07/11/05 03:04:35 X3qoPMpP0
「…だいじょうぶだよ」
「利くん?」
きつく握り締めていた手が緩み、毛布の隙間からそっと伺う。
優しい幼馴染は、泣いていた。
「泣いてるの?」
「よっちゃんだって!」
慌てる幼馴染に思わず笑うと、照れくさそうに手を伸ばされた。
「行こうよ」
「でも…」
父親の亡骸が、まだそこにいる。
「だいじょうぶ、ボクがいるよ」
恐る恐る手を伸ばすと、しっかりと握られた。
「いっしょに行こう」
毛布が滑り落ちる。憔悴した友達の、縋るような目が幼馴染の胸を射た。
卵の殻を破って、雛が現れる。
これは孵化だ。
父親の亡霊に取り憑かれた、美しい化け物と
その化け物に魅入られた、最初の犠牲者の誕生だった。