07/11/13 03:11:03 fpLw5Fcv0
『上弦の月~天使~』
「彼女は天使みたいな人なんだ」
俺だけでなく、お母さんとおじいちゃんまで呆然とさせた従兄弟が
最初に天使の惚気話をしたのは何時だろう。
「まぁ…いつも傍にいるのが、魔女だからなぁ…」
「いや、鬼か悪魔じゃね?」
派手で横暴な長男とは正反対の、地味で大人しい天使に惚気た彼に皆が納得した。
俺は微妙な三角関係の終焉を、少し寂しいと感じていた。
そして、それは確かに終焉だった。
天使はあくまで神の使いで、救いを求める者を導くだけだと
何故、誰も気付かなかったのか。
「なんでやめるんだ、俺の人生はどうなるんだよ!」
ピンクのお母さんが荒れている。
おじいちゃんに助けを求めようとしても、こんな時に限って彼は海の向こうだ。
黙ってしまった長男と、従兄弟を、必死の形相で問い質していた。
混乱して、自分が何を言ったのかわからない。
「…俺は行くよ」
誰も止められなかった。
家族が、崩壊した。