06/08/02 22:50:32 awjhx1a4
GJですな。
再投下、心待ちにしています。
151:名無しさん@ピンキー
06/08/02 23:38:20 XrdQwiO6
いいよーいいよー!お人好し!
くそっ、GJ以外の良い言葉が見つからん!
再投下待ってますよ。
152:名無しさん@ピンキー
06/08/02 23:44:29 TbC5orY5
こういうのもいいですな…
エロ夫婦ネタというのも気になるので、そのうち投稿お願いします~
153:名無しさん@ピンキー
06/08/03 17:11:25 00B3b81i
gj&wktk
154:名無しさん@ピンキー
06/08/06 15:45:25 GVPpPt/l
心、洗われました・・・
155:名無しさん@ピンキー
06/08/08 10:37:19 8/f7BZNm
死ぬまで、お側離れません・・・
156:名無しさん@ピンキー
06/08/08 14:02:09 PAxLqccp
なんかそれお化けにとりつかれたみたいだなw
157:138
06/08/09 01:09:53 yzJ3aclT
前回とは真逆の路線
甘めの姉さん女房系?
158:138
06/08/09 01:10:45 yzJ3aclT
ようやく寝付けたと思ったら、鼻や耳をくすぐられているのが鬱陶しくて目が覚めてしまった。
「ねえ、起きてる?」
薄目を開けると、妻の智子が自分の髪を摘んで俺の鼻やらをくすぐってる。
それを手で払いのける。
「……勘弁してくれ。 明日も朝早いんだよ」
「もう、最近そればっかり。
なんか眠れないんだよねぇ……、ちょっと付き合ってくれない?」
「電気つけても怒らないからゲームでもしててよ……」
「じゃあ一緒にやろうよ」
彼女に背を向けるように寝返りをうって、毛布を肩までたぐり寄せる。
「お願いだから、寝かせて……」
再びうとうとしかけていたとき、また耳に変な感触を感じた。
なにやら軟らかくて湿っぽいような肌触り。
「な、何をしているの……?」
「何だと思う?」
「耳、噛んでるよね? 唇で……」
「ピンポ~ン!」
「“ピンポ~ン”じゃなくて…」
上体を起こし、智子の方を向いて少し真面目な顔で話しかける。
「お願いだから今日は寝かせて……」
智子と結婚してそろそろ半年、高校時代の先輩だった彼女に未だに頭が上がらない。
とは言っても学生時代にお互いに面識はなく、
社会人になってから好きになった人が、たまたま同じ学校の出身だっただけ。
彼女は意識していないようだが、一学年上だった智子は
普段の考え方やしゃべり方なんかが、俺には大人っぽく映る。
でも時々垣間見せる、妙に子供っぽい部分があって、それがたまらなく好きだった。
「じゃあ、新しい指輪買って?」
付き合い始めて一月くらい経った頃だろうか、彼女を年上と知ってしまい
おまけに自分の先輩だったと知ったときから、おねだりにはほとんど首を縦に振ってきた。
「うん、次のボーナスでたら優先的に買わせていただきますから」
しかし智子は、依然として面白くないといった表情をしている。
これではこっちも気持ちよく寝れない。
「違う! ホントは指輪なんていらないの! バカ……」
本当はもっと高い物が欲しいとか言い出すんじゃないだろうな…。
「もういいよ。 勝手にしな」
もう一度毛布をかぶりなおし、無理矢理目を瞑る。
しばらくは彼女も黙ったまま。
多少気になるが、『これでいいんだ』と自分に言い聞かせながらさっさと眠りにつきたかった。
けど余計なことを考えてしまったせいでだんだん眠れなくなってくる。
159:138
06/08/09 01:11:58 yzJ3aclT
「ねえ、怒っちゃった……?」
しばらく黙っていた俺に智子が声をかけてきた。
「怒ってないから」
「ならこっち向いてお話しない?」
さらに深く毛布をかぶり意図的に彼女から遠ざかるように寝返りをうつ。
「ごめん、また明日ね。 本気で今日は寝ないとやばいんだ……」
「ケチ!」
またしばらくの静寂。
―寝たのかな?
一方の俺はもう眠くなくなってきた。
寝なきゃ寝なきゃと考えれば考えるほど、目が冴えてくる。
「…こちょこちょこちょ~」
大人しくなったと思ったのもつかの間、また耳を髪の毛でくすぐられてる……。
「おいっ! こちょこちょじゃねーだろ! いい加減にしてく……れ……よ……」
ぶわっと毛布を跳ね除け、智子の方を向いて怒鳴りつけようとした。
「あ、あの……、いつから裸なの……?」
だが俺の目の前には一糸纏わぬ姿で、毛布で胸元を色っぽく隠している智子がいて固まってしまった。
「エヘッ…、ついさっき。 もっと見たい?」
「い、いや、あのね……、本当に申し訳ないんだけど、明日朝早いんだよ、俺。
何してても文句言わないから、そっちでやってくれるかな……」
俺はそう言いながら部屋の端にあるテレビを指差す。
智子は頬を膨らませながら、毛布を肩から羽織ってテレビの方へ這って行った。
しばらくはガサゴソとテレビの辺りを漁る音だけ聞こえてくる。
大人しくゲームでもしてくれる気になったのかな?
そんなことを考えながら俺も、少しずつだがまたうとうとし始めてきた。
だが突然代爆音の喘ぎ声が聞こえ現実に戻されてしまう。
慌てて振り返ってテレビの方に目をやる。
「うっわ~、カゲキ……」
智子が膝を抱えて座りながら見つめるブラウン管の先には
俺のお気に入りのAV女優と名も知らないの男優の絡みが映し出されていた。
「あ、え!? こ、これ……? ちょ、な、何見てんだよ……」
吹き出る冷や汗を腕の甲で拭いながらなんとか声を搾り出す。
寝たふりをしていた方が良かったのかもしれないが
この大音量で再生しているところをみると、明らかに俺への当てつけだろう。
「ん? この前とったドラマ見ようと思って探してたら
なんかラベルが付いてないビデオがあってさー、
何かな~って思って見てみたら………ね」
独り暮らしの時に見ていた物である事は確か。
おそらく引っ越す時に紛れ込んで、あそこに放置されていたみたいだ。
「ねえ、こんなのいつ見てるの? 私が寝た後とか?」
「い、いや、最近は見てないよ。
ほ、本当だって…、というかなんでそんなとこにあるのか俺にも……」
「どうしたの? べつに私怒ってないよ?」
しかしこんな状況で平常心でいられるわけがない。
「ねえ、やっぱりこういうので覚えたコト、私に試したりしてるの?」
「いや、その…………」
なんとも例えようのない後ろめたさが俺の中で膨れ上がる。
160:138
06/08/09 01:12:34 yzJ3aclT
「ねえねえ、私もこんなに大きな声で喘いでる?」
いつの間にか智子は隣で寝そべりながら、頬杖をついて俺の顔を覗き込んでくる。
さながら蛇に睨まれた蛙状態。
「さ、さあ……、あんまり注意して聞いてたことないから……」
「じゃあ今から確かめてみる?」
やばい、変な誘導尋問と、テレビから漏れる声で、こっちも立ってきた……。
でも、もう日付が変わるし、早いとこ話を元に戻して誤魔化そう。
「あ、あのさ、休みの日は一日付き合うから今はちょっと……」
ついでに枕元にあるリモコンに手を伸ばし、どさくさに紛れてテレビを消す。
「その気ないの?」
「わ、悪いけど今日は……」
とは言うものの下半身はやる気満々。
頭だけがまだ少し冷静だった。
「ホントかな~? どれどれ…」
智子の手が、少し緩めの俺のパジャマのズボンの間から忍び込んでくる。
いきなりしなやかな指先が俺のモノに纏わり付く感触。
背筋が一瞬ゾクッとする。
「あらあら、これはどういうことかな~?」
智子の顔が耳元まで近づいてきて悪戯な笑みを浮かべている。
「気持ちいい?」
彼女がゆっくり手を動かしながら、また耳元でささやいてくる。
その口から漏れるかすかな吐息が耳をかすめ、無意識のうちにただコクコクと頷いてしまう。
「フフッ…、正直でよろしい」
智子が空いている方の手でそっと頭を撫でてくる。
もうわずかに残った俺の理性もなくなりかけて
彼女を押し倒し体位を変えようと腕を伸ばしかけた。
しかし指先が彼女の体に触れる前に、唇が重ねられて、動きが止まってしまう。
「ありがと。 ホントは疲れてるのんだよね。
でも最後は私のわがまま聞いてくれる、そういうとこ好き…」
唇を離しても、まだ体温が感じられるくらい近くに智子の瞳が映る。
「なんだよそれ。 どっちが本音だよ…?」
「こっちは妻としての本音。 あっちはオンナとしての本音……かな」
思わず苦笑いがこみ上げる。
頭の片隅には、明日の朝、遅刻しそうになり慌てる俺の姿が…。
「今の私は、オンナの私かな」
智子が俺の鼻の頭に浮かぶ冷や汗を、そっと人差し指で拭ってくる。
「バレてないと思ってた?
ちゃんと毎日お掃除してるんだから、あんなとこに隠してもバレバレだよ」
「いや…、べつに隠してたわけじゃなくて……」
言い訳の途中で、智子に頬を軽く摘まれる。
「あんなので発散するくらいなら、女房の私を使えばいいでしょ?」
そう言うとまた智子が唇を重ねてくる。
今度は舌がゆっくりと侵入してきた。
161:138
06/08/09 01:13:16 yzJ3aclT
そっと唇を離した智子が、糸を引く口元を手の甲で拭いながら熱っぽい視線を向けてくる。
なんか凄い勘違いされてるけど、もうこれはこれでいいや……。
「な、なあ、ちょいタンマ! 出そう……」
「ん?」
ようやく智子がさっきから動かしっぱなしの左手を休め、ズボンから引き抜く。
また両手で頬杖をついて俺を見下ろしてくる。
「ねえ、焦らされて焦らされて、朝まで焦らされっぱなしなのと、
朝まで何回もイキまくるのと、どっちがいい?」
もう朝まで付き合うことは決定してるのか…。
「い、いや、普通にやろうよ。 いつもみたいに」
「やーよ、私すぐイッちゃうから、いっつも途中からおもちゃにされてるもん…」
まあ、それが面白いというか、可愛いからいいんだけど。
「もしかして嫌だった?」
智子が首を左右に振って俺に答える。
「ううん、どっちかって言うとそっちの方が好き。
こんなにも私のこと求めてくれてるんだ―って思えて嬉しくなるし……。
だけど、たまにはいいじゃない? 逆でも」
目が慣れてきたせいか、薄暗い部屋でも彼女の顔がよく見えるようになってきた。
年齢の割には幼く見える顔立ち。
彼女自身も嫌いではないらしく、そのことを褒めると喜んでくれる。
けど胸も幼いとか言ってからかうと、かなり怒られる。
「もう、黙ってそんなに見つめないでよ…」
智子も、恥ずかしそうな笑みを浮かべながら俺の目を見つめ返してくる。
逆にこっちが彼女を見つめていたことを意識させられてしまい、
照れ隠しで、とっさに彼女の胸に両手を伸ばす。
「あっ…、ちょ、ちょっと」
掌に収まるくらいの大きさの彼女の胸は、敏感に反応して乳首の先は固さを増してくる。
そのまま左の胸にしゃぶりつくように口づけする。
「あうっんん!!
コ、コラ! だめだってば…」
手を払いのけられ、また仰向けでベットに押し倒されてしまう。
「たまには、おねーさんの言うことききなさい」
智子がスッと伸ばした人差し指の先で俺の唇を抑えてくる。
そんなこと言われなくても、いつも言いなりな気がするけど。
突然智子が枕元にあったタオルを取ると、それで俺の両手を縛り上げてきた。
「これでよし!」
俺はその縛られた手を目の前まで持ってきてしばし凝視してしまう。
簡単に縛ったくせに意外と解けそうにない。
「お、おい、これでよし、じゃないって! なんのマネだよ? もしかして酔ってんのかよ?」
「今日は飲んでませんよー」
彼女の手がそっと下に伸び、ズボンがゆっくり脱がされていく。
「でもその手じゃ、上は脱げないねぇ…」
「笑ってないでこれ解いてくれよ」
「ま、男の人だから上は脱がなくてもいっか」
そのまま手際よくトランクスまで剥ぎ取られてしまう。
162:138
06/08/09 01:13:52 yzJ3aclT
「さ~て、どうしてほしいのかな?」
彼女の目の前で、恥ずかしくも俺のモノは張り裂けんばかりに硬直している。
智子はそれを両手でそっと包み込むように掴むと、舌を出して先の方を一舐めしてきた。
また背筋がゾクッとして、一瞬の快感が全身を駆ける。
「お、今ピクッときたねぇ。 もっとして欲しいのかなぁ?」
こみ上げてくる恥ずかしさを紛らわすように
縛られた腕で、上目遣いに見上げる彼女の頭をポンポンと叩く。
「ど、どこだっていきなり舐められたらびっくりするだろ…。
てか、なんのつもりだよ? なんかあったのかよ?」
「いいじゃない。 何もなくても、こういうことするのが夫婦ってもんでしょ?」
「ま、まあそうかもしれないけど…」
また智子が俺の顔に自分の顔を近づけてくる。
「なら、遠慮することなんてないでしょ」
耳元でナイショ話でもするみたいに吐息混じりの声でささやきかけてくる。
「べ、べつに遠慮してるわけでは…」
「……まだ明日のこと考えてるんだ?
じゃあ、そんなこと忘れるくらいめちゃくちゃにしてあげよっかな…」
また耳に息を吹きかけられ、軽く噛まれる。
それに思わず体が反応してしまう。
「耳、弱いんだね」
「よ、弱いとかじゃなくて、髪の毛当たってくすぐったいんだよ」
智子が「そっか」と呟きながら、体を起こし、両手で髪をかき上げる。
「なんか私も汗かいてきちゃった…」
彼女の舌がまた、俺の首筋に降りてくる。
そのまま鎖骨の辺りまで、ゆっくり舌を這わせては、俺の反応を楽しんでいるようだった。
「ここからは、パジャマ着てるので通過しまーす」
ここまで来て一旦顔を上げると、また俺の腰の辺りに顔を移し、今度は根元まで深く咥え込んできた。
わざとらしくチュパチュパと音を立てられ、自然と体が強張ってくる。
しばらくされるがままに寝そべっていると、智子が口を離して、顔を覗き込んできた。
「このまま口に出したい?」
「い、いや、結構不味いらしいから止したほうが…」
俺の戸惑っている顔を見ながら、智子が笑みを浮かべる。
「じゃあ、私の顔にかけたいのかな?」
そんなことやったことも、やらせろって言ったこともないんだけど…。
「そ、それも後で洗うの大変だろうから止めた方がいいかと……」
「フフ…、その戸惑ってる顔、カワイイ……」
彼女の為を思って結構真面目に言ったつもりなのに、また笑われて頭を撫でられた。
「それはやっぱり、私の中に入りたいってことだよね?」
そのまま智子に頬の辺りも優しく撫でられ、何も反応できない。
163:138
06/08/09 01:14:40 yzJ3aclT
両手をタオルで縛られて、下半身だけ裸で、ベットの上に横たわる。
マヌケな格好すぎて他の人には見せられない。
「正直に言ってごらん。 私の中でイキたいんだよね?」
「あ、いや…、その……」
この前は真逆の立場でこれと同じようなことを智子に言わせてたっけ。
泣きそうな顔で困ってるのが面白くてつい調子にのっちゃたけど
かなり恥ずかしいなこれ…、反省しよう……。
「ほら、我慢しないで言ってごらん。 早く中に入りたいですって…」
また頬を摘まれて、軽く引っ張ってイタズラされてる。
「は、はやふらかにはいりたいでふ……」
ようやく頬を摘んでいた手を離した智子が、その指で髪の毛を耳の後ろへかきあげる。
「よく出来ました。 じゃあ今から入れてあげるから、動かないでね…」
智子が仰向けの俺の上に、そっと自分の腰を落とす。
彼女の中に深く突き刺さっていく感触。
中は既に思いのほか濡れていて、まとわりつくように締め付けてくる。
智子は全てすっぽり飲み込むまで腰を下ろした後、俺の胸に両手をついてじっとしている。
もうこっちは焦らされっぱなしでいつでもイキそうだ。
「か、勝手に動いちゃダメだからね!」
「うん、わかったから早くしてよ」
彼女の悶えるような表情が目に入り、少し意地悪く催促する。
「早くしてくんないと萎えちゃうだろ?」
ここまでされたらそう簡単には萎えたりはしないけど、さっきのお返しとばかりに言葉をかけ続ける。
それに対して智子が顔を伏せながらパジャマの襟の辺りをギュッと握り締めてくる。
智子がようやく腰を上下に動かし始めた。
だけどちょっとゆっくりすぎて物足りない。
じれったくなって、智子が腰を落とすタイミングに合わせてこちらから突き上げるように腰を浮かせる。
「ああっ!!」
軽く喘ぎ声をあげた彼女に、また苦しいくらいパジャマの襟元を掴まれてしまう。
「こらぁ、勝手に動いちゃダメって言ったでしょ…」
「い、いや手伝ってやろうと思っただけだよ」
「もう、また私が先にイッちゃうじゃない……」
「それになにか問題でも…?」
それを聞いた智子が、俺の胸を軽く叩いてくる。
「だ、だって、退屈な女だって……思われたくないもん…」
「退屈な女?」
さらに智子が、恥ずかしそうにしながら続ける。
「だってさ、この頃いっつもさっさと寝ちゃうし…。
私ってされるがままだったから、退屈な女だと思われてると思って……。
もう私に飽きちゃって、捨てられるんじゃないかと……」
明らかに変な誤解されてる。
というか、結構ひどい自己嫌悪だな……。
あの変な態度はこのせいだったのかと思うと、爆笑して転げまわりそうになる。
164:138
06/08/09 01:15:19 yzJ3aclT
「黙ってないでなんかしゃべってよぉ……」
真っ暗な部屋でも彼女の顔色や気持ちがわかる。
思わず、智子を抱きしめてあげたくなるけど、この手じゃ無理。
「アホか!? そんな軽い気持ちで結婚なんかしないっての!
どうせ俺たちこれから死ぬまでずっと一緒で、
その間何百回もやるんだから、一週間ご無沙汰になったくらいで騒ぐなって…。
それに毎日寄り道しないで帰ってくるし、休みの日はいつも一緒にいるだろ?
ちゃんとおまえのこと大切にしてるって」
それを聞いても、智子は黙ったまま俯いている。
何考えてるんだかと呆れる一方で、こっちまで不安になってくる。
だけど、突然智子が満面の笑顔で、俺の鼻の頭に口づけをしてきた。
「よかった。 じゃ続きやろっか?
今から寝たら寝坊しちゃうから、朝までやろうね――」
「――やべ、変な属性に目覚めそうだ……」
まもなく6時を指す時計と、赤くなった手首を交互に見ながら、
自分の中で新たな性癖が開拓されそうなのに、身震いする。
タバコに火を点けてひと吸いだけして、灰皿の上に放置し、立ち昇る煙だけ眺める。
一応1時間くらいは寝たみたいだ。
「あなた、起きた? コーヒー入ったわよ」
寝室のドアが開き、さっきまで一緒のベットに入っていたはずの智子が起しに来てくれた。
165:138
06/08/09 01:16:28 yzJ3aclT
頭から冷水のシャワーを浴びて、熱めのコーヒーを口に含むと
頭は働かないまでも、眠くはなくなってきた。
「ごめんね、朝簡単なのでいい?」
智子が一言断り、俺の前にトーストと目玉焼きを並べる。
これから他人と同じ一日を送るのかと思うと疲れがどっと出てくる。
「でも、お弁当は豪華にするからね!」
さっき鏡を見たとき、俺の目元にはクマが浮き出てたけど智子はいつもと同じ笑顔。
ノーメイクの素肌が意外とキレイだと改めて気づき、またドキッとしてしまう。
「…おまえ、元気だな……」
トーストの耳をもさもさとかじりながら呟く。
「そんなことないよ、風邪とか普通にひくし…」
「ハハ……、相変わらずだな…」
イッた回数だけで言えば、智子の方が多いはずなのに。
そんなことを考えながら、カレンダーに目をやる。
まだ火曜日かと思うと、つい溜め息が漏れる。
玄関先でいつものように弁当とゴミ袋を渡される。
腕時計に目を落とすと、7時ちょうど。
どうやら遅刻はしないで済みそうだった。
いきなり智子が両手を俺の襟元に近づけてくる。
思わず後ずさりして身構えてしまう。
「なによぉ、ネクタイ直してあげるだけだってば…」
「こ、こんぐらい自分でできるからいいって」
「ハイハイ、外ではシャキっとね!
今夜も早く帰ってきてね!」
ボーっとしながら駅までの道を独り歩く。
彼女の最後の一言の意味を考えながら――
166:138
06/08/09 01:18:36 yzJ3aclT
終わり
またそのうちなにか書けたらいいなと
167:名無しさん@ピンキー
06/08/09 04:31:34 c4VYKOwt
ぐっじょぶ!
飽きられないように腰を振る姉さん女房ハァハァ
168:名無しさん@ピンキー
06/08/09 16:00:40 ou6wL/Du
めちゃくちゃツボだよ。お姉さん属性、女性上位属性、和姦属性持ちの俺にはヒットしすぎ。
これで孕ませ属性もあったら俺はモニター前で死んでいただろう。
169:名無しさん@ピンキー
06/08/10 02:09:51 2UTUvhqD
勃った
そのうち言わんと書きまくってください
170:名無しさん@ピンキー
06/08/11 23:36:03 DOU1KgwO
上げておきますね
171:名無しさん@ピンキー
06/08/12 20:06:50 WbBfjhTp
>>168
よう、俺
年上なのに可愛い姐さん女房ハアハア
172:名無しさん@ピンキー
06/08/15 00:05:08 0jkieAAM
ここは
子作りシチュ
おk?
173:名無しさん@ピンキー
06/08/15 00:10:32 NELaqEbI
>>172
あり。HRスレっていう選択肢もあるが。
174:名無しさん@ピンキー
06/08/15 00:42:52 12E6iPZ7
>>172
こっちに投下キボン
175:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:06:39 RLWJQyXW
ちょっと変化球ネタだけど
176:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:07:15 RLWJQyXW
「なんでしょう、父上…」
広い和室にししおどしの軽快な音が響く。
話があるといって、父に呼び出された。
黒塗りの高価そうなテーブルの向かいで父が胡座をかいて座っている。
その背後には壺や掛け軸がこれ見よがしに並べられている。
美的センスや、古美術の知識に疎い俺にはそれらは単なるガラクタにしか見えない。
うちはいわゆる名家で、かつてはこの辺一体は全てうちの土地だったらしい。
使用人やお抱えの料理人もいるとんでもない金持ちだ。
だけど俺はその恩恵に全くと言っていいほど与れなかった。
地元の普通の公立の小中高を出た後、一浪して、普通に受験して地元の国立大学に入った。
父はなぜか俺に贅沢をさせてくれたことがなかった。
昔から小遣い制で、それ以上の金を出してくれた例はない。
どうしても欲しい物があるといっても、「バイトでもして稼げ」と言われてきた。
少なからず他人が羨むような生活は送ってきたが、
それでもこの家に生まれてきた以上もっと豪華な暮らしをしても当然だと常々思っていた。
結局、そこら辺にいるやつとたいして変わらない大人になってしまった。
「貴仁、おまえも、今年で二十歳だ。
面倒臭くて今まで黙っていたが、実はおまえには許嫁がいる。
そこで二十歳の誕生日を機に、結納を交わしてもらいたい。
相手方と、おまえが二十歳になったら結納を交わすという約束をしていたのをすっかり忘れとった」
初耳だが、冗談を言っているようには見えない。
「そ、そんな、突然なにを言ってるんですか……?
いきなりすぎますよ!?
それに俺には今付き合ってる彼女がいるんです!!」
両手で思いっきりテーブルを叩き怒りを露わにする。
「安心したまえ、その女なら手切れ金を渡して、おまえを諦めてもらった。
たった500万握らせただけで、二つ返事でもう二度とおまえに近づかないと約束してくれたぞ」
開いた口が塞がらない。
目の前で笑う親父に腹が立つというより、情けなくなってきた。
「だが一つ問題があってな……」
俺に発生した問題は一つどころではない。
だけどもう、なにも言う気力が沸いてこない。
「実は相手方は、三つ子の姉妹なんだ。
一方のうちは、おまえ一人しか子供がいない。
日本の法律では、三人と結婚することは許されていないのでなぁ、
おまえにもっとも気に入った一人を選んでもらいたいのだ」
「ハハ…、なに勝手なこと言ってんすか……」
「まあ、そう思うだろうが、相手方もそれで納得してくれた。
早速明日には彼女達に会ってもらう」
177:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:08:07 RLWJQyXW
――翌朝
俺は気がつくと、車の後ろの席で横になっていた。
どっかの国の外車。
うちの車だけど、初めて乗った。
というか乗せられた。
昨日の晩飯に睡眠薬が混ぜられていたらしく、その後から全く記憶がない。
「おお、起きたか貴仁。
そこに今日のために仕立てたスーツがある。
あと30分くらいで着くから、それまでに着替えておきたまえ」
助手席に座る親父が振り返って話しかけてくる。
まだクラクラする頭をさすりながら、スーツを手に取る。
触り心地だけでも、十分高級とわかる逸品。
「初めて買ってくれた物がこれかよ……」
「シャツにジャケット、ズボン、ネクタイ、クツ、ベルトに至るまで
全て海外の一流メーカーの特注品だ。
おまえもたまにはオシャレしないとな」
なんか異常に腹の立つ言い方だったけど、こんな機会でもないと
これほどの高級品に袖を通すチャンスなんてなさそうなので大人しく言われたとおりにする。
慣れない手つきでネクタイを締める。
スーツは意外にも体にジャストフィットした。
いつの間に正確な寸法を測ったのかと思う俺の目に、さっきまで着ていた服が映る。
2万近くしたTシャツは、清水の舞台から飛ぶ思いで買った物だというのにえらく貧相に見えた。
しばらくして車が停車する。
「着きましたよ」
運転手が後部座席のドアを開け俺を降ろしてくれた。
「ほほう、馬子にも衣装とはこのことだな」
親父が俺を見て満足げな笑みを浮かべている。
「夏目……?
聞いたことねぇなー」
うちと負けず劣らずの広さを誇る豪邸の門柱についた表札が目に入る。
「ああ、おまえが来るのは初めてだからなぁ」
「けっ、いつの間にそんなに話が進んでいたんだか…」
いつものことだけど、親父は俺になんの相談もなく勝手にことを進める。
というか、毎度毎度直前になって『忘れとった』とかほざきながら
俺が断れないような状況に追い込んでくれる。
諦めて、親父の後をついて無駄に長い玄関までの前庭を歩く。
「へー、噴水つきの家なんてホントにあるんだなー」
噴水の中央でライオンが口から水を吐いている。
あからさまに金を持ってますよってアピールしてるような嫌味な彫像。
「こら、ポケットに手を突っ込むな!
型崩れするだろう!
あと、中では言葉遣いに注意しろよ!」
「は、はい、すいません……」
自宅にいるより、年の近い友達とその辺をぶらついていることの方が多かったから
いざお見合いの時に緊張して地が出てしまいそうだ。
相手はこの家の住人であるならば相当のお嬢様だろう。
いつもの俺ではまずいんだろうなぁ……。
178:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:08:47 RLWJQyXW
さながら白亜の宮殿とでも言うような家のドアが開き中に招かれる。
最初に出迎えてくれたのは、10人近い女中とここの主らしき気品漂う女性。
親父と親しげに話をしているが、俺はおそらく初めて見る。
「…まさか、許婚ってこいつじゃないよな。
どう見ても40歳くらいはいってるし……」
「コラ、思ったことをすぐ口に出すな!
相手はこの人じゃない。
それにおまえより若い、みんな18だ」
また親父に一喝され、大人しく案内されるままに奥へついて行く。
たぶん大理石のタイルと、たぶん一枚数百万はくだらない絵画がいくつも飾られている。
思わず辺りをキョロキョロしていると、後ろをついてくる女中達に笑われた。
やがて一つの扉の前で、親父と主らしき女性が立ち止まる。
「ここまで多少の狼藉は目を瞑ってやったが、ここから先は決して粗相のないようにな!!」
親父がいつになく真剣な顔で話す一方で、主らしき女性は
「いつも通りで結構ですから」
と、口元を抑えながら上品に笑った。
いよいよ扉が開く。
無理矢理連れてこられたとはいえ、お見合いとなれば否が応でも緊張してくるものだ。
さらに、若き乙女三人のこの先の人生が俺の決定に委ねられているかと思うと緊張も倍になる。
物語の世界だと、たいていこの先には人間かと疑ってしまうような不細工か
絶世の美女がいるかの二者択一。
三つ子っていうくらいだから彼女達の容姿は似ているんだろう。
どっちにしろ一人だけ選ぶとなると苦労しそうだ。
まあ、俺の人生からいってこの先にいるのは8:2くらいで不細工が濃厚かな…。
ゆっくりと扉が開き、視界の先にテーブルにつく3人の女性が現れた――
――夕方
帰りの車の中で、ボーっと考え込む俺に親父が話しかけてくる。
「どうした、貴仁。
えらく静かだったではないか?」
それもそうだ。
扉の向こうにいたのは予想に反して後者の方、つまり見たこともないような美人三姉妹だった。
正直誰をもらっても、俺にはもったいない美貌の持ち主ばかりだった。
「で、誰がお気に召したんだ?」
こんなに急に誰といわれてもなぁ――
179:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:09:19 RLWJQyXW
長女、静華(しずか)
名前の通り、物静かで上品で優しそうな話方をする人だった。
趣味は茶道と花道で、ホームステイの経験もありフランス語と英語とイタリア語を少し
とか言っていたが、たぶんめちゃくちゃ堪能なんだろう。
休日は知人の個展に出かけたり、クラシックのコンサートに出かけてり、乗馬に出かけてり
と、まさに絵に描いたようなお嬢様だった。
日本と海外に一つずつアトリエを持っているとかで、痛烈な次元の違いを感じた。
料理も、和洋中全てに多少の心得があるとは言っていたが、これもおそらく一流だろう。
正直、別の人を探した方が彼女のためになりそうだと思ってしまった。
次女、響華(きょうか)
名前の通り、他の二人に比べておしゃべりで元気が無駄にあふれていた。
趣味はスポーツで、見ることもやることも好きらしい。
中学時代は新体操で日本6位になり、高校時代は水泳でインターハイ出場経験を持つ
静華さんとは別の意味で、すごい女性。
小麦色に焼けた肌と、簡単に後ろにまとめた髪がいかにも庶民的だったが
最近テニスにはまっていて、長野にテニスコートつきの別荘を買ったという話を聞いたとき
次元の違いを痛感した。
料理は、目玉焼きとカップラーメンと白米を炊くことならそこそこ出来るらしいが
こんなことそこそこしか出来ないのは、人間として致命的だと思った。
一緒にいるだけでこっちも明るくなれそうだが、正直毎日一緒だと疲れそうだ。
三女、悠華(ゆうか)
名前の通り、マイペースでおっとりした雰囲気の女性だった。
趣味は読書で、休日は書斎にこもって好きなだけ本を読み漁っているらしい。
なんでも、書斎には10万冊の本があるとかで次元の違いを感じた。
俺も、SFや推理小説くらいなら多少知識があったのでその話題を振ってみたが
あまり、というか全く噛み合わなかったところを見ると、
俺では想像もつかない難しい本を愛読しているのだろう。
また唯一自前の衣裳部屋を持っている、洋服好きな人らしい。
他の二人に比べて子供っぽい一面が多いような気がした。
料理は、冷奴さえ作り方を知らないというほど女中任せな人だった。
たぶん一番一緒にいて気を使うことのない人だけど、正直まだお嫁に行くには早すぎる気がした。
180:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:10:00 RLWJQyXW
「どうした、全員気に入らなかったのか?」
また親父に返答を急かされて、回想が中断された。
「いや、いきなりは決められないよ。
初対面だし、相手をあんまり知らないし、
ここまでの展開は目茶苦茶だったけど、相手は十分すぎる美人ばっかだし…」
「まあ、そう言うだろうと思ってな、
一人ずつと24時間だけデートする時間を設けた。
つまり72時間後に答えを出してくれればいいのだよ」
「いいのだよ、じゃねーだろ!!
72時間後に初対面の中から嫁を決めろなんて、普通の人には無理に決まってるだろが!!」
「ハハハ…、夏休みの宿題も最後の三日で終わらせたおまえなら出来るだろう?」
「だから宿題と結婚相手を選ぶことを一緒にすんな!!
相手もそんな軽い気持ちで選ばれたらいい迷惑だろ!!!」
「だから二人っきりでデートして気持ちを確かめればいいではないか?
少なくとも500万でおまえを振る女よりはまともな方々達だと思うぞ?」
頭の上まで上げた拳を振り下ろしたくなるのを必死に堪えていると
親父から一枚の紙が渡された。
「静華さんから明日の待ち合わせ場所と時刻を書いたメモを預かってきた。
おまえに渡しておいてくれだそうだ」
拳を緩めメモを開くと、待ち合わせ場所の駅と、時刻が書かれていた。
「おまえは肝心な時に寝坊してしまう癖があるからなぁ。
明日は寝坊しないように、今日はもう寝なさい」
親父がそう言うと、前の座席と後ろの座席の間に仕切りが出現して
後部座席の側だけにガスのようなものが充満してきた。
「な、なにすんだ、お…やじ……」
薄れ行く意識の中で、子守唄さえ知らない親父に腹が立った。
181:名無しさん@ピンキー
06/08/18 22:11:22 RLWJQyXW
ラブコメチックな話ですが…
エロも入れる予定はありますけど、期待はせずに
182:名無しさん@ピンキー
06/08/19 13:53:39 HJAVUbcn
花嫁候補ハーレムですか…!
新たな世界が開けそうな予感がしますよw
続きwktk
183:名無しさん@ピンキー
06/08/20 15:49:40 mdgy2SaI
変化球?どう曲がろうとストライクゾーンを直撃すれば問題ないぜ!!
184:名無しさん@ピンキー
06/08/20 23:02:24 rFeJ9xw1
これは面白そう
185:名無しさん@ピンキー
06/08/21 00:09:52 Gg6cERM4
もはやストライクゾーン云々じゃない
むしろどこにボールが来てもいい様に当たりに行くべきだろ!!
186:名無しさん@ピンキー
06/08/24 02:47:30 actydRgl
wktk!wktk!
187:名無しさん@ピンキー
06/08/24 14:22:02 +ShqThWu
保守!
さぁ、俺のストライクゾーンへ投げろ!
188:名無しさん@ピンキー
06/08/27 01:41:06 ZyuWh5ri
早朝、まだ日が昇る前に目が覚めた。
日の出を見るなんて、徹マンしてたときくらいだろうか。
シャワーを浴びて、洋服ダンスの前で考え込む。
他の二人はともかく、静華さんだけは筋金入りのお嬢様って感じだったから
変な格好で行くわけにはいかない。
「なぜか昨日着たブランド物のジャケットは没収されてしまったしなぁ…」
散々洋服ダンスの中身をひっくり返して、鏡の前で当てては変え当てては変えを繰り返して
あれほど余裕があった時間を無駄に浪費してしまった。
結局、もともと高級品なんか買わない俺は、彼女と釣り合う服なんて持ってなくて
できるだけ新しいTシャツとジーパンを出して、とどのつまりいつもの格好で行くことにした。
ほとんど始発の電車に乗り、待ち合わせの駅に着く。
相手はまだ来てないようだった。
缶コーヒーを飲みながら、辺りを見回す。
するとはるか前方から、黒塗りのリムジンがこちらに向かってくるのが見えた。
「あれだな……。
駅を待ち合わせ場所に指定したくせに、こういう登場かよ。
とりあえず、静華さんは諦めて他の二人に賭けるか……」
つい溜め息が漏れる。
もったいないけど、彼女じゃ俺といても可哀想なだけだ。
「すみません、お待たせしたみたいで…」
リムジンから降りてきた静華さんが深々と頭を下げる。
「あ、いや、俺が早く来すぎただけだから…」
そのまま走り去るリムジンを見送る彼女を見つめる。
上から下まで白を基調に清潔感ある服装できめている。
俺の身ぐるみを剥ぐより、彼女の指に輝く指輪一つ掠め取った方が何倍も儲かりそうだ。
「さて、どちらへ行きましょうか?」
静華さんが俺の方を振り向いて微笑みかけてくる。
「あ、じゃあ、どっかでめし…じゃなくて、朝食でも…」
「フフッ…、いつも通りの貴仁さんのままでいいですから」
まあ、ここでいくらいい格好見せても結婚したらバレるわけだし、お言葉に甘えようかな。
どうせこの最初の24時間は俺にとって夢みたいなものだ。
「それよりこんな時間にやっているお店をご存知なんですか?」
腕時計を見るとまだ6時前。
「うん、この先のファミレスなら24時間営業のはずだから」
「ふぁみれす…?
24時間も営業しているなんて、働き者の方が経営してらっしゃるんですね?」
真面目に聞き返してくる彼女を見て、思わず苦笑いがこみ上げてくる。
よく立ち寄る駅前のファミレス。
いつもの窓際の席で、いつものオムライスを頬張る俺の目の前には
本当なら別世界に住む女性が座り、物珍しそうに辺りを見回している。
しばらくして、自分の会計を済ませて店を出る。
「なにも頼まなかったね?
遠慮しなくても良かったのに」
この程度だったら、彼女の分も奢ってあげようかと思ったけど結局水を一口飲んだだけだった。
「あ、いえ、朝食は家で済ませてきたので……」
まあおそらくこんなとこで食事したことないんだろう。
「それより、どこか行きたいとこある?
そろそろその辺の店も開店しはじめる頃だし」
「あ、ではここの美術館なんていかがですか?
友人から招待券を頂いたので」
そう言って静華さんがカバンからチケットを取り出して見せてくる。
聞いたことない美術館だった。
もっとも学校の社会見学でしか美術館になんて行ったことのない俺には
この美術館が有名なのかどうか判断しかねるが。
189:名無しさん@ピンキー
06/08/27 01:41:46 ZyuWh5ri
その美術館は目立つところにあるわけでもなく、それほど大きいわけでもなかったが、
逆にそれがいい雰囲気を演出していた。
静華さんはここの館長と知り合いらしく、
入ってからは館長らしき初老の男性が付きっきりで展示物の説明をしてくれた。
あまりの優遇っぷりに周りから『何者だろう』という視線を感じるが
気にしているのは俺だけのようだった。
館長の話を真面目な顔で聞く静華さんの横で、俺ももっともらしく相槌を打ったりするが
絵心の無い俺には、裸婦画くらいしか記憶に残らなかった。
美術館を出て思わずまた溜め息をついてしまった。
「退屈させてしまったでしょうか…?」
静華さんが不安そうな顔で俺に尋ねてくる。
マズイことをしてしまったと、とっさに笑顔をつくる。
「あ、いや、こういうとこあんまり来ないから緊張しちゃって……。
でも、結構勉強になったし、面白かったよ」
「そ、そうですよね。
次は、貴仁さんの行きたいところへ連れて行ってくれませんか?」
そう言われて、自分がいつも行くところを想像するが、
とても彼女を連れて行っても楽しんでくれそうにない。
「貴仁さんは普段どういうところへ行かれるんですか?」
さらに顔を覗き込まれる。
いつも行くところと言われても……。
パチンコに静華さんを連れて行ってもなぁ…。
軍資金はいくらでも出してくれそうだけど。
カラオケ…。
馬鹿にしすぎかもしれないけど、静華さんは今時の歌なんて知ってるんだろうか?
ボーリングとかもちょっとなぁ…。
映画あたりが一番無難かもしれない。
かくして、二人で映画館に入る。
「なにか見たいのある?」
現在上映中の映画のラインナップを眺めて静華さんに尋ねる。
俺自身は、友達や前の彼女と来て、ほとんど興味のあるやつは見尽くしていた。
しばらく考え込んでいた彼女が選んだのは、タイトルからして歯が浮くような恋愛物。
あんまり俺の趣味じゃないけど、チケットを買ってきて彼女に手渡す。
静華さんは遠慮していたが、今回のチケットは俺の奢りにした。
今日はレディースデーで彼女の分はいくらか割引になった。
それでも、静華さんは隣でパンフレットを抱えて嬉しそうにしてくれる。
最低でも割勘を要求してきた前の彼女じゃこうはいくまい、と思うと俺も自然と笑顔がこぼれた。
席に深く腰を落としボケッとスクリーンを見つめる。
キャスト紹介を見ても誰が誰だかわからないうえに
内容は突っ込みを入れたくなるようなベタベタの恋愛物だった。
それでも最初の数分は、左手にポップコーンの入ったカップがあって、持ち堪えられたが、
それが無くなる頃には、今朝の早起きも手伝って睡魔との闘いになった。
隣の静華さんは真剣にスクリーンを眺めている。
190:名無しさん@ピンキー
06/08/27 01:42:25 ZyuWh5ri
気がつくと、たぶんラストと思われる場面になっていた。
主人公とヒロインが修羅場を向かえたところまでは記憶にあったが
今のスクリーンに映し出されている二人にとってそれはかるか過去の出来事のようだった。
「やべ、いつの間にか寝てたみたい……」
呆れられるのを覚悟で、隣にいる静華さんに謝って、座りなおそうとした時、
彼女も、俺の肩に頭を預けてすやすやと寝息をたてているのに気づいた。
そのままトイレに行くこともできず、静華さんがずり落ちそうになるたびに体を動かし
彼女の頭をすくい上げて、なんとか安眠を妨害しないよう気を配った。
彼女が選んだ映画だし、無理矢理にでも起こして見せればよかったのかな。
それにしても良く寝てる。
移動を徒歩にしたから、慣れてない彼女にとっては大変だったのかもしれない。
そういえば、すれ違うたびに振り返ってくる通行人が鬱陶しかったっけ。
大半の人は男だったから、静華さんを見るために振り返ったんだろうけど、
何割かはこの不釣合いな組み合わせに『あれ?』って顔で振り返ってたんだろう。
まだ俺の肩で安らかに寝てる彼女に視線を移す。
寝顔だけ見れば、この前まで高校生だった普通の女の子だ。
まあ、お嬢様ばっかりの有名女子高に通っていたらしいけど。
「……起きないなぁ」
俺はもう二度目のエンドロールを見て、つい呟いてしまう。
「あら、いつの間にか寝てたみたい……」
エンドロールの途中で、突然静華さんが目を覚ました。
「終わっちゃってますね……。
あの方と女の人が別れたところまでは覚えてるんですけど…」
静華さんが口に手を当て、小さく欠伸をする。
同じシーンで寝てたのかと思って、またつい笑ってしまった。
その笑いを勘違いされたのか、彼女は恥ずかしそうにしている。
「あ、その…、昨日の晩はなかなか眠れなくて……。
貴仁さんは全部見ていらしたんですか?」
「あ、うん、一応全部見たよ」
2周合わせてだけど、全部見たといえば全部見たのは事実。
「それにしてもずいぶん長い映画だったんですね」
時計に目をやると、確かに入ってから4時間以上は経っていた。
「いや、実はこれ2周目なんだよね…」
「えっ? そうなんですか…?」
それを言ってからまたマズイことをしたと後悔してしまった。
静華さんは、「せっかく奢ってもらったのに一人で寝てしまって…」と
映画館を出てからも終始申し訳なさそうにしている。
「それより、お腹すかない?
静華さんって昼も食べてないよね?」
すっかり日も落ちた空を見渡して、別の話題を振った。
「あ、そうですね。
実は夕食のために店を予約してきたんです、そこへ行きませんか?」
そう言われて静華さんの後を付いてタクシーに乗り込む。
連れられてきたのは、世界でも指折りの高級ホテル。
そこに、彼女が予約しておいた店というのがあるらしい。
エントランスを通り、ガラス張りのエレベーターで夜景を見ながら上に昇った。
この時は俺が辺りを執拗にキョロキョロしていた。
191:名無しさん@ピンキー
06/08/27 01:43:15 ZyuWh5ri
どんなものが食えるんだろう、と緊張しながらも期待に胸を膨らませていた俺だったが、
今はさっきより空腹の状態で駅前に座り込んでいる。
今日何度目かの溜め息が口から漏れる。
俺だけドレスコードに弾かれて、入店を許可してもらえなかった。
もともと自信なんてほとんどなかったけど、これでそのわずかな自信も消え去った。
もう見栄を張る気力も沸いてこない。
「すいません、全然気がつかなくて…。
私がもう少し気の効いた所を探しておけばよかったんですけど。
本当はあそこって夜景はいいんですけど、料理はいまいちなんですよね…」
静華さんは自分の方が恥ずかしい思いをしたはずなのに、
それでも隣に屈んで俺を励まそうとしてくれた。
「そのお洋服は、貴仁さんに良く似合ってるのに、何がいけないんでしょうかねぇ…」
いっそ愛想尽かしてくれた方が楽だったけど、
これじゃあ、『君と僕とは生きる世界が違うから』とか言って追い帰すこともできない。
適当に頷き自己嫌悪に浸りながらも、時間だけが無駄に過ぎていくのを感じる。
「お金を払って食事をしようとするお客を断るお店なんて、こっちから願い下げですよねぇ。
だから、貴仁さんはもう気になさらないで下さい……」
いろんな意味で俺にはもったいない人だ――。
ここでまだ、うだうだと落ち込んでれば本当に愛想を尽かして帰ってしまうかもしれない。
けど、最後くらいは素の自分を見てもらっていい思い出にでもしてもらおう。
自暴自棄に近い決意が俺の中で固まった。
「よし! もう静華さんもお腹すいて限界でしょ?
お薦めの店があるから付いてきてよ!」
少し驚く彼女の手を引いて電車に乗り込む。
終電間際だというのに、結構人が乗っていた。
周りは酔っ払ったオッサンや、汗臭いサラリーマンばかり。
『この人は、おまえらが触れていい人じゃないんだよ!』と言わんばかりに
腕を張って空間を作り、人ごみから彼女をかくまう。
電車を降りて、そのまま彼女の手を引き寂れたラーメン屋に入る。
バイト帰りにいつも寄るラーメン屋。
かなり遅い時間になってしまったけど、いつも閉店ぎりぎりでも融通を利かせてもらってる顔馴染みの店。
「またこんな時間にきやがって」と愚痴る店主の前で、
こうやって食べるのが醍醐味なんだ、と大きな音を立てて麺をすする。
彼女も最初は、俺とラーメンの入ったどんぶりを交互に眺めていたが、
最後には一緒に空のどんぶりを置いて
「とても美味しかったです」
とにっこりと微笑みかけてきてくれた。
店を出て、缶コーヒーを一つ静華さんへ手渡す。
終電はなくなっていたので、タクシーを拾うために大通りにでる。
「必要な時に意外とないもんだなー」
独り言のように言いながら道路を見渡す。
そのとき突然、シャツの裾を掴まれた。
「ん、どうしたの?」
「貴仁さん…。
このマンション……」
「うん、このマンション?」
背後には地上10階建てくらいはある豪華なマンションが聳え立っている。
「最上階のワンフロア、私のものなんです……」
「………」
ポカンと口を開けたままそれを見上げる。
今まで目にも入らなかった、意図的に視界の外へ追い出していたような場違いな建物。
「よかったら、少し寄っていきませんか……?」
192:名無しさん@ピンキー
06/08/27 01:44:42 ZyuWh5ri
窓の外には、さっきのホテルと変わらない綺麗な夜景が広がっている。
ジャグジー付きの広い風呂にちょこんと膝を抱えて浸かりながら、
また今日の不甲斐ない自分を思い返してしまう。
言われるがままに彼女について最上階に着き、
また首が痛くなるくらい辺りをキョロキョロしていた俺に、静華さんが
「お先にどうぞ」と風呂を勧めてくれた。
なぜか風呂とかトイレだとどうでもいいこと考えちゃって長くなる。
「貴仁さん……」
突然ドアの外に人影が見えてハッとした。
そういえば、ずいぶんと長い時間風呂に浸かりっぱなしだった。
「あ、ごめん、すぐあがるよ」
「いえ、御一緒してよろしいですか……?」
あたふたとする俺の返答を待たずにドアがゆっくり開く。
タオルを体に巻いた静華さんが入ってきた。
そのまま浴槽の隣に座る静華さんに、嫌でも目が行ってしまう。
幸いジャグジーの泡のおかげで、暴走寸前の下半身は気づかれてないみたいだ。
しばらく無言だった静華さんがゆっくりと口を開く。
「私、小さい頃から貴仁さんのことを聞かされてきました。
私たちには、名家のご長男の許婚がいると……。
だから、私は幼い頃からその方にとってふさわしい女性になろうと努力してきました」
これを聞いて俺だけに黙ってた親父にさらに腹が立ってきた。
「だけど、あなたは想像していた人とはだいぶ違う方でした。
あなたにとって私はつまらない女性かもしれないですね…」
そう言いながら静華さんは困ったような笑みを浮かべる。
覚悟はできていたけど、フラれたな…。
しかし、そう確信した俺の手を、静華さんがそっと握ってくる。
「でも、貴仁さんは頼りがいのあるすごく素敵な方です。
だから…、もし、こんな私でも選んでいただけるなら、
喜んであなたの元へ嫁がせていただきます――」
193:名無しさん@ピンキー
06/08/27 01:45:27 ZyuWh5ri
それから、どれくらい経った頃だろうか。
風呂からあがった記憶はないけど、今はベットの上で横になっていた。
「まさか、夢……?」
上体を起こし辺りを確認する。
ここは確かにさっき静華さんと入ったマンションの一室だ。
問題は俺が何も身に着けていないこと。
「どっから夢なんだ……?」
頭をかきながら、記憶を整理しようとした。
「あ、気がつかれましたか?」
静華さんがコップを片手に寝室へ入ってくる。
「お風呂で気を失ってしまったんですよ。
のぼせてしまったみたいですね」
それを聞いてガクッと肩が落ちる。
てことは、風呂での一連のやり取りは俺の妄想か……?
「私が隣にいなかったら、危なかったかもしれないですね」
静華さんが隣に腰掛けて、俺にそっと水の入ったコップを差し出してくる。
それを一気に飲み干し、改めて見ると彼女も一糸纏わぬ姿。
ドキリとして身構えてしまった。
「あ、あの、私こういうの初めてなんです……」
視線に気づいてか、静華さんは頬を赤らめながら両手でそれとなく体を隠した。
「貴仁さんはそんなことないですよね……?」
「あ、あー…、俺も許婚とかいるって知ってれば、他の女とやったりはしなかったんだけど……」
「満足していただけるかわからないですけど、
やっぱり全てを見て判断してもらいたいから……」
――朝
マンションの前で、迎えのリムジンに乗り込む静華さんを見送る。
最後に名残惜しそうな顔で
「これからの二日間はもっと緊張して眠れそうにないです」
と言ってリムジンのドアを閉めた。
まだ昨夜の出来事を回想中の俺に、運転手の男が一枚の紙を手渡してきた。
「響華お嬢様からお預かりしてきました。
今日の待ち合わせ場所が書いてあるそうです」
194:名無しさん@ピンキー
06/08/27 05:30:23 qveo9Iik
GJ!!!
続きwktk
195:名無しさん@ピンキー
06/08/27 18:02:54 WxguIr83
よっしや!このままズバズバっと絶好球を放ってくれい!!
196:名無しさん@ピンキー
06/08/28 00:05:29 NRo1RXaY
続きwktk
197:名無しさん@ピンキー
06/08/28 06:19:35 098FHuqT
wkwktktk(*´∀`)
198:名無しさん@ピンキー
06/08/28 07:51:44 3PvSYKlP
おい!なんだよ、まったく。エロ描写が無いじゃねえかよ!ここはもっとドロドロした欲望がひしめいている所なんだよ!
朝から興奮してすみません。禿げしくGJ!!。続きをwktk
199:名無しさん@ピンキー
06/08/28 23:34:31 98h1ADJv
好球すぎて、既に三振しそうです。
wktk(´∀`*)
200:名無しさん@ピンキー
06/08/30 02:17:19 GZtS+hWR
期待保守
201:名無しさん@ピンキー
06/08/30 23:25:51 t38bStQO
超GJ!
残り2人の話も楽しみに待ってまつ
202:名無しさん@ピンキー
06/09/01 18:17:16 jJ1AhmQu
wktk!wktk!
203:名無しさん@ピンキー
06/09/02 05:39:38 F06UMEcI
保守
204:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:02:31 k6vCqwW7
>>193の続きです
205:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:03:11 k6vCqwW7
太陽が昇り始めるかどうかという薄暗い空の下、閑静な住宅街にある自宅へ向かう。
眠たい目をこすり、重い足取りで角を曲がり玄関の前に着く。
そのときうちの生垣の前に一人の女性がしゃがみこんでいるのが目に入った。
「遅いよ~! 遅刻だよ、遅刻!!」
静かに近づく俺に気づいたその女性が振り向いた。
一昨日静華さんの隣に座っていた次女の響華さん。
「んなこと言ったって、正確な時間書いてなかっただろ?」
先ほど受け取った小さな紙をひらつかせる。
静華さんと別れた時、運転手から受け取った紙。
その紙には『あなたの家の前で』とだけ書かれていた。
時間はおろか、駅の何番出口で待てばいいかまで明記されていた静華さんのメモとは大違いだった。
彼女は、響華さんはそういう女性なのかもしれない。
「ねえ、バイク持ってるんだよね? 乗せて乗せて!
海行きたいな~、私…」
本当はこういうノリの人の方が自分に合ってると思っていたけど、
静華さんみたいな女性と丸一日過ごした後だと、えらく感に触ったりする。
「ちょっと待ってよ。
風呂入って、朝飯食って、一眠りするまで…」
「なにバカ言ってんのよ! 早く行こうよ!」
彼女に強引に手を引かれガレージの方へ向かう。
「うわ~、何台車持ってんのよ…?」
両手じゃ収まりきらないくらいの数の外車が並ぶうちのガレージ。
「君んちだってそんなに変わらないだろ?
ちなみに俺が触れていいのは、
そこの自転車とそこにある中古で買ったバイクだけだから…」
「ふ~ん……、変なの。
ま、いいや、私こういうのの方が好きなんだよねぇ」
彼女は他の物には目もくれず、俺のバイクのイスを叩きながら笑顔で振り向いてくる。
逆にこの辺にある高級車の類は見飽きて、
俺のボロバイクみたいな庶民的な物の方に興味があるだけなのかもしれない。
結局彼女の押しに負けて、バイクを出しエンジンをかける。
「海行きたいって言ってたね?」
「うん、あんまり人がいない綺麗な砂浜がいいな」
響華さんが俺の渡したメットをかぶり、
後ろにまたがると大げさなほど俺の腰に回した手を強く握ってくる。
下道を走るくらいだと、ここまでする必要はないけど、
これも悪くないなと思って、あえて突っ込まないでおいた。
「この時間ならどこも人なんていないだろうから、近くの海にするよ?」
「うん、よろしくー!」
さらに背中に顔まで埋めてきた。
早朝の道は空いていて思いのほか早く海岸沿いまで出られた。
右手にはちょうど昇り始めた朝日と海が広がっている。
適当なところでバイクを止め、まだひんやりとしている砂浜に腰を下ろした。
隣に座って黙り込む響華さんを時々横目で見る。
当たり前だけど、黙っていると静華さんとは区別がつかない。
が、彼女は特に着飾ったりしていないため、
自分から言わなければ良家のお嬢様とはわからないだろう。
そんなところがちょっとだけ俺と似ているかもしれない。
206:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:06:17 k6vCqwW7
「急に大人しくなったね?」
「そう……?」
「ここはお気に召さなかったとか?」
響華さんが無言で左右に首を振る。
「もしかして、眠いとか?」
「まさか……」
またしばらくの沈黙。
「あのさ、一旦帰って着替えだけでもしたいんだけどいい?」
「……うん」
また拒否されるかと思いきや、意外に素っ気無い反応、逆にちょっと気になる。
「ごめん、なんか俺悪いことしたかな……?」
しばらく黙って足元の砂をいじっていた響華さんがゆっくり口を開いた。
「お姉ちゃんの……、香水の匂い……」
ドキッとしてTシャツを掴み鼻に寄せる。
「いや、貴仁さんは何も悪くないんだけどね……。
…わかってはいたけど、こういうのって意外と辛いもんだね……」
「あ、え、その……」
声も顔も、性格以外のほとんどは瓜二つな二人だけど、彼女と静華さんは間違いなく別人。
別の女性だ……。
そして、心の中で二人を比べていた自分はずいぶん失礼だったかもしれない。
「ねえ、お姉ちゃんになんて呼ばれてたの?」
「え、普通に“さん”付けで……」
「やっぱりね~、じゃあ私は…」
彼女が言いかけたとき、俺はそれを遮るように勢いよく立ち上がる。
「あー、ストップストップ!
俺も昨日のことは思い出さないし、口に出さない。
他の二人と比べるようなマネもしない!
だから君もそんなこといちいち意識しないでよ、今日くらいは」
彼女の手を引いてゆっくり立たせてあげる。
「うん。
じゃあ、私、お腹空いちゃったから……」
「了解! なんでも好きな物奢ってやるよ」
再び彼女を後ろに乗せ、家に帰ると急いで着替えて街の方へ向かう。
「こういうのよく食べるの?」
ハンバーガーをかじりながら向かいに座る響華さんに尋ねる。
「まぁね、学校帰りとかに友達とよく来たし。 意外?」
「うん、ちょっとね…」
「ああ、私はお嬢様学校の出身じゃないから…」
「ま、いいや。
それよりどこ行こうか?
なんかリクエストある?」
「えっと、そうだなぁ……」
響華さんがジュースを飲みながら上目使いで考えている。
やっぱりこのへんも周到に準備してきた静華さんとは…、いやいやもう比べちゃいけない。
「遊園地行きたいな」
「遊園地?」
「うん、この前CMで見たんだけど、
世界最大のお化け屋敷があって、3回転ループのジェットコースターがあるってとこ。
知ってる?」
207:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:07:17 k6vCqwW7
ファーストフード店を出て、目の前に停めてあるバイクにまたがる。
「たぶんあそこだと思うけど、1時間くらいはかかるよ?」
「いいよいいよ。
バイクで行くんでしょ?」
「まあ、せっかくだし…」
「じゃあ1時間はこのままだねー!」
響華さんがまたさっきのように腰に手を回して密着してくる。
だけど1時間もこのままだと、さっきから高鳴りっぱなしの俺の心臓が持たないかも…。
「あれ…、おっかしいな~……」
彼女の言う遊園地を目指していたはずだったのに、
今はなぜか見たこともない田舎道を走っていた。
そろそろ取り返しのつかないことになりそうで、一旦バイクを停めて辺りを見回す。
「どうしたの?」
「いや、その……」
店どころか民家もまばらで、辺りは山に囲まれたのどかな田園風景画広がるばかり。
「もうすぐ着くの? 楽しみだね~」
皮肉か本当に気づいてないのか、無邪気な笑顔で俺の顔を覗き込んでくる。
「山が綺麗だねー。
ずっと運転してて疲れたでしょ?
こんなとこで一休みなんてのも悪くないよねー」
「あー、実はその…」
昨日から、やることなすこと裏目に出てる気がする。
いつものことだけど肝心なところで、ろくすっぽいいところを見せられない。
「ねえ、あっちに川原があるよ。
行ってみようよ?」
「あ、いや、それどころじゃ…」
響華さんにまた強引に手を引っ張られて山の麓に見える川まで走る。
ほぼ間違いなく見当違いの方向に来ている。
俺の少し前を走る彼女にいかに弁解したらいいものか。
黒く長い髪が、彼女が地を蹴るたびに揺れる。
すらりと伸びた手足はやや日に焼けていて他の二人とは違った印象を与えてくる。
だけどそれが妙に彼女に似合っている。
化粧やおしゃれに興味がないといった感じの素振りも、
地がいい彼女にとっては美しさを際立たせる一要素になってしまっていた。
208:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:08:32 k6vCqwW7
「ねえ、水切りってできる?」
川原に着いてしばらく一人、水辺で遊んでいた響華さんが小さな石ころを持って俺の側に来た。
「そんな丸っこい石じゃ無理だよ。
もう少し平べったいやつを……、例えばこんな感じのやつ」
足元の適当な石を拾い上げ、姿勢を低くして水面に投じる。
石は七つほど波紋を広げ対岸にぶつかった。
「おー、やるね~!」
「まあ、一応野球やってたし」
「そうなんだ? いいフォームしてるもんね! …素人目線だけど。
私も体動かしたりするのは好きなんだよね」
「でも、俺は高校に上がるときには辞めちゃったし、たいした成績も残せなかったし。
響華さんみたいに自慢できるほどのもんでもないよ……」
「そうかなぁ? ま、多少は自慢になるけどね。
……もうやることもないだろうし、自慢ってよりは思い出かな」
「やることもない?
俺と違って才能あるんだから、もう一度なにかやってみればいいのに?」
結構真面目に返したつもりなのに、なぜか彼女に笑われてしまう。
「なんでよぉ? 私これからお嫁さんになるかもしれないのに。
私、家事も料理もダメダメだから、これからはもう少しそっちをやろうと思ってさ」
「え……?」
「私だって毎日旦那さんに、いってらっしゃいとかおかえりなさいとか言いたいし、
作った料理をおいしいって言ってもらいたいし…」
「へー、男ならたいていそういう奥さんには憧れると思うよ」
「…ホ、ホントに?」
って、他人事のように言ってから気づいたけど、旦那さんって俺のこと?
やば……。
今まで意識してなかったけど、気づいたとたん急に恥ずかしくなってきた。
これから自分のために、慣れない家事や料理をがんばろうと言ってくれる女性なんて荷が重過ぎる。
彼女も隣で顔を赤くして手に持った小石を弄っている。
いや、考えすぎかもしれない。
彼女はただ未来の旦那さんにそうしたいと言っているだけで、俺の為とは言ってないし。
彼女達にしたって、突然現れた男と結婚しなさい、なんて言われても易々と返事なんて出来まい。
ただ俺に理想を打ち明けてるだけだったりして。
ってまたこのスパイラル……。
辺りが夕焼けに包まれてきて、ようやくかなり長い時間が過ぎていることに気づいた。
「あ、あのさ、今さらで申し訳ないんだけど、道に迷っちゃったみたいなんだよね……」
「アハハ…、ホントに今さらだね」
「ごめん……」
「いいのいいの。
すぐに引き返してれば間に合っただろうけど、川で遊ぼうって言ったのは私だし」
響華さんが笑顔で言って手に持っていた石を投げる。
それもいくつかの波紋を残し対岸にぶつかった。
「戻ろうか?
今からすぐに戻ればどっかでいい飯でも食べれそうだし」
「うん」
209:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:13:19 k6vCqwW7
「本当に申し訳ない!!!」
思わず道端に土下座してしまう。
辺りはすでに真っ暗で空には満月が輝いているばかりで、街灯もまばら。
来た道を素直に引き返していたところまではいいが、途中でガス欠になってしまい
もう俺のバイクは微塵も動く気配がない。
「いいよ~、そんなことしなくても。
しょうがないよ、こんな田舎じゃあねぇ…」
ガソリン残量がもうほとんど無いことはわかっていたが、探してもスタンドが無いほどド田舎にいた。
さらに間が悪いことに一昨日から充電していない携帯電話はもう電池切れ。
それでも近くに定食屋があったのが不幸中の幸い。
とりあえずそこに入る。
向かいの席では、響華さんが山菜の天ぷら定食を美味そうに食べている。
一方の俺は店主が許してくれる限り、コップに水を注ぎ空腹を誤魔化した。
「ホントに大丈夫?
お腹空いてないの?」
「うん……、ちょっと腹下したみたいで……」
まさかATMもない田舎に来るなんて想定していなかった俺の財布はもう空だった。
それでも一人分の持ち合わせくらいはあったのが不幸中の幸い。
彼女に辛い思いをさせずに済んだ。
響華さんが「私、海老苦手なんだ」と、特大の海老の天ぷらを一本口まで運んでくれた。
たぶん俺のやせ我慢なんて簡単に見抜かれていたんだろう。
でもそのサクッとした衣と染み渡る天つゆのおかげでさらに強烈な空腹感が襲ってくる。
再び夜道に出ると、来た道とは違う方向へ二人で歩き出した。
「ホントにこっちであってるの?」
時々不安げに聞き返してくる彼女に返事を返しながら、
少し後ろをバイクを引きながら付いて行く。
定食屋の女将さんにこの辺で一泊できる所はないかと尋ねたところ、
こっちの方にホテルがあると言っていた。
ホテルなら持ち合わせがなくても、カードでなんとかなりそうだし、
あてもなく歩くよりは、こっちの方が賢明な選択だと思った。
「ねえ、手伝おうか?」
「いや、大丈夫」
すぐに見えてくると言っていたけど田舎のすぐには俺にとってはすぐではないようだ。
もう眠気と空腹と、バイクを引きっぱなしで足は棒のようになっている。
「あ~、あれかぁ……」
突然立ち止まる彼女に気づいて、俺も顔を上げた。
目の前に見えたのは、派手なネオンと妖しい名前の、
見ただけでそれとわかるラブホテルだった。
「あ、いや、こ、これはその……」
女将さんから話を聞いていたのは俺だけだったし、
俺が初めっからこれ目的で連れて来たみたいに勘違いされているかも。
もうベットがあればダイブしたい気分なのに、変なプライドが邪魔する。
こういうホテルは個別に部屋が取れないとか聞いたことがあった。
しかし振り返った彼女はためらいのない笑顔を浮かべている。
「ま、いっか。
あなたが選んでくれれば、私はあなたのお嫁さんになるわけだし、
なにも、そういう相手に気を使うことはないんだよね……」
「………」
「でも私、初めてなんだぁ……。 ちょっと緊張してるかも……」
「…いいの、俺で?」
「うん、こんな不束者だけど、優しくしてください……。
そして…、もしよかったらこんな私でもお嫁にもらってください」
210:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:14:10 k6vCqwW7
――翌朝
響華さんの連絡で、彼女の家から豪華な車が迎えに来た。
三女の悠華さんが家で待っているらしいのでついでに俺も連れて行ってもらった。
運転手と執事らしき男が同席していたが、
二日連続で寝ていない俺は、彼らに対して体裁を取り繕う余裕はなかった。
そのまま崩れるように車のシートに横になると、響華さんが太ももにそっと頭をのせてくれた。
「ありがとう、重かったらすぐどかしていいから」とだけ伝え、目を閉じた。
こんな状態だと昨夜のことが夢に出てきてしまいそう。
無駄のないすらっとした体。
新体操をやっていた彼女の体は想像以上に柔らかくて、癖になりそうだった。
さらにベットの中だとやたらとしおらしくなる彼女は、静香さんとはまさに対照的。
究極の二択だ。
それももう少しで三択になるんだった――
211:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:15:08 k6vCqwW7
残りも近いうちに投下します
212:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:15:42 /osvRBrD
やっべぇGJ!
213:名無しさん@ピンキー
06/09/02 23:20:10 7s0FLNPT
やべ、長女派かと思ってたら次女に転んだがこの勢いでは次は三女に転んでしまう気がするw
214:名無しさん@ピンキー
06/09/03 23:18:41 iyUH2hsi
てか、静華さんベッドの中じゃ激しいのか(*´Д`)ハァハァ
215:名無しさん@ピンキー
06/09/04 06:01:34 GHkb6DBx
く、ベッドシーンがヴァイツァダストされてるのがこんなに悔しいとは…
216:名無しさん@ピンキー
06/09/04 07:41:26 j5YKLyO1
な ぜ ベ ス ト を 尽 く さ な い の か
エロっ!
エロまだっ?!
217:名無しさん@ピンキー
06/09/04 14:24:04 LyKzorzh
あれだろ?あれ。
三つ子の中から許婚を選ぶとかいいつつ最後には
4 P な ん だ ろ ? w k t k !
218:名無しさん@ピンキー
06/09/04 15:31:26 xi+hpJye
>>215
ソレを言うならキングクリムゾンなんじゃ・・・
219:名無しさん@ピンキー
06/09/05 04:46:53 0k2yQss9
くやしいっ…でも……
ビクビクッ
220:名無しさん@ピンキー
06/09/05 15:14:09 galC7off
もうどうせならハーレムにしてください。
221:名無しさん@ピンキー
06/09/08 17:03:13 fSk8+byO
hosyu
222:名無しさん@ピンキー
06/09/10 00:48:47 pHcigPrq
ほしゅー
223:名無しさん@ピンキー
06/09/10 01:44:38 isT3Xgh5
頼む!俺にエロを!
224:名無しさん@ピンキー
06/09/13 23:18:12 Jt8KZXEv
保守
225:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:51:11 jfeLO9nq
>>210の続きです
226:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:51:40 jfeLO9nq
ふと気がついた。
どれほどの時間寝ていたのかわからないくらい泥のように眠っていた。
でも案外わずかの間だったかもしれない。
俺は未だに太ももを枕にして仰向けで横になっていた。
おもむろに上体を起こして頭をかく。
「昨日はごめんな…。
今度はもっとマシなとこに連れて行くよ……」
目をこすって、一つ大きな欠伸をする。
「人違いじゃない?」
朦朧としていた意識もこの一言ではっきりしてきた。
よく見ると目の前で正座している女性はとてもよく似ているが、響華さんではなかった。
そしてここはさっきの車の中ではない。
だんだん現状がわかってくると、冷や汗が滲み出てきた。
あえてこのまま寝ぼけたフリをしようか、謝罪しようか、
目覚めたばかりの頭が一瞬でフル回転する。
「悠華…さん……?」
「こうやって二人だけで会うのは初めてですね」
にっこりと微笑むこの女性は、三女の悠華さんで間違いないようだ。
いきなり出だしからまずいことを言ってしまったかなと考えてしまう。
「よく寝ていたから、起こすのも悪いと思ってそのままにしておきました。
きっと姉二人にそうとう振り回されたんですね」
すぐに素直に謝ろうと思ったけれど、最近やたら裏目に出てしまうので
あえて誤魔化し通したほうがいいかもしれない。
「でもさっきのは問題発言ですよ。
もう心の中では響華に決めてるってことですか?」
「あー、いや、寝ぼけててなにを言ったかさっぱり……」
「"今度は"って言ってましたよ。
それは響華には今度があるってことでしょ?」
意外に鋭いなぁ、この子。
「あ、それは……。
いや、彼女をろくな所に連れて行ってあげられなかったから、
お詫びにそのうちってだけで……」
「でも私と結婚したときに、そんなことしたらそれは浮気ですよ?」
「う、浮気……?」
「そうですよ。
じゃあ私は、貴仁さんに変な虫が付かないようにずっとお側で見張ってますね」
この精神が磨り減るような尋問、彼女には嫌われているんだろうか?
「な、なにを!?
それこそ犯罪になっちゃうんじゃ……」
「え?」
「だ、だってまだ悠華さんと結婚するかはわかんないし…。
い、いや、これは君をお断りってことではなくて、まだ考え中ってだけで……」
「そうですよね、まだお互いよく知らないですからね。
でも、お互いを知るのは夫婦になってからでも遅くはないんじゃないですか?」
「ふ、ふ、ふーふって…」
自分の顔が火照って赤くなるのがわかる。
まだただの大学生の俺には、実感の沸かない言葉。
227:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:52:27 jfeLO9nq
「そ、それより、どっか行こうか?
奢るよ?」
「こんな時間に?
どこへ行くんです?」
なにやら嫌な予感がして、閉められていたカーテンに手をかける。
窓の外に広がった光景は、やたらと広い夏目家の中庭。
ただ、そこは漆黒の闇に包まれ、オシャレな照明で所々が薄明かりで照らされているだけだった。
「11時って、昼の11時じゃなくて、23時だったのか……」
寝起きにチラッと目に入った時計を見直して、肩を落としてしまう。
そのまま窓際に置かれた、大きなベットに力なく腰を下ろした。
「ごめん……。
でも、起こしてくれてよかったのに…」
「いえいえ、私はどこかへ出かけるより、
休日はこうやって家でごろごろして過ごすほうが好きですから。
まあ、今は学校に行っているわけでもなく働いているわけでもないので
休日もくそもないんですけどね」
そう言いながら、悠華さんもベットまで来てゴロンと横になる。
「さ、貴仁さんもどうです?」
彼女がベットの上をポンポンと叩き、俺にも横になれと催促しているような仕草。
それに甘えるように、両手を広げてベットに背をつけた。
「あーあ、マジで情けねぇ……。
ホントごめんなぁ、君だけ退屈させちゃって……」
ここ数日、癖のようになってしまった溜め息が口から漏れる。
「ちょっと失礼しますね」
悠華さんが近寄って来て、広げた俺の右手を枕のようにして懐で小さくうずくまる。
彼女とそっくりの女性と体を重ねたというのにこういうのばっかりは慣れないものだなぁ、
と、また火照ってくる自分の顔を左手で軽く覆う。
「べつに、退屈はしてないですよ。
寝顔、可愛かったし面白かったし」
悪い気はしないけど、寝顔をずっと見られていたなんて恥ずかしい。
それに一日中見るようなものでもない気がする。
「貴仁さん、ほっぺ突っついても全然起きないくらい熟睡してて…、
初めて会った女性にもクタクタになるまで一生懸命付き合ってる光景が浮かんでくるようで、
何があったか知らないけど、寝言でお姉ちゃんたちに謝ってるのがおかしくて、
それでも今はこうやってちゃんと私のことも気にかけてくれて……。
こんなに優しい人ならきっと幸せにしてくれる気がします」
小さい声で、ゆっくり、はっきりと悠華さんが耳元で呟いた。
それと同時に少し小さな手で、俺のTシャツをギュッと掴んでくる。
228:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:55:43 jfeLO9nq
「で、でも初めて会う人にそれは言い過ぎじゃない……?」
「貴仁さんは本当に私たちのこと知らなかったみたいですけど、
私たちはよくあなたのこと聞かされてきましたから、それはないですよ」
俺は、まったく彼女たちという存在がいるなんて聞かされたことはなかったから、
まあ、普通の少年時代を過ごし、今に至る結果になってしまったんだが……。
「静華さんも言ってたけど、"よく"って?」
「ええ、もう写真なんてアルバムができるくらいたくさん」
「ア、アルバム…?」
たぶん親父以外悪意はないんだろうが、どこまでも俺を無視したプロジェクトだったようだ。
「まあ、写真と母が人伝に聞いた話を私たちにしてくれただけなので、
それぞれ、結構勝手な妄想を抱いていたかもしれませんけど」
そういえば静華さんは、俺の金持ちのお坊ちゃんってとこだけ強調されていたみたいだった。
「でも、あなたのような人だったら、姉たちもそうとう気に入ったでしょうね…」
「う~ん、それなりに気に入られたみたいだけど……」
「そうですよねぇ…。
じゃあ、私の片思いだった人は、運命の人ではなかったんですねぇ……」
彼女は胸に顔を埋めてしまい、どんな表情なのか確認できない。
「え、それはどういうこと……?」
すべるように滑らかな彼女の髪に指を通して頭を撫でながら声をかけた。
「だって普通、私たちの中からお嫁さんを自由に選べって言われたら、上から順に選んでいくでしょ?」
「そんなことないと思うけど……」
「嘘……。
絶対初めて会った時、私が結婚するのは早いとか思ったくせに…」
あれ…、俺ってそんなに思ったことが顔に出やすいのか?
またつい左手で自分の顔をぺたぺたと触ってしまう。
「い、いや、いきなりそんなこと思ったりしないよ!」
とは言ったものの、微妙に間が空いてしまったし、焦ったように早口になってしまったし、
勘のいい彼女にはよけい変に捉えられてしまったかもしれない。
「あ、本好きって言ってたよね、どんなの読むか見せてよ」
なんでもいいから別の話題が欲しくて、彼女の自己紹介を記憶の中から手繰り寄せた。
それを聞いて、彼女もようやく顔を上げた。
「……いいですよ」
悠華さんが俺の腕を引っ張りベットから起こして、部屋の奥へ向かう。
少し目元が赤くなっているのが見えた。
他人の気持ちは鬱陶しいくらいに勘ぐるくせに、自分の気持ちも隠すことをしない人。
俺は今までの経験上、それほど自分の思ったことが他人に悟られていると感じたことはない。
だけどなぜか彼女は俺の些細な言動や顔色一つから気持ちを推測して、
のん気にもそれをほとんど遠慮することなく言ってくる。
でも彼女も自分の感情は隠さず態度や言葉にしてくれる。
そんなところが彼女が気が置けない女性に映った所以かもしれない。
「あ!」
突然悠華さんが振り返る。
また心でも読まれてしまったのかと思わず身構えてしまう。
「今、やっぱり単純で扱いやすい女だと思ったでしょ?」
やば、半分当たってる……。
「ち、違うって。
あれ、高校の教科書、あれって意外と文学性の強いものが載ってるじゃん。
あれでこういうのも面白いなー、とか思って、大学入って時間できたのを機に
俺もいろいろと読んでみようかなって思ってるんだ」
今度は逆に俺が彼女の背中を押して、早く行こうと促す。
「文学……?」
「そ、あーゆーのって結構ハマっちゃうよね。
すごい数の本持ってるんだってね。
やっぱ翻訳版だけじゃなくて、原版とかもコレクションしてるの?」
誤魔化そうとしてまた早口で思いつく限りなんでもいいからしゃべろうと思った。
「ほんやく…?」
229:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:56:42 jfeLO9nq
「な、なにか勘違いされてるみたいですけど、
私こういう本しか読まないんですけど……」
そう言って悠華さんが通してくれた小部屋には、
身長の倍くらいある本棚が壁際に並び、そこには所狭しと…。
いわゆる、というか、漫画が綺麗に整列していた。
どおりで、俺でも多少なら有名どころの作家や作品は知っているつもりだったが、
まるで話がかみ合わないわけだ。
「あーあ、なんで勝手に私を文学少女に仕立ててるんですか?
これじゃあ、子供っぽいって思われちゃうじゃないですか……」
ざっと見た感じ、少女漫画から青年誌で連載されてる漫画、同人誌に至るまで網羅されている。
何万冊とか言っていたから、古今のあらゆるジャンルの漫画があるんだろう。
でも正直、天文学的な数の活字を目の当たりにするよりは、
こっちの方が何倍もマシだった。
「あー、でもすげーわかるよ。
俺も二連休もらったら一日は家でごろごろして過ごすし、
テスト前とかで切羽詰ってる時に限って古い漫画とか読みたくなるし、
それに一度集めだすと、なかなか止められないんだよね」
彼女より先に本棚に向かうと、両手に抱えられるだけ本を取り、
端にあるソファーに腰を下ろして、早速ページをめくり始めた。
「もういいです、そんなに気を使わなくて」
そのまま悠華さんは入り口の辺りでじっとしている。
俺は本を一旦置いて、彼女の元まで近寄って抱きかかえると、
ジタバタとする悠華さんをソファーまで連れてきて座らせた。
「いつまでもそんなつまんないこと言ってないでさ。
俺にはむしろこっちの方が親近感沸くけどな」
漫画本を一冊手渡して、いろいろ話しかけると次第に彼女も機嫌を直してくれたようだった。
スポーツ漫画を見ながら、「こんなんありえないって」とかありがちな突込みを入れ、
恋愛漫画を見ながら、「都合良すぎだよね」とやっかみ半分で笑ってみたり、
一話と最終話を比べて、「作画変わりすぎだね、さすがに」とか横槍を入れてみたり、
一通り読み終わるころには悠華さんもすっかり上機嫌になっていた。
「あ!」
また彼女が、思い出したように声を出して本を置く。
「また私のこと単純な女だって思いませんでした!?」
「………」
少なからず思ったけれど、ひょっとして疑り深いだけだったりして…。
「もうさ、どうでもいいじゃん。
そういうの意外と可愛いと思うけどな……」
またかという感じで、漫画のページをめくる手を休めず言い放つ。
そのまま俺は童心に帰ったように、ただ興味のある漫画だけを次々に読み漁った。
230:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:58:00 jfeLO9nq
区切りのいいところで大きく伸びをして、目の前に積み上げられた漫画の山を見る。
適当に読み飛ばしたのも含めて百冊以上はあるみたいだ。
隣の悠華さんに視線を移すと、本を持ったままうつらうつらしている。
急に何もしゃべらなくなったと思ったら、眠かったみたいだ。
だけど、俺も一緒に居たとはいえ本を読んでいただけだし、
今度彼女を含めたみんなにちゃんと罪滅ぼしをしよう。
彼女の手から本を抜き取り、毛布でもかけてあげようとベットのあった部屋まで引き返した。
キングサイズの彼女のベットの毛布だと大きすぎかなと思い、
イスにかけてあったカーディガンを持ってまた奥の部屋へ戻る。
部屋に戻ると、すっきりと片付いたソファーの上で悠華さんが膝を抱えてうつむいていた。
「出しといてくれれば俺が片付けたのに」
そっと彼女の肩にカーディガンをかける。
「もうすぐ時間ですね……」
「時間?」
「私に与えられた時間は朝の6時までだから。
こんなことなら無理矢理起こしてもう少しお話しすればよかった……」
俺は適当にほっぽり出されたようなものだったから、
これに制限時間があったなんてすっかり忘れていた。
あと二時間か……。
ついこの前まで、俺が結婚なんてするのかと思っていたけど、
もう今は独身でいるのがあと数時間なんて妙な気分だ。
遠い目で見るともなく目の前だけを眺めていた俺の前に、
いつの間にか悠華さんが立っていて、背伸びをしている。
「ど、どうしたの?」
「まだあなたは誰のものでもないからOKですよね?」
そのまま彼女が両腕を俺の首にまわして、
しがみつくように飛び込んでくる。
「――!!」
お互いの唇がそっと触れ合った。
「や、やっちゃってもいいですよ……」
つい返事も忘れ呆然と立ち尽くしていると、また悠華さんが恥ずかしそうに見上げてくる。
「背は一番低いですけど、胸は私が一番大きいですよ……」
彼女がそっと俺の手を掴んで、自分の胸まで誘導する。
「ホントですよ、ほら……」
みんなの正確な身長とか胸の大きさとか覚えてはいないけど、
彼女は確かに胸が大きい。
指先が触れると、彼女が下着を着けていないのがわかった。
231:名無しさん@ピンキー
06/09/14 20:58:46 jfeLO9nq
ベットの縁に腰掛けて、朝日に照らされる庭をぼんやりと眺める。
三日連続で理性崩壊……。
彼女も初めてを俺に奉げてくれたとか、よけいに誰か一人に絞れなくなった。
もうどんなのでもいいからマイナス査定に繋がるようなものが欲しかったけど、
今思い出せるのはそれぞれのいいところだけ。
一つ深呼吸をして、脱ぎ捨てたTシャツを拾い上げ袖を通す。
「貴仁さん……」
声に反応して振り向く。
悠華さんがうつ伏せで寝そべったまま顔だけこちらに向けている。
「お姉ちゃんに捨てられたら、いつでも私のところに来てくださいね」
「縁起でもないこと言うなよ…。
それに、君を選ぶかもしれないのに……」
「実は巨乳好き?」
「バ、バカ!
生涯の伴侶を、そんなの基準に選ばないって…」
「まな板の響華よりはいいでしょ?」
「こらこら。
…まだ誰にするかは決めてない。
これから死ぬほど真剣に考えさせてもらうよ」
静かに立ち上がり、時計を見計らって彼女の部屋を出た。
答えを出すまであとどれぐらいの時間が残されているのだろう。
廊下に出るとなぜか親父が待っていた。
-―え!?
なんでこんなところに!?
いつから!?
悠華さん結構声大きかったから、聞こえてたりして…。
いや、こんな立派な家だし、防音設備くらい……。
あたふたとする俺に親父が近づいてくる。
「ちと早く来すぎたがな、おまえが花嫁を選ぶ席だ。
さすがに親も立ち会わんといかんだろう」
そう言って銀色に輝く指輪を二つ俺の手に置いた。
「え? 二個? 二人選んでいいの?」
「馬鹿者が!!
一つはおまえがはめるんだ!」
久しぶりに親父に喝を入れられた気がする。
左手の薬指に指輪を通すとスムーズに第二関節の下まで降りてピタリと止まった。
本当にいつの間に正確な寸法なんて測ったんだろうか……。
「本日の15時に、
彼女たちの中からまだおまえと結ばれてもいいという者だけ、この前の部屋に集まってくれる。
それまで彼女たちに会わなければこの屋敷の中のどこへ行ってもかまわんそうだ。
とりあえず食堂にでも行って朝食を済ませてきたらどうだ?」
もう頭の中は真っ白でなにも考えられない。
言われたままに、独身最後の朝食を済ませに食堂へ向かった。
232:名無しさん@ピンキー
06/09/14 21:01:33 jfeLO9nq
もうちょい続きます
いろいろ用事があってすぐに投下できなくて申し訳ない
もう落ち着いたんで次こそは近いうちに
233:名無しさん@ピンキー
06/09/14 22:15:20 KRboI8eZ
GJ
いやいや、三女が一番よかったw
やはりハーレムに続くんですか?
できれば、三女ルート希望
234:名無しさん@ピンキー
06/09/15 13:38:17 H77p3IGs
オレも、巨乳三女ルートキボン
235:名無しさん@ピンキー
06/09/15 17:15:46 tXpNIszl
全員孕んでそうだな。
……もしかして、修羅場フラグ満たしてる?
236:名無しさん@ピンキー
06/09/16 02:03:25 IT/8H/Vy
漏れも三女キボン
修羅場も話としては読み応えがあるけど、ここは三女でw
次の投下をマターリ待ってます。
237:名無しさん@ピンキー
06/09/16 15:09:23 g2enV5zw
三女人気だなー。みんな巨乳好き?
自分は長女キボンとお願いしてみます。
238:名無しさん@ピンキー
06/09/16 19:42:54 Nvmm3XcL
ここでボーイッシュ好きの俺が登場ですよ。
つか、約束守ってやってください
次回に期待。
239:名無しさん@ピンキー
06/09/16 20:15:01 vW+OqHtd
私もボーイッシュ好きです。
240:名無しさん@ピンキー
06/09/18 03:17:47 1hS40npw
おっと、オレもボーイッシュ好きだぜ!
241:名無しさん@ピンキー
06/09/18 06:12:42 Jw72yYEB
きょにう好き
242:名無しさん@ピンキー
06/09/18 23:28:20 yiYFdEZ3
重婚!重婚!
243:名無しさん@ピンキー
06/09/18 23:49:45 1hS40npw
>>242
親友と呼ばせてくれ。
244:名無しさん@ピンキー
06/09/19 14:45:04 5E13HBay
ご丁寧に二つも付けやがって!コレじゃ重婚じゃねぇかッ!
245:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:02:19 N0PEG2Fv
>>231の続きです
246:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:03:13 N0PEG2Fv
予想通りの豪華な食事を頂いて、空腹は満たされた。
家の中を自由に見て回っていいと言われたらしいが、とてもそんな気分になれない。
ゲスト用の個室を一つ用意してもらい、そこで待つことにした。
やがて三階の庭が一望できる一室へ案内された。
窓際にイスを持ってきて頬杖を突きながらぼんやりと庭を眺める。
さながらゴルフ場を思わせるような、綺麗に刈り込まれた芝。
池やよくわからない彫像の類も所々に見える。
停止してしまった俺の思考を映し出すかのようにのどかな、変化のない景色が広がる。
また部屋の中に目を移す。
簡素な部屋で普段誰も使っていないという感じが伝わってくるが、
よく手入れが行き届いているようで、汚れや塵は見つからない。
窓から差し込む日の光を浴びて、さっき親父からもらった指輪が手のひらの上で輝く。
それとまったく同じものが俺の左手の薬指で同様の輝きを放つ。
そろそろ時間だ。
でもまだ答えは出ていない。
本当に誰を選べばいいんだろう……。
俺はどうでもいいけど、彼女たちの誰にも悲しい思いや、後悔はさせたくない。
今まで二人の女としか付き合ったことがなかったのに、
いきなり三人の女性にプロポーズされるなんて、どう対処していいか俺の経験ではわからない。
その時、ノックの音が聞こえた。
ゆっくりと立ち上がりドアを開ける。
以前ここで会った主らしき女性、彼女たちの母親らしい。
それと隣に俺の親父の姿を確認できた。
二人の後について初めて、静華さん、響華さん、悠華さんと会った部屋の前に着く。
あの時とはまた異質な緊張感。
この大きな扉を開ける瞬間がトラウマになってしまいそうだ。
ドアのノブに手をかると、ふと気になる台詞が頭をよぎった。
そういえばさっき親父が、
『まだ俺と結ばれてもいいと思っている者だけ集まってくれる』とかなんとか言っていた。
まさか……。
考えすぎかもしれないけど、この先には……。
時間を置いたせいで冷めてしまったとかで誰もいなかったりとか……。
俺をはめるためだけの壮大な計画なんてオチが待っていたりいなかったり…。
この期に及んで、怖気づいてしまい手で握ったノブを回すことができない。
すると突然彼女たちの母が俺の手の上から、自分の手を添えてゆっくりと回してくる。
「三人とも、中であなたのことを待っています。
早く顔を見せてあげてください」
その一言で思い切ってドアを開け放った。
247:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:03:59 N0PEG2Fv
大きな窓を背にして、右から静華さん、響華さん、悠華さんが距離を置いて座っている。
頭の中は空っぽになり、目から入る情報だけが素直に記憶の中に留まる。
静華さんは、着物に身を包んで、髪を綺麗に上で束ねている。
そっと両目を閉じて落ち着いた雰囲気だ。
年下のはずなのに周りの友人たちからは感じなかった大人の色気や気品みたいなものを感じる。
響華さんは、例えるなら自室でごろごろしていたところを突然引っ張り出されてきたという感じ。
インターハイの記念Tシャツを着ているのがおかしくて、少し緊張をほぐしてくれた。
一瞬目が合うと、恥ずかしそうに頬を赤くして節目がちになってしまった。
悠華さんは、さっき俺と会ったときの格好のまま。
ノースリーブのシャツの上から俺の渡したカーディガンを羽織っている。
彼女に視線をやると、ニコッと微笑み返してくれた。
女中がイスを引いて俺に軽く会釈をしたが、あえてそのまま入り口付近に立ったまま動きたくなかった。
そのイスに座ると正面に響華さんがくる。
まだ答えの出ていない俺にとってその行為は、他の二人に申し訳ないような気がしてならない。
どちらかにずれても結局同じような結果になるし、
今さらながら俺は優柔不断で度胸がないことだけが思い知らされる。
しばらく無言で立ち尽くし、左手に握られている指輪をもう一度握りなおす。
「さあ、おまえがもっとも気に入った方にそれをあげなさい」
それを見た親父が無神経にも俺に催促してきた。
答えの出ないまま一歩二歩と前に出る。
だけど、またここでなにも言葉を発することのできないまま棒立ちになってしまった。
そのまま30分近い静寂が続いた。
もう俺はプレッシャーに押しつぶされそうで耐え切れなくなっていた。
そして、緊張のあまり乾ききってしまった口をゆっくりと開く。
「お、俺は――」
248:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:04:48 N0PEG2Fv
「…本当に俺でよかったの?」
「ええ、私は一生後悔はいたしません。
あなたはとても素敵な方ですよ」
今、俺は中庭の間を走る道を静華さんと二人で歩いている。
だけど俺は静華さんを選んだわけではない。
それ以前に結局答えは出せなかった。
そう、遡ること1時間ほど前の出来事――。
「お、俺は、えっと……、その……」
ずいぶんみんなをやきもきさせたというのに、とりあえず口を開いただけの俺は、
未だに壊れたおもちゃみたいに意味にならない言葉を呟きながら目を泳がせていた。
だが部屋中の視線が俺に集まる感覚が伝わってくる。
「ご、ごめんなさい。 俺、この縁談を断らせていただきます。
みんなみたいに、俺のことを大切に思ってくれる人なんて他にいませんでした。
それにこれからも現れないと思います。
だから俺、みんなをすごく好きになりました。
それなのに、その人たちの中から誰が一番いいかなんて順位をつけるようなマネはできません。
これが俺の答えで…、いてッ!!」
やっとの思いで声を振り絞り、思いを伝えようとした俺のももの裏に激痛が走った。
振り返ると親父が手に持った杖で俺のももの後ろを強打したみたいだった。
「馬鹿者が!
これは両家の間での取決めごとなのだぞ!!
おまえごときにそんな権利はないわ!!
こんな場でわしに恥をかかすんじゃない!」
膝をついて、ももの裏をさすりながら彼女たちを見ると、三人ともキョトンとしている。
俺の発言を受けてか、暴力的な姑の恐ろしさに唖然としたのか。
一方の俺の立場はさらに良くない方向へ転がりかけているような気がした。
それを見ていた彼女たちの母が俺に近づいてきて、そっと手を差し伸べてくれる。
「この子たちは三人とも、十八年間あなたを想って操を守り通し続けてきました。
そんな屁理屈では納得してはくれないでしょう。
しかし、お互いまだ若いですし、実際の夫婦というものがどういうものか実感が沸かないのも理解できます。
貴仁さん、勝手なお申し出で恐縮ですけど、
よろしければ、正式なお返事はしばらく保留にしていただいて、
娘たちと擬似的な夫婦生活を体験して、
それから本当に自分の妻にふさわしいと思った者を選ぶというのはいかがでしょう?」
チラッと親父の方を見ると、無言で腕を組んでいる。
最初っから俺が一人に絞れないと予想して用意していた妥協案といったものかもしれない。
――かくして
俺は、月曜と木曜は静華さんと、火曜と金曜は響華さんと、水曜と土曜は悠華さんと
擬似的な夫婦生活を送ることになった。
そして今日は月曜日。
この日、俺と一緒にいることが許されたのは静華さんだった。
249:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:06:15 N0PEG2Fv
隣を歩く静華さんがゆっくりと口を開く。
「私たちは、なにかを取り合って喧嘩をしたという経験がほとんどない仲のいい姉妹でした。
それぞれ興味のあるものが違ったせいか、なかなかそういう機会がなかったのも事実ですけど、
最後は私が、ワガママな妹たちに譲ることが多々ありました。
ですが、あなたばっかりはそう簡単に譲る気にはなれなかったんです。
私も意外とワガママな女かもしれないですね」
そう言って彼女は俺の方を向いて、少し恥ずかしそうに笑った。
その顔が夕日に照らされてやや赤く染まっている。
「和服がお好きなんですか?」
「え?」
「いえ、時々こちらを見ていらっしゃるようでしたから」
言われてみれば、目が合うのが恥ずかしくて、彼女とタイミングを外してチラチラ見ていた。
それも、髪を束ねていた彼女のうなじとか胸元とかそんなところばかり見ていた気がする。
「ええっと…、着物が好きっていうより、すごく似合ってるから見惚れてたと言うか……」
「フフッ…、お上手ですね。
でもそう言っていただけると嬉しいです。
私の知人が着物のデザイナーをやっていて、今度個展を開くらしいんです。
よろしかったらご一緒しませんか?」
「そ、そうだね。 うん、ご一緒しますよ……」
「気に入ったものがあったら、是非見立ててくださいね」
「で、でも、俺そんなにセンスよくないし……」
「そんなこと構いませんよ。
もうあなた以外に似合ってるなんて言ってもらう必要がありませんから。
あなたの好みで選んでくださって結構ですよ」
そう言いながら、静華さんが優しく腕を組んできた。
あの時答えが出せなかったため受け入れたこの妥協案は、間違いだったかもしれない。
こんな展開が、彼女たちの中から誰か一人を選ぶことの一助になるはずがない。
だけど後先考えず、流れに身を任せる癖がついていた俺には、
もう流れを変える力なんてないことくらいわかりきっていた。
ここは全てを忘れて、可能な限りこの甘い生活に流されるしかなさそうだ。
250:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:08:01 N0PEG2Fv
――その日の夜
俺はしばらくの間、彼女たちの家の庭にある、はなれを借りて暮らすことになった。
はなれといっても、普通の一軒家よりは大きいし、生活に必要な設備は整っていた。
さらに母屋とも距離があるし、使用人たちも勝手には入ってこないので、
さながらマイホームを手に入れてしまったような錯覚に陥る。
問題といえば、今まで自転車で20分の距離だった大学が、
電車を乗り継いで2時間の距離になってしまったこと。
ほぼ毎日通うわけだから切実な問題ではあるが、
ここまでの幸運の代償としては些細な問題かもしれない。
そんなことを考えながら、寝室のイスにかけて夜空を眺めていた。
すると、部屋のドアが開き静華さんが入ってきた。
湯上りの少し湿った髪と、ワンピースタイプの白いネグリジェ姿に視線が釘付けになる。
「よかったらお休み前に少しいかがですか?」
そう言った静華さんの手にはワインとグラスが一つ握られていた。
「へー、気が利くねー」
俺自身酒にはわりと強いけど、好んで晩酌をするほどの酒飲みでもない。
けど、彼女のこういった気遣いは、自分が勘違いしてしまうほど大人っぽい感覚にさせてくれる。
そしてその感覚は心地よく、悪くないものだった。
向かいのイスに腰掛けた静華さんが、グラスにワインを注ぐ。
「フランスにホームステイしていた時に世話になった方から送られてきたんです。
お口に合うかわかりませんけど……」
夕食の時にも同じ台詞を聞いた。
だが彼女の作ってくれた料理は、金を取っても恥じないくらい、見た目も味も満足いく物だった。
おそらくこのワインも、安酒しか知らない俺にはもったいない物だろう。
「さ、静華さんも一杯どうぞ」
やがて酔いが回ってくると、目の前で俺を眺めていた彼女にもワインを勧めていた。
「え、わ、私はまだ……」
「一回くらい飲んだことはあるでしょ?
こういうのって一人で飲んでても面白くないからさ」
自分のグラスにワインを注ぎ足して彼女の前に出した。
「そ、それじゃあ、少しだけ……」
静華さんはグラスを口元まで持ち上げると、一気に飲み干してしまった。
「あ、ちょ、ワイン一気はマズイって……」
ハラハラと見守る俺の前で、静華さんはグラスを置くと、そのままテーブルに伏せてしまった。
「……だ、大丈夫かな。 ほとんど満タンに注いだのに」
251:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:08:42 N0PEG2Fv
明かりを消し、彼女を抱きかかえベットの上にそっと寝かせて、俺もすぐ脇に横になった。
風呂上りの静華さんのほのかな香りがして、疲れてるはずなのに眠気が吹っ飛ぶ。
とにかく天井だけ眺めて、気分を落ち着かせるのに努めた。
ようやく鼓動の高鳴りも収まってきたというのに、
突然静華さんの手が首筋に触れてきてまた心臓がうるさく波打つ。
そのまま彼女が覆いかぶさるように、仰向けで寝ている俺の上に来た。
「あ、あれ、酔い潰れてたんじゃ…?」
「私が酔い潰れていたら、どうするおつもりだったんですか?」
「え、いや、本当に襲うつもりとかそんなんじゃなくて……。
てかここまできて襲ったりはしない……」
言いかけて開いた俺の口に、静華さんがゆっくり唇を重ねてきた。
舌が入ってきて、口の中にかすかにワインの味が広がる。
「じゃあ、こっちから襲っちゃいますよ?」
唇を離した静華さんが妖艶な微笑を浮かべて、俺の下瞼を人差し指で優しくなぞるように撫でてくる。
「私、初めて体を重ねた時も、こうやってあなたの表情ばかり見ていました。
この人はどうやれば喜んでくれるんだろうとか、気持ちいい時はどんな顔をするんだろうとか…。
………少し変かもしれないですけどね」
「い、いや、全然そんなことないよ」
静華さんが足を絡めてきて、俺のそそり立っているモノが彼女の下腹部に押し付けられてしまう。
むしろ俺の方が変態だよと言いたいくらい恥ずかしい。
「大人しくしていてくださいね」
静華さんが、俺のパジャマの前のボタンを上からゆっくり外していく。
さらにゆったりとしたズボンまで簡単に剥ぎ取って、再び体温を感じるくらい顔を近づけてくる。
「私も脱ぎましょうか?」
「え…っと……」
もう酔いが醒めかけている俺は勢い任せで何でも言える状態じゃなくなっていた。
「フフッ…、ちょっとエッチな奥さんだと嫌ですか?」
「そ、そんなことないです……」
それを聞いて静華さんが肩の紐を指先で摘むと、真直ぐに上に引っ張りあげる。
そのたった一枚を脱ぎ捨てると彼女は全くの裸。
月明かりで透き通るような白い肌と、形の良い乳房が露わになる。
引き締まった腰のくびれ辺りまで、美しい黒髪が届いている。
我慢できずに手を伸ばして、彼女の胸を包み込む。
「んぁっ……!」
静華さんの口から吐息交じりの喘ぎ声がわずかに漏れ、後ろに仰け反るように倒れこんだ。
その彼女に、さっきとは上下逆転の体位でそっと近づく。
普段の控えめな態度からでは想像できない彼女に興奮をかき立てられるばかり。
「酔ってる……?」
「さあ……。 いいじゃないですか、二人っきりの時くらい甘えさせてくれたって……」
静華さんが両手を頭の後ろにそっと回してきて、また二人の顔が近づく。
「うん、い、いいと思うよ……」
「無理に急いで答えを出さなくていいですから、
せめてこういう時だけは甘えさせてくださいね――」
252:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:09:25 N0PEG2Fv
――朝
携帯のアラームが鳴って無理矢理起こされてしまった。
結局寝たのも遅かったけど、最近十分な睡眠を取れていない気がする。
ベットの隣はもぬけの殻だった。
目をこすりながら辺りを見回すと、ドアの前で静華さんが後ろ手でエプロンの紐を縛っているのが見えた。
俺が起きたのに気づいたのか、彼女が振り返る。
「あ、おはようございます」
「おはよう……」
「ずいぶんお早いですね。
どこかへお出かけですか?」
「うん、学校は来週まで休みだけど、バイトが入ってた……」
片手で携帯のスケジュールを見ながら呟く。
そういえば、わけわからん山奥のラブホに放置してあるバイクも早いとことりに行ったほうがいいんだろう。
「そうですか……。
今日はもうほとんど一緒にいれませんけど、朝食の支度だけしておくので食べていってくださいね」
「うん、ありがとう。
でも母屋までは歩いて行ける距離だし、いつでも会えるんじゃ…?」
「嬉しいですけど、それでは規則違反になってしまいますから……」
規則、か………。
なんか、俺のせいで彼女たちにもえらく迷惑をかけてしまっているのかも。
「ごめん、なんか悪いことしちゃったみたいで……」
「いえ、私はあなたの口から正式なお返事が頂けるまでお待ちしています。
ずっと想いを寄せていた人に好きだと言われたんです。
こちらから諦めるようなマネはもったいなくてできませんから」
静華さんはそう言いながら笑みを見せると、寝室を後にした。
253:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:10:30 N0PEG2Fv
もう少しだけ区切りのいいところまで続けるんで、付き合ってくれるとありがたいです
254:名無しさん@ピンキー
06/09/20 22:45:26 5zWtPVCV
gj!
つ④
255:名無しさん@ピンキー
06/09/21 07:09:06 v9sZv4PZ
家の権力で日本の法律を改正してしまえ!
重婚!重婚!
256:名無しさん@ピンキー
06/09/21 12:59:03 n93ezN0V
いやいや、そこで三姉妹の母親をチョイスですよ(勝手に未亡人と脳内決定)。
257:名無しさん@ピンキー
06/09/21 14:17:51 P+BYg9zZ
>>256
ちょwwwww
でもそうなると三姉妹が主人公をお父さんと呼ぶわけか・・・
258:名無しさん@ピンキー
06/09/21 18:35:53 FFFwma4t
>>256>>257
その発想はなかったわ
大いにアリだな!!
259:名無しさん@ピンキー
06/09/21 23:02:46 BcxmW4ER
全員孕ませて万事解決ok!
260:名無しさん@ピンキー
06/09/21 23:51:05 5hoTjfAD
え?メイドさんとくっつくんじゃないの?
261:名無しさん@ピンキー
06/09/27 13:34:33 hyhF7pl3
続きwktk
結末はいかに……
262:名無しさん@ピンキー
06/09/27 19:03:17 r/rnF2KA
ここのスレに初めてカキコしたんだけど、エロゲやって各キャラの新婚生活のエンディングが無いことに疑問を持ってるのは、漏れだけ?
263:名無しさん@ピンキー
06/09/27 21:28:34 /8gr7cUm
まあ、個人的にはあって欲しいけど、エロの方が需要が多いんじゃね?
264:名無しさん@ピンキー
06/09/27 21:33:07 r/rnF2KA
正直エロは一回でおk!
265:名無しさん@ピンキー
06/09/28 04:49:57 3Hdg89ZJ
>>262
そんな君に
つ「フローラリア」+「憂ちゃんの新妻だいあり~」
266:名無しさん@ピンキー
06/09/28 07:57:45 zJvUuB9T
それは確か○ウスだっけ?
267:名無しさん@ピンキー
06/10/03 01:07:31 FjxufQGP
保守あげ
268:名無しさん@ピンキー
06/10/08 07:56:48 OD/Bh+Mu
ほす
269:名無しさん@ピンキー
06/10/08 08:46:01 1hKcOwAW
ここは古典作品の二次はおKなスレ?
例えるなら若草物語とか嵐ヶ丘のレベルなんだが
270:名無しさん@ピンキー
06/10/08 11:54:18 vtAp0Tq6
>>269
元ネタを深く知らなくてもある程度理解できるストーリーならば、個人的にはバッチコイ。
271:名無しさん@ピンキー
06/10/08 15:26:40 5y9sY4r2
ウェディングピーチのエロパロ4
前スレ
ウェディングピーチのエロパロ3
スレリンク(eroparo板)
避難所
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
過疎のようなので、再利用させてもらいます。
新たにスレを建てると荒らしにやられるため。
272:名無しさん@ピンキー
06/10/08 15:28:34 5y9sY4r2
4人のセントサムシングフォー
親しいお友達から借りた友情のペンダント サムシングボロー(デイジー)
新たな幸せへの誓いを秘めた新しいティアラ サムシングニュー(サルビア)
おばあ様からママへ、ママからピステルに代々伝わる古い指輪 サムシングオールド(ピーチ)
青い色のイヤリング サムシングブルー ブルーは花嫁の希望を現す色(リリィ)
273:過去ログから
06/10/08 15:29:09 5y9sY4r2
悪魔族のテリトリーらしき場所
谷間ゆりがパンツ一枚で横たわっている。当然乳房は丸出し
(女性の下着について詳しく無いのですがウェディングドレス用の純白の下着です)
パシャッ、カメラのシャッター音が聞こえる
目を覚ますゆり・・・・・・・・・・・・・・・・
自分がパンツ一枚なのに気づき慌てて胸を隠す、自分が何故こんな場所にいるのか思い出そうとする
(今日はせっかく柳葉さまとデートでしたのに・・・・・・・・・・・)
その日ゆりは柳葉からの手紙に書いてあった待ち合わせ場所の公園にいた
「やはり、柳葉さまは悪魔族との戦いの中でも私の事を気にかけてくださっていたのですわ」
喜びと期待に胸を膨らませるゆり。やがて約束の時間が来ようとしていた
そこまで思い出した時、ゆりは自分の目の前に1人の男が立っている事に気が付いた
(注、その当時愛天使と戦っていたぺトラーではありません、ゆりに横恋慕してるらしいオリジナルの悪魔です)
「あなたは、確か・・・・・・・・」
だんだんゆりの記憶が鮮明になって来る・・・・・・・・・・
ゆりは自分の股間に目を向けた。先ほどからわずかに痛みを感じるのだ
「お目覚めかね、谷間ゆり君、君が純潔を失った記念写真を撮らせてもらったよ」
ゆりの下着は破瓜の血で真っ赤に染まっていた、そして彼女の頬は口惜し涙で濡れていた
ゆりの記憶は完全に蘇った、今日自分の身に起こった悲劇を完全に思い出してしまったのだ・・・・・・・・
274:過去ログから
06/10/08 15:29:54 5y9sY4r2
ゆりの回想
手紙に書いてあった約束の時間になった、しかし柳葉は来ない・・・・・・・
気が付くとその公園にはゆり以外は誰もいなくなっていた、そして公園は邪悪なウェーブで満たされていた
ゆりの前に姿を現す件の悪魔族、自己紹介の後ゆりにあの手紙はニセモノだったと説明する、怒るゆり
「ウェディング・グレイスフル・フラワー」
変身しようとするが特殊な光を浴びせられアニメ本編ではシルエットになっている変身シーンの全裸が
丸見えになってしまう。その上その姿を魔界製のビデオカメラで撮影されるがゆりはまったく気づかないw
ウェディングドレスに変身完了するゆり、だが前述の特殊な光により愛のウェーブを抜き取られたため
力尽き気をうしなってしまう
悪魔は気を失ったエンジェルリリィ(ゆり)を魔界の自分のテリトリーに連れてゆく
悪魔はリリィのパンティを脱がせ、彼女の処女膜を確認するとそのパンティを自分の懐に仕舞い込みリリィを目覚めさせる
リリィはパンティを盗られた事には気づかずファイターエンジェルにお色直し(二段変身)する