07/08/31 12:20:44 kCqaFjcu
真夜中に目覚めることは珍しくない。
徒歩五分の距離に国道があるし、住宅街を爆走するバイクの音も聞き慣れている。寝苦しい夜には小さなきっかけで目が覚めるものだ。
しかし、篤郎は妙な違和感を感じていた。おぼろげな現の中で、起きなければ、と、強く念じたような気がするのだ。
悪い夢でも見たのかもしれない。部屋の中を見回して異常がないことを確認してから、篤郎は布団を深くかぶった。
珍しく静かな夜だった。段々と時計の音が気になってきて、耐えきれずに寝返りを打つ。何度も繰り返すうちに、目の前の壁から声が聞こえてきた。
「……お兄ちゃん」
吐息のような声だったが、確かに。
「……お兄ちゃん、助けて……」
今にも泣き出しそうな妹の声。
篤郎は即座に飛び出して隣の部屋のドアを開けた。
「美緒! どうしたんだっ? 何があった?」
悪夢にさいなまれているのか、人知れず思い悩んでいるのか、まさか暴漢が入り込んだのか。最悪の事態へと加速する篤郎の思考は、ぴたりと静止した。
「美緒……?」
妹は。
パジャマのズボンを投げ出して。なめらかなふとももをむき出しにして。
中心の真っ白な三角形に、華奢な指をくいこませたまま。
「……なに、を……して……」
「あ、あ、あたし……あたし……」
震え出す美緒の姿に、篤郎ははっと正気を取り戻した。
「わ、悪い! 忘れる! 忘れるからっ、だからっ!」
「待って!」
全身が凍り付く。
篤郎は心臓までも止められた気がした。
暗闇の中で白い足がゆっくりと動く。目をそらさなければと思っているのに、立ちこめる淫臭がその根源へと意識を導いていく。指が退いたショーツには、その向こうをかたどったくぼみがくっきりと現れていた。
「あの……た、試してみたくて……やってみると……と、止まらなく、なって……」
うつむいて背けたその頬がどれだけの熱を持っているのか。その体はどんなに温かくて、濡れそぼった中心はどれほど熱く締めつけるのか。
篤郎は自然と唾を飲み込んでいた。
「そ、そうか。女だって……あるよ、な、そりゃあ……」
「……う、うん。だから、だからね……」
美緒はますますうつむいてつむじを見せる。こもった空気にそぐわない、幼くも見える仕草だった。
これは夢だ。悪い夢なのだ。そうでなければ、こんなにも……。
篤郎は振り払うように首を振った。
「わ、わかった、大丈夫だから、美緒。お休み……」
声がうわずるのはどうしようもなかったが、なんとかそれだけを言って、とにかくこの場を立ち去ろうとした。
しかし。
「……違うの。……手伝って。お兄ちゃん」
聞き間違い、なのだろうか。
潤んだ瞳は下を向き、唇はきゅっと結ばれている。両膝をわずかに擦り合わせて、双眸が苦しそうにこちらを見た。
「……イキたいの」
幼い頃に何度も繋いだ細い手が、そろりとショーツに降ろされた。うっすらと茂みを透かす場所を通り過ぎ、人差し指が小さな突起を探り出す。
「んぅ……っ」
くぐもった声は聞こえるか聞こえないかくらいのものだったのに、やけに大きく耳を打った。
指はほんの数秒突起を押し込み、やがてぬかるみの中へと先を埋めた。ショーツがクチュッと音を立てる。クチュッ、クチュッ、と、その向こうにある淫靡な穴を、リアルに描き出すように。
「お兄ちゃん……」
クチュ……ッ
「お願い、触って……?」
「やめろ! できるわけないだろっ! 兄妹だぞ!」
篤郎は妹が何を考えているのかさっぱり理解できなかった。
兄とはいえど男なのだ。それがわからない年でもない。股を開いて、卑猥な音を立てて、誘っているとしか思えない態度をとっていることに、まったく気がつかないとでもいうのだろうか。
ところが美緒は不思議そうに首をかしげた。
「……どうして? 兄妹だから、できるはずだよ? 触るだけだもん。手伝ってもらうだけだもん。ほら、下着の上からなら見えないし……、ね?」
「な、何言って……! そういうことじゃない!」
篤郎が眉をつり上げると、美緒はしゅんとしてうつむいた。
「あ、あたしの体、……汚い?」
「はぁ……っ!?」
「足、太いよね。おっぱいだってあんまりないし、お腹も結構ぷよぷよだし。……アソコも、毛深い……かも。それに変な形してるかも。他の人の、よくわかんないけど。
あと、あと、美人じゃないから……、気持ちよくなったらたぶん、変な顔してるし。こんなんじゃお兄ちゃん、嫌、だよね」
「なんでそうなるんだ! だいたいおまえ別に太ってないし、顔だって、……ちゃんと可愛いぞ。それに、……アソコもたぶん、普通だろ?」