モララーのビデオ棚in801板22at 801
モララーのビデオ棚in801板22 - 暇つぶし2ch2:風と木の名無しさん
06/12/19 07:45:04 hK+lX5Gl0
1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です
書き込むネタはノンジャンル。 801ネタであれば何でもあり。
たとえばこんなときにどうぞ。

  どこに投稿すればいいのかわからない‥‥
   ・ネタを作ってはみたが投稿すべき既存のスレが無い。
   ・投稿すべきスレがあるのかもしれないけど、よくわかんない。
   ・クロスオーバーのつもりなのだが各スレ住人にウザがられた。
   ・みんなの反応を見たうえでスレ立てるべきかどうか判断したい。

  投稿すべきスレはあるが‥‥
   ・キャラの設定を間違えて作ったので本スレに貼れない。
   ・種々の理由で、投稿すると本スレが荒れそう。
   ・本スレに貼る前にあらかじめ他人の反応を知って推敲したい。
   ・本スレは終了した。でも続編を自分で立てる気がない。

  ヘタレなので‥‥
   ・我ながらつまらないネタなので貼るのが躊躇われる。
   ・作り出してはみたものの途中で挫折した。誰か続きおながい!

迷ったときはこのスレに投稿してね。
ただ、本来投稿すべきと思うスレがある場合は
それがどのスレで(ヒントで充分)、しかしなぜこのスレに貼ったのか、
という簡単なコメントがあるとよい。無いとカオスすぎるからね。

ナマモノは伏せ字か当て字を推奨。
それ以外は該当スレのローカルルールに沿うか、自己判断で。

3:風と木の名無しさん
06/12/19 07:46:35 hK+lX5Gl0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

4:風と木の名無しさん
06/12/19 07:47:17 hK+lX5Gl0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
とりあえず用意したテンプレ。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

5:風と木の名無しさん
06/12/19 07:47:56 hK+lX5Gl0
携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

6:風と木の名無しさん
06/12/19 07:48:26 hK+lX5Gl0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________

7:風と木の名無しさん
06/12/19 07:54:39 hK+lX5Gl0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)

8:風と木の名無しさん
06/12/19 09:06:39 0ZpGUK8T0
>>1
乙です つ旦~
一応追加要請あったのでこれも。

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

9:風と木の名無しさん
06/12/19 09:08:22 9TGXzN+F0
>1乙
前スレのURLが20のURLになっているので、こちらを貼っておきます。
URLリンク(sakura03.bbspink.com)

10:雑談スレ416
06/12/19 12:15:51 UZ9nYqBAO
一乙!助かりましたありがとうー


11:numb*3rs 工ップス兄×弟 続き
06/12/19 21:48:34 BccinVL00

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  numb*3rs 工ップス兄×弟の続きだって
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  1さんスレたて乙!
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

>1さんオツカレ!私も立てようとしましたがアクセス規制で駄目だったので
困ってました。本当にありがとう!
そういうわけでnumb*3rs兄弟やおいの続きです。今回は中編にあたります。
コメントくれた方々ありが㌧!ラストまで楽しんでもらえるといいな

12:numb*3rs 工ップス兄×弟 10
06/12/19 21:50:51 BccinVL00


 最近のチャ―リーはおかしかった。といっても、ガレージに何日間もこもって数式を解き、
誰とも口を利かなかったりするわけではない。チャ―リーは普通に生活をし、父親と一緒に食
事を摂り、大学にもきちんと通っているようだった。ただト゛ンへの態度がおかしいのだ。
 例えばト゛ンのアパートに二人でいるとき、前はよく、おずおずと、しかし積極的にト゛ン
の身体に触れてきたのに、最近は妙によそよそしくなった。表情もどこか暗く、言葉も少ない。
キスやセックスも躊躇いがちで、行為への迷いが見える。ト゛ンはそのことに気づき、それが
自分の気のせいなのかどうか、注意深く考えた。ト゛ン・工ップスは捜査官で、人を観察し、
その人物の真意を読み解くことが仕事の一つだ。だからト゛ンは自分の洞察力には自信があっ
た。そして優秀な捜査官であるト゛ンは、弟を観察した後、一つの結論に達した。チャ―リー
は前ほど自分との関係に乗り気ではない。
 「チャ―リー、最近どうなんだ?」
 ト゛ンのアパートで二人で食事を摂った後、ト゛ンは弟に聞いた。チャ―リーはちょうどシ
ャワーを終えて寝室に入ってきたところだった。このままでいると抱き合うことになるだろう。
だがチャ―リー自身がそれほど望んでいるわけではないようにト゛ンは思えたし、そうだとし
たらただの惰性でセックスすることになる。ト゛ンとしては惰性で実の弟とセックスするよう
なことは避けたかったので、彼はさりげなく弟を探り始めた。
 「……どうって?」
 濡れた巻き毛をタオルで拭きながら、バスローブ姿のチャ―リーが怪訝そうに問い返す。チ
ャ―リーが着ているバスローブはト゛ンのもので、また勝手に人のものに触れたなと思いなが
らも、ト゛ンは手を伸ばしてその襟元を直してやった。「お前の生活だよ。アミー夕とはどう
なんだ?上手くいってるか?研究は?」
 アミー夕の話をすると、チャ―リーは動揺したように瞳を動かした。だが数秒後にぎこちな
く微笑んで頷いた。「上手くやってるよ。研究も……大学での人間関係も」
 「そうか」
 

13:numb*3rs 工ップス兄×弟 11
06/12/19 21:52:40 BccinVL00
 ト゛ンはそう言い、肩を竦めた。チャ―リーはベッドの上のト゛ンの隣に腰を掛け、落ちつ
かなげに自分の髪を撫で付けたりしていた。ト゛ンはぼんやりとそれを眺めていた。チャ―リ
ーには他の恋人ができたのだろうか?だからト゛ンのことがもうそれほど必要なくなったのか

 いつかチャ―リーは自分にとってト゛ンは基点なのだと言った。今後誰かと深い関係を結べ
たとしても、それがト゛ンがいるからだと。それはきっと事実なのだろう。だが、チャ―リー
が成長し、他の誰かとの関係も成熟するにつれて、ト゛ンとの行為が必要なくなったとしたら
?ちょうど子供が親から離れるように。ト゛ンへの愛情が薄れたわけではなく―ト゛ンにも
それはわかっていた。何故ならチャ―リーは行為を積極的に求めないにせよ、ト゛ンには会い
にくるからだ―ただ求める関係が変わったとしたら?それは自然なことではないか?
 そしてそんな日がいつか来ることを、自分自身はどこかで知っていたのではないだろうか?
ト゛ンはそう考えながら、まだ傷が完全に癒えていない右肩を動かして、チャ―リーの髪を撫
でた。濡れた柔らかい感触。ト゛ンはその感触に慣れた自分の指先を嫌悪しながらも、一方で
その感触をいとしんだ。チャ―リーはびくりと肩を揺らし、視線を上げた。「ト゛ン?」
 「チャ―リー、アミー夕や誰か俺以外の人間との関係が上手くいってるなら、そう言ってい
いんだ」
 「……何?どういう意味?僕には―」
 髪を撫でる手を振り払いながら、チャ―リーが問うた。「何なの?突然」
 「お前は最近、そんなに望んでいないように見える。……行為を。俺たちがしているような
ことだよ。誰か別に相手がいるなら、それでもいいんだ。言えよ。兄弟だろ?」
 ト゛ンの言葉にチャ―リーは動きを止めた。そして口を微かに開けたままト゛ンを見返した。
しばらくしてチャ―リーは唇の片端だけを上げた。「兄弟だから?」
 

14:numb*3rs 工ップス兄×弟 12
06/12/19 21:54:07 BccinVL00
 ト゛ンは両腕を軽く広げてみせた。
 「どうなったって俺たちは兄弟だし、お前は俺の弟だよ。関係が壊れるってことはない」
 「―だから、だから他に相手ができたなら言えって?ト゛ン、何なの?突然。僕にだって
その気になれないことはある。無神経な兄といるとね!それなのにト゛ンは別の相手がいるか
らだと思ってるの?ト゛ン、原因は僕にあるんじゃなく、自分にあるって考えたことはないの
?」
 「―原因?俺が?」
 思いも寄らない言葉に驚いていると、チャ―リーは立ち上がって苛々と手を振ってみせた。
「『別に相手がいるならそれでいい』なんて兄貴ぶって言わないでよ。……あまりにも、あま
りにもひどいよ」
 「兄なんだから仕方ないだろ?」
 半ば怒り、半ば呆れて言うと、チャ―リーはかぶりを振った。聞きたくない、というように。
彼はト゛ンの言葉を無視して早口で続けた。「本当にト゛ンは僕を傷つける。―正直に言う
と、僕だって他の相手を見つけたいよ。ト゛ンじゃない相手がほしい」
 その言葉にト゛ンは思わずかっとなって言った。「ほらな!お前は嫌になったんだよ。こん
なまともじゃない関係が。だから、それならそう言えばいいじゃないか」
 「―僕が嫌なのは、これがまともじゃない関係だからなんかじゃない!そう思ってるのは
ト゛ンだ!僕が嫌なのはト゛ンが僕を必要としてないことだよ。ト゛ンにとって僕はなんなの
?セックスするのは僕のため?僕を対等に扱わないくせにト゛ンは僕にキスしてセックスして、
―僕を支配してる。そのくせいつでもそれが終わってもいいって態度だ。ひどいよ。フェア
じゃない」
 チャ―リーは叫び、それから唇を噛んだ。ト゛ンは答えに困り、唇をただ動かした。チャ―
リーは自分の手が震えていることに気づいたのか、もう片方の手でそれを押さえつけるような
仕草をした。「その怪我―肩の怪我だってそうだよ。どうして平気な振りをするの?まだ痛
むんだろ?なのにト゛ンは僕に助けを求めない。このアパートの家事だって、ト゛ンの怪我が
治るまで手伝ったっていいんだ。なのに、ト゛ンはちっとも―」
 

15:numb*3rs 工ップス兄×弟 13
06/12/19 21:55:38 BccinVL00
 チャ―リーは言いよどみ、それから手のひらで口を覆って目を瞑った。「……誰にでもそう
なの?それとも相手が僕だから?……僕は、僕は少しうぬぼれてた?FBIの捜査に関るよう
になって、ちょっとはト゛ンに必要とされるようになったって思ってた。でも違う。違うよね
?ト゛ンは僕の才能が役に立つ場合もあるって知っただけだ。僕のことなんて必要としてない。
僕の才能だって……僕より役立つ人間がいるならそれを使う。犯罪社会学者とか。求められて
るのは僕自身じゃない」
 一人で勝手に捲くし立てて、一人で結論にたどり着いたらしい弟を、ト゛ンは苛立ちながら
見つめていた。ト゛ンは落ち着けと自分に言い聞かせながら、低い声で返した。
 「仕事よりお前への愛情を優先させるわけにはいかない。そんなの当たり前だ。お前だって
俺を共同研究者にはしないだろ」
 それを聞いてチャ―リーはあの、神経質な笑いを喉から響かせた。
 「そうだよ。僕はト゛ンを共同研究者にはしない。ト゛ンは数学者じゃないし、第一僕の共
同研究者になることなんて求めてもいない。逆に僕はト゛ンのパートナーになりたいから、自
分の能力を使って捜査に協力してる。求めるのは僕で、受け入れるのはト゛ンだ。いつもね。
……でも一度くらい僕自身を必要とされたいよ」
 チャ―リーはそう言うと俯いた。ト゛ンは戸惑いながら彼に向かって手を伸ばしかけたが、
かぶりを振って拒否された。以前恋人に、あなたは自分で何でもやりすぎる、と言われたこと
を思い出した。自分ですべて解決しようとして、仕事も完璧にやりとげようとするから、私生
活を簡単に後回しにするのだと。ト゛ンはそれを自分が義務感が強いせいなのだと思い、恋人
の恨み言を受け逃していた。だが今回は弟の言葉を簡単に受け流す上手い方法が思い浮かばず、
ただチャ―リーを見ていた。
 肩がまだ微かに痛む。確かに傷を抱えたままで洗濯や料理や掃除をするのは大変ではあった。
けれどもそもそも働きづめで、チャ―リーが会いにくるときしかアパートには帰らないくらい
だし、ト゛ンは自立した人間として自分で何でもやりたかったので、自分で家事もやった。そ
れだけのことだった。

16:numb*3rs 工ップス兄×弟 14
06/12/19 21:56:48 BccinVL00
 「……僕が必要だって言ってよ。ト゛ンの人生に必要だって言って。一度でいいから」
 チャ―リーがぽつりと言う。ト゛ンはまだ迷っていた。必要だといえば、チャ―リーはまだ
悲しそうな目をしながらも、ト゛ンの傍らに来て濡れた柔らかい巻き毛ごと頭を預けてくれる
だろう。だがト゛ンには言えなかった。何故なら何も、誰も必要としないことがト゛ンの主義
だったからだ。小さな頃からそう自分に言い聞かせて生きてきたのだ。一人で何でもやってみ
せる、と。
 部屋の中が静まり返る。暫くして、沈黙を打ち破ったのはやはりチャ―リーだった。
 「―僕は自分にとって必要な人に、同じように必要とされたい。……僕に必要なのはト゛
ンだけど、ト゛ンはそうじゃないなら他の相手に逃げたいよ。……でもみつけられない。ト゛
ンの代わりはいない。―決めた。僕は今度こそP≠NP問題を解く。それくらいしか代わり
はみつからない」
 ト゛ンは何も言い返せなかった。でも何かしなければ、と思った。弟を引き留めるために。
だから彼は立ち上がり、まだ迷いながらもチャ―リーの肩を抱き寄せた。チャ―リーは始め抗
うようなそぶりを見せたが、すぐに大人しくなってキスに応えてきた。ベッドに押し倒してバ
スローブを剥ぎ取る頃には諦めきったように従順になり、ト゛ンの首に腕を巻きつけて愛して
いるとか細い声で言った。ト゛ンが怪我をしたり、突然死んでしまうことを考えると気が狂い
そうになるとも。チャ―リーを抱いた後、快楽のせいなのか泣き疲れて眠る彼を見ながら、ト゛
ンは自問した。これは卑怯な振る舞いなのか?チャ―リーの言うとおりフェアではないのだろうか?
 

17:numb*3rs 工ップス兄×弟 15
06/12/19 21:59:17 BccinVL00
 ト゛ンは自分がチャ―リーとの行為に慣れてしまったことに不意に気づいた。そしてチャ―
リーにも慣れさせてしまったことに。それを一番恐れていたというのに、今の彼はチャ―リー
を宥めるにも慰めるにも、いつも彼を抱いている。ト゛ンはチャ―リーに他の相手が見つかっ
たら、大人しく自分はそれを受け入れ、もっと別の、まともな形で弟を愛そうと思っていた。
でも他に方法を知らないということに、チャ―リーの寝顔を見ながら唐突に気づいた。何故な
ら「まとも」な兄弟がどんなものなのかを知らなかったし、ト゛ンはチャ―リーの共同研究者
になれる数学者でもなかったからだ。だからこうして抱き合うことでしか満たされない。手元
に弟を引き留めておくために、この行為が不可欠なのだ。
 ト゛ンは愕然としながらも、眠る弟を見つめていた。この弟には自分の気持ちなどわからな
いだろうと思った。




 大学に通うほかのすべての時間を、チャーリーはガレージにこもって過ごし、P≠NP問題
に取り組み始めた。今回はちゃんと父親に研究に没頭したいということを説明し、可能な限り
食事も摂ったのでアランは止めなかった。止めたのはト゛ンだ。ト゛ンは仕事帰り、深夜に実
家にやってきては、俺のせいでこんなことをするならもうやめてくれと何度も言った。だがチ
ャ―リーは頷かず、代わりにト゛ンに説明した。自分には数学の才能しかなく、それくらいで
しか人を惹きつけられないと。「僕は数学の才能だけでちやほやされてきた」。チャ―リーが
言うと、ト゛ンはそれは違うと言い返した。
 そこでチャ―リーは肩を竦めた。「そうだね。ト゛ンは違う。僕の才能になんか興味はない」
 だから長いこと不安だったとチャ―リーは告白した。ト゛ンはチャ―リーの数学の才能には
興味がないし、チャ―リーにはそれしかない。だが事件の捜査を通してト゛ンを振り向かせ、
引き止めておくことに成功するには、やはり数学的能力が必要だったのも皮肉だと。

18:numb*3rs 工ップス兄×弟 16
06/12/19 22:00:14 BccinVL00
 「だけどこのP≠NP問題はまた別だよ。僕がこれを解こうと解くまいと、ト゛ンにはどう
でもいいんじゃない?それは僕がよく知ってる。それなのに僕がこれを解こうとするのは、僕
自身のためだよ。僕はもう30歳で、数学者としてはピークと言われる年齢なんだ。この間の
学会でも言われたよ。今回の研究は素晴らしい、流石だ、だけど例のあれはどうしたってね。
P≠NP問題さ。僕くらい才能があるなら、あれを解くべきだってね。それでこの間思ったん
だ。もし事故や何かで―僕を必要としてないト゛ンの心変わりで―ト゛ンを失っても、P
≠NP問題を解ければまだ慰めにはなるって。僕は周囲から認めてもらえるし、歴史に名前を
刻める。ト゛ンがどれだけ僕を無視しても、僕自身にきっと何かが残るはずだ。……今までも
ずっとそうだった。母さんが死んだときも、事件でしくじって死者を出したときも、P≠NP
が解ければ許してもらえて、僕も精神的に安定できる気がしてた。だけど実際には僕を引き上
げてくれたのは、父さんやト゛ンだよ。……ト゛ンなんだ。僕はこれまで、P≠NP問題は解
けなかった。でも許されるような気がしてた。ト゛ンのおかげで。だけど、そのト゛ンに必要
とされてないなら、せめてP≠NP問題を解きたい。そして自分の価値を感じたいんだ。……
それに考えてる間は、何も感じずに済むしね」
 音を立ててチョークで黒板に数式を書きながら言い、チャ―リーは降参するように両手を広
げた。「僕のカードはこれで全部。手の中にあるものは全部見せたよ。さあ、ト゛ンは何を返
してくれるの?」
 そう問うとト゛ンは疲労の滲んだ表情で眉間を擦った。ため息を吐くとト゛ンは手を伸ばし、
チャ―リーを抱き寄せてキスをしてきた。チャ―リーは一応型どおり抗い、それから彼と寝た。
ト゛ンはチャ―リーを抱いた後、何も言わずに帰っていった。ちょうど最初に彼らがガレージ
で寝たときのように。チャ―リーはそれを見届け、その後はまた服を着て数式に取り組んだ。
 

19:numb*3rs 工ップス兄×弟 17
06/12/19 22:01:38 BccinVL00
 何度かそういうことを繰り返した。ガレージでチャ―リーを抱くト゛ンの手はいつも荒っぽ
くて、少し暴力的ですらあった。でもチャ―リーは抗うつもりなどなかった。何故なら相手が
ト゛ンだからだ。それなのにガレージで抱きすくめられると、チャ―リーはいつも抗うふりを
した。だが本当はそれすらも過程に組み込まれていて、最後には自分から望んで彼に貫かれた。
ト゛ンはそんなチャ―リーに苦しげな目を向け、チャ―リーは抱き合いながら、彼を失くすと
きのことを考えた。
 一年ほど前、最初にガレージでト゛ンと寝た次の朝、チャ―リーは自分がト゛ンを汚したと
思った。完璧な形で円を描くト゛ンという数式を自分のものにしたくて、その結果正しくない
ものにしたと。本当にそうしてしまった、とあるときチャ―リーは思った。何度も繰り返した
ようにガレージでト゛ンに乱暴に抱かれ、きっと以前ならト゛ンはこんな抱き方はしなかった
と感じたときだ。きつく掴まれた手首や足首にはドンの指跡が残り、冷たいガレージの床に強
く押さえつけられたせいで身体のふしぶしが痛んだ。しかもその抱かれ方にチャ―リー自身は
満足していた。ト゛ンがチャ―リーをなんとかまともな生活に引き戻したくて、こういう手段
を取っているのだということはわかっていた。でも彼は少しは必要とされているような気にな
れて、それが錯覚だとしてもト゛ンと寝ている間は幸福だった。
 「ト゛ンが好きだよ。死ぬほど好きだ。だから失う準備をしてる」
 ある晩、ガレージで行為が終わったあと、チャ―リーはト゛ンの手を取って、指先を舐めな
がら言った。野球のバットを握り、銃を持ったかと思えばチャ―リーの髪を梳き、そして本当
に稀だがピアノを弾くこともある指。この指もト゛ンの短髪も、小さな頃から彼のすべてが好
きで、これが自分のものにならないと受け入れるなら、それに耐えられるような準備をしなけ
ればならない。ト゛ンの肩の傷はほとんど完治しつつあったが、チャ―リーはまだそれを直に
見つめられなかった。その代わり指を傷跡に押し付け、ト゛ンが微かに痛みで眉を顰めるのを
見て、甘い苦痛を覚えた。

20:numb*3rs 工ップス兄×弟 18
06/12/19 22:03:02 BccinVL00
 「チャ―リー、いい加減にしてくれ。こんなことはやめよう。もう十分だろ?」
 ト゛ンが掠れた声で言う。チャ―リーはかぶりを振った。まだ十分ではなかった。「駄目だ
よ。僕はまだ満足してない。問題もまだ解けてない」
 解けたら解放してあげるよ。囁いてト゛ンの耳を噛むと、ト゛ンは疲れを伺わせる声で呟い
た。
 「―俺はお前が望んでいるようにはなれないよ。チャ―リー、無理だ」
 チャ―リーはその言葉に驚いてト゛ンを見つめた。ト゛ンは自分の傷口を擦りながら、静か
に繰り返した。「俺はお前が望むようにはきっとなれない。お前が望んでいるような兄じゃな
いんだ」
 その言葉はどこか奇妙に聞こえた。これまで相手の期待に答えられないと零すのはいつもチ
ャ―リーだった。だが今、ト゛ンは―チャ―リーにとってはほとんど完全とも言えるト゛ン
が―チャ―リーの望むようにはなれないと言った。チャ―リーはうろたえ、ト゛ンから身体
を離して言葉を探した。
 「どういう意味?ト゛ンはト゛ンだよ。僕は何も望んでない」
 そう言うとト゛ンはかぶりを振った。そして周りに散らばった服を集めながら答えた。「い
いや。お前は俺が変わることを望んでるんだ。最初から―ガレージのあの晩のもっと前から
そうだった。お前はわかりあえる兄がほしいんだ。数学をやっていて、自分の話が通じて、一
緒にいても不安にならないような。でも俺はそうじゃない。俺はお前が望んでいるようにはな
れないし、お前のことが必要だとも言わない。絶対に。何故かわかるか?多分それはお前が俺
を必要としていないからなんだ。小さい頃からずっとそうだった」
 淡々としたト゛ンの言葉を理解するのに暫く掛かった。その間にト゛ンはシャツに袖を通し、
ズボンをはいて、ネクタイを締めていた。チャ―リーが誕生日にあげたネクタイだ。そんなこ
とに今更気づいて、ぼんやりとそのネクタイを眺めながらチャ―リーは唇を動かした。「……
意味がわからないよ」

21:numb*3rs 工ップス兄×弟 19
06/12/19 22:05:19 BccinVL00
 ト゛ンはそれを聞いて眉を上げてみせた。そして簡単なことだ、という表情で説明した。
 「お前には俺がいなくても数学がある。そうだろ?P≠NPがそのいい例だよ。否定するな、お
前自身がそう言ったんだから。お前はいつもそうだった。俺がいなくても数学の問題さえあれ
ば幸せで、俺は兄としてお前にやれることなんか何一つない。……このクソみたいな行為のほ
かには。小さな頃からきっとそれがわかっていたから俺は、自分で何でもやろうと思ったのさ。
他の恋人にだってそうだよ。あなたは自分ひとりで何でもやろうとするってよく言われた。仕
事の成功を追うばかりで、私を必要としてないって。でも俺はそうやって育ったんだから仕方
ない」
 ト゛ンはそう言って腰に下げていた銃を装着し直すと、肩を竦めた。「お前は自分には数学
の才能しかないって言ったけど、それが何なんだ?俺はお前のように特別な才能もない。野球
もやめた。自分で何でもできるようにならないと、生きていけない。母さんや父さんだって、
そうでもしないと安心させられなかった」
 「ト゛ン」
 チャ―リーが震えた声で呼びかけると、ト゛ンは片手でそれを制した。「そんなに深刻な話
じゃない。お前のせいでもない。ただお前が俺といていつも不安で不満足なのは、求めている
ものの原型がそもそも俺じゃないからだよ。それだけだ」

22:numb*3rs 工ップス兄×弟 20
06/12/19 22:06:05 BccinVL00
 そう言い捨ててト゛ンは静かにガレージを出て行った。チャ―リーは呆然としていた。追い
かけなければ、と彼は思った。追いかけてそれは誤解だ、自分に必要なのはト゛ンなのだと言
わなければいけないと思った。だがあまりにもト゛ンの言葉が衝撃的で、チャ―リーは思考が
追いつかないのを感じた。これまでいつもト゛ンは完璧な存在で、もし乱れたものになったと
しても、それはガレージで初めて彼と寝たあの晩以来、自分のせいでそんなふうに変わってし
まっただけだろうとチャ―リーは思っていた。だが、もしそうでなかったとしたら?チャ―リ
ーは壁一面に掛けられた黒板と、そこに記された数式を見た。もしト゛ンが初めから完璧な数
式ではなかったとしたら?それはチャ―リーにとって世界の根本を覆すようなことだった。も
しそうならすべての式を立て直さなければいけない。
 チャ―リーは愕然としてガレージの中を見回した。彼は恐ろしくなった。世界と自分との不
調和を不意に強く感じ、そして次の瞬間、ト゛ンも同じように感じている可能性を考ると、世
界がぐらりと揺れた。

23:numb*3rs 工ップス兄×弟
06/12/19 22:08:52 BccinVL00
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | [][] PAUSE      | |
 | |                | |           ∧_∧ 中編オワリ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

新スレをたててもらって早々にスペース占領しちった
あと一回投下したら終わるのでご容赦を。

24:風と木の名無しさん
06/12/19 23:32:54 6gBu2Pqq0
後編wktkしながら楽しみにしてます。

25:風と木の名無しさん
06/12/20 00:25:33 5mOCKHJ60
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

【ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS エンドロールの後】

「っとに、テメーはメカにしか興味しめさねぇよなぁ!」
 ゴムボートの上、沈んでいった機龍に敬礼を取る中條に、秋葉が叫ぶ。
「如月もかわいそうだぜ。なんでこんな男に引っかかっちまったんだか」
「は? 如月? 彼女は関係ないだろ?」
「これだからなぁ!」
 呆れ返った声でいい、秋葉は中條にキツイ視線を当てた。
「お前さァ、オレがこんなこと考えてるなんて、思いもしねぇんだろ」
 不安定な状態であることを感じさせない動きで、秋葉は中條に近寄った。
「あき……ッ」
 不思議そうに名前を呼ぶ唇に、噛み付いた。


26:風と木の名無しさん
06/12/20 00:26:14 5mOCKHJ60
|「んんッ!!」
「暴れるなよ。落ちるぜ?」
「お前ッ! 何考えてるんだよッ!!」
 ゴムボートの上であることを盾に脅されて、無理やり振り払うこともできない。
 こんな場所でなければ、押し退けて逃げ出せるのに。
「何って……ナニ……?」
「……そんなヤツだったのかよ、お前」
 悪びれる気配もない秋葉に、脱力する中條である。
「最初っからオレはお前のこと気にしてたのに。お前、全然気付かねぇんだもんなぁ」
「正気か?」
「本気だ」
 どっぷりと深い溜息が零れ落ちる。
「なんだよ。あっつい抱擁交わした仲だろう?」
「緊急事態だったからな」
「つれねぇな。ま、いいや。陸に戻ったら、イイコトしようぜぇ」
「……遠慮する」
 太平洋の海に、秋葉の笑い声が響いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


27:風と木の名無しさん
06/12/20 01:16:09 cayx9qZh0
>>23
チャーリーが愛しいです。
次回も楽しみにしています。

28:飛父飛
06/12/20 17:13:11 8p5+CHFJ0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  飛父飛 スンオサを応援するミナカタの話だモナー
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  デッキ壊れてまだ2回しかDVDを見れていないので
 | |                | |             \ 色々間違っているかもしれないカラナ!
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 原作未読のため、映画設定だけだゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

29:飛父飛 1/3
06/12/20 17:14:03 8p5+CHFJ0
おや~?
なーにを立ち止まってんのかなあの子は。
心配して来てみれば、案の定ですね。
まったく手間のかかる子なんだから。

黙って隣りまで行ってやれば、ちらりと俺を見て、また少し寂しそうな笑顔で鈴木さんを見つめる。
そのギューっと握った右手には例の小石ですか?
どうでもいいけど…そんなに握ったら砕けちゃうんじゃないの?
それにしても、これはまたずいぶん綺麗な光景だな…
「…鈴木さんの翼、でかいね。」
「……あぁ。」
自分から飛んでいってしまった、と、思ってるんだろう。この子は。
もう二度と自分の元には戻ってこないって。元々、自分のものじゃなかったし…って。
必死で気持ちを整理してるんだろう。…まだ無理だって。
きっと自分で飛ばしたくせに。
お前のそういう優しさとか不器用な所は、あの人もわかってるよ。
でもお前の気持ちには気付いて無さそうだけどね。っていうか気付いてないね。
あの人鈍そうだもん。高校生の俺らよりよっぽど純粋だし。
我らがヒーロー。寸心のヒーロー。兼、初恋相手…か。
寸心には幸せを味あわせてやりたいんだけどね。
しょうがないなぁ。面白そうだしなぁ。

30:飛父飛 2/3
06/12/20 17:14:37 8p5+CHFJ0
「鈴木さん、見えなくなっちゃったね。」
「……。」
寸心は右手を握りしめたまま下を向いた。
そして肩でふっと息を吐くと、踵を返して歩き出した。ほんと、聞き分けのいい子だね。
別の名を、素直じゃない子。
「…鈴木さん、明日菓子折持って来るに5000ー円」
スタスタと前を歩いていた寸心がすごい勢いで振り向く。コワイよ?その顔。
「いや、今日の夕方かな。」
ニヤリと笑えば、困惑した目がキョロキョロ動く。コワイよ?その顔。
「もう来ねぇよ…」
吐き捨てるように言い、またスタスタと歩き出す。
ところがそうでもないんだな~
だいたいわかりそうなもんだけどなぁ。あの律儀な鈴木さんがこのままお礼も無く居なくなると思う方がおかしい。
お前は悲劇に慣れすぎなんだよ。
傷付かないように、先に最悪の事態を考えるんだろ?
俺、鈴木さんってお前のそういう所を変えてくれる人だと思うんだよね。
だってあの人天然だもん。お前が考えてる事なんか、全部笑顔で崩しちゃう人だろ?テヘッて言いながら。
きっとこの後春化ちゃんに会いに行って、よーし今日は家族で外食しよう~なんて話になって
あれっ財布が無いーあっ置いて来ちゃったーやだもーパパったらーって具合に呑気に来るよ。
…お前があの人に惚れるのは時間の問題だってわかってたよ。
策士ミナカタと呼んでくれい!

31:飛父飛 3/3
06/12/20 17:15:36 8p5+CHFJ0
俺は決戦前、山舌にカバンを手放すなと命じておいた。
鈴木さんは感情が高まってるからそれには気付かないだろう。
そして、まんまと上着だけ持って、彼は飛んでいった。

「カバンの中に財布とか鍵とか色々入ってたよ」
「………。」
寸心の目がまん丸になっている。あー面白い。
「取りに来るだろうね~ご丁寧に菓子折持ってさ~」
寸心の肩に慣れ慣れしく手を置くと複雑な顔をしたまま叩き落とされた。
「すあまとかだったら殴って良いからね」
「俺はいい」
「一番お世話した寸心が居なかったら鈴木さん泣いちゃうよ?」
「泣くかよ!」
「一回泣かせちゃった癖に」
「しらねーよ!!」
「鈴木さんは寸心に会いに来るんだよ」
わかりやすく寸心の時が止まる。
ほんと、手間がかかるんだから。
さっきからポケットの中に手突っ込んでさ。握ってんだろ?小石。
また寸心がスタスタと歩き出す。もう何も言わなくても大丈夫。
早歩きしていた寸心が、だんだん勢いをつけて走り出した。
…お前の翼もそのうち鈴木さんくらいでっかくなるよ。俺はもうそれもわかってるんだよ。
策士ミナカタと呼んでくれい!

32:飛父飛
06/12/20 17:16:58 8p5+CHFJ0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |                あまりのDVD萌えに
 | |                | |           ∧_∧ 休みを利用して過去ログ読んでいたら
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 辛抱たまらず勢い余って書いてしまいました。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

33:numb*3rs 工ップス兄×弟 続き
06/12/20 21:24:43 P7Up9ZkF0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  numb*3rs 工ップス兄×弟の後編
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  しつこかったけどこれでオワリ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ムダニナガカッタナ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

そんなわけでこれで終わります。
工ップス兄弟やおい話のラストです


34:numb*3rs 工ップス兄×弟 21
06/12/20 21:26:05 P7Up9ZkF0
 チャ―リーのあの瞳。ト゛ンは思い出しながら足早に家を出、すぐ側に止めてあった車の鍵
をポケットから取り出した。信じられないという目でチャ―リーはト゛ンを見た。ト゛ンの言
葉に傷つく余裕もないほど衝撃を受けて。きっとチャ―リーには本当に思いも寄らないことだ
ったんだろう、とト゛ンは思い、喉の奥から苦い笑いがこみ上げるのを感じた。これまでずっ
と、ト゛ンは不安定なチャ―リーを自分が支えなければいけないと思っていた。だが今になっ
てやっとわかったのだが、ト゛ンはただチャ―リーを支えたかったのだ。おもちゃの銃に見向
きもせず、ト゛ンとキャッチボールをしようとすることもない弟と一緒にいるとき、ト゛ンは
いつも居心地が悪かった。彼のためにできることが思い浮かばず、それならせめて自分はひと
りで何でもできるようになろうと思った。弟がいつか成長して自分の相棒になってくれる日が
こないのなら、自分が弟を必要とする日も来させるべきではないと思ったのだ。だからチャ―
リーが不安を抱えながらもおずおずとト゛ンに歩み寄ろうとし、彼に近づこうとするたびに、
チャ―リーに背を向け、彼の不安を強めた。だが心のどこかで期待も残っていて、チャ―リー
が自分のせいでますます不安そうになることに安堵していた。求められていることがそれを見
ればわかったからだ。そのことが自分でわかってしまった。
 「ト゛ン、待って……ト゛ン!」
 後ろからチャ―リーが掛けて来る。服のボタンも留めていない、忙しげな様子で、転びそう
になりながら追いかけてくる弟を、ト゛ンは振り向いて車の前で待った。チャ―リーは息を切
らしながら、ト゛ンの腕に触れて言った。「誤解だよ。とにかく誤解だよ。―どう言ったら
いいのかわからない。僕はただ……」
 「チャ―リー、俺たちはもう終わりだよ。わかるだろ?関係性がまともじゃないとか、そう
いうレベルの問題じゃない。俺は確かにお前に何も与えられない。俺自身の中にお前が求めて
いるものなんてないんだ。俺はずっと、お前が小さな頃から抱いてきた幻想につけこんでたん
だ」

35:numb*3rs 工ップス兄×弟 22
06/12/20 21:27:52 P7Up9ZkF0
 そう言ってト゛ンはチャ―リーの手をどけさせ、車のドアを開けた。チャ―リーは立ちすく
んでいた。車の座席に滑り込み、ドアを閉めようとすると、チャ―リーはドアを掴んでそれを
遮ったので、ト゛ンは危険な行為に眉を顰めた。一歩間違えばドアに手をはさんで怪我をさせ
るところだった。
 「チャ―リー」
 窘めると、チャ―リーの眉が動いた。チャ―リーはドアを掴んだままでいた。ドアを閉めら
れない。そう思ってト゛ンはため息を吐き、ハンドルに腕を置いた。「これじゃあ帰れない」
 「ト゛ン、誤解だよ。僕が求めてるのはト゛ンだ。他の兄なんかじゃない。ト゛ンだよ」
 早口で言う弟をト゛ンは目を眇めて見上げた。視線が合うとチャ―リーは動揺したように目
を泳がせた。「―どう言ったらいいのか本当にわからないよ。ト゛ン、ただ僕は、僕は考え
もしなかったんだ。ト゛ンがそんなふうに感じるなんて……僕はいつもト゛ンに求めるばかり
で、ト゛ンの気持ちなんて考えてなかった。謝るよ。でもこれだけは信じて。僕はト゛ンを愛
してる。ただ必要とされたかっただけなんだ。ト゛ンの隣にいる権利があるってずっと信じた
かった」
 チャ―リーはドアを握る手の力を強めた。それから俯き、小さな声で言った。「―ト゛ン
に不完全なところがあるなんて思いもしなかった。ずっと僕はト゛ン、―兄さんに憧れてた。
野球もできて友達もたくさんいて、父さんや母さんからも信頼されてて……周りに溶け込んで
た。そういうふうになりたかったし、こんな僕でもト゛ンといればそうなれると思ってた」
 ト゛ンはそれを聞いて腰を上げ、ドアを押して車から出た。チャ―リーはドアから手を離し、
不安そうにそれを見ていた。ト゛ンはドアに寄りかかるような姿勢で言った。「お前はお前で
いいんだ。俺がいなくても十分上手くやってるじゃないか。大学に友人もいるし、有意義な研
究もしてる。FBIでだって少しずつなじんでる。それは俺のおかげじゃない。全部お前自身
の力で、俺とは関係ない。俺がいなくてもお前はやっていけるよ。お前が気づいていないだけ
だ」
 

36:numb*3rs 工ップス兄×弟 23
06/12/20 21:29:46 P7Up9ZkF0
 それをただドンが認めたくなかっただけなのだ。ドンは全身に疲労を感じながら、弟を見て
いた。いつでも彼を手放そうと思えばそうできたのに、それをしなかったのはドンが望んでい
たからなのだ。ドンにチャーリーが必要なだけだった。ガレージでチャーリーを何度も無理や
り組み敷くうちに、そんなことは嫌でも自覚した。
 チャーリーはそれを聞いて、巻き毛ごと頭を振った。
 「でも―でも僕にはト゛ンが必要だ!どうしても必要だって思うんだ。理屈じゃないよ。
愛してるんだ」
 身体を折り曲げ、喉の奥から搾り出したような声でチャ―リーは言った。理屈屋のチャ―リ
ーに理屈じゃない、と言われて、ト゛ンは一瞬笑いそうになった。けれども笑わなかった。チ
ャ―リーは家の前の芝生に膝をつき、それでも上体をよろめかせながら言った。「……僕に数
学の才能があるから、ト゛ンはト゛ンが僕になにもできないって思ってたの?小さい頃から?」
 チャ―リーの言葉に、ト゛ンは迷ってから頷いた。するとチャ―リーはそれを見上げながら、
こぶしを握り締めて言った。「そうだよ、僕には数学が必要なんだ。そうやって生まれついた。
それは変えられない。P≠NPだって本当に解きたいよ。数学者としてのプライドが掛かって
る。―だけどト゛ンだって必要なんだ。どんなに不可解で不完全で数学的じゃなかったとし
ても、それでも僕の人生に必要なんだ」
 震える声を聞き、ト゛ンはそんな弟を見つめていた。チャ―リーの顔は夜目にもわかるほど
青く、彼が動揺していることはよくわかった。
 「―まともな関係を結べないんだ。チャ―リー、お前とだってそうだ」
 ト゛ンはチャ―リーを見下ろしながら、ぽつりと言った。チャ―リーは芝生を手で握り締め
ながら顔を上げ、それを聞いている。それを見てト゛ンはひどく無防備な表情だと思った。ど
うしていつもチャ―リーはそんな表情ができるのだろう?


37:numb*3rs 工ップス兄×弟 24
06/12/20 21:30:56 P7Up9ZkF0
 ト゛ンは車の鍵を手の中で弄びながら続けた。「キムやテリーとだってそうだ。彼女たちの
ことは愛してたけど、誰かを必要とするのが嫌だった。……だから別れることになったんだ。
母さんのことでアルバカーキから離れたからとか、そういう理由じゃない。本当は違う。彼女
たちがただ―お前も言ったようなことを俺に言って、俺はそれに答えられなかった。君が必
要だってどうしても言えなくて、そうすると聡い人間は離れていくんだ。不完全な関係だから。
お前だってそうだろ?」
 「……それは僕のせい?僕のせいで父さんや母さんの前で早くから自立しなきゃいけなかっ
たから?僕が数式に夢中で、ト゛ンと普通の兄弟みたいに遊べなかったから?全部僕のせいな
の?」
 チャ―リーは泣きながら言った。ト゛ンは答えに迷い、それから肩を竦めた。「……お前が
悪いわけじゃない」
 「―そして僕が自分をできそこないでまともじゃないと思ってるのは、ト゛ンのせいなん
だ。きっとそうなんだね。違う?」
 頬をつたう涙を手で拭ぐい、チャ―リーは睨みつけるように見つめてくる。ト゛ンはまた躊
躇った後で、やはり頷いた。「そうだな。でもそれは俺のせいだ。……俺はきっとわかってい
てお前を傷つけてきたんだから」
 そう答えて、ト゛ンは手を伸ばしてチャ―リーの腕を引っ張った。チャ―リーは促されるま
まに立ち上がりながら、ぼんやりとした表情で言った。「僕もト゛ンもお互いのせいで不完全
なんだね」
 それを聞いてト゛ンはチャ―リーの顔を黙って見返した。そして肯定した。
 「そうだな。だから不毛なんだ。だから―もうやめないか?」
 ト゛ンの言葉にチャ―リーはため息を吐いた。その言葉は聞き飽きたというように顔を背け、
苦い声で言った。「馬鹿にしてる!」

38:numb*3rs 工ップス兄×弟 25
06/12/20 21:32:20 P7Up9ZkF0
 「俺は本気だよ」
 そう言ってチャ―リーの腕から手を離すと、弟はまだ濡れている自分の頬をもう一度手で乱
暴に拭った。「馬鹿にしてるよ。―ト゛ン、どうして諦めちゃうの?僕らが不完全なのはわ
かったよ。僕だけじゃなくト゛ンもそうだって。そのことに僕は傷ついた。だってそれは僕の
せいだから。でも、だったらなおさら、僕らは変わらなきゃいけない。お互いが不完全だとし
ても、お互いが原因なら、だからこそ一緒にいれば何か変えられるかもしれないのに、どうし
て諦めようとするの?僕は諦められないよ。間違ったら式をもう一度立て直して、正しい答え
を探す。これまでずっとそうしてきた。離れたままなら不完全で終わるかもしれないけど、一
緒にいれば何か変わるかもしれないのに。それなのにト゛ンは簡単に諦めるの?そうやってず
っと一人で過ごすつもり?一生?」
 「―この歳で変われない」
 ずっとそうやって生きてきたのだ。そう言うと、チャ―リーはまたかぶりを振った。そして
ト゛ンの腕を強く掴み、まっすぐに目を見て言った。「だったら僕も変われない。ト゛ン、わ
からないの?ト゛ンだけの問題じゃないんだ」
 僕らはお互いに作用しあっている二つの式なんだよ、だから僕らはお互いが必要なんだ、と
チャーリーは言った。そしてドンの頬にキスをした。ドンは反応に迷い、それから弟の唇にキ
スを返した。今キスを必要としているのはチャーリーではない。ドンだ。そのことを自覚しな
がら、ドンは弟にキスをした。生まれ育った家の前で、真夜中に。
 ドンにずっと必要だったのは、弟に必要とされることだった。そしてようやくそれを実感す
ることができた。自分が弟に何を求めているのか自覚して、やっとチャーリーが自分を求める
意味もわかった。まったく性質が異なり、無関係のように見えても、自分とチャーリーは、作
用しあう二つの式なのだ。どこかで繋がっている。だからお互いの存在が必要なのだ。チャー
リーの言うとおりだと、ドンは弟の唇の柔らかさを感じながら思った。鍵を握っていたのは、
ずっとこの弟だったのだ。




39:numb*3rs 工ップス兄×弟 26
06/12/20 21:33:35 P7Up9ZkF0
 


 その後二人は車に乗って、ト゛ンのアパートまで行った。アパートに向かう間、チャ―リー
はずっと運転するト゛ンの横顔を見ていた。ト゛ンがまだ迷っていることもわかっていた。だ
がチャ―リーは焦っていなかった。これまで触れられなかったト゛ンという存在に、やっと触
れたと思った。
 アパートに着くと、予想していた通り抱き合った。数時間前に実家のガレージで欲望を果た
したのに、二人ともそんなことは忘れてお互いの肉体を味わった。ト゛ンの手には荒々しさは
なかったが、チャ―リーは満足していた。終わったあと、二人は自然に長い口付けを交わした。
それは性的な興奮を引き起こすためのものではなく、ただお互いの存在を感じあうためだけの
穏やかなもので、だからこそ二人はじゃれあうみたいにしばらくキスを楽しんだ。
 やがて唇が離れると、ドンはベッドのサイドボードに背中を預け、服を着ないままで静かに
語りだした。「怖いんだよ」
 「何が?……誰かを必要とするのが?」
 横たわった姿勢でチャ―リーが問うと、ト゛ンは手を伸ばし、ブランケットをチャ―リーの
肩に掛け直しながら頷いた。「自分の感情を表現するのが苦手なんだ。感じたことを全部話し
たってきりがないし、相手にとってはいい迷惑だろ?だったら黙って一人ですべて済ませたほ
うがいい」
 チャ―リーはそれを聞いて少し笑った。兄をかわいいと思ったのは初めてだった。そんな反
応に気分を害したのか、ト゛ンは微かに眉を顰めたが、チャ―リーはト゛ンの腕を撫でて続き
を促した。「例えばどんなことを話すのを我慢してたの?」

40:numb*3rs 工ップス兄×弟 27
06/12/20 21:34:41 P7Up9ZkF0
 ト゛ンは黙り、それからしばらくしてぽつりと呟いた。「―俺は人を殺してる」
 チャ―リーは驚いてト゛ンを見つめた。するとト゛ンは見返しながら頷き、自分の肩を指差
した。「ここを撃った奴とか。他にも何人か。正当防衛だし、肩を撃った奴は包囲されたことに
気づくと、現場でレイプした女の子を人質にして銃を乱射したんだ。だから後悔はしてない。
もう一度あの状況に置かれたらまたやる。だけどやっぱり事実は事実だ。……たまに思い出す。
一人でいると……」
 唇を閉ざしたト゛ンの横顔を見上げながら、チャ―リーは身体を起こしてト゛ンの肩に手を
置いた。今までどうして兄のことをもっと考えてあげられなかったのだろうと思った。これま
でずっと、ト゛ンは正しいことを正しいと信じてやってきたのだと思っていた。でもト゛ンに
も迷いや後悔はあるのだ。
 「ト゛ン」
 「そんなに大したことじゃない。自分で処理できる。でも誰かに話したかったのも事実かも
な」
 そう言ってト゛ンは肩を竦めた。チャ―リーは肩の傷跡を見ながら呟いた。「これからは僕
に話してよ。そういうときは」
 「聞きたくない話もあると思う。きれいな仕事ばかりじゃない」
 ト゛ンは素っ気無くそう返したが、チャ―リーは受け流さずにかぶりを振った。「どんな話
でも僕は絶対に聞くよ。……ヒーローには相棒が必要だろ?相談に乗ったり、一緒に事件を解
決する……」
 「お前はそうなるって言いたいのか?」
 ト゛ンが微かに笑って問う。チャ―リーは頷いた。「ずっとそうなりたかったんだよ」
 「……俺もずっとそうなってほしかった。お前が生まれたときにそう思ったよ。相棒ができ
たって。―ずいぶん長い間俺たちは勘違いしてたんだな。お互い」
 チャ―リーはそれを聞き、不思議な想いでト゛ンの太ももに頭をのせた。ずっとト゛ンが自
分を相棒として求めていたことなんて知らなかったし、こんなに側にいたのにそれに気づけな
かったことにも驚いた。ト゛ンはチャ―リーの髪を指で弄んで言った。「お前が弟でよかった」
 「……僕は銃も上手く扱えないし、野球もできないよ。きっとト゛ンが望んだ弟とは違う。
それでも?」

41:numb*3rs 工ップス兄×弟 28
06/12/20 21:35:49 P7Up9ZkF0
 チャ―リーの言葉にト゛ンは目を細めて答えた。「そうだな、小さな頃望んでいた弟とは確
かに違う。でも結局それでよかったんだ。お前は銃を持ってないし、人も殺さない。だけど方
程式で人を助けられる。誰も傷つけてないのに、人を助けられるんだ。俺が望んでいた以上だ
よ。……それにお前は諦めてない。P≠NP問題にも何度も挑戦してる。タフで賢くて信頼で
きる、相棒だよ」
 チャ―リーはそれを聞いて涙で視界が歪むのを感じた。ト゛ンが髪を撫でる手が優しくて、
この手を離したくないと思った。でもト゛ンが自分のせいで、これまで誰ともまともな関係を
結べなかったというなら、なんとかしてそれを成就させてやりたいとも思った。
 チャ―リーにはやっとわかった。ト゛ンがこれまでチャ―リーとの関係を気に病み、ことあ
るごとに自分よりも他の人間との関係を勧めるのは、決してチャ―リーを疎んじていたからで
はない。ト゛ンはチャ―リーを愛しており、だからこそ自分が原因で相手に何も与えられない
ことを悔やんでいただけなのだ。今チャ―リーはそんなト゛ンと同じように、ト゛ンに自分以
外の人間と関係を結んでほしいと思った。誰か、新しい関係と新しい家族を与えられるような
存在と。チャ―リーにはそれらは与えられない。お互い自身すら元からあるものだし、どんな
に深く交わっても子供も生まれない。それならト゛ンに別の相手を与え、彼を完全な存在にし
てやりたいと思った。だが、その一方でやはり自分の元に留まってほしいとも強く感じた。そ
して自分がト゛ンの唯一の足枷となっていることに喜びを感じた。そんな形で選ばれているこ
とがチャ―リーには嬉しかった。胃が軋むほどに。
 「チャ―リー?」
 ト゛ンがそんな様子の弟に気づいて、顔を覗き込んでくる。チャ―リーはかぶりを振り、そ
れから深呼吸をした。ト゛ンの肌の温かさを感じながら、チャ―リーは言った。「ト゛ンは素
晴らしい人間だよ。きっとト゛ンが望めば、僕以外にもこうやって話を聞いてくれる人が出て
くるよ。キムもテリーもきっと本当はそうしたかったんだ。……これからだって、そんな相手
はいくらでもできる。誰かが必要だってきちんと言えて、きっと新しい家族もできる。いろん
なことができる。ト゛ン。僕にはわかってるよ」

42:numb*3rs 工ップス兄×弟 29
06/12/20 21:37:26 P7Up9ZkF0
 なるべく優しい声で言うと、ト゛ンは黙った。彼の目には戸惑いが滲んでおり、それを見て
チャ―リーは頷いた。「諦めないで。ト゛ンにはいろんな可能性がある。……野球をやめてF
BIに入ったのだって、あの頃僕にはわからなかったけど、結局正解だったんだ。大勢の人を
救ってるんだもの。ト゛ンは野球選手じゃないし、数学者でもないけど、僕はFBI捜査官の
ト゛ンが一番いいと思う。ト゛ンはきちんと正しい道を選べる。だから諦めないで。僕も諦め
ない。……でも、でもね」
 そこまで言ってチャ―リーは口を閉ざした。言っていいことなのかどうか、彼にはわからな
かった。本当にト゛ンを愛しているなら、ここから先は言わないでいるべきではないかとも考
えた。だがチャ―リーはどうしても言わずにいられなかった。何故ならチャ―リーにはト゛ン
のことが必要だからだ。
 身体を起こし、チャ―リーは一瞬目を伏せてから言った。「……お互い本当に努力して、自
分たちの人生の可能性を探そう。新しい家族を見つけられるように。僕もなるべくそうする。
……でも、それでもやっぱりお互い以上に好きな相手ができなかったら……二人とも不完全な
ままじゃなくて、二人でいることで何か完全性を見つけられるようになったら、そのときは一
緒に暮らそう。こういうアパートでじゃない。僕らのあの家で」
 「チャ―リー」
 ト゛ンが驚いたように目を見開くのを、頷きながら見返して、チャ―リーは震えた、小さな
声で言った。「……いつか父さんもいなくなる。本当に、本当に長生きしてほしいけど、……
いつかは僕を置いていくよ。母さんみたいに。そうしたら僕はあの家で一人になる。誰も他に
家族を見つけられなかったら。そのときは―ト゛ンがあの家に戻ってきてよ。ト゛ンにも家
族ができなかったら。そうすれば僕はあの家でト゛ンの話をいつでも聞ける。ト゛ンが何かに
苦しんでるなら助けられる。いつか、いつかの話だよ。今じゃない。ずっと後のことだ。それ
にこれはただの提案で、強制じゃない。ただ―そういう未来もあっていいと思うんだ」


43:numb*3rs 工ップス兄×弟 30
06/12/20 21:39:02 P7Up9ZkF0
 「チャ―リー、俺は」
 言いかけるト゛ンを遮って、チャ―リーは呟いた。これはプロポーズだとすら思いながら。
「僕はト゛ンに幸せになってほしい。でも、ト゛ンがもし僕といることで本当に幸せになれる
なら、僕らがそういうふうになれたら、……そのときはト゛ンの家族になりたいんだ。もう一
度。生まれつきじゃなく、今度は自分たちの意志で」
 その言葉にト゛ンは黙った。チャ―リーも黙って答えを待っていた。いつか。チャ―リーが
話したのは何十年もあとのことだ。二人がどうなっているかなど誰にもわからない。ト゛ンに、
チャ―リーに恋人ができ、結婚して子供もいるかもしれない。そういうことにチャレンジする
価値もある。だがもしも、試行錯誤を繰り返した後でも、お互いしかいないと感じたなら、も
う一度一緒に暮らしてもいいのではないだろうか?それともやはりそれは許されないことなの
だろうか?
 「―僕はあの家の手入れをして、待つよ。ちゃんと僕らが歳をとっても暮らせるように。
いや、備えてる。その可能性に。備えてるだけ。でも、だから―だからもしそうなったら戻
ってきて」
 呟くように願いを言うと、ト゛ンが微かに身体を動かした。思わずびくりとして身体を揺ら
すと、ト゛ンはそれを見ながらそうだな、と言った。
 「そうだな。そういう未来も悪くない」
 ト゛ンの言葉を聞いて、チャ―リーは何度も頷いた。こんなものはただの口約束で、何の意
味もない。だがそれでも、そんな可能性が未来に待っているかもしれないということに、胸が
締め付けられた。それをどこかで望む自分への罪悪感なのか、その可能性が残されているとい
う幸福感のせいなのかはわからなかった。ただそういう未来も存在してもいいはずだと思った。





44:numb*3rs 工ップス兄×弟 31
06/12/20 21:40:39 P7Up9ZkF0
 
 日曜日の午後、実家の庭でチャ―リーの落ち葉拾いを手伝っていたト゛ンは聞いた。「で、
P≠NPはどうなんだ?」
 箒で大量の落ち葉をかき集めていたチャ―リーが非難がましくト゛ンを見返した。「あのさ、
前も同じようなこと説明したけど、あれはすごくすごくすごーく、難しい問題。一月やそこらで
解ける問題じゃない」
 「解けてないんだな?」
 ト゛ンは問いながら、苦労して落ち葉を集めるチャ―リーを見た。少し前まではこういうこ
とはすべて父親のアランがやっていたはずだ。だがアランが家の手入れも大変だし退職金にも
限りがあるといって、少し前にこの家を売ったとき以来、チャ―リーも少しは変わったらしい。
尤も、売った家を買ったのはチャ―リーだったのだから馬鹿馬鹿しい話だが。
 ト゛ンはくすりと笑ってチャ―リーを見た。ト゛ンは弟のそんなところが好きだった。彼は
常識に囚われない。彼の年齢になれば親元を離れて暮らすことが普通なのに、この家が好きで
アランとも一緒に暮らしたいからといって、無理やり我を通してしまうなんて、ト゛ンには絶
対にできないことだ。チャ―リーは子供っぽく見えることはあるが、その実芯が強い。
 「解けてないけど、それって何かト゛ンに関係ある?」
 チャ―リーが刺々しく言うので、ト゛ンはまた笑った。「そうだな、解けたらお前は少し俺
から離れやすくなるんだろ?ちょっとは関係ある」
 チャ―リーはそれを聞いて手を止めた。ト゛ンは落ち葉を入れるビニール袋を持ちながら、
顎で弟を指して注意した。「手を止めるなよ」
 「ト゛ン、あれはものの弾みっていうか、そのときかっとなったから言っただけだよ。それ
くらい悩んでたってこと。どんな問題が解けてもト゛ンはト゛ンだもの。僕にはずっと必要だ
よ。―もしかして、不安だった?」
 チャ―リーの声にト゛ンは肩を竦めた。確かに不安ではあった。弟が学問の世界に没頭して、
もう自分を省みなくなる日を、想像したことがないわけではない。だがト゛ンはわざと頷かず
に言った。「不安も何も、解けてないんだろう?」
 不安になる必要なんかないじゃないか。そう呟くとチャ―リーは片手を腰に当ててみせた。
 「―だからそれはまだ時間が足りないからだよ!ト゛ン、何年か取り組めば僕は絶対にで
きる」

45:numb*3rs 工ップス兄×弟 32
06/12/20 21:41:42 P7Up9ZkF0
 むきになってチャ―リーは言う。ト゛ンはそんな弟をちらりと見て言った。「本当か?怪し
いな」
 「ト゛ン、今の発言、絶対後悔するよ。僕はもし解けたらそのあかつきには論文の序に書い
てやる。『僕の能力を信じなかった兄にこの論文を捧げます』って」
 絶対書く。今決めた。乱暴に、しかも非効率的に落ち葉を集める弟はそんなことを呟いてい
る。ト゛ンは手を差し出し、箒を貸せと言った。「交代しよう」
 「何?何で?これは僕の役割だよ。何でト゛ンが落ち葉を集めるの?ここに住んでるの、僕
だよ」
 「俺がやった方が早い」
 ト゛ンが簡潔に答えると、チャ―リーはひきつった笑いを浮かべた。「何?ト゛ンは僕が落
ち葉集めもできないと思ってるわけ?馬鹿にしてる?」
 「できないとは思ってないが、苦手なのは知ってるよ」
 箒を取り上げてト゛ンは言った。するとチャ―リーは呆れたように両手を広げた。「いろん
な意味で侮辱された。数学者として、人間として。実の兄に」
 ト゛ンはそれを黙って受け流しながら落ち葉を集めた。チャ―リーがやったより数段効率よ
く作業をこなし、弟にビニール袋を持つように命じた。するとチャ―リーはしぶしぶといった
様子でそれに従った。
 「ほらな、俺の方が上手いだろ?」
 ト゛ンの言葉にチャ―リーは眉をあげてみせた。「失礼だよ。今たまたまト゛ンの方が上手
くやったってだけで―」
 「もしお前が本当に―可能性に備えてるなら、この程度のことは常に上手くやってもらわ
ないと」
 俺も安心できない。そう言うと、チャ―リーは手を止めた。また手がおろそかになってる。
そんな注意も聞かずに、チャ―リーは瞬いた。「ト゛ン、それは―少しは待ってるってこと
?それを……その可能性を」
 ト゛ンは首を傾げた。答える気はなかった。答える代わりに彼は言った。「今夜アパートに
くるか?」

46:numb*3rs 工ップス兄×弟 33 これでおしまい
06/12/20 21:43:36 P7Up9ZkF0
 チャ―リーはその言葉に不意を打たれたらしく、目を丸くした。「それ、来てほしいってこ
と?」
 「質問ばかりだな、お前は。素直に頷けよ」
 思わずぼやくとチャ―リーは甲高い声を上げた。
 「だったらト゛ンも素直に言ってよ!今夜来てほしいって。必要だって。ト゛ン、言ってよ」
 ト゛ンはそれを聞いて落ち葉に目を向けたまま素早く言った。
 「―必要だよ。今夜は一緒に寝たい。だから早く落ち葉を集めて、父さんと夕食を済ませ
て、今夜はアパートに行こう」
 箒で集めた落ち葉をもう一度ビニール袋に押し込み、顔を上げるとチャ―リーは口を軽く開
いたままト゛ンを見ていた。そんなに驚くようなことだろうか?ト゛ンが考えていると、チャ
―リーは信じられないと呟く。ト゛ンはその言葉に笑った。きっとこんなふうに、少しずつ自
分たちは変わっていくのだろう。自分もチャ―リーも。でもいつも隣にはお互いがいて、もし
かしたら最後までそうかもしれない。社会的に見ればそれはアンハッピーエンドなのかもしれ
ない。でも、それを決めるのは自分たちだ。ハッピーエンドだとト゛ンとチャ―リーが感じて
いれば、きっとそうなのだ。
 ト゛ンは不意にチャ―リーが不安げな顔になったことに気づいた。どうしたと問うと、数学
者は小声で言った。「……あんまりいきなり進歩して、僕を置いていかないで。……変わるの
はいいけど、少しずつ、ゆっくり変わってよ」
 ト゛ンはそれを聞いて吹き出した。この弟は本当に我侭だと思いながら、ト゛ンは箒の柄に
顎を乗せて答えた。
 「じゃあ俺からも一つ。P≠NP問題を解くのはいいが、それで俺を忘れるなよ。弟を数学
の問題なんかにとられたくない」
 ト゛ンの言葉にチャ―リーは目を見開き、それから笑った。ト゛ンも一緒に笑った。いつま
でもこんな日々が続くことを、ト゛ンは本当にこっそりとだが願いながら、色とりどりの落ち
葉を弟に差し出した。





47:numb*3rs 工ップス兄×弟
06/12/20 21:47:33 P7Up9ZkF0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヤットオワッタ…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ; )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

本当に長くてスマソ。投下しているこっちも分割してるのにくじけそうになry
この兄弟で書きたかったことは一応書ききることができたように思うので
ひとまずこれでおしまいです。
超過疎ジャンルなのに付き合ってくださった方々、本当にありがとう!



48:風と木の名無しさん
06/12/21 01:12:52 JkzebWaL0
二人の、特にチャーリーの変化に胸打たれました。
最初読み始めた頃は読むのが辛い時もあったのに。
ゆっくり読み返したいです。



49:風と木の名無しさん
06/12/21 02:37:42 wn9I+29T0
ええ話や。作者さんGJ!

50:風と木の名無しさん
06/12/21 03:47:56 BkxXOt4O0
前スレ>>542
萌えたんだけど推理物でネタバレならもうちょっと元ネタわかりやすく書いて欲しい・・・。
読むまでなんの作品か判んないでネタバレはちょっと・・・。

51:風と木の名無しさん
06/12/22 04:04:35 6kAjThwh0
>>47
乙そしてGJ!
楽しませていただきますた。
ほんわかと終わっててよかった…

52:風と木の名無しさん
06/12/22 11:21:56 LQzb7bE50
>>47
ずっと楽しみに読んでいました。
二人の理解したり出来なかったりな関係性の描写にぐっときました。
希望が見えるラストが好きです。
まだ一話目しか見てないので、一挙放送が待ち遠しい!

53:風と木の名無しさん
06/12/22 17:58:07 +grQ1noH0
>>47
本当に面白かったです。あなたの文章がすごく好きで、毎回、何度も読み返してます。
そして今日の本放送がますます楽しみだ(*゚∀゚)=3

FO.X C.R..IM.E(ch.723)で1月1日の9時から19時半まで、第1シーズン(全13話)のマラソン一挙再放送が
あるので、無.印ス.カ.パ.ー!を視聴可能な方は是非…と薦めてみる。

54:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:05:43 RbW4Nq2yO
・突発的に、衝動を抑え切れずに書いたもの

・書いた人がド素人、文脈が覚束ない

・エロくない、CPに見えない



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

55:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:09:29 RbW4Nq2yO
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

書き忘れ…orz


・コミックス3巻ネタ
・読んでないと解らない表現もあるかも


気を取り直して…


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

56:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:11:45 RbW4Nq2yO
「…佐藤さーん?」





佐藤が入院しているという、とある病院の個室。
その扉をそっと開けて、名前を呼んでみたけれど、返事はなかった。




しん、と静まり返った室内。来る途中通った大部屋など、騒がしいくらいのものだったというのに。
―成る程、佐藤さんは引き篭りだから、大部屋なんて無理に決まってますね…

それ故なのか、山崎の目に、この部屋の雰囲気は、ひどく落ち着いているように見受けられた。
―なんだか気味が悪いですね…


ぱた ぱた


普段なら滅多に聞こえない点滴の音が、拡散されて耳に響く。
その音にしばし聴き入っていたが、気を取り直し、室内へと歩を進めると
病室特有の匂いが鼻につき、此処が病院だと言うことを再確認させられて顔をしかめた。




――まさか、あんなことになってるなんて、思うわけないじゃないですか

57:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:16:10 RbW4Nq2yO
つい昨日。佐藤からおかしなメール(SOS)が届いて家に押しかけてみれば
拘束、もとい監禁されて餓死寸前の佐藤の姿があった。


――あの時の佐藤さんの顔といったら……それと、ミアの正体。
あんなに早くバラすつもりはなかったんですけどね…。




「佐藤さん?お見舞い来てあげましたよ!
いないんですか?佐藤さーん?」



気を取り直して再度呼んだが、返事はなかった。
寝ているのかさえ、ベットの周りのカーテンに隠されていて、見えない。


返事のないこと、姿が見えないことに、山崎は意味もなく苛立っていた。
何故か、落ち着けない。返事がないなら寝ているのだ。きっと
寝ているのなら、また後で来ればいい。――それなのに、苛々は募る一方だった

58:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:26:48 RbW4Nq2yO
「…佐藤さんってば!!」



何故こんなに苛立っているかは解らなかった、が。沈黙が堪らずカーテンを乱暴にあけた。
―その時



「―うわ…っ!?」



どさっ、と覆いかぶさって来た何かが視界を覆った。
肩に少しばかりの重圧がのしかかって、力が入らない
落ち着いてさえいれば、それが“何”か、容易に解ったのだろう
―しかし、今の山崎にそんな余裕はなかった



「な、な…なん、な…ですか…!?…これ…!!」


もがけばもがく程、拘束してくるそれが、山崎の判断を狂わせた。
くらくらしているのは、パニックで、頭に血が上っているからなんだろう
――なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだよ…!!
パンク寸前の頭。暴れ過ぎたのか、眼鏡がズレたのが解った。―途端
山崎はとてつもない使命感に見舞われた――殺るしか、ない

59:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:36:59 RbW4Nq2yO
微妙な覚悟を決めた山崎。出来るだけ、出来るかぎりの力をこめ
その、“何か”を、蹴り上げた。
―その“何か”が終始声を発していたことに気付けなかったのに、彼の精神状態を垣間見るだろう



カコーンッ




「※☆●▽◎!?」



小気味の良い音と共に“何か”の呻くような
声にならない声が聞こえた。
――…人?
ズレた眼鏡を直し、漸く落ち着きを取り戻した山崎。冷静に現状を振り返る。
――…ま、さか


「…さとう…さん?」



よくよく見れば、自分の視界を覆っていたのは病院でよく見るシーツで
それに重圧をかけていたのは、まごうことなき自分の先輩。佐藤達広その人だった。

60:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:44:22 RbW4Nq2yO
――…と、言うことは


「さ、佐藤さん!あんたって人はよくも……っ!!」

これまでの沈黙が佐藤の策略だったことに(最も、佐藤が何をしたかったかは謎だが)気付いた山崎は
何故か転げ回っている佐藤を見下げて睨みつけ
どういう魂胆か問い詰めてやろうと胸倉を掴み上げた、が。
佐藤が転げ回っていた理由に気付いたので取り敢えず、手は離してやることにした


「や、山崎…!お前なぁ…!男なら解れ!この痛みを理解しろ!!」
「…なっ!佐藤さんが悪いんでしょう!?まさか股間にあたるなんて思うわけないじゃないですか!!」



そう、山崎の蹴りは見事に佐藤の股間にクリティカルヒットしたわけだ。

61:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 18:06:04 RbW4Nq2yO
「それより!いきなり覆いかぶさってくるなんて一体どういう要件ですか!?
子供じゃあるまいし…!」
「ん、…ああ、それは…その、…だな」

口ごもる佐藤。それに対して山崎は先程まで混乱していた反動かずらりと文句をまくし立て、佐藤に詰め寄る。
まさに自業自得。と、返す言葉もない佐藤はひたすら平謝ることになった。
――…山崎の野郎…ミアの事でかなりへこまされたから少し驚かしてやろうと思っただけなのに
――…あんなに、驚くんだもんな。…俺のほうがビビったぜ…
「―…大体、佐藤さんは不注意過ぎるんですよ!こんなに血が出てるじゃないですか!」


いつの間か、山崎に覆いかぶさるときに外れた点滴の話になっていた。
佐藤は今気付いたらしく、自覚すると痛くなるものだなと苦笑してみせる。

62:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 18:25:08 RbW4Nq2yO
予想外にも山崎は、苦笑する佐藤に苦笑を返した。
それから、黙って出血している佐藤の腕をとり、まじまじと見つめて言った



「…佐藤さんって、引き篭りで、最低なダメ人間ですけど」
「…な!!山崎お前…!」

――そんな率直に本当のことを言うなよっ!!

そう視線で訴えかける佐藤にお構いなく、
腕から流れ続ける血をなぞりながら山崎は続けて言った



「血は、赤いんですね」
「…っ!!」



言い終えてから間をおかずに、掌に付着した血を滑取って笑ってみせる山崎。
痛みに身を竦ませながら、その姿に目を見開く佐藤。




――恋が、始まる日は、近い

63:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 18:34:27 RbW4Nq2yO
――…かもしれない。



苛々していたのはたぶん、あなたのせい。けど、そんなの悔しいから報復に報復
(ミアの事への報復に飴と鞭(鞭と飴?)という名の報復)で返す山崎くんのお話でした。
慣れ始め。

終わったというより終わらせた。
読んでくださった姉様方、ありがとう、そしてすみませんでしたorz
それでも佐山が好きなんだ!と主張しつつ失礼します


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

64:風と木の名無しさん
06/12/24 13:58:16 i93LhmA70
佐山キターーーー!!!GJ!!

65:飛父飛
06/12/24 16:31:47 AMLjang20

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  飛父飛 寸心×おっさん 最初は皆方視点だモナ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  原作未読のため、映画設定だカラナ
 | |                | |             \ 
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ こういうのを砂を吐くっていうんだゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 昭和の少女漫画みたいになったぞゴルァ!!
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

66:スンオサ 1/6
06/12/24 16:32:37 AMLjang20
決戦の次の日、鈴木さんの奥さんが学校にやって来た。
鈴木さんは休み中に溜まった仕事に追われて当分休めそうにないので代わりに来たのだという。
奥さんは「始ちゃんがみんなによろしくって。皆、本当にありがとう。」
と言って、お菓子を沢山持ってきてくれた。
みんな「始ちゃんが…」と言いながら笑いを堪えていたけれど、
お菓子を差し出されるとすぐにそれに飛びついていた。
寸心はまたサボって屋上に居たからここには居なかった。居なくて良かったような気がするな。

そして僕たちは3泊4日の沖縄旅行に飛び立ったのだった。
「寸心、鈴木さんにお土産買った?」
「…買ってねーよ。」
屍図メンバーは僕も含め全員鈴木さんにお土産を買っていた。
沖縄旅行に来れたのも、鈴木さんのおかげだし。
俺達の夏休みが楽しかったのも、鈴木さんのおかげだったから。


沖縄旅行から帰っても、鈴木さんはしばらく来なかった。
鈴木さんへのお土産を自宅へ持っていくかどうか話をしていると、
窓際で座って本を読んでいた寸心が口を開いた。
「いいんだよ。もう。」
山舌が「なにが~?」と気の抜けた声で訊ねると、めんどくさそうに席を立ち、
「捨てとけよ」と言い残して去っていった。
自宅まで届けるのはやめておこうか。腐るものは1つくらいだし。
しかし…鈴木さん早く来ないかな。寸心がサミシクテシンジャウかもしれない。

67:スンオサ 2/6
06/12/24 16:33:23 AMLjang20
そして一ヶ月が経った頃、鈴木さんはようやくやってきた。
ドアを叩く音に、いつもは無反応な寸心の肩が揺れたので、僕はすぐに鈴木さんだとわかった。
「やっと休みが取れたんだ!みんなに改めてお礼をしたくて…」
屍図の皆は大騒ぎ。各々鈴木さんの周りをグルグル回りながらお土産を渡していた。
なんだか異臭のするものもあったけど、まあおかしな事になってもハブ酒でなんとかなるだろう。
「お久しぶりです鈴木さん。まあどうぞ。」
有無を言わさずやたら対面距離の近いイスに鈴木さんを座らせ、メンバーで周りを固めた。
鈴木さんは寸心の方を見ると、笑顔全開になった。
寸心は本に目を向けたまま顔をあげていないから、その笑顔は見えていないけど雰囲気でわかったと思う。
「僕らずっと待ってたんですよ?もう来てくれないのかと思いました。」
「あっ…!ごめん!溜まってた仕事の整理するのに時間かかっちゃって…ごめんね。
休日も返上で、なかなか来れなくて…僕も…すごく、みんなに逢いたかったよ。」
メンバーみんなにホッと笑顔が零れる。
寸心だけじゃない。みんな、なんだか鈴木さんの事が好きだからね。
こんな大人も居るんだと思うと、世の中、悪くないよね。
「はい。これ、僕からのお土産です。」
「あっあぁっこれ、シーサー?ありがとう!沖縄、楽しかったかい?」
「ええ。残念ながら水着ギャルとめんそ~れはできませんでしたけど。」
鈴木さんはありふれたシーサーの置物をかわいいねぇとか良いながら撫でている。
「これ、こっちが鈴木さんでこっちが寸心です」
シーサーは2つで1つなんですよ。と説明すると「寸心君!これ、君と僕だって!」と寸心に話しかけた。
寸心はその瞬間席を立ち、足早に出て行ってしまった。
「あれ…どうしたの?寸心君…」
さっきまでちぎれんばかりにしっぽを振っていた鈴木さんが、急に耳が折れたようにしゅんとしてしまった。
「あの子は手間がかかりますからぁ。」
山舌が知ったような口を聞く。

68:スンオサ 3/6
06/12/24 16:34:21 AMLjang20
「久しぶりで、どうしていいかわからないだけですよ。寸心は愛情に不器用なんです。…知ってますよね?」
ジッと鈴木さんの目を見れば、ハッとしたような顔をした。
「僕…行ってくるよ。 あっこれ、みんなありがとう!!大事にするよ…あっそれとこれ、
よかったらみんなで飲んでね!…それと…また、ここに来てもいいかな…?」
「「「「いいともーーー!!」」」」「もちろん」「待ってますよ!」
鈴木さんは「ありがとう!今度は動物園に行こう!」と言いながら、
両手にお土産を抱えて軽やかに走り去っていった。山舌が「動物園は微妙じゃない?」と言ったが、同意だ。
だけどポカリ貰ったからまあいいか。
さて、ここからは二人きりの方がいいだろうから、僕はポカリを飲みながら二人の帰りを待ちますか。

********************************************

「寸心くーーん!」
寸心は鈴木との特訓で使った木の上に居た。
鈴木は学校を出てからまっすぐここに向かった。寸心は此処にいるという確信があったのだ。
「僕も登ってもいいかな?」
寸心はしばらく黙っていたが、「登れるもんならな。」と、木に括ってあったロープを降ろした。
一緒にポケットから軍手を取り出し落とす。
寸心もまた、鈴木がここを探し当てるだろうと期待していたのだ。
一ヶ月ぶりの木登りに鈴木は”スルスル”とは言わないが、何度か落ちながら必死に登った。
最後は寸心に引っ張りあげられつつようやく登り切る。鈴木は最初体勢を崩し寸心にしがみつきそうになったが、
慌てて逆サイドの伸びている枝に手を伸ばし、それでバランスを取った。
そして寸心に振り向くと、一瞬の後、二人に笑顔が零れた。
「ずっと来れなくてごめんね。お礼を言いたかったんだ。」
「いいよ、別に。…」

69:スンオサ 4/6
06/12/24 16:35:23 AMLjang20
鈴木はこの夏の特訓がどれだけ有り難かったか、あの後娘さんとはこうだった、ああだったと身振り手振りで話す。
その身振り手振りでバランスを崩した鈴木は反射的に寸心に抱きついた。
そしてしまった、とすぐに手を離し、恐る恐る寸心を見た。
その鈴木の様子に寸心は思わず吹き出した。安心した鈴木も笑顔になる。
「テヘッて笑ってんじゃねーよ。テヘッて………おっさん、」
寸心はポケットから珊瑚礁のカケラを取り出すと、鈴木に差し出した。
「これ、もしかして沖縄の?」
寸心は微笑みで答える。皆方にあんな事を言ったが、寸心は沖縄土産を鈴木に用意していたのだった。
始めて潜った沖縄の海は透き通るように青く、ずっと先まで広がった視界には色とりどりの魚が泳いでいた。
寸心は、この景色を、鈴木にも見せたい、と思ったのだった。
「ありがとう!…綺麗だねぇ。…寸心君はいつも僕に綺麗な物を見せてくれるね。
ここからの景色もさ、あとほらっ空を飛んだ時の景色も!」
「くせぇ事言うなよおっさん」
鈴木の喜ぶ顔は、沖縄の海の中で寸心の想像していた通りだった。
そして今まで自分の思っていた事は、ちゃんと鈴木にも伝わっていたのだ、と思った。
「寸心君達には貰ってばかりだね。」
寸心は、そうでもない、と思った。
空を飛ぶ人を見たのは初めてだったから。あの大きな翼は、初めて見るものだったから。
「僕ね、決めてるんだ。今度は僕が寸心君を守ってあげるよ。」
寸心は一瞬固まった。が、持ち前の冷静な判断力ですぐに平常心を取り戻した。
まっすぐ自分を見つめる嬉しそうな鈴木の顔。寸心はそっと目を逸らし、苦笑した。
鈴木のこういう予測できない行動はこれで数回目だったが、いつも寸心の心を激しく揺さぶる。
少し頷くと、寸心はふいに鈴木にボディブローを決めた。
左腹にもろに食らった鈴木が本当に木から落ちそうになる。
寸心はそれを足で支え手で引っ張り上げ持ち直し、慌てふためく鈴木に微笑みかけた。
「そういうのはもっと強くなってから言え。」

70:スンオサ 5/6
06/12/24 16:36:14 AMLjang20
鈴木は怒るでもなく、でもね、あれからも会社の帰り道は走って鍛えてたんだよと言い訳をする。
寸心はそこに受け入れられている自分を見た。
鈴木を見る目がどんどん愛しいものを見つめる目になっていく。
寸心の手がふいに、ブツブツと言い訳をしている鈴木の頭上に伸びる。
そのまま、ガシガシと撫でた。
「いてっ!す、寸心君?」
そして鈴木の髪を引っ張るようにして自身に傾けると、胸元に抱き込んだ。
「あっ!す、」
鈴木は何をされるのかと驚いて手を不思議な構えにしたまま固まっていた。
が、特に痛めつけられるわけではないとわかり、その手をそっと膝に降ろした。
鈴木はしばらくわからずに目を見開いていたが、ハッとした。これは、自分がした事と一緒だ、と。
愛しさが込み上げた時に自分が寸心にした行動と同じだと。
あの時は寸心に手を払いのけられてしまったけれど。鈴木はその手を払いのける事は無かった。
お互い座っているとはいえ自分より背の低い寸心の胸元に頭を持って行かれるのは体勢的にきつかったが、
鈴木は大人しくその位置に納まっていた。
ふいに寸心の手が鈴木の顔を包み、持ち上げられる。
されるがままに上を向かされた鈴木は目の前にある寸心の顔に少し驚いた。
寸心は鈴木の目が丸く開く様を面白がるように見つめた。そして鈴木の額に自身の額を付けた。
「自分以外に守るものがあると、人はどこまでも強くなれるんだな。」
鈴木は目線に困り、目を瞑った。寸心はその様子に驚く。まるで、許されたのでは、と勘違いしてしまう。
だが寸心にはわかりきっていた。これが、誤解だと。
鈴木の頭に衝撃が走る。
「いっ!」
「絶対に敵から目を逸らすなつったろ」
寸心は座る位置を直し鈴木から離れた。鈴木は突然無くなった支えに少しふらつく。
「帰るぞ」
寸心は言ったが早いか、ロープに手を掛けるとスルスルと降りていった。

71:スンオサ 6/6
06/12/24 16:37:15 AMLjang20
鈴木は慌てて後を追い、かなり上の方から半ば落ちるように降り尻餅をついた。
「待って寸心君!」
腰を押さえながら急いで地面に置いておいたみんなからのお土産を拾い集め、スタスタと先を行く寸心の後を追う。
「寸心君は敵じゃないから目を離したって大丈夫だよ」
スタスタ歩いていた寸心が立ち止まり、間を置いて振り返る。
そして同じ速度で鈴木に向かってUターンしてきたので、鈴木は反射的に身構え、震えた。
鈴木の側で急に速度を上げた寸心は、一瞬で腰にタックルし、そのまま押し倒す。
「あーっ!」
素早くマウントポジションを取り、鈴木の右手を地面に押さえつけ、顎を捉えた。
鈴木が状況を把握する間も与えず、寸心はその唇に自身の唇を押しつけた。
「んん゛っ?!」
口付けというより、何か技の一種のようなそれはすぐに離され、
素早く鈴木の上体を浮かせると背後に回り、首に腕を回して頸動脈を締め上げた。
鈴木が苦しがり寸心の腕を叩くので、3秒数えてその身体を開放した。
息の荒い鈴木を置いて寸心はまたスタスタと歩き出す。
ワケのわからない鈴木は、それでもなお、お土産を拾い集め寸心を追うのだった。
「あっあの、寸心君!今…あの、僕はキスをされたのかなぁ?」
「してねぇよ」
「えっ?そう?あ、あれ?あれ、」
「してねぇつってんだろ。おっさん。」
「そう?嘘だぁ…」
寸心が拳を握り鈴木に向かって振りかざす。
鈴木が慌てて避けようと構え、またお土産を落とした。
寸心の拳は鈴木の目の前で止まった。寸心は焦る鈴木の様子を面白がるように微笑むと、スタスタと歩き出した。
「寸心君っシーサー割れちゃうよ!」
「 割 れ な い 。」

帰りを待っていた皆方は久しぶりに楽しそうな寸心の姿と草や泥のついた鈴木の姿に満足げに微笑んだのだった。

72:風と木の名無しさん
06/12/24 16:37:54 AMLjang20
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               
 | |                | |           ∧_∧ 久々に萌えが止まらない作品に出会いました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

73:風と木の名無しさん
06/12/25 09:12:00 /sWPBeQrO
スンオサキター(゚∀゚)ー!!
完璧映画目線でみていいのですね、オサンかわゆすぎだよオサン

74:風と木の名無しさん
06/12/25 17:12:53 DGFLA4eb0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  801板なのに…
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ギャルゲ小説にインスパイアされたって…
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドウヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

主将翼の転校少年君の話です。
O倉着火氏のセンチメンタルなんとか(転校少年物の純愛ギャルゲー)テイストを
目指してみましたが、果たしてせつなさは炸裂するのかどうか…?
(5レス分お借りします)

75:(1/5)
06/12/25 17:14:19 DGFLA4eb0
ふらの小

転入したばかりの岬が自己紹介でサッカーの話をしたのがきっかけとなり、
松山は教師から校内の案内役を任せられる。
最初は兄貴風を吹かせて岬を案内する松山だったが、放課後、最後に案内した
サッカー部のグラウンドで、岬に見事なテクニックを見せつけられてからは
少し複雑な気持ちになる。

『光はちょっと不器用な所がある。』
時々ではあるが周囲からそういった評価を受けることがあり、受けた側自身もそれを
自覚し、嫌っていた。
そしていわゆる《出来る奴・素質のある奴》に対し、敵対心と劣等感の入り混じった
感情を抱くことが多かった。
そしてこの日、笑顔で器用なプレーを披露する転入生に対しても、同様の感情を
抱くのであった―。

76:(2/5)
06/12/25 17:15:27 DGFLA4eb0
日頃からの面倒見の良さとリーダーシップの高さから、松山は誰の反対も無く新チームの
主将に選ばれた。ただ、時折見せる曇りがかった表情を、気掛かりに思う者も何人かいた。
スランプに足を踏み入れかけているのかもしれない…だとしたら早く引き戻さなければ。

「でもどうやって…?」
一歩間違えれば益々深みにという恐れから、具体的な対処法を見出すことが出来ない。
メンバー達が腕組みで唸る中、ただ一人明るく行動する者がいた。

「…岬?!」
「松山、そろそろ時間だから帰ろう。今日は学校外も案内してくれないかな?」

77:(3/5)
06/12/25 17:16:31 DGFLA4eb0
部活では屋外へランニングに出ることもあると聞いていた岬は、早速そのコースを
教えて欲しいと松山に伝えた。
松山もその要望に応えるが、時間も時間なので厳しそうなら途中で引き返すという
条件付きとなった。

「とはいえお互い妥協は無しだ。中途半端は嫌だろ?完走するつもりで行くぞ。」
「うん、完走しよう。」純粋だが、強気な笑顔で返す。
その表情から目を逸らすように松山は前を向き、一気に走り出す。岬も後に続く。

(…こいつ、どうして…)
ランニング中も、言い様の無い疑問と苛立ちをふと感じては振り切るを繰り返した。
(走りに集中しなければ…)
何度か通った道とはいえ、気を抜けば危険な事故に繋がりかねない。
増して、初めて臨む者を率いているという責任を自覚し、注意深く道を乗り越えた。
「無理なら無理って言えよな。」
「なんとか大丈夫。」
少し厳しいかな?という表情も見せ始めはしたが、笑顔と前向きさは絶やさない。
気にかかる部分もありはしたが、その目を信じて先へ進むことを決めた。

78:(4/5)
06/12/25 17:18:37 DGFLA4eb0
人の手がかかっていない、純粋で険しい道。その大自然の重さを心に刻みつける
ように、岬は走り続ける。誰よりも真剣で直向きな背中を追いながら―。

終着点である小高い丘に到着したときには、沈みかけの夕陽が眩しい光を放って
いた。幼い頃から数々の景色を見ながら育ってきた。しかし、こんなにも広大で、
澄み切った世界に出会ったのは初めてだった。
「すごい……。」

「…初心者には厳しい道だし、正直色々迷ったが…。でも来られてよかった。」
松山も少しずつ、言葉が出始める。
最初に案内を求めたのは岬だった。でも心の奥底でここへ来ることを求めていた
のは自分自身だったのかもしれない。少し気分の晴れた表情で、言葉を続ける。
「でも大したもんだよ、初心者ではなかなかここまで辿り着けはしないんだぜ。
俺たちだって、ここまで来るのに何度苦労したか…。」
「ううん、僕も、必死だった。でも、でもね…!」
急に気持ちを入れて松山の方に振り向くが、疲れきった体がそれを支えきれず、
岬はその場でバランスを崩してしまう。
「お、おい、岬!」
「えへへ…ごめんね。なんか、限界っぽい。」

79:(5/5)
06/12/25 17:20:01 DGFLA4eb0
「も、もう歩けるから。下ろしてよ、松山。」
「日が落ちるまで時間がないんだ、とにかく急ぐぞ!」
両脚に無理が来ていた岬を瞬時に背負い、松山は一気に峠を駆け下りていた。
慎重な姿勢を見せることもあれば、突然大胆な行動に出ることもある。
様々な面を持ち合わせてはいるが、一つだけ言えるのは、いつもどんな
状況でも、松山は真剣に生きているんだということを、岬は確信する。
どれだけこの街に留まれるかわからない。でも限りあるここでの時間を、
自分ももっと真剣に、大事に過ごしていきたい。強くそう思った。

「…岬、寝てんじゃねぇぞ、家まで案内しろよ。」
「うん、わかってる。」
「なに笑ってるんだよ。」
「ううん、別に。」
「いっつも笑ってるよなお前って。明るいし…すげぇよ、本当。」
皮肉ではなく、自分に無い素直さを持っている岬を、心底うらやましく思っていた。
岬が答える。「だって…その方が、」
なんとなく寂しさを含んだ声と感触を、松山は背後から感じた。
「…岬?」
「…だから!」
「えっ」
「松山も明るくいこうよ、ね!」
負ぶさっている背後から、松山の両頬を引っ張る。
「ばっ…馬鹿やめろって、送ってやらねぇぞコラ!」
「あははははは…」
家に帰り着くまでずっと続いていた岬の笑い声が、松山の中にずっと響き続けた。

80:風と木の名無しさん
06/12/25 17:21:50 DGFLA4eb0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ フゥ……
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ; )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

書き手の方も不器用、いや、それに加えて鍛錬が甘いため、読みづらい部分、
一貫性が無く支離滅裂な部分等ありますが(申し訳ないです…)、自分なりに
一生懸命やってみたつもりです。
「出会い」や「関わり合い」が持つ力、魅力といったものを描ければと思い
挑戦してみました。なんとか少しでも伝わればいいなーと…。

81:飛、父、飛
06/12/25 19:18:45 ohVfuf2P0
このスレになっていっぱいある気がするけど、別CPなので許して下さい。

 ・スン→オサ前提のミナスン
 ・映画のラストシーンの続きということで


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


82:飛、父、飛 ミナスン(1/2)
06/12/25 19:20:21 ohVfuf2P0

寸心はポケットの中の小石を握り締めたまま、彼方へと走り去っていった人の
もう見えなくなった背中をいつまでも見送っていた。
放心状態だったところをふいに肩を叩かれ思わず振り向いてしまった。
その瞬間皆方の唇と寸心の唇が重なった。
突然のことで動揺して皆方を突き放すまで少し時間がかかった。
「な、なにす」
最後まで言わないうちに皆方が寸心を抱き寄せてもう一度今度は深く口づけた。
「んっ…」
必死に抵抗しているのになぜか力が入らず、されるがまま息苦しさを我慢しながら耐えた。
漸く開放されたが次の言葉が出てこない。
肩で息をしながらただ皆方を睨みつけているだけだった。
皆方はそんな寸心の様子を見てニヤリ笑いを浮かべて言った。
「いくらお前が鱸さんのことを想ってても多分それは叶わないよ。」
「あ?何言ってんだ?」
少し怒った感じの口調で寸心が聞き返した。
「図星だった?」
「だから何を言ってるのか意味がわかんねーって言ってんだよ」
「わかってるくせに」
皆方が寸心の顔を覗き込んで含み笑いしながら言い返す。
「じゃあハッキリ言ってやるよ。寸心、鱸さんのこと好きなんだろ?」
「ばっ…ちげーよ、何言ってんだ、いい加減にしろ」
「ふーん…その割りにはすげー切ない顔してたけどな」
「俺は別にそんな…」
「そんなつもりじゃないって?自覚なし…か、やれやれ」
半分呆れたような口調で皆方が言うと寸心はちょっと俯いて視線を逸らした。
「なんだ自覚してんじゃん。素直になれよ」

83:飛、父、飛 ミナスン(2/2)
06/12/25 19:24:20 ohVfuf2P0
皆方はニヤニヤ笑いながら寸心の肩をポンポン叩いて更に続けた。
「鱸さん鈍そうだし、そういう思考回路は持ってないと思うからやめといた方がいいぞ。」
「なに勝手に話進めてんだ、違うっつってんだろ」
「じゃあそういうことにして…俺なんかどう?」
「そういうことにって…つーか、どうって何が?」
「だから、俺にしとけよって言ってんの」
「だからじゃねーよ、意味わかんねーって」
「ああもう、堂々巡りだなぁ…」
額に手をあてて皆方が嘆いていると寸心がぶっきらぼうに言った。
「みんな向こうで待ってんだろ?もう行かねーと…」
「いや、後で落ち合おうって言ってあるんだ。俺が寸心連れて行くからって」
「なんだよ、それ」
「だってみんなの居る所じゃできないだろ、こんな話」


84:飛、父、飛 ミナスン(3/2)
06/12/25 19:25:50 ohVfuf2P0
暫く両者沈黙が続いた後、皆方が意を決したように言った。
「俺は寸心のこと好きだよ、恋愛感情って意味で」
「…」
「俺だってホントはこんなこと言うつもりなかったよ、ゾンビーズの仲間でいられればいいって
思ってたんだけどさ。
まさか鱸さんっていうダークホースが出てきて寸心を掻っ攫われるとは思わなかったんで。
なんかもう悠長な事言ってらんねーなって。」
皆方が肩を竦めながら言った。
「お前がすぐに鱸さんのことを忘れるなんて思ってないよ。
いつか忘れる日が来たら…それまで待つから。」
「皆方…」
皆方の真剣な目を見て寸心はそれ以上何も言えなくなった。
「でもただ待つだけじゃないからな。
色々作戦は考えてるからね、俺が本気出したら…わかってるよな?」
宣戦布告ともとれる皆方の言葉に寸心は困ったような表情をした。
それを見て皆方は場の雰囲気を和らげるように冗談めかして言った。
「まあ、俺は気が長い方だし、それに持久戦は得意なんだ」
「持久戦って…」
寸心が片方の眉をあげてチラッと皆方を見ると、はにかむように笑った。
「三日もったら褒めてやるよ」
そう言って歩き出した寸心を追いながら皆方は心の中でガッツポーズをとった。

85:風と木の名無しさん
06/12/25 19:28:55 ohVfuf2P0

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すみません、行数が思ったよりあって2分割で収まりませんでした。
なんかもう滅茶苦茶ですが後悔はしていな(ry


86:風と木の名無しさん
06/12/26 00:07:51 Zb7cdWEZ0
このスレになってから飛べオサーンが沢山読めて至福でございます


87:風と木の名無しさん
06/12/26 00:13:56 bVC7E5EA0
「飛、父、飛」をおいしく頂きました。また新作鑑賞できる時を待ってますわ。

88:風と木の名無しさん
06/12/26 00:24:18 OU/15vIl0
なぜいま飛、父、飛がこんなにもー!!夢のようです
いつか禁断の?アギスン鑑賞も叶うかもしれない…w
投下された姐さん方ありがとうございました!!

89:風と木の名無しさん
06/12/26 07:55:27 eeBs9VS3O
夏/目/漱/石×正/岡/子/規 です。

・東大時代からの親友なふたり
・子/規は既に俳句で名をあげてましたが、漱/石はまだただの教師
・ともに27歳の頃、子/規の故郷松山に漱/石が中学の教師として赴任、子規と同居していた時の話
・坊/ちゃんはこの時の体験がもとになってるとか

夏/目/漱/石→夏/目/金之助
正/岡/子/規→正/岡/常規/升



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

90:ソウセキシキ1
06/12/26 07:57:27 eeBs9VS3O
正岡がこの部屋に転がり込んできてからというもの、庵の一階は句会の拠り所となっている
毎日毎日、俳句をやる連中がガタガタと門をならしては「お頼みぃ」とやってくる
中学でも子規が松山に帰郷したことは有名で
「先生のところに子規サンいるんかな、もし」とかなんとか聞いてくる生徒もいる
“先生のところに子規サンが”いるうちはまだいいのだが―

「先生も俳句をおやりかな、もし」
「じゃあ先生は子規サンの弟子かね?」
「先生は子規サンと同じ家に住んでるんぞな」
「先生は子規さんとこにいるんかな、もし!」

いつのまにか子規の家に自分が居候してるかのような始末になっている

91:ソウセキシキ2
06/12/26 08:00:10 eeBs9VS3O
これは納得がいかない。居候は正岡の方なのだ。
これを正岡に話したところ、いつもの屈託無い笑顔で笑い飛ばされてしまった。

「あはは、あしが主で夏目が居候か!」
「お前が句会の連中に偉そうに語るものだから、このような誤解を受けるんだ」

門下の者が剥いていってくれたらしい柿を食べながらくつくつ笑っている。
まったくいい気なものだ。

「自分の生徒にまで勘違いされては困る」
「迷惑かな?」
「ああ、迷惑だ」

迷惑か…と呟くと正岡はまた柿を一口食べながらしばし思案した。
すると突然フッとあの皮肉な笑みを浮かべ

「朗君としては妾が主とは顔が立たんかな、もし?」
「…!」

などと曰うたのだ。
妾と朗君とは、互いがまだ学生の頃に交わした手紙に書いたお遊びの文句である。

「あしがいないと寂しいからなるべく早く御帰りとせかしたのは誰ぞね?」
「それはっ…」
「妾のためなら命の二つや三は進呈仕りと言っていた朗君はおみさんじゃなかったかな、もし」
「~~!」

92:ソウセキシキ3
06/12/26 08:01:52 eeBs9VS3O
「だいたい今回もおみさんが…」
「正岡…」
「夏めっ…?」

ああ―恥ずかしい。
何だって正岡はそんな昔の書簡まで事細かに覚えているのか。
若い時分に、冗談めかしながらも大真面目で書いたもの。
それをわかっているのか、いないのか、笑う正岡が憎たらしい。
恥ずかしさと憎さがが余ったところで、思わず正岡の口を塞いでしまった。

目を開ければ、呆気にとられた正岡の顔と、口に広がる柿の味

「若気の…至りだ」
「若気…」
「人をいじめるのも大概にしろ」
「…」
「それからあまり柿を食いすぎるな。甘くてかなわん」

ばつが悪く赤くなった顔を見せまいと、部屋を出ようと立ち上がると
その裾を正岡が引っ張った
引っ張られた裾が熱いように感じるのは、多分ただの幻覚

「柿…お食べ?」

上目でのぞいてくる正岡の顔が、嬉しそうに微笑んでいる。
微かに頬を染めて。なんだそれは反則じゃないか。

93:ソウセキシキ4
06/12/26 08:03:36 eeBs9VS3O
「おみさんねそれは照れ隠しかな、もし」
「…」
「甘党のおみさんが甘くてかなわないわけないぞな」
「…」
「それも、これも、若気の至り…かな?」
「…」

先刻まで憎らしかったヒヨコ口も、頬の赤さと相まうと、なんだか可愛らしいものに見えてくるから重傷だ

「あしはな、金之助」
「…」
「嬉しかったことはよう覚えてるんぞな」
「…」
「おみさんの照れ隠しもこれで何度めかな?あしはまーると全部覚えとるんぞな」

ふくふくと嬉しそうに笑い、柿を頬張る。
―ああこいつは、からかっている風をして
―からかってる風をして、自分も嬉しかったのだと
わかった瞬間にもう一度だけ、近づいて確かめたい衝動に襲われた。

「升…」
「ん?」

その口を、今度はちゃんと正面から重ねてみる。
やっぱり柿は、いやこの唇は、甘くてかなわない。

「…」
「…」
「金之助…?」
「慣れん」

94:ソウセキシキ5
06/12/26 08:05:48 eeBs9VS3O
あはははっ!と正岡は本当に腹を抱えて笑い転げた
ああ五月蝿い。五月蝿が心地の良い。
その笑い声ごとそのまままるっと抱きしめる。

「うるさいぞ、べらぼうめ!」
「もいっそ呼んでおみ、金之助」
「よべるか!」
「よんでおみ、のぼるって、よんでおみ」

目に涙を浮かべるくらい笑って笑って…嬉しそうに見つめてくれるな。
抱きしめた腕の中からピヨピヨないて欲張るその唇を、今日の三度目、口で塞いで黙らせた。

―接吻なぞ慣れないから
―ほしいほしいと強請るそれを、ただ塞ぐだけ、それだけだ
―照れ隠しで結構!!



そうして愚陀仏庵の夜は更けてゆく

95:風と木の名無しさん
06/12/26 08:11:04 eeBs9VS3O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



衝動で打ちましたが該当スレすらない状況…
稚拙な文でも投下させてくれる棚ありがとう
尻切れトンボですいませんでした

96:風と木の名無しさん
06/12/26 11:11:03 /9WZ5rgLO
ギャア禿萌えた!
可愛くて仕方ないよ(*´д`)ハァハァ
姐さんGJ!超GJ!!

97:風と木の名無しさん
06/12/26 11:24:55 nRnigSSbO
わあぁ、禿萌えた(´∀`*)GJ!
最近漱石や漱石作品萌えしてたところだから嬉しい。二人ともかわゆす。

98:風と木の名無しさん
06/12/26 15:10:10 3/p9mWey0
おわぁ、ハゲ萌えたGJ!
無茶苦茶いいな、のぼーるくん。
漱石もかーいい(´Д`*)

99:風と木の名無しさん
06/12/27 00:22:44 TkjWfjzzO
やっぱ日本人なんだなぁ と感じるw
和萌えがドストライクだ!姐さんGJ!

100:風と木の名無しさん
06/12/27 01:53:45 StfHugv30
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | ナマモノ棒球 トレイドされた先輩×区鳥の1番才丁者
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 降留戦頃の駄文の続きで、ヤッてしまいました・・・
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ※Caution!逆CPではないです
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

101:1
06/12/27 01:54:39 StfHugv30
「どぞ、ビール。」
「え、アルコールじゃなくてもいいよ。」
「俺、あっても飲めないっすから。ね、飲んで下さい。」
結構強引に酒を押しつけた。自分が舞い上がってしまっていたから、せめて彼にも酔ってもらいたかった。
「それじゃ、遠慮なく。」
ソファに掛けた彼はかしゃ、と音を立てて缶を開けて口をつける。小さな手や、かすかに動く喉にどきどきする。
「ああ、すいません俺、折角だったのに、あんまり話できなかった。」
「ううん、俺もあまりお前とは話せなかったから。」
そう言って左隣の俺を見上げる視線は穏やかで、ホッとした、とでも言いたげに見えた。
その表情に俺は嫌われていないんだなと安心する一方、そういう対象とは見られていない事も分かってしまう。
「前に・・・幕張で会った時の事、覚えてます?」
「うん。」
だったら思い出してもらおう、と唐突に切り出してみたが、即答されて言葉に詰まった。
「・・・やっぱり駄目っすか、俺じゃ。」
仕方ないから開き直って、もう一度彼に訊く。あれこれ細かく悩むよりは、強気で行く方が俺は得意だ。
「うん。ごめんな。」
缶を置きながら、半年前と全く同じ口調で言われる。しかし今日は、ここですぐに引き下がりたくはなかった。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch