07/11/13 07:00:05 fpLw5Fcv0
鍛えてもまだ薄い手が、ピンクの髪を挟んだ。
「秀ちゃんは、いっしょにいてくれる?」
「当たりめぇだろ」
額をぶつけるように言い放つと、お姫様の身体を抱きこんだ。
未だ放心するお姫様を正気に戻すように、強く腕を回す。
「俺がよっちゃんから離れるかよ」
泣き声が聞こえる。
これは子供の泣き声だ。
俺は混乱した頭で、二人を見る。
子供の様に泣きじゃくる長男を、ピンクのお母さんがしっかりと抱きしめていた。
見慣れた光景が、更に俺を惑わした。
髪も切り鍛えた筈の長男が、大人にも子供にも、ましてや男にも女にも見えなかった。
ピンクのお母さんが抱きしめているのは一体何だ?
「俺が傍にいるよ」
王国の崩壊を止める為に、騎士が忠誠を誓う。
だが、忠誠を誓ったお姫様は
大人でも子供でもなく、男でも女でもない化け物だった。
化け物から逃れる為に、天使に縋った男の代わりに
ついに姫君の傍らに立つ騎士は、王国を手に入れるだろう。
そして、この美しい化け物に魅入られた犠牲者が、また一人。