07/01/14 21:12:04 lO5Mb5Mu
キラ事件が終結して、もう一年と二ヶ月が経った。
終結と言っても、その事実自体は公表されておらず、
その始終を全て知っているのは俺を含むほんの数人に過ぎないのだが。
世の中は以前の通り、賑やかで、鬱陶しく、
悪も善も入り混じる、混沌とした世界に戻っていた。
月君がキラだったと言う事実は、これまで共に捜査してしてきた
者たちにこの上ない衝撃を与え、俺などはまだいいが、
月君と付き合いも長く、彼に好感を持っていた松田などは
しばらくの間抜け殻のようになっていたかと思えば、
最近では、奴にしては妙な憶測(いや、むしろ願望とも言うべきか)まで
考えるようになってしまっている。
俺にとっても、あんな後味の悪い終結になるとは、予測の範囲を超えていた。
しかし、本当に俺達などはまだいい方だ。
俺たちは、こうして普通に警察官としての人生を(何が普通で何が普通じゃない
かなんてわからないが)過ごしていけるだけ、マシなのだ。
たくさんの大切なものを失ってしまった、彼女達に比べれば。
「今日は、伊出さんお一人?」
にっこりと、微笑む彼女。
月君が死んだ、―キラに殺された、とだけ伝えられ、悲痛な嗚咽を漏らした母と、
全てを悟っているかのように表情も変えず、静かに頬を濡らした彼女。
当時の俺は、彼女のその態度がひどく不自然に思えてならなかった。
松田にそれを言うと、
「辛い事が続きすぎて、感情が麻痺してるのかも知れないですよ」
と返ってきた。