【兄妹なのに】生殺し妹文学館【募る想い】第十七巻at ASCII2D【兄妹なのに】生殺し妹文学館【募る想い】第十七巻 - 暇つぶし2ch■コピペモード□スレを通常表示□オプションモード□このスレッドのURL■項目テキスト54:向こうの230 ◆EldeW1Y/XY 07/05/04 13:42:59 3MAO26We 結局、あの言葉通り。 兄は一ヶ月を懸命に生きようとして、この世を去った。 父は、一度も見舞いに行かぬまま葬儀にだけは参列した。 薄暗い待合室で、兄の姿が骨だけになるのを、 泣き止まない母と憎らしい父と共に待ち続けていた。 「…お母さん、ちょっと外の空気を吸ってくる」 「あまり遠くへ行かないようにね」 「分かってる」 涙声でも普段通り接してくる母を少しだけ尊敬して、 喪服姿しか視界に入らないこの場所から抜け出した。 55:向こうの230 ◆EldeW1Y/XY 07/05/04 13:45:02 3MAO26We 外は、小雨が降っていた。 静か過ぎる山の中に、鴉の鳴き声だけがこだまする。 灰色をした空は、大好きだった兄の遺灰の色に想えて、 何も聴こえないのに思わず耳を澄ましたくなって、 結局どうしようもない自分の姿を痛感してしまう。 「お兄ちゃん…お兄ちゃん……」 悲しいはずなのに、涙が出ない。 切ないはずなのに、叫べない。 56:向こうの230 ◆EldeW1Y/XY 07/05/04 13:47:24 3MAO26We 「お兄ちゃん…お兄ちゃん……」 愛しい人の名を繰り返して、空を見上げるだけ。 鴉だけが鳴き続けていた。 私の代わりに、叫んでくれているようにも聴こえた。 最後まで、涙は流れなかった。 次ページ最新レス表示レスジャンプ類似スレ一覧スレッドの検索話題のニュースおまかせリストオプションしおりを挟むスレッドに書込スレッドの一覧暇つぶし2ch