07/10/03 01:39:46 +oPmMdqk0
夢見るように、と言ったのは君だった。
それは君がまだあどけない表情で僕に密やかに語った話であり、
第三階段教室のあの壊れたクーラーの生ぬるい風の当たる席でのことだった。
僕らは隣同士に座っていた。
「ほら、眠るとさ…冬眠ってあるじゃない、そういう身体の機能が低下した状態でいると
通常より永く生きられるんだって」
君の薄く、形の良いくせにいつも曖昧に結ばれた口から零れ出る言葉は、
古代ギリシア思想史の講義と混じり合い、独特の色と形を帯びて僕の脳内に降り積もる。
興味のあるような、ないようなふりをして僕はその感覚をゆっくり味わっている。
だから思うんだけど、と君は続けた。
「ねぇ、それは緩やかに夢見るように死んでいくこととどう、違うのかな」
語りながら君の細く、形の良いくせにいつも落ち着きのない左手は教授の語る
古代哲学の体系図を正確に写しとってゆく。
「よく考えてみなよ、夢の世界は目覚めたら終わり…そういうことさ」
僕がそう返すと君は少し黙り、ノートに“根本的原理の探求、水 火 数”と書いて
ゆっくりとひとつ、まばたきをした。
172:古代哲学2/2
07/10/03 01:41:45 +oPmMdqk0
その君の完璧な、色の濃い睫毛は蝶が欠伸をするようだといつも思う。
僕が見蕩れていると君は思想家の名前をノートに愛しげに連ねてゆきながら、ぼんやりと呟いた。
「じゃあ君と僕は今同じ夢を見ているのかも知れない」
「ああ、そうだね」
「なら目が覚めないといいね」
「でも起きてもきっと一緒にいると思うよ」
「ああそっか…じゃあ、それも夢ならいいね。目が覚めたらまた一緒にいるんでしょう」
「ああそうだね、きっと夢だよ。どこまで行っても…」
「終わりなく?」
「終わりなく」
生徒達が慌ただしく席を立ち、バラバラと出口へ向かう。何人もの黒い影が僕たちを通り過ぎる。
教授は立派な髭と赤ら顔もろとももういない。
僕は立ち上がり、伸びをした。君もつられて同じようにする。
「きっと、今二人は寝ているね」
「ああそうだね」
足元で他の生徒達が掬いきれなかった言葉達が、君の黒鉛の粉の取り合っている。
それらの声なき声を僕らは見て見ぬふりをする。
この先に連れてゆくことは出来ないことを知っているから。
「さあ、出ようか、今日は晴れているよ」
そして、僕らは2つの夢見るように眠る死体に別れを告げて、また違う扉に向かった。
173:風と木の名無しさん
07/11/01 23:45:31 ZlnVEHub0
ほしゅ
174:風と木の名無しさん
07/11/02 00:28:25 VeTaR/COO
>171-172
すてき(*´д`)
175:風と木の名無しさん
07/11/07 21:54:32 W93OE49D0
>>171-172
これはきれいなデムパww
176:風と木の名無しさん
07/11/07 22:37:31 QPR/Yjl40
(⌒ーr;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ―'⌒)
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177:土砂降り2/1
07/12/01 23:22:41 NpB4SezM0
電波っていえるかわかんないけど、保守がてら。
雨が、降っていた。
全てに対し、攻撃するかのように、叩き付けるような強い雨。
無意識に足が踏み出す。
傘なんてささない。
無差別に攻撃してくる大量の水に、その身を晒してみたかったから。
一瞬で、着ていた服がそれを吸い、とてつもない重量となる。
不思議と痛くは無かった。
強すぎる雨脚が、感覚を麻痺させたのかもしれない。
顔を上げ、空からの攻撃をまともに受ける。
もし、この雨が誰かの痛みを具現化したものであったのなら、自分が今やっているこれは、自殺行為にも為りえるんだろうか
(そんなこと、あり得ないと分かっているけど)
いい加減重さに耐え切れなくなり、両膝をつく。
まとわりつくような重みは、人間の感情に酷似しているように思えた。
178:土砂降り2/2
07/12/01 23:34:56 NpB4SezM0
もし、これが特定の人間、例えば彼の感情を表しているものだとしたら。
俺は、それを甘んじて受け入れることが出来るだろうか(馬鹿らしい)
(それによって受けた痛みが、未だ尚癒えていないとゆうのに)
ゆっくりと目を閉じ、全身から力を抜く。
自分の体温が今、普段のそれより明らかに低いことは、容易に想像がついた。
いっそのこと、このまま眠ってしまえたら、と思う。
(この哀しくも優しい雨は、俺の存在を受け入れてくれるだろうか)
誰かが、呼んでいる声がした。
その声は、俺のよく知っている、知りすぎている声。
(それが誰かなんて分かり切っているのに)
行かなくちゃ、と頭の隅で考え、そこで自分の体が動かない事に気付く。
徐々に、だが確実に強くなっていく雨の中で、このままの状態の
俺を見つけたら、奴はどう思うだろうかとぼんやり考えた。
(まるで、彼がここまで来るのが当然というように)
呼び声が驚いたようにはね上がったのを聞き、見つかったのだと理解する。
それと同時に、完全に力の抜けた自分の体が、くずれ落ちた事が分かった。
(結局、俺は無力なんだと突き付けられた気がした)
楽しかったー。
お目汚しすいませんでした。
179:風と木の名無しさん
07/12/03 22:13:31 /kpyFHC50
ナンバリングミスった・・・orz
すんません
180:対等な関係
07/12/05 22:02:59 hi0MdSFX0
彼のいのちは、この手に。
握り潰してやろうか、といつも思う。
その衝動をどうにか耐えてるのは、退屈を感じたくないからだろう。
彼が死ねば、きっと俺も死ぬ。彼が俺の心臓を握り潰さずとも。
そういった意味では、彼も俺が死ねば死ぬのだろう。この手に力を込めずとも。
彼と俺は対なのだ。
運命が望まずとも、彼と俺は対なのだ。
だから、
彼は俺の心臓を持って生まれ、
俺は彼の心臓を持って生まれた。
確かな鼓動、重み、ぬくもり、…あぁ握り潰してやろうか。
口中に苦味が広がり、手の中の心臓を軽く握った。
ドクン、とまるで答えるように心臓が震えた。
181:電波王 ◆DD..3DyuKs
07/12/08 14:04:20 jeRZlGcT0
ちんこ
182:風と木の名無しさん
07/12/13 22:23:36 sfmXmsAs0
>>180
完結してるの分かるのに続きを期待してしまう