04/11/01 21:35:08 wMxGq6wo
(悪い気はしないわね)
カントが自分に腕を組まれて、頬を赤らめたのを見た三尾の、それが第一の
感想だった。
こんな風に「女」として意識されるのは滅多に無い経験。
たとえ相手が、天才とはいえまだ幼さすら残る少年であろうと。
いやむしろ、少年であるからこそ嬉しいのかもしれない。
そう、彼女が無意識に遠ざけてきた、悪い意味での男性的なところがこの
少年にはまるでないのだから。
(ううん、悪い気がしないどころじゃない、わたし、嬉しいの、いえこれは
ときめいているの?)
容姿には不自由していない三尾が今まで男性に縁が無かったのは。
研究に没頭している生活が主たる原因だが、彼女自身のパーソナリティにも
大きく起因している。
性格が悪いからではない。
確かに容姿に問題が無い上に、性格にも瑕疵のない女性がフリーなどという
ことはフィクションの世界にしかありえないことであり、実際に三尾は少し
自己中心的性格の気があり、かつ何かに夢中になると回りに目もいかず気も
つかなくなる難儀な性格だが。
そういった性格は、むしろ男性と関係が出来た後、その関係を維持すること
を困難にする要因である。
無意識のうちに男を倦厭する態度、問題はそれに尽きる。
自分の方から積極的に関係を持とうとしないのでは、ただでさえ出会いの
少ない生活環境にいるのだから、いかに三尾が容姿には不自由していない
とはいえ男性に縁が無くてもあたりまえだ。
これで同性愛嗜好だったり、もっとはっきりとした男性恐怖症や嫌悪症が
あればまだ自覚出来ただろう。
積極的な「男嫌い」ではなく、消極的な「男なんてどうでもいい」という
投げやりな感情だから自覚がしにくいのであった。