消えた。

音も光も風も無く、全てを消した。

白い部屋は、つい先程の平穏を取り戻した。1つの変化を取り除いて。

男は眺める。

少女は眺める。

今回は頭を使うことになるであろう。

581:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:50:33 W1Fubwz8
一滴、また一滴と、換気扇から水が漏れている。

僕とリアは水滴の垂れている場所に恐る恐る近づいていった。

「なにかの、液体?」

毒なのかな? 劇薬なのかな?

僕の予想は裏切られる。

水滴の落下地点まで、あと2歩というところで、水の勢いが変わってゆく。

点であった液体は、やがて線へと形状を変え、みるみるうちに太く、煩く。

たちまち水たまりは作られ、その円は瞬く間に僕たちを飲み込んだ。

「hya」

水の温度にリアは声を上げた。

僕も靴を履いていないため、温度を直に吸収する。

多少は冷たいが、冷蔵庫の麦茶ほどではない。

水が踝(くるぶし)ほどまで来たところで、予想が確信へと変わっていった。

582:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:51:15 W1Fubwz8
―これは水攻め!?

何が楽しいのであろうか。宇宙人。

今月の給料分くれてやるから、ご容赦いただきたい。

しかし、そういった僕の願いは届かない。

……何か逆に、水の勢いが増しているように感じるんですけど、気のせいでしょうか。

「はあぁ」

落胆と緊張の交じり合った溜息を吐く。

わかりましたよ宇宙人さん。この状況下で生き抜けって事ですね。そうですか。ああそうですか。

悪態をつけながら、もう1回、同じような溜息を吐いた。

だが意味合いは違う。心のスイッチを本気モードにさせたのだ。

リアの目線に合わせるように膝を曲げ、にっこりと微笑む。

「がんばろうな、リア」

目に涙を浮かべながらも、負けじと微笑み返してくれた。

583:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:52:09 W1Fubwz8
考えろぉ。考えろお。

水は僕の首元まで来ていると言うのに、一向に打開策は浮かばない。

パスポートと鉛筆はポケットの奥深くにしまう。

グレープフルーツの皮とりんごの芯も、同じく押し込んだ。

何の役に立つか分からない。

無駄とわかりつつも、この部屋にある物全てを身につける

ドアも幾度となく叩いた。蹴った。押した。引いた。ナイフで突き刺そうとした。こじ開けようとした。

びくとも動かなかった。

これ以上、どうしろと。

リアは僕の首に手を回し、抱っこの形で水を防いでいる。

すでに足は地面に届いていないので、疲労の色を浮かべていた。

「Mori……」

言葉の壁など、最早存在しない。

何を言いたいのか、手に取るように分かる。

「大丈夫だよ、リア。何も心配することはないよ。もうちょっとだけ頑張ろうね」

温かい言葉と一緒に、細い髪の毛1本1本を労わるように撫でる。

584:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:53:08 W1Fubwz8
髪の手触りを確かめているうちに、いよいよ僕の方もヤバくなってきた。

換気扇の滝からは、波のうねりも激しくする。

とーん、とーん、と空気の確保をするために、水の中軽くジャンプ。

……気分わりい。それになんか余計に疲れるような気がする。

左手でリアのお尻をしっかり支え、右手で背中から強く抱くと、立ち泳ぎに切り替えた。

お、重い。波で体が安定しないし、長くは持たないかも……

……

……あぁ、駄目だ。こりゃキツイ。悪いけどリアにも泳いでもらおう。

体力消耗が激しいと感じた僕は、問いかけた。

「リア……泳いで、くれるか?」

そう言い、リアを放そうとするが、

「Je, je ne peux pas nager!」

甲高い声を上げ、足を絡めてしまう。

うおっ。ちょっと、泳ぎにくい! 

放そうとすればするほど、足に力を入れてくる。

「リア! 落ち着いて! リア!」

「Mori! Mori!」

「わ、わかったわかった。あばれないでくれ」

再び強く抱きかかえるまで、リアの慌てようは止まらなかった。

585:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:54:02 W1Fubwz8
立ち泳ぎを始めてから、2時間は経っただろうか。

ひとひねりの策も出せないまま、とうとう天井に手が届く所まで来てしまった。

掴まれるところなど無いので、リアを支えたままずっとバタ足している。

足が動いているかどうかなんて感覚は、もう麻痺していて分からない。体力の限界。

とっくの昔に、ズボンは脱ぎ捨て、身に着けているものはトランクスとティーシャツだけ。

リアにも、ブラウスを脱がさせた。

スカートとキャミは、さすがに可哀想だったので取らなかったが、

今となっては、痴情とか恥じらいとかは関係ない。それどころではないのだ。

……

換気扇から流れは止まらない。

されど、あの換気扇こそが一縷の望みでもあった。

部屋の隅で耐えていた僕たちは、中央への移動を開始する。

ごぷっ。ぐっ、波が強い。でも……

体を傾けて、ゆっくりと進んでいく。

「App」

リアにも、波が掛かる。

ごめんよ、リア。でももうちょっとで……よっと。

手すりというには小さすぎたが、それでも4本の指を絡ませることはできた。

586:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:54:36 W1Fubwz8
「これで、少しは、楽に、なるか?」

荒い呼吸をしているはずだが、怒涛の水音で聞こえない。

僅かばかりの休息をとった後、換気扇を凝視した。

「これが最後の蜘蛛の糸……」

近くで見てみると、意外に大きい。

1m四方の正方形。

その滝壺からは余すところ無く濁流が降り注ぐ。

……動かすか。

リアを抱えているので、片手しか使うことはできない。

それでも力を振り絞って、上下にと揺らしてみる。

動けえ! 動けえ!

そんな僕の苦労を嘲るように、変化は訪れない。

換気扇を一周してみたものの、事は同じだった。

……駄目なのか。

そうだ。換気扇の真ん中に行ってみよう。何かあるかも。

僕は、リアを換気扇の淵に掴まらせると(もうリアの短い手が楽々届くところまで水位は上昇していた)、

疲れた体に鞭を打ち、飛泉の中へと潜り込んだ。

587:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:55:12 W1Fubwz8
水圧が物凄い。

流れに耐えてジンジンと痺れる指を酷使しながら、換気扇の網目を進んでいく

真ん中まで、辿り着いたか?

よし。この辺一帯を探してみよう。

っしゃああ! 頼む! 何か起これ!

探し、揺らし、探し、揺らす。

何で!? 何でだよお! あああっ!

指が滑ってしまった。

水中奥深くに、沈められてしまう。

くそお! 何やってるんだ!

酸素不足で頭が熱い。

急いで水面まで漕ぎ上がる。

「Mori~!」

顔を出すと、少女の助けを請う声が聞こえる。美しかった長い金髪を振り回しながら。

「リア!」

顔1個分しか残されていない空気を、波と戦いながら呼吸している。

何度も水を飲む姿が映し出される。

水位の上昇は、止まらない。

もう……終わりなのか……

588:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:55:51 W1Fubwz8
頭の中の糸がからまった。

体中の血が全て凍った。

死を感じた。

「mori~」

リアの断末魔を眺める。

金縛りにあったように、体は動かない。

僕は、リアの死を、悠々と、恍惚と、魅入る。

少女が死ぬ。

少女が死『うおおおおおおおおお!!』

生涯随一の雄叫びをあげた。

違う! そうだ! オレ様は‘モリ’だ。 待ってろリア!

空気さえあれば助かるんだ。

再び、換気扇のところまで寄り、リアの体を支える。

空気さえ、あれば……!

僕は助けたい。リアを助けたい。

空気!

何故だ!? 何故、僕は今呼吸ができる!

589:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:56:46 W1Fubwz8
部屋の中にあった空気か?

部屋の中にあった空気を使って、呼吸をしているんだな!

じゃあ、大量にあった空気はどこに行った!?

本当に密閉された空間だったら、空気の行き場は無い!

何処かに、必ず空気口がある!

天井に頭をぶつけるのも構わず、高波に目がさらわれるのも構わず、360度を見渡す。

見つからない。空気を脱出させる場所は見つからない。

無いのだ。何も無いのだ。

見えるのは、蛇口の働きをしている換気扇と、白い壁のみ。

白い壁のみ!

ラストギャンブル!

水に呑み込まれる中、側面に近づき、

壁と口付けを交わした。

590:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:57:38 W1Fubwz8
僕たちは、一言の会話も交わさず仰向けに寝ている。

疲れがようやく収まろうとする時に、今度は右足が激しく痛み出してくる。

10mの落下のときに足を挫いたらしい。

しかしそれは、生きている実感。僕は苦笑いを浮かべる。

顔を斜めに傾けると、胸の上下がおとなしくなったリアと、さらにその向こうに朽ち果てた衣服。

たすかった……

自分にすら聞こえない声で呟くと、非道く感傷的になって、涙が頬を伝う。

助かったんだ。

通気性抜群の壁は唯一片の支障も無く、生命の存続を受け入れてくれた。

リアにも壁にキスさせると、同時に水が消失した。

こうして足が痛んだわけだが、

仮に骨折しても、切り取られていたとしても、今の安堵感は変わらないだろう。

……

気づくと、服や髪が濡れていない。

水と共に消えたのだろう。

服を着るため立ち上がろうとした時、唐突にリアが唄いだした。

「mi mi fa sol sol fa mi re ~♪」

……

よかった、リアも無事なようだ。

……

フランス少女の凱旋歌に、僕も付き合うとしますか。

591:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:58:18 W1Fubwz8
楽しい時間と言うものは、忽ちのうちに消えて無くなる。

青色に変化した部屋からブドウを持ってきて、仲良く分けあった。

パスポートの隅の隅までをも使い、仲良く描きあった。

手遊びや、鬼ごっことかもしてみた。

有限の時間を余すところなく過ごすと、

お別れの時間がやってきた。

592:La-Piece~ラピエス~
07/05/04 02:59:26 W1Fubwz8
7時55分。

もうすぐ、この莫迦げた宇宙人の実験が終わる。

僕たちは並びあって壁にもたれかかり、寂然の時間をつづる。

手ぐしで優しく髪を梳いてやると、リアは体を寄せて囁く。

「J'ai ete ravie de m'entretenir avec vous」

心のこもった言葉。

「僕もリアといて、とても楽しかったよ」

リアの目をまっすぐに見て、微笑みかける。

これからどうなるかなど、見当がつかない。不安も無いわけではない。

ただ、愛しく想うこの空間が、いつまでも続いて欲しかっただけだ。

行きと同じように、ゆっくりしたまどろみが近づいてきた。

まぶたは閉じられる。

五感を失うほんの前、

リアの匂いがふわり漂い、

―chu

何か、頬にふれた。

「Merci」

ありがとう、リア。

                   ― Fin ―

593:名無しさん@ピンキー
07/05/04 03:16:54 W1Fubwz8
La-Piece~ラピエス~ (日本語で「部屋」)
>>520-525
>>532-541
>>547-553
>>564-571
>>580-592

読んでくれ㌧です。
なんだかんだでまた長くなってしまいました。
妄想を言葉で表現するのは難しいですね
もっとボキャブラリーを増やさねばなりません。
あ、ちなみに筆者は仏語全く話せません。
なぜか仏語会話集が家にあったので、それ使わせてもらいました。
あとエチ無しでごめんなさい。だってだって仏少女とハァハァ。いや、だめだろ。たぶん……
それでは良いGWを!

>>579
上の「満月」というやつが初めての作品です
誰かと文体似ていたのかな

594:名無しさん@ピンキー
07/05/04 03:47:23 P5HO7UUx
>593
おつかれさまでした。 エロなしは正直残ね…ゲフンゲフン
ともかく、クライマックスで決意した少年の熱さが気持ちよかったです。

実験を生き延びた二人はこれからどうなるのか
他の人類60億人、30億ペアはどうなったのか
宇宙人の目的とは結局なんなのか

数々の謎が残っているようですが、当面は想像で補うことにいたします。

595:名無しさん@ピンキー
07/05/04 04:19:29 7tTnt6lj
GJです!水攻め怖ぇー

エロなしの方がすっきりしてていい感じに思った。
一期一会的流れはかなり俺好み。リアかわいいよリア

596:名無しさん@ピンキー
07/05/04 04:35:35 YdGMtFa6
とりあえずGJ

>595
リアは俺の隣で寝てるぜ^^

597:名無しさん@ピンキー
07/05/04 05:17:01 uGqjXYze
>>593
GJそして乙
いろいろと謎は残ったわけだけど
自分なら途中でバッドエンドです… orz
他の人がどんなイベントだったとか
どれくらい生き残ったとか気になりますが
貴重なGWを使って投下ありがとうございました

>>594
年齢は23~28くらいだと思う
仕事 公営ギャンブルなどから想像したわけですが

598:名無しさん@ピンキー
07/05/04 05:41:18 OLfcoZY9
>>593
GJ!
ある意味文字通り、仏少女が'`ァ'`ァしながらの濡れ場で一人盛り上がってました
ラストもいい感じで締まってると思います
お疲れ様でした

599:名無しさん@ピンキー
07/05/04 09:50:16 RobD8u+4
>>593
何となく「CUBE」を思い出したよ。
緊張感と萌えを有難う。GJ!

600:名無しさん@ピンキー
07/05/04 11:40:39 SCqcLAUI
おい、エロが無いじゃないか!!!!!








だが、GJ!!

601:名無しさん@ピンキー
07/05/04 20:48:15 5a96ODtm
いちおage

602:名無しさん@ピンキー
07/05/07 15:57:14 rezBWJNj
彼の家族は無事だったのかが気になる。
元に戻ってからの後日談的なものが見たくなる感じ。
思わぬ再会とかあっても萌えるし。

603:名無しさん@ピンキー
07/05/07 21:32:55 vtMWIvRn
伏線
つパスポート

604:名無しさん@ピンキー
07/05/10 23:50:11 rZdOs8Nw
GJ!
エロは無かったけど、濡れ場はあったという罠

605:名無しさん@ピンキー
07/05/11 01:16:41 UukputhT
>>604
貴様それでうまいこと言ったつもりかっ!!!

606:名無しさん@ピンキー
07/05/12 00:43:31 dZaLCFs/
つぎの災害?はなんだろ

607:名無しさん@ピンキー
07/05/12 00:50:24 ruwV9xt6
何がいいと思う?

608:名無しさん@ピンキー
07/05/12 01:06:00 O9vZ+/Ay
脱線事故とか

609:名無しさん@ピンキー
07/05/12 05:35:42 mebkrITT
災害以外でも二人きりネタはできそうだな。

クーデターで政権が変わった王国。旧王家の王女と騎士(あるいは王子と女騎士)
宇宙の果てまで航行中の宇宙船内。 冷凍睡眠から目覚めた少年と少し年上の少女。
町から遠く離れた流刑地、もしくは島流しの孤島で二人きり。

主人公二人以外の世界だけが
二人をおいてけぼりにしている状況というのを考えてみた。

610:名無しさん@ピンキー
07/05/12 07:17:36 92P0n0uA
タイムスリップものってのは?
原始時代や人類が死滅した未来に男女2人だけ
あるいは歴史物で現代人は2人だけ

611:名無しさん@ピンキー
07/05/13 10:57:19 UeT00od1
毎朝駅のホームと電車ひと駅分、いつも二人きりになる、とか。
図書館の司書と、入り浸るようにして本を読んでる利用者の閉館間近、とか。
Hに発展させるのは難易度が高そうだが、心の機微と交流は書き込めそうだ。

612:名無しさん@ピンキー
07/05/15 20:29:35 oxaSQO25
hoshu

613:名無しさん@ピンキー
07/05/15 21:34:25 mcLPIJBj
mori~

GJ過ぎる

614:名無しさん@ピンキー
07/05/15 22:25:12 g1wxtQi5
↑IDがモリに似てるぞ

615:名無しさん@ピンキー
07/05/18 01:44:16 pXGfFKNT
ほしゅ

616:名無しさん@ピンキー
07/05/18 20:44:05 J+rI+1EQ
保守

617:名無しさん@ピンキー
07/05/20 21:03:15 RcBxyhhy
星湯

618:名無しさん@ピンキー
07/05/21 00:02:43 +MTHpHsG
【不可抗力】男の子と二人きりになってしまった

619:名無しさん@ピンキー
07/05/21 18:22:10 KEXco4RN
>>618
それは女の子視点って事だよな・・・

620:名無しさん@ピンキー
07/05/22 12:19:25 WghAiY8o
>>619
い、いやこれはもしや・・・・・・
アッー!

621:名無しさん@ピンキー
07/05/22 17:55:28 VqkKlvDF
>>619の冷静な切り返しに笑ったw

622:名無しさん@ピンキー
07/05/22 20:37:47 +uj25NM8
mori~mori~

623:名無しさん@ピンキー
07/05/22 23:25:55 432hOpCw
こうして雑談していればまた書き手が降臨してくれるかなあ

624:名無しさん@ピンキー
07/05/22 23:42:18 Wq7smpOR
くれるかも

625:名無しさん@ピンキー
07/05/23 06:58:55 j1yl+rL+
>>622
俺を萌えさすな

626:名無しさん@ピンキー
07/05/25 00:59:17 H08xDBtv
age


627:名無しさん@ピンキー
07/05/25 10:38:20 HOJCASfR
>>1の例みたいに危機的状況にある時に二人きり、という縛りはないんだよね?

そうならネタはポロポロと思い付くけど


628:名無しさん@ピンキー
07/05/25 11:29:15 6fS9kS2O
>>>627
なになに?

629:名無しさん@ピンキー
07/05/25 16:08:37 YWttpjPS
wktk

630:名無しさん@ピンキー
07/05/25 16:34:15 qYlE3pn0
>>627
じゃあ書いて!ポロポロ書いて!

631:名無しさん@ピンキー
07/05/25 18:25:20 HOJCASfR
じゃ、やってみるよ
筆遅めなんで気長に待ってて

632:名無しさん@ピンキー
07/05/25 20:25:32 Nqjp6E+9
w-k-tk

633:名無しさん@ピンキー
07/05/26 03:20:22 nTcf+mFi
良スレ wktーk

634:名無しさん@ピンキー
07/05/27 10:41:14 NgPomOb2
そろそろパンツを脱いでもいいですか?

635:名無しさん@ピンキー
07/05/27 11:13:35 k9nbYdbe
>>634
おkww 俺も一緒にwktkするぜww

636:名無しさん@ピンキー
07/05/27 11:29:12 gMmnGbeJ
>>634
脱いでもいいが、ズボンをはいたまま脱げよ。

637:名無しさん@ピンキー
07/05/28 20:08:01 5fXll2kr
>>636
至難

638:名無しさん@ピンキー
07/05/28 22:45:57 Z1xYFbd5
全くだwww

639:名無しさん@ピンキー
07/05/28 22:52:43 7J8D98nx
逆に考えるんだ。
ズボンの上にパンツを履けばいいと考えるんだ

640:名無しさん@ピンキー
07/05/28 22:56:16 A6j9mmOP
あれか。長袖の上に半袖みたいなものだな。


641:名無しさん@ピンキー
07/05/28 23:00:51 VlBFRCW2
それはTシャツでやるがな

642:名無しさん@ピンキー
07/05/29 16:38:58 RsWFd5Kn
なにこのカオスwww

643:名無しさん@ピンキー
07/05/29 23:30:07 /eT6Xak6
神召喚の儀式では?

644:名無しさん@ピンキー
07/05/30 11:14:40 PLgz0HC+
儀式ワロスwww

645:名無しさん@ピンキー
07/05/30 14:54:52 iEhZpiay
なんか今にも、神SSの投下される気配がムンムンと感じる
ティッシュ準備してきます

646:名無しさん@ピンキー
07/05/30 16:01:30 1ziFbaqS
>>639
それだと違和感あるな
どうせ逆ならスパッツの上にパンツはいてみてくれ

647:名無しさん@ピンキー
07/06/01 18:58:35 z3Y9b7HH
ほしゅ

648:名無しさん@ピンキー
07/06/03 19:10:21 rDuV26La
保守
結局神は現れず・・・・・・orz

649: ◆5QXHO4/GJY
07/06/04 09:14:13 PLUl+Lan
いや、儀式自体は成功している・・・・・・・ハズ

650:名無しさん@ピンキー
07/06/04 09:31:45 FS2HHwjk
同じく、ネタ模索中

651:名無しさん@ピンキー
07/06/04 09:40:30 PLUl+Lan
・・・・・・電波受信中。

652:名無しさん@ピンキー
07/06/04 09:50:02 z5xSDpzx
……電波発信中

653:名無しさん@ピンキー
07/06/04 10:08:17 G3R6W/Q4
ピピピピピ

オウトウ セヨ
タダイマ デンパ ハッシンチュウ

オウトウ セヨ
オウトウ セヨ
オウトウ セヨ

...ハァハァ
タダイマ デンパ ハッシンチュウ...
ハァハァ...    ウッ

654:書く人
07/06/04 20:08:26 +UD6aEda
駅前にコンビニすらない。そんな田舎を想像できるだろうか?
僕は想像できる。だっていつもそこから電車に乗っているのだから。
家からバスで20分の無人駅。そのバスは、一日5本。
しかもバスの時間と電車の時間が三十分以上ずれている。
だから、僕は毎日三十分を、ペンキの剥げた待合室の駅で一人で30分の時間を過ごす。
中学に上がり、電車通学になった当初は、その時間が限りなく苦痛だった。だがもう4年近くたった今では、それにも慣れた。幸いなことに読書を覚えたから。
朝夕の駅での30分と、電車に揺られる20分。計二時間近い時間は、趣味の時間となった。
ある意味、ペンキの剥げた待合室は、家にある自分の部屋よりも、落ち着ける場所になっていた。
そんな僕の領域に、この春、侵略者が現れた。

655:書く人
07/06/04 20:18:10 +UD6aEda
侵略者は金髪だった。やや釣り目で、派手な感じの女の子だった。
その彼女が、同じ駅を利用するようになった。
制服は、僕の通う高校の近くにある女子高。お嬢様校、というわけではないが、かわいい制服で有名な学校だ。
その制服を着崩した彼女は、毎朝駅舎で携帯を片手に時間を潰していた。
華やかな――悪く言えば遊んでいる感じの、女の子。
僕は、どうにもその女の子に気おくれを感じていた。
派手目の彼女に対して、僕は地味の極みだ。髪を染めるなど夢のまた夢。
どうもとっつきにくかった。
まれに読んでいる教科書のタイトルからして、どうやら学年自体は一つ下のようだが、それでも今一苦手意識を払しょくできない。
向こうも、どうやらこちらを苦手に―ひょっとしたら嫌悪すらしているのか、話しかけるどころか、目を向けてくることすらない。

656:書く人
07/06/04 20:25:07 +UD6aEda
それでも双方に不幸なことに、駅舎にはあのペンキの剥げたベンチが一つあるだけ。
だから僕と彼女はそのベンチの両端に陣取り、それぞれ互いを見ないように本と携帯を見つめるという、実に胃に悪い30分を朝夕に過ごさなくてはならなかった。
だがそんな日々は、数ヶ月後の夏の日、唐突に終わりを迎えた。

657:名無しさん@ピンキー
07/06/04 20:31:36 VkjZPaU+
w-k-tk

やったよ新作だ!

658:書く人
07/06/04 20:50:59 +UD6aEda
初夏の台風が、僕の住んでいる町―というか村を直撃した。
学校を出た時点でかなりの風と雨があり、時に雷が鳴っていた。それでも公共交通機関は動いていて、電車は定刻道理に動いていた。
それに飛び乗り、僕と、そして彼女は駅に降り立った。
また憂鬱な30分かと、ため息をつきながら僕はベンチの右端に座る。
一方の彼女も濡れた服が不快なのか、わずかに顔をしかめていた。
その顔は、少し青ざめているようにも見える。
寒いのかもしれない。

(放って…おけないよな)

 余計なお節介かもしれない。拒絶されるかもしれないとも思ったが、良識がそれをねじ伏せた。
 仮に余計なお世話で、キモい、ウザいなどと言われたとしても、自分が嫌な思いをするだけだ。
 そう思い、僕はベンチから立ちあがり、駅舎の片隅にある、ほこりをかぶった棚に歩み寄り、そこに置いてあったブリキ缶を手に取る。
 その中身を覗いて、僕は少し安堵する。
 よかった、まだある。
 僕はそのあと、できるだけ人を安心させれるような笑顔を意識しながら、振り返った。

「あの……コーヒー飲む?」
「…はぁ?」

659:書く人
07/06/04 20:59:31 +UD6aEda
失敗だったかな、と僕は思った。
女の子は明らかに不審そうだ。
最近は通り魔的変態犯罪者がぽこぽこ出てくる世の中だ。
僕もその類と思われたのかもしれない。
けれど、彼女が続けた言葉で、勘違いだったと理解する。

「コーヒーっていったって、自販ないじゃん」
「いや、これを使う」

 犯罪者と思われたのではないと安心した僕は、先ほどより少し自然に笑顔を浮かべながら、缶の中身を取り出した。
 それはヤカンとスチールのカップと、そしてキャンプ用のガスコンロに、マッチ。
 僕はそれをベンチに置くと、マッチでコンロに火をつける。

「ちょ、か、勝手に使っていいの!?」
「大丈夫だよ。これ、僕が用意したものだから」

 冬場は近く(といっても歩いて30分)に住んでいるおじいさんが管理していて、ダルマストーブが焚かれている。だが、時にはその火が消えているときもあり、そんな時のために僕は家の倉庫にあったこれを、駅に持ち込んでいたのだ。
 冬場などは、これで入れたコーヒーを片手に、本を読んでいる。

660:書く人
07/06/04 21:05:07 +UD6aEda
 一方の女の子は、目を丸くしていてこちらを見ている。
 僕は火の大きさを調節しながら、

「迷惑…だったかな?」
「別にそんなんじゃないけど……どうして?」

 問い返されて、僕は彼女の顔を見る。前から色白だとは思っていたが、今日のその顔色はいつもよりさらに白く見える。

「どうしてって、寒そうだから」
「寒い?別にあたしは寒くなんてないわよ」
「けど、顔色悪いよ?」
「わ、悪くなんてないわよ!」

 なぜか、本当に脈絡なく、彼女が声のトーンを上げた。
 何か気を悪くしたのかとびっくりしていると、彼女ははっとしたように、再び声のトーンを下げて

「さ、寒くなんてないわ。大体、顔色だって悪くなんて…」

と彼女が言いかけたそのときだった。

661:書く人
07/06/04 21:17:02 +UD6aEda
 爆発音がして地面が揺れた。窓の外が真っ白になり、木製の駅舎の全体が軋んで音をたてた。
 雷が、近くに落ちたのだろう。
 流石に僕もこんなことは初めてで少し驚いたが、その直後、もっと驚くことが起きた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 落雷の直後、彼女は雷に負けないほどの大きな悲鳴をあげて、こっちにタックルしてきた。どうにか踏みとどまった僕の体に、彼女は手をまわして、思い切り抱きしめてくる。

「ヤダヤダヤダヤダ!怖い怖い怖い怖い!」

 抱きついてきた彼女の体は細く、やわらかく、いい匂いがしていたが、そんなことを感じ入っている余裕がないほどに、彼女の細い体はガクガク震え、涙声で叫んでいる。

「だ、大丈夫だから、落ち着いて」
「う、うん。……?きゃぁっ!?」
「うわっ!」

 今度は、彼女は僕を突き飛ばした。
 尻もちを突く僕を彼女は見下ろしながら、自分の体を守るように抱いて、こちらを見下ろしてくる。

「な、何しようとしたのよ!?」
「……何もしてないよ」

 あまりに不条理。僕は流石に怒りを感じて彼女を見返す。
 彼女は色白の肌を、先ほどの血の気のない様子から打って変って血色良くしていた。
 何か言い返してくるかな、と思っていたら

「……ごめん。混乱してた」
「ええっ!?」
「な、何よ!その「ええっ!」って!?」
「素直に謝ってくるとは思ってなくて」
「何よそれ!悪かったと思ったら謝るにきまってるじゃない」

「そだよね。ごめん」

 ふくれっ面をしながら、そっぽを向く彼女に、僕は自分の失礼を謝りながら立ち上がり、転んだ時に取り落としたやかんを拾い…

「……ひょっとして、顔色悪かったのって、雷が怖かったから?」
「そ、そんなわけないじゃない!」

図星だったらしい。

662:書く人
07/06/04 21:22:11 +UD6aEda
 僕は真っ赤になって反論してくる彼女を見て、少し笑った。

「ば、馬鹿にしたわね!」
「違うよ。雷を怖がるなんてかわいいな、って思ったんだ」

 そういう僕の返答に、彼女は顔を少ししかめる。

「何それ、ナンパ?」
「ち、違うよ!」

 今度は僕が赤面させられた。ナンパなど、地味道一直線の僕には縁のない言葉だ。
 そんな僕を、彼女は値踏みするように見てから。

「ま、確かに、そんなことできそうに見えないもんね。子供っぽいし」

 一つとはいえ年下の少女にそんなことを言われると、流石にきつい。
 一方言った方は少し機嫌が良くなったらしく、ベンチに座ってこう続ける。

「ま、とにかく。付き合うわよ?」
「へ?」

 ナンパにってことか?
 そう思った僕の思考を読んだのか、それともただの偶然か、彼女はこう続けた。

663:書く人
07/06/04 21:26:41 +UD6aEda
「コーヒー、淹れてくれるんでしょ?」

 それこそが、僕――喜沢弘文が初めて見た彼女――椎名マリアの笑顔だった。






 反応次第で続きを書くかもしれません。

664:名無しさん@ピンキー
07/06/04 21:30:37 Cux/diuD
儀式は成功してたんだ!
GJ!
続きを下さいオナガイシマス(´・ω・`)

665:名無しさん@ピンキー
07/06/04 21:34:29 j2HhSwt1
続きに蝶期待







次の投下まで待ってるぜ、裸エプロンで

666:名無しさん@ピンキー
07/06/04 21:47:17 8YJ44yS5
ここで終わるだなんて人道に悖ると思うわけですよ

667:名無しさん@ピンキー
07/06/04 21:49:49 VVOqEO/F
GJ!雷怖がる娘カワユス
続き待ってます!

もしかして書く人さんって、結構いろんなスレでSSとか書かれてます?

668:書く人
07/06/04 21:54:22 +UD6aEda
ええ。とはいっても作品数自体すくないですが。最近はボーイッシュスレに生息してました。

669:名無しさん@ピンキー
07/06/04 22:04:31 VkjZPaU+
すみません
支援のつもりがうれしくて入れ忘れてしまいました

w-k-t-k-!

670:名無しさん@ピンキー
07/06/04 22:50:34 jc1u0Z1N
続きに期待
wktk

671:名無しさん@ピンキー
07/06/04 23:32:55 z5xSDpzx
おおぉ!
儀式が成功していたぁ!
もうズボンすら脱いでしまうような超絶ワクテカ帝國でありますよ

672:名無しさん@ピンキー
07/06/05 00:49:10 z1ihtzcs
>>668
ボーイッシュスレの作品も見てますよ!
あれも良い。
何はともあれ続きwktk

673:電波の受信に失敗した651
07/06/05 01:24:53 kzO2NoDL
ちょ、ここってこんなに人いたのかよ!
一気にレス増えててびびったわw

そしてこっちはスランプに突入・・・・・・・・・・(もともと文才そのものがないけど)




ピピピピピ

オウトウ セヨ
ノイズガ ヒドクテ ウマク ジュシンデキナイ

オウトウ セヨ
クリカエス オウトウ セヨ
(↑言い訳)

674:名無しさん@ピンキー
07/06/05 01:39:53 NPSsh0PI
マリアたん萌え

675:名無しさん@ピンキー
07/06/05 03:23:18 4MBua32A
構図としては二人きり(と思っている)の男女を除くHENTAI集団といったところですな、漏れも含めて。

676:名無しさん@ピンキー
07/06/05 21:18:21 EDUmgsga
これは期待せざるをえない
ギャップ萌え

677:名無しさん@ピンキー
07/06/07 02:17:12 LeqMYOw3
夜のプールで二人っきり、というシチュエーションを考えてみたので投下します。エロは無しです。
お気に召さない場合はスルーしてください。

678:名無しさん@ピンキー
07/06/07 02:18:14 LeqMYOw3
俺は悪くねぇ。俺に非はねぇ。
文化祭の演劇に使うオブジェ。教室の半分を占領するそれらを塗装する際にはかなりのペンキが飛び散るだろうと予想し、後片付けの時に一気に洗い流す為にプールの中で塗装を行う。
この案を出したのは我が三年四組のクラス委員長だった。
だが、模試において県一位に君臨する彼にも、予想出来ない事があった。
まず俺が、プールサイドでクラスの女子と口論になった。原因はよく覚えていない。
次にその愚かなる女は、言論を放棄し俺に殴り掛かって来た。
最後、これがトドメになった。
確かに俺も言い過ぎたかと思い、その拳を俺は・・・敢えてだぞ、敢えて。受けてやったんだ。別に避けるのが遅れてクリティカルヒットした訳じゃない。ないったらない。
まあそしたら、だ。吹っ飛んだ俺は後ろに積んであったペンキ缶×10に突っ込み、超至近距離にいたその女もペンキ缶の雪崩に巻き込まれ、気が付いた時には十色のペンキの池の中に二人揃って浮かんでいて、結局俺とその女は放課後、プール掃除に励む事になった。以上。

その日、笹丘高校三年四組坂下喜鈴(さかした きすず)は、放課後真っ直ぐ家に帰らず、学校のプールに向かっていた。


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