07/01/20 04:07:42 30ARg730O
キャベツはキャベツ畑に住んでいる。
畑の脇にぼろいハリエニシダの家があって、ずっと、ずっと、ずーっと独りで暮らしてる。
キャベツはキャベツしか食べない。だから、ちびでやせっぽっちだ。
膝がちょっと隠れるか隠れないかしかない、短くてつぎはぎだらけの
黒いチュニックをたった一着だけ持っている。
擦り切れた袖口からは細っこい手首が覗いてて、
手首の先には小枝みたいな、いまにも折れちまいそうな指のついた小っちぇえ手がある。
ほつれて糸がはみだしてる裾からは、ガリガリで骨張った棒きれみてぇーな裸足の脚がのぞいてる。
膝はいつもひび割れてて、肌はカサカサ。かかとはガサガサだ。
お日さまにあたれねー病気のせいで血色は悪いし、こけた頬と落ち窪んだ目は
友達、略してダチの俺から見てもキモい。
真っ白な顔に、真っ黒な白目のあんまねぇー目だけが、ぐりぐりしてる。
唇は冬じゃなくても荒れて乾いてるし、とにかくキモい。
背なんか俺様の肩より低いんだ。俺はいつもキャベツのつむじを見下ろしてる。
キャベツの長い髪は真っ黒でバザバサで薄汚いけど、つむじだけはカワイイ。
村のみんなは、森の奥の先に、キャベツ畑があることも、キャベツが住んでることも知らない。
俺とキャベツだけの秘密だ。ガキの頃、森で迷子になってキャベツに会った。
出会ったときは同じぐらいだった背も、いまじゃ俺のがずっと高い。
キャベツは、ちっとも大きくならない。ガリガリでやせっぽっちで、ちびのまんまだ。