06/06/08 20:18:10 JFBisA4Y
榊もまた、閉じようとする扉を必死で押し戻すような感覚に焦りを感じていた。
喉の奥に引っかかったものは、今や一気に巨大化してしまい、これ以上お腹に留めたら死んで
しまいそうだった。
頭がガンガン鳴っている。これは警戒音だ。
今ここで神楽を引き留めなかったら、自分はこの人を失う以上の罪を犯す。
「来て」
「…っちょっと…何すんだよ!」
榊は神楽の腰に手を回すと、そのまま抱えるようにして浜辺へ向かってすたすたと歩き出した。
呆然と二人を見つめていた暦と大阪が、ギョッとなってその後を追う。
「待ってや!榊ちゃん!神楽ちゃんを、何処に連れて行くつもりなん!?」
「お、おい榊ッ!これ以上事を荒立たせたら…」
「ついてくるなっ!」
榊は振り返って大喝を落とす。その迫力に、二人の足が止まった。
「これは私と神楽の問題だ…。これ以上口を挟まないでくれ!」
「…はさむなって…お、おい!ちょっと!」
言うだけ言うと、神楽を抱えたまま榊は浜辺へと通ずる階段を降りていった。
「こら!降ろせよ!私はもうアンタに話なんか……!……」
暴れる神楽の声が、徐々に遠くなる。