06/11/21 00:17:53 oC9wgDnH
秋から冬へと橋渡しが行われつつある季節の、ある晴れた昼下がり。
「ええ天気やなあ」
「ああ 」
セミロングの少女はうーんと大きく伸びをしながら、腰まで届く
流れるような黒髪が印象的な、長身のクラスメイトを見上げた。
「こーゆーのをこはるびよりっていうねんな」
「小春日和か」
澄んだ青空から目線を落とすと、黄から山吹に色づき始めた銀杏の
木陰から茶色い子猫がちらちらと二人を覗いている。
「あーねこ? おいでー 」
のんびりとした口調で手招きすると、まだまだ親離れしていな
さそうな子猫が、しっぽを振りながらちょこちょこと近づいてくる。
そして、囁くような鳴き声をあげながら大阪の膝の上で寝転んだ。
「かわええなあ」
思いもよらない小さな来訪者に嬉しそうな声をあげている少女の、
隣に座っている榊がおそるおそる手をのばしてみると……
ぴゅっ!
瞬く間に、子猫は駆け去ってしまった。