【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】at EROPARO
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 - 暇つぶし2ch359:伊南屋
06/10/08 21:54:42 A4j4qjb8
 空は濃紫に覆われ、夜の近付きを予感させる。
 公園の中は薄暗く、街頭が頼りなく並木道と、そこに並ぶベンチを照らしている。
 そのベンチの一つに、銀子と真九郎は並んで座っていた。
 そこにあるのは沈黙。切り出すべき言葉を探す迷いと、切り出すべきタイミングを計る躊躇い。
「「あの……」」
 重なった言葉は気まずさを生み、再びの沈黙を運ぼうとした。
 しかし、意を決した銀子がそれを赦さなかった。
「話があるの……」
「……どうぞ」
「真九郎にとって大切な人って誰?」
「……色々居るよ。紫。崩月のみんな。五月雨荘の人達。紅香さん。それに勿論、銀子も」
「じゃあ」
 銀子が真っ直ぐに真九郎を見据える。
「その中で一番は?」
 言葉に、詰まる。
「なあ、銀子……」
「答えて」
 強い、言葉だった。
 此処に来て、今更迷う事など出来ないのだと悟る。
 弱い人間だと思う。紅真九郎は弱い人間だ。覚悟したはずなのに、今、迷おうとした。誤魔化そうとした。
 だけど、それは許されない。いや、許されなかった。
「俺は、きっと銀子が一番大切だよ。いや、きっとじゃない。確かに村上銀子が大切だ。比べるものではないと思う。それでも、素直な紅真九郎の意志として、銀子が大切だよ」
 ―言えた。なんの誤魔化しもない自分の想いを。
「……銀子は?」
 自分の想いは伝えた。では、銀子は?
「……」
 銀子は黙ったままだ。それでも真っ直ぐ瞳は真九郎に向けられている。
 やがて、銀子の口が開かれる。
「私……も」
 一度漏れた言葉は溢れ出す。
「私は、ずっと前から……きっと最初から真九郎が好きだった。
 でもそれを言葉にする事はおろか、自分で認めることすら怖かった。
 なんでかは分からないけど。怖かった。
 だけど、頑張ってる真九郎を見て、逃げちゃ駄目だって思ったの。自分のことを認める事から始めなきゃって。
 それで、言おうって思った。好きだよって。それで、どうすれば良いか分からなかったから、調べたの。
 私は調べる事しかできないから……それで、調べた結果、今日の事を考えた」
 それでか。なる程、映画の事を調べすぎたのも。あまりにも当たり障り無いデートコースも、それなら納得がいく。
 それに気付いた瞬間、不意に思ってしまった。
「銀子……お前、可愛いな」
「なっ……バカ! 何を言ってっ……」
 ようやく、いつもの銀子になった。

360:伊南屋
06/10/08 22:11:41 A4j4qjb8
 それでも一度感じた愛しさは薄れなかった。
 今こうして不機嫌そうにそっぽを向く銀子も、今日見た、普通の女の子の銀子もやはり同じ銀子。
 だから、やはり愛しい。
「真九郎、覚悟は出来てる?」
 不意に銀子が言った。
「覚悟?」
「そう、私と付き合うのよ? 生半可な覚悟じゃ無理よ?」
 ―なる程、確かにお互い裏社会に生きる者。特に自分は揉め事処理屋。命のやり取りだってある。
 だが、だからこそ矢面に立つことで銀子を守れる。
「ああ……守るよ。銀子を」
「何言ってんの? あんたが守るべきは私よりも家の看板よ?」
「は?」
「ちゃんと美味しいラーメン作れるようになってね? ―二人で足洗って平和に生きるんだから」
「……は、ははっ」
 そうか、そんな生き方も在ったか。
 なる程、生半可な覚悟じゃ無理だ。
 だってよく言うじゃないか。
「普通が一番難しい」
 って。
 ああ―でも、悪くない。悪くないな。そんな生き方も。
「分かったよ、銀子。日本一旨いラーメンを作ってやる」
「バカ」
 そう言うけれど。銀子は笑っている。
 それを見ると、やっぱり愛しいと思う。想いが、止まらない。
 手を、握る。
 引き寄せる。
 唇が近づく。
「…やらしい」
 銀子が呟く。
「……嫌か?」
「嫌じゃない」
 唇が触れた。

 気が付けば、夜が来ていて、頭上には銀色の月が昇り、二人を照らしていた。

361:伊南屋
06/10/08 22:16:05 A4j4qjb8
あい、どうも久方振りの伊南屋に御座います。
久方振りな上に予告とは違うわ、銀子のツンデレがラストにちらっとだけだわ。なんかやっちまった感はバリバリ。

こんなんで良かったら感想とか下さい。
あと毎度ながらリクエストは取ります。
今度こそ早めに上げますんで。

以上、伊南屋でした。

362:名無しさん@ピンキー
06/10/08 22:55:52 xI66WJ1U
オォォオ!!!GJです伊南屋さん!!
リクですか?ここはあえて一回も上ってない真紅朗×夕乃でどうか一つお願いします!!

363:名無しさん@ピンキー
06/10/10 03:04:52 OxChMZZx
「嫌じゃない」

何て言うか、うん、その、良いね。
また書いて下さい。出来れば!出来れば銀子でエロありを!
………あ、勿論夕乃さんもどんとこいですはい。

364:名無しさん@ピンキー
06/10/10 13:05:03 OxChMZZx
神が来てくれたというのに何だこのすたれようは……。
とりあえず伊南屋さんGJ!
真紅朗の内面描写が原作とそっくりで良かったと思います。
出来ればエロまで行ってほしかった……。リクは上と一緒で。

365:名無しさん@ピンキー
06/10/10 17:22:55 FYf0JUij
久々にのぞいたら投下されてたとは…
やはりいいですね
できれば後日談も見てみたい。そして夕乃さんに期待

366:名無しさん@ピンキー
06/10/10 18:35:07 xtaeNaYN
>おとなしめのデザインの薄手のワンピースにミュール、と言うのだったか。それを履いている。
>首元には派手になりすぎない感じでネックレスがかけられている。
この辺の描写が俺には出来ない……単純にファッションに詳しくないという事もあるだろうが…

367:名無しさん@ピンキー
06/10/10 21:01:02 OxChMZZx
神はまだ我々を見捨てていなかった!









という訳で上げ。

368:名無しさん@ピンキー
06/10/11 03:50:11 CS10PJjt
なぁ……本当に何なんだ?このすたれようは?折角神が来たというのに。

まぁとりあえずそんな訳で、伊南屋さんGJ!
リクは銀子か夕乃さんでどうかお願いします!

369:伊南屋
06/10/11 04:28:15 UPcvsXXA
 真九郎は目の前に意識を集中する。
 揺らぐような動き。微かな予兆。一瞬のタイミング。全て見逃さぬよう。
 構えた腕に力を込める。
 一時の静寂。
 そして―。
「はっ!」
 瞬間、真九郎の腕が跳ね上げる様に振るわれる。
 飛沫を上げ、“それ”が水面下より現れる。
 そのまま手首を返し、今度は腕を下へ薙ぐ。
 びしゃっ。と熱を孕んだ液体が地に飛び散った。
「……どうです?」
 真九郎が傍らに立つ男へ視線を向ける。
 逞しい腕を惜しげもなく晒し、やはり分厚い胸板の前で組んだ男は、その厳めしい表情に更に険を現す。
「……悪くはねえ、だが……」
 真九郎はただ、男の次の言葉を待つ。
「麺を茹でるだけで力み過ぎだぜ、シンちゃん」
 男が苦笑いを浮かべた。
 真九郎はその言葉にがっくりと肩を落とし、腕に握ったザルから麺を丼へと移した。
「シンちゃんはどうも真面目過ぎていけねえ。もっと気楽にやって良いんだぜ? 第一、麺の茹で加減自体は申し分ねえ」
 慰めるように男―村上銀正が真九郎の肩を叩いた。

 ―あれから、真九郎は揉め事処理屋の仕事を減らし、その分の時間をこうして楓味亭でのアルバイト兼ラーメン屋修行にあてていた。
 今は、閉店後の指導。
 と言っても、ラーメン作りに関して真九郎は全く素人同然。そのため初歩として麺茹でから入った。
 とりあえず一通りの指導を受け、最後に簡単なテスト。
 結果は、見ての通りである。
「まあ十分合格だ。後はやっぱ肩の力を抜くこったな」
 銀正は豪快に笑い、厨房の片付けを始める。
 真九郎もそれに習い、片付けの手伝いをする。
「私も手伝う」
 それまでカウンターで一部始終を見ていた銀子も、真九郎の隣に立ち、それに加わる。
「あんた、バカなんだから下手に考えない方が良いんじゃない?」
 銀子が呟いた。
 付き合う事になった今も、こういう所は変わらない。
 しかし、真九郎も言い返す。
「そう言うなよ。お前の為にやってるんだぞ?」
 お前の為に、という部分を強調して言う。
 銀子が、ぼっ。と顔を真っ赤にした。
「うるさい、バカ!」
 偶然洗っていたお玉で額を打ち抜き、銀子は逃げるように店から出て行く。
「言うねえ」
 銀正がぽつりと呟く。
「はい、嘘じゃ無いですから」
「ますます言うじゃねえの」
 そう言って銀正が笑う。

 日常は変わり、真九郎自身も変わりつつあった。
 ―そして、周りも。

370:伊南屋
06/10/11 05:10:53 UPcvsXXA
「真九郎さん」
 昼休み、たまたま廊下ですれ違った崩月夕乃に真九郎は呼び止められた。
「銀子さんと、お付き合い始めたんですって?」
 別段隠しているわけでもない。真九郎は「はい」と頷いて見せる。
「そうですか……」
 夕乃の表情に陰りが見えたのは気のせいか。真九郎は何となく次の言葉を躊躇う。
「真九郎さん。今日、家に来て下さい。私と、お祖父ちゃんから大切な話がありますから」
「……はい」
 答えた真九郎を見て、夕乃はあっさりと行ってしまう。いつもならもう二、三言葉を交わすのに。
 それでも、そんな事も有るか、と真九郎も歩き出す。
 歩む足取りは新聞部。銀子の下へ。
 手に下げた弁当を揺らさぬよう。それでも一時でめ早くと。
 真九郎は足を早めた。

「―ってわけだからさ。今日のバイト遅れるっておじさんに言っといて」
 先の廊下での一件をに伝えると、銀子は一瞬だけ眉根を寄せるたが。
「分かった」
 と言った。
 付き合い始めて以来、銀子も変わってきている。
 銀子も情報屋としての仕事は減らしているらしく。PCを弄る姿はめっきり減った。
 そして、今日の様に弁当を作ってくれたりも。
 朝、手渡された弁当を机に置く。
 本来ならば今渡されるべきだったのだろうが。朝の内に何でもないかのように渡されてしまった。
 それはさておき。とりあえず開けてみる。
 中は派手さはないものの、どれも美味しそうに見えた。
 銀子らしい。と思った。
 卵焼きを箸で掴み頬張る。
 僅かな甘味が口の中に広がる。
 ふと、隣を見ると銀子がじっ、と真九郎を見つめていた。
 無表情ではあるが、内心不安なのだろう。それが分かった。
 だから真九郎ははっきりと言ってやった。
「美味い」
 と。
「―そう」
 親しく付き合ってきた真九郎にしか分からない微かなレベルで、銀子が安堵に表情を緩める。
 それから、互いに言葉を交わしながら弁当を食べた。
 時折弁当を褒めながら。
 その度、銀子がくすぐったそうにするのが伝わって。真九郎も嬉しくなった。

「あ―」
 弁当を食べ終え、くつろいでいた所でチャイムが鳴った。
「……行くか」
 立ち上がり。歩み出そうとした真九郎を、ほんの微かな抵抗が留めた。
 見ると銀子が袖を摘むように掴んでいた。
 それだけで全て伝わる。
 真九郎は一度だけ。軽くキスしてやる。
 ―先の卵焼きの名残か。
 微かな甘みが唇にした。

371:伊南屋
06/10/11 05:13:10 UPcvsXXA
今から寝るんで一旦ここまで。
続きではリクエスト通り夕乃さんとのエピソードと銀子とのえちぃシーンまでやる予定。多分だけど。

以上伊南屋でした。お休みなさい。

372:名無しさん@ピンキー
06/10/11 09:22:28 IpDCIiUw
うぉ!?三日と待たず新作ですか!相も変わらず素晴らしい作品っす
冒頭のシーン。言葉は少ないのに張り詰めた様な雰囲気が読んでて伝わってきました。最初は素晴らしい戦闘描写とも取れる修行のシーンに、崩月流の修行かと思いましたよw
後、二人とも甘いですw甘甘ですwww
それでは長くなってしまいましたが、次の投下まで大人しく待ちます。色々と

373:名無しさん@ピンキー
06/10/11 15:11:21 CS10PJjt
最初の描写、角がでるやつかと思っちまったじゃないか……。

やってくれるぜこの野郎……!!!

374:伊南屋
06/10/11 20:34:53 UPcvsXXA
 放課後。真九郎は崩月の屋敷を訪れた。
「お邪魔します」
 いつも通り玄関から上がる。既に懐かしいとすら思える崩月の家に微かな安堵と。これから話される事を思う。
「いらっしゅい、真九郎さん」
 奥から夕乃が現れる。いつにない凛とした雰囲気に真九郎は一瞬呑まれた。
「あ、夕乃さん……」
「お祖父ちゃんが待ってますから、どうぞ」
 そう言って真九郎を居間へと促す。
 すっ、と床を音少な歩む夕乃は、居間の前に着いた所で真九郎を振り返った。
「お祖父ちゃんが中で待ってますから」
「夕乃さんは?」
「一対一が良いそうです。ですから私からはまた、後ほど」
 それだけ言い、夕乃は去っていった。
 一人残された真九郎は、茫としていても仕方無い、と。襖を開け居間へと入る。
 そこには確かに、崩月法泉が一人。真九郎を待っていた。
「来たか。まあ座れや真九郎」
 その言葉に従い。法泉と向かい合う形で真九郎は腰を下ろす。
「裏稼業、辞めるって? 女の為に」
 いきなりの核心。しかし、真九郎は迷いなく応える。
「はい」
「そうか……相手は村上の所の娘だって?」
「知って……るんですか?」
 法泉が村上の氏を出した事に驚き、真九郎は尋ねる。
「まあな、あそこの爺が有名だし、その息子もある意味じゃ有名だ。銀次の孫娘についても、それなりにはな」
「そうでしたか」
 確かに、あの家は裏稼業ではそれなりに名の通るのだろう。法泉が知っていてもおかしくはないと言える。
「しかし……銀次のせがれに続いてお前も足洗っちまうか。どうにも、あそこの女は男を変えちまうらしい」
 そう言う法泉はしかし、嬉しそうに笑う。
「まあ、別段俺は反対しねえから安心しな。大体そんなのはてめえで決めるもんだ。他人が口出しするもんでもねえ」
 ただ、と置き。法泉は表情を引き締める。
「覚悟はあるのか? 一人との立ち位置を変えれば、それに伴い周りとの立ち位置も変わっちまう。
 例えば九鳳院の嬢ちゃんはどうする? 子供でも女は女。あれはマジだぞ。お前の事」
 そう言われ、真九郎は考え、応える。
「確かに、紫を傷付けてしまうかもしれません。それでも……俺は銀子と居るって決めましたから」
 ただ公平でいられる事は出来ないのだ。人を好きになるという事はそういう事だ。
 それでも真九郎は決めた。あの夜に。
 だからはっきりと応える。
「俺は銀子が好きだから」
「……そうか」
 法泉が笑った。

375:伊南屋
06/10/11 21:17:25 UPcvsXXA
「俺の話は終わりだ。後は道場に行け、夕乃が待ってる」
 法泉の言葉に真九郎は立ち上がった。
 一礼して居間から出る。
 と、廊下に出た所で法泉が真九郎を呼び止めた。
「……一つ言い忘れた。
 “角”な、使い時はお前が決めろ。封印するんだろうが、もしかしたら使わざるを得ない時が来るかも知れねえ。
 そん時は迷うな、全部失ってからじゃ、遅いぞ」
「……はい、先生」
 再び、深く一礼して真九郎は道場へ向かった。


 道場に着いた真九郎を迎えたのは紅袴を着た夕乃だった。
「夕乃さん、その格好……」
「真九郎さんが似合うと言ってくれましたから」
 にこり、と笑みを浮かべ夕乃が答える。
「いや、あの……」
「真九郎さんがっ! 似合うって! 言ってくれましたから!」
 急に、夕乃が声を張り上げる。
 真九郎は戸惑いながら、夕乃に一つの異変を感じ取る。
「夕乃さん……泣いてるの?」
 目尻に浮かぶ微かな涙が、夕乃が泣いてるいる事を知らせる。
「泣いてます。……なんでか解りますか?」
 真九郎は黙する。言葉が見つからない。
「好きだからですよ。真九郎さんが。銀子さんに、負けないくらい」
 震える声でそう言うと、夕乃は構えを取った。
「真九郎さんも構えて下さい。―稽古をつけて差し上げます」
 真九郎は、両腕を掲げ、構えを取る。
 言葉での応えは求められていないと、解ったから。
 この“稽古”は、所謂けじめなのだろう。互いにとっての。
「参ります」
 すぅ、と夕乃の顔から表情が消える。流れる涙はそのままに、ただ表情だけが消える。
 一つの結末が、始まりを告げた。

 たん。
 軽い音しかしなかった。
 それだけで夕乃は真九郎との距離を零に詰める。
 貫手の形を取られた右手が振るわれる。
 真九郎は後ろへ飛ぶことでそれを回避。しかし僅かに及ばず胸元を夕乃の手が掠める。
 たったそれだけで真九郎の胴着と胸板の薄皮が斬り裂かれる。
 ちりちりとした緊張が首の後ろを走った。
 思わず、真九郎は呻きを上げた。
 立ち止まる暇はない、逐一立ち位置を変え、間合いを計り、機を窺う。
 僅かな、ほんの一瞬にも満たない僅かな隙を突き夕乃が距離を再び詰める。
 右の貫手を放つ。真九郎が半身になりそれを避わしたと同時。夕乃の脚が払われ、文字通り足元を掬われた。
 バランスを崩した所に両の掌が叩き付けられ、地に打ち付けられる。
 

376:伊南屋
06/10/11 21:53:10 UPcvsXXA
 追い討ちの掌を、地を転がり避ける。その勢いのままに全身のバネを使い、跳ねるようにして立ち上がる。
 背後へ跳びすさり、距離を置く。
 ぜぇぜぇと息が乱れる。先の掌が効いている。肺が軋みを上げているようだった。
 ジリ貧になっていけない。こちらからも攻めなくては。
 脚に力を込め、不規則に跳ね、攪乱しながら距離を詰める。
 間合い。真九郎は身を沈め、足払い。
 夕乃は後退しこれを回避。しかし真九郎は止まらない回転の勢いは殺さず、むしろ加速するように身を起こしながら、その勢いで裏拳を放つ。
 ぶん、と風を纏った一撃が夕乃を襲う。しかしそれも夕乃の手に受け止められ、逆に腕を取られた真九郎は投げられてしまう。
 全身を床に叩き付けられ、真九郎は息を詰まらせる。
 身を起こした真九郎は、再び接近。掌を夕乃目掛け打つ。僅かに首を傾げるだけでそれを避けた夕乃はカウンターの一撃を放つ。
 しかし今回は真九郎もそれを見越していた。腕でそれを受け止める。
 ずしん、と肉と骨を伝う衝撃に耐え、カウンターのカウンター。即ち後の後を取る一手。胴目掛けての膝。
 確かな手応えと共に膝が夕乃に突き刺さる。
 女性とは言え夕乃も崩月の人間。手加減はしていない。
 しかし、夕乃は何事も無いかのように真九郎へ更に掌を打つ。
 顎を下から撃ち上げ、胸を刺し貫く様な一撃を入れる。
 更に足払い。真九郎が地に這わされる。
 それで、決着はついた。

 結局、真九郎は一撃しか入れられず、それすら有効打とはなり得なかった。
 それが悔しい。弱い自分が。
 こんな事は初めてだった。
 今まで夕乃にどんなに打ちのめされても、実力差を感じても悔しい事はなかった。
 しかし、今は弱い自分が情けなかった。
 こうして地を這う自分が情けなかった。
「真九郎さん」
 見上げれば夕乃が居た。真九郎を仰向けに寝させ、額から瞼にかけ、濡れタオルを当ててやる。
 視界を覆うタオルが、心地良かった。
「これは、倒れている真九郎さんに、勝手に私がする事です。ですから真九郎さんは悪くありません」
 タオルに隠れた視界の向こうで夕乃がそんな事を言った。
 不意に、唇に柔らかいものが触れた。
「……大好きでしたよ。真九郎さん」
 余りの事に茫然とする真九郎を残し、足音が道場から去っていく。
 一人残された真九郎は、唇に残る感触と、銀子に逢いたいという事で頭が一杯になっていた。

377:伊南屋
06/10/11 21:54:39 UPcvsXXA
夕乃さんパート了。
今から銀子パートに戻ります。

翌朝くらいに投下予定。

以上伊南屋でした。

378:名無しさん@ピンキー
06/10/11 23:11:15 m+PyuJPE
銀子大人気だなあ。やっぱ死んじゃあおしまいだよなあ、リン……

379:名無しさん@ピンキー
06/10/12 01:42:25 MbOHHdr0
>「真紅朗さんがっ!似合うって!言ってくれましたから!」


正直、泣いた。
でもGJ。朝まで寝ずに待ってます。

380:名無しさん@ピンキー
06/10/12 18:24:53 MbOHHdr0
………ふわぁ、眠たいぃ。



たが俺は待つ!

381:伊南屋
06/10/12 21:13:44 NPBYUogr
 どれくらい経っただろう。
 一人残された真九郎は立ち上がり、道場を後にする。
 体の至る所が悲鳴を上げ、思い通りに動かない。
 ふらつく体を引き摺り、庭へ出る。井戸の水を汲み上げそれを体に掛けると、痛みに伴う熱が引いていくのが分かった。
 二度、三度と頭から冷水を浴びる。
 ろくに拭いもせずに、空を見上げる。
 陽はまだ落ちきっていない。にも関わらず、目を凝らせば月が見える。
 薄紫の空に紛れる様な月を眺めていると、銀子の事を思い出した。
 夕乃を傷付けた。きっと紫も、これから傷付ける。
 その代償に手に入れた彼女を想う。
 無性に逢いたくて、どうしても逢いたくなかった。
 相反する感情を持て余してしまう。
 どうするべきか。この後楓味亭へ向かうのは気が引けた。
 傍らに置いてある着替えと共に、携帯電話も置いてある。
 それを取り、アドレス帳から銀子を呼び出す。
 数度のコールの後、スピーカーから銀子の声が漏れ聴こえた。
「もしもし、真九郎?」
「銀子。今日は楓味亭に行けないっておじさんに言って置いてくれ。明日は行くからって」
「分かったけど……なにかあったの?」
 鋭いな、と思う。まるで銀子は真九郎という人間を全て把握しているかのような、そういう鋭さを見せる。
「いや、ちょっと崩月の用事が長引きそうだから。銀子が心配する事はないよ」
 勿論、嘘だった。
 全ては終わっていて、取り戻せない。取り戻そうとも思わなかったが。
「……そう」
 銀子はまだ何か言いたげではあったが、一応の納得を見せる。
「そういうことだから、じゃあ。また明日、学校で」
「……うん」
 終話ボタンを押し、電話を切る。
 真九郎は服を拾い上げ、庭から屋敷へと入る。
 銀子の事を想いながら、真九郎は着替えを始めた。
 それを終えると、居間の法泉に帰ることを告げる。

 ―夕乃は、最後まで現れなかった。

382:伊南屋
06/10/12 21:45:59 NPBYUogr
 屋敷を去った真九郎だったが、真っ直ぐ五月雨荘には向かわなかった。
 宛てもなく街を歩き、時間を潰す。
 静かなあの部屋には、帰りたくなかった。色々と考えてしまいそうで。
 コンビニで立ち読みしたり。ゲームセンターに入り、何をするでもなく煌びやかな光と音の渦に身を置いたり。
 ただ、何も考えないようにと街を歩いた。
 気が付けば、時間は十時を回り、一層夜は深まっていく。
 そこで漸く真九郎は足を五月雨荘へと向ける。
 部屋に着いたら眠ろう。それだけを考えて。

 真九郎が五月雨荘に着くと、自分の部屋の前に人影があるのが見えた。
 それは、良く見覚えのある少女だった。
「銀子……?」
 少女の名を呼ぶ。銀子はこちらに気付くと、真九郎に歩み寄る。
「……おかえり」
「……ただいま」
 そのやりとりに不思議な安堵を感じる。
「待ってたのか?」
「うん」
「どうして?」
「……あんな弱々しい声聴かされたら、心配になるに決まってるでしょ。バカ」
 心配かけてしまう程に声に現れていたのか。真九郎は心配をかけまいとして、それが裏目に出たことを知らされた。
「……とりあえず、入るか?」
「うん……」
 ポケットから鍵を取り出し、中に招き入れる。灯りをつけ、真九郎は座るように促した。
「……何があったの?」
 電話でも尋ねられた事を、再び銀子が尋ねた。

 真九郎は、崩月の屋敷であったことを全て話した。夕乃の事も、包み隠さず。
「そう」
 全てを聞いた銀子が言ったのはそれだけだった。
 代わりに、身を寄せる。
 俯く真九郎に声を掛ける。
「こっち向いて。真九郎」
 言葉通り、顔を上げた真九郎の唇に銀子のそれが重ねられた。
 永く、永く重ねられる。やがて銀子が、舌先で真九郎の内を割開く。
 抵抗する間もなく、舌が絡められた。
 ぎこちない舌の動きは、それでも真九郎を深く求め蠢く。
 頭の中に、くちゅくちゅという音が響く。
「……はっ」
 永い口付けから銀子が離れる。
「銀子、お前……」
「知ってるでしょ? 私が負けず嫌いなの」
 だって、と繋ぎ銀子が言う。
「崩月先輩と同じラインだなんて我慢出来ないもの」
 そして銀子は真九郎をじっと見つめ、呟いた。
「真九郎に覚悟があるなら、抱いてよ。私の事」
 真九郎は銀子の口の端から伝う唾液を見ながら、ゆっくりと、頷いた。

383:名無しさん@ピンキー
06/10/12 23:39:46 MbOHHdr0
………はっ!



つ、続きは!続きはまだかー!?

384:名無しさん@ピンキー
06/10/13 01:21:17 bPrj26VW
伊南屋さんGJです。相変わらずレベルが高いっすね。
それにしても続きが気になって仕方がない。



385:名無しさん@ピンキー
06/10/13 20:12:16 BKhL60zv
焦らすのがお好きな人だなwww

386:伊南屋
06/10/14 18:56:03 fS6Nk2Pf
 灯りの消えた部屋の中。照らすのは月光だけ。銀色の光だけ。
 その中に浮かぶのは、最愛の人。
 ただ、美しいと思った。
 優しく口付ける。啄むように何度も、何度も。
 徐々に熱を帯びていく口付けは、やがて互いを深く求め、舌先を絡めるそれへと変わっていく。
 頭の中に響く水音に。海の中に居るみたいだと思った。
 互いが溶けて、一つになる感覚。
 唇を離すと。つ、と糸が引いた。
 それが月光に照らされ銀色の橋のように光る。
 何も言わず抱き締める。好きな人の体温を直に感じる。
 それだけでこんなにも心地良いものだと、真九郎は初めて知った。
 指先を、銀子の服。その胸元のボタンに掛ける。
 銀子に視線を送ると、頷き肯定を示してくれた。
 一つ、一つ外していく。銀子の白い肌。華奢な躰が露わになっていく。
 そして、白い布に覆われた小振りな胸も。
「がっかりした? 小さくて」
 銀子がそんな事を聞いてくる。
 そんな事、あろう筈もない。真九郎は銀子に軽くキスして。
「綺麗だよ」
 と言ってやった。
 露わになった肌へ指を這わす。
 時たま体を震わせる銀子が、くすぐったがっているのではないと、すぐに気付いた。
 感じてくれているのだ。
 それが嬉しくて、またキスをしてやる。
 指先が胸元に辿り着く。布地の上から触れただけで銀子は体をぴくりと震わせた。
 自分と隔てる布地が煩わしい。
 真九郎は銀子の胸元を隠す下着を外した。
 改めて指先で触れる。
 ふに、と柔らかい、男には有り得ない感触に真九郎は恍惚となった。
 銀子を見ると、紅潮した顔で自らの胸元を這う指を潤んだ瞳で追っていた。
 真九郎は力を込め、弾力の中に指先を沈める。
 また銀子の体がぴくりと跳ねた。
 加減など分からないなりに、指先を使い銀子の胸をこね回す。
「……あっ」
 耐えきれず銀子が声を漏らした。
 その声を引き出すために、更に強く刺激を与える。
「は……っ、あ……ん」
 徐々に昂まる声に、真九郎は酔い痴れていた。
 自らは無意識のまま、舌を銀子の胸、その桜色の中心に這わす。
「んんっ……」
 突起を舌先で弾く、潰す、こねる。
 その度、銀子の唇から押し殺したような声が零れた。
「声、我慢するなよ」
 そう言ってやる。五月雨荘の壁は薄く、音は漏れやすい。
 それでも構うものか、と思った。
 歯を立て、強く吸い立てる。
「ひぁぁ……っ! しん……くろぉっ!」

387:伊南屋
06/10/14 19:23:12 fS6Nk2Pf
 銀子が矯声を上げ、悶える。
 それを聞き届け、真九郎は口を離した。
 自分をとろんとした目で見つめる銀子に、何度目だろう。口付けをしようとして、今更ながら真九郎は気付いた。
「……銀子、眼鏡……外していいか?」
 その言葉に銀子は少し考えて答えた。
「ダメ」
 と。
「外すと、真九郎が見えなくなるから。だから外したくない」
「そうか……」
 眼鏡はそのままに、キスをする。
「ねえ……真九郎」
 銀子が真九郎の手を取った。
「ここ……触って」
 誘われたのは、銀子の下半身。胸と同様。白い下着に覆われた中心だった。
 真九郎は躊躇わない。
 指先をそこに触れる。
 下着越しに触れたそこは、それだけで熱いと分かった。
 くち、と音がした。
 既に潤っているらしい。
 下着の上から指の腹を擦り付ける。上下する指の動きに合わせ、銀子が躰を痙攣させ、声を上げる。
 徐々に潤いは増し、下着からは水分が染み出し始めた。
 指先にぬめる液体が絡みつく。
 直に触れたい。
 真九郎は指先を銀子の下着、その端に掛け、ゆっくりと引いた。
 覆われた最後の部分が露わになっていく。
 白い下腹、その下には薄い陰毛。そして、既に濡れそぼり、月の光を淫らに照り返す秘裂。
 それらに真九郎の目が釘付けになる。
 僅かにひくつく中央の割れ目。そこから止めどなく溢れる淫水。
 不意に頭が叩かれた。
 視線を上に向けると銀子が顔を羞恥に真っ赤にしていた。
「あんまり、見るなバカ」
「悪い」
 そう言ってまたキス。指先は銀子の下半身へ。一番敏感な部分を刺激する。
 絡みつく舌と、指を這わす淫裂。
 二重の水音が耳朶をくすぐる。
「はっ……、ふはっ、ん……」
 動かす舌と唇の隙間から銀子の声が漏れる。
 それも加わり、至高の、淫らなオーケストラが完成する。
 快感に身を震わす銀子の体を片腕で支え、真九郎は指先と舌先をより一層激しく蠢かす。
「んっ……! ふっ、ひぅっ! うんんっ!」
 加速度的に銀子の息が荒げられていく。それすら意に介さず、真九郎は更に苛烈に責め立てる。
「はっ……! ぅぁあ! あ、あ、あ!」
 びくん! と銀子の躰が大きく跳ね上がった。
 脱力し、真九郎の胸元に身を預ける。
 はぁはぁと荒い息をつく銀子。
 イッたのは明らかだった。
「しんくろぉ……」
 微かに涙を浮かべる銀子は、本人の意に関係なく、真九郎の理性を奪い去った。

388:伊南屋
06/10/14 19:49:48 fS6Nk2Pf
 ぽすっ、と布団に銀子の体を横たえる。立てられた膝を割り、そこに真九郎は膝を着いた。
「……良いか?」
 我慢の限界だった。
 愛しい人の淫らな姿を見せられ、そしてそうしたのが自分で。我慢出来る筈がなかった。
 それでも、塵芥に散った理性の、ほんの少し残った部分が、真九郎に確認を取らせた。
 銀子は、涙目のまま、頷いて見せる。
 真九郎は、銀子の中心。未だに痙攣し、絶頂の余韻を見せる其処へ狙いを定めると、一息に貫いた。
「―っぐ……!」
 声にならない悲鳴を銀子が上げる。
 腕は真九郎を掴み、必死でしがみついた。
 真九郎はそれでも止まらなかった。止まることが出来なかった。
 銀子の膣中の熱が、ひくつく膣壁が、絡みつく淫液が真九郎に残された微かな理性すら洗い流す。
 頭が真っ白だった。
 ただ最愛の人、その体から与えられる快感を貪欲に貪る。
 幸いだったのは銀子の膣が十分に濡れていたことだ。
 引っ掛かる事なく、銀子の膣は初めての真九郎を受け入れた。
 膜が破られた痛みはあれど、それも引きつつある。
 その証拠に銀子が上げる悲鳴には、徐々に甘いものが混じりつつあった。
「くっ……! んっ! あっ……ぐぅ」
 声の割合はやがて甘い矯声が増え、確かな快感に銀子が溺れて行くのを示した。
「あぁっ! しん……くろっ……ぉ、しんく、ろお! ひぁっ! はっ、あん!」
 銀子の内は、更に深く真九郎を求め、誘う動きで蠢き、締め付ける。
 互いに高みへと昇り詰めて行く。
 押し寄せる射精感に真九郎は更に腰を速める。その激しい突き込みに銀子が翻弄され、快感に耽る。
「銀……子っ」
「しん……しんくろぉっ!」
 それまでで一番強く、銀子の膣中が締まり、真九郎にとどめを刺した。
 一番深くまで自らを差し込み、真九郎は精を放った。
 どくどくと、脈打つ陰茎から濃厚な精液が流れ込む。
 体の奥にそれを受け止めながら、銀子も絶頂を味わう。
 びくびくと膣が痙攣し、流れ込む精液を更に奥へと運ぶ。
 やがて精を放ち終えた。真九郎は銀子の内から自らを引き抜いた。
 どろり。と破瓜の証である血液混じりの精液が銀子から零れ落ちた。
「銀子……」
「真九郎……」
 互いに名を呼び合い。二人は何度も口付けあった。
 改めて、二人の繋がりを感じ、いつまでも、いつまでも口付けあった―。

389:伊南屋
06/10/14 20:04:37 fS6Nk2Pf
 月灯りだけが照らす部屋。真九郎と銀子は重なるように腰を降ろしている。
 共に見上げるのは二人を照らす、大きな月。
「真九郎は、弱くないよ」
 銀子がぽつりとこぼした。
「そうかな?」
「だって、真九郎は私を守ってくれるんでしょ? だったらきっと真九郎は絶対に私を守ってくれる。そう信じてる」
「……ああ」
「だから真九郎は弱くない。誰かのためならいくらでも強くなれるもの」
「……ありがとうな」
「ううん……」
 ぎゅっと、銀子を抱き締める。
 そうだ。自分は約束した。銀子を守ると。
 それだけじゃない。二人で平和に生きていくと。
 守るのは何も敵を倒す事だけではない。
 闘わないという守り方もある。
 かつて銀子の父である銀正がそうしたように。
「銀子……」
「なに?」
「好きだよ」
「……知ってる」
「銀子は?」
「知ってるでしょ?」
「でも聞きたい」
「……好き」
 ―大丈夫だ。自分は守れる。これで守れなかったら嘘だ。
 だって、此処に愛する人が居る。
 それは大きな支えだ。大きな力だ。
 そして、自分は弱くなどない。そう思える。
 根拠なんか要らない。守れると信じる。
 銀子が信じてくれるのだ。なら自分も信じられる。
「銀子……」
「なに?」
「ずっと一緒に居よう」

 これは、約束。一人、勝手な約束。
 ずっと一緒に居る。
 ずっと変わらずいつまでも。
 この月に誓おう。この銀色の月に。

 銀子が小さく呟いた。

「そんなの、当たり前」

 空に浮かぶ銀色の月が、二人をいつまでも照らし続けていた―。

Fin.

390:伊南屋
06/10/14 20:08:57 fS6Nk2Pf
はい、どうも伊南屋にござい。

まず言い訳。

焦らしたりするつもりはなかったんです。つうか夕乃さんのシーンが終わったら一気に終わらせるつもりだったんです。
だけど寝落ちしたり、書く暇なくなったりでなんか細切れに投下することに。
すいませんっした。

さて、謝った所でリクエスト取ります。
あれの続き読みたい。とか新作が良い。とか。
あったら言ってみて下さい。善処はします。

以上、伊南屋でした。

391:名無しさん@ピンキー
06/10/14 20:34:27 23sKiCWU
キテター!(・∀・)

超GJ!

392:名無しさん@ピンキー
06/10/15 09:08:31 XO3ZXWaU
GJです。それはもうGJです!何はともあれGJです!!

リクは、夕乃さんに日の目をどうか………。

393:名無しさん@ピンキー
06/10/15 17:52:21 gHJt1Gpj


                        !llllii,_
                     : lllllllli
       ,,,,,,,,,,,,,,,:              llllllllll:
       :゙!llllllllllliiiii,,,:         .lllllllll|:
        : ゙l!!!!lllllllll・           lllllllll|:
           : ゙゙゙゙′        llllllllll: : ,,.,,,:
                     : lllllllllliiilllllllllllli,:
        : ,,,,,、       : :,,,,iiilllllllllllllll!!!lllllllllll:
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    : _,,iiilllllllllllllll!l’          : lllllllll|...,llllllllll「
  : ,,,,iillllllll!lllllllllll!″        .,,,iiiillllllllllllilllllllllll°
 .:゙゙l!!!゙゙゙゙",iilllllllllll    : ll,    ::ll!!゙゙゚llllllllllllllllllll!″
     : ,lllllll!lllllll:    ::lll:       :,llllllllllllllllll!:
    ,,,lllllll゙`lllllll,,,,,i!:  .:llli,:     .,,,illlllllllllllllllll゛
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  .,lllllllllll!!゙.,lllllllll:      .゙゙′     ;lllllll:
  .゙lllllll!゙` ::lllllllll|:            :;llllll|
   ゙゙゜  : illllllllll:            : llllll′
      .:lllllllllll_               :llllll:
      .llllllllllll゙            : lllll|
      .:lllllllll!″           : llll|:
       ゚゙゙゙゙°               lll゙
             様
             有
             難
             う
             ご
             ざ
             い
             ま
             す


394:名無しさん@ピンキー
06/10/15 23:23:08 z49vhJ35
夕乃さんものキボン

395:名無しさん@ピンキー
06/10/16 18:23:34 THOJE9Z/
なぁ、次の新巻が出るのが来年っていうのは本当なのか?

だとしたら結構ショックなんだが………。

396:名無しさん@ピンキー
06/10/17 11:30:37 sIY065Qu
まぁそんなに短期間にポンポン出せるもんじゃないだろ
やっぱデータが吹っ飛んだのは痛かった

397:伊南屋
06/10/18 19:37:05 xEonZaqd
 それはほんの些細な事が原因だった。
 夕乃が真九郎の目が覚めるより早く、五月雨荘に着いてしまった。それだけの事。
 真九郎が目を覚ます時間は夕乃も知っている。部屋の中で寝息を立てているだろう真九郎を想い、笑みを零す。
 そんな折、夕乃はとある事を思い付いた。
 それを実行に移す為、極力音を立てぬよう慎重に扉に鍵を差し込み開ける。
 部屋に入ると、中はカーテンに光が遮られ未だ薄暗い。その部屋の中、真九郎が布団にくるまり眠っていた。
 あどけない真九郎の寝顔をしばらく眺め、幸せに浸る。
 充分寝顔を堪能してから夕乃は、さっき思い付いた“真九郎さんを起こしてあげて新婚気分”作戦の実行に移る。
 布団の傍らに立ち、布団に手を掛ける。
 夕乃はそれを一気に捲り上げる。
「さぁ、真九郎さん! 朝で……」
 絶句。
「え……ゆ、夕乃さん? ……うぁっ!」
 真九郎も絶句する。
 布団の中に在ったもの。
 それは、朝の生理現象で膨らんだ真九郎の股間。
 真九郎はなんとか隠そうとするも、布団は夕乃が掴んでおり叶わない。
 あたふたしつつ、仕方なく手で包み隠すも、それは余りに頼りなかった。
 気まずい沈黙が部屋中に漂う。
「あ、あの……夕乃さん、これは」
「真九郎さん!」
 必死で紡がれた真九郎の言葉は夕乃の一喝に妨げられる。夕乃は更に言葉を繋いだ。
「私、言いましたよね? どーしても我慢出来なくなったら、私に言って下さい。と」
 そう言うと夕乃は真九郎の正面に膝を着く。表情に悲しみを含ませる夕乃に真九郎は無条件の罪悪感を感じる。
「ゴメン……」
 今日の放課後、道場に行くよ。
 真九郎がそう言うより早く、夕乃が言った。
「分かりました。今から徹底的にしごいて差し上げます」
「今からって……。これから学校だし」
「時間は真九郎さん次第です。……あ、でも上手く出来ないと言うことも……」
「痛む体で学校行くのは辛いし」
「痛くしないよう、頑張ります」
 どうにも認識にズレがある。
「稽古するんだよね?」
 確認の言葉に夕乃が首を振る。真九郎の股間に視線を送り言う。
「今から扱いて差し上げるんですよ? 真九郎さんのソレを」
 ―そっちか!
 てっきり稽古でしごくという意味だと思っていた。確かに、どの様にしごくかは言われていなかったが―。


398:伊南屋
06/10/18 19:59:37 xEonZaqd
 確かに、夕乃は真九郎にとって最も異性というものを感じる存在だ。だけど、だけど、だけど。
 混乱する真九郎に夕乃が身を寄せる。
「真九郎さん」
 本人の意志に関係なく手は取り払われ、膨らんだままのそこへ、布越しに夕乃の手が触れる。
 むず痒い、それでいて痺れるような快感が真九郎を襲う。
 その刺激に、真九郎のソレがびくん、と跳ねた。
「スゴい、今動きました……」
「夕乃さん、もう止め……」
 制する真九郎の言葉が聞こえていないのか、夕乃は真九郎のパジャマとパンツの両方に手を掛ける。
「……苦しそうです」
 そう言い、一気にずり下げる。
 真九郎の下半身が外気に晒される。ひやりとした朝の空気に真九郎は身を震わせた。
「これが真九郎さんの……」
 堅く、天に向かうソレに夕乃の指先が絡められる。
 新しいオモチャを買って貰った子供のように、好奇心に満ちた瞳で真九郎の下半身を見詰める夕乃。その表情が余りにあどけなくて、真九郎は背徳感と興奮を覚える。
 もはや夕乃を止めようとは思わなかった。それよりもこれから与えられ快感に想いを馳せる。
「こうするんですよね?」
 夕乃の手が真九郎をきゅっ、と握る。掌の柔らかさと、体温が伝わる。
 それだけでも充分に心地良いのに、それはゆっくりと上下を始める。
 ゆるゆると扱かれる度に、今にも暴発しそうな快感が真九郎を苛む。先端からはすぐに先走りが零れ始めた。
「何か……出て来ました」
 手を休め、夕乃がそれを指先に絡める。ぬるぬるとした液体を指先で弄び、糸を引かせ、匂いを確かめる。
「これ……何ですか? 精液とも違うみたいですけど」
「なんていうか、気持ち良くなると出てくるんだ」
「じゃあ……今、真九郎さんは気持ち良かったんですか?」
「うん……かなり」
 言葉に、夕乃が微笑む。
「じゃあ、もっと気持ち良くなって下さい」
 夕乃による手淫が再開される。先走りが潤滑液となり、新たな快感が真九郎に与えられる。
「くっ……」
 思わず声を漏らす真九郎。その声を聞いた夕乃は更に上下を早める。
「気持ち良いですか? ぬるぬる、沢山出てきてます」
 夕乃のその言葉通り。真九郎の先端からは先走りが流れ、夕乃の掌の上下に合わせ、くちゃくちゃと淫らな水音を立てている。
「夕乃さん……っ」
「出したいですか? 精液。良いんですよ? 出しても。その為にやってるんですから」
 

399:伊南屋
06/10/18 20:16:47 xEonZaqd
 夕乃の掌に微妙な力が込められる。
 真九郎を責め立てる夕乃の掌に、真九郎は我慢の限界が近付く。
「スゴい……びくびくってしてます」
 痙攣するような真九郎の動きに夕乃が笑みを浮かべる。
「真九郎さん、出して下さい。真九郎さんの精液、見せて下さい」
 にちゅにちゅと音を立て、更に手の動きが早められる。
 それだけでなく、時に緩められ、力の強弱と合わせ絶妙な刺激を与えてくる。
「くっ……! 夕乃、さ……っ」
 限界だった。
 一際大きく真九郎が跳ね、先端から白い粘液を迸らせる。
 量、濃度とも充分以上のそれは、高く飛び、夕乃を頭上から白く染めた。
「す……ご……」
 初めての精液の感覚。粘つく触感と、独特の香りに夕乃が呆となる。
 ただ、手の動きはそのままで。
「ぅあっ! 夕乃さんっ、止めっ……!」
 射精中にも関わらず、与え続けられる刺激に、真九郎は身を悶えさせる。
 射精は止まらず、絶頂が永続的に続くようだった。
 遂には真九郎は強すぎる刺激に身を仰け反らせた。
 その時点でようやく夕乃は手を離した。
「す、すいません。大丈夫ですか?」
 心配そうに声を掛ける。
「こ、腰が……」
「え?」
「腰が抜けた……」
 ―そう、真九郎は強すぎる刺激に、腰が抜けてしまっていた。
 しばらくは一人で立つことは出来ないだろう。
 夕乃はその事が分かると、心配するどころか、逆に笑って見せこう言った。
「では、今日は学校を休みましょう。私もこんなにベタベタでは行けませんし。代わりに今日一日中は真九郎さんのぼんのーを絞り出しましょう」
 ―真九郎は恐怖に怯えながら、それでも再起し始めた自身が限り無く情けなかった。

 まだ時計は七時前。
 今日と言う日は余りにも長い。

fin.

400:伊南屋
06/10/18 20:19:30 xEonZaqd
毎度、伊南屋です。

おぉ、自分でびっくりするくらい早い。
これでスレが活性化すると良いな。
そしたらまたリクエストとるし。
まあ、しばらくは執筆から離れるかもだから今回はすぐ書けるか分からないですが。

以上、そんな感じの伊南屋でした。

401:名無しさん@ピンキー
06/10/18 21:35:00 RDz+XoAZ
伊南屋先生GJ!!!
スレはともかく、俺の妄想は活性化した

402:名無しさん@ピンキー
06/10/18 21:54:33 ET9hOpdu
しごきktkr

GJであります

403:名無しさん@ピンキー
06/10/18 22:31:39 5PkuSFTQ
夕乃さんは、なんというかこういうドタバタネタが似合うなあ。


……ヨゴレの宿命か……

404:名無しさん@ピンキー
06/10/18 23:17:59 cpJ4OWj6
>>403
     __.. -―─ 、__
    /`       三ミー ヘ、_
  ゝ' ;; ,, , ,,     ミミ  , il ゙Z,
  _〉,..    ////, ,彡ffッィ彡从j彡
  〉,ィiiif , ,, 'ノ川jノ川; :.`フ公)了
 \.:.:.:i=珍/二''=く、 !ノ一ヾ゙;.;.;)
  く:.:.:.:lムjイ  rfモテ〉゙} ijィtケ 1イ'´
   〕:.:.|,Y!:!、   ニ '、 ; |`ニ イj'  逆に考えるんだ
   {:.:.:j {: :} `   、_{__}  /ノ
    〉イ 、゙!   ,ィ__三ー、 j′  夕乃さんは万能キャラ
  ,{ \ ミ \  ゝ' ェェ' `' /
-‐' \ \ ヽ\  彡 イ-、    と考えるんだ
     \ \.ヽゝ‐‐‐升 ト、 ヽ、__
      \  ヽ- 、.// j!:.}    ` ー 、
       ヽ\ 厶_r__ハ/!:.{
          ´ / ! ヽ

405:名無しさん@ピンキー
06/10/18 23:22:48 5PkuSFTQ
>>404
流石です、ジョースター卿。そうか、夕乃さんは小娘共と違って万能なんですね!


406:名無しさん@ピンキー
06/10/19 00:52:49 humVz3u4
夕乃さんの武道のしごきはスパルタである
ということは、床の上のしごきも……

真九郎にげてー!

407:名無しさん@ピンキー
06/10/19 08:25:06 IyzDfhGs
とりあえず一日中そんなことヤってたら、環さんとか気付くと思うの

408:名無しさん@ピンキー
06/10/19 15:52:51 n8szaEMr
と言うかむしろ自らも参加しますでしょう。


乱交ktkr。

409:名無しさん@ピンキー
06/10/20 02:19:21 srZMgfrD
つ「闇絵さん」

410:名無しさん@ピンキー
06/10/20 09:34:04 wdaen5TP
闇絵さんのエロってマニアックそうですよね

411:名無しさん@ピンキー
06/10/20 20:28:48 POLtCUHO
闇絵さんは雰囲気がエロい

412:名無しさん@ピンキー
06/10/21 21:38:50 go2Dx5ow
堕花「萩原朔太郎は言っていた」
ジュウ「え?」
堕花「『おわあ、こんばんは』『おわあ、こんばんは』」
ジュウ「いきなりどうしたんだ!?」
堕花「『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』」
ジュウ「円堂さん来てくれ、雨がおかしいんだ!!」
堕花「『おわああ、ここの家の主人は電波です』」




円堂「雨、電波じゃなくて病気よ」
堕花「いけない、そうでした」
ジュウ「(わからん、意味が全くわからん!!)」





斬島「ジュウ君ジュウ君柔沢君、元ネタは歪んだ妄想だよっ!!」
ジュウ「そんなん知るかっ!!」

413:名無しさん@ピンキー
06/10/23 19:44:47 RXoMUZ+0
元ネタが全く解らない俺は負け組......orz


ていうか今思ったんだが、紫ってツンデレじゃね?

414:名無しさん@ピンキー
06/10/23 22:19:45 LEK2xjTm
村上「真九朗、みんなは真九朗のこと情けないって言うけど、
    私は真九朗のことちゃんと判ってるから」
ヘタレ「銀子・・・・(じーん)」







村上「なーんて私が言うと思った!?                            このギャルゲーの主人公気取りが!!
    甘ったれるな!! 他人に夢を見るな!! 自分以外はみんな敵だ!! 
    以上!!」
ヘタレ「・・・・・・・・・・・・」

415:名無しさん@ピンキー
06/10/24 00:39:09 7c9CBAFG
>>413
バロック 歪んだ妄想 というゲームを調べてみればわかる。

416:名無しさん@ピンキー
06/10/28 22:30:39 7AUZEiJM
紫がツンデレなのはいまさらいうまでもないこととして・・・
伊南屋先生GJ
夕乃さんメインでほんわかしたのが読みたいとおもた
気が向いたらヨロです

417:sage
06/10/28 22:35:54 7AUZEiJM
sage進行だっけ?

418:名無しさん@ピンキー
06/10/29 22:17:48 FhPvlxGk
別段強制ではないけど、ageると妙なのが沸くこともあるし。

419:416
06/10/29 23:54:30 eVd+3M+q
りょーかいッス
ご指導サンクス

420:名無しさん@ピンキー
06/10/30 16:20:21 MEr/3mdq
てか、過疎るの早くね?

421:名無しさん@ピンキー
06/10/30 20:27:39 OLP2OIxG
新刊出ないしな

422:名無しさん@ピンキー
06/10/31 07:40:47 iJF0CWaC
新刊来年でしょ?

423:伊南屋
06/10/31 08:09:13 0skTBNNt
 暖かな日差しの中、目を細めながら隣を歩む女性(ひと)を見る。
 長い髪をそよ風にたなびかせ、彼女は微笑んで空を見た。
「綺麗ですね」
 見上げる空はどこまでも蒼く、雲一つない。
 それを綺麗と形容したのは極自然な感情だと思う。
 自分も視線を高くに向け、紅真九郎はそんな事を考えていた。
 街の中央に程近い自然公園。
 今日は崩月夕乃と一緒にここを訪れていた。
 所謂デートだ。なんの芸もないが、二人ならどこだって構わない。そう思えるから公園を選んだ。
 数ヶ月前から二人は付き合い始めた。
 口に出すのは躊躇われるが、ひょんな事から二人は付き合う事になった。
 公園の遊歩道を二人は歩いていた。手は互いに重ねられ、指を絡め繋いでいる。
 繋ぐ手は暖かく、不思議な安心感を与えてくれる。
 それは幸せとも言える安らぎ。
 穏やかな日常。真九郎が求め、憧れたもの。
「夕乃さん」
 真九郎は真っ直ぐ夕乃を見つめ言葉を紡ぐ。
「好きだよ」
 夕乃は少し頬を赤らめながら。
「はい、私もです」
 そう、笑って言った。
 今この瞬間のなんと幸せな事か。愛する人と想いを通わせる。簡単なようでいて難しい。
 ふと、夕乃と付き合い始めた頃の紫を思い出した。
 泣きに泣いていた。どうして自分では駄目なのかと。どうして夕乃なのかと。
 紫は真九郎という好きな人と、想いを通わせる事が出来なかった。そうしたのは自分だ。
 自分が一人を選んだから。自分が他を選ばなかったから。選択の痛みを、真九郎は知った。
 その事で悩みもした。
 しかしそれも、今は過去の事だ。
 悩む代わりに一つだけ決めた。
「ねえ夕乃さん」
「なんですか?」
 真九郎は瞳を空に向けながら言う。
「一緒にいようね」
 夕乃は握る手に力を込めて言った。
「……はい」

 高い空、その下を二人は歩く。
 穏やかな日差しに照らされ、ほんの小さな幸せを感じ。
 ずっと一緒にいると、そう信じ。

 歩む道は、まだ長い。

424:名無しさん@ピンキー
06/10/31 12:04:29 Td+zt1up
ほのぼの最高っす!GJっす伊南屋さん!

前回のアレの後日談ですか。というかアレで付き合い始めましたか真九朗(笑)


425:伊南屋
06/10/31 19:46:58 0skTBNNt
告知忘れてました、毎度伊南屋にございます。

また色々書こうかなと思いまして。リクエストなんぞを募集する次第にございます。
電波、紅のこのキャラで、とかこんなシチュエーションで、等々ございましたら遠慮なくどうぞ。

以上、伊南屋でした。

426:名無しさん@ピンキー
06/10/31 20:24:37 50Vcwyzw
伊南屋さん、いつもながらGJっす。
リクエストは、光でジュウにちょいラブ(?)な感じのほのぼのがいいですね。

427:名無しさん@ピンキー
06/10/31 20:35:37 uSbRycf9
なんか癒されたッス 伊南屋さんいつもながらGJ!!
ついでにリクエストで切彦のエロいやつなどを・・・

428:名無しさん@ピンキー
06/10/31 20:50:13 tWOAkuOa

     ...| ̄ ̄ |< GJ!!……ええーい!雨は?雨はまだか?
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
_..||::|   o  o ...|_ξ|:::::::::|    .|::::::::|
\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
.||.i\        、__ノフ \|    |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\   |::::::|
.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i~^~^~^~^~^~^~|i



429:名無しさん@ピンキー
06/11/01 04:07:19 boZqPYgv
>>423
夕乃さんカワユス
紫とかフられることになるキャラについての描写は、あんまり要らなかったかな
心情モノを描く上では、この手の描写を入れた方が厚みがでるのは確かだけど、
ほのぼのラブラブを書くなら無いほうが素直に萌えられる
まあ、話に落差がある方が好きな人もいるだろうし、個人の好みの話だけどね

次作も期待しとります
リクは夕乃さんプッシュな俺としては本来エロエロな夕乃一択なんだけど、
流石に連続はアレなんで雨に一票かな
擬似新婚みたいな雨が押せ押せのラブラブで更にラブみたいなの

430:名無しさん@ピンキー
06/11/01 04:08:27 boZqPYgv
あれ、sageが認識されて無い……
原因は分からないけど、ageスマソ

431:伊南屋
06/11/01 21:30:49 COYqlhoF
 アパートの中。
「くっ……はぁ……」
 熱の籠もった吐息が、少女の唇から洩れる。快感に身を震わせる声と合わせ、律動する体は自然と喉を震わせる。
 洩れる吐息にこの部屋の主でもある男は官能を見て取り、ならばと更に繋がりを深め、最奥を抉る。
「ぅああっ……ん!」
 絞るような声を上げ、少女は体を跳ねさせる。子宮口を突かれ、強い圧迫感と刺激に軽い絶頂を感じる。
「ジュウ……っ」
 名を呼ばれ、男―柔沢ジュウは、動きを緩めた。
「……何だ?」
 優しい声音で訪ねる。その間も腰はゆるゆると動き、強すぎない程度に互いの快感をもたらす。
「好き……だよ」
 その言葉に微笑み、口付ける事で応える。
 ただ、内心では普段からこれ位甘えた態度を取ってくれても、と思う。
 しかし、それは言葉にせず胸に仕舞う。
 なんとなく、不意にしか見せないからこういった態度を嬉しく感じるのかも知れないと思ったからだ。
 目の前で熱に浮かされたように身をくねらせる少女―堕花光のそういう素直でない部分に愛しさを感じるのもまた確かな事なのだから。
「なに、考えてるの?」
 ふと掛けられた言葉に光を見る。朱に染めた顔に訝しげな表情を浮かべ見つめ返される。
「ニヤニヤして。なに考えてるの?」
「……お前が可愛いなって事」
 ジュウの言葉に光は更に顔を赤くする。
「な……っ! 何を言ってっ……!」
 こういう真っ直ぐな言葉に光は弱い。すぐにうろたえ言葉を詰まらせてしまう。
 それを知っていてジュウは、敢えて口にした。ちょっとした意地悪だ。
 クスクス笑うジュウを見て、光が恥ずかしそうに呟く。
「……いじわる」
「悪い」
 詫び、と言うべきか。ジュウは緩やかだった動きを再び激しいものへと移す。
 深く、光は身の内を抉られ嬌声を上げる。
「や……っ! んぁうっ、あぁん!」
 一突きする度、体の奥から零れるように声が出る。
 その声がまた艶めかしく、ジュウは自身が昂るのを感じる。
 理性が薄れゆくのを感じながら、ジュウはただ、目の前の光に目を奪われていた―。


「う~~……」
 光が睨んでいる。
「…………」
 ジュウは黙り込んでいる。
「三回もした……」
 光の言葉に、ジュウが身を小さくさせる。
「三回とも膣中に出した……」
 ジュウの身が更に縮まる。
「止めてっていったのに止めなかった……」
 光の言葉がジュウに突き刺さる。
「……けだもの」


432:伊南屋
06/11/01 21:38:00 COYqlhoF
「すいません」
 ジュウ、土下座。
 ―あれから。理性が飛んだジュウは、光が形容したように獣となった。
 抜かず三発。しかも了承なしだ。
 光は絶頂を迎えても休ませて貰えず、数回意識が飛んだ。
 今も光の秘裂からはジュウの精液が大量に逆流してきていた。
 それだけならまだしも。
「しかも……まだ大きいし」
 光が見るのはジュウの股間。正座する脚の付け根には、三度も出したにも関わらず、未だ硬さを保ったモノがある。
 淫液と精液にまみれたそれは、獲物を探すかのように、その亀頭を震わせ上下に揺れている。
 まさしく獣と言わざるを得なかった。
「本当にすまん」
 一応ジュウ自身、誠意を持って謝ってはいるのだが。股間がそれでは些か説得力に欠けた。
 しかし、光はジュウが真面目に謝っている事が分からない訳でもない。
 一度溜め息を吐くと。
「まぁ、今日は大丈夫な日だったし取り敢えず許すけど……」
 と言った。言って更に「ただし!」と付け加え。
「ただし! 今度したら許さないからね! それと今度のデートの時は私の好物だけでお弁当作ってくること! 分かった!?」
 と叫んだ。
 ジュウはようやく許して貰えた安堵に表情を緩め。
「分かった。約束する」
 そう答えた。
 ―余談ではあるが。この二人の場合。ジュウの方が料理スキルがあるので手作り弁当を作るのはもっぱらジュウだった。
 閑話休題。
「さて……」
 光が呟いた。
「取り敢えずソレ、なんとかしなきゃね」
 差したのはジュウの陰茎。この間にも収まる事はなく身を震わせていた。
「えと……口で良い? 流石に疲れちゃって……」
「ああ、頼む」
 その言葉を合図に光が、ジュウに身を寄せる。
「ぅわ……べとべと」
 淫液、精液でデコレートされたジュウの性器は指先で触れれば糸を引く程だった。
 ただ、それがローション代わりとなり、手淫をスムーズにした。
 光の掌がジュウを包む。にちゅ、と音がした。
 ゆっくりと、手が上下を始める。掌の動きに合わせ。にちゃにちゃと淫らな水音がする。
 包む手を根元へ移し、代わりに亀頭を光の唇が包んだ。
「んむっ……ちゅっ」
 すぐに糸を引かせながら光が唇を離す。
「スゴい……えっちな味がする」
 ジュウと自らの体液の混合物を舐めとり舌の上で弄びながらそう呟く。
「もっとするね」
 

433:伊南屋
06/11/01 21:42:05 COYqlhoF
 その言葉と同時、再び唇が亀頭を包む。そのままジュウの性器が飲み込まれていく。
 飲み込まれながら、光の舌先にジュウにまぶされた体液が舐め取られていく。
「ちゅっ……んむっ……じゅる」
 舌が絡められ、吸い付かれる。みるみるうちにジュウの幹を濡らすのは光の唾液だけになっていく。
 それに合わせるようにジュウ自身の快感も昂っていく。ジュウが光にまみれる度、幹は喜びに震えるように身びくびくと律動させる。
 唇に扱かれ、舌先はそれを補助するように蠢き微かに掠める歯ですら鋭い刺激となってジュウを追い立てる。
「ふむっ……ちゅぅっ……ちゅぱっ、じゅるっ、ちゅぅぅうっ」
 吸い立てる光に、ジュウは絶頂に導かれる。
「く……っ! 出るっ……」
 光の頭を抑え、喉奥までくわえ込ませる。そうして、光の口内にジュウは精を放った。
「んんっ……んぶっ、んくっんくっ」
 唇から溢れそうになる精液。四度目だというのに相も変わらず大量に放たれるそれを光は必死に嚥下していく。
「ん……ちゅぅっ……ちゅぱ」
 むしろ勢いが弱まれば、もっととねだるように強く吸い付く。
「くぉっ……!」
 絞るような光に、ジュウが身を震わせ。これが最後とばかりに精液を吐き出す。
 それを飲み下し。舌で幹に付いた精液をこそげとった所で光は唇を放した。
「なんで……っ、まだ、こんなに、でるのよ……っ」
 息荒く、途切れ途切れに光が言う。
「でもお前に美味そうに飲んでたじゃないか」
 先の光の吸い付きを思い出しジュウが返す。
「なっ……! あれはっ! なんていうか無意識に……」
「無意識、か? なら余計エロいな」
 かーっ。と顔を真っ赤にさせ光が黙り込む。
 返す言葉も無いのだろう。それでも何か言い返そうと口をぱくぱくさせている。
 その様子が微笑ましくて、ジュウは思わず笑ってしまう。
「な、何を笑って……っ!」
「なんでもない」
 そう言って光を抱き寄せる。
 互いの体は火照っていたが、暑苦しいというような事はなかった。むしろ、その温かさに安堵を感じる。
「今日はもう寝ようか」
「……うん」
「明日の朝飯は何が良い?」
「なんでもいい。ジュウが作ってくれるなら」
「そうか」
 横になった体。その腕の中。光の温もりを感じる。
「さっき言った弁当の話。明日にするか。朝から弁当作って、二人で出掛けよう」
「うん」
 

434:伊南屋
06/11/01 21:43:28 COYqlhoF
 徐々に、意識が靄がかる。それは光も同じようで、半分閉じたた瞼の向こうでやはり光も瞼を閉じかけていた。
 薄れいく視界の中、最後まで互いを見つめ合いながら二人は呟いた。
「……おやすみ」
 間を置かず、室内に響くのは二人の寝息だけになった。

 ただ緩やかな眠りに二人は沈み、朝になれば目を覚ます。
 そうして二人は日々を重ねる。
 幸せな恋人としての日々を―。

fin.

435:伊南屋
06/11/01 21:48:22 COYqlhoF
 はい毎度伊南屋にございます。

 取り敢えず(といったら何ですが)ジュウ×光で書きました。
 なんで付き合い始めたとか、他の人はどうなったとか、時系列なんかは気にしないでいただくととても有り難いです。

 一応他のリクエストもありますがまだ募集はします。
 一応自分でもとある話は考えますがいつ出来るかは分からないのでそれまではリクエストを書き続ける所存です。

 それでは以上。伊南屋でした。

436:名無しさん@ピンキー
06/11/01 22:30:45 sGPe0wfM
伊南屋先生GJ!
おっきしました!

437:名無しさん@ピンキー
06/11/01 23:23:22 yGqktR1s
エロイ。うん、エロイ。
なんと言うかアレだ、GJ>伊南屋氏

438:名無しさん@ピンキー
06/11/02 16:16:45 EV4VAzLW
ベタな所で雨×ジュウが見たいです

439:名無しさん@ピンキー
06/11/02 17:25:11 NqcdYGyv
雪の降るベランダから無言で二人を見つめる雨

ふと右を見るとしまい忘れた大工道具が――
「ふふっ、あはははは、あははははははははあはははあははははははははっ!!』

440:名無しさん@ピンキー
06/11/02 21:23:04 1hGfp7yd
伊南屋先生GJ!
いやホント、ジュウ様には幸せになって欲しい所存で……見ていて和みました!エロスなのにw

リクエストは色々と溜まっていたジュウ様に雨が奉仕するものをw

441:名無しさん@ピンキー
06/11/02 22:22:53 ZS3eLkAX
しんくろーがアパートの年上女二人とさんぴー。

442:名無しさん@ピンキー
06/11/03 02:09:29 h1pLBq+4
伊南屋さんGJです。
リクはあえてジュウ×円で。

443:名無しさん@ピンキー
06/11/03 14:30:00 NknyF05U
じゃあオレもジュウと円で。エロはあってもなくてもイイっす。

444:伊南屋
06/11/03 16:00:47 raYm8cxX
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』

 焦土を、風が吹き抜けていく。
 端々が灼け焦げ、破れた軍旗がそれに煽られ、ばたばたとたなびいている。
 そこに満ちた、噎せ返るような死臭は風が吹けど晴れることはなかった。
 昨日まで此処は戦場だった。幾千、幾万の命が一塊の駒として扱われ、散って逝った。
 その戦場跡には勝者も敗者もなく、等しく死のみが在った。
「また、人が死んだな」
 荒野を見ていた青年が呟いた。所々、泥で汚れながらも金色の髪だけは輝きをそのままに風に揺れている。
「戦乱の世にあって人が死ぬのは仕方の無いことです」
 青年の後方。影のように付き従う少女が答えた。
 その少女は長い黒髪を垂らし、身を包む鎧を血に汚していた。
 今回の戦争の勝者である王が青年であり、戦いで最も武勲を挙げた剛の者が少女であった。
 青年は少女の言葉に溜め息を一つ吐き。その瞳に愁いを込めて零した。
「それでも、やはり哀しいのだ。人の命が喪われるのがどうしようもなくな」
「でしたら」
 少女は応える。
「王が、世を統べれば宜しい。私共はそれを願い付き従っているのですから」
 その言葉に青年は決意とも取れる表情で。
「そうだな」
 と呟いた。
「さあ、皆が待っております。お戻りになって下さい」
「……ああ、分かった」
 一度だけ、青年は焦土を眺め回すと身を返し歩み始めた。
 傍らに少女を従え、重い足取りで一歩毎踏みしめるように。
「俺が、統べる世か……」
 だれにも聴こえぬ声で青年は洩らした。

 それは、一人の王が世を統べる、少し前の話。

445:伊南屋
06/11/03 16:04:57 raYm8cxX
 ジュウ×雨を変化球でやってみよう。
 と言うわけで雨が語った前世の話という設定。

 長くなりそうなんで合間にリクエストに応えたりしつつやりたいな、と。

 そんな訳で電波キャラや紅キャラ(予定)の前世が入り乱れる仮想軍記『レディオ・ヘッド リンカーネイション』をお送りして行きたいと思います。お楽しみに―して貰えると有り難いです。

 以上、伊南屋でした。

446:名無しさん@ピンキー
06/11/03 16:34:46 k/uV9vEi
とんでもない剛速球がきたなw
ところどころに現世の描写も混ぜるといいと思うよ

447:名無しさん@ピンキー
06/11/03 18:01:33 KLMvwpRY
とりあえず叫ばせて貰いたい

 

ジュウ様―――――――!!!!


448:名無しさん@ピンキー
06/11/03 18:21:07 kS/F7VW7
ジュウ様の名前は何になるんでしょう
発音できないYIGとかYHVHになるんでしょうか

449:名無しさん@ピンキー
06/11/04 00:49:47 ss0M80an
ちょ、伊南屋様、前々から凄い方だと思ってはいましたが。


今までで一番楽しみだ…>前世話

450:伊南屋
06/11/05 16:56:15 qL2oc5oa
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅰ.
 クラウチ大陸東部に位置する小国。ギミア。
 小国、と言うのはかつての事であり。今はいくつかの隣国を武力で平伏し、列強の仲間入りを果たしたばかりの今最も勢いのある国である。
 年若き王は『獣王』と呼ばれ、古くから続く大国には野蛮な侵略国であると疎まれている。
 ただ、実際に武力を振るい他国を侵略したと言えるかは微妙な所であった。


「―以上で、拠度の“防衛戦”の戦果報告を終わります」
 兵卒が手にした目録を読み上げたことを告げる。
 被害、得た領地など今回の戦にまつわる収支である。
 それを質素な、一応は玉座となっている席で聞いていた青年は盛大に溜め息を吐き出した。
「これで……何度目だ」
 傍らに控える少女に声を掛ける。声を掛けられた少女は事も無げに。
「六度になります」
 と答えた。
 ―六度。六度に渡りこの国は侵攻を受けた。
 その全てを退け、逆に攻め入ってきた国を落とし、この国はその版図を広げてきた。
 そして、ただの一度として自ら攻め入るということは無かった。付け加えるならば、本来この国に戦争をするだけの余裕は無いはずだったのだ。
 それでも生き残れたのは、一騎当千の武人であると同時に、無二の知謀を持つ軍師である。今、王の傍らに控える少女に拠るところが大きい。
 そして、そんな綱渡りのような戦争をこの国は繰り返してきた。
「いい加減……俺は疲れたぞ」
 故に青年が漏らしたその言葉は偽らざる本心であったと言えよう。
「今日はもう、休む。後を任せるぞ」
 傍らの少女にそう残すと、青年は立ち上がり私室へと引き返した。


 私室に戻った青年は、わき目も振らず寝具へと身を投げ出した。
 数週間にも渡る戦を終え、王ながらも前線に立ったその身には疲れが堆積しておりすぐにでも眠れそうだった。
「お疲れだね、ジュウ様」
「…………雪姫か」
 視線を巡らせば部屋の片隅に、部屋に入る前から既にいたのだろう。少女が立っていた。
 長い髪を後頭部にまとめ、背に垂らした少女は瞳に悪戯な光を湛え微笑んでいた。
「なにをしてる。まがりなりにも此処は王室だぞ」
 ジュウ。そう呼ばれた王は眠りを妨げられた不愉快さも露わに少女を睨む。
 少女―雪姫は苦笑すると、寝具の端に腰を下ろした。
「一応、ジュウ様の事を労いに来たんだけど……邪魔だった?」
 

451:伊南屋
06/11/05 16:58:54 qL2oc5oa
 雪姫は王を相手にしながらも対等に話す。ジュウもそれを嫌がるでもなく、対等の言葉で返す。
「邪魔だ」
 その言葉に雪姫はむっ、と頬を膨らませる。
「そんな事言うジュウ様は嫌いだな~」
「別に構わない。だから寝かせてくれ」
「あ~。ウソ嘘、嘘だから。そんなふてくされないでよ」
 余りに素っ気ないジュウの態度に、一度は見せた不機嫌な態度をあっという間に軟化させる。
 ジュウは投げ出した身を起こし、雪姫に改めて聞いた。
「それで、結局何しに来たんだお前は」
「だから言ったでしょ? 労いに来たんだって」
 そう言って雪姫は身を擦り寄せる。ジュウは軽く身を引きながら。
「……夜伽など、侍頭のお前がする事ではないだろう」
 言って、雪姫を制した。
 ―そう、この雪姫という少女は侍頭の地位を与えられた、歴としたこの国の武人である。
 侍頭・斬島雪姫。うら若き女性なれど、この地位まで昇り詰めた実力は確かなものである。
 そのような女性が、今更身を売るような真似をするとは考え憎い。
 そして、それ以上に。
 彼女がふざけているのだとジュウは個人的な付き合いの中から、経験則的に察知していた。
 しかし、結局腹の探り合いに置いては雪姫に一日の長がある。
 ジュウは一言を返した時点で、既に雪姫の術中にはまっていた。


「う……」
 声が上がる。それはジュウが発したものだ。声音には心地良さそうな響きが含まれている。
「ふふ……」
 ジュウの上には雪姫が跨っている。その身を使い一心にジュウへと快楽を与える。
 雪姫は微笑みながら身を屈め、ジュウの耳元に唇を寄せた。
「夜伽が……なんだっけ?」
 その言葉にジュウは顔を赤くする。枕に顔を沈め雪姫には見えぬようにはしているが雪姫は雰囲気でそれを察知したようだった。
 くすくすと笑いながら腕に力を込める。
「ふ……っう」
「どう? 気持ち良いでしょ?」
「……ああ」
 ジュウは与えられる刺激に、心地良さと屈辱感を同時に覚える。
「やらしいねジュウ様は。“労る”って言っただけで夜伽を連想するなんて」
 雪姫が更に力を込める。
「私は、こうしたかっただけなのに」
 ジュウの背中に体重が載せられ、圧迫される。
「ねえ、ただのマッサージなのに」
「分かったって言っただろう!」
 余りに執拗な雪姫にジュウが吼える。先からマッサージの最中。ずっとこの調子なのである。


452:伊南屋
06/11/05 17:03:14 qL2oc5oa
 確かにマッサージは上手いが、これでは身体が休まれど心は休まらない。
「暴れちゃ駄目だよジュウ様。……間違って変なツボ圧しちゃうかも知れないから」
「なんだその“変なツボ”って……」
「んふふ、知りたい?」
「……いや、遠慮しておく」
 雪姫は「残念だな」と呟くと再びマッサージに集中する。
 黙ってさえいればこのマッサージは極上だなとジュウは思った。
 確かに凝り固まった筋肉が解され、詰まっていた血が流れていくような気になる。
 加えるなら、背に跨る雪姫の太ももにしても、柔らかく甘美な刺激となっているのだが。
 それについてはジュウ自身が心中で必死に否定していた。
「はい、おしまい」
 最後に肩の辺りを平手でぱんぱんと叩き、マッサージの終了が告げられる。
 ジュウの背中から雪姫が降りる。
「……一応礼は言う。ありがとうな」
「ん、どういたしまして」
 雪姫はそう言って立ち上がる。
「それじゃ、後はゆっくり眠って疲れを取ってね。王様が体壊しちゃだめだよ?」
 ジュウは、分かっている。とばかりに頷いてみせる。
 それを確かめると雪姫は廊下へ繋がる扉に向かい。取っ手に手を掛ける。
 そこで雪姫は思い出したようにジュウを振り返った。
「言い忘れてたけど」
 そう言って、あの悪戯な笑みを浮かべ。
「夜伽さ。ジュウ様が望むなら、お相手するからね?」
 それだけ言って扉を開け。ジュウが何か答える前に出ていってしまう。
「……あいつは」
 最後の最後でどっと疲れさせられた気気がする。
 残した台詞は考えないことにして、ジュウはまどろみの淵に身を浸す事を選んだのだった―。

続く

453:名無しさん@ピンキー
06/11/05 18:59:22 dC+XoSX/
最っ高っす!伊南屋さんGJっす!
ジュウ様が雪姫に押し倒されかと思ってしまいしてやられました 
 というか雪姫のアレは絶対に確信犯だw

454:名無しさん@ピンキー
06/11/05 21:28:01 JKlLs1Hx
王になっても総受け体質変わらないな、ジュウ様w

455:名無しさん@ピンキー
06/11/06 07:40:54 JaocUxLS
伊南屋さん……あんた神だよ……ひたすらに、GJ!!

456:伊南屋
06/11/06 19:31:13 pPyBBiTT
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅱ.
 夜の帳をランプの灯りが掻き消す室内。執務机の上、黙々とペンを走らせる音だけが聞こえる。
 その音の主は、常に王の傍らに控えていた少女だ。
 名を堕花雨という。
 本来は騎士団長であり、斬島雪姫同様この国の武の要であるはずの彼女が片付けているのは国政に関する書類の山である。
 元来は王であるジュウが片付けるべきものではあるが、雨が王直々に判断を下すまでもないとしたものは、代わりに雨がその裁量にあたっている。
 今は戦が終わったばかり、細々とした雑務から大規模工事。国の方針決定などするべき事は山とある。
 必然。雨が受け持つ仕事も多くなっている。
 暫くはろくに休めまい。そんな個人的な心配と、国に関するあることを憂い雨は小さく溜め息を吐いた。
「珍しいね。お姉ちゃんが溜息なんて」
 雨に茶を差し出し、雨の妹―光が声を掛けた。
 光は雨の側近として、せめてもの雑用くらいはと雨を手伝っている。そんな側近として、また妹として。稀に見る姉の溜息に心配をしたのだ。
 礼を言いながら茶を受け取り、雨は答えた。
「心配なの。この国は今、とてつもない勢いで大きくなっている。それは良いことなのだけれど……勢いが強すぎるの」
「どういう事?」
「国の基盤が整わない内に、否応なく巨大化しているのよ。このままでは細部に手が回らなくなって国が荒れるわ」
 事実、国政の人員配備は十分と言えず。辺境等は現時点でしても手が回りきっていないのが事実だ。
 雨の言葉通り、このまま国が肥大化を続ければ、いずれ国は瓦解してしまいかねない。
 雨はそれを憂いているのだ。そして「それに」と付け加え続ける。
「地方領主の中には国属を拒否する姿勢の者もいるわ。彼等を説得しなければ税の徴収もままならない」
 ―つまり、この国は肥大化の速度に追いつけず末端が機能していないのだ。
 生物は末端が機能しなければそこから壊死を始める。
 国も同様だと雨は考えていた。
 綱渡りなのはこれまでの戦以上に、国政の現状であった。
「幸いと言うべきか。ある地方領主が巨大な権力を有していて、そこさえ説得出来れば他の領主の多数も従えられるわ。
 だから近い内、そこへ説得に赴かなくてはならないわ」
 そこまで言って雨は二度目の溜息を吐いた。
「またジュウ様には苦労をかけてしまうわ……」


457:伊南屋
06/11/06 19:33:22 pPyBBiTT
「良いのよ、どうせ飾りの王様なんだから。こういう時くらい役に立ってもらわなきゃ」
「光ちゃん」
 光の言葉を雨が強い口調で遮る。
「あの方は決して飾りなどではないわ。たしかに今は未熟な王だけれども。いずれは、この戦乱の世を平定するに足る大器をお持ちよ。
 ……だからこそ私はあの方に仕えているのだから」
 そう強く語る雨の想いは真っ直ぐで。例え妹である光といえどそれ以上は何も言えなかった。
 雨は執務机に向き直ると。
「今日はもう遅いわ。光ちゃんは先に眠りなさい」
 と言って、自分は再び書類と格闘を始めた。
 光は無言でそれに従い寝室へと向かった。
 光が去り、雨一人となった室内。
 ただ、ゆらゆらとたゆたうランプの炎だけが、雨を照らし続けていた―。

続く

458:伊南屋
06/11/06 19:55:09 pPyBBiTT
『レディオ・ヘッド補足授業』

「作者が未熟なので本文で追い切れていない設定について補足する本コーナー。司会兼講師の堕花雨です」
「……早速だが質問だ」
「なんでしょうジュウ様?」
「前世の話なのに名前なんかが全く一緒なのは何でだ?」
「実は前世は言語体系など全く違う文明の国です。ですから前世は前世で名前があるのですが名前が違うと誰が誰か混乱する為に現世の名前を本文では用いています」
「なるほど」
「というのは建て前で本当は名前が思い付かなかっただけらしいですが。
 ちなみに私はレイン・フォールブルームと言う名前が用意されていたそうです。まんまですね」
「……」
「他に質問はありませんか?」
「はいはいはいっ!」
「雪姫、どうぞ」
「実際ジュウ君が治めている国はどんな国なのかな?」
「本文内の文明レベルは中世ヨーロッパ……という事ですが一概にそうは言えないようです。
 特にジュウ様が治める国は柔軟に他国の文化を受け入れ様々な思想、文化が入り乱れています。
 そのあたりは現代日本みたいですね」
「私の前世が侍頭だったり雨の前世が騎士団長みたいに色んな体系がごっちゃになってるけど?」
「それも上記の理由ですね。前世世界において戦国日本に似た国がありますからね。
 そこから大和式戦術とでも言うべきものを吸収したのでしょう、騎士団は昔からあったようです。逆に侍衆は最近出来た部隊ですね」
「お姉ちゃんが国政をやってるみたいだけどやっぱりアイツは飾りなんじゃないの?」
「それはやはり間違いですよ光ちゃん。実際、国政の深くに関わる部分はジュウ様が直に裁量を下しています。
 私の前世がやっているのはそれこそサインをするだけの書類や私が裁量を下しても問題にならない程度のものです」
「ふーん」
「さて、今日の補足授業はこの辺にしましょうか」
「まだ質問があるんだが……」
「いけません。あえて今回は一部ぼかした部分もありますからこれ以上突っ込んだ質問をされると作者的にはネタバレとなってしまいます」
「そ、そうか……」
「申し訳ありませんジュウ様」

「(伊南屋)と言うわけでレディオ・ヘッド リンカーネイション。今暫く……長くなりそうではありますがこれからも宜しくお願いします。次回はレディオ・ヘッド続きかリクエストになるかと思われます。それではまた。
 毎度、伊南屋でした」

459:名無しさん@ピンキー
06/11/06 20:13:43 P0artZud
伊南屋さんGJ!!
やっぱ雨はいいなぁ

460:名無しさん@ピンキー
06/11/06 20:30:25 N5GBwfk8
とりあえずヤンデレきぼん

461:名無しさん@ピンキー
06/11/06 20:32:14 OlzFrn1N
つまり一子×ジュウか

462:名無しさん@ピンキー
06/11/06 22:40:37 71PpLZ9I
>>461
お前
天才だな

463:名無しさん@ピンキー
06/11/07 09:03:32 DohaxYBN
すいません、私はジュウ様総受けを妄想してました

464:名無しさん@ピンキー
06/11/07 16:15:07 18HfMiCP
ジュウ様は何ていうか、あれだけ翻弄されまくりな御方ですから。
総受けが一番似合うでしょやっぱ。

頑張って果敢に攻めてくれれば、それはそれで萌えるけども。

465:名無しさん@ピンキー
06/11/08 20:41:25 +GJuawtp
押し倒される>必死の反撃頑張って攻める>やっぱり反逆で受け

これでしょう

466:名無しさん@ピンキー
06/11/08 20:45:11 xWuUjy8b
というか、あれだけ女性に攻められるのが似合う不良系主人公ってジュウ様だけだと思うの

467:名無しさん@ピンキー
06/11/08 20:46:11 jfS8zEbP
まあ見た目と喧嘩強い所意外はあんまり不良っぽくないし

468:名無しさん@ピンキー
06/11/08 20:53:19 yO4OEJU5
一巻で髪の毛染め直しちゃった時点で運命は決まってたようなw

469:名無しさん@ピンキー
06/11/09 11:33:50 kFQCxRh8
>>468
髪染め直してふふんどうだこれ?って顔で雨に見せに行くジュウ様きっとすげえ楽しそうな顔してたんだろうな

470:名無しさん@ピンキー
06/11/09 14:32:07 5BPiaiq6
そして見事に目論見が外れるジュウ様w 

 だけど、そんな所が貴方様の魅力なのです

471:名無しさん@ピンキー
06/11/09 22:17:52 WEHPJeyB
そんなジュウに萌えてきた俺は駄目人間か……orz

472:名無しさん@ピンキー
06/11/09 23:59:55 8krF+Q+8
人としてとても正しいです、と雨さんが肯定してくれるでしょう。

473:名無しさん@ピンキー
06/11/10 07:53:13 Krm+sSco
実際問題 
ハーレムと総受けは紙一重だと思うんだ。ジュウ様の場合

474:伊南屋
06/11/10 18:48:11 ekNWcoY5
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅲ.
「何故、私が……」
 がたがたと揺れる馬車。御者が、不服たっぷりに呟いた。
 森の中、殆ど野道のような通りを馬車が走っている。向かうは西方。とある地方領主の治める集落である。
 朝早くから城を出た馬車だったが今は日も暮れ掛けている。
 その長い時間。ジュウは御者が漏らす割と短い間隔で聞こえてくる呟きを聞き続けていた。
「しょうがないよ。騎士団長は国を離れられないんだしさ」
 今回の遠征に護衛として同行している雪姫がもう一人の同行者たる御者に慰めともつかぬ言葉を掛けた。
「私が交渉の同行をするのは良い。だけど国政は王にやらせて団長が交渉にあたればいいって言っているの」
 ぶっきらぼうに答える御者―騎士団副長・円堂円に雪姫は溜め息を交え言った。
「だから~……ジュウ様が直接交渉にあたる事で誠意を見せて少しでも説得を確かなものにする。そう雨に三回、私からは十回以上説明したよね?」
 道中何度もこのようなやり取りが繰り返されている。
 ジュウはそれを聞きながら、そう思うのも仕方ないかと思った。
 自分は未熟者。加えて円は自分を、いや男というものを嫌っている。
 雨が国政を行っているのだから雨に王権を譲れと、本気で迫られたこともある。
 と、そこまで考えて自分が敬意の対象になりえていない事実を思い出す。
 円然り、雨の妹の光も自分を嫌っている節がある。雪姫は友好的ではあるが、それは敬意には程遠い。
 唯一雨だけがはっきりと自分に対して敬意を払ってくれている。
 しかし、ジュウは第一に自分が敬意を払うに値する人間だとは思っていないので、この状況を別に悲観するでもなく受け止めていた。
「なにぼーっとしてんの? ジュウ様」
 遠く思索に耽っていた意識が引き戻される。
「なにか考え事?」
 覗き込み、訪ねる雪姫に対して、ジュウは事も無げにさらりと。
「お前達の事を考えてた」
 と答えた。
「……」
 暫くの沈黙。しかしそれは長く続かない。
「やぁーっだ! ジュウ様何言ってんの、やだ恥ずかしい~!」
 実に嬉しそうに身を捩らせながら雪姫がジュウをばしばしと叩く。
「そんな事さらっと言うからダメなんだよ~?」
 自分が言った言葉の破壊力に気付かず、ジュウはただ痛みを訴え戸惑うばかり。
「あ~ん、も~。雨や光ちゃんにも聞かせてあげたい~。ジュウ様ったら凄いカッコイい~」


475:伊南屋
06/11/10 18:49:29 ekNWcoY5
 異様な雪姫の反応にジュウは更に戸惑いを深める。
「……これだから男は」
 呟く円の棘のある言葉も、何故そんな事を言われるのか分からない。
「なん……なんだ?」
「ねえ、ジュウ様」
 戸惑うジュウなどお構いなしに雪姫がジュウに言った。
「今日一緒に寝よっか?」
「なんでそうなる!?」
「あ、一緒に寝たらむしろお互い眠れないかも」
「だからなんで!?」
「……優しくしてね?」
「いや、聞けよ!?」
「バカなこと言わないでよ。特に王」
「俺かよ!」
 そんな風にして一向を載せた馬車は西へ西へと進んでいく。
 馬車からは絶えず馬鹿馬鹿しい会話が漏れ聞こえたという―。

476:伊南屋
06/11/10 18:53:14 ekNWcoY5
 毎度、伊南屋に御座います。

 ぽつぽつと細切れに投下。読み手の皆さんはイライラしてるでしょうね。すみません。
 並列で書いてたリクエスト用より早く書き上がったのでまずはこちら。
 リクエスト用SSは明日、明後日中にはなんとか……って感じです。

 こんな感じでちまちま書いてます。後は書き手が増えると嬉しいな。
 以上、伊南屋でした。

477:名無しさん@ピンキー
06/11/11 13:42:12 JX/SO8Sd
堕花「ジュウ様、口を御開けください」
ジュウ「一人で食える」
斬島「ジュウ君ジュウ君柔沢君、あ~んしてっ!!」
ジュウ「せんから口に突きつけるな!!」
光「あの、その、えと、残したら勿体無いから全部食べなさい!!」
ジュウ「だったら皿がテーブルに乗り切らない量を作るなよ」
円堂「ま、誕生日プレゼントなんだから私が食べて手伝うわけもいかないし、
    残さず召し上がれ」
ジュウ「はあ、わかったよ、ありがたくいただくよ」




紅香「オイ馬鹿ムスコ、美少女を侍らせていい御身分だな。何処の王様のつもりだ?」
堕花「王様のつもりではございません」
紅香「なに?」
堕花「実際に王様なのです」
紅香「・・・・そうか」
堕花「はい」

478:伊南屋
06/11/11 17:03:53 Sca6bjxO
 幸せを願って。
 その為に努力した。
 そうして私は手に入れた。
 何を?
 ―分からない。
 今この手で掴んだものは。

 本当に“幸せ”なんだろうか。


『HAPPY(is the)END』


 生徒会室。
 一体何度踏み入っただろうか。
 自分は知っている。この中には今、一人しかいない。
 そしてその一人は自分を見て、どこまでも優しい笑みを浮かべ迎え入れるのだろう。
 扉を開く。足を踏み出す。視線は床。それを上げる。映る。少女。同級生の、少女。微笑っている。愛しい者を見る目。
「待ってたわ。柔沢くん」
 初めて会ったときとは違う。それは柔らかい声。蟲惑的な響き。自分の何かを麻痺させる毒。
 綾瀬一子。かつては反目しあい。今は、自分の恋人。
 一子が歩み寄る。ジュウも吸い寄せられるように近付く。
 距離が縮む。やがて零になり、接触。
 胸元に一子が頬を埋めた。柔らかな体温に安堵を感じる。同時に言い知れぬ不安も。
 いつからか繰り返されている逢瀬。その度にこんな気分になる。
 一子は縋るようにジュウを抱き締め、その身全体を擦り寄せる。くねる動き。男の中の獣を誘う動き。
 それに耐える。情欲を抑え込む。彼女はまだ望んでいない。その動きは無意識だ。まだ、抱き締めてはならない。
「今日のお弁当は私の番だね」
 そう言って、一子は二つの布に包まれた箱を取り出した。片方は水色。もう片方は桃色。
 弁当はジュウと一子が交代で作る。そういう約束だ。
「……ありがとう」
 食欲がないとは言えなかった。決して、言ってはいけなかった。
 布を解き、中の弁当箱を取り出し、並んで会議机に腰を下ろす。
 中は可愛らしい。女の子らしい弁当だ。御飯は桜そぼろでハートが描かれ、赤いウィンナーはタコの形。デザートのリンゴはウサギ。
 絵に描いたような弁当。美しいそれはどこか歪んで見えた。
「さ、食べよう?」
 笑顔で一子が促す。ジュウも手を合わせ「いただきます」と口にした。
 口に運んだそれらはどれも美味い。確かに美味いのに。どうしてだろう。吐き気がする。
 それでも全てを嚥下する。時折、互いに食べさせ合いながら。
 誰かが見れば、失笑とともに暖かい目を向けるであろう。幸せな恋人達の姿だったはずだ。
 一足先に弁当箱を空にして、今日の弁当が美味かった事を殊更強調して伝える。
 彼女は満面の笑顔に照れを浮かべ喜んでくれた。


479:伊南屋
06/11/11 17:06:05 Sca6bjxO
 こんな笑顔を見る度に思う。良かったのだと。これで、間違えていないと。
 ジュウも笑顔を浮かべる。
 浮かべた笑顔は歪になっていなかっただろうか。
 やがて、一子も弁当箱に若干中身を残し完食を告げる。ジュウはその残った分を代わりに食べ、両の弁当箱を空にした。
 暫く、会話に興じる。今日あった事。昨日のテレビ。何気ない世間話。どこまでも普通な会話。
 気が付けば、一子はジュウの手に自らの手を重ねていた。ジュウはその手を握り締めた。
「ねえ、柔沢くん」
 一子がジュウに顔を寄せ、口付ける様な距離で囁く。
「……好きよ」
 囁きながら、一子は自分の席から立ち、ジュウの膝元へ向かい合う形で跨る。
 若干ジュウが見上げる形になりながら、唇を重ねた。
 柔らかい感触がジュウを痺れさせる。粘膜を擦り合わせるようなキス。
 一子の手はジュウの首筋、鎖骨を緩やかに撫で回す。
 閉じられたままの唇が、くすぐったい様な甘い刺激に開かれる。
 一子が間髪入れずに舌を滑り込ませた。
 蕩けるような舌の愛撫。なにもせずとも舌が絡められ、一子の咥内に誘い込まれる。
 温かい。ぬるぬるとした咥内は一子の体温をダイレクトに伝えてくる。
 互いの唾液が溶け合い、舌と唇を伝い行き来する。
 甘いとすら感じるそれは極上の媚薬となってジュウを昂ぶらせる。
 昂ぶりはジュウの下半身を奮い立たせ、制服のズボンに膨らみを作る。
「ふふ、おっきくなったぁ」
 一子がそれを察知する。跨った腰をくねらせ、幾重の布地越しに互いの性器を擦り付ける。
「んっ……」
 一子が甘い吐息を漏らす。押し付けるような腰の動きは更に貪欲に刺激を欲し激しくなる。
 ジュウは下半身への刺激を一子に任せ、両手を一子のセーラー服の内側に潜り込ませた。
 腹、脇腹、あばら骨と指先は撫で上げ、そして胸に辿り着く。
 触れたそこは真っ先に肌の感触を伝えてきた。
「着けてなかったのか」
 問うジュウに、一子は顔を真っ赤にさせ頷く。
「そうか」
 それ以上何を言うでもなくジュウは胸への愛撫を始める。
 指先で捏ね、形を変え弄ぶ。
「ふ、はぁっ」
 一子から洩れる吐息は熱くなり、上半身、下半身それぞれから与えられる刺激に歓喜を示す。
 ジュウの指先はそれを更に引きだそうと、先端を摘み、捻る。
「く……んはぁっ!」
 痛みすら伴う強い刺激に、一子が示したのは快楽の調べだけであった。


480:伊南屋
06/11/11 17:08:41 Sca6bjxO
 くねる腰も一旦動きを止め。身を仰け反らせ快感に浸る。
 ジュウは掌全体で胸を掴み、ぐにぐにと揉みしだく。
 絶え間なく与えられ、変わり行く刺激に身を震わせて一子は溺れる。
 再び動き出した腰も、先よりも激しく擦り付けてくる。一子の下着を透かし、更に溢れる愛液はジュウの制服を濡らしていた。
 ぐちゅぐちゅと音を立て、ぬめった腰を滑らせ、擦る。
「ん……足りない」
 一子が呟いたかと思うと、彼女の両手は下半身に伸び、鮮やかな手際でジュウの性器を取り出した。
 性器に、それまで同様に腰を擦り付ける。
 幹に伝わるぬめりと布地の摩擦。
 その快感に応えるよう、ジュウは胸元への愛撫を強める。
 唇を片方の突起に近付け、舌先を伸ばし愛撫する。
 強く吸い付き、時に噛みちぎらんばかりに歯を立てる。
 一子の身が震える。
「かっ……あはっ、んぁっ! んはぁぁああ!」
 声を上げ、絶頂に身を戦慄かせる。
 ひくひくと震える体は熱く火照り。下着は更に愛液に濡れた。
 ジュウの下半身には下着越し、ひくつく一子の秘裂が感じられた。
 耐え難い。そう思ったジュウは片手を下半身に向ける。指先は下着。その秘裂を覆う部分に触れ、横へとずらす。
 露わになった秘裂へ、ジュウは自らを突き刺した。
「んはぁあ!」
 絶頂の余韻も覚めやらぬタイミングで貫かれた一子は更に身を仰け反らせる。
 がくがくと体は揺れ、焦点の定まらぬ瞳は天井を見るばかりだ。
 口の端からは涎が垂れ、締まりのない表情を更に際立たせている。
 白痴の様な表情とは裏腹に、下半身はジュウの動きに合わせ、妖しく蠢いていた。
 膣中は深くにジュウを誘う動きを示し、甘く締め付けてくる。
 ジュウはそこから与えられる刺激に耐え、がむしゃらに一子を突き上げる。
 一突きする度に愛液が溢れる飛沫を散らす。
 淫らな水音は大きさを増すばかりだった。
 ただ一心不乱に一子は腰をうねらせる。誘う動き。射精を促す。
 ジュウは耐える。耐えて、一子を翻弄する。跳ねる躯。抑え込み、深く突き刺す。
「あはっ! ひゃうっ、うんんっ!」
 白い喉を震わせ、一子が嬌声を上げる。その声を我慢し、一子が耳元に口を寄せた。
「ん……ふふ、私は幸せ……なのかな?」
 ジュウに何度となく浴びせられた問い。ジュウを責め苛む言葉。
「お前は幸せだよ」
 繰り返す。問われる度に。一子に言い聞かすように。自分に言い聞かすように。


481:伊南屋
06/11/11 17:11:48 Sca6bjxO
「うん……っ。しあわせ、だよぉっ」
 吐息に声を途切れさせながら。一子は言う。
 ジュウを縛り付ける言葉。
 一子が幸せを願う限り。一子が幸せを感じる限り。ジュウは一子を手放せない。一子もジュウを手放さない。
 絡みつく躯と心。繋がりは深く、致命的。
 ただ、ただ繋がる。それだけが証と信じて。
「あぁ……んっ」
 浴びせられる熱っぽい息は、ジュウの顔をくすぐり撫で、正常な思考を削り取る。
 狂っている。狂ったように踊る。身を重ね、狂楽に耽る。異常な愛情。依存する愛情。
 一つ貫く度に跳ねる一子の身体。肌に指を這わせる。
 柔らかい胸に指先を沈め、感触を楽しむ。
 なのに、その肌がぐずぐずに腐っているように感じた。
 一瞬の腐臭。
 フラッシュバック。
 母親。死体。腐乱。山道。遺棄。共犯。
 浮かぶ映像と単語。
 それらを掻き消す為に、遮二無二腰を打ち付ける。
「あっ! うぁっ……ん。いい、よぉっ。ゴリゴリってぇ!」
 叫ぶ一子の声も聞こえない。思考を停止し、ただ肉欲に堕ちる。
「ゴリゴリしてる。あんっ! ふかい……っよぉ!」
 身を震わせる一子。絶頂しているのだろう。何度も強い収縮を繰り返す。
 ひくつく膣壁は内に在るものから、中のものを差し出せとばかりに絡みついてくる。
 それでも耐える。
「ひゃぁっ! も……だめ、わけわかんないっ……ふぁあん!」
 ジュウの首筋にしがみつく。顔面に押し付けられる乳房に噛み付く。
 歯形を残すほど強く噛み締める。舌は乳首を弾き、潰し、回す。
「はぁぁああん!」
 痛いはず。なのに漏れるのは歓喜の声ばかり。
 そうだろう。彼女は思い込めばそれが全て。与えられるねは快感だけと思えば、痛みなど感じない。
 全ては思い込み。
 それを知ってなお、ジュウは快感を与える事に従事する。
 強く、強く打ち付ける。叩きつけられる恥骨が僅かに痛む。構わない。更にぶつけるように突く。
 激しく痙攣は止まない。与えられる刺激は強く。恐らくもう長くは持たない。
「そろそろイク。良いか?」
 問うのは義務感から。答えはいつも決まっている。
「あぁっ……いいよ。来て、中に……あはっ! 膣中に、出して。全部出してよ……んはぁっ! あんっ、わたしの中。いっぱいにして。白いので、ぜんぶっ! ひうっ! あくっぅ……。出して! 出して、出して、出してだしてだしてぇ!!」
 分かっている。

482:伊南屋
06/11/11 17:13:32 Sca6bjxO
 ジュウは応えるようにラストスパートをかける。激しく打ち合う腰は水気のある破裂音を響かせる。その間にも一子は何度目だろう。絶頂に達し、ジュウを甘く、甘く締め付ける。
「くっ……!」
 限界、刹那に溢れ出す精液。どくどくと一子の膣中に溢れる。一番深く。子宮口のその向こう。
 一子の痙攣する膣中も、精液を奥へ運ぶための蠢きを見せる。
「あはっ……いっぱぁい」
 一子は自らを満たす感覚に笑った。
 ジュウは知っている。一子が自分との子供を望んでいると。その為に膣中に射精させるのだと。
 なぜなら。子供が出来るというのは、分かりやすい幸せの形だから。幸せに貪欲な一子はそれを望んでいる。
 高校生だから等関係無く。幸せの形を手に入れたがっている。
 しばらく、繋がったまま一子は自らの下腹部を撫でていた。祈るように。まだ見ぬ子供を幻視して。
 一子の瞳は、慈母のように穏やかだった。
 穏やかに、狂った輝きを放っていた。

 きっといつか。自分達の子供が出来るだろう。一子はそれまで諦めない。
 そうして自分は、柔沢ジュウという人間は綾瀬一子の描く幸せの部品として消耗される。
 パズルの一ピースのように。全体のたった一ピース。
 それで良い。そう思い込む事にしたのだ。一子のように。
 ただ目の前のものを即物的に選んでいく。
 それが幸せだと信じて。
 幸せだと思い込んで。
「大好きよ。私の、私だけの柔沢くん」
 一子が呟いた。

「―幸せにしてね?」


fin.


483:伊南屋
06/11/11 17:17:41 Sca6bjxO
 毎度、伊南屋に御座います。

 微妙にリクエストのあったジュウ×一子のヤンデレです。ヤンデレになってるかは微妙。
 鬱々した雰囲気を出すために文体変えましたがかえって読みづらいかも……。
 そこんとこは未熟者故と思って多めに見てください。

 次回はレディオ・ヘッド続きにしようか別なリクエストにしようか悩み中。どっちが良いとかあったら言ってください。
 以上、伊南屋でした。

484:名無しさん@ピンキー
06/11/11 17:23:09 tj9XmEXT
>>477
紅香納得しちゃったよオイw

>>483
うん、何て言うか病んでる感じが凄くよく出てる。
てかどんどんと片山世界を書くのが上手くなってると思う。
GJでした>伊南屋氏
次作は、円ものがいいかなあ……。

485:名無しさん@ピンキー
06/11/12 12:28:42 iBp2ekVF
毎度毎度、伊南屋さんすごいですね!!神以外の何者でもないですよ!!一子好きになっちゃいました!!
自分も円をリクしますm(_ _)m

486:名無しさん@ピンキー
06/11/13 00:10:43 3KHT1ygL
貴方はやはり神だな。
もうなんていうか神だな。ヤンデレスキーな俺にはこれ以上無いくらいの良作ですた!

リクは……やっぱり円かな?

487:名無しさん@ピンキー
06/11/13 00:53:42 J76oRD+G
レディオの続きが気になって仕方がない、今日この頃。久しぶりですよ、続きが気になる読み物は、ですので続きをお願いします。

488:名無しさん@ピンキー
06/11/13 02:04:15 ajOvcVlz
何だこの微妙に自演臭い円リクは…www
まあ円も好きだから良いけどさ

個人的にはレディオは息が長そうだし、
雨辺りのリク消費をお願いしたいところ

489:名無しさん@ピンキー
06/11/14 23:20:38 cy0/c2hW
確かにwwwwww

まあリクに異存は無いが。

490:名無しさん@ピンキー
06/11/14 23:35:18 lD4PeQp1
単純に雪姫、光、雨らは既に書いてるから、って事じゃね?

491:名無しさん@ピンキー
06/11/17 02:30:32 oeA7nAQQ
それにしても、片山世界は本当に男キャラが少ないよな

492:名無しさん@ピンキー
06/11/17 08:53:19 63Vn5dBt
まぁ男キャラ出す意味があんま無いと思うけどな 
 
それでも紅は電波と比べると結構出ていると思うが?イラストが無いから影が薄いかもしれんがな……

493:名無しさん@ピンキー
06/11/18 10:59:12 13O+gqu3
竜士とか、フランクとか、騎馬とか、法泉とかー?

……いや、竜士は何気にイラストあるんだよな。

494:名無しさん@ピンキー
06/11/18 21:34:36 reOI8HAm
紫×しんくろーのこりゃペドい組み合わせで一つ

495:名無しさん@ピンキー
06/11/19 19:27:52 RQ9PAyXL
むしろ和むほのぼの物の方が………。

496:名無しさん@ピンキー
06/11/19 22:40:02 vPfD2N43
いい加減なシチュでジュウ×円を書いてみる


 ジュウがその日、全く無目的に立寄った公園でたまたまそんな状況に遭ったのは全く偶然であった。
 すなわち、彼の「友達」の一人である円堂円が所謂不良の集団に絡まれているという全く既視感を覚えるような
状況であり、むしろそこから二人で共闘して哀れな獲物たちを完膚なきまでに叩きのめした所まで含めてお約束
と言えるかもしれない。
 しかしながら往々にしてイレギュラーとは起きる物であって。

 「捕まえたぞ!」
 「っ!」
 自分の担当側の最後の一人を倒した所で、突如背後から聞こえた叫びに振り返ると、先程自分が倒した一人が
何時の間にか起き上がって、鼻血を垂らしながらも円を背後から羽交い絞めにしている所だった。加減しすぎたか
、とジュウは舌打しながら駆け出す。
 もがく円だが、流石に組み付かれると体格差のせいで動きが封じられてしまっているようだ。
 と、その前でフラフラと立ち上がる円に腹を打たれ蹲っていた男。その目は怒りに燃えて血走り、そしてその右手
には特殊警棒。それが大きく頭上へと振り上がり、そして……激突!
 間一髪、円を背後の男ごと突き飛ばして割り込んだジュウは、その瞬間、頭部への衝撃と同時に目の前に火花が
明滅し、意識が暗くなりかけたが、何とかこらえて手を泳がせ、とりあえずそれに当った物を掴んで踏み止まった。
頭を一つ振って未だチカチカとする視界に自分の手を捉えてみれば、その掴んでいるものは正しく今自分の脳天へ
と振り下ろされた凶器と、それを掴む男の手。それをゆっくりと上へ辿ると、やがて呆然とした男の顔に行き当たった。
 ニヤ、と凶暴な笑みを浮かべる。
 今度こそ男の顔が恐怖に歪むのを確認する暇もあらばこそ、ジュウの全力を込めた拳は、確かに歯を砕く感触と
共にその真ん中へと叩き込まれていた。
 そしてそのまま、ガクリ、と前のめりに膝をついた。背後からは、倒れて体制が崩れたのを利用して戒めを解いた
のだろう円が、自分の名を呼びながら駆け寄ってきていた。

 「なあ、もう大丈夫だって」
 「いいからじっとしていなさい」
 “下から見上げながら”抗議するジュウにも構わず、円はそう言ってそっと彼の額に手を当てた。そのひんやりとした
感触が心地よくて、思わずジュウは目を閉じた。
 あれから、円はジュウに肩を貸して、先程の場所から少し離れたこの小さな公園にやって来た。そして自分のハンカチ
を水で濡らしてジュウの頭の血を拭いてくれたのだが……。
 「あなたが丈夫なのは知ってたけど、特殊警棒で殴られてこの程度の怪我で済むなんてね」
 「だからもういいって。もう血も止まってるし」
 前には金属バットでぶん殴られた事だってあるしな、とは流石に言わなかったが。
 「頭部への怪我は一見大丈夫に見えても後でどうなるのか分からないのよ。きちんと病院へ行って検査しなさい。代金
はこっちで出すから」
 からかいではなく真剣な面持ちで諭す円に気圧されながらも、ジュウは費用については丁重に断る。が、円は何故か頑
として譲らない。なんとなく、自分に借りを作っておきたくないのだろうか、と判断して、少し寂しいような気持ちになりながら
もジュウは引き下がった。
 「……」
 「なあ」
 不意に落ちた沈黙になんとなく話題を探したジュウは、とりあえずさっきからの疑問を口に出した。
 「なんで膝枕なんだ?」

497:名無しさん@ピンキー
06/11/19 22:41:09 vPfD2N43
 「嫌だった?」
 照いも無く、平然とこちらを見下ろしながら聞く円に、なんと答えればいいのやら、ジュウは口篭もる。いきなり力ずくで
頭をベンチに座ったそのしなやかな太腿の上まで持っていかれた時に感じた気持ちや、今こうして存外に柔らかいその
感触を感じているのは正直嫌な気分とは程遠かったけれど。
 「まあ、私みたいな男嫌いの空手女よりは雪姫や雨に膝枕された方が柔沢君もそりゃ嬉しいだろうけど。無いものねだ
りは良くないわ」
 「いや、ねだってねえよ」
 なんだかコイツは一体自分をどういう目で見ているのだろう、と心中不安に感じながら、人が通らないかを気にしてみる
。幸いここは表の通りからは奥まった所にあって、入り口の木と藪で視界も遮られてあるので、この状況を他人に見られ
る心配はあまりないようだ。
 とりあえず忠告を聞いて大人しくしておくか、と思い直し、何とは無くぼんやりと円の顔を見上げた。改めて見ると、綺麗
な顔をしているんだな、と思う。冷気すら漂わすような整った面長の顔。鋭く、深い輝きを放つ切れ長の黒い瞳。短く整え
た髪型のせいで一見すると美少年にも見えがちで、しかし柔らかな晩夏の木漏れ日を浴びてそっと目を閉じた彼女は
まるで白石の彫刻の様な女性的な美を感じさせた。
 思わず見とれていたジュウの視線を感じたのか、円が瞼を上げた。ハッとして、ジュウはつい目を逸らす。
 「どうかしたの?」
 「いや、なんでもない」
 気恥ずかしくて顔も見れないまま、ジュウは答えた。いつも開けっ広げで大胆な雪姫などとは違い、氷のような円に「女」
を感じてしまった事で、妙に恥ずかしさが湧き上がってきて、そうなると何かもうこの状況が一刻も耐えられないような気持
ちになってきて、
 「あの、もう、ホントに大丈夫だから、もういいぞ」
 「そう」
 今度は存外に素直にそっと手をどけた彼女に不審がる余裕も無く、ジュウは身を起こすと手早く立ち上がった。
 「じゃあ、とっとと病院行くか」
 「そうね。家の関係の所なら安く済むし、色々と話が付けやすいから案内するわ」
 「ああ、すまねえな」
 「私の方から言い出した事よ」
 こちらを一顧だにせずにそう言い置いてサッサと先に立ち歩き出す円は、既にすっかりいつもの彼女だった。


今日はここまで。続きはまた今度。

498:名無しさん@ピンキー
06/11/20 07:15:23 r7au2UVr
うーんGJ!!
続き待ってるよー。全裸で。

499:名無しさん@ピンキー
06/11/20 10:30:11 fY6Sojm/
そして円堂さんは王様の金属バットをくらうのです

500:名無しさん@ピンキー
06/11/20 19:46:48 os+Ryvxa
やらしい

501:名無しさん@ピンキー
06/11/23 02:14:10 qltEXOSj
夕乃さんにムラムラする日々

502:名無しさん@ピンキー
06/11/23 08:16:33 OoR/LLCe
そういえば紅のハーレムってまだないよな?

503:名無しさん@ピンキー
06/11/23 14:56:15 HTUThMSV
どいつもこいつも嫉妬深そうな上に戦闘手段というか外敵排除能力を装備してそうだからなぁ。

504:名無しさん@ピンキー
06/11/23 18:45:03 F4zqrmO6
真九朗さんどいてください その女を殺せません

505:502
06/11/23 21:35:30 OoR/LLCe
嫉妬とかそこらへんは上手く真紅郎がまとめてさ。イッてもイッても終わらない快楽地獄、みたいなw

506:名無しさん@ピンキー
06/11/23 22:30:33 pP9kWAW3
逃げてー、真九朗さん逃げてー!!

507:伊南屋
06/11/25 14:13:35 0v0a0v87
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
Ⅳ.
 夜―。
 辺りは暗く。月は隠れ、地を照らすのは星灯りだけ。
 重い緞帳を落としたような闇の中、一向の馬車は足を休まざるを得なかった。
 予定していた街に辿り着けず、仕方無く街道の脇で野宿をする事になった。
 焚き火の爆ぜる音、橙の炎を囲み、三人は腰を下ろしていた。
「下らない足止めを食ってしまったわね」
 呟いたのは円だ。つい数刻程前の出来事を思い出し、忌々しげに毒づく。
「山賊なんて、数ばっかり揃えた烏合の衆に時間を取られるなんて……」
 円は最後に、これだから男は。と付け加えた。
「数ばかり居て手間取るんだよね~。ましてやこちらは三人しかいないし」
 応えて呟いた雪姫に、ジュウが反論する。
「……なんで俺が頭数に入ってるんだ」
 言ったジュウは、所々にかすり傷が目立つ。先の襲撃ではジュウもその身を危険に晒しながら戦ったのだ。
「良いじゃん、戦争の時だって前線にいるんだし」
「まあ……それはそうだが」
 しかし、だからと言って一応は王なのだ。その辺の三流武人に遅れは取らない、ましてや山賊なら楽に倒せる程度には戦えるとは言え、それも精々が一対三あたりまで。
 それ以上となればある程度は捨て身になり、それなりの怪我は覚悟しなければならない。
 今のように、十五人を相手に一人当たり五人などと言って、更にその五人を倒しても、無傷で息一つ上がらない円や雪姫とは訳が違うのだ。
 それでも、そこまで口にしないのはジュウの、プライドや意地と呼ばれるものからだった。
「ただ、一つ気になるんだよね」
 珍しく声に真剣さを帯びさせた雪姫が言った。
「あいつら、山賊にしては動きが整いすぎじゃなかった?」
「それは私も感じたわね」
 雪姫と円は、山賊の動きがそれらしからぬ事に気付いていた。
 それ自体はおかしくはない。敗戦国の残党が徒党を組んで山賊行為に走るのはよくある話だ。それならば山賊でも統制の取れた動きは納得がいく。
 しかし、二人は更に彼等の動きが妙に戦い慣れたものであると思った。
 しかも、それはエリート兵卒の、研ぎ澄まされた刃のように洗練された動きではない。
 むしろ、使い慣らされた鉈のような、野戦に合わせた動きであると感じた。
 そんな戦い方をするのは大方、傭兵と呼ばれる人種だ。
 しかし傭兵ならば、この戦乱の世。戦争のある国に雇ってもらい、そこで戦った方が収入は多い。


508:伊南屋
06/11/25 14:17:18 0v0a0v87
 つまり、傭兵ならばわざわざ山賊に身をやつす必要はないのだ。
 となれば、考えられる事は限られてくる。それは例えば―。
「山賊に見せかけた、私達を狙っての襲撃?」
 円の弾き出した答えもその一つ。ジュウと領主の会談を快く思わないもの。もしくは領主その人からの差し金か。
 いずれにせよ会談を阻止せんと何者かが暗躍している事になる。
「もしくは、なんらかのトラブルのとばっちりを受けたって所かな?」
 雪姫の答えもまた、可能性の一つ。狙いは自分達ではなく他の誰か。
 その理由が何にせよ、自分達はただの巻き添え。
 もっとも、これらの答えのどちらかが答えだとすれば、いずれにせよ不穏な気配は変わらない。いつ再び襲われないとも限らないのだ。
「まったく……今日は寝ずの番でもするか?」
「そうね、呑気にキャンプ気分で野宿って感じではないわ」
「じゃあ三人交代ね。出発は日の出と共にしよう」
「って、また俺が頭数に入ってるのかよ」
「当たり前でしょ。自分の身は自分で守りなさい」
 あっと言う間に段取りが定められる。
 ジュウが反論する間もなく見張り番も定められた。
 もっとも、ジュウも反論する気はさしてないので不満はない。第一、一応文句は言ったがどの道見張り番はするつもりだったのだ。
 焚き火を消し、最初の見張り番となった雪姫を残し、ジュウと円は馬車の幌に入り、眠る事にした。
「なんかしたら殺すわよ」
「なんもしねぇよ」
「ジュウ様、私と一緒の時は襲って良いからね!」
「見張ってろ!」
 一通りツッコミ終えたジュウは、何事もなければ良いと、切実に願いながら眠りに落ちる。
 月を隠す雲はさらに広がり、星も隠し始めている。
 更に闇は深くなりつつあった―。

509:伊南屋
06/11/25 14:21:11 0v0a0v87
 どうも二週間ぶり、伊南屋にございます。

 今回はレディオ・ヘッドⅣ.になります。なかなか話が進まなくてスイマセン。次ではキャラ増えますんでお楽しみにして頂ければ幸いです。

 そして消化率悪い癖にリクエストは相変わらず取ります。
 そんな訳で伊南屋でした。それではまた。


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