06/06/12 20:54:48 C/UDzR+S
少女は涙でぐしょぐしょの顔でだいじょうぶ、ごめんなさいとだけ言うと、街道を先頭きって進んだ。
町の常宿に着いても、顔色は紙のようだが、こわばった笑顔でだいじょうぶと繰り返すだけ。
仲間には男の口から、魔人の気まぐれにつきあわされ、いじめられたのだと説明しておいた。
詳しくは少女の様子からも、問い詰めては駄目だとも釘を刺しておいた。
仲間は不承不承ではあったが、男の有無を言わせぬ態度にそれ以上の詮索はあきらめたようだった。
あれほど強く求めていた姉だったが、不思議と少女が受けたほどのショックを感じていない。
魔人から姉は開放せねばならないが、とりあえず操られたままでも友がそばにいる間は
大丈夫だという気がしていた。
自分のことよりは、少女の傷心をどう繕ったらよいかを考えている自分に内心困惑しながら、
やさしい言葉をかけるわけでもく、男はただ黙って少女のそばにいた。
少女もそれを気にする余裕もないのか、男のそばでぼんやりと宿での時間を過ごしていた。
バルコニーで夜風に吹かれながら、二人で闇を見つめていたとき、ふいに少女が口を開いた。
「セラ・・・。兄さんがセラのお姉さんにしたこと、・・・私に同じことして欲しい。」
男がはっと少女に目を向けると、少女は空ろな眼差しでもう一度同じセリフを繰り返した。
「何を言っているのかわかっているのか?」
思わずいつも以上に声が低くなっていることに気付いて、舌打ちする。
「ちっ・・・。姉がお前の兄に汚されたからといって、妹のお前にその代償を求めるような男だと
俺のことを見くびっているのか?」
「そうじゃないの。気持ちはからっぽなのに、ね・・・。あれから、体が、おかしいの。」
そう言うと、少女はぎゅうと目を閉じた。
「宿についてからお風呂も入ったし、あそこで、直接体に何かされたってわけでもないのにね。」
ふふと力なく笑うとまた闇に視線を移した。
「あそこで、あれを見させられてるときは・・・。」
少女が思わずうつむく。
「待て、もういい・・・。あれは・・・、早く忘れることだな。」
ぱっと顔を上げ、つとめて明るく少女は振舞う。
「こう見えて私・・・、乙女じゃないのよ。だから、兄さんたちのあんなとこ見せつけられて
体が疼くってとこかしら?わかんないけど、ね・・・。」
「いやかな、こんな理由じゃ。それとも女としての魅力、ぜんぜん及ばないかなあ・・・。
セラのお姉さん・・・、ほんとにきれいだよね、私じゃ、っ・・・。」
涙がつうと頬を伝う。