07/08/17 11:34:10 lQGFo81r0
ガタ、ガタン
「げ。停まった?」
「だな」
「しかも電気も消えたって事は停電?」
「だろうな」
「げー。よりによってこんな暑いときに君と閉じ込められるなんて
……ツイてないな僕」
「テメェの脳内には『言わぬが花』って言葉が無ぇみてーだな」
「別に君が嫌いってワケじゃないよ……ただ、ニオイがさぁ」
「悪かったな、汗臭くて」
「逆だよ逆。君に汗臭いだろう僕のニオイを嗅いで欲しくないんだよ」
「自意識過剰だな。どうせふたりで閉じ込められてんだ。お互い様
ってもんじゃねーのか」
「いや、何故かは知らないけど、僕は常に君からイイニオイがする
ようにしか感じられないから」
「……ちなみに俺もそうなんだが」
好きな人からは 常に良い匂いがするらしいという説を思い出した
その途端に電気と空調が戻り、エレベーターが動き出す。
僕は壁の方向を見ることで火照った顔を彼から隠し、彼の匂いを
余さず吸い込もうとする空調に少し、嫉妬した。
背に目なんて付いていない僕だから、その時彼が僕に向かって
腕を伸ばそうか悩んでいたことを知るのは、ずっと後のこと。