07/02/19 21:10:35 ls0LMnwQ
先に口が利けるようになったのは私のアドレーヌだった。
重い口を動かし、沈黙を破った。喘ぐケケを尻目に、関を切った様に喰ってかかった。
「………ッ…アンタ バカ!!?自分がっ…何したのか分かってるの!?もう少しで──!」
最早、何を言っているのか、自分でもよく判らなかった。ただ、このどろどろとした気持ちを吐き出したかった。
「もう少しで………私に犯──」
言葉をつぐんだ。私が そうしたクセに。バカは私だ。涙腺がカッと熱くなる。
何より、そこから先を言えば、自分が「決壊」すると思ったからだ。
「──わかって、ます」
フイに、この子はそう呟いた。途切れ途切れに、しかし確かな口調で続けた。
「気付い、ちゃったんです。わたしが、何故、ここに居るのか。」
───!!!!
「わたし、絵…なんですね……」
言葉に、成らない。
「…そこに落ちてる、黒のチューブ。」
「…とても、痩せてます………このドレスに、使ったんですね…それも、何回も。」
「好き、だったんですね。「ケケさん」が。」
衝突で落ちた手鏡を、まじまじと見つめている。
描きかけの画板には、ケケのデッサンが微笑を浮かべていた。
「だからわたし、決めたんです。このまま──」
大半を聞き逃した。…まるでヴェール、アドレーヌの視界は、暗く遮られた。
……この子は賢い。私の焦燥も、何もかも。お見通しだったのだろうか。
拍子抜けな脱力が、襲ってきた。
それから、私は───
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涙が、込み上げてきた
→笑いが、込み上げてきた。