【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】at EROPARO
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 - 暇つぶし2ch500:名無しさん@ピンキー
06/11/20 19:46:48 os+Ryvxa
やらしい

501:名無しさん@ピンキー
06/11/23 02:14:10 qltEXOSj
夕乃さんにムラムラする日々

502:名無しさん@ピンキー
06/11/23 08:16:33 OoR/LLCe
そういえば紅のハーレムってまだないよな?

503:名無しさん@ピンキー
06/11/23 14:56:15 HTUThMSV
どいつもこいつも嫉妬深そうな上に戦闘手段というか外敵排除能力を装備してそうだからなぁ。

504:名無しさん@ピンキー
06/11/23 18:45:03 F4zqrmO6
真九朗さんどいてください その女を殺せません

505:502
06/11/23 21:35:30 OoR/LLCe
嫉妬とかそこらへんは上手く真紅郎がまとめてさ。イッてもイッても終わらない快楽地獄、みたいなw

506:名無しさん@ピンキー
06/11/23 22:30:33 pP9kWAW3
逃げてー、真九朗さん逃げてー!!

507:伊南屋
06/11/25 14:13:35 0v0a0v87
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅳ.
 夜―。
 辺りは暗く。月は隠れ、地を照らすのは星灯りだけ。
 重い緞帳を落としたような闇の中、一向の馬車は足を休まざるを得なかった。
 予定していた街に辿り着けず、仕方無く街道の脇で野宿をする事になった。
 焚き火の爆ぜる音、橙の炎を囲み、三人は腰を下ろしていた。
「下らない足止めを食ってしまったわね」
 呟いたのは円だ。つい数刻程前の出来事を思い出し、忌々しげに毒づく。
「山賊なんて、数ばっかり揃えた烏合の衆に時間を取られるなんて……」
 円は最後に、これだから男は。と付け加えた。
「数ばかり居て手間取るんだよね~。ましてやこちらは三人しかいないし」
 応えて呟いた雪姫に、ジュウが反論する。
「……なんで俺が頭数に入ってるんだ」
 言ったジュウは、所々にかすり傷が目立つ。先の襲撃ではジュウもその身を危険に晒しながら戦ったのだ。
「良いじゃん、戦争の時だって前線にいるんだし」
「まあ……それはそうだが」
 しかし、だからと言って一応は王なのだ。その辺の三流武人に遅れは取らない、ましてや山賊なら楽に倒せる程度には戦えるとは言え、それも精々が一対三あたりまで。
 それ以上となればある程度は捨て身になり、それなりの怪我は覚悟しなければならない。
 今のように、十五人を相手に一人当たり五人などと言って、更にその五人を倒しても、無傷で息一つ上がらない円や雪姫とは訳が違うのだ。
 それでも、そこまで口にしないのはジュウの、プライドや意地と呼ばれるものからだった。
「ただ、一つ気になるんだよね」
 珍しく声に真剣さを帯びさせた雪姫が言った。
「あいつら、山賊にしては動きが整いすぎじゃなかった?」
「それは私も感じたわね」
 雪姫と円は、山賊の動きがそれらしからぬ事に気付いていた。
 それ自体はおかしくはない。敗戦国の残党が徒党を組んで山賊行為に走るのはよくある話だ。それならば山賊でも統制の取れた動きは納得がいく。
 しかし、二人は更に彼等の動きが妙に戦い慣れたものであると思った。
 しかも、それはエリート兵卒の、研ぎ澄まされた刃のように洗練された動きではない。
 むしろ、使い慣らされた鉈のような、野戦に合わせた動きであると感じた。
 そんな戦い方をするのは大方、傭兵と呼ばれる人種だ。
 しかし傭兵ならば、この戦乱の世。戦争のある国に雇ってもらい、そこで戦った方が収入は多い。


508:伊南屋
06/11/25 14:17:18 0v0a0v87
 つまり、傭兵ならばわざわざ山賊に身をやつす必要はないのだ。
 となれば、考えられる事は限られてくる。それは例えば―。
「山賊に見せかけた、私達を狙っての襲撃?」
 円の弾き出した答えもその一つ。ジュウと領主の会談を快く思わないもの。もしくは領主その人からの差し金か。
 いずれにせよ会談を阻止せんと何者かが暗躍している事になる。
「もしくは、なんらかのトラブルのとばっちりを受けたって所かな?」
 雪姫の答えもまた、可能性の一つ。狙いは自分達ではなく他の誰か。
 その理由が何にせよ、自分達はただの巻き添え。
 もっとも、これらの答えのどちらかが答えだとすれば、いずれにせよ不穏な気配は変わらない。いつ再び襲われないとも限らないのだ。
「まったく……今日は寝ずの番でもするか?」
「そうね、呑気にキャンプ気分で野宿って感じではないわ」
「じゃあ三人交代ね。出発は日の出と共にしよう」
「って、また俺が頭数に入ってるのかよ」
「当たり前でしょ。自分の身は自分で守りなさい」
 あっと言う間に段取りが定められる。
 ジュウが反論する間もなく見張り番も定められた。
 もっとも、ジュウも反論する気はさしてないので不満はない。第一、一応文句は言ったがどの道見張り番はするつもりだったのだ。
 焚き火を消し、最初の見張り番となった雪姫を残し、ジュウと円は馬車の幌に入り、眠る事にした。
「なんかしたら殺すわよ」
「なんもしねぇよ」
「ジュウ様、私と一緒の時は襲って良いからね!」
「見張ってろ!」
 一通りツッコミ終えたジュウは、何事もなければ良いと、切実に願いながら眠りに落ちる。
 月を隠す雲はさらに広がり、星も隠し始めている。
 更に闇は深くなりつつあった―。

509:伊南屋
06/11/25 14:21:11 0v0a0v87
 どうも二週間ぶり、伊南屋にございます。

 今回はレディオ・ヘッドⅣ.になります。なかなか話が進まなくてスイマセン。次ではキャラ増えますんでお楽しみにして頂ければ幸いです。

 そして消化率悪い癖にリクエストは相変わらず取ります。
 そんな訳で伊南屋でした。それではまた。

510:名無しさん@ピンキー
06/11/26 00:27:16 z/C6r8j6
うほっ 伊南屋さんお久しぶりのGJ!!!
相変わらず飛ばしてますなーw
なにはともあれ新作乙でした。続きも楽しみにしております

最近ここ読んでて円もありかと思い始めた俺ガイル orz

511:名無しさん@ピンキー
06/11/26 19:39:59 hCmu9Dqg
伊南屋さん乙です
しかしやっぱり円はフラグを起こしにくいキャラですよねw
男嫌いもありますが、何を考えているか一番わかりませんし……


512:伊南屋
06/11/26 21:10:32 OZntjXEf
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅴ.
 闇の中、なお影に沈む森を駆ける足音。息荒く、地を踏みしめる足はただ前を目指す。
 より速く、より遠く。逸る気持ちは汗を滲ませ、心の中で焦れていく。
「くそっ!」
 漏れるのは悪態。苛立ち紛れの、誰に向けたわけでもない言葉。
 いや、向ける人間はいた。今、一歩でも遠ざかろうとする追手。
 どれくらい引き離したのか。振り返る事は出来なかった。
 まるで、すぐ後ろ。肩に息が掛かるほどの距離に、敵がいる気がして。
 違う。耳にかかる息は、背に負った少女だ。自分が守ると決めた少女だ。敵じゃ、ない。
「もうすぐ、街道だ……」
 街道に出れば、後は領主を頼る為に街道を進むだけ。そうすれば、或いはこの少女を救えるかもしれない。
「見えた……っ」
 闇の中に浮かぶ、僅かに薄い闇。常人には気付けない明度の差から、森の出口を悟る。
 一息に駆け抜ける。壁のような左右の樹が消える。現れるのは、雲に覆われた空。
 闇から闇に出た。
「っはぁ!」
 足を止める。まだ走れる。なのに足は震えていた。
「こんな時にっ!」
 膝を叩きつけ、頭を上げる。見えたのは馬車。
「こんな所に……?」
 何故、馬車が。いや、それよりこれは天の助けかも知れない。
 乗せて貰えれば自分の脚より速く、領主の下へ向かえる。
 幌の中で野宿をしているだろう主に声を掛けようと歩み寄る。
「大丈夫なのか?」
 背から、声。心配そうに少女が呟いた。
 言われて気付く。先回りした追っ手かもしれない。気付いて身が強張る。一度は止まった震えがぶり返す。
 その時、風が吹いた。
 風は雲を運び、雲の切れ間を作る。
 そうして月が夜空に曝された。
 月光に浮かび上がる。馬車の傍らに佇む人影。
 朧気な人影は女性のものだった。
 その姿は段々とはっきりし、少女の姿を象る。
 そして、少女は言った。
「君、如何にも普通じゃないけどさ……」
 笑みを浮かべ。
「君は敵かな?」

 ***

「君は敵かな?」
 雪姫は、森の向こうから現れた人影に向かって言った。
 丁度、雲の切れ間から月灯りがその姿を照らす。
 自分達と同年代だろう。
 どことなく、初めてとは思えない雰囲気を感じる少年だった。
 その背には、まだ十にもなっていない、精々が七つか八つの幼い少女。
 二人とも何かに怯えているようだ。
 少なくとも自分と、それ以外の何かに。

513:伊南屋
06/11/26 21:12:43 OZntjXEf
 答えない少年に、再び雪姫は尋ねた。
「君は、敵なのかな?」
「……それはこっちの台詞だ」
 強がり。雪姫には分かる。その態度が虚勢だと。しかし、だからと言って油断することはない。気を抜けば、急鼠猫を噛む。手痛い反撃を喰らいかねない。
 何故ならば、少年の怯えた雰囲気とは裏腹に、佇まいには隙がない。闘いと言うものを知っている者の姿だ。
 ならば虚勢はそうと悟らせる芝居。油断をさせる構えか。
 故に雪姫は穏やかに応えた。
「多分、敵じゃないと思うよ。私達はここの領主に仕事で会いに来ただけだし。昼間、山賊だか傭兵だかに襲われたから一応警戒してるんだ」
「山賊……?」
「分かんないけどね。事実としてあるのは、私達が襲われたって事だけ」
 少年はしばし思案して問いを返した。
「その中に、無駄にえばり散らした奴と両腕にガントレットをしたデブを見なかったか?」
「随分な言い方だね。……見てないよ。少なくとも私達を襲った連中にはね」
「そうか……」
 再び思案に耽ろうとした少年を、雪姫は制する。
「今度はこっちの質問に答えてよ」
「……答えられる事なら」
「うん、じゃあ追われてるんだよね? なんで追われてるの?」
 少年は背負った少女を振り返る。暫くそうして考えたのだろう。再び雪姫に向かい答えた。
「悪いが、答えられない」
「う~ん、そっか……。じゃあ理由は良いとして、誰に追われてるの?」
「悪いがそれも……」
「困ったな~。こういう時に雨が居れば効果的な質問が出来るんだけど」
 呟きながら腕を組み頭を傾げる。
「ん~……じゃあ名前、名前は? あ、あたしはね雪姫って言うの」
 少年は一転して無関係になった質問に目をぱちぱちさせた。
 余程拍子抜けしたのか口まで開いている。
 少女は自分でそれに気付き、慌てて表情を引き締めた。
 そうして、少年はようやく質問の答えを一つ答えた。
「俺は、真九郎。紅真九郎だ」

 ***

「紅真九郎くんか……」
 雪姫と名乗った少女は真九郎をまじまじと見つめながら呟いた。
 その視線にどこかくすぐったいものを感じてしまう。まるで品定めされているようだとも思う。
「それで、その娘は?」
 視線が真九郎の背後に移る。肩越しに少女達の視線が絡んだ。
「真九郎、降ろしてくれ。このまま名乗るのは失礼にあたる」
 その言葉に従い、背中から降ろしてやる。しっかりと確かめるように足を踏み締める。


514:伊南屋
06/11/26 21:16:09 OZntjXEf
 彼女はずっと負ぶわれていたので久方振りの地面なのだ。
「しっかりした娘だね」
 微笑みを浮かべる雪姫。その一瞬、真九郎はあることに気付く。
「私は……」
 今まさに名乗らんとする所を、真九郎は遮った。
「こっ、この娘は俺の妹で紅……紅紫だ」
「真九郎?」
 振り返り、訝しげな表情を浮かべる少女に、真九郎はしゃがみ込み耳を寄せる。
「……お前の名字は出さない方がいい……」
「……相手は悪い人間ではない。真九郎も分かるだろう?」
「……それでもだ。お前が九鳳院の人間だとは悟られない方がいいんだよ」
 真九郎の言葉に一応の納得をしたのか、紫は不承不承頷く。その渋い表情も一瞬で消し去り、改めて名乗った。
「紅……紫だ」
「紫ちゃんか、よろしくね?」
「……よろしく」
 雪姫と紫、互いに微笑みを浮かべる。割とこの二人、仲良くできそうだ。
「さて……次の質問と行きたい所だけど」
 雪姫が言った。
「ちょっと長話が過ぎたかな?」
 言葉と同時、気配。
「なっ……?」
 気配の数は、二十前後か、取り囲むように配置され逃げ場はない。
 驚くべきは今の今まで存在を察知させなかった手腕。一人一人が手練であると分かる。
「山賊まがいの傭兵に、隠密暗殺部隊。どうやら予想は私が当たったみたい。……嬉しくないけどね」
 雪姫が真九郎には分からない言葉を漏らす。溜め息を一つ吐くと馬車の中に居るらしい仲間を起こす。
「起きて! ジュウ様、円! 敵襲!」
 中に声を掛けると真九郎の方へ向き直る。
「紫ちゃんを馬車の中に!」
「あ……ああ!」
 急ぎ、紫の手を引き馬車に駆け寄る。辿り着くと、馬車の中に紫が引き込まれる。
 入れ替わりに出て来たのは、金髪の少年と、ショートカットの少女。
「……誰?」
 本当に眠っていたのか疑いたくなる程はっきりと少女が雪姫に尋ねる。
「説明は後、こいつら片付けてからね」
「また、戦うのか……」
 金髪の青年はいかにも起き抜けといった風情で、欠伸を噛み殺している。
「ほら、しゃんとする!」
 雪姫に言われ、背筋を伸ばした少年に、真九郎は何か近しいものを感じた。
 似た者同士の共鳴というか、とにかくそういった物を。
「さあ、来るよ!」
 雪姫の声に、真九郎は身を緊張させる。
 包囲の輪は狭まり、戦闘態勢は完成している。
 刹那の静寂。
 風が吹いた。
 それを合図にそれぞれが駆け出す。
 闘いが、始まった。

515:伊南屋
06/11/26 21:22:18 OZntjXEf
 毎度、伊南屋にございます。

 いやね、こんな早く書けんなら書けよって話ですよ、はい。
 今回で紅キャラ二人が登場しました。多分これからも増えます。あのキャラをあのポジションでみたいなのは考えてありますんで。

 なんとなく半端な所で切れましたが本日はここまで。
 それではまた、と言うことで。
 以上、伊南屋でした。

516:名無しさん@ピンキー
06/11/26 21:26:29 aLCbOCds
主人公二人揃い踏みか。確かに女難の相は相通じるものがあるなw
とまれGJですた。


517:名無しさん@ピンキー
06/11/26 21:44:10 HuwhqZrJ
電波と紅の世界間の時間軸ってどうなってるんだろ。
俺の妄想では電波は紅の10年後ぐらいの話だと思ってるんだが、何となく。
もしそうだとすると紫は17歳の女子高生。
で、真九郎は26歳。
………………これはアリか?いや、アリだな、うん。



アリだよな!?

518:502
06/11/26 22:51:44 pThyoOw+
俺の考えだと15年くらいかな?
真紅郎が紅花に「お子さんはどうですか」的な話しをしていたからジュウが産まれてそんなに経ってないように思える。
でも産後そんなにないならないで色々と小さな矛盾が出てくるし…………作者よ!!早く「電波」と「紅」を繋げてくれ!!!!

519:名無しさん@ピンキー
06/11/27 02:35:29 +EHVK97V
授業参観がどうとかって話してなかった?
だから「紅」時、少なくともジュウ様は小学校には入ってるんでは。
光と円の道場(?)のこともあるし。
まあ「紅」は二冊共一度通読したきりなんで記憶あやふやだけど。

というか、何で当たり前のようにジュウ「様」なんだ自分。
まあでも珍しいことじゃないよね。

520:名無しさん@ピンキー
06/11/27 02:38:05 +EHVK97V
いけね、書き忘れ。連投失礼。

伊南屋さん、例によってGJです。
やっぱり楽しいなあこれw

521:502
06/11/27 07:10:06 dWdj+4dU
そうすると、紫とジュウが同い年の可能性が高いな~

522:名無しさん@ピンキー
06/11/27 07:55:05 WUjO6jtg
俺も同い年だと思ってる
理由は
・環さんのセリフで道場に光と円が通っている→早くて小学校低学年。これは紫と同じくらい。
・先述の通りジュウ様も父兄参観がある。
・電波に転校生などとして紫が出て来て欲しかったりする。
上記の理由で推理した。

523:502
06/11/27 12:17:46 dWdj+4dU
紫が転校してきたりするってことは、騎場さんも必ず登場するってことじゃない?かなり面白そうw
真紅郎が26って銀子も26…夕乃が27…さて、「紅」メンバーはどうなるんだろ………

524:名無しさん@ピンキー
06/11/27 16:06:15 rx+7ZwsW
そういう話は
片山憲太郎 「電波的な彼女」 「紅」12人目
スレリンク(magazin板)l50
でやろうじゃないか。

525:502
06/11/28 06:58:32 OzfsVxP5
スマソ

526:名無しさん@ピンキー
06/11/30 02:39:12 rVRPp7V4
>>524
しかし、高校生真紅郎と小学生電波三人娘や、
社会人夕乃さんと高校生ジュウの絡みとかの話題はこっちじゃ無理だ

527:名無しさん@ピンキー
06/11/30 08:45:44 cjAEeiUo
そうかなあ。
あの本スレは結構何でもありな印象があるよ。
(本気かネタかはこの際措いても)おおっぴらに幼女ハァハァもしてるし。

偉く伸びてると思ったら荒れてたりするし、そう云う意味では、
(ちょっと話ズレるけど)少なくとも自分には、
こっちの方が落ち着いててマターリ色々話せる感じがするんだけどなあ。

528:名無しさん@ピンキー
06/11/30 08:51:03 SgISV+pq
同意

529:名無しさん@ピンキー
06/11/30 19:38:18 IkS3VtKa
>>572
だがスレ違い

530:名無しさん@ピンキー
06/11/30 20:05:01 MkpZZIky
別にいいんじゃないの?
伊南屋氏のSSで電波と紅のキャラが共演する事になって、要はその延長線の話題なんだから

531:名無しさん@ピンキー
06/12/01 19:16:32 x3Vj2Vfn
そんな事より、皆でwktkしてようぜ。

532:名無しさん@ピンキー
06/12/03 21:15:12 f9MfJ/8K
土日なのに誰も来なかった件について

533:伊南屋
06/12/03 21:37:36 7YYS353k
 五月雨荘。そこは世間から隔絶された異空間。
 まるで、そこに住まう者を隠すかのように存在する、不可侵の領域。
 世と地続きであり、世と関係しない場所。
 なればこそ、そこでは背徳が侵されるのか。
 人の目の届かぬ、禁裏のような場所。ここはそういったものなのかもしれない。

紅・異伝『宵闇』

 紅真九郎は、幼女趣味ではない。それは真九郎自身が下した自己評価であり、事実として、幼い少女に劣情を持つ事はなかった。
 それは過去形で表される事実。即ち、かつては。の話。
 その、かつての自分。ほんの数週間前の自分が、今の自分を見たらなんと思うか。
 下劣、畜生、汚物。
 どんな悪口雑言でも足りない。
 殴り、蹴り、襤褸雑巾のようにしても足りない。
 自分は、守ると決めた少女を、この手で穢した。
「しんくろぉ……」
 仰向けに横たわる自分、その胸の上から声がした。
 目をやれば、蕩けたような表情の紫がいる。
「紫……」
 その頬に手を添えると、紫はその指先を、可憐な淡い唇に挟み、舌を這わせた。
 ぞくりとする感覚。
「ん……」
 微かな声を漏らし、紫が身体を上下させる。
 それに合わせ、真九郎の下半身に熱い快感が広がった。
 姿勢だけ見れば、跳び箱に失敗し、それでも箱を越えようともがく姿に見えなくもない。
 しかし、それは違う。
 一糸纏わぬ互いの身体は、性器で繋ながれている。
 紫が身体をくねらせる度、接合部からは粘着質な音が真九郎の耳に届いた。
「紫……苦しくないか」
「大……丈夫だ。はぁっ、しんく……ろ」
 言葉の中途。ぐい、と腰を押し上げる。真九郎の男根が紫の身体にねじ込まれ、狭すぎる膣道を押し開く。
「かはっ……! あぅあ……っ」
 悲鳴のような声。
 悲鳴では、ない。
 証に、奥深くを貫かれた紫の顔は淫らに崩れている。そこに痛みに耐えるような表情は見てとれない。
 長い黒髪を振り乱しているのは苦痛だからではない。
 自分の内の快楽に打ち震えているからだ。
 ただでさえ狭い紫の膣口が、きゅうっ、と切なく締まる。
 真九郎はきつく締め上げられる感覚に腰を震わせた。
「真九郎……きもち、い……いか?」
 途切れ途切れに紫が尋ねてくる。蕩けた瞳は真直ぐに真九郎を見つめてきた。
 真九郎は問いには答えず。紫の、わずかな膨らみもない、まさにまな板のように薄く平坦な胸を愛撫した。


534:伊南屋
06/12/03 21:39:41 7YYS353k
 膨らみはないので、乳房と身体の境目がない。故に性感帯としても未発達なその部分の中、唯一敏感な部位である乳首に触れる。
 既に堅く凝った乳首を指先で捏ね回し。時には摘み上げる。
「ひぁうっ!」
 軽く摘む度に紫の身体がびくびくと跳ねる。
 ここまで淫らで敏感な反応を見せる紫が、少し前までは痛みを訴え、泣き叫ぶだけだったとは思えない。
 そうしたのが自分であると分かっていながら、紫の変化に驚いてしまう。
 無理矢理に組み敷いて以来、何度も身体を重ね、その度に紫は淫欲に目覚めていった。
 今では自ら求め、こちらに快楽を与える程に。
 今も、先に色欲を訴えたのは紫からだった。
 その細い指を真九郎の股間に這わせ、欲しいと呟いた。
 真っ赤な顔に期待を浮かべる紫は、どうしようもなく真九郎の興奮を誘ったのだった。
 そうして気が付けば紫と繋がっていた。抱き合い淫蕩に耽る。
「しんくろぉ、しんくろぉっ!」
 紫が、一体何度目だろう身を痙攣させ、絶頂の近付きを報せてくる。
「イキそうなのか?」
「あ、ぁ……イク、イクぞ、しん……くろぉっ」
 淫部から伝わる痙攣は更に激しさを増し、真九郎も同時にと、絶頂を誘う。
 断続的に収縮を繰り返す紫の中に、欲望をぶちまけたくなる。
 真九郎はそのために、腰の突き上げを強めた。
「くぁっ……あぁ、ひゃ! しんくろぉ、しんくろ……う。もう……ひゃう!」
 びくん、と紫の身体が大きく仰け反る。全体を震わせ、絶頂した事を伝える。
 真九郎はそれを見届けると、堪えていたものを吐き出した。
 紫の膣中に盛大に白濁を注ぐ。びゅくびゅくと跳ねる肉幹を、あっと言う間に満杯になった膣中から逆流した精液が伝い、白く染める。
「あは……っ、ぅぁ」
 天を仰ぎ見るように身を沿った紫が快感に浸る。
 愛する男に満たされる悦楽に陶酔し、その幼い身体で真九郎の欲望を受け止めた事を悦んでいる。
 紫は身体が落ち着いたのか、視線を自らと、真九郎の下半身に向けた。
「たくさん出したな……真九郎」
 接合部から溢れる精液を指先で掬い取り、指先に絡めそれを舌で舐めとる。
 わざわざ見せびらかすように、ゆっくりと舌先で絡めとる。
 わざとらしく卑猥な音を立て啜る。
 そんな紫の仕草に、またどうしようもなく、自分の獣が哮るのを真九郎は感じた。
 自らの身の内で硬さを取り戻している真九郎に気付いた紫が、結合を解く。


535:伊南屋
06/12/03 21:47:28 7YYS353k
 栓が抜けた秘穴から、ごぽりと精液が零れ落ち、真九郎の幹を更に白くまぶす。
「ふふ……真九郎の、まだ硬いな」
 幹に、紫の小さな手が添えられた。真九郎の白濁液をローション代わりに、亀頭を撫で回す。
 紫の手が、亀頭を這う度にぬちゃりと淫らな水音がした。
「今度は直接口にくれ、真九郎を……」
 言って、紫は身を屈め真九郎のそこへ唇で触れた。
 薄いピンクの唇が開かれ、真九郎をそこへ受け入れる。
 浅く、小さな紫の咥内には亀頭までしか収まらない。
 それでも紫は真九郎に快感を与えようと細い舌で精一杯に舐る。
「うっ……」
 射精直後の性器は、はしたなく快感に打ち震えた。真九郎は声を上げ悶える。
「ひもふぃいいは?」
 口の中に真九郎を含んだまま紫が尋ねてくる。
 真九郎は頭を撫で、頷く事で応えた。
 紫が嬉しそうに表情を綻ばせる。
 その無邪気な表情と、行動のギャップに、紫の猥雑な痴態が引き立ち、一層真九郎を興奮させる。
 この分なら、遠からず絶頂を迎えそうだ。証拠に、すでに射精感が込み上げ始めており、下半身を疼かせている。
 紫は口に収まらない竿の部分を両手を使い扱き立て、時折睾丸へのマッサージを交えてくる。
 全て真九郎が教えた事だ。それを忠実に実行し、責め立てるように射精を促す。
「んちゅ……ちゅぴ、ちゅぱっ……んふぅ。ふむっ、ん」
 舌の動きも激しさを増し、紫の口の端では先の精液が泡立っている。
 真九郎は自身がどうしようもなく昂ぶっているのを感じていた。
 背徳を犯すスリルに全身を粟立つような悦楽が走る。
「紫……紫っ」
 限界だった。腰が跳ね、白濁を撒き散らす。急に押し上げられた肉棒にえずき、紫が口を離した。
 そこへ真九郎の精液が浴びせかけられる。紫はそれを恍惚の表情で受け止めた。
 頭頂、顔面、胸元、腹部、太股、脹脛。文字通り、紫の頭から爪先までが真九郎の粘液に白く染められる。
「あは……」
 紫が、笑った。
「たくさん、たくさん出たぞ真九郎……ぜんぶまっしろだ」
 紫が身体に振りかけられた精液を指先で伸ばし、自らに擦り込むようにした。
 矮躯が余すことなく子種汁を浴び、ぬらぬらとぬめる。
「しんくろおの、匂いでいっぱいだ」
 妖しく微笑む紫は、到底七歳とは思えない、魔性とも言える色香を発していた。
 再三、真九郎の雄が哮る。
 紫色の宵闇が近付いていた。
 狂宴はまだ、終わらない。

536:伊南屋
06/12/03 21:51:38 7YYS353k
 毎度、伊南屋にござい。

 続かないし前日談もない。ただ紫のエロネタがやりたかっただけ。なんか暗くなってしまったのは自分では反省点。
 次に紫ネタやるときはもっとラブがコメしたものを書きたい。
 つうか文体の硬さに未だ引っ張られてます。

 というわけで今回はこれにて。
 今は頑張ってバトルシーン書いてます。そろそろ投下したいなと思いつつ、以上、伊南屋でした。

537:名無しさん@ピンキー
06/12/03 22:07:41 cENxDD2R
GJ!!!っすよ伊南屋さん!
紫は紅で一番好きなキャラなんでことさらGJです。ハイ。

538:497
06/12/03 23:28:08 HXPs6qsf
>>497の続きを一つ

 「意外と片付いてるのね」
 というのが、まず自分の部屋に入った彼女の第一声であった。そしてジュウはそれに対して沈黙をもって答えた……
と言うよりはまだ事態の展開に頭がついて行かなかったのだが。
 とりあえず落ち着こう、とジュウは微妙なムズ痒さを感じさせる頭の包帯を手の平で擦りながら軽く目を閉じた。
 今日あった事を思い返す。円&不良達との遭遇。乱闘。一撃。出血。ハンカチ。膝枕。仄かに香る優しい匂い。
美しい顔……。
 (違う違う)
 脇道に逸れそうになった思考に、思わず首を左右に振る。まとまらない思考に、不意に外界からの声が割り込んだ。
 「どうしたの?」
 思わず目を開けると目の前に円がいて、そっとこちらの額に細く白い指を当てる所だった。
 「まだ痛い?」
 「いや、ちょっと痒くて」
 「そう。だからって掻いちゃダメよ」
 へどもどするジュウに対して円の方は平然としてそう言い置くと、
 「お茶、いただくわね」
 返事も待たずに冷蔵庫から麦茶を、水屋から白いコップを取り出すと悠然と喉を潤した。
 半ば呆然と意識を飛ばしながらその様を見つつ、ジュウの脳裏には先程の事が蘇っていた。
 すなわち病院へと二人揃って入り、何やらお偉い方に直接話をしたらしい円に紹介された篤実そうな中年の医師から
丁寧な検査を受け、一先ず何事も無く治療を終えた後に連れ立って院外へ出ると、折しも晴れ渡っていた空の向うから
一面雲涌き立って天上を覆わんと近付きつつあった。それを見たジュウは、とりあえず舌打しながら家に向かって走ろ
うという決意を固めたのだが、そこで円が自分の折り畳み傘ならば二人入っていける、と言い出したのだ。それでは相々
傘ではないか、とジュウは固辞したが、とりあえずジュウの家まで送ると言う円に遂に押し切られ、今又何故か家の中まで
済し崩しに進入を許したのは全く激しい夕立に後押しされた勢いの為としか言い様が無い。
 だがそもそもあの円が膝枕をしたり、相々傘を勧めたり、ましてやこうして自分の……男の家に自ら上がり込んだりする
等とはそもどうした事か、という事にジュウは今更ながら大いなる違和感と疑問を抱かざるを得なかった。その違和感を
どのように伝えれば良いものか、と考える内にこのような事態にまで至った事は最早どう思っても詮無い事ではあるが
さて事ここに至っても彼女の目的がイマイチよく判らない。
 よってこれからどう対応すれば良いのやら、困り果てて見つめた円の横顔には、何も浮かんではいない。
 感情も表情も、ただ無機質な仮面の内側へと押し込めてまるで何かを待ってるような表情で、じっと窓の向こうを見て
いる。何故かその姿に訳の分からない悪寒を感じて、一つ身を震わせる。

539:497
06/12/03 23:29:30 HXPs6qsf
 「これじゃあ帰れないわね」
 「……通り雨だろ。すぐ止むさ」
 二人の間の沈黙に、ざあざあと壁一枚向うの雨音が侘しさを添える。
 もし二人の関係がもっと違うものならば、これもまた別の感慨をもった沈黙となるのだろうか、と益体も無い事を考え
ながらしかしこれ以上気の無い息苦しいような受け答えを続けるのは御免蒙りたかったので、ジュウはシャワーを浴びる
事にした。
 円が濡れないように、と気を使って傘を相手側に傾けていた為、ジュウの肩は一方だけとは言えかなり雨を被ってしま
っていた。濡れて肌に張り付くシャツが気持ち悪い。着替えを取って浴室へ向かいながら、雨が止んだら勝手に帰って
くれていい、と円に向かって言う。
 彼女は、どこか霞でもかかった様な曖昧な瞳で、こちらを見るとも無く見ると、こっくりと頷いた。
 それでジュウは安心したのだが。

 蛇口を捻ると冷たい水が噴射される。時間をおいて徐々に温もるのを待って、ジュウはそれを肩から浴びた。汗と、雨と
重苦しい空気すらもかけ流して、冷えた身体の内側まで染透っていくような熱にほうっと溜め息をついて、ジュウは頭から
それを浴びたくなったが、生憎とまだ包帯は巻かれたままだ。勝手に取ると円が怒るだろうな、と思って、苦笑した。
 今日の“らしくない”彼女には戸惑ったが、なんだかんだと言っても、自分の身体を心配してくれているのだからやはり
いい奴だな、と思う。男嫌いだと言うし、実際自分に対する普段の態度も冷淡極まりないが、それでもただの嫌な奴では
ない。むしろ自分よりも余程上等な人間だろう。強くて、聡明で、やや鋭利過ぎるものの凛とした美貌は男女問わずに誰
の目をも引く。雪姫にせよ雨にせよそうだが、何故そんな彼女等が何故自分といるのか、ジュウにはどうにも理解し難か
った。他人を惹き付ける魅力、そういった物が自分にあるとすればそれはなんだろう?
 「馬鹿馬鹿しい」
 再び苦笑。そんな物はある訳が無い。雨は妙な妄想からくる思い込みが高じての事だろうし、雪姫はただの面白半分だ
ろう。いずれは消えてなくなるものなのだ。では円は?彼女とはより何も無いようにしか思えない。二人に対する付き合い
の内なのだろうか?
 「柔沢君」
 陰鬱な思考を切り裂くような鋭い、しかし平静な声が浴室の扉の向うから響いてきた。
 「円堂、雨止んだのか?勝手に帰ってくれて構わないって言ったのに」
 模糊の海から意識が突如引きずり出され、ジュウはハッと我に返って問い返したが、続く言葉に絶句した。
 「私も一緒に入っていい?」
 唖然としたジュウの眼前で、濡れた扉が開き、そして止める暇もあらばこそ。
 漂う湯煙の中に、白い裸身が浮かび上がり、こちらに一歩を踏み出した。


<続く>

540:497
06/12/04 00:06:07 FW3HBOQ5
書き忘れてたが伊南屋さんGJ
ロリーはいいよウン

541:名無しさん@ピンキー
06/12/04 06:40:03 4HK5d/1K
なんでそんな良い所で切りますか(*´Д`)気になるぜチクショウ

542:502
06/12/04 08:13:29 IPD2QJs7
伊南屋さん、497さん、本当にGJ!!乙です!!

543:名無しさん@ピンキー
06/12/04 09:07:55 yh1rL60k
とうとう紫が来ましたか……イヤやっぱ伊南屋様は神っす!
あんだけダークなのも、いくら相思想愛でも7歳をヤッたら(無理矢理)暗黒面に墜ちるよと納得 
 
そして497氏。寸止めとはやってくれるぜコンチクショウ! 大人しくお待ちします。全裸で。

544:名無しさん@ピンキー
06/12/04 18:16:31 KtEmE+Eg
>>540
GJ。もー最高。
焦らしと言うか、ジュウの微妙な心理が非常にイイんですが、ここで切る貴方は鬼か悪魔か(w

545:名無しさん@ピンキー
06/12/07 02:14:50 Os6II47Y
夕乃分が不足してきた…

546:497
06/12/07 19:21:54 H3JPZtxU
どうも、また半端な所で切れてしまいますが、次回こそは多分終わりですんで。
それでは本編をどうぞ↓


 視覚情報が脳に伝わってからジュウが行動に至るまでに一瞬ならず間があったのは単純に驚きのためかと言われ
れば、そうとばかりも言い切れない。つまりは、眼前にたおやかな裸身を晒す円に慌てて背を向けたジュウの視界には
その直前まで確かにその全てが捉えられていた。見とれていた、と言い換えてもいい。
 白く、内側から自ら輝きを放つような瑞々しい肌。あの強烈な蹴りを放つそれと同じとは思えないように、スラリと伸び
た長く細い脚。長身痩躯、とは言っても、骨の浮き出るようなという程ではなく、また逆に見るからに筋肉質という事でも
ない、むしろ女性らしい丸みを胸や、腰から下に帯びさせたままでその他無駄な肉を一片までも削ぎ落としたような、
芸術的なまでに完成度の高い姿態は、胸の先の薄桃色や品良く黒々と生え揃った下腹部の茂みも含めてジュウの目
にしかと焼き付いていた。
 目を閉じてもその映像はより鮮明に蘇り、鼓動を五月蝿いほどに高め、また息は情けないまでに乱れた。あるいは昼
間に頭部に喰らった衝撃よりも強烈かも知れないインパクトが、舌をも縺れさせる。
 「なっ……、どっ……、おま・・・・・・!?」
 「もうちょっと落ち着いたら?何言ってるか分からないわよ」
 むしろなんでお前はこの状況でそんなに冷静なんだ、とジュウは悲鳴を上げたかったが、生憎と声にはなってくれ
ない。とりあえず搾り出した言葉は
 「……なな、何を?」
 という全く意味する所の汲み取れないものだったが、円は理解したらしく事も無げに言う。
 「私もシャワー借りたくなったの」
 「俺が出るまで待てよ!」
 「一緒に入った方が節約になるわ」
 至極当然のように答えると、二の句の継げないジュウを尻目に悠々とシャワーを浴び始める。
 浴室はそれ程狭くはないが、二人で入っても十分なほどに広くもない。よってジュウの背にも時折円の身体が僅かに
触れることになる。ジュウはその度にビクリと大袈裟なほどに身を竦ませて、なおも混乱を深くした。
 なんだこれは、なんでこんな事を。俺に見られる事は何とも思ってないのか。答えの出ない自問はひたすらに堂堂
巡り。そんなジュウに
 「早く体洗ったら?」
 円が呆れたように言う。その言葉に、彼女が今自分の裸の背を見ているのだと思い至って、突如堤防の決壊するよう
にこの状況がどうにもたまらなくなったジュウは、円の方に顔を向けないようにしながら
 「お、俺、もう出るから」
 ドアノブに伸ばしたジュウの腕を、横から伸びた手が押さえた。
 思わず振り向いてしまったジュウの目の前に、自分とあまり変わらない身長の円の顔があった。
 「ダメよ」

547:497
06/12/07 19:22:55 H3JPZtxU
 幸いにもと言うべきか、近すぎて見ようと思わなければその顔以外の部分は視界の外にあったが、こんな間近で全裸
の円に見つめられる、という状況自体がもうジュウの羞恥心に対する負荷の限界を超えている。目を逸らす事も出来な
いままに、後ずさりつつ何とか言い訳を試みる。
 「いや、お前が出た後でもっぺん入る事にするから……」
 「そんな事してたら風邪ひくわよ」
 ジリ、と腕を掴んだまま円もこちらへと近付く。
 「い、いやあの……」
 また一歩を下がり……と、そこでタイルに足が滑る。
 「おわっ!」
 「……っ!」
 仰向けに倒れるジュウを追うように、その腕につられて円も倒れかかる。咄嗟にジュウは、自分の体を下敷きにする
ように彼女の体を引き寄せた。一瞬の浮遊感の後、背と後頭部とが床と壁に打ち付けられる。
 「痛う……」
 「大丈夫?」
 心配そうに声をかける円に、ああ、と返そうとして思わずジュウは固まった。
 上半身を起こしてジュウの頭部にそっと繊手を這わす円。彼女は包帯の巻かれたそこを気遣っての事だろうが、二人
の現在の体勢・位置的に、頭だけを起こしたジュウの目の前には、大きくはないが形良く整った二つの白い膨らみが
迫って見える。腹には重みと共に、水分を含んでしっとりとした柔らかな太腿と、くすぐったいような恥毛の感触。
 「少しこぶが出来てるわね。血は・……どうしたの?」
 ジュウの態度を不審げに見て取って尋ねた円は、そこで初めて彼の目線の先に気付いたらしくそっと体をジュウの
上からどけると
 「あ、いや。これは……」
 「柔沢君」
 何やら真っ赤な顔で言い訳を始めようとしたジュウを冷然とした一言で押さえ、すっと視線を横に滑らした。
 「立ってる」
 隠すものとて無い全裸で横たわったジュウの体の一部は、あまりにも明らかな自己主張をしていた。無理も無い。
ジュウとて健全なる青少年である。今までは驚きと混乱が先に立って気にしている余裕など無かったのだが、それが
こうして円と密着してしまった事でその感触に反応してしまったものと見える。
 理屈はともあれ、思わず隠す事すらも忘れてジュウは半ば絶望的なうめきを漏らした。終わった。何の事かは知れず、
とにかく自分は最早終わった。そんな感慨が浮かんできて、もうどうにでもしてくれ、という気分だ。
 「柔沢君」
 円が再び自分の名を呼ぶ。その顔はいつもと同じく冷静だが、頭から全身湯に濡れて光る姿は何か艶然とした物を
感じさせずにはいられない。そしてその姿で円は言う。
 「私と……したいの?」
 「え?」
 その意味を理解できずにいる間に、返事も聞かず彼女はジュウの体へと覆い被さってきた。

548:497
06/12/07 19:23:25 H3JPZtxU
 「なっ……ちょ、ちょっと待て!」
 恐慌に近い反応を示す示すジュウにも構わず、円はどうやったのか体重をかけて彼の動きを抑えると、そっと耳に
舌を這わせた。熱くぬめる感触が、弾けるような水音とともに脳の中へと入り込むような快感をジュウに与えてくる。
 「あぅ……んっっぐ、あ、や、止め……」
 ぞくぞく、と全身を震わせる快感に、抵抗の気力も体力も萎えていくのを感じたジュウは
 (拙い……このままじゃ……)
 そんな事を考えながら朦朧となる意識を必死に繋ぎ止めようとしたが遂に空しく、見る見る死んだように脱力し、荒い
息を吐くしか出来なくなった彼の首筋へと円の舌は下りていく。
 「う……ぁああ」
 そこから胸へ、そして腹へ、更に股間を迂回して足へと続く円の奉仕―それは正しく王に傅く奴隷の奉仕さながら
だった。ただ当のジュウからしてみれば拷問に近かったろうが。あまりの快感に、ジュウは危うく触れられてもいない
股間から放出しそうになった。だがその度に円は絶妙な加減でそれを到達させずに止めてしまう。
 「円堂……も、もう」
 「我慢できない?」
 こくり、と必死の思いで頷くジュウを流石に少し熱っぽく潤んだ目で見た円は、屹立した怒張にそっと根元から舌を伝
わせる。
 「うぁっ」
 それだけでジュウの身体はビクリと跳ねた。円は更に柔らかな手でそのものを掴むと、ゆっくりと上下させ、先を舌で
チロチロとくすぐる。熱を受けた蝋細工のように、自分の物がドロドロと芯から溶けていくような恐怖と相半ばする快感に
のたうち、最早息も絶え絶えになりながら、ふとジュウはかつて何とはなしに聞いた雪姫の言葉を思い出した。
 『ちなみにね、フフ、この三人の中に処女は三人います。さて誰でしょう?』
 そうだ。あの時雪姫は確かに円も処女である、という意味の事を言っていた筈なのだ。なのに、この手慣れたような
愛撫はどういう事だろう。雪姫が嘘を吐いた?いや、そんな意味の無い事をする彼女ではない。ならば円がそもそも雪
姫に嘘を吐いていたのだろうか。それも考えられない。意味が無い。そもそも何故円が自分にこんな事をするのだろう
か。いったい彼女は男嫌いだった筈ではないのか。
 分からない。何も分からない。
 「ん……ぷ、んぅ」
 やおら、円がジュウの物を口に含む。それだけで全身を快感が苛み、思考は千々に乱れた。ジュウの悲鳴に近い声
を聞いているのかいないのか、円はその染み一つ無い雪白の顔をゆっくりと上下させる。
 「はぷ……ん、ぅっ、ふぅっ」
 うっとりとした声を漏らし、目を閉じたまま自分の行為に没頭しているらしい円の横顔は、ぞっとする程に美しい“女”の
顔だった。だが、ジュウはそんな感想を述べるどころではない。先程にも倍するような快感。肉棒を苛む円の口中の蠢き
は、ジュウの弱点を全て知り尽くしたかのように的確で、苛烈だ。
 「円堂……も、もう……っ!」
 切羽詰った声を上げるジュウの声を切欠にしたように、円は口に含んだものを、より深く、根元までくわえ込んだ。喉の
奥まで突っ込まれた肉棒は、舌で、頬の粘膜で、嬲られ、捻られ、引き絞られる。最早ジュウに耐えられる筈も無かった。
 「あああっ!あぐっ、ん、うあぁ!」
 「んぅっ!んっ、んン……」
 爆発するような勢いで溜め込んだ欲望の塊を解き放つ。腰が抜けるかと思う程の、初めての他者の手による絶頂の
快感に放心状態のジュウの放出を全て受け止めたらしい円は、何度か喉を鳴らしていたが、ややあってゆっくりと顔を
上げた。今の手際にも似ず、やはりまた同じく惚けたような顔で座り込んだまま、呆然としている。
 荒い息を吐く二人の体を、シャワーの飛沫が叩いていた。

<続く>

549:名無しさん@ピンキー
06/12/07 19:42:04 z7IGLvCI
なんてやらしい(*´Д`)

550:名無しさん@ピンキー
06/12/07 21:53:29 L7ouHhNm
>>548
GJ!GJ! 
一方的にやられっぱなしの光景がエロス。掴みづらいキャラである円の雰囲気もそれっぽくてイイ。
やっぱりジュウは翻弄される側ですな(w

551:名無しさん@ピンキー
06/12/08 02:08:45 wutgwnxQ
GJ!
しかしなんでこんなにジュウ様は受けが似合うんだろう。

552:名無しさん@ピンキー
06/12/08 02:53:17 OnMZMqq6
ジュウ様だからだよきっと。

553:名無しさん@ピンキー
06/12/08 07:24:44 YNtS4XcS
男に対してはS
女に対してはM
こんな感じじゃね?

554:名無しさん@ピンキー
06/12/08 08:14:43 chM1+zEX
>>553
> 男に対してはS
でも、草加に虐められたり伊吹に殴られたりと男相手にも散々だったぞ

555:名無しさん@ピンキー
06/12/08 14:01:12 RygT8ECx
やっぱアレじゃん?自称不良なのに女の扱いがぶっきらぼうで純情だから、苛めがいがあるというか…… 
 これが真九朗とかなら。ヘタレとか甲斐性無しとか言われそうなのにそうならないのがジュウ様ですw 
 
 まぁ電波的な彼女の真のヒロインはジュウ様っつー事は周知の事だろうしな

556:名無しさん@ピンキー
06/12/08 16:09:50 chM1+zEX
それは無論デフォです

557:名無しさん@ピンキー
06/12/08 20:55:11 RygT8ECx
感想書き忘れてたぜ。スマソ
GJっす497さん!やっぱジュウ様は女性に苛られて赤くなるのは最高です!
……ってかここで止めですか!相変わらず寸止めが好きな方だせw だが待つ!裸で

558:名無しさん@ピンキー
06/12/08 22:31:59 Ap4a3rG1
もうそろそろ風邪ひくぞw

559:伊南屋
06/12/09 13:38:53 p5PvNOIM
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』

Ⅵ.
 人の何かが切り替わる瞬間というものがある。
 真九郎はかつて、それを見た事があった。一人の少女が刃を持った瞬間、それは起こった。
 人という存在の特異点。あれは世の中にある“そういったもの”の一つだった。
 なればこそ、二度と見る事は無いだろうと、そう思っていた。
「雪姫、抜いて良いぞ」
 金髪の少年の一声。それを聞き、雪姫は腰に差した倭刀を引き抜いた。
 刹那、まるで氷水に叩き込まれたかのように全身が粟立った。襲撃者すらその足を止めてしまっている。
 雪姫から噴き出す、圧倒的に濃密な空気。真九郎はそれを知っていた。
 それはかつて、“あの少女”が放っていたものと全く同質のものだった。
 人の持つ負の感情の中でも、最も昏く忌避される感情。
 それを、殺意と言う。
 他者の命を蔑ろにし、奪い、棄てる。その明確な意志。
「斬島雪姫、参る」
 初めて聞く雪姫の氏。それは“あの少女”と同じ氏だった。
 刃を扱う為に存在する、斬島切彦という、あの少女と同じだった。
 全てが、同一。酷似した存在。
 雪姫は悪辣な笑みを浮かべた。
 人の全てを否定する笑み。
 そこに来て、襲撃者達は再び動き出した。雪姫に呑まれた空気が、再動する。
 次の一瞬、光刃が交差する。
 血が、糸を引いて散った。


「疾っ!」
 裂帛の声に合わせ、ジュウに刃が振るわれる。煌めく銀閃。それが弧を描く。
 ジュウはそれを、腕に填めた鋼鉄の小手で拳を放ち、受け止める。
 火花を散らせ、甲高い鋼同士の激突音が響いた。鐘を打つかのように鐘音が鳴り渡る。
「うおぉっ!」
 弾かれた刃が再び振るわれる。だが遅い、遅すぎる。刃より速く、逆の腕で拳を握り渾身の一撃を襲撃者の顔面に叩き込む。顔の中心、鼻が砕かれ血糊を盛大に撒き散らしながら襲撃者の一人が無様な悲鳴を上げ倒れた。
 それを見届けたジュウが息吐く間もなく背後、更に一人がジュウに斬り掛かる。高速の大上段からの振り下ろし。刃が肩を深く抉る軌道で迫る。ちりちりと首筋を灼く緊迫感をジュウは感じた。
 反応したジュウが身を避わし、振り向こうとするも間に合わない。完璧な死角からの攻撃に身体が付いていかなかった。
 迎撃は土台無理と見たジュウは更に体を傾げる事で刃の軌道から外れる。
 軸のずれた体は辛うじて刃を掠めつつも逃れた。
 

560:伊南屋
06/12/09 13:40:10 p5PvNOIM
 掠めた刃はジュウの肩を薄く斬り裂いていた。血が俄かに噴き出し、ジュウの肩口を赤く染める。しかし、それをものともせずにジュウは体を建て直す。
 脚は地を強く踏み締め、崩れた体に力を漲らせ、直立させる。
「くっ!」
 力んだ事でジュウの肩口から更に血が溢れた。
 襲撃者の振り下ろした刃が、返す軌道で斬り上げに変わる。その刹那。
「これ以上、手前に斬らせる肉はねえ。だがな―」
 ジュウの口角が吊り上がり獰猛な笑みを象る。
「骨は二、三本貰っとくぞ」
 胴への拳。突き上げる角度で打ち込まれたそれは、肋骨を数本へし折り内臓に突き刺さる。肉の潰れる音が体内から漏れ聴こえる。
 内臓の潰された襲撃者の口からは鮮血が吐き出させれた。
「がはっ……」
 自らの吐いた血溜まりに襲撃者が沈む。
 それを見下ろし、ジュウは呟いた。
「まったく、肉を斬らせて骨を断つなんて、割に合わねえんだよ」


 円堂円は丸腰だった。騎士ならば持っているだろう剣も、今は馬車の中。
 しかし円は恐れていなかった。
 例え眼前に三人の襲撃者が居ても、それは変わらず、揺るがない。
 自らに対する確固たる自信と、襲撃者に対する如実な蔑み。
 前者は兎も角、後者は円の男嫌いから来る感情だ。
 それを感じ取ったのか否か、襲撃者に剣呑な気配が漂う。
「まったく……丸腰の女相手に大の男が寄ってたかって。刃物振り回さなきゃ戦えないの? これだから男なんて嫌いなのよ」
 それを挑発と受け取ったか、襲撃者達は色めき立ち、包囲の輪を縮める。
 じりじりと迫る襲撃者達に、円は横柄に言った。
「めんどくさいから早くしましょう。まとめて掛かって来なさい」
 その一言は致命的だった。
 弾かれた様に襲撃者達が円へ肉迫する。応じ、円も動いた。
 三人の内一人、その懐に潜り込む。
 その男には世界が回った様に見えた筈だ。
「あが……?」
 背に衝撃。見えた夜空に仰向けに倒れた事を知る。
 立ち上がろうとするも、出来ない。身体に力が入らない。視界が揺れ、酷い吐き気が込み上げた。
「脳を揺らしたわ。しばらくは立てないでしょう」
 そう言って円は冷めた瞳を男に向けた。
 円がしたのは単純な事。懐に潜り込み、掌で男の顎を撃ち上げた。それだけ。
 それだけの単純な事だが、簡単な事ではない。


561:伊南屋
06/12/09 13:41:23 p5PvNOIM
 目にも留まらぬ速さと寸分違わぬ正確さ、それがあって初めて、一撃で脳震盪による戦闘不能に陥れる事が出来る。
 まさに、達人の動きであった。
「―次」
 呟き。同時、円は再び動き出す。
 襲撃者は身構え、迎え撃つ一撃を見舞う。
 横薙の一振りを身を低くする事で避わす。大きく開いた胴へ、拳。
 鳩尾へ振るわれたそれは、柔らかい腹に抉り込まれる。
 ジュウの肉体破壊の一撃とは違い、この攻撃は内臓破壊の一撃。臓腑への衝撃に襲撃者は吐寫物を吐き散らし倒れる。
 身を痙攣させ蹲るこの男もやはり、一撃で戦闘不能。
 圧倒的だった。
 恐怖に身を竦ませる最後の一人に、円が一歩踏み出す。
「ひっ!」
 恐慌に陥った男は後じさる。
「……ここで捨て鉢になって掛かって来るならまだ救いもあったのに。―情けない」
 一瞬で男の顔面に円が現れる。少なくとも男にはそう見えた。
 身に戦慄が走る。
「だから男って嫌いよ」
 衝撃。それは恐ろしい苦痛を伴って、下半身から全身に伝わった。
「あ……っが!」
 円の膝が、容赦なく男の股間に突き刺さっていた。それだけならまだしも、ぐりぐりと穿っていた。
 男が泡を吹き、白目を向き倒れる。
 場合によっては金的はショック死すら引き起こす。
 こと男に対しては、最も残虐な攻撃であった。
 それでも円は終始変わることのない冷淡な表情で佇んでいた。
「……情けない」
 ―いや、こればっかりは無理です、流石に。
 その場にいた男が全員そう思ったのは言うまでもない。

562:伊南屋
06/12/09 14:00:34 p5PvNOIM
レディオ・ヘッド補足授業二時間目
「と言うわけで二時間目です」
「随分いきなりだな……」
「お気になさらず。では今回も一問一答で行きましょう」
Q.雨が電波一巻で前世は魔法や魔物のある世界と言っていましたが?
「そういやそうだったな」
「はい。これについては作者の責任です。しっかりと読み返していなかった為、忘れ去られていました。恐らくその内何事も無かったかのように世界がファンタジー化して行くと思われますね」
「良いのか、それ?」
「まあ未熟者だと思い流してあげてください」
「……そうか」
Q.ジュウと真九郎が同年代のようですが?
「作者は現世においてはジュウ、紫同年代説を推していますが作中においてはジュウ、真九朗同年代でやっていますね」
「なんでズレるんだ?」
「一応解説としては“決して転生のサイクルは一定ではない”と言うことらしいですね。つまり現世への転生はジュウ様の方が遅かったためズレが生じた。と言うことらしいです」
「なる程」
「それに作中より年を重ねた紅キャラだとクロス感が出ない。と言うのもありますね」
「演出上の理由か」
「はい」

「少ないですが今日はこの辺にしておきましょう」
「そうか」
「ちなみ補足授業は作品が進むにつれ何度か行われると思います」
「未熟者故……か」
「はい。なお本コーナーでは皆さんからの質問を募集します。質問には次回の補足授業で、答えられる範囲で答えますので遠慮なくして下さい」
「……なんの番組だよ」
「作者がバカですから、仕方ありません」

続く

563:伊南屋
06/12/09 14:04:12 p5PvNOIM
 毎度、伊南屋です。

 やっとお届け出来ましたレディオ・ヘッドⅥ。今回は正確には前編になります。ですからバトルシーンは今しばらく続きます。と言っても次で終わりますが。
 慣れないバトル描写に悪戦苦闘しましたので、なんか変になってるかもしれません。その辺は平にご容赦を。

 というわけで今回はここまで、相も変わらずリクエストは募集。補足授業への質問ね。
 以上、伊南屋でした。

564:名無しさん@ピンキー
06/12/09 16:46:17 iRw5sdPI
伊南屋さん、相変わらず上手いなあ。
俺も戦闘描写が上手く書けるようになりたい……。

565:名無しさん@ピンキー
06/12/09 21:26:46 d9XLitlS
ヤバいっす!サイコーっす!血沸き肉踊る感じでした!
しかし真九朗の戦闘は今回ありませんでしたね。こちらの真九朗はビビり癖があるか気になる所です……
あ、それと気になったというか早速質問なんですが。
ジュウ様は剣を執らないんでしょうか?己の拳のみで敵を薙ぎ倒すのもジュウ様らしくて好きなんですが……力強い剣で敵陣を走り抜く御姿を見てみたい気も……っていうか単なる要望ですねw……スイマセン

566:497
06/12/10 20:36:07 cVAdv5FO
 ……室内には出しっぱなしの放水の音が雨のように満ち、その合間に二人分の荒い呼吸音が混じる。ジュウはやや
あって、むっくりと身を起こした。体全体にまだ痺れるような快感の余韻が残っていたが、それが疲労感よりもむしろ己
が獣欲を掻きたてるのを彼は感じていた。その視線の向ける先は、いまだ稀にも見ぬような白痴のごとき顔で座り込む
少女、円。その、頼りなげに見えるほどの細身を、匂い立つような女の身体を、滅茶苦茶にしてやりたいと、彼の本能
からの叫びはそう言っていた。
 蒼白いほどの手首を掴むと、びく、と一つ震えてゆっくりとこちらを見る、その瞳。いつもはまるで鋼のような冷たく鋭い
輝きをもってこちらを射るそれは、いまや確かな熱を湛えて揺れている。それを見た瞬間にもうジュウは堪らなくなり、
そのまま円に覆い被さっていった。そしてそのまま床に組み敷いた円の柔らかい身体の、二つの丘陵へと己が指を……
 「や……」
 ほんの微かな、聞き逃してしまっても可笑しくないような声だったが、それは確かにジュウの耳へと届いた。頼りなげな
、儚い声。視線を上らして円の顔を見て、ジュウは頭から湯ではなく水を浴びた思いになった。
 円が、怯えていた。
 目を両手で隠して、瞑った口元は僅かに戦慄き、ギュッと身体を縮こまらせている。あの、円が。その様はどこか、叱
られた幼子をすら思わせるほどに弱弱しかった。
 みるみると、猛る性欲は己が分身と共に萎え、代わりに言い様の無い罪悪感が襲い掛かってくる。それはまるで信仰
する偶像を自ら汚したかのような、心深くまで突き刺さるような痛みであった。
 黙ったままで、身を起こし、背を向ける。気配で、背後の円が自分を見るのが分かった。どういう目で見つめているのか
、想像したくなくて、ジュウはただ、すまん、と一言だけを残して浴室を出た。

 着替えて自室に戻ったジュウは、ベッドに腰を下ろした。そしてそのまま、俯き、じっと動かない。電気も点けず、薄暗い
部屋の中でなお判るほど悄然たる顔で、ジュウはただひたすらに後悔と自己嫌悪に金縛りにあったように身動きも取れ
ず固まっていた。
 馬鹿野郎、何をやってる、なんで俺はあんな事を。何が王だ、何が騎士だ。ほんの僅かにあったはずの信頼を自ら踏み
躙るようなただのスケベでバカな猿じゃないか。救えねえよ、死んじまえ。
 ……冷静に考えればジュウが悪い訳は無く、普通に考えても全くしようの無い事だったのだが、円に酷い事をした、と
いう思いは、一切の理屈をも飛び越えてジュウの心をギリギリと締め付け、軋みを上げさせた。恐らくは良くも悪くもそう
いう部分こそがジュウのジュウたる所以なのだろうが。
 「……柔沢君」
 何時の間にか部屋の仕切りが僅かに開いて、逆行と共に円の顔が覗いていた。黒く影になってその表情はよく見えない
が、その声は微かに震えを帯びて、か細い。その声を聞き、恐る恐るといった様子で彼女が部屋に足を踏み入れた途端
、ジュウは立ち上がると頭を下げた。
 「すまんっ!」
 「え?」
 唖然とした呟きも耳に入らぬまま、ジュウは続ける。
 「謝って、済む事じゃないのは解ってる。お前の言う通りだ。俺は、お前や、雨達と付き合っていて良いような、そんな
人間じゃない。勘違いしてたよ。居心地が良くて、もしかしたらずっとこんな生活が続いていけるのかも知れない、なんて
そんな馬鹿な期待をさ……」
 「ちょっと待ちなさい」

567:497
06/12/10 20:36:48 cVAdv5FO
 何時の間にか、目の前まで近付いてきていた円が、呆れ返った声で遮ると、グイ、とジュウの肩を押して顔を上げさせ
る。薄ぼんやりとした明かりの中、ジュウのそれと相対した瞳は、既にいつもの冷たい輝きに戻っていた。いや、いつも
よりはよく見れば幾分か柔かい物を感じさせる。
 「おかしいでしょう。何故あなたが謝るのよ」
 「え、いや、だってお前の事を襲おうとして……」
 「わたしが誘惑して、先にあんな事までしたのよ」
 「……ああ」
 そう言えばそうだった、と今更ながらに思って、ジュウはようやくそれだけを口に出した。円は、何やらもう色々と馬鹿
馬鹿しくなった、とばかりに大仰な溜め息を一つ吐いた。

 さて、そうして、二人で暗室の中で二人して言うべき事が途切れて、しばし沈黙の帳が下りた。
 何か緊張のようなものを孕んだそれを破ったのは、ジュウの一言だった。
 「なあ」
 「なに?」
 「『誘惑して』って、今言ったよな」
 「ええ」
 円の声は、挨拶でもするように普段と変わらない。ジュウの声は、訝しげにくぐもっていた。
 「なんで、だ?男嫌いのお前が、なんで?」
 円は、しばし黙してから、皮肉気に笑いを刻んで答えた。
 「聞いたら軽蔑するわよ?」
 黙りこむジュウの反応をどう見たのか、そのまま続ける。
 「あなたをね、公園で膝枕してた時。あなた、私の事を“女”として見たでしょう?」
 ぎくり、と実際に音にも出そうなほどにジュウの心臓が跳ねた。バレていたのか、と今更ながらに頬に血が上る。部屋
の暗いのがせめてもの幸いだった。
 「その時にね、ふと思ったのよ」
 目を伏せる。
 「あなたを誘惑して、そしてあなたが私の物になったのなら、雨は、雪姫は、あなたから離れるんじゃないかって……」
 「な……」
 それきりジュウは絶句した。円が、彼女がそこまで自分の事を嫌っていたのか、という思いよりも、むしろ彼女がそんな
下劣とも言えるような発想を抱くとは信じられなくて、だ。
 「あなたの事は……少なくとも以前ほど、他の男ほどには嫌いじゃあないわ」
 相手の反応など気にも止めないように円の口は言葉を紡ぐ。
 「でも、あなたは危険。あなた自身の事だけではなく、周りの事が」
 それはいつかも聞いた言葉。
 「あなたは、人の内側まで、自身でも気付かないうちに入り込みすぎる。そのくせ、相手を自分の内側までなかなか受け
入れたがらない。だから、雨も、雪姫も」
 そこで少し口篭もって
 「そして多分、光も、皆何時の間にかあなたに近付きたいと思う。そうなってしまう」
 「そんな……」

568:497
06/12/10 20:37:25 cVAdv5FO
 ジュウの言葉を遮って円の言葉は続く。
 「だから、これ以上皆があなたに近付く前に、って、そうすれば……」
 「待てよ」
 堪りかねてジュウは言った。かつて雨との関係について『二人の問題』だと言ったのは円ではないか。それを何故今
頃になって……と捲し立て、なおも言い募ろうと肩に手を置いて、ふと気付いた。首を垂れて俯いた円の肩は、僅かに
震えていた。
 「そうね……なんでかしら。自分でもよく解らない」
 寂しそうな笑いを含ませた声で、そう言った。
 「あなたに偉そうな事を言えるような人間じゃなかった、って事ね、私こそが。あの子達に相応しくないのは、私の方
だわ。馬鹿馬鹿しい。最低ね……」
 それだけ言って、黙り込む。ジュウは、そこで初めて掴んでいる肩の華奢さを意識し、そうして悄然とした円のその消え
入りそうな姿に言葉を失った。円堂円は、もっと強くて、自分など及びもつかないような自制心を持っている少女だと
思っていた。でも、それは間違いだったのか。彼女もまた葛藤し、迷い、悩み、時に間違うのか。いや、人間ならば、や
はりそれが正しいのだろうか。
 ふと、ジュウの心に一つの疑問が涌いた。
 「なあ、円堂」
 「……なに?」
 既に気死したかのような声でそう問う円に、ジュウは疑問をぶつけた。
 「だったら、なんでさっき俺に『先に自分が誘惑した』なんて言ったんだ?」
 「え?」
 予想もしていなかった事を言われた、という顔で円が振り仰ぐ。
 「お前の考えとは違ったけれど、俺は自分からあいつ等と離れようとした。だったら、お前の目的通りじゃないか。なんで
わざわざ否定するような事を言ったんだ?」
 「……なんで、かしら」
 本当に分からない様子で、円は視線を彷徨わせた。ジュウは続けた。
 「俺が警棒で殴られて怪我した時に手当てして、膝枕してくれたのはなんでだ?」
 「分から、ない……」
 首を横に振る。イヤイヤをするような仕草だった。
 「なんで、今そんな、言わなくてもいいような告白を、俺にしてるんだ?」
 「……」
 祈るように、ギュッと胸の前で手を組んだまま、円は沈黙する。
 「なあ円堂、俺は、弱い人間だ。今までだって色んな事件に遭うたび、いつも途中で投げ出そうと、逃げ出そうとした」
 円は黙っている。
 「でも、雨が、雪姫が、光が……お前がいてくれたから、俺はそうしなかった。一人じゃ何にも出来やしねえけど、誰かが
助けてくれたから、支えてくれたから闘えた。こんな情けない俺でも」
 円の顔を覗き込むようにしてジュウは続けた。真剣な顔で。
 「お前は、強くて、賢くて、カッコ良くて……でも、一人じゃ寂しいんだよな。俺も雨に言われたよ。強いってのと寂しい
のは違う、って」
 何となく力を入れるのが癖になっている眉間を緩める。
 「だから、アイツらの事もう少し頼ってやれ。言いたい事はもっと言えばいい。そんで、頼りないかもしれないけど、お前
を悩ませるだけかもしれないけど……もし良ければ俺の事も頼ってくれ」
 ほんの10cm程の距離で、二人の視線が交わった。
 「お前は俺の事どうでもいいって思ってるかも知れないけど、俺はお前がいい奴だって知ってるし、お前の事が好きだ」
 円の目から微かな灯りを反射して雫が滑り落ち、僅かにカーペットを濡らした。
 「ごめん、ごめんなさい……」
 堪え切れない嗚咽を漏らして、円はジュウの肩に顔を伏せた。そこから温かい染みが広がるのを感じながら、ジュウは
その合間の一言を確かに聞いた。
 「……ありがとう」

<続く>

569:497
06/12/10 20:37:57 cVAdv5FO
結局今回も終わんない~♪おまけに円のキャラ違う~♪
えー、そういう訳でですね、なんか今回最後まで行く予定だったんですが、いらん会話にスペ-ス取られてまた半端な
所で切れる事になってしまいました。
次回こそは、次回こそは必ず完結させますんでどうかあと一回お付き合いの程を。

>伊南屋さん
過不足なく戦闘のシーンが書けるのはホントに羨ましいっす。
あと、質問ですが、紅香や犬の人は出てくる予定あるんですかね?

570:名無しさん@ピンキー
06/12/10 21:40:33 AtJT3QCw
チクショウ、生殺しか(*´Д`)ハァハァ

571:名無しさん@ピンキー
06/12/10 22:16:33 S7wp3uBf
ジュウ様マジいい子

572:名無しさん@ピンキー
06/12/11 00:36:36 jERzGa/3
GJ。ジュウ様の心情が可愛すぎて萌えますw
というか途中スッゲー納得というか感心する台詞があったんですが 
 
 「そのくせ相手を自分の内側に入れたがらない」 
 いややっぱこれはジュウ様のトラウマから起用してますからね。小さい時に色々と傷付いて、泣き疲れて。その結果の結論が
「俺は、一人でいいんだ」
に繋がっている訳ですからね。
一人は寂しい癖に、皆居なくなる事を覚悟しているせいで無意識に人を内側に寄せ付けないようにする
イヤスッゲー納得しましたわ

573:名無しさん@ピンキー
06/12/11 00:45:14 4vaZag1i
ジュウ様は油断してるとナチュラルに殺し文句を吐くw

574:名無しさん@ピンキー
06/12/12 01:11:58 E4gd1Vs2
なんか皆やっぱりジュウ様が可愛くて仕方ないのねw
いや、俺もそうだけど。

575:伊南屋
06/12/13 09:24:19 HnrrQztF
 柔沢ジュウは不良少年だ。周囲はそう認識しているし、自分でもそう思っている。
 それは何も考えずに済む、楽な生き方を選んだ結果だ。それは逆に言えば、そういった生き方をしなければ深く考えすぎてしまうジュウの性格の裏返しなのだが。
 ただし、取り敢えず今、大切なのは別な部分だ。
 つまり、今大切なのは、柔沢ジュウが不良少年であるという事実。
 そのことなのだ。

『電波的な彼女と彼女』

 土曜日の朝、目を覚ましたジュウはベッドから身を起こした時、違和感を感じた。
 何だろう、何かが足りない。
 未だ眠気で、働きの鈍い脳では、何が足りないのか分からない。仕方なく、ジュウはいつものように思考を停止させた。
 顔でも洗えば思考がクリアになって、何が足りないのか分かるかも知れない。そう考えて立ち上がり、洗面所に向かうことにする。
 やけに体が軽い。しかし、どこか頼りない感じもする。
 体調が良いんだか悪いんだか。今日はとことん変な感じだ。
 そんな事を思いつつ洗面所に入る。

 そこに、少女が居た。

 ボーイッシュな少女だ。
 単純にボーイッシュと言えば、ジュウには二人心当たりがある。
 一人は身長も高く、スラリと伸びた肢体と、短く切り揃えられた黒髪が特徴のクールビューティ。円堂円。
 もう一人は自らの従者の妹。竹を割ったような真っ直ぐな性格が少年のような少女。堕花光。
 しかし、そこに居たのはそのどちらでもない。
 そして、初めて見るその姿は、嫌と言う程見覚えがあった。
 身長は高くなく、それこそ自分と同年代の女性の平均程度ではなかろうか。
 こちらを見つめ返す、その強気な視線は光に似ているかも知れない。ただそこに若干、母親のような苛烈さも若干見て取れる。
 目を引くのは髪の毛だ。やや短めの髪は円ほどは短くはないと言った程度。
 そして、その髪は金色に染められていた。
 そこでようやくジュウの思考は現実に焦点を合わせた。
 茫然と佇むジュウの見つめる少女。
 そんなジュウを、やはり茫然と見つめ返すその姿。
 それは、鏡に映った自分の姿だった。
「マジかよ……」
 呟く声は、いつもより数段高かった。

 事態がハッキリしてしまえば足りない物も自ずと分かって来る。つまり、男には在るが、女には無いもの。それが足りない物の正体なのだろう。
 一応、“足りない物”の確認はしておくべきか。


576:伊南屋
06/12/13 09:26:08 HnrrQztF
 恐る恐る、手を股間に伸ばす。そっと下着越し、無論自分のトランクスの事だ。兎に角、下着越しに触れてみる。
「……ああ」
 思わず嘆く。無い、やはり無い。
 今まで、あっても嬉しいとは思わなかったが、無いなら無いで寂しいものだった。
 それにしてもどうしたものか。幸いにして今日は休日なので時間はある。
 だからと言って時間を掛ければどうなると言うわけでもない。
 完全に八方塞がりだ。
 頭を抱える。何から考えねばならないのかすら分からない。
 そんな時だった。玄関のチャイムが鳴ったのは。


「じゅ~ざ~わく~ん。あ~そび~ましょ~」
 ドアの向こうで雪姫の声がする。
 ジュウは迷う。出るべきか否か。
 迷って、決めた。出る。そして、助けを求めよう。素直に助けてもらおう。
 縋るような気分でアパートのドアを開ける。
「あ、ジュウくんおは―」
 ドアの向こう。待ち構えていた雪姫が固まった。
「お、おはよう」
 自分で何度聞いても慣れない声でジュウが挨拶する。恥ずかしさで顔が赤くなっているのが容易に分かった。
「ジュウくんが……」
 真っ青な顔で雪姫が身を震わせる。そして、近日中に響き渡る声で絶叫した。
「ジュウくんが女の子を家に連れ込んでるーー!!」
「違ぁう!!」
 ジュウも、絶叫で返した。
 しばらく後、管理人に大声について注意されるのだが、それはまた別のお話。


「というわけは……ジュウくんなの?」
 訝しげな視線で雪姫が指差す先にはジュウ。
 ジュウは小さくなった顔を前に傾げる事で肯定を表した。
「成る程……」
 取り敢えずの納得をしたのか、雪姫は大仰に頷いた。
「しかしまあ、なんというか……」
 ずいっ、と迫られジュウは顔を赤くする。それをみて雪姫は更に何かを考え込む。
「な……なんだよ」
 身を軽く引きながらジュウが訪ねると、雪姫は溜め息を吐いた。
「ジュウくんさ……可愛いよね」
「は?」
 唐突の言葉に呆気にとられるジュウ。それを無視して、雪姫の指がその頬に添えられる。
「ジュウくんの体、確かめて良いかな?」
 自分の体を確かめる?
 その意を計りかね、しかしすぐに答えに至り、ジュウは困惑する。
 ―確かめるっていうことは、例えば実際に見たり、触ったりするって事なんだろう。
 しかし、良いのだろうか。自分は男で雪姫は女で。つまりは異性な訳で、それなのに肌を晒すって言うのは。


577:伊南屋
06/12/13 09:27:55 HnrrQztF
 いや、今の体は女だから関係ないのか? でも心は男な訳で、こうして間近に雪姫の顔が迫っていることに、添えられる指に自分はドキドキしていて―
「えい」
「ひゃあああ!」
 前置き無く、体が縮んだ事でダボダボになったTシャツを捲られ、ジュウは存外可愛らしい悲鳴を上げてしまった。
 無論、ブラジャーなどしているわけなど無く、形の良い、若干小振りな胸がふるん、と揺れた。
 それを見て初めて気付く。
 自分の確認が、精々下着越しに“無い”事を確かめただけだったことに。
 自分のものながら、初めて見る胸の膨らみに目を奪われる。
 見つめながら考える。ジュウは“在る”事を確かめていなかった。
 つまりは取り敢えずは確認された胸と、まだ確かめてはいない、女性器の存在を。
「ふむ……どれどれ」
 雪姫の指先が乳房に触れる。
「ひんっ!」
 また可愛らしい悲鳴。それはやはりジュウのものだった。
 未知の感覚に思わず声を上げていた。指先が触れた部分が熱を持って痺れる。
「本物だね……」
 言って、雪姫は指先を離し今度は下へ。ジュウにも、すぐに意図が分かった。
「な、ちょっ。タイム! ストップ、ストップだ!」
 制する腕を避わし、他の部位同様に小造りになったウェストでは緩すぎるトランクスが下げられる。
 露わになったのは、極薄い茂みに覆われた、自らの秘部。
 ああ、やはり無い。そう思ったのも束の間。ジュウの視線と思考は、その茂みに囚われる。
 男として生きる限り拝むことのない、女性主観で茂みを見下ろす。
「“無い”ね……でも、代わりに“在る”のかな?」
 伸びる腕は下半身。太股の内側へ。
 囚われたままのジュウの思考は抵抗など考えもしなかった。
「ひぅ……」
 再三、悲鳴。
 男には一生賭けても分からない感覚を、ジュウは今、感じた。
 触れる雪姫の指先は恐る恐る、やがて大胆にしっかりとそこへ触れてくる。
 触れる力が増す度、感覚も明瞭になっていき、それが快感だとはっきりと分かるようになっていく。
 そうなると、生理反応が起こるのが人体のセオリーだ。
「……濡れた」
「え……?」
 雪姫の呟きに、ジュウが反応する。
「ジュウくん、気持ち良いの?」
 問われて、詰まる。
 確かに気持ち良かった。しかし、それを言葉にするのは当然躊躇われる。
 ただ、この場合沈黙こそが肯定だった。
「そっか」


578:伊南屋
06/12/13 09:30:18 HnrrQztF
 つ、と真っ直ぐ伸ばした指先が入り口に当てられる。
「続き、したい?」
 続きとは、触れるだけだった指先を中に挿入すると。そういう事だろう。
 ぐ、と浅く指先が沈められる。それだけで、秘部を中心に熱いものが広がった。
 正直、欲しいと。そう思った。
 しかし。
「だ、ダメ、ダメ、ぜったいにダメだ!」
 慌てて雪姫の指先を払いのける。
「ダメだ。それは、間違ってる。オレは男で、今身体は女だけど、根本的にはやっぱり男だ。だから、これは間違ってる。間違ってるんだ」
「ふぅん……」
 ヤバい、怒らせたか?
 黙り込む雪姫に不安になる。
 だけど、良いのだ。やはり、あのまま続けるのは間違ってる。
「やっぱりジュウくんみたいだね」
「は?」
 今日一体何度目だろう。ジュウは呆気に取られた。
「ジュウくんはさ。楽に生きようとしてるのに、そうしたがらないんだよ。今だって、流されちゃう方が楽なのにそうしなかった。そういう所でやっぱりジュウくんなんだなあって思った」
「……試したのか?」
「そういう訳じゃ無いよ。あれは可愛いかったから思わず悪ノリしちゃっただけ。でも反応みてジュウくんなんだなって、そう感じたんだよね」
「オレの話を信じて無かったのか?」
「正直、最初は全く。話を詳しく聞いて半分くらい信じる気になった。それで今ので八割かな?」
「まだ、八割なのか」
「仕方ないよ。やっぱりこんな状態は現実離れし過ぎてるからね。完全に信じるのは正直、ちょっと難しいかな?」
 申し訳なさそうに言う雪姫を見て、ジュウは気の抜けた溜め息を吐く。
「実際、そんなもんか……オレだってまだ信じられない。いや、信じたくないってのが正解か」
 だけど、と置く。
「それとは別に、さっきみたいなのは止めてくれ。正直、保たない」
「うん、ゴメン」
「……そういや」
「ん?」
「お前、そんな風に思ってたのかオレの事」
 ―楽に生きようとしてるのに、そうしたがらない。
 雪姫はそう言った。
「……知った風な口利いちゃったね」
「そんなことねえよ。案外、的を射ていると思うしな」
 言ってジュウはもう一つ思う。
 それに、人に理解されてるって言う感覚は案外、悪くない。
 それは言葉にしないでおいた。
「取り敢えず、どうするか考えなきゃね」
 そう言って、雪姫はジュウを再び見る。今度は真摯な瞳で。
「まずは……服かな?」
「え?」


579:伊南屋
06/12/13 09:31:42 HnrrQztF
「流石にそれはマズいよ。男物のダボダボTシャツにパンツだけってのはね」
 言われて気付く。確かに、今の自分の格好は際どい。
「自分の服じゃサイズ合わないだろうし……仕方ないかな」
 雪姫は、至って真面目な顔で言った。
「私の服貸すから、それ着て」
「は?」
 ジュウもはや癖のようになった間抜けな声を上げて、やはり呆気に取られるしかなかった。

 続

580:伊南屋
06/12/13 09:36:16 HnrrQztF
 毎度、伊南屋に御座います。

 やっちまった……。ジュウ様女体化ネタ。
 しかも続くし……。
 だけど、だけど、だけど……。

 仕方ないじゃないか楽しいんだから!
 職人デビュー後は百合専門だったしな。
 ビバ、おにゃのこ同士の絡み。

 所でこの後エロメインにするか迷い中。意見あったら言って下さい。

 そんなわけで以上、久しぶりに百合書いてテンション上がった伊南屋でした。

581:名無しさん@ピンキー
06/12/13 09:42:47 mt/qJcTU
女ジュウ様に萌える気持ちと、ジュウ様は男だからこそジュウ様、という気持ち
が半々ぐらいでせめぎ合うこの微妙な気分w
とりあえずここは一つエロメインでお願いします。

582:名無しさん@ピンキー
06/12/13 17:25:09 m9xMHbKk
おぉ…神作品が………毎度、伊南屋さんGJです!!女ジュウ、かなり萌えます

円、雨、光、雪姫、女ジュウの乱交百合を希望します

583:名無しさん@ピンキー
06/12/13 20:14:59 JQHWOA7e
斬島「ねえねえ雨、色仕掛けの色って桃色って感じだよねぇ?」
堕花「私はそうは思いません。色仕掛けをするような下品な輩の
   腹の内や一物は真っ黒だと思います。だから色仕掛けの色は黒です」
斬島「それはちょっと偏見じゃあないのかなぁ?」
堕花「雪姫の考えが古臭いんですよ」
斬島「だったら第三者に決めて貰おーじゃない!!」
堕花「望むところです」



斬島・堕花「「どっち?」」
柔沢「俺に聞くな!!」





円堂「やらしい」
柔沢(なんで俺が非難されるんだ・・・・?)

584:名無しさん@ピンキー
06/12/13 20:17:36 HTRyh30A
おぉ……!遂にジュウ様女体化来ましたか!女の子の体になってしまったジュウ様の行く先を思うと今から楽しみで悶えてしまいますw
 まぁ少し弱気というか感度良すぎというか……いきなり女の子の体になれば動揺位しますよね!
 いや、ぶっちゃけジュウ様は強気っ娘だ(ry

585:伊南屋
06/12/14 23:26:36 /lVOO1FV
「ああ……」
 激しく鬱。真逆、こんな格好をする日が訪れようとは。
 鏡に移る自分は服を着ていた。それによって、女であることを更に明確にしている。
 沈む思考をなんとか働かせ、ジュウはここに至るまでを回想していた。

 ―あれから、一度決めてからの雪姫は実に迅速だった。一旦家に帰り、紙袋を抱えるとすぐに戻って来た。
 紙袋の中には女物の衣服が数着。全て雪姫の服だと言っていた。それを差し出し、雪姫は着替えるようにと言い、部屋にジュウを残し出て行った。
 それだけならまだ良かった。
 雪姫が持って来た服は、いわゆるレディースに寄った物ではなく、デザイン自体は男物と大差ないものが多かったからだ。
 これを着ればボーイッシュ少女が一人出来上がる寸法だ。
 別に、それは良い。別にその服に着替えるのは耐えられる。
 問題は、それ以前。先に着るものにある。
 つまり、下着の存在。紙袋には数着の衣類と共に、女性用下着が入っていた。
 ぶらじゃーとぱんつ。
 頭の中で発音を思い浮かべる。今までの人生でそれを、パンツは兎も角としても、一体何度口にしたことがあるだろうか。恐らくは相当少ないはずだ。
 そう断じられる程に馴染みの薄いものだった。
 加えて、確認こそしていないが服がそうであるように、下着も雪姫の着た物ではないのだろうか。
 そんな考えと同時、下着姿の雪姫が脳裏によぎる。
 ―無理だ、絶対に無理だ。いや、むしろダメだろう。
「なあ、雪姫。この下着なんだが……」
 ドアの隙間から顔を覗かせ、待機していた雪姫に声を掛ける。
 気付いた雪姫は、ジュウが何か言うより早く部屋に入ってきた。
「下着の着け方が分からないの? じゃあ教えてあげるね」
「いや、ちょ……待て、違うって!」
 完璧に誤解だった。しかし、雪姫はこちらの意図などお構いなしに話を進める。
「じゃあまずは脱いで」
 言うが早いか身ぐるみを剥がされる。
「ブラジャーはね。こうやって……」
「うひゃぁ!」
 胸に触れられ、ブラジャーが着けられる。
「こうしてこう、分かった?」
 抵抗虚しく、鮮やかな手際で下着を着せられてしまったジュウは、鏡に映る自分を見て大切な何かを失った気がした。
 何というか男として大切な何かを。
 しかし、この身体、変に敏感ではないだろうか。
 軽く触られただけで電流が流れたようになってしまう。


586:伊南屋
06/12/14 23:28:40 /lVOO1FV
 恐らくだが、流石に着替えだけで感じてしまうほど女の身体は繊細かつ敏感では無いと思う。
 となると、やはりこの身体が異常なのか。
「なにボーっとしてるの? 早く着替え終わらせようよ」
「ん、あぁ……」
「じゃあはい、コレ」
 言って渡されたのは、紙袋の中から見つけた時に、絶対に着るまいと決めていたデニム地のミニスカートだった。
「……どうしたの?」
 動かないジュウを見て雪姫が首を傾げる。
「いや……」
 コレは勘弁してくれないかと言おうとして、躊躇う。
 雪姫は自分の為にこの服を用意してくれたのだ。ここで拒否するのはその厚意を無にする事になるのではないか。そう思うと断るわけには行かない。
 もっとも、それは考え過ぎな感があるが、ジュウはそうは思わない。義理堅さが裏目に出た結果の決断。
 ジュウは仕方なく、黙ってスカートを受け取ると、渋々ながら着替えを始めた。

 そして現在。鏡の中には女物の服に身を包んだ自分が居る。それを見ているとやるせない気分になってくる。
 何が一番辛いかと言ったら、服が似合ってしまっている事実が辛かった。
「うん似合う、似合う」
 言って微笑み掛ける雪姫。そこには何の裏も見れず、それが単純に思い付いた感想だと分かる。だが、それがまた辛い。
 かのロシア文豪も言っていた。思わず言っただけに余計重大なのだ、と。
 なんの世辞もなく言ったと言うことは、それが客観的事実である何よりの証だった。
 激しく鬱、再び。
「しかし、私の服がここまで似合うなんてね~」
 落ち込むジュウを無視しての、雪姫のその言葉はジュウにある事を思い出させた。
 雪姫の服。そう、雪姫の服なのだ。
 そして、自分は何故、着替え中に雪姫を呼んだのだったか。
 思い出して硬直する。再度よぎる、雪姫の下着姿。
 意思は淫らな妄想に耽る。
 身体は女でも、心は限りなく男のジュウであった。
 そして、精神は肉体に作用する。妄想に耽る思考は身体にも変化をもたらした。
「……っ!?」
 しまった、とジュウは思う。何だかんだでこの身体に慣れ始めていたのかも知れない。
 男の身体なら股間の膨張を恐れ、そうそう淫らな妄想には耽らない。しかし今はどうだ。
 その恐れは無く、実際見た目に変化はない。
 だが、それでも変化はあるのだ。見た目には現れないだけで、明らかな変化が。


587:伊南屋
06/12/14 23:29:56 /lVOO1FV
 身体に、さっき雪姫に与えられた熱がぶり返してくる。疼きは下半身を中心に広がり、秘部を濡らした。
 躯が興奮を訴える。
「どうしたの?」
「えっ!? い、いや。何でもない」
 悟られてはならない。ジュウは必死に取り繕い笑顔で返した。
 しかし、変なところで勘が良い。雪姫は顔をジュウに寄せ、鼻を鳴らす。
「ん~? えっちな匂いがするよ?」
 そんな事が分かるのか。
 下に恐るべきは女の勘か……いや、絶対に違う。
 これは単に雪姫の嗅覚が異常なのだ。そうでなければ、自分の中の女性像が壊れてしまう。
「どれどれ」
 雪姫がスカートを捲し上げる。
「うわっ!」
「……あ~、やっぱり濡れちゃってるね。沁みになってる」
「あ……いやコレは……あぅ」
 もはや言い訳は利かず、ジュウは口を噤んでしまう。
 顔を真っ赤に紅潮させ俯く。
 それでも疼く体は収まることはなく、ジュウは太股をもじもじさせる。
「ねえ、ジュウくん……いや、“ちゃん”かな?」
 雪姫が、蕩けた様な笑顔をジュウに向ける。
「確かに我慢しちゃう所がジュウちゃんらしいんだけどさ、全部我慢しなくて良いと思うよ?」
 その甘言は、ただでさえ異常事態に疲弊しといたジュウの心を揺るがした。
 良いのだろうか? 耐えなくても自分は良いのか。
 分からない。なんでこうなったのか、これからどうなるのか。不安に揺れる心は脆く、甘えるに易い言葉に傾く。
「あ……ぅあ」
 目尻には涙。気丈に振る舞えど、やはり不安は消えてなどくれない。耐える心は軋みを上げて、歪みを曝す。
「ふ……っう」
 限界だった。
 意地で固められた堤防は決壊し、感情の奔流が溢れ出す。
「大丈夫……せめて今だけは忘れさせてあげる。気持ちよくして、何も考えられなくしてあげる」
 雪姫の顔に浮かぶ笑顔は、慈愛に満ちていた。そう見えた。
 それが錯誤でも、偽りでも構わないと、ジュウは思った―。

 続

588:伊南屋
06/12/14 23:34:12 /lVOO1FV
 毎度、伊南屋に御座います。

 ジュウ様女体化ネタ続きになります。
 すんげえ寸止めですね。
 ま、次の投下はレディオ・ヘッドだったりもするんですがね。
 並行でやってるからこんな事になってます。もう少し投下タイミング考えろ俺。

 とまあ続き物が二つに増えてしまいました。つっても女体化ネタはすぐに終わると思いますが。
 そんな感じで以上、伊南屋でした。

589:名無しさん@ピンキー
06/12/15 03:25:06 rPVo3jt+
女体化とか百合って、基本的に苦手な方なんですよ。
でも読まされちゃったw やっぱり上手いなあ…凄い。
本当に他に言葉出て来なくて申し訳無いけど、GJです。

590:名無しさん@ピンキー
06/12/15 07:41:56 h835MMWc
伊南屋さんGJです!!次の投下wktkしてます

591:名無しさん@ピンキー
06/12/16 12:59:02 MTJt58S8
チクショウ、女になってもやっぱりジュウ様はネコなのか!!(*´Д`)

592:名無しさん@ピンキー
06/12/16 13:27:33 lEzHaFU3
ジュウ様可愛すぎw(誉め言葉) つまりは、伊南屋氏GJッス!
そして>>591

593:名無しさん@ピンキー
06/12/16 13:30:50 lEzHaFU3

やっぱジュウ様にはネコ耳だよな? 
 
書き込み失敗してスマソ

594:伊南屋
06/12/16 18:21:11 jr5NPNkQ
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅵ・2.

「うわぁ……」
 思わず呟いた真九郎が見る先。そこには体を痙攣させ地をのた打つ男。
 円に股間を潰される一部始終を見ていた身としては、男ならではの同情を禁じ得なかった。
 それは自らが対峙する男も同じ様で、顔を蒼白にしながら視線を無様に転がる仲間に向けていた。
 しかし、それも短時間の事。互いにすぐに気を取り直し、仕切り直しとなった。
 こうして改めて向かい合うと、やはりただ者ではない。
 浅く身構える姿は一分の隙もなく、その実力を窺わせる。
 滲み出る闘気に、体の芯が震え出す。それは真九郎の悪い癖だった。
 どれだけ肉体を鍛えようとも、精神は薄弱なまま。容易く怯え、身を竦ませる。
 真九郎は舌打ちして、自分の不甲斐なさを嘆く。いくら崩月の技を磨こうと、遂に崩月の戦いに置ける心構えは身に付かなかった。
 躊躇ってしまう。傷付ける事に、傷付けられる事に。
 だが、退く事は出来なかった。
 角を―肘に埋め込まれた崩月の力を解放すれば、対等以上に戦えるだろう。だが、それで自らが崩月の関係者であると知られてはならない。
 紫が九鳳院であると知られてはならないのと同様。それはマズい。
 それでも決めたのだ、守ると。あの、幼い少女を、濃紫の闇に沈められていた少女を。
 他の誰でもなく、この自分、紅真九郎が。
 少女―紫の事を想う。誓いを思い出す。
 それで、震えは止んだ。
 がくがくと揺れていた脚は、確かに地を踏み締めていた。
 一つ、深呼吸。大きく息を吸い、呼気を腹に溜める。丹田、臍のすぐ下にエネルギーがあるイメージ。
 脚を浅く曲げる。溜め込んだ力を、全て下半身に伝える。
 爆発するように、力を解放。水平に近い角度で身を跳躍させる。
 一瞬、距離は零に。しかし敵も超反応を見せ、身構える。
 身体を狙った真九郎の拳は、辛うじて掌に受け止められる。
 男はそのまま肩を引き、真九郎を引き寄せるように腕を取る。
 体勢を崩し、よろめいた真九郎の背中に肘が撃ち込まれる。衝撃に肺が潰れるような感覚に襲われ、息が詰まる。
「かはっ……!」
 微かに洩れたのは喉に引っ掛かったような呻き声だった。痛みにそのまま倒れ込みそうになる。
 それでも、倒れるわけにはいかない。


595:伊南屋
06/12/16 18:22:55 jr5NPNkQ
 片膝を付き、両手で体を支える。不格好に跪くが、倒れだけはしない。自分が倒れたら紫を守れないと、己に言い聞かせ踏ん張る。
「おぉっ!」
 立ち上がらない。跪いたまま、腕を相手の腰へ。低くから突き上げるタックル。
 均衡を失い、襲撃者もろとも倒れる。もつれるように転がり、真九郎と襲撃者は共に土を纏った。
 そこからは美しさも何も無い、まるで子供の喧嘩だった。
 上に乗った方が殴り、時に上下を逆転させ、互いに拳を振るい合う。
 それは、戦闘技能など無視した、ただの殴り合いだった。或いは我慢比べ。殴り勝つまで殴る。それだけの戦い。
 真九郎は怯えていた。相手の力量に。
 ならば、その力量の関係のない戦いにすれば良い。最初はタックルし、そのまま地に転がすつもりだった。
 それを、手痛い反撃を受けたが、結果的には目標は達成した。
 後はスタミナ勝負だった。
 複数人相手では通用しない、稚拙な策を真九郎は成し遂げた。或いはそれは、真九郎に運があっただけなのだろう。
 しかし、要は勝てば良いのだ。そこに至る経緯など気にしない。気にする余裕など無い。
 ただ殴る。殴り、殴られ。それでも殴る。
 勝つために。
 勝って、紫を守るために。それだけのシンプルなロジック。
 殴って、殴って、殴って、殴って。
 やがて、襲撃者は動かなくなった。どうやら真九郎は勝った、らしい。
 自らも鼻血を垂らし、顔を腫らし、内出血で肌を紫色に変色させながら、それでも真九郎は勝ったのだ。
 自らの誓いを、今は守ることが出来た。不思議と力が溢れてくるようだった。
 そうだ、自分でも戦い、勝つことが出来る。不細工で格好悪くとも。それでも勝てる。
 真九郎には未だ、美学と呼べるものがない。戦いに置けるそれならば尚更だ。
 だからこそ、ただ勝利だけに拘って戦える。諦めず、泥に汚れながら、血を流しながら。
 ただ、勝てば良い。
 ―なんだ、簡単じゃないか。
 恐れはいつの間にか無くなっていた。
 それは単に高揚がもたらした、感覚の麻痺なのかも知れない。だが、真九郎は構わなかった。
 気が付けば、周りを数人の男が囲っていた。一人が倒され、警戒を強めているようだった。
 怖くない。それだけで良い。今の自分に必要なのは恐れない事なのだから。
 真九郎は、自分でも気づかぬまま唇で弧を描いていた。
 そうして、名乗りを上げる。


596:伊南屋
06/12/16 18:24:10 jr5NPNkQ
「崩月流甲一種第二級戦鬼、紅真九郎」
 他の誰にも聞こえぬよう小さな声。だが、そこに込められる意味は変わらない。その代わり、次の言葉は強く、力を込めて言う。
「さあ、次はどいつだ」
 肘の角は未だ腕の中。それでも真九郎は、死んでも引かない覚悟を決めていた。

 圧倒的だった。銀閃が煌めく度に血煙が飛沫く。痛みなど感じる間もなく、男達は己が身を、命を欠落させていく。
 そこは戦場ですらない。ただの処刑場だ。それも私刑による殺戮でしかない。何の正義もなく、ただ屍が積み重ねられる。
 薄い笑みを張り付けたまま、雪姫は刃を振るっていた。
 刀を突き刺し、そこを狙われれば襲撃者から刃を奪い、それで返り討ちにする。
 全て急所。必殺の一撃だった。雪姫に向かった襲撃者はことごとく斬り捨てられている。
 最初から異様な雰囲気を放っていた雪姫に、最も多くの人手が割かれたがそれも無意味であった。
 むしろ、悪戯に死者を増やすだけだ。
 雪姫の周りに転がる死体。ジュウ達には無い、絶対的な差だった。
 実力では、そこまで差が開く訳ではない。体術で言えば円とはほぼ同等。
 なのに、この差はなんなのか。
 簡単だ。意識の差。殺すか殺さないかの選択の差だ。
 ジュウも、真九郎も、円でさえも。誰一人殺していないのは殺す意志がないからだ。
 しかし、雪姫にはそれがある。
 たったそれだけの差が、屍を生み出していた。
 刃がある限り、雪姫は止まらない。殺す事を止めない。
 ただ、返り血の雨の中を往く。
 それだけの事だった。

 ジュウ達はひたすら、襲い来る襲撃者達を倒し続けた。しかし事態は好転しない。
 それは、物量の差。人数の差故だった。倒しても倒しても、襲撃者は更に仲間を増やす。
 一体、これだけの人数を動かすどんな理由があるのか。
 馬車の中の少女が関係するのか。事態を把握しきれないジュウには判断出来ない事だった。
 しかし、解ることもある。このままでは不味い。
 戦い続けるにも限度がある。そして、それは近い。
 止む無し、ジュウは声を張り上げた。
「このままでは無理だ! 正面突破する! 円は馬車を走らせろ。雪姫は進路の確保、活路を斬り拓け! 真九郎と行ったな。お前は馬車に乗り込め!」
 言葉に、全員が動き出す。
 馬車に向け全員が駆ける。
 雪姫は前に立ち、立ち塞がる者を斬る。円の捌きに応え馬が嘶き、馬車が走り出した。


597:伊南屋
06/12/16 18:26:13 jr5NPNkQ
 ジュウと真九郎は幌に駆け込む。
「行くぞ! 進路は領主城! 雪姫は道が開いたらすぐに乗り込め!」
 怒号の中、ジュウの声が凛と響き渡る。
 進路が開く。雪姫は指示通り、馬車へと乗り込む。それを円は確かめると、手綱を引き馬を全力で走らせる。
 加速する馬車に、襲撃者達が追いつこうとするが、間に合わない。
 徐々に離れていくその姿に、全員が安堵する。
「逃げ切れた……のか」
 呟いたのは真九郎だった。へたり込み、肩で呼吸をしている。
「まだだ、まだ安心は出来ない」
 否定するジュウの声に、真九郎がジュウを見る。
「少なくとも領主城に辿り着くまではな」
「そう……だな」
 確かに、いつ再襲撃があるか知れない。ならば、一刻も早く安全な所まで行かなくてはならない。
「円。馬は走れそうか?」
「疲れているとは思うけど大丈夫。朝まで止まらずに走れば領主城に着くでしょう」
「そうか……さて、と言うわけで俺達はこのまま領主城に向かう。お前達にはそれまでに降りて貰うわけだが……」
「大丈夫。こっちも領主城に用があるんだ」
 真九郎の応えにジュウは眉をひそめる。
「領主城に用?」
「悪いが言えない。こちらからも何も聞かないから、それであいこにしてくれないか?」
「……まあ、良いだろう」
 聞かれて不味いのはジュウも同じ。まさか、王であると名乗るわけにも行くまい。今回はあくまで忍びの旅なのだ。
「すまない」
「気にするな」
 二人の少年は互いに口を噤む。
 ただ、馬車が領主城へと走る中。沈黙が場を支配していた。
 虚偽と隠蔽。それらを抱えながら、二人は肩を並べる。
 それは、後の世から見れば運命的な、二人の英雄の出会った夜であった。

 続

598:伊南屋
06/12/16 18:30:16 jr5NPNkQ
 毎度、伊南屋で御座います。

 要約レディオ・ヘッドⅥが終わり。慣れないバトル描写に七転八倒しましたよ……。
 ここが終わったので次はジュウ様女体化ネタ続き。ぶっちゃけ早く書きたくて仕方なかった。
 今から速攻で書きます。そして明日には投下する。そんなテンション。
 
 そんなこんなで以上、伊南屋でした。それではまた明日。

599:名無しさん@ピンキー
06/12/17 10:32:54 KUSaAbEo
伊南屋氏GJっす!相も変わらず戦闘描写上手です。ってかアレで戦闘描写慣れてないんですか!? 
 
 ……才能とかやっぱあるんですねぇ 
 それにしても、今回はジュウ様が王様らしかったです!イメージ的には幻水って感じだなぁ。 
レディオ・ヘッドの世界観もそこら辺なのですかね?それともベルセルクとか……

600:名無しさん@ピンキー
06/12/17 14:07:21 ekZSp2t3
いつもながら素晴らしい作品…GJ!


素朴な質問なのですが、ここの保管庫ってありますか?
エロパロ保管庫覗いてみたのですが見つけられなかったので…

携帯からの初心者なのでよく解らなくて…
こんな質問してすみませんm(_ _)m

601:名無しさん@ピンキー
06/12/17 15:05:36 w0hrI1aa
ここの保管庫は、まだ無かったよーな。確か。

602:伊南屋
06/12/17 21:45:35 +wZjnwjD
 体の芯が甘く痺れている感覚に、ジュウは陶酔していた。
 自らの内側を弄る雪姫の指先は、どこまでも優しく。彼女の言葉通り、ジュウの不安を忘却させてくれた。
 ただ快感に耽る。意識的にそうする事でジュウは他を考えないようにする。
 水音、吐息、衣擦れ、唇から漏れる声。それが聴覚に届く全てだった。
 最初は違和感が先にあった女性としての性感は、今やそれが当然と受け入れられる。
 入り口をなぞる指先も微かな悦びを与えるだけ。それに対する抵抗は既に無くなっていた。
 深くまで挿れすぎないように気を使っているのだろう。緩やかな指遣いは最早、物足りなくすらあった。
「ゆき……ひめ」
 掠れ声をジュウが零す。常ならば野太いその声も、体が女になった今は艶を帯びた、切なげな少女のものだった。
「ジュウちゃん……」
 応え、雪姫が唇を近付ける。ジュウは瞼を閉じ、桜色の唇は薄く開き、その行為を受け入れた。
 柔らかく口が塞がれる。甘美な感触はジュウの心を更に麻痺させ、甘く締め付ける。
 暖かな温もりに溺れる。鼻腔から微かにそよぐ互いの呼吸すら、ジュウの疼きを増す一因になった。
 不意に、ジュウの下唇に濡れた感触が滑る。雪姫が自らの唇で甘噛みし、隙間から舌先でジュウの唇を舐めていた。
 熱を持った塊が掠める度に、そこを中心に切ない疼きが広がる。本能的な接触への願望が肥大化していく。
 ジュウは自ら唇を開き、雪姫の舌先を導く。しかし雪姫は、それには従わずひたすら唇への愛撫を続ける。
 確かにその愛撫は心地良い。しかしそれだけだ。充足感には程遠い。ジュウが求めるのは充足感。雪姫の愛撫は生殺しだった。
 我慢できず、ジュウは自ら舌を雪姫の中へと侵入させる。舌を絡めとり、口腔で深く繋がる。
「ん……ちゅ、ふむ……んふっちゅ……ぴちゅ」
 唾液を流し込み、舌で絡め、飲み込む。互いの唾液の混ざった、甘い蜜にジュウの理性はどろどろに蕩かされる。
 より深く繋がる為に、舌を差し伸ばし絡める。貪欲に蠢く舌は、更に淫らな音を口の端から漏れさせる。
 重ねられた唇から微かに唾液が零れ落ちる。顎を伝うそれは跡を残し流れていった。
 互いの舌がうねり、どちらのものかも解らなくなるほど激しく絡まる。
 小さな歯をなぞり、歯茎をくすぐり、頬の内側を撫でる。


603:伊南屋
06/12/17 21:47:10 +wZjnwjD
 その間にも雪姫はジュウの秘口への愛撫は止めていなかった。口付けに昴ぶっているのは雪姫も同じか。慰める指遣いは一層熱心なものに変わっている。
 ジュウの体もそれに反応し、はしたなく其処から涎を垂らし、ひくついていた。
 身体の反応はそれだけに留まらず、ジュウの小さな胸の頂きは桜色の芯を堅く尖らせている。
 その事に気付いた雪姫は、空いた片手を其処に向かわせ、つんと凝り立った乳首を無遠慮に摘み上げた。
「んんんっ!」
 唇は重ねたまま、ジュウはくぐもった悲鳴を上げる。
 それでも、より強く捻られる刺激に耐えられず遂に唇を放した。
「くぁっ……雪姫、いた……い」
 涙目でジュウは訴えたが、それに返って来た雪姫の反応は小さな笑みだった。
「本当に痛いだけかな?」
 言って、下半身の愛撫をしている指を、膣中で曲げてみせる。同時、再び乳首がぎゅっと摘まれる。
「痛いの、気持ち良いんじゃない? 乳首虐める度にえっちな汁、零れてきてるよ?」
 雪姫の言葉にジュウは答えない。
 ただ顔を真っ赤にして俯くだけだ。
「それに―」
 雪姫が今までで一番強く、指先に力を込める。
「んはぁぁああっ!」
 鋭すぎる刺激にジュウが嬌声を上げる。
「今、アソコがきゅぅうって締まったよ? 気持ち良いんでしょ?」
 最早、ジュウにそれを否定する事は出来なかった。紅潮した顔で、ただ頷く。
「ふふ……痛くされて感じるなんて、ジュウちゃんはMなのかな?」
「そんなことっ……!」
「これでも?」
 雪姫の唇がジュウの胸元に近付く。薄く開いた唇は頂きを挟み、それに歯を立てる。
「―っ!」
 甘噛みではない、強い噛み方。しかしジュウの身体は顕著に反応を見せる。
「……ほら、また締まったよ? それに涎も溢れてきた。……これでも否定する?」
「くっ……」
 否定など出来る筈がなかった。事実、自分は痛みと同時に快感を覚え、身体ははしたなくその快感を訴えているのだ。
「ふふ……可愛い」
 再び、口付け。雪姫の柔らかい舌が潜り込み、ジュウを内側から愛撫する。
 頭の中に響く水音。まるで母の胎内で羊水に浸かっているような安心感に包まれる。
 ―どうでもいっか。
 そんな考えがよぎる。全て投げ出して、雪姫に甘えて。
 そんな風にしたい衝動に駆られる。マゾだからなんだというのか。それでも良いじゃないか。


604:伊南屋
06/12/17 21:49:01 +wZjnwjD
 麻痺した思考は簡単な結論だけを弾き出す。疲弊した精神はそれを疑問になど思わず、受け入れる。
 堕落。
 堕落していく。
「ちゅ……ぱ、んむっ。は……ぁ、ゆき……ひ、めぇ」
 蕩けた瞳で雪姫を見つめる。それだけがジュウに見える全て。そうであるかのように。
 雪姫の指が、深く膣中に沈められる。内壁を引っ掻くように曲げ、ジュウの快感を引き出す。
「んぁっ! あはぁ……っ!」
 ひくひくと身体が痙攣し、ジュウの絶頂が近い事を知らせる。
 雪姫はそれを感知し、更に愛撫を強め、絶頂へ更に近付ける。
「雪姫、雪……ひめ、ゆきひめぇ……っ」
 がくがくと身体を揺らし、与えられる快感に身を投げ出す。
 最後とばかりに、雪姫は胸を、膣を強く刺激する。
 それで、容易くジュウは昇り詰めた。
 頭が真っ白になる。膣を中心に全身に快感が広がり身体は言うことを聞かなくなる。
 背を弓なりに反らし、白い喉を晒しながらジュウは不規則に荒い呼吸を吐く。
「あ……あはっ、うぁ」
 何かを言おうとするが言葉に出来ない。ただ白痴のように不明瞭な声を出すだけだった。
 ジュウは強い絶頂にただ驚いていた。
 女性の絶頂は男性のそれの、およそ八倍であるという。
 ジュウがそれを知る由もないが、ジュウはそれを体感した。
 ただ、身を焦がす快感に陶然となりながら、呼吸を整える。
 やがて、快感に伴う熱が引き意識もはっきりしていく。
「どうだった?」
「ゆ……きひめ」
 虚ろな表情でジュウは雪姫を見る。笑みを浮かべる雪姫は優しくジュウの身を抱き締めた。
 温もりに、ジュウは不思議なまでの安堵を覚える。
 ―大丈夫、なのか。
 なんの保証が有るわけでもない。しかし、雪姫の声を聞いているとそれだけで大丈夫な気がしてくる。
 ―じゃあ、大丈夫なんだろうな。
 安心感。そして絶頂直後の倦怠感。それの板挟みに、ジュウは強い眠気を感じる。
「大丈夫だから……今はおやすみ」
 耳元に微かに届く雪姫の声。
 それを遠くに聞きながら、ジュウは深い眠りに沈んでいった。

 続

605:伊南屋
06/12/17 21:52:23 +wZjnwjD
 毎度、伊南屋に御座います。

 というわけで女体化ネタ続き。更に続きますよ。
 次はね、百合ハーレム(総受け)にするか破瓜(伊吹あたりと)にするか迷い中。つかいつも迷ってるな俺。

 と言うわけで以上、伊南屋でした。ご意見、ご感想お待ちしてます。

606:名無しさん@ピンキー
06/12/17 22:11:23 M/7cI8so
是非総受けで!!(*´Д`)

607:名無しさん@ピンキー
06/12/17 22:12:08 w0hrI1aa
>破瓜(伊吹あたりと)
それはなんと言うか色んな意味で勘弁していただきたいw
本編に関してはただ一言。おっきしました。

608:名無しさん@ピンキー
06/12/17 23:04:17 9Pf5+2WS
自分も総受けでお願いします!!(*´Д`)=з ハァハァ

609:名無しさん@ピンキー
06/12/17 23:30:16 KUSaAbEo
伊南屋GJッス!相変わらずエロイッス!
それはそうと自分も総受け希望ッス。 
 やっぱ相手が男は流石に抵抗あるというか羨まし(ry
まぁ雨とかも性転換してとかならアリだとは思いますが

610:名無しさん@ピンキー
06/12/18 08:55:54 mHHWWs0M
男ジュウ様がなぜか登場!…ってなったら百合苦手ぎみな自分には最高なんですが。

611:名無しさん@ピンキー
06/12/18 20:12:25 M9dPIA3a
ここは総受けしかないでしょう伊南屋センセ!!!
伊吹なんてどーでもい(ry

なにはともあれGJッス伊南屋さん

612:伊南屋
06/12/18 21:07:35 pAdyQqLO
 予想以上に破瓜ネタの反発が多いな……。反発自体は予想していたがこれほどまでとは。
 とりあえず皆さんの意見通りジュウたん総受けで書きます。

 ところでまた単発ネタ書こうと思ってるんでリクエスト募集します。
 ご要望には可能な限り応えますんで。

 それではまた。伊南屋でした。

613:名無しさん@ピンキー
06/12/18 23:39:10 GSwNkkeL
じゃあ犬の人×ジュウ様とか無茶言ってみる>リク

614:名無しさん@ピンキー
06/12/19 07:34:43 DdSTaTAQ
613氏に賛同!!是非、逆レイプもので…(ry

615:名無しさん@ピンキー
06/12/19 15:19:07 EHTzaxVw
雨とジュウの精神入れ替わりネタ希望します

616:名無しさん@ピンキー
06/12/19 23:53:47 QM5b7MUT
ジュウ様IN雨はともかく、その逆は色々と恐い者があるような……w

617:名無しさん@ピンキー
06/12/20 07:37:57 7U09eVbC
入れ替わりものなら、ジュウ×雨より雨×光のほうが面白そうじゃない?

618:名無しさん@ピンキー
06/12/20 10:43:15 YRkkgOUM
>>617
想像したらワロス(w

619:497
06/12/23 01:46:20 PFoG3msv
遅れたけど続きを


 ややあって円の激情の波も引き、落ち着きを取り戻すと、あとはただ耳の痛くなるような静寂の中、ジュウは何時の間に
かなんとなく抱き合うような格好になっている二人の体勢に思わず赤面し、先程の勢いに任せた自分の恥ずかしいセリフ
をも思い返して石のように固まってしまった。頭と体が熱くなり、耳で知覚できるほどの拍動が鐘のように頭の中で反響し
、モーター音にも似たノイズと化して鼓膜を圧迫する。
 が、円の方ではそんな事に斟酌するでもなく、やおら彼の肩から顔を上げ、グイと胸を手で押しやるようにしてあっさりと
身を離した。抱いていた仄かな温もりが去って言われぬような寂しさを感じた事に驚きながら、しかしジュウの身体はなお
燃えるような熱を抱えたままだった。
 「……迷惑、かけちゃったわね」
 それが、少しばかり胸から肩にかけて感じる濡れたシャツの感触に対する物なのか、それともそれも含めた今日の全て
に対する物なのか、ジュウには判断が付かなかったので、
 「迷惑なら、俺だってお前に色々かけたからな」
 「……本当に、変な人ね」
 無表情に、じっとジュウの顔を見つめていた円は、不意にフッと困ったように笑うと、そんな風に相変わらず褒めている
のか貶しているのかよく分からない事を言った。
 「それじゃあ、迷惑かけっぱなしのままでなんだけど、今日はそろそろ失礼するわね」
 「もう帰るのか」
 「ええ。このままいても、あまりお互いにとって愉快な事にはなりそうもないしね」
 そこで一旦言葉を切って
 「それとも……さっきの続きでもしたいの?」
 たちまち沈黙するジュウに、
 「まあ、今あなたにそう言われたら私からは断れないけど」
 冗談ともつかないような事を呟く。そして続けた。
 「……みっともない所も見られちゃったし、今更格好つけるでもないけど、この借りは今度きっちり返すから、そのつもり
でいて」
 「いや、別に俺はそんな気にしてないから」
 「私が気にするのよ。……何を笑ってるの?」
 普通に礼を述べる筈が、挑みかかるような口調のせいか、妙に不穏当に聞こえた円のセリフについ笑ってしまったジュ
ウは、鋭い視線で睨まれるが、涙の跡も消えきらない少し赤い目ではいつものような迫力が無くて、彼は苦笑しつつ「すま
ん」と謝った。それをなおも睨んで……はあ、と諦めたように一つ溜め息をつくと、
 「元は私が悪いんだから、別にいいけどね」
 とぼやく。
 まずかったかな、と思いつつも、拗ねた口調が少し可愛らしく思えたが、それを口に出して言うとなお不機嫌にさせてしま
う事は分かっていたので、そしらぬ顔をして横を向き、シャツの胸元を摘んでパタパタと風を起こす。なにか、先程よりも体
が熱いような気がしていた。円が涼しげなのに対して何故自分だけが?と疑問も浮かんだが、とりあえずは場所が悪いの
だろう、とドアを開けて居間に出る。
 「丁度、雨も止んだみたいだな」
 カーテンを引いて窓を開けると、外は既に軒とそれに程近い草木から夕立の余韻が垂れ落ちるだけで、空は既に曇天一
掃されて夕暮の赤光と忍び寄る宵闇とが彼方で混じり合って紫色に変じつつあった。
 「そうね、いいタイミングだわ」
 振り返ると、自分の後について部屋を出てきたらしい円が壁に片手をついてこちらを見ていた。
 「それじゃあ、お邪魔したわね。さようなら」
 一瞬だけ目が合って、しかし彼女はそう言うとあっさり踵を返し、止める間も無くその長い足を玄関の方へと向けて踏み
出して、はたと立ち止まり、黙って振り返った。ジュウを見るその瞳には、やや迷いの色が覗く。疑問符を浮かべるジュウ
に向かって少し口篭もってから、彼女はゆっくりと口を開いた。

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06/12/23 01:47:19 PFoG3msv
 「柔沢君」
 「……なんだ?」
 「今日は、色々と、あの……ありがとう」
 照り返す夕日のせいか、赤く染まった顔に、純粋な感謝の微笑みを浮かべた円は、有り体に言って非常に魅力的で、
ジュウは跳ねるように高まる鼓動を感じつつ照れ隠しのように
 「下まで、送って行こうか」
 そう言って彼女の方へ一歩を進め……ようとして、不意にその場に崩折れた。
 「柔沢君?」
 驚きの声を上げる円の事も気にする余裕も無く、ジュウは全身から脂汗を流しつつ酸素を求めて喘いだ。喉が収縮して
息が詰り、ドクン、ドクンと心臓が飛び出しそうに大きく、速くその拍音を打ち鳴らし続ける。ずっと感じていた熱は既に異様
なまでに高まって全身を炙るように苛み、脳をも沸き立たせ、溶かし尽くすような灼熱と化している。目の前が時折真っ白
い光で満ちて、それが苦痛よりもむしろ恍惚と快感を伴っているのにジュウは恐怖した。そして虫の羽音のような物で塞が
れた聴覚に、時折何者かが呼びかける声が響いた。
 ……セ。
 それは、徐々に強く、獰猛な響きを持って近付いてくるように思われた。
 ……カセ。
 それが、知らずしてとても恐ろしい物だと気付いてジュウは耳を塞ごうとしたが、それは明らかに己の内側から響いてくる
声だった。
 ……オカセ。
 その時、丁度彼の肩にほっそりとした優しげな手が置かれた。反射的に、ジュウはそれを掴む。そして顔を上げた。
 目を丸くしてこちらを覗き込んでいる少女と目が合った。最早それが誰なのかすらも思い出せないほどに混濁した思考
の中で、なおも声が叫ぶ。それはまさしくジュウ自身の声であった。
 この女を、犯せ。
 それが、この灼熱に晒され、乾ききった己の求める物なのだと、飢えを満たす物なのだと気づいた時、ジュウの身体は
理性を裏切って少女の体を引き寄せ、床へと組み敷いていた。そしてそのまま、襟元へと手をかけて力任せに引き千切っ
た。ボタンが幾つも飛び散り、裂けたシャツが大きく捲れ上がって、シンプルだが品の良い青いブラジャーに包まれた真っ
白い胸が露出したところで、呆然としていた少女がようやく我に返ったように短く悲鳴を上げた。抵抗しようとするが、両手
首をジュウが掴み、馬乗りになっている状態では何も出来ない。
 だがうるさい。煩わしい。そう思って、ぐいと片手で彼女の両手を纏め上げると、空いた方の手で拳を作り、振り上げた。
びく、と一つ震えて抵抗が止む。こちらを見上げるその見開かれた目に、怯えと共僅かに涙が盛り上がったのを見て、不
意にジュウは拳を止めた。頭を何かが過る。これと似た光景。この娘を泣かしてしまった。もうそんな事は嫌だと思った筈
の、そんな光景がどこかで……。
 衝動と、理性とが再びせめぎあう。頭の傷口が割れそうに痛む。他人には想像も付かないような脳内の地獄変。だが遂
に抗し得ないと判断したジュウの理性は、最後の力で歯を食いしばらせ、唇の端を噛み千切った。鋭い痛みと共に鉄の味
が口の中に広がる。そしてその合間から、縺れた舌が言葉を紡ぐ。
 「な……ぐ、れ……おれ、を……な、ぐ……て」
 その一瞬に、手の力が緩み、そしてするりと蛇のようにそれをすり抜けた感触と共に、ジュウは下から顎を突き上げる
ような衝撃を感じて、それを最後に彼の意識は闇に溶けた。

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06/12/23 01:48:32 PFoG3msv
 どう、と自分の体を掠めるようにして前のめりに倒れこんだジュウの体を苦労して仰向かせながらその下から這い出して
、円はふう、と一つ息をついた。ジュウは完全に失神しているようだった。自由になった両手で、斜め下から顎を掌打で打
ち抜いたのだから無理も無いが、下半身を押さえられた状態で咄嗟にそんな真似が出来たのは彼女なればこそだろう。
ついでに言えば、ジュウがやや前屈みの状態で、全くの無防備でいた事も幸いした。
 それにしても、と円は思った。一体彼の変貌はどういった訳なのだろうか。
 ジュウがこんな事をする人間ではない、という事は、円には痛いほどよく分かっていた。それぐらいならば最初の自分の
思惑が図に当っていた筈である。だが、最後に自分に向かって「殴れ」と言った彼はいつもの彼だったように思えた。
 そう言えば、と円は彼の顔を上から覗き込む。唇の端が裂けて痛々しい傷口を見せてはいるが、それよりも心配なのは
頭の傷の事だった。咄嗟の事で気遣う余裕も無かったが、今の打撃で傷口が開いたりはしなかったか、またそうでなくとも
何かしら影響があったかもしれない。病院での検査では異常は無かったが、だからと言ってこう一日に何度も頭部への衝
撃を受けては、喩え丈夫な彼でも危険だ。
 そう思って、穏やかな顔で目を閉じたジュウの額にそっと手を伸ばしかけた所で、彼が不意に苦しげに顔を歪めた。心配
が当ってしまったか、とやや青褪めて急いで携帯を取り出そうとした円の目線は、しかしある一点で止まった。それはジュ
ウの天を衝くように自己主張をするその分身であった。ズボンの上からでもはちきれそうに張り詰めている事が分かるそれ
は、あるいは先程の異常な行動とも併せて頭部の以上の証左なのかとも思えるが、それよりも円には強く、これがそう言
った事とは別の事として、自分のせいである、と思えた。
 ≪円堂≫の家は、紅読者の諸氏には言うまでもない事だが、裏の世界においての名門である裏十三家の一派である。
どの家も、各々凶悪と言っていいような能力を持ち、それを主に血によって引き継いでいる点では共通するが、全てが全
て戦闘を生業とするかといえばそういう訳でもない。≪円堂≫などはその典型であり、それが故に表の勢力と融和する事
にも成功した。
 すなわち、≪円堂≫の女子は、生まれながらにしてその身体そのものを男性に対する最大の武器として備えて生まれる
のだ。その身体で男を蕩かし、骨を抜き精を搾り取り心までも我が物とする。或いはそのまま全ての精を吸い尽くして木乃
伊としてしまう事も出来る。喩えその肉の誘惑から逃れようとしても、その体液は性的興奮の高まる所たちまち男を誘う媚
薬と化し、大気にも溶けて男を獣に変える。美しき食虫花。円がジュウを自分の体で誘って自分の物としようとしたのは、
決して彼女の傲慢でも自惚れでもなかったのだ。
 それが叶わなかったのは、円が≪円堂≫が表に交わった後数世代を数えた為かやや血が薄まっていたせいで、≪円堂
≫の家でもそれは分かっていたので、それを目覚めさせるべく苦心惨憺した。如何に生まれながらの能力とは言え、子供
の頃からあまり無茶な事をする訳にはいかなかったからである。だから、特殊な性教育をまず知識として詰込み、幼い彼
女を洗脳して自分達の都合の良いように育てようとした。だがそれは破れ、円にはその家に対する反発と男への嫌悪感だ
けが残ったのだ。家を飛び出さなかったのは、何処まで逃げても遂に逃れる事叶わず、という確信を持たせる≪円堂≫の
手の長さの故である。そして、途絶した事により中途半端なものに終わった円の自らの体への知識は、その媚薬効果につ
いてはほとんど知らなかった。だから、それがジュウの変貌に関わっている事を確信したのは、ほとんど本能に基づく直
感のような物である。
 ともあれ、円の愛撫は直接体液をジュウの体内へと注ぐ事は無かったが、その全身を舐めつくした。即効性においては
さほどでもないが、全身を覆い尽くすようなそれは徐々に内側へと染み入って、ジュウを獣へと変えたのだ。そして、気を
失った状態でもなおそれは彼を責め、苛んでいる。
 時折苦痛のうめきを漏らして、背を逸らすジュウを見る円の目には、後悔の痛みだけがあった。
 「……ごめんなさい」
 一瞬だけ決然とした光を宿した目を伏せてそう言い、そっとジュウの手を握る。外側はゴツゴツとしているが、掌は存外に
柔かかった。それをそっと、自分の胸へ当てる。
 「ッん……!」
 少しだけの嫌悪が混じった快感の声が吐息のように漏れる。深層心理から来る抵抗の意思が少しだけ彼女を躊躇させ
たが、それもすぐに快楽に取って代わられる。


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