07/02/17 13:46:16 XD0bUE3H0
ものに動じず常に冷静沈着と評される田村だが、これには耳を疑った。
人が、それも自分の知っている者が陵辱される場面など、見物したいとは思わない。
いつも怜悧に取り澄ましている田村の顔に動揺が浮かんだ。義純も愕然としている。
篠原はそんな二人を見て楽しそうに笑っていた。
「どうぞ、田村さんはそこに控えていてください。…さ、水原さんはこちらへ」
義純は半ばパニックになって息を乱しながら田村と篠原を交互に見た。
「し、篠原さん、あの、田村はもう…」
「いいから水原さん、こちらにいらっしゃい。さあ」
「でも、でも、あの」
「水原さん」
少し厳しさを滲ませた篠原の声に、義純はびくりと体を震わせた。
もう義純は完全に篠原の支配下に入っている。だがそれも今さらだと田村は思う。
篠原の甘言に乗せられて義純が無軌道に商売を捻じ曲げていったあの時既に、
会社そのものが罠にかかっていたのだから。
そして今ここに同席させられる自分もまた罠にかかった馬鹿だと認めざるを得ない。
田村が黙って腰を下ろすと、義純も観念しておずおずと篠原の元にいざり寄った。
だが50センチ離れた場所で膝が止まった。視線を落としたまま震えている。
篠原は手を伸ばして義純のネクタイを掴み、ゆっくりと引いた。
義純が顎を突き出す格好で篠原の方に引きずられる。
―犬。
的確な連想だと田村は思った。