07/01/16 12:05:28 4SwKWfB10
楊玲は一声唸った後、また目の色を恍惚に染め、喘ぎ声をあげはじめた。
それは異様だが、ここでは日常である。
十メートル四方の王国が健在である事を示す、何よりの証拠だった。
「たぶん、藤吾は俺たちを救う気はない」
タープにくるまった密談の体勢で、開口一番にクリフは宣言した。
僕は苦い顔でうつむいた。今日の出来事を見ていれば、分かる。
「俺の頭に色々考えはあるがまだ、まとまっていない。
多分、今日で結果が出ると思う。智士、今夜も星を見てくれ」
僕は言われた通り、藤吾の時計が示した時報で起きあがり、見た結果をクリフに伝えた。
501:テュランの筏~海市4/11
07/01/16 12:06:18 4SwKWfB10
* * *
唯一の飲み物であるコiーラ。残りは半分の一ダースになった。日曜の深夜の事だ。
藤吾はほとんど飲めないし、ガブガブと飲み干し消費するのは主に榊少年であった。
だから、彼が最も先に口にしたのだろう。生来の気質、乱暴さと共に。
本来なら藤吾がそれを耳にする事はなかった。
全身白濁液にまみれ、時折、後孔からの出血に痛みを覚え、喉の渇きはずっと傍にあった。
与えられた毛布と、水なしで飲み下せる睡眠薬で、ぐっすり寝込んでいる筈だった。
だが、薬が体質に合わなかったのか。それとも薬の使用条件を越える程に、
喉が乾燥していたからか、しわがれた咳と共に吐き出してしまっていた。
「……大丈夫なのかよ。クニちゃん。
ほんとーに、あのおっさん、完全に落とせるまでここに篭もるのかよ」
「どうせお前らは『友達の家に泊まる』で一週間以上の外泊は可能なんだろ?
俺の所は両親長期不在だし。
矢野島名義で作った休暇届は、金曜日に投函したから、明日には校長の所へ届く
……榊、お前がしゃにむに消費しなければ、十日以上持つ計算だった」
強い調子で諌められ、口答えしていた榊は、鋭い視線に射竦められると、
唇を結んだ後にゴメンと小さく言った。
「国山さん。外からの補充は?」
これは細目のヨウ少年だった。
502:テュランの筏~海市5/11
07/01/16 12:07:23 4SwKWfB10
「基本的には無理だ。土砂崩れの仕掛けが予想以上に大きすぎた。
非常脱出用に作ったルートも塞がれた。外から掘り出してもらうしかない。
ただ連絡用の通信穴は使える。朝決まった時間に俺の部下が、そこを訪れる」
「ほんとーに、おっさん、落ちるかなぁ」
榊少年の視線が向いたので、慌てて藤吾は寝息に沿った肩の動きを作った。
「……落とさなくちゃならない。ここまで来たら。いや、最初にやると決めた時から。
心まで打ち砕いて、俺たちのものにする……持久戦になっても……」
暗く低い声色には、それに相応しい目の色が灯っていただろう。闇の色、漆黒。
聞きとがめた藤吾の身体がピクリと震えた。ヨウは更に目を細め、何か国山に耳打ちした。
「ああ、また、コンタクトつけなくちゃ。面倒だな。痛いし。カラーは体質に合わない」
「しかし、おっさんもまぬけだなぁ。カラコンと作り話で、あっさり信じるんだから」
榊はまた眠る藤吾へ視線を向ける。小さく笑いながら、国山は装填した。
「体質に合わないお陰で……用意した目薬は出番をなくした。
演技じゃない、ほんとうの涙だから……まぁ、信じざるを得ないだろう。
教師として……なぁ、藤吾先生」
声は、あやまたずに藤吾に向けられていた。
肩を揺らし、寝息を立てるその背中へ。
「え、何、何っ? 起きてるの、起きてるのかよ、おっさん!?」
すっとんきょうな声で、榊は二人の仲間と、藤吾の間で顔を動かしている。
「今、目を見開いた」
ヨウが指摘した瞬間、確かに藤吾は瞳孔をめいいっぱいに、開いていた。驚愕で。
503:テュランの筏~海市6/11
07/01/16 12:10:44 4SwKWfB10
「いいんですよ、起きても。先生。聞こえているんでしょう。
狸寝入りなんて、意地が悪いなぁ。
二日と半日分の信頼たしかに頂きました。
それが打ち壊される時が……心を支配するのに丁度いいんだけど。
ちょっと早すぎましたかね。別にこっちは構いませんですけど。
俺たちには、これからもまだまだ耐える時間は沢山……あるんですから。藤吾先生」
挑発口調で投げかける国山に、藤吾は乗らなかった。ただただ寝た振りを続けた。
ガクガク震える手足はどうしようもなく、それに連なり心も乱れていた。
誰もが藤吾の目覚めを確信して、離れた位置から薄い笑いを浮かべていた。
それでも動いたのは榊少年一人であった。毛布を剥ぎ取られ、乱暴に髪を掴みあげられる。
そこで初めて藤吾は覚醒した演技をしたが、誰もそんなものは気にしていなかった。
「では、お目覚めの一杯。いくぜ、おっさん」
たぎりかけたペニスが、騒いで飛び出そうとする藤吾の胸の内を、物理的にふさいだ。
犯される藤吾に、涙を流す者はもう誰も居なかった。藤吾自身も含めて。
身体中のあちこちをなぶられ、押し挿れられ、残酷な言葉を投げかけられながら、
藤吾はどこかでヒビ割れる音を聞いていた。
自分の中の音だと分かると、藤吾は笑い転げたい衝動に駆られた。
ヒビ。ヒビだなど、誰が言ったのだろう。自分の中の何が割れると言うのだろう。
これは卵の殻を破るのと同義。
枷から解き放たれ、飛翔するのは今をおいて他にはないのに。
壊れはしない。そう簡単に、心は打ち砕かれない。
504:テュランの筏~海市7/11
07/01/16 12:11:45 4SwKWfB10
……彼らはそれを知っているのだろうか。若く、まだ社会にも出ていない彼らは。
……教えてやらねばならない。身も心もものにするとはどういう事か。
……自分は、教師だ。師の立場で教えを施す者。別に内容が教科と決まった訳ではない。
……必要だと思った事は、何だって……教えてやらねばならない義務が、権利がある。
それがこの職を選んだ自分の使命なのだと、強く心に刻み込まれる。
どんよりと濁っていた藤吾の瞳に、暗い炎が灯った。
藤吾をもてあそんで笑う少年達は、誰もそれに気付かなかった。
声は出なくとも、身体で十分教育を施せた。最初のターゲットはヨウ少年であった。
細い目の奥で、犯される藤吾にどこか焦がれるような瞳の色があるのを、教師である藤吾が見逃す訳がなかった。
ヨウと一対一になった時、大仰に快楽の顔を作り、喘いで見せた。
彼にはもともとマゾっ気があったのかもしれない。
立場を入れ替えるのに、そう労は費やさなかった。
藤吾のものを受け入れた少年は甲高い悦びの声をあげ、
最初に被っていた、まやかしのSの仮面は粉々に砕けた。
排泄と偽り、出かけ、二人は適当な部屋で身体を交わした。
勘聡い国山が気付く前に、すでに支配する者とされる者の関係にあった二人は、行動を起こしていた。
生活の糧であるコiーラを、全て奪い、支配下に置いた。月曜日の夕方であった。
505:テュランの筏~海市8/11
07/01/16 12:12:59 4SwKWfB10
予想通り、次に脱落したのは榊少年だった。
苛立ちに紛れてスナックを漁り、暇さえあれば、ヨウに「裏切り者」と罵り言葉をかける。
これで、喉が渇かない訳はないのだ。
藤吾にとって幸運だったのは、ヨウが空手の有段者であった事だ。
国山はボディガードをも兼ねて、彼を傍に置いておいたらしい。
それが逆に今は、暴力的解決を選べない窮地に追い込まれているのだから、皮肉なものだ。
榊は渇きを忘れようと、足音高く歩き回っている。視線をコiーラの箱に釘付けに。
国山は腕を組み、藤吾から最も離れた位置で注意深く窺っている。
時折、榊に「無駄な動きはするな」「構うな」など短く檄を飛ばす。
だが、青褪めた顔色は、ついに戻らなかった。
火曜日の早朝、根を上げた榊は、ボトル一本と引き換えに、二人に組み伏せられた。
上も下も同時に犯され、身体中を白濁液にまみらせながら、榊はうつろな目を作った。
それでも交代交代に責めつづけると、少年は割れ鐘のような声で笑い始めた。
早まりすぎたか、と藤吾は少し後悔した。
食への欲望は貪欲でも、性に関しては、それほどではなかったのだろう。
たまに意識が正常に戻る事はあったが、それ以外は幼児のような行動で、
榊はずっとコiーラのボトルをしゃぶりつづけた。
火曜日の深夜の事である。助けはおろか、掘り出しが開始された様子すら、なかった。
506:テュランの筏~海市9/11
07/01/16 12:14:05 4SwKWfB10
水曜日の朝。取引を持ちかけてきたのは国山の方だった。
「降参する。だが、身体はあけ渡さない。交渉だ。
助けを呼ぶ。外へ声が繋がる通信穴は、俺しか知らない。
だけど土砂の量が多く、掘り出すまでに半日はかかるだろう。その間持たせる。
ボトル一本と引き換えに、助けを呼ぶ」
ほんとうに限界だったのだろう。
これだけ紡ぐにも、何度も空気を求めて喘ぎ、ひびわれた唇を手の甲でぬぐっていた。
ダンボールに腰掛けた藤吾は、腕を組んでにやにやと笑う。
「……何故、私が助けを欲しいと、そう、思うのかね?」
「あんたは、炭酸が飲めない。もう、限界だろう。俺は、まだしばらく持つ。
だから、この駆け引きは俺に分がある」
嘘だった。国山の精一杯の虚勢だと、藤吾は見抜いていた。
彼は駆け引きなどに出ず、黙って時刻になったら助けを呼び、半日だけ待てばいいのだ。
その半日も持たない程……国山は限界なのだ。藤吾は唇の端を吊り上げた。
「別に……どうだって、いい。助けなんて」
「……っ!?」
遠い目をして呟く藤吾に危険を感じたのか、見開き、国山は一歩後ずさった。
「君に、きちんと『教え終えた』ならば、助けを、考えてもいい」
ギクリと顔を強張らせた国山は、しかし動揺を押し隠した。震える唇で何とか紡ぐ。
「あんたは……狂ってる」
「そうかね」
507:テュランの筏~海市10/11
07/01/16 12:15:23 4SwKWfB10
短い藤吾の返答を、最後まで待たず、国山は時計にチラと視線を這わせた後、一目散に部屋を飛び出した。
足取りはふらついているが、目的を持った瞳だった。
藤吾はヨウの肩を押した。忠実な猟犬のように彼は駆け出す。
残った藤吾は部屋を見渡し、戸棚にボトルをしまった。鍵をポケットに落とす。
鍵が一本しかないのは、確認済みだった。そして榊を引っ張るようにして、後を追う。
この鍵が数奇な運命を辿り、海に投げ込まれて生涯を終えるなど、まだ誰も知らない。
「助けてっ! 早く、今すぐっ!」
土の廊下に出た途端、その悲痛な声は響き渡った。
出入り口近くの、工事用品などを置く棚から、国山は枯れた喉を震わせていた。
追いついたヨウが間もなく彼の動きを、固めて封じた。
身をよじって抵抗する国山に、藤吾は威厳を持ち、悠々と近づいていく。
青褪めた唇を結ぶ国山の前で、外へ繋がるパイプに、藤吾は握り締めた土塊を押し込んだ。
「無粋なまねを……」
怒りを押し殺した藤吾の口調に、怯む様子もなく、国山は足をばたつかせ「狂人」と罵りつづけた。
何故、教育をやり遂げようとするだけの、熱い教師の魂が分からないのか。
急に怒りに駆られた藤吾は、はがい締めにされている国山の制服を乱暴に剥ぎ取った。
「やめろっ、この変態教師」
狂人よりはマシであったが、それでもありがたくない呼び名に、藤吾は憤慨した。
508:テュランの筏~海市11/11
07/01/16 12:21:21 4SwKWfB10
ヨウに言いつけ、国山を押し倒す。はだけた胸を、ひたすら舐め続けるよう、榊に命じた。
「お前らっ……触るなっ……っ、ひ……っ、ひぁっ」
糖分の混じった舌が這い回る感触に、背筋を震わせ国山は悲鳴をあげた。
その間に藤吾は、国山の股間を観察し、卑猥な言葉も浴びせていたが、
果たして聞いていたのかどうか。彼はひたすら暴れて、喚いて、もがくだけだ。
さっさと身体に教え込んだ方がいい。判断した藤吾は、国山の足を広げ、後孔を晒した。
再び激しい罵り言葉が轟くが、ヨウに口への責めを命じると、まもなく止んだ。
ファスナーをおろし、いざ挿入しようという時に、潤滑の代わりが何もないのに気付いた。
取りに行くには遠かった。三人がかりで押さえつけている今、離れる訳にもいかない。
忌々しく藤吾は舌打ちした。ほんとうに、何もかもが足りなさすぎる。
藤吾の心に浮かぶ、いくつかの思考。
(このまま挿入……榊のように壊れるか? だが時間が)
(終らせなくては、教育を。心を支配する……)
(壊れても、支配には代わりない……最終手段だが)
その迷いが運命を分けた。国山と、藤吾の人生を。
「誰か、居るのかっ?」
四人の誰でもない、第三者の声が響いた。懐中電灯の薄い明かりが、差し込んでくる。
背後の出入り口の土砂は、それが透けるほどに薄くなっていた。
誰も返事はしなかったが、まもなく最後の土が取り払われ、外気と陽光が満ちた。
* * *
509:風と木の名無しさん
07/01/16 12:42:05 +jSR9GcK0
テュランタソ乙!!
この展開激しく萌えた。。。
510:風と木の名無しさん
07/01/16 13:56:30 8Ftj7SgZO
テュランタソGJ!!!!
藤吾逆転萌え!!!
でもこの後の展開でどうなるのか楽しみ(*´Д`)
511:風と木の名無しさん
07/01/16 22:27:14 71suZ/iL0
面白い…。
本当に面白い。萌えとか関係なく、ただただ面白い。
続き楽しみにしてます。
512:風と木の名無しさん
07/01/16 23:20:08 HdUXKIo0O
すげぇ…。
萌えとか通り越し手ハラハラドキドキしとる。
この過去が現在にどう繋がるんだろう…。
激しく続き期待!
513:風と木の名無しさん
07/01/17 00:30:40 tlcQcWbI0
こういう表現が適当かどうかわからないが、翻訳物のような面白さだ>テュラン
514:風と木の名無しさん
07/01/17 00:49:04 JlK6TOteO
何この乙の嵐…気持ち悪い。本気で面白いとか思ってるんだろうか…。
もっとレベル高い作品頼むよ!!
515:風と木の名無しさん
07/01/17 01:08:14 K7lpWDMrO
テュランタン乙!!!
ものすごく萌え&ハラハラする展開で続きが気になるよ
516:風と木の名無しさん
07/01/17 03:03:19 TBJKzqAH0
517:テュランの筏1/9
07/01/17 12:05:05 FyI39WtK0
十二日目
「動いていない……このいかだは」
それがクリフの出した結論だった。
僕は、呆然としていたのもあるが、頭の回転がおいついていなかった。
説明を求めて、クリフの肩をゆらす。
「星座の位置が全く変わっていない。
季節の傾きを計算に入れても……このいかだは初日の位置のまま移動していない」
床につけた傷だか数字だかつかないものを指で示し、クリフは目つきを鋭くした。
「だ、だって……二週間で助かるって。東の方に島があるって」
「客船が座礁した位置から、確かに東経に諸島はある。他は……全部でたらめだろう。
最初から希望をもたせる為だけに……十四日間という数値を設定したんだ」
僕は……顔面蒼白になっていただろう。
紙のように真っ白な色をして、激しくなりつつある鼓動を聞いていた。
……それじゃ、耐えても何にもならないじゃないか……
ポロポロ、ボロボロとまらず、僕はまた貴重な水分をムダにしてしまっていた。
クリフが目を閉じ、僕の髪に手の平を乗せた。
その温かみをもってしても、僕のこぼれる涙を止める事は出来なかった。
518:テュランの筏2/9
07/01/17 12:05:57 FyI39WtK0
「そんなにショックを受けるなら……俺の心だけにしまっておけばよかった」
ぽつりとつぶやくクリフに、僕はぶんぶんと頭を振った。
「ううん、そんな事はない。クリフが一人で心に抱え込まなくて、よかった。
心の構えが出来て、よかった。島影が見えなくても、絶望せずにすむ」
少しだけ表情をやわらげたクリフは、動きが止まった僕の頭を、ていねいになであげた。
「……藤吾をどうにかしなくては……いよいよトランクを奪わなくちゃならない。
締めあげ、何を考えているか聞き出さなくちゃならない。
今度は平和的にはすまない。暴力も辞さない」
独り言のように「明日」と唇を震わすクリフ。僕は呆然と、端正な横顔をながめていた。
タープを持ちあげ、太陽が昇る方向へ視線をやるクリフの目が、ふと僕を見下ろした。
「いつまで、泣いてるんだよ」
からかい気味にふわりと微笑むと、タープを持つ手を離せなかった為、
顔をやや斜めに近づけてきて……舌で僕の涙をなめとった。
「ん、あ……」
あまりに突然だったのもある。
クリフの顔がこれだけ接近するのに、身構えが出来なかった事もある。
鼓動は急激にやってきて、急カーブをえがいて最高潮に達していた。
耳まで一気に赤く染まるのも、下半身に血が集るのも、どちらも防げはしなかった。
519:テュランの筏3/9
07/01/17 12:07:53 FyI39WtK0
深刻な話をしているのに、なんで節操なしなんだ、僕は。
そう自分を叱ると、ますます恥ずかしくなって、紅潮するのをおさえられない。
唇を離したクリフは、不思議そうに、体温の高まった僕の顔を凝視する。
「辛いのか? ……大丈夫だ」
それは不安そうに泣いていた僕が、涙をこらえているのだと思って、安堵させようとかけた声なのだろう。
優しい吐息が、包まれたタープの中をかけめぐり……思い出させた。
強制的に行なわれた口での刺激。僕のがクリフの唇を割って入り、熱い息を絡められた中で、快楽を得た……思い出すな。
けんめいに止めようとしたが、勃起という生理現象は、もう僕の手にはおえなかった。
下半身でむくむくと起きあがる僕のペニスに気付き、クリフは目を丸くする。
見られてしまった! その恥ずかしさで、僕はまた全身の血液を下肢へと流れこませる。
「ごめん、思い出さないでっ……違う、違うんだ。ごめん、ごめん、クリフ」
文章になってない事を、僕はさんざんにわめきたてた。それこそクリフが呆れるまで。
「ごめんっ、違うのは分かってるのに、そんな場合じゃないのも、肌で感じてるのにっ……クリフ、ごめん」
顔を手で覆うのは、こぼれる涙をおさえる意味もあったし、赤面する頬を隠す意味もあった。
ただ、中途半端に燃え立ち、そのまま刺激を与えられずに放置された僕のペニスはたぎり、
マグマの噴火を直前にしながらも、きっかけがなく静まる火山のようになってしまっていた。
520:テュランの筏4/9
07/01/17 12:08:49 FyI39WtK0
「っ……ううっ」
どうすればいいのだか。このままじゃ苦しいだけだ。
けれど手はふさがっているし、場所を移動しようにも、この半端な持ち上がり状態では、とても歩けない。
爆発寸前の爆発物を抱えたように、僕はただ震えて呻いた。
しょうがないな、と苦笑する音が、頭上で聞こえた。
「辛いのは、そっちだったのか……まったく」
からかうような口調だった。それがかえって僕を救った。
「仕方ないっ……生理現象だし……空気こもって、熱いんだから、この中
……クリフは、突然だいたんな行動に出るし」
それこそ、自分をたなにあげて、クリフを責めるくらいには。
クリフは微笑んだ。きれいな八重歯を見せて。
「苦しいだろ……出しちゃえよ」
あ、と声をあげるひまもなく、暖かな手が、僕のペニスを包んだ。
さっきまで髪をなでていたそれは、口とは違う温度と、やわらかさを持っていた。
ぬくくて、しっとりしている。さらさらで、持っている球面の全てがなめらかだ。
その感触が全てクリフのものだと認識したとき、僕の背に走った電流は、
身体を反らせ、強い力で僕の下半身を前に押し出した。
「ん、う……んっ」
クリフは、ほんの二、三度、囲む手の平を動かしただけだった。
521:テュランの筏5/9
07/01/17 12:09:59 FyI39WtK0
それだけで、十分だった。僕の興奮は白濁となって、発される。
「ああ……っ」
ねっとりした液体が、タープに飛んだ。濃い緑色の表面に、
音を立てて着地し、白い染みとなってはりついた。
「あ……っ」
今度は、後悔の声。何しているんだ、僕は。
冷静さが戻ってきて、自分の行為を手ひどくなじった。
クリフのタープに、節操もなく、欲望の残滓をなすりつけるなんて、この恥知らず。
自分の頭をぽかぽか殴りつけたい。いや、それこそ今から実行に移そう。
両拳をつくり、すさまじい勢いで耳の上に向かっている最中、クリフは言った。
「……俺は、智士がほんとうにいやがってるのかと、そう思ってた……」
うつむきがちに、ぼそりとつぶやくその言葉を、理解するのに時間がかかった。
のんびりしすぎていたのだろう、僕は。
クリフはそれ以上なにも言わずに背を向け、白いものがこびりついたタープにもぐりこみ、くるまった。
「あ、あのっ……取り替えるよ、タープ。僕のと」
「いや、いい」
短く答えたクリフは、タープの中から手をひらひらと振った。
まもなく寝息とともに、規則正しく肩が上下しはじめた。
522:テュランの筏6/9
07/01/17 12:14:33 FyI39WtK0
彼を起こしてまで、話し合う事じゃない。
僕は自分のタープに戻り、彼の言葉の意味を、取り替えなくてもいいと言ったその心理を、おさまらない鼓動の中で考えつづけた。
疲労もあったのだろう。僕はぐっすり眠りこけてしまった。
目覚めたのは夕方だった。沈む太陽が海をオレンジ色に染めている。
見渡す四方、全部海と空だった。
すでに起きて水平線をながめていたクリフは、僕を見ていつも通りに接してきた。
黙々と、残り少なくなった水と食料を口に運ぶ。
これが全てなくなる前に……どんな形であれ、決着はつくのだ。
523:テュランの筏~海市7/9
07/01/17 12:15:29 FyI39WtK0
* * *
土中の彼らに知るすべはなかったが、日曜日から火曜日にかけて豪雨に見舞われていた。
防空壕の、崩れていた土砂は大分流され、湿った土は柔らかくなっていた。
その反省点としてか、藤吾は外出時には必ず雨傘を携帯するようになった。
だが、まだ反省すべき点はあった。
攻勢に出てから、余りにも短く足りない時間。
それに伴う、消化順序の誤った選択。助けが偶発的にも訪れやすい場所。
下準備も不十分だった。
教職を辞してからの藤吾は、反省点に拘りつづけ、その正体は何なのだろうと自問自答すると、答えは簡単。
終らなかった教育への未練、だった。
残りの人生を全て賭けても、彼は中途の教えをやり遂げねば、と抱いていた。
あの狂った閉鎖空間で過ごした為か、藤吾は既に同性、それも苦しみ悶える少年にしか勃たなくなっていた。
弊害と呼ぶよりは、むしろ目的を真っ当するには好都合であった。
藤吾はありとあらゆる準備を整え、選び抜かれた教材と共に、海を再教育の舞台に選んだ。
風の噂に聞いた、三人の少年のその後。
524:テュランの筏~海市8/9
07/01/17 12:17:05 FyI39WtK0
一人は、防空壕のあの深い空洞から身を投げた。埋め立て工事が始まる前日だったと言う。
一人は病院から未だに出てこず、一人は歌i舞伎町で名を馳せていると聞く。
あれから数年過ぎ、既に少年でなくなった彼らに、藤吾は全く興味を持たなかった。
藤吾は、五メートル近い幅の巨大な板を積荷とし、
教材道具の詰まった黒いトランクを手に、船へ乗り込み、乗客を検分した。
(赤毛の少年、一つに結んだ髪と目の細い所が似ている。最初に落ちるだろう。
腕っ節は細くボディガードは無理そうだが、今回は抵抗に対する準備も万全だ。彼が一人目)
(旅慣れている。金髪の少年、ああ、青い目。そっくりだ。意思の強そうな所が。
最後までてこずるなら彼だ――もっとも、今回は負けやしない。もし敗北する時は……)
(黒髪の、優等生面の日本人の少年。二人を足して割った感じだ。
欲望に忠実と言うよりは、むしろ意思畢竟の問題か。
扱いを間違えなければ、彼もすぐ落ちるだろう)
藤吾は何年もこうして、乗客に教え子を見出し、危険な航路客船に乗り込み、失望と共に目的地に着いてきた。
だが、今回は十分に沈没の危険性が高かった。
525:テュランの筏~海市9/9
07/01/17 12:18:20 FyI39WtK0
魔の海域と呼ばれる航路。建造八年。
船級協会には加入していない。積荷は綿花三万ポンド。
五十すぎた船長は、ベテランではあったが心身ともに衰えている。
藤吾は教えがいのありそうな少年たちから目を離さず、汽笛の音に身を委ねた。
* * *
※海市(かいし)~しんきろうの意※
藤吾の精神は……いや、正か異であるかなど、誰にも断定はできない。
ただ、一つ言える事はある。
彼の精神はどす黒く、闇の中にあった。
彼にとっては、救いの光も助けの手も、幻にすぎなかった。
彼はまだ、暗い穴の中に居た。
冷え切った土の中に置いてきぼりのままだった。
身体が光をまぶしく受け止める色のスーツをまとおうとも、
切り離された心は、黒々と丸まってうずくまっていた。
526:風と木の名無しさん
07/01/17 12:33:26 HnGBFRKC0
テュランタンGJ!
すがっていた希望はガセ!?
どどどどーするのー!?((((;゚Д゚)))
527:風と木の名無しさん
07/01/17 14:07:51 F1GxcnjW0
榊が病院、ヨウが歌i舞i伎i町で、国山が飛び降り…かな?
いずれにしろザマアミロだが。
藤吾は穏やかに発狂していたのだな。
絶望的な鬼畜展開もさる事ながら、ストーリーが素で面白い。
528:風と木の名無しさん
07/01/17 15:02:09 y3v2CtGVO
テュランタソGJ!!
極限に迫った展開…凄い!!
智士達の運命はどうなるんだろ……
はげしく期待。
静かに狂気になる藤吾GJ
529:風と木の名無しさん
07/01/17 16:55:55 eQlx4DvgO
クリフと智士萌えたw
智士の反応がかわいすぎる
530:吸血鬼8
07/01/17 18:01:32 kAXhyptF0
暖炉横のサイドボードに乗っている二つの銀の短剣が仄白く輝き、
城を囲む木々の影に覆われた部屋の黒をほんの少し弾いている。
見事な彫刻をあしらった一本の猫足で支えられた丸い天板の上には、
木製のコップに入った酒が横に置いたランプの灯に、
その琥珀色を際立たせていた。
干し肉をナイフで削って口に含み、アドルフは酒を
流し込んだ。どちらも、狩りが成功した時の祝杯用に持ち込んだものだ。
「おい、ほどほどにしとけよ。売る前に壊してしまうつもりか」
ランプの灯が届かない奥のカウチに腰かけ、
抱えた少年を未だ飽きもせず突きあげてる
相棒に苦笑して、酒をコップにつぎたす。
「わかっ、てる、って。‥‥‥ほら、しっかり、受け止め、ろよっ」
内部をかきまわすような激しい突き上げに、クラウスは
首をのけぞらせて悲鳴をあげる。擦られるたびに下半身に
痺れがはしり、中を突いてくる熱いヤンのモノのリアルな
感触にどうしようもなく体がうずき、心が翻弄される。
イかされて吐き出された精液と、だらだらと流れ続ける
先走りでグショグショのクラウスのモノはまたも弾けんと
膨張していた。
531:吸血鬼9
07/01/17 18:02:38 kAXhyptF0
「っ、あ‥はっ、ああっ」
「いい顔だ」
快感に押されて自分から腰を振りだしたクラウスの汗ばんだ体を
ヤンが片手で支え、もう片方で前を強く扱く。
「ひっ、あっ、ハッ、あああぁぁ‥‥!!」
部屋に満ちる少年の喘ぎ声が一際高まる。
体の中で弾けた衝撃にクラウスはすがるものを求めて、
無意識にヤンの背に爪をたててしがみつき、
少し遅れて達した。
強く締め付けてくる粘膜の心地よさを惜しみながら、
浅い息でビクビクと痙攣している体から己のモノを引き抜いた。
あっ、と小さくクラウスの口から声がもれる。
ヤンは脱ぎすてた服を拾って身にまとい始めた。
532:吸血鬼10
07/01/17 18:03:30 kAXhyptF0
さてどうするか。
アドルフはコップに残った酒を一気に呷り手の甲で口を拭った。
日も暮れて来た事だし、この闇にまぎれて村を突き抜け、
街に戻るのが一番良い。闇を恐れていたのに、今はその闇
が自分たちにとって好都合とは皮肉なものだ。
「んんっ」
少年の声がしたのでそちらに目をやると、
服を身につけたヤンが少年の口を覆っていた。
「おい、いいかげんにしろ」
さすがにあきれて嘆息した。
仕方ない。
明日の朝一番に村で馬車でも買って帰るか。
荷馬車でもいいが少年を隠すには屋根付きの馬車のほうがいい。
高額だが、少年の値段を考えればどうってことはない。
しかし‥‥‥。
改めて室内を見回して、見た目は古いがほとんどホコリの
かぶっていない整頓された家具を、今更ながらに不思議に思った。
「貴族どもの隠れ家ってとこか」
それとも‥‥‥いや、それはないか。
一瞬よぎった物騒な考えを、頭を軽く振り打ち消した。
だいたい少年が一人でいるくらいだ。
迷って困っているというふうではなかった。
よくここに来ているのだろう。
闇の支配者の住処であるわけがない。
何をおじけているんだか。
自嘲して、酒を飲みなおそうと空のコップを手に取った。
そんなに飲んではいないと思うのだが、目に翳みがかかっている
533:吸血鬼11
07/01/17 18:05:24 kAXhyptF0
「!?」
ちがう。
目が翳んでいるのではない。
これは霧だ。
霧が自分の体を覆っている。
ヴァンパイアの霧。
アドルフは戦慄した。
ヤン!と相棒を呼ぼうとするが声が出ない。
首に何か冷たいものが触れている。
体に力がはいらない。
そこから生気が奪われているのだ。
自分を覆っている霧がゆらっとゆらめき、
ゆっくりと人を象っていく。
首に触れているものが指だと理解したのを最後に
アドルフの呼吸が停止した。
534:吸血鬼12
07/01/17 18:06:35 kAXhyptF0
少年の口をしゃぶり、胸の飾りを転がしていたヤンは
ドタッという音がしたので振り返った。
そして、瞠目する。
暖炉の前、丸テーブルの横。
アドルフが仰向けに倒れている。
その脇に青年が立っていた。
白いうなじにかかるくせのない金髪と闇色の衣装を
仄かに輝かせて照らすランプの灯が大きく揺れる。
少し長めの前髪の合間にみえる金色の瞳は
異様な光をはなっていた。
どっと冷や汗が流れた。
人の域を超えた端正な顔立ち。
ヤンは今までの狩りで見慣れている。
昼間の狩りしか経験はなく実際に動いている
のは初めて見るが‥‥‥
間違えるはずがない。あれは‥‥
「ヴァ‥ンパイア‥!!」
今日はここまで
535:風と木の名無しさん
07/01/17 19:04:07 B/O3KG1fO
ウヒョー!(・∀・)
テュランタンも吸血鬼タンもGJ!
テュランタンはそろそろ佳境なのだろうか。
スレ覗く度に続きがあるよ。
続き期待!
536:風と木の名無しさん
07/01/17 20:02:20 bAYKXhOl0
吸血鬼タンも来てた!
ヴァンパイアついに登場でwktk
537:風と木の名無しさん
07/01/17 22:11:45 Bm2XPGetO
吸血鬼たんktkr(・∀・)!
ところでヤンは吸血鬼を見慣れてるの?
538:風と木の名無しさん
07/01/18 00:00:02 eQlx4DvgO
吸血鬼たんGJ!ヤンかなり気に入ったのなw
539:風と木の名無しさん
07/01/18 00:28:56 pf7UuINSO
筏
したらばで厨設定に萎えるって言われてた。
540:風と木の名無しさん
07/01/18 00:41:08 9kxc/0w/0
>>537
棺桶の中で眠ってる無害の吸血鬼は見慣れてるんだよ。
戦闘ゲージMAXの動いてる吸血鬼は初めて見たんだよ。
801チンピラも、吸血鬼タンの前では、可愛くアンアン言わされて
しまうのだろうかw
541:テュランの筏1/15
07/01/18 12:02:52 qg4wNRbU0
十三日目
昼近くまで、僕とクリフは、水平線に目をこらしつづけた。
楊玲の喘ぎ声を、日常の延長として、耳にとらえながら。
けれど、どこまでも空と海は完璧に二分された青を見せていた。
クリフは立ち上がった。僕もそれにつづく。
トランクに腰かけた藤吾が、接近に気づいて顔を上げた。
ポケットから奇怪な道具を取り出し、にやりと笑う。
この何日か、恥辱にあまんじず、耐えてきたからこそ、それは忌々しく禍禍しいものと一層感じられた。
「俺は、命令にしたがいに来たんじゃない」
クリフはぴしゃりと言った。藤吾は少しだけ眉をひそめる。
しかし、いやな笑いは、もう彼の顔の一部と化していた。
「十四日目に助かると、あんたは言った。けれど……まったく陸が見えてこない。
あんたの言葉がほんとうなら、とっくに見えてなければおかしい」
疑いを抱いた強い調子で、クリフは挑んだ。藤吾はくっと笑って、目を細めた。
「……俺はいかだが全く動いていないのを知っている」
真実を暴露するクリフを、藤吾は前髪を払ってあしらった。
彼は明らかに、嘲っていた。僕らを愚か者だと見下していた。
左手の甲を顎にあて、手首に光る腕時計に話しかけるように、小さく唇が動いた。
それは誰にも聞き取れなかった。僕はおろか、飛びかかろうと距離をつめるクリフにさえ。
542:テュランの筏2/15
07/01/18 12:04:08 qg4wNRbU0
「甘い希望をもたせて……最後にそれを打ち砕いて、懐柔しやすくする。
それがお前の狙いだったのかっ! もう俺たちは言いなりにならないっ!
これは、正当防衛だっ……」
自分に言い聞かせるのか、拳を振り上げながら叫ぶクリフ。
僕はあわてて加勢しようと駆けつける。作戦などなきに等しい。
身一つの僕らが上位に立てるのは、人数。
楊玲はとりあえず無視して、僕とクリフ。
藤吾を海に突き落として、水中に引きずり込めば……交互に呼吸して、勝てる。
もう殺人を厭っている場合ではなかった。
藤吾が降伏すれば、それで生きる道はあるが……可能性は非常に低いだろう。
そんな事を考えていたから、僕は藤吾のテュランたるゆえに気付けなかった。
その時には遅かった。
右ポケットに手をいれたままの、藤吾の危険を……最終兵器を。
バチン! といかだ全体が轟いた。昼間の陽光よりさらにまぶしく、海上を照らした。
焦げくさい匂いが、一瞬鼻先をかすめた。
まずい、と思ったが突進する足は止まらず、そのまま僕は餌食になってしまった。
藤吾が無造作に手を伸ばして向けるのは……スタンガン。
再びいかだ上で炸裂する閃光。胸の表面をビリ、と走った衝撃に全身がはじけた。
頭の芯がスパークする。膝から力が抜ける。
床に倒れたというのは……顎をぶつけた感覚で知った。
543:テュランの筏3/15
07/01/18 12:05:01 qg4wNRbU0
マヒして不自由な顔を、それでも動かすと……離れた位置でクリフも倒れていた。
うつぶせに、しかし鉄の意志で頭だけは起こし、憎憎しく藤吾をにらみつけている。
しびれる腕に力をこめ、起き上がろうと懸命になっている。
僕ら二人を見下ろし、藤吾はにんまりと唇を歪めた。
「楊玲」
そう言って、顎をしゃくった先は倒れ伏す僕だった。
飼主に忠実な番犬のように、楊玲はうなづき返し、僕の背中に馬乗りになった。
ズン、と圧迫され僕の内臓は無理やり歪められた。
背骨が折れそうに痛み、呼吸も満足に出来ない。
体格は同じくらいなのに、栄養状態がよく、肌も血行がめぐっている彼と、
ここ数日絶食に近い食生活を送ってきた僕との決定的差がここに現れた。
僕は、もがいても彼を振り落とす事が出来なかった。
「……、……」
楊玲は分からない言葉で、僕にささやきかける。
……何なんだ、その達観したような笑みは?
僕は怒りが湧きあがるのを感じた。
全身全霊をこめて腕を持ちあげようとするが、栄養不足の身体は気力についていかない。
その時、カシャリと鎖の音が響いた。
「クリフ君か……君は思ったより克己が強すぎた……はかどらない」
藤吾はそう言いながら、身動き出来ないクリフに、革の首輪を巻いた。
544:テュランの筏4/15
07/01/18 12:06:03 qg4wNRbU0
正面には長い鎖がつき、端は藤吾の手ににぎられている。
ちらりと僕の方を見、クリフに向き直る。
「意志の弱い二人は簡単におとせると思ったが……ま、朱に交われば赤くなる、と言ったところか」
鎖を乱暴に引くと、クリフは苦しげに呻きながら、引かれるままに身を起こす。
藤吾の前にさらけだされたクリフの胸の先端。そこに透明な二つの何かがつけられた。
透けるプラスチック製の……吸盤だ。
「なっ……」
絶句したクリフは、振り外そうとマヒの残る身体を左右に揺らした。
が、それはとても弱弱しく、胸の突端に吸いついたものは、びくともしない。
クリフの抵抗など意にも介さず、藤吾は片手でさぐったトランクから、手馴れた様子で品を取り出す。
「君のおかげで、日程がだいぶん狂ったよ。
楊玲はいいが、君たちは五日分も消化していない。
意志の弱そうな智士君の方は、一日でもかなり進められるだろうが……君は、ね。
短時間に集中して教えこむしか、あるまい?」
決して藤吾は質問し、意図をたずねたのではなかった。
鼻が近づくほど、顔が接近して行なわれた、威圧。脅し。
クリフが怯んだすきに、藤吾は手の中のものを突っこんだ。クリフの口に。
545:テュランの筏5/15
07/01/18 12:07:00 qg4wNRbU0
ゴルフボールより一回り小さなボールに、両端に黒いゴムがのびている。
指先でつついて口内に押し込むと、藤吾は手早くゴムを首の後ろに巻きつけ、結んだ。
「んぅ!」
口を強引に開かれたまま、閉じられない状況に陥り、クリフは大きく目を見開き、何かを発した。
もうそれは、誰にも聞きとる事ができない。
トランクから新たな品を取りだし、藤吾は鎖を引いて、クリフを物理的に大人しくさせた。
「サイズが小さいが……まぁ、がまんしろ」
藤吾は袋のラベルに目を通した後、不吉な事を口にした。
けれど、決して中断しようとはしなかった。
表面が黒光りする、皮のパーツ。革ひもで装着する、衣服の部品は、とても禍禍しかった。
肩と二の腕、手首、足、脛、腿、腰などと言った部分が、黒皮に包み込まれていく。
いや……強引に押し込まれていく。
サイズが小さいなんてものじゃない。伸びない素材を強引に、身体に合わせているだけだ。
その証拠に、クリフは身をよじり、呻き声をあげ、割れんばかりに目を見開き、皮膚が苛まれる苦痛を訴える。
黒い皮と白い肌、美しいコントラストにクリフは包まれ、苦悶の表情を見せている。
よほど苦しいのか脂汗が流れ、それはよりいっそうクリフを扇情的に見せた。
その皮の衣服は何せ……胸や股間を隠すパーツが、最初からないのだから。
にやにやと観察をしながら藤吾は、革ひもを結びあげていく。
546:テュランの筏6/15
07/01/18 12:11:11 qg4wNRbU0
「なかなか……ボンデージの似合う肌の色じゃないか……」
感想なのか、それとも嘲っているだけなのか。
クリフは後者にうけとり、頬を恥辱に赤く染めた後、んんっ、とわめいた。
「ええと……あとは」
藤吾はまだトランクを探っている。
僕は押さえつけられている腹で懸命に呼吸して「やめろ!」と叫んだ。
それはむなしく海上にこだまするだけだった。
小さな箱を取りだし開ける。藤吾の手には小さなリング状のものがあった。
近づいていくその先は……クリフのペニスだった。
手がふれた瞬間、クリフは嫌悪に顔を歪める。
が、藤吾はおかまいなしに一通りさすりあげ、それからゆっくりとリングを通しはじめた。
根元にしっかり収まると、藤吾は満足そうに手を離す。
「では、仕上げだ」
鎖の持ち方を変えると同時に、クリフの向きを仰向けからうつぶせにする。
抵抗むなしく、藤吾に尻をつきだした、卑猥な体勢をとらされる。
容赦なく、なめるような視線で見まわしクリフの羞恥をさそった後、藤吾はポケットからもったいぶって取り出す。
男根を模した……口に出すのもおぞましい……道具であった。
ゴムだかプラスチックの素材で、毒々しい色をしている。
藤吾はもう、よけいな口をはさまず、右手のそれを、あやまたずにクリフの後孔へ進めた。
547:テュランの筏7/15
07/01/18 12:12:17 qg4wNRbU0
首をめぐらせ、その様子を見ていたクリフの抵抗は……悲痛なものだった。
前進して逃れようとする行為は、鎖を引かれ、激しい呼吸困難とともに引き戻される。
咳きこむ声は、口枷にふさがれ、奇妙な色にくぐもっている。
咳きこみ力が抜けたところで、藤吾は力をこめて、突き入れる。
「ん、んむっ!」
クリフは限界まで目を見開き、その後痛々しく瞳は閉じられた。
僕はもう見ていられなかった。
無理やり蹂躙された後孔からしたたる血の音だけでも、卒倒してしまいそうだった。
水気をまったくもたない、無理やりに突き進む音。
内壁をえぐって、傷つけることもお構いなしに、藤吾は道具の挿入を終えた。
鎖を手に立ち上がる藤吾は、クリフの無残な後孔を気にした様子もなく、さて、と呟きポケットを探った。
痛みに呻くクリフの身体が、ビクンと音を立ててはねた。
そして身をよじり、何かをふるい落とそうとする無為な努力がつづく。
藤吾は無慈悲に鎖の幅を制限したし、刺激を高める胸の責め具は、外れることはなかった。
「これが、ローターか。じゃ、こっちが」
そう一人つぶやき、藤吾は反対側のポケットに触れる。
「んぁっ!」
クリフの身体は大きく、のけぞるように動いた。
首といわず、上半身といわず、鎖が許すかぎりその身を振る。
548:テュランの筏8/15
07/01/18 12:13:04 qg4wNRbU0
藤吾がつけ加えなくとも、クリフが腰を振り、
それを落とそうともがかなくても、僕にはその淫靡な音の発生源が分かった。
クリフの後孔にくわえこまれた、道具……バイブレーターだ。
敏感な二点を同時に責められる刺激に……クリフは目を閉じ、必死に唸り、
身体中から汗を流すほどの必死さで振りほどこうとしていた。
しかしそれをあざ笑うかのごとく、藤吾はポケットに入ったリモコンを操作する手を決してとめない。
残酷な言葉を投げかけ、鎖を引き、強弱、大小のリズム、時間差をおいた責めで、クリフの抵抗を一蹴する。
どのくらい時間がすぎただろうか。
数分かもしれないし、もしくは一時間と言われても、納得してしまったかもしれない。
口枷にはばまれてくぐもっていた声が、ただの熱い息と化した。
クリフの冴えた瞳は、にごり、うるみを帯びている。
上下していた肩は、その場所を腰にうつしたようだった。
全身汗ばむ肌は、上気して色っぽいピンクをしていた。
だが、その快楽も一瞬。すぐにクリフの声は恐ろしさに怯える色をもった。
「……んぐ、んん!」
身をよじり、痛みの表情を隠そうとしない。
左右に振られる腰、その間で揺れるクリフのペニスは……
生理的反応の勃起を、その根元にはめたリングによって拒否されていた。
549:テュランの筏9/15
07/01/18 12:14:03 qg4wNRbU0
「ぁあ、んんっ!」
興奮など人の意思で止められるものではない。
下半身に集まり、止らない血流を、むりやり収める輪に、
クリフは苦痛の全てを支配されてしまっている。
「ぐ、ぐっ、んんんんっ!」
いやいやと頭を振り、目尻からこぼれる涙。
口枷がなければ、その唇は懇願を作っただろうし、
両手は床についていなければ、胸の前で祈りの形に組まれただろう。
藤吾はしばらくその様子を、にやにや笑いで観察しつづけた。
尻にさわり、リモコンで刺激を増し、さんざんに悪魔のような所業でいたぶった後、
涙の跡を残すクリフに、耳を近づけささやいた。
「外してほしいか?」
クリフに、他になにができただろう。彼は涙のたまった瞳で、こくりとうなづいた。
その素直な反応に、藤吾は満足そうに首を振り、乱暴とも呼べる手際で、後孔をいたぶる道具を抜きとった。
「んぁ! んっ」
一瞬痛みに顔をしかめたクリフは、それでも片方の責めから解放され、息を吐いた。
が、ほんとうに恐ろしいのはこの後だったのだ。
「かわりに、これを挿れてから、だ」
クリフの腰に手をおき、もう一方の手でスラックスのファスナーを引き下げる藤吾。
550:テュランの筏10/15
07/01/18 12:15:05 qg4wNRbU0
彼の股間はすでに昂ぶっており……僕はその後の凄惨さを想像して……想像して……想像など、許されない。
許されるはずがないっ! お前みたいな奴が、クリフを汚す権利など、持っているものかっ!
とうとつに僕を支配したのは、強い怒り。心の底から憤怒が立ち上ってくる。
「どけっ、楊玲!」
僕の乱暴な口調に、ぽかんとした表情を作る、その一連でさえ、スローモーションだった。
神経から分泌されるアドレナリンが、時間も動作も、ぎゅっと縮めていたのかもしれない。
振り回した手は、僕の怒号をすべて含めて、楊玲の顎にヒットした。
彼が倒れるのも確認しないまま、僕は駆けた。タープに手を入れて、一番重い容器を拾う。
両手で抱え、キッと藤吾をにらみつけた。
白いスーツの男は、敵役にふさわしい笑みで、すでに右手にスタンガンを用意していた。
クリフの鎖は放していたが、さんざんに責めさいなまれた彼は、意識を失っているようだ。
……僕が、僕がクリフを救わなくちゃ!
僕は意思を強く灯した。今なら瞳の炎で、藤吾を炎熱地獄へも送ってやれるはずだ。
『……君は意思が弱そうだから……』
『……意思の弱そうな智士君……』
……お前が、お前がそう言った。違うって事を、今、見せてやる。
……弱くなんてない、クリフを守るためなら、お前だって打ち砕いてやる!
551:テュランの筏11/15
07/01/18 12:19:23 qg4wNRbU0
十メートルわずかの対角線をひた走るその間、気合の雄叫びが、勝手に口からもれていた。
藤吾は慢心と余裕で、動作が鈍かった。
いや、僕の体内に分泌される、アドレナリンの作用でそう見えるだけかもしれないが。
それは回避可能だった。けど僕はギリギリ避けた振りをする。藤吾の油断をさそう為だ。
一撃目が外れた藤吾は、忌々しそうに舌打ちをしたが、すぐに体勢を立て直す。
右手を伸ばして距離をおき、僕をけん制する。だが、それこそが望んでいた隙だった。
圧倒的な身長差は、クリティカルなダメージを与える頭部への攻撃を防ぐ。
他の部分は、僕の力で打ちかかっても、たいした打撃を与えられない。
何せ、水のつまったガラス瓶。それが唯一の武器なのだから。僕は狙いを絞っていた。
……藤吾のウィークポイントは何だ?
……何度も見せた。触れられると怒りとうろたえを露にした。
……左腕の時計だっ!
……あわてて体勢を崩せっ! そこを打ち砕いてやるっ!
右手のけん制を大回りして、僕は瓶をふりかざし、左手首に突進する。
藤吾は反応が遅れた。まさか、そんなところに攻撃をしかけるとは、予想だにしなかったのだろう。
このテュランの国で初めて、藤吾の表情がこわばった。
黒い瞳がめいいっぱい見開かれ、ギュッと閉じられた後、彼は意外な行動に出た。
ただガラスと共に砕けるはずだった腕時計を……彼はかばったのだ。
552:テュランの筏12/15
07/01/18 12:20:24 qg4wNRbU0
左腕を背に隠すため、身体をひねり、
その結果、僕の振りかざしたガラス瓶を、頭部で受け止める事になってしまった。
正確には右こめかみのななめ上。
そこで叩きつけたガラスは千にも万にも、破壊音を立てて砕けた。
キラキラと光る粉が空中を舞ったのは一瞬、まもなく吹き出す鮮血が混じり、
ドウと倒れる音と共に、いかだが大きく震えた。
僕の手には、瓶の首部分しか残っていなかった。
誰も動くものはない。いかだ上はただただ静寂に満ちていた。
どのくらい、すぎただろうか。
関節がこわばってしまった指をほぐすと、残った瓶の口が落ちて、音を立てて割れた。
それで動き出したのは楊玲だった。彼は動作の開始に、僕をなじる事を選んだ。
訳の分からない言葉で僕を指さし、顔を真っ赤にし、涙をこぼして訴えつづけた。
「……戮! ……挂……」
「何を言ってるか、分からないよ、楊玲」
僕は感情のこもらない口調で、そう答えた。
楊玲は半狂乱に首を振り、泣き顔で倒れた藤吾のところへ駆けていく。
僕はただただ冷ややかにそれを見送った。心に浮かんだのは、軽蔑の感情だったと思う。
だが、それに構っている暇はない。
僕は倒れふすクリフのもとに屈み、彼の身体を包む忌まわしいものを剥ぎとっていった。
553:テュランの筏13/15
07/01/18 12:21:30 qg4wNRbU0
革の拘束着は彼の白い肌にいくつも赤い痣を作っていた。
口枷は外したが、彼の顎は閉じ方を忘れてしまったみたいに、あいたままだった。
胸の責め具をそっと外す。彼の胸の先端はピンク色をすぎて、無残な赤となっていた。
最後に、ゆっくりとペニスを苛むリングを、抜いた。
「……んぅ……っ」
かすかにクリフは身じろぎした。目はまだ閉じられているが、唇がかすかにうごめいた。
かさついた表面がなにを欲しがっているかは、すぐ分かった。
「水だね、クリフ」
僕は、番人のいなくなった黒いトランクを一気に開放した。
……思えば、それが絶望のはじまりだったのではないか。
……開けてはいけないパンドラの箱。
トランクには、何もなかった。少なくとも僕らが必要とするものは。
忌まわしい性具は見覚えあるものから、そうでないものまで、まだ箱の半分を占めていた。
そして残り半分は、空っぽだった。
今まで僕らが飲み食いしてきた品物をつめれば、ちょうど収まるくらいの間。
呆然としていた時間はそれほど長くないと思う。クリフの呻く声が、聞こえてきたからだ。
意識を切りかえ、倒れている藤吾に近づく。
脇で泣きじゃくっている楊玲を邪険にどかすと、背広の内側からボトルを取り出した。
飲み口を気が済むまで手でこすってから、クリフの唇に当てる。
舌が水を求め、喉が小さくうごめきはじめた。
554:テュランの筏14/15
07/01/18 12:22:14 qg4wNRbU0
眉をひそめたクリフは、まもなくその冴えた青い瞳を開いた。
水平線に太陽が沈む。長い長い一日が終わろうとしていた。
暗くなって出来る事は限られていた。とりあえず、服を着込む。
藤吾は脈も呼吸も確認して……死んでいると分かった。
背広からめぼしい物だけ取り、死体は海に捨てた。
僕は殺人の罪悪感に苛まれるより、むしろ泣き止まない楊玲に苛立っていた。
思い出したように僕を睨みつけては、分からない言葉で僕をののしる。
「いったい、何が言いたいんだよっ!」
僕は耐え切れず叫び、楊玲を激しく揺さぶった。
クリフが止めようと間に割ってはいるが、僕は楊玲につめよった。
「解放されたんだっ、僕たちは。
テュランから自由になって、これから正真正銘、ほんとうに救われるんだっ!」
怒鳴った言葉が伝わっていないと思い、僕は楊玲の手の平を強引につかまえ、
指で「助」「救」と文字を書いた。
漢字の意味は理解したのだろう。
手の平をじっと見つめていた楊玲は、ふと僕に視線を向けた。
宝石のような見事な茶色。僕は彼の顔を正面から見るなんて初めてだった。
「アハ……」
555:テュランの筏15/15
07/01/18 12:23:14 qg4wNRbU0
そして、見とれていたためか、楊玲の発した意味が分からなかった。
きょとんとした表情をする僕の目の前で、楊玲は笑い顔のまま、床に座りこみ、
両手両足が弛緩した体勢で、ただ腹と喉を震わせた。
「アハハハハハハハハ……」
笑い声は万国共通だった。
どこか幼児めいた甲高さをふくめて、楊玲はただただ海上を、己の笑い声で支配する。
僕とクリフは、ただ顔を見合わせるだけだった。
闇の中、笑い声は止まず、それが耳にさわって、クリフと話し合えたのはこれだけだった。
「食料と水は、見当たらなかった」
「十四日目は、藤吾に『確実』な何かがあったんだろう。
食料と水を使い果たしても構わないような。
それが何だかは分からないが……明るくなったらトランクを探ってみよう。
位置を知らせる発信機か無線があるのかもしれない。海上自衛隊に連絡出来るだろうし」
「うん」
ほんとうはもっと話したい事があった。
けれども楊玲は一晩中笑いつづけた。
涙が途切れても、声が枯れても、ただただ横隔膜から発した音を空気に震わせ……
そして、いつの間にか発狂していた。
556:風と木の名無しさん
07/01/18 13:57:30 t9xbvcrxO
クリフ…(*´Д`)ハァハァ
タュランタンGJ!!
557:風と木の名無しさん
07/01/18 15:11:18 uC+YEhcm0
息を詰めて読んだよ……すげー盛り上がりだった。
しかしこれからどーなるの…。
558:風と木の名無しさん
07/01/18 18:28:30 NRduy+9JO
マジで藤吾死んだん?(゜Д゜;
テュランが居なくなったにも関わらず、ちっとも希望が見えてこないぞ。
早く…早く続きをぉぉぉぉノ(´Д`)ノ
559:風と木の名無しさん
07/01/18 22:03:39 dmp2/7pdO
テュランタソGJ!!
死亡…発狂……
どーなんのーー!!??
無事に生還出来ればいいけど…
560:風と木の名無しさん
07/01/18 22:23:30 /cYVGwko0
絶望の始まり……?
あの、こ こ から絶望が始まるんですか!?
561:風と木の名無しさん
07/01/18 23:36:43 DU3/1trK0
え・・藤吾は死んだの・??
すげぇ気になる
テュランタソGJ!!続きwktkしながらまってます
562:テュランの筏1/3
07/01/19 07:41:05 wAuYIsiB0
十四日目
……僕が、意思を強く持とうなんていうのが、おこがましかったのだ。
……弱いものは、弱いままでいればよかったのだ。弱いものが、人を馬鹿にするから。
……楊玲を、心が弱いものだと決めつけていたから。だから、気付けなかった。
……楊玲は、知っていたのだ。甘えた時に、聞かされたのかもしれない。
……それとも、いつだったか。トランクの中を見せてもらった時に、食料の量から逆算し、悟っていたのかもしれない。
……とにかく、楊玲の心は、僕がおよばないほど強かったのだ。
……悟った彼は、ただ十四日を安全に生き延びようと思い、実行しただけなのだ。
……そして、クリフ。孤高に生きる、誰より誇り高い意志を持つ彼。
……僕が彼に憧れ、まねしようとする事。それ自体がすでに間違えだったのだ。
……僕は弱い。意思が弱い。それを受け入れればよかったのだ。
……なまじ強くなろうと思った心は、誤った方向へ働いた。
……みんなを、犠牲にして。
……トランクには発信機も、無線もなかった。
563:テュランの筏2/3
07/01/19 07:42:01 wAuYIsiB0
ただあったのは手紙。「矢野島藤吾」宛。
死者の名前など、いまさら意味を持たないが。
発信者には全く聞いたことのない、メーカーの名前があった。
藤吾が左手首にはめている腕時計の機種名だ。
びんせんを開く前から、すでにいやな予感はあった。
……パンドラの箱から、絶望は飛び出している。
……用意周到で、狡猾な藤吾。
……最初に彼は何て、名乗った?
……「船長」だ。そして彼はテュランでもある。
「スイッチを入れますと、発信信号が送られます。
十四日間経過後、お客様との打ち合わせ通り、ヘリを遣わせます。
この機能はお客様の脈拍と連動しております。
万が一にも時計を外したりして脈拍が途切れてしまいますと、
発信は途絶え、以後位置を追う事は不可能となります。
どうか、ご注意ください」
564:テュランの筏3/3
07/01/19 07:43:12 wAuYIsiB0
……船長がいない船など、ただ死の波間をただよう板だ。
……暴君といえども、治めるものがない国は、崩壊する。
「なぁ、智士。そこには何て書いてあるんだ?」
日本語が読めないクリフは、僕にたずねる。
僕は答えられる訳もなく、ただ震える手で、手紙を持ちつづけていた。
――水も食料もない。
いかだに乗っているのは狂った一人と、もうすぐそうなる二人。
水平線はどこまでも続いている。
残酷に空と海とを二分しながら。
-------------------
終
565:風と木の名無しさん
07/01/19 08:53:47 VjmQXeFc0
うそおおおおおお!?
嘘だろ!?嘘だよね!?
………orz
言葉もありません…
大作をありがとうございました…
566:風と木の名無しさん
07/01/19 09:56:51 hfjbvz7FO
ええぇぇーーー!!!!!!?????
嘘ーー!!!
テュランタソGJです……
最終的に『教育』に繋がったね。ある意味藤吾は正常だったんだ。人間の限界まで迫り、緊迫の作品でした。本当にスバラチイ!!!
テュランタソ乙です!!
567:風と木の名無しさん
07/01/19 10:10:34 CwSAPvbW0
ぎゃーーーーー!
これほど恐ろしい結末だなんて思わなかったよ!
テュランタン、最後まで読み手を引っ張り回してくれてありがとう。
大作、お疲れ様でした!
568:風と木の名無しさん
07/01/19 11:06:51 yQryG8Re0
ススススイッチはもう入ってたから
その時点での大体の位置は判明してると思うの。
そこが海の上だし海難事故があったんだから
しししし信号が途絶えたらきっと海上保安庁に連絡してくれてると思うの。
569:風と木の名無しさん
07/01/19 11:24:25 hfjbvz7FO
藤吾が時計をかばって殴られた衝撃で不意にスイッチ入ったとか………
救助が来るまでその電波は持続しなければいけないなんて事……………(゜Д゜)
570:風と木の名無しさん
07/01/19 11:31:43 OgrwL19T0
テュランタソ乙!!
藤吾の行動の理由にすごく納得がいって
最後まで楽しんだよ。
どうもありがとうございました!!
571:風と木の名無しさん
07/01/19 11:34:29 hfjbvz7FO
全てピッタリ!!!
登場人物の心情をリアルに表していて大作でした。
テュランタソ乙です!!!!
572:風と木の名無しさん
07/01/19 11:37:07 su7G3MmX0
>「スイッチを入れますと、発信信号が送られます。
>十四日間経過後、お客様との打ち合わせ通り、ヘリを遣わせます。
スイッチは事故があった当日に入れてるんだよ。
で、14日経ってから信号が出てるところまで迎えに行くんでしょ。
573:風と木の名無しさん
07/01/19 11:38:12 su7G3MmX0
ごめん、572は569宛てね。
574:風と木の名無しさん
07/01/19 12:00:22 hfjbvz7FO
>>573
あぁ~~
納得!!!
でも信号が出ていて、その場で消えたからめやすは付くのかなぁ?
575:風と木の名無しさん
07/01/19 12:29:47 6oErWxGK0
目安ついてて欲しいよ
こんな怖い終わり方いやだー
576:風と木の名無しさん
07/01/19 12:45:19 T5h9vte/0
空から大海原の救命ボートとかを発見するのは
難しい場合もあるらしいぞ。
前にドキュメンタリーで見たのだが、
捜索の飛行機が遭難者たちの頭上を飛んでいたのに
気付けなかったんだって。
太陽光が水面に反射して海全体がキラキラし過ぎていて、
ボートのような小さな物はそれに紛れ込んでしまうらしい。
つーことは、目安が付いていて迎えに来てもらっても、
信号がなきゃ発見してもらえないかもだ。
577:風と木の名無しさん
07/01/19 12:46:02 T5h9vte/0
あ・・・あげちまった
スマソ
今夜もVIPPERの襲撃はあるんだろうか
578:風と木の名無しさん
07/01/19 13:26:26 tmVQ4krwO
テュランたん乙!面白かったよ
智士とクリフが無事生還して友情を育むハッピーエンドだと思ってた
予想外のEDでした/(^0^)\
579:風と木の名無しさん
07/01/19 14:18:47 ZNkK/dNf0
だがいかだの位置は変わっていないんだよな?
14日間同じ位置から信号が出てればおおよその見当はつくはず。
海と空から探せば・・・大丈夫だと思いたい。
だが鬼畜らしい最後でした、テュランたん有難うございました
580:風と木の名無しさん
07/01/19 16:46:09 d60yvoJTO
そろそろ雑談は
581:風と木の名無しさん
07/01/19 17:01:23 7h181if/0
なんで遭難用の道具なのに
2週間経過後救出なんだろうか?
元から藤吾が打ち合わせていた遭難だったの?
582:風と木の名無しさん
07/01/19 17:07:50 vYoXAj4/0
>>581
「十四日間経過後、お客様との打ち合わせ通り、ヘリを遣わせます。」
遭難自体は事故だが、遭難しそうな機会を探していたんだろう。
で、かねてより準備していた秘密兵器を使ったんだよ。
信号発信開始から14日後に来るってのが契約内容だった、と。
でもホントにそろそろしたらばに行った方が良さそうだね。
583:醜い吸血鬼 3ー1
07/01/20 04:07:42 30ARg730O
キャベツはキャベツ畑に住んでいる。
畑の脇にぼろいハリエニシダの家があって、ずっと、ずっと、ずーっと独りで暮らしてる。
キャベツはキャベツしか食べない。だから、ちびでやせっぽっちだ。
膝がちょっと隠れるか隠れないかしかない、短くてつぎはぎだらけの
黒いチュニックをたった一着だけ持っている。
擦り切れた袖口からは細っこい手首が覗いてて、
手首の先には小枝みたいな、いまにも折れちまいそうな指のついた小っちぇえ手がある。
ほつれて糸がはみだしてる裾からは、ガリガリで骨張った棒きれみてぇーな裸足の脚がのぞいてる。
膝はいつもひび割れてて、肌はカサカサ。かかとはガサガサだ。
お日さまにあたれねー病気のせいで血色は悪いし、こけた頬と落ち窪んだ目は
友達、略してダチの俺から見てもキモい。
真っ白な顔に、真っ黒な白目のあんまねぇー目だけが、ぐりぐりしてる。
唇は冬じゃなくても荒れて乾いてるし、とにかくキモい。
背なんか俺様の肩より低いんだ。俺はいつもキャベツのつむじを見下ろしてる。
キャベツの長い髪は真っ黒でバザバサで薄汚いけど、つむじだけはカワイイ。
村のみんなは、森の奥の先に、キャベツ畑があることも、キャベツが住んでることも知らない。
俺とキャベツだけの秘密だ。ガキの頃、森で迷子になってキャベツに会った。
出会ったときは同じぐらいだった背も、いまじゃ俺のがずっと高い。
キャベツは、ちっとも大きくならない。ガリガリでやせっぽっちで、ちびのまんまだ。
584:醜い吸血鬼 3ー2
07/01/20 04:09:11 30ARg730O
キャベツの家には大きな黒い煤けた鍋がひとつだけあって、
キャベツは細いからだで喘ぎながら汲み上げた、汲みたての澄んだ井戸水と
畑から抱えてきたキャベツをまるごとその鍋に入れて火にかける。
キャベツのキャベツ畑のキャベツはでかい!村一番のキャベツづくり名人(俺のおやじ)も
きっと「見事な結球だ!」って誉めるだろう。
鶏がらのスープもねえ。塩さえねえ。ただ真水でまるごと一個、ことこと茹でるだけ。
それだけなのに、超うまいのはなんでなんだろう。
キャベツらしいほんのりとした甘味が溶け込んだスープが◎。キャベツは芯まで喰えるんだ。
夜中、村を抜け出し会いにいくとキャベツは俺に、採れたてのキャベツを食わせてくれた。
食後のデザートは、すぅーっと吸い込むと胸がしんしん凍りそうな、でもそれがいい、氷菓子みてぇーな
冬の空気と、きらきら光る夜空のキャンディー。
キャベツ畑でふたりオリオンを見上げるのが超好きだった。
キャベツはあんまり、自分のことを話さない。
なんでそんなにキャベツが好きなのか尋ねたら、ミドリがキレイだからと小さくくすっと笑ってた。
ちらっと覗く八重歯に注目。醜い顔も笑うと、まあまあ見れた。
585:醜い吸血鬼 3ー3
07/01/20 04:10:43 30ARg730O
冬の終わり、街から吸血鬼狩りの一行がやって来た。
ハンターのダイスが森に吸血鬼が居るとゆれたとのこと。
森には近づくなと云われ、キャベツが心配になった。けどキャベツの小屋は森の外れだし、
あんな鶏ガラみたいなやせっぽっちには、吸血鬼もそそられないだろう。
一週間後、ハンターたちが安心しろ。吸血鬼はもう殺したと言って去って言った。
襲われてなんかねぇーとは思うけど、キャベツが吸血鬼の餌食になってないか気になって、
日が落ちてからキャベツ畑目指して駆けた。月の明るい夜だった。
小屋の戸を開けたら、やたらとニンニク臭かった。
部屋の隅にキャベツがうつぶせに倒れてて、捲れあがったチュニックから
肉のついてない平べったいケツがのぞいてた。ケツの割れ目にぶっとい杭が深々と刺さってる。
枯れ木みたいな手足は変な方向にボキボキ折れ曲がってて、
ガバッと顎が外れたみたいに開かされた口に、長い十字架がかまされてた。
まるでつっかえ棒だ。閉じたくても絶対に閉じられねぇー。
牙って呼ぶにはちびすぎる八重歯が見えてる。糞ッ!!
痛かったよな。苦しかったよな。きゅっと寄せられた眉間のしわ。
見開かれた真っ黒な目。涙の筋はきっともう乾いただけだろう。
木の床に残った爪痕や、爪と肉の隙間に入り込んでる木屑を見ていたら、
いっぱい泣いて、いっぱいもがいてたキャベツが見えた。
口の十字架を外して目蓋をおろし、ケツの杭を引き抜いた。
赤く腫れ上がって膿んでるキャベツの孔があまりにも痛々しかったから、口で膿を吸い出した。
吸って吸って全部、吸い出した。ちょっとでもキレイにしてやりたくて、擦過傷を舐めてたら、
孔の奥が臭った。むわぁ~っと臭ってくる臭さに覚えがあった。もしかしてと思って指を忍ばせさぐったら、
いびつな白い塊がごろっと出てきた。ニンニクだ。
細っこいからだをギュッとしながら、ばさばさの黒い髪をただ撫でた。
おしまい
586:風と木の名無しさん
07/01/20 06:08:52 bCBGH/Tg0
ちび吸血鬼タン、超GJ!
哀切で、いいですね。
いいと言うか、嫌と言うか。
悲しくなるつらいお話なので…。
で、ニアミスですが私も同じネタで↓
587:ハント 1
07/01/20 06:09:33 bCBGH/Tg0
慎重に口付けながら、私はミハイルの背中に手を回した。私の腕の中に
すっぽりと治まってしまうミハイルは、男相手に言うのもおかしいかも
しれないが、たおやかという言葉がしっくり来る。ミハイルもまた、
私の背中におずおずと手を回し、私たちの体は密着した。私は、昂ぶった
下半身をミハイルに押し付けた。今から、この華奢で美しい体を
我が物とできるのだ。私がどれほど感動しているか、ミハイルに
伝えようもないのがもどかしい。まして、その美しい体の内にある
ものこそが私を惹き付けて止まないのだとは。裏通りの安ホテルでことに
及ぶのがもったいない。こんな美しい生き物と一晩を過ごすのであれば、
町一番の高級ホテルのロイヤルスイートこそが似合いだろう。
だが今になってそんなことを嘆いてみても仕方ない。私たちはお互いを
食らうことに夢中で、セッティングに凝る余裕もなかったのだから。
私は唇をミハイルの柔らかな頬へ、そして耳へとずらしていく。
ミハイルが私の首筋に口付けようとしている。熱い息が首筋にかかった
その瞬間に、私は隠し持っていた銀の鎖をミハイルの首に巻きつけた。
ミハイルがはっと目を見開いた。素早く、驚くほどの力で私を
突き飛ばそうとする。だが私はそれを許さず、鎖を手繰ってミハイルを
床に引き倒した。ミハイルの愛らしい顔に浮かぶ驚愕と恐怖の表情が
いとおしい。大きく開いた口からのぞいているのは、歯と呼ぶには
あまりにも長い―牙が2本。
私の目に狂いはない。
588:ハント 2
07/01/20 06:10:16 bCBGH/Tg0
ミハイルは逃れようと激しく身を捩った。銀の鎖が巻き付いている以上、
蝙蝠だの鼠だのに化けて逃げることは叶わない。単に力と力の勝負だ。
こうなれば、実年齢はともかく肉体的には未だ少年の域を出ないミハイルが
私に逆らっても、時間と体力の無駄でしかなかった。
私はミハイルに馬乗りになって素早く拘束を進めていった。
両手を背中の後ろに捩り上げて、銀の手錠で繋ぐ。それから、右の足首を
捕えて同様に銀の手錠で右手首に繋いだ。左足一本では反撃もできまい。
私は自分の迅速な仕事に満足して、笑みを浮かべながらミハイルを見下ろした。
深緑色をしていたはずのミハイルの目が、赤く光っている。美しい。
ミハイルの薄茶色の髪には、緑よりも赤がよく似合う。
「縛めを外せ!」
ミハイルが私に命じた。なんという気の強さだろう。こうでなくてはいけない。
酒場で私と「親しくなった」ミハイルは、場慣れしていない引込み思案の
仔兎だった。それはそれで男たちの食指を動かすに充分な魅力ではあったが、
私の好みではない。ではなぜ声をかけたかって?
彼が誇り高く冷徹なヴァンパイアであることを、私が知っていたからだ。
589:ハント 3
07/01/20 06:11:10 bCBGH/Tg0
この国で幾人もの同性愛者が行方知れずになっている。そのうち幾人かは
変死体となって発見されている。そう私に連絡をしてきたのは、
旧い友人テオだった。だが、行方知れずになった彼らを誰も本気で探しては
くれないのだと、テオは電話の向こうで泣いていた。
どの国でも基本的には同じだが、ここ、森の彼方の国では、同性愛者は
ひどく肩身が狭い存在だった。人々は、それこそ吸血鬼を忌み嫌うのと
同じほどの悪意を込めて、我々を蔑んでいる。
それは別に構わない。心の葛藤は15年ほど前に済ませているし、だいたい、
ここは私の国ではないのだから。だが、テオからの便りを無視できるほど
私は孤高でもない。テオとは日が出ずる国で知り合った。私たちは、
その都の大変に開放的な町の2丁目で身を寄せ合い、お互いの青い春の
ひとときを捧げた仲なのだ。それに、テオと知り合わなかったら、
今の私はない。テオの国に残る伝説は、エメラルドの島の作家の妄想を通して、
世界中の人を魅了した。あれは良くできたフィクションで、私も楽しんだが―
決してただのお伽話ではないのだと教えてくれたのがテオだ。
そこから私の趣味と実益を兼ねた特殊技能開発が始まったと言える。
この国で過ごした何年かが、私の人生の岐路だったのだ。
590:ハント 4
07/01/20 06:11:40 bCBGH/Tg0
私はミハイルと名乗ったヴァンパイアの髪を掴んで引き摺り起こすと、
ベッドの上に放り投げた。弾んだ体が跳ね起きる前にのしかかり、
首の鎖をベッドヘッドに縛り付ける。左脚が蹴り上がってくるのを
ひょいと捕え、膝の上に座ってしまう。
ミハイルは赤い目を爛々と輝かせて私を睨み付けている。色々と、
不本意なのだろう。騙しているつもりで騙されていたことも、人間なんぞに
してやられたことも、捕らわれて体の自由を奪われたことも。
それに、どの国でもそうだと言うわけではないが、ここいらでは
ヴァンパイアは、よほど気に入った人間でなければ仲間にしないらしい。
おかげさまで、この辺りで私の獲物となってくれるのは揃いも揃って
気品ある美形ばかりだが、逆に言えば私がミハイルのお気に召すはずもない。
革のジャケットに擦り切れたジーンズといういでたちで、砂まみれになって
バイクを転がしている粗野な男など、虫けら以下の扱いだろう。
嬉しくて背筋がゾワゾワする。私の存在自体でもって彼を痛めつけることが
できるのだ。私は、腰の辺りまで足首を持ってこられているせいで
ストレッチでもしているかのように曲げられているミハイルの右脚に
手を伸ばした。膝からゆっくりと付け根まで撫で上げる。
「触るな! 下種!」
ミハイルが私に向かって唾を飛ばした。気の毒なことに、それは私にかからず
床に落ちていったが。
「触るなとは、随分ムチャを言う。私たちはこうすることを同意したはずだよ」
酒場で声をかけたのは私の方だ。彼に魅せられたという私をミハイルは
信じてくれた。いや、その言葉に嘘はないのだから、信じて当たり前なのだ。
私は今、ミハイルに猛烈に恋している。アンティークの硝子細工のような
ミハイル、冬の夜空から星を集めて練り固めたような不滅の存在。
君を汚して引き裂くことができる私は、世界一の幸せ者だ。
591:ハント 5
07/01/20 06:13:55 LL66XtoV0
ミハイルをひっくり返した私は、両手首を繋いでいた手錠を外して、
左手首と左足首に付け替えた。よくあるポーズだが、上体を起こさない限り
両膝を大きく開いたままになるこの格好を、私は、プライドが高い相手や
自制心が強い相手によく強いる。ミハイルも、白い頬に血の色を上らせている。
怒りか屈辱か羞恥か、その全部か。私は殊更ゆっくりとミハイルのシャツの
ボタンを外していった。
「その汚い手で私に触れるな! 虫唾が走る!」
ミハイルが怒鳴って暴れる。君に触れる手は汚ければ汚いほど好ましいと、
どう説明したらわかってもらえるだろうか。
シャツの中から現われた薄紅色の乳首に、私はそっと口付けた。
ミハイルが狂ったように身を捩る。下種、蛆虫と、罵倒の限りを尽くしてくれる。
「その蛆虫に体を舐め回されるご気分はいかがです、殿下」
舌先で珊瑚の粒のような突起を突つきながら言うと、ミハイルがぎりぎりと
歯ぎしりした。だが、私が珊瑚粒をチュッと吸ってやると、喉の奥で
可愛い声を立てる。さすがに、こういう方法で餌を引っかけていただけはある。
決して、初めてではないはずだ。指と舌とで胸を愛撫しながら、
膝でスラックスの上から性器にリズミカルに振動を与えていると、
肌がしっとりと汗ばんでくる。あれほどうるさかった口を閉じて、
ミハイルは奥歯を噛み締めている。声が、出てしまいそうかい?
592:ハント 6
07/01/20 06:14:58 LL66XtoV0
顔を下にずらしていき、スラックスの上から性器にほお擦りすると、ミハイルが
また大きな声で私を恫喝した。きっと後悔することになると。今さらだ。
ヴァンパイアを1人追う度に、私はこの生き物―生き物と言えるのかどうか、
よくわからないが―に心底魅せられてしまった自分を、呪わずにいられない。
それでなくても茨の道を歩くしかない性癖の持ち主だと言うのに、
ヴァンパイアを追い回すことが何よりも好きだなどと。知らずにいれば良かった。
彼らの魅力も、いや、彼らが実在する事実を、知らなかったら良かった。
私はベッドサイドに置いておいた鞄からナイフを取り出した。
いささかの恨みをこめて、乱暴に、スラックスとシャツを切り刻んでいく。
ミハイルは自分が裸に剥かれるのを、大きな目をいっそう大きく見開いて
睨み付けている。喚き散らさない、その気位の高さが好きだ。今までに
追いかけたヴァンパイアたちの中でも、ミハイルはずば抜けて上物だ。
銀の縛めより他に纏うものをなくしたミハイルの体は、内側から光を放つかと
思うほどに美しい。私が感嘆の溜息をついて見蕩れていると、ミハイルが
炎でも凍らせてしまいそうな声で声で呟いた。
「今までも―こうしてきたのか」
今まで。私が今までに狩ったヴァンパイアたちのことか。
「カーミラであれば、しなかったよ」
否定の言葉で肯定を伝える。何しろ同性愛者だからね。
だが、ヴァンパイア・フリークとしての私は雑食だ。
白髪が混じり始めた痩せぎすの紳士然としたヴァンパイアも、
筋骨逞しい戦士のようなヴァンパイアも、手に入れたものは一通り楽しく味わってきた。
違うのは料理の仕方くらいのものだ。
毅然としたヴァンパイアには尊厳ある最期を。
命乞いするヴァンパイアにはむごくおぞましい最期を。
私はどちらも本当に大好きだ。
593:ハント 7
07/01/20 06:16:07 LL66XtoV0
「私の眷族たちを消してきたのか」
ミハイルの詰問に、私は首を傾げてみせた。
「さあ。私も何人かを捕まえてきたけれど、ハンターは私1人ではないよ。
具体的に挙げてもらえば、私の獲物だったかどうか教えてあげられるが。
客に手渡したヴァンパイアに関しては、その後どうなったか知らないけれどね」
「薄汚い犬が…! 金で雇われての所業か」
こらえようとしたが、吹き出してしまった。
「金をもらうのは糧を得るためだ。君たちが我々を食べるのとどう違うのかな?」
本当は、少し違う。私は別にハンターを本業になどしていない。これは楽しみのために
やっていることで、金をもらわない限り狩りをしないのは自制のためだ。
だが、そんなこと、ミハイルにしてみれば同じことだろう。
屠殺場に引き立てた豚に押し倒され噛み付かれる、その屈辱をじっくり味わえばいい。
私は、大きく開いたミハイルの膝の間に座り込んで、可愛らしい色をした性器を
手に取り、ゆっくりと撫でさすった。ミハイルが呻き声を上げながら暴れる。
体を起こそうとしては鎖に引き戻され、鎖がジャラジャラと大きな音を立てた。
腰を捩る様は、淫らな舞踏のようだ。それを見るだけで私の腰の奥に痺れが走る。
ミハイルはなかなか応えようとはしないが、それも彼なりの精一杯のプライドなのだろう。
焦ることはない。私は手で支え持ちながらミハイルの性器に恭しく口付けた。
先端を啄ばんでいると、ミハイルの内股がぴくぴくと震え始める。
594:ハント 8
07/01/20 06:16:51 LL66XtoV0
自慢ではないが、私は手淫にも口淫にも自信がある。いや、性交に関して、
相手を悦ばせることにかけては他に引けを取らない。私の歴代の恋人達は
別れる時には「せめてセックスフレンドとして続けたい」とすがってきたものだ。
それもこれも、ヴァンパイアを愛するが故の修行の成果だ。
お互いの正体が明かされた後、私たちは和やかに愛し合うことは不可能だ。
私はそうしたいが、向こうが嫌がる。となれば、私はヴァンパイアを拘束して
一方的に愛するしかないのだ。だが私は自分のヴァンパイアに対する敬意と憧憬を
脇に置いておくことはできない。だから、精一杯尽くして、奉仕して、
楽しんでもらいたいと思うのだ。
ミハイルの性器が、芯を持ち始めた。裏側をジグザグに舐め上げながら、
先端の小さな穴に指先をひっかけて小刻みに動かしてやる。ミハイルの腰が、
ビクンと揺れた。袋を、猫の喉でも撫でるようにそろりと掻き上げると、
奥にある小さな孔がひくひくと動くのが見えた。慣れた体だと知れる。
唾液をたっぷり乗せた舌で、性器の先端の丸みを掠るように嘗め回すと、
唾液ではない液体がそこを濡らし始めた。ひとであることをやめても、
ひとと同じ生理が残っている。それをヴァンパイアたちはどう思うのだろうか。
ミハイルの足先が固く丸められ、シーツにめり込んでいる。私は密やかに笑った。
どんなにこらえようと、ひとと同じ浅ましさが、ミハイルを支配しているのだ。
見上げれば、ミハイルは目をきつく閉じて、平静を装っていた。
なんと愛らしいのだろう。もう性器は勃ち上がって、いやらしい汁までを
垂らしているというのに、誤魔化せると思っているのだ。
595:ハント 9
07/01/20 06:17:29 LL66XtoV0
やり方にもよるだろうが、逝きたいのをこらえて抑え込むと、下腹部全体が
快感の海に浸っているような状態になる。長い時間楽しめて、私は結構好きだ。
ミハイルもきっと今そんな感じなのだろうと思う。浅い息を繰り返しながら
体を震わせている。好むと好まざるとに関わらず、ミハイルは楽しんでいるのだ。
とめどもなく溢れるつやつやした露を、私は指先で掬い取った。
それを、ミハイルの唇にそっと塗り付ける。ミハイルがかっと目を見開いた。
私はもう一度露を指に絡め、今度はミハイルの鼻先にこすり付けた。
自分の匂いを楽しむといい。
ミハイルの眦が裂けた。目が燃えるようだ。
ミハイルが勢い良く頭をもたげ、銀の首輪がけたたましく軋んだ。
予期していた私がさっと手を引くと、ミハイルの牙は空しく空で噛み合わされた。
あれに噛まれたら私もただでは済まない。
ミハイルが怒りのあまりに震える声で私を罵った。
「下種めが…! 下品なことをせねば情を交わすこともできぬのだ、お前らは!
殺せ、お前などに触れられるくらいなら塵となって朽ち果てた方がよほどましだ!」
だからこそ、殺すのがもったいなのだと、ミハイルにはわからないのだろう。
「光栄だ」
私は取って置きの笑顔で答えて、ミハイルの鎖骨に口付けた。
596:ハント 10
07/01/20 06:18:14 LL66XtoV0
暴れる体にそのまま舌を這わせていく。珊瑚粒が、更に赤く色づいていた。
まるで熟したぐみの実のようなそれを、舌で、歯で、転がしてやる。
指先で脇腹や臍の周りなどを探っては悦いところを見つけて、くすぐった。
銀の縛めのこすり合わされる音、ミハイルの荒い息遣い、そして下腹から聞こえる
にちゃにちゃという粘った音が、混ざり合い、溶け合い、体に纏わりついてくる。
いつもミハイルを抱いているのは、どのような男なのだろう。このミハイルが
認めるほどの相手なら、さぞ凛々しい―恐らくはヴァンパイア、なのだろう。
突き上げてくる喜びに耐えられず、私は声を立てて笑った。
私などよりもはるかに美々しく堂々としているであろうヴァンパイアが、
麗しい恋人を私に寝取られている。そう思うと、胸の内が震えるほど幸福だった。
私は自分の着ていた服を脱ぎ去った。日に焼けて、あちこちに傷のある体は、
ひたすら白く滑らかなミハイルの体とは対照的だ。そのコントラストを楽しみながら
ゆっくりと、裸の肌を合わせた。汗が交じり合う。私という汚濁をなすり付けられ、
ミハイルが、言葉にもならない声を上げて私を呪っている。
私は自分の性器をミハイルの性器にこすり付けた。ひとの雄と鬼の雄とをまとめて
手の中に包んで、一つのもののように愛撫する。
「はなせっ! おぞましい……お前など、この薄汚いゴキブリがっ……」
いくら口を極めて罵ろうとも、私から溢れ出た露がミハイルの雄に絡み、
ミハイルから溢れ出た露が私の雄に絡んでいる事実は隠しようもない。
ミハイルの腰を抱え上げ、彼の目の前にすべてを晒してから、
わざと音を立てるように二人の性器を捏ね回した。初めて、ミハイルの顔が
悲痛な色を帯びた。気が遠くなるほどの美しさだ。恥辱ほど、誇り高い
生き物を美しく彩るものはない。
597:ハント 11
07/01/20 06:18:59 LL66XtoV0
ミハイルの顔を見つめているのは楽しい。平静など取り繕えなくなって、
眉根を切なげに寄せて浅い息を繰り返しながら、小刻みにかぶりを振っている。
嫌で嫌でたまらないのだろう。嫌でたまらないのに、私に屈するしかない。
どれほど悔しいだろう。どれほど恥かしいだろう。牙を突き立てられさえすれば
一瞬で私を殺すことができるミハイルが、私の下ではしたなく両脚を広げ、
拒むことのできない快感に喘いでいる。そうだ、ミハイル、君にこれを
拒むことはできない。蛆虫に体中を弄くられて悦ぶがいい。
私はミハイルの性器にもう一度舌を這わせた。
「や、やめろ……やめろ! 私に触るな……触るなっ、いやだ……!」
ミハイルが絞り出したその声は、もう命令と呼べるほどの強さを失っていた。
大きく固く育ちきったそれを深くくわえこんで、思い切り吸い上げた。
ミハイルの喉から、息が詰まるような音が響き、次いで、私の喉の奥に
熱いものが迸った。ドクン、ドクンと私の体内に流し込まれていくそれはまさに、
ミハイルの体の真ん中、奥深くから放たれる命の飛沫だった。
一滴も余すまい。私はミハイルの萎れたそれを扱いて絞り出し、吸い上げた。
598:ハント 12
07/01/20 06:20:46 LL66XtoV0
ぐったりと弛緩したミハイルの体をベッドの上にそろりと置く。
全身が汗に覆われてうっすらと光っているのが、すばらしく淫靡であでやかだ。
汗に触れたくて、手の平で胸を撫でた。途端に、ミハイルが激しい目を
私に向けてきた。突き刺さるようなその眼光。すばらしい……。
これしきの侮辱に打ち据えられるようなヴァンパイアではないのだ。
私はウットリとして、ミハイルの胸に唇を落とし、汗を吸い取った。
ミハイルが嫌悪に顔を歪めて吐き捨てた。
「汚らしい下等生物が……! お前に触れられるだけで身が腐れるわ。
この私に指一本触れる資格などない、さっさと縛めを解いて立ち去れ」
汚らしいことも、触れる資格もないことも重々承知の上で同意するが、
立ち去ることなど、どうしてできようか? 私はまだ思いを遂げてはいない。
599:ハント 13
07/01/20 06:21:22 LL66XtoV0
私は、ミハイルの小さな2つの丘の奥の淡い翳りを指で探った。
そこは既に流れ落ちた淫液で濡れそぼっている。ミハイルが吠えるような声を上げて
身を捩った。構わずに―と言うよりも嬉々として、私は慎ましく閉じている孔に
指を押し込んだ。一本ねじ込むのがやっとなほど、そこは激しく私を拒絶している。
「慣らした方が君のためだと思うが。ヴァンパイアだから痛くないということは
ないだろう? 皆、痛がっていたよ?」
暗に、彼の仲間を幾人もむごく陵辱してきたのだと伝え、笑いかけた。
視線で殺せるとしたらこんな目だろう。そういう目で、ミハイルが私を見る。
ああ、たまらない。これほどの憎しみを、他にどうすれば得ることができるだろう?
もがく腰を押さえつけながら、私はくり返し指をつぷりつぷりと抜き刺しして、
その感触を楽しんだ。ミハイルが少しでも力を抜くのなら、このまま解してやろうと
思っていたが、どうやらミハイルにその気はないらしい。ならば、これ以上
自分を焦らすこともないだろう。私は、ミハイルの尻に自分の雄をあてがった。
ミハイルが凄まじい唸り声をあげる。私の全身を電流が駆け抜けた。
地獄から移してきたような炎がミハイルの目で燃えている。乱れた髪はまるで
その炎に煽られて逆立っているかのようだ。むき出した牙は赤い唇と舌に
よく映えて白い。ああ、これだ。これこそが私を虜にしたもの。
私をヴァンパイア・ハントの中毒にしたもの。
危うく、ミハイルの中に入る前に絶頂を迎えてしまうところだった。
600:ハント 14
07/01/20 06:22:01 LL66XtoV0
私はひと思いに腰を落とした。
「ぐぁ!」
さすがに声を殺すことができなかったのか、ミハイルの喉からひしゃげたような
呻きが漏れた。優雅に整っていた顔が激痛に歪み、全身に鳥肌が立っている。
ゆで卵を剥いたようなつるりとした尻を、ラズベリージュースのような血が
流れ落ちていく。痛いだろう、可哀想に。けれど、ヴァンパイアはすぐに
傷を治してしまうのだから、容赦はしないでおこう。私は最初から激しく動いた。
ミハイルの腰を押さえつけ、乾いた音が響き渡るほど強く体を打ちつける。
ミハイルは目をきつく閉じ、歯を食い縛って、耐えるしかない痛みが
終わるのを待っている。後孔は惨たらしく裂け、だらだらと血が流れていた。
こうなるともう、力を抜いてリラックスなどできるはずもないだろう。
痛みに、体が強張ってしまう。それがきつい締め付けとなって、私を悦ばせる。
入り口の収縮はまるで私に噛み付くようで、それに逆らってこすりたてる度、
腰から全身に熱い痺れが走り抜けるのだ。このまま昇ってしまうのが惜しくて、
私は一度ギリギリまで引き抜き、先端を入り口に引っかけて、浅く抜き差しした。
ミハイルがふと息を吐いたその瞬間に、私は思いきり腰を突き上げる。
「ひぅっ!」
不意を突かれて耐え切れず、ミハイルは引き攣った悲鳴を上げた。
いい声だ。体にも心にも苦しみしか感じていない、そんな声だ。
私は立て続けにミハイルの奥深くを抉りまくった。一度悲鳴を上げてしまって
心が萎えているのか、それとも本当に限界なのか、歯を食い縛ったミハイルの
口元から小さな悲鳴が断続的にこぼれている。天上の楽の音でも、ここまで
耳に快くはないだろう。組み敷いた細い体から汗の臭いが立ち昇り、
その香しさもまた私を酔わせる。一晩中でも続けていたいほどの快楽だったが、
私の体はそこまで忍耐強くはできていなかった。届く限りの奥へと突き込んで、
私はミハイルの中に自分の精を迸らせた。
601:ハント 15
07/01/20 06:23:05 LL66XtoV0
抜き去って見ると、私の性器はミハイルの血にまみれていた。人から血を
抜いて命を永らえるヴァンパイアの血が、私の生の象徴を飾っているのだ。
思えば、ヴァンパイアは不思議な生物だ。魔物だからという意味ではない。
他の魔物がどうなのかは知らないが―と言うよりも、他にも魔物と言うものが
存在するのかどうか私は知らないし、魔物の定義も知らないが―、
生まれついてのヴァンパイアはいないのだ。彼らも、この世に生を受けた時は
すべからく人だったのだ。それが血を吸われて人ではないものに変化した。
このような存在は、他にはない。そして、最初のヴァンパイアはいったい
どうやって生まれてきたのだろうか? ベッドに死んだように横たわっている
この白い体の中に、その疑問を解く徴が隠されているのかもしれない。
そういう理由で私にハントを依頼してくる人間もいるのだ。だが私にとっては
それはどうでも良いことだ。謎は謎のままの方がロマンティックでいい。
だから私は、いつも淡々と仕事を進める。今夜のここまでは楽しみのためで、
ここからは先は仕事だ。
(続きます)
602:風と木の名無しさん
07/01/20 08:25:59 mnkWnEAf0
ハントさんGJ!!
朝からワクワクニラニラしながら読んだよ
続き激しく楽しみにしてまつ
603:風と木の名無しさん
07/01/20 10:22:33 bBMauwAEO
ハントタソGJ
雰囲気がエロくて最高です!!!
これからどんな風にミハイルを攻めたてるのか楽しみ!!
604:風と木の名無しさん
07/01/20 11:05:00 KgA3KONlO
ハントさんGJ!気高いミハイルをこれからどうするんだw
続き楽しみに待ってます
605:風と木の名無しさん
07/01/20 11:37:59 hjNriwj70
吸血鬼祭ktkr
残酷童話風のちび吸血鬼タンも、
アダルトなハントタンも、
激しくGJです!
本家の吸血鬼タンも光臨よろしく!
606:風と木の名無しさん
07/01/20 13:34:49 4I3GiDJY0
ハントさんGJ!
ここから先は仕事って、何するんだ?
続き超楽しみです
607:風と木の名無しさん
07/01/20 19:07:10 pHv2qVxZ0
お前ら隔離スレ戻ってくれない?
608:風と木の名無しさん
07/01/21 14:33:44 BM+/H1xqO
だが断るーっ!!
609:風と木の名無しさん
07/01/21 16:04:15 vYaPC+Lw0
>>608
したらばで全部バレてるぞ、嫌隔離厨。
なりすまし工作なんかしてないで
さっさと隔離のしたらばに池。
そして二度と戻ってくるな。キモイから
610:風と木の名無しさん
07/01/21 16:15:40 d2i0sRAG0
>607->608
まとめて隔離に消えろ
ハントタンGJ!
エロい雰囲気がたまらない
611:風と木の名無しさん
07/01/21 17:32:40 0448DlLVO
数日ぶりに来たら良作がたくさん来てて嬉しいw
吸血鬼たん、テュランたん、ハントたんGJ!
612:ハント 16
07/01/21 20:28:51 bB2p2/+B0
以下、残酷な描写が出てきます。(特に20~22)
苦手な方は読まないで下さい。
======================================
私は、自分の鞄の中から、特別に作らせた金属製の密封容器を取り出した。
蓋を開けると、それまでピクリとも動かなかったミハイルが身じろぎ、
苦しげな呻きを漏らした。私が箱を手にしてベッドに戻ると、
ミハイルは体を捻って後ずさった。
「よせ……それを私に近づけるな。よさないか……!」
牙をむき出し、瞳をぎらつかせて、ミハイルは私に命じた。言葉は勇ましいが、
従う者のない命令ほど惨めなものはない。
私はベッドに乗り上げると、ミハイルの丸い膝頭を捕えて引き寄せた。
ミハイルが呪詛の声を低く長く吐き出す。耐えられないと言うように、
強張った体をほんのわずかでも私から離そうともがいている。
箱の中身は、ニンニクだ。旧い時代からずっと、魔除けとして
人が軒先にぶら下げてきたあれだ。ヴァンパイアがなぜニンニクを嫌うのか、
まだ解明されていない。私がヴァンパイアから直接聞き出しただけでも、
「臭い」「熱い」「痛い」「怖い」と、返った答は多種多様だった。
恐らくはヴァンパイア自身でもハッキリとした理由など知らないのだろう。
わかっているのは、これがヴァンパイアの力を弱めるということだけだ。
私は、ミハイルの腹の上で箱をひっくり返して、ニンニクをぶちまけた。
ニンニクは皮を剥いてある。長い期間を通して護符がわりに使うのなら剥かないが、
ヴァンパイアに直接用いるのであれば、剥いた方が効果が強烈なのだ。
腹の上にニンニクを撒かれ、ミハイルが、火の粉でも被ったかのように
顔を歪めて身を捩った。コロコロと転がったニンニクを手に取って、
私は改めてミハイルの後孔を眺めた。私がズタズタに引き裂いたそこは赤く爆ぜて、
未だ止まらぬ血に湿っている。傷に塩を塗り込むのと似たようなものなのだろうと
想像しながら、私はニンニクを1つ、ミハイルの後孔に押し当てた。
613:ハント 17
07/01/21 20:29:25 bB2p2/+B0
「やめろっ、いやだ! やめろ、ああ、やめないか……!」
さすがにミハイルも度を失っているのか、上擦った声を出す。私はニンニクを
ミハイルの中に押し込んだ。ミハイルの体が大きく跳ね上がった。押さえつけて、
2片目を押し込む。ミハイルが感電したかのように硬直する。苦しいのだろう。
血の気を失った顔が凄まじく歪み、引き攣っている。私は次々にニンニクを
ミハイルの孔に詰めていった。今やミハイルの体は激しく痙攣し続けている。
目は白目を剥かんばかりで、食い縛った歯の隙間からは泡を吹いている。
ひゅうひゅうと漏れる息は、もう悲鳴を上げる力すらないことを示していた。
半分を尻に詰めてしまうと、私は残りのニンニクを手に持って、
ミハイルの顔の方へと移動した。食い縛っている歯を、ナイフでこじ開ける。
その隙間から、ニンニクを口の中へと押し込んでいった。つややかに光る牙に
ニンニクをこすり付けてやると、ミハイルが、さしもの私でも背筋が寒くなるような
凄惨な声を上げて抗った。私はミハイルの額を膝で押さえつけながら、
ニンニクの最期の一片までを口の奥へと落とし込んだ。それからタオルで
猿轡を噛ませ、仕上げに銀の細い鎖をタオルの上から巻き付けて固定した。
614:ハント 18
07/01/21 20:29:58 bB2p2/+B0
ミハイルは目を大きく見開いて虚空を睨み、ガクガクと首を振っている。
しなやかな体がベッドの上で幾度も跳ねる。全身から、声のない悲鳴が迸っている。
心の中では誰かに助けを求めているかもしれない。来るはずのない助けを求めて、
恋しい男の名を呼び、泣き叫んでいるのかもしれない。
私は、自分の雄が昂ぶってくるのを感じた。いけない、いけない。
もう私の楽しみの時間は終わったのだ。今は仕事中だ。さかっている場合ではない。
私は、ミハイルの首をベッドに結わえ付けている鎖の具合を確かめた上で、
携帯電話を取り出して依頼人を呼び出した。通話が終わってから、
水で濡らしたタオルで簡単に自分の体を拭う。シャワーを浴びたいところだが、
ミハイルから完全に目を離すのはいくらなんでも危ない。
私が衣服を整えて身繕いを済ませてすぐ、依頼人がドアをノックした。
ドアを開け、依頼人を招じ入れる。
依頼人は、友人のテオだ。顔が青ざめ、口元がぴりぴりと痙攣している。
無理もなかった。この国に生まれ育ったとは言っても、テオはヴァンパイアに
実際に接するのは、これが初めてなのだ。一般人なら当たり前のことだった。
私がニンニクを使ったのはこのためだ。ずぶの素人をハントに関わらせるなら、
事故予防措置には神経質なほどに気を遣わねばならない。
「口枷は絶対に外すな。噛まれたらひとたまりもないぞ。首と手足の鎖もだ」
私がそう言うと、テオは私を見ようともせずに頷いた。目はベッドの上で
のた打ち回っているミハイルに据えられている。
615:ハント 19
07/01/21 20:31:04 bB2p2/+B0
テオは、持ってきた鞄を床に下ろした。中に何が入っているのか、想像は
ついていたが、数が想像とは違っていた。太い木の杭が、2本。
2本も、どうする気なのだろうか。私は口を出さずにテオを見守った。
何をどうしようと、テオが無事に本懐を遂げられたらそれでいい。
テオは、杭を1本掴むと、ミハイルに近寄っていった。ミハイルは、
大きな目でテオを見つめている。テオは、ミハイルの横に立つと、
それこそ悪鬼が取り憑いたような顔をして、ミハイルの全身をねめつけた。
「お前が―お前が、トライアンを―」
ぼそぼそと呟いた言葉の意味など、ミハイルにはわかるまい。
トライアンは、テオが一緒に暮していた恋人だ。行方不明となった同性愛者たちが
ヴァンパイアの餌食になったようだと言い出したのは、トライアンだったそうだ。
テオが私に連絡を取り、私が情報を集めたり実地検分したりしているうちに、
トライアンも姿を消した。沼のほとりで見つかった干からびた死体が、
捜索願いが出ていたトライアンだと警察から連絡が入ったのは、先週のことだった。
もう少し早く私がミハイルを探し当てていたらと、心が痛まないでもない。
だが、腕に覚えもないのにヴァンパイアの名を口に上らせたトライアンも悪いのだ。
それでもトライアンは、私の大切な友人の、大切な伴侶だった。義理はある。
616:ハント 20
07/01/21 20:31:53 bB2p2/+B0
テオは、杭を持ち上げると、見せ付けるようにミハイルの上にかざしてから、
尻の間へと持っていった。先端は、思ったほど尖らせてもいない。
この国に育った人間として、テオも、何百年も前に行われていた処刑方法を
よく知っているわけだ。鋭利な刃より鈍らな刃で斬られる方が痛いのと同様に、
尖っていない杭で抉られる方が痛みが激しい。2本使うつもりであることを
考慮して、私は一つだけテオに念を押した。
「知っているだろうが、杭は斜めに押し込んでいけ。心臓を傷付けたら終わりだ」
テオは静かに頷くと、杭の先をミハイルの後孔にあてがった。
ミハイルの目は恐怖を顕にして今にも飛び出しそうだ。それでもミハイルは、
命乞いをする素振りは見せない。助かるわけがないと悟っているのかもしれないが。
何にせよ、ミハイルが取り乱さないのは私にとっては嬉しいことだった。
どれほど残忍な目にあわされようとも、ヴァンパイアたるもの、人間ごときの前で
醜態を晒さずにいて欲しい。私の勝手な理想に過ぎないことは百も承知だが、
私が葬ってきたヴァンパイアのほとんどは、その理想を具現化してくれていた。
私がミハイルの態度に陶酔を覚えている間に、テオもまた頭に血を上らせて息を荒げ、
片手でミハイルの腰を押さえると、杭を持つ手に力を込めた。
「思い知れ、化け物…!」
その言葉と共に、テオは杭をミハイルに突き入れた。
617:ハント 21
07/01/21 20:32:25 bB2p2/+B0
ミハイルが仰け反った。めりめりと音が聞こえそうなほど大きく孔が開かれ、
裂け、血が吹き出した。当たり前だが、私が犯した時などとは比べものにならない。
それでも、まだ3分の1も入ってはいない。杭は、ミハイルの胴と同じ程に長い。
これから杭は腹を抉り、胸を掻き割り、鎖骨を折り砕いて肩を突き破るのだ。
ミハイルが、美しいヴァンパイアが、今から壊れていく。
目に映るはずの光景を脳裏に描くだけで、腰の奥に疼きが生じた。
だが、荒くなる息を押さえて待っているのに、杭がなかなか動こうとしない。
時間をかけて嬲るつもりかとテオを見やると、テオは真っ青になって、
瘧にかかったかのように震えていた。ヒッヒッと妙な息を漏らしている。
私はすかさず頭を切り替えて、テオの肩を抱いた。
「無理はするな。もう充分だ」
そう言ってやると、テオは顔を覆って崩れ落ちた。それを抱き止め、
部屋の隅に置いてある椅子に座らせる。
「すまん―俺は、何と無様な―」
すすり泣きながら言うテオの肩を、私は優しく叩いてやった。
「まともな人間ならこれが普通だ。気にするんじゃない。トライアンだって、
お前につらい思いをさせたいなんて思っちゃいないさ」
今は群雄割拠の戦国時代ではない。見せしめのために捕虜を串刺しにして野に晒し、
丸二日かけて死に至らしめた、そんな時代ではないのだ。今の時代にそんなことを
平気でできるようなら変質者だ。―私のような。
「どうする。もう1本は? 自分でするのか?」
私が問いかけると、テオは弱々しくかぶりを振った。
「すまないが、お前がやってくれないか。俺は、こいつが死ぬのを見届けられたら
それでいいから」
「朝まで放っておくと言う手もある。この状態で朝日に当てれば同じことだ」
「いい! 今、止めを刺してくれ」
「わかった」
私は、床に転がっていたもう一本の杭を手に取った。
618:ハント 22
07/01/21 20:33:03 bB2p2/+B0
見下ろしたミハイルは、とてつもなく美しかった。
血の気を失って透き通るような白い肌。燃え盛る血の色の瞳。
同じ色が、私を散々楽しませてくれた尻に華麗な模様を描いている。
その模様の中心に突き出した杭の醜怪さも、ミハイルと共に在れば至上の美だ。
誘惑に勝てず、私はその杭をつかんでぐいぐいと揺すってみた。
ミハイルが激しく体を揺らし、出せない声で絶叫する。尻の中で潰れたのか、
不意にニンニクが強く匂った。ミハイルの苦痛に、急に親しみともいうべき感情を覚えて、
私は薄く笑った。不老不死のヴァンパイア。だが彼らでも、傷を負う。
そしてその傷は、台所の匂いがするのだ。
私は新たな杭の、鋭く尖らせた先端を、ミハイルの心臓の上に当てた。
映画ではここで聖句の一つも詠唱するところなのだろうが、聖句も聖水も十字架も、
そこに強い祈りが込められて初めて役に立つ。目の前に現実に存在しているものを
存在するはずがないと否定し、存在から無へと事実を捻じ曲げようとする祈り。
その祈りは絶対的な悪意と拒絶であり、呪いなのだ。自分の信仰するものによって
ヴァンパイアを排除しようとする人にとっては強力な武器となるらしいが、
あいにくと私は不可知論者だ。だから私はただ、心でこう語りかける。
―私は人間なんぞよりもずっと、あなた方ヴァンパイアを愛している―
ミハイルは私の愛など望むまい。侮蔑と嫌悪に溢れる目で私を睨み付けている。
しかし今その目に何よりも色濃く宿っているのは、憎悪だった。
魔物の存在を否定する宗教施設にヴァンパイアへの呪いが渦巻いているように、
ヴァンパイアから憎しみを注がれてきた私を、彼らの呪いが包んでいるといい。
今私を睨んでいるミハイルのこの憎しみが、ミハイルが消えた後でも
私の周りに淀んでいてくれることを、私は切に願う。
私は、ミハイルが最後に見るものが自分であることに深い満足を覚えながら、
杭の頭に槌を打ち下ろした。
619:ハント 23
07/01/21 20:33:34 bB2p2/+B0
空気が波のようにうねった。ミハイルの断末魔の無言の叫びが、私の全身を打ち、
突き刺さった。錯覚などではない。テオは身を竦めて掠れた悲鳴を上げた。
ミハイルの体が、まるでTVの画面がぶれるようにぐずぐずと震える。
程なく、それは色をなくし、形をなくし、小さな粒となって砕けていった。
灰と表す人も多いのだが、私の目にはむしろ乾いた土くれのように見える。
長い時を生きてきたであろう命、他のすべての命を超越した命、私が屠らねば
世の果てまでも永らえたはずの命が、消滅した。
私はしばらく息をするのも忘れてその土くれに見入った。
腐敗し悪臭を放つこともなければ、汚らしく溶け崩れることもない、
優雅にして潔い最期は、ヴァンパイアにのみ許されているものだ。
生も死も、ヴァンパイアにまつわるすべては厳かなる奇跡だ。
小さく溜息をついたのを最後の賞賛として、私は、ベッドの上に残った土くれを
シーツでくるんで鞄に突っ込んだ。研究するのだそうで、こういう物を欲しがる
連中がいるのだ。シーツにはミハイルの髪やら血やらその他の体液やらが
染み付いているし、さぞかし良い土産になるだろう。世界中のヴァンパイアを
一息に殲滅する方法など編み出されては困るが、その心配はなさそうで安心している。
私は、まだ椅子にへたり込んだままのテオに声をかけた。
「さ、長居は無用だ。出るぞ」
テオはのろのろと顔を上げた。目はうつろで、眼窩が落ち窪み、
10分で10歳も年を取ってしまったかのようだ。私はテオの肘を取ると、
むりやりに立たせた。こんな場所にテオを長く置いてはおけない。
私にとっては香気となるものが、テオには瘴気だ。
受付で、シーツをひどく汚したのでと言訳していくらか余分に払い、
私はテオを引き摺って霧の立ち込める通りへと逃げ出した。
620:ハント 24
07/01/21 20:34:36 bB2p2/+B0
3つ隣の町まできて、小さなホテルにテオと共に落ち着いた。もう夜は遅く、
テオの住む町に行く列車に乗るには、夜明けを待たねばならないのだ。
深々たる闇に沈んだ小さな町は、白いベールをかぶって息を潜めている。
酒場から瓶ごと買ってきたウィスキーを、洗面所に備えてあったグラスに注いで
テオに差し出した。テオはそれを手にしたまま、しばらく動かなかった。
手首を掴んで口元にグラスを押し当ててやると、無意識のようにグラスを傾けて
ウィスキーを舐め、それから一気に呷った。
ローストチキンが好きな人間は多いが、経験もない人間にいきなり鶏を絞めて
羽を毟れと言うのは、いささか無理がある。羽虫であれば気にもなるまいが、
自分に近い生き物になればなるほど、自ら手を下すことは難しいものだ。
テオが、うわ言のように呟いた。
「あれは、あれは化け物だから―トライアンを殺したんだ、だから……」
「ああ。あれは人に害を為す魔性の獣だ。だから狩るんじゃないか」
聞きたい言葉を言ってやると、テオは幾度も小さく頷いた。
テオは、私がハントを楽しんでいるとは気付いていないことにしたらしい。
それを責めようとは思わない。
ヴァンパイアは人を狩って糧とする。人はそれに抗ってヴァンパイアを狩り、
生き易い世を作る。どちらも正しく、自然なことだ。
621:ハント 25
07/01/21 20:35:25 bB2p2/+B0
だが、ヴァンパイアは人を騙して死に導きはするが、人が麦に何の感慨も
覚えないのと同様に、そこに楽しみを見出そうとはしていない。
翻って、人は、死を楽しむ生物だ。相手を死の罠にかけることを楽しむのは、
釣りや狩猟という名の許で趣味として広く認められている。
捕え殺したものはすべて食べている、だから無意味な殺戮ではない、
死の中毒者たちはそう自己弁護する。だが、彼らは食べるために
殺しているのではない。殺すのを楽しんだ結果を食べているだけだ。
そして、狩りをより楽しむために相手を苦しめるのは、人の他には猫くらいだろう。
純粋に人を守るためだけにヴァンパイアを狩っている人間を、私は知らない。
憎むか愛するか楽しむか、そのいずれかがないハンターなどいない。
私は、テオを抱き締めて宥めながら、口元が綻んでしまうのを禁じ得なかった。
本当の化け物の手の中で安心している友人が、愛しくも可笑しかった。
(終わり)
622:風と木の名無しさん
07/01/21 20:39:08 N74L5W3d0
ハントさんGJ!
狂ったハンターに萌えました
ありがとうございました
623:風と木の名無しさん
07/01/21 20:48:47 6NKTVdjg0
思い込みで猫を人間と一緒にするのはやめてくれ
624:風と木の名無しさん
07/01/21 21:29:47 9qKPLrfD0
何か問題でも?
乙ですハントタン。
人間怖いよ人間。
625:風と木の名無しさん
07/01/21 22:13:38 L5DUJ2qY0
吸血鬼イパーイの週末!
>>醜い吸血鬼タン
久しぶりに胸が痛むタイプのお話、良かったです。
行為の鬼畜さと結末の鬼畜さのダブルパンチだ。
舞台設定のほのぼのとした穏やかさが惨さを際立てていてGJ。
>>ハントタン
真性鬼畜の変態さんも開き直ってて面白かった。
淡々としてるとこが雰囲気出てて良かったです。
626:風と木の名無しさん
07/01/21 23:43:30 t+k2oy6SO
ハントタソ乙です!!
本性を知ることが出来るのはウ゛ァンパイアとハンターの間だけなんだね!!
最高の鬼畜でした
627:風と木の名無しさん
07/01/25 00:25:38 BYmVFOQJO
アゲ
628:風と木の名無しさん
07/01/25 00:29:44 QKjuPq7ZO
アゲ
629:風と木の名無しさん
07/01/25 00:34:29 QKjuPq7ZO
ケータイ禁止反対!
630:風と木の名無しさん
07/01/25 00:47:26 32vhGfa00
遅くなったがハントたん乙。
救いのないエンドが鬼畜スレらしくてGJ!
631:風と木の名無しさん
07/01/25 01:36:18 xI99qraq0
吸血鬼タン待ってるよー。
632:風と木の名無しさん
07/01/25 01:38:18 cDuiGM7lO
>>627
アゲんなボゲェ!!!
633:風と木の名無しさん
07/01/25 05:39:07 aKiGNCCu0
荒らし乙です。
NGワードに登録したら存在自体消えるから無意味だけどね。
634:風と木の名無しさん
07/01/25 11:17:27 EoOUXiNu0
隔離のしたらばへ篭るんじゃ無かったのか?
やっぱり、ラーゲルはこの程度の電波だったという事だな
635:風と木の名無しさん
07/01/25 16:25:02 QKjuPq7ZO
キレイキレイ
636:風と木の名無しさん
07/01/25 16:26:11 QKjuPq7ZO
消しゴムって便利
637:風と木の名無しさん
07/01/25 16:27:47 QKjuPq7ZO
荒らしても荒らしても消される
638:風と木の名無しさん
07/01/25 16:30:17 QKjuPq7ZO
いまならケータイで荒らせば
隔離のせいにできるんだから
パケ・ホーダイの人はみんな荒らしすればいいのに
639:風と木の名無しさん
07/01/25 19:04:48 QKjuPq7ZO
隔離崩壊!
管理人にも見離されましたね
引き続き隔離に報復をしましょー
640:風と木の名無しさん
07/01/25 19:22:02 mzHDUCyMO
ハントタン
駄文乙~!!!
他の吸血鬼タンも無駄に長い休息から忘れてた頃に乙~!!!
641:風と木の名無しさん
07/01/25 19:23:46 mzHDUCyMO
テュランタン超ご都合主義の長文乙~!!!
642:うふ~ん
うふ~ん DELETED
うふ~ん
643:風と木の名無しさん
07/01/25 20:39:44 tzjYUfMpO
手伝うよ
644:うふ~ん
うふ~ん DELETED
うふ~ん
645:風と木の名無しさん
07/01/26 04:44:10 9AZ0YUZTO
したらばはヒルの話で盛り上がってる
646:風と木の名無しさん
07/01/26 06:02:56 jlsPR8X9O
ヒルズ族?
647:風と木の名無しさん
07/01/26 10:28:07 EFuizh6N0
天然鬼畜平太くん降臨希望。
648:明日はまた来る・1
07/01/26 12:22:57 SCXYWEIS0
尻にペニスを突き込まれ、揺さぶられる。痛い。痛い。畜生。
どんなに回数を重ねていたって、乱暴にされたら痛いに決まっている。
だけど気遣ってくれる訳がないこともよく知っているから、俺は黙って耐えた。
俺の体なんて、客の半分もないくらいなんだから、逆らっても無駄だ。
てか、逆らったらどんな目に遭うか、俺はもう知っている。
でも、俺が歯を食い縛ってこらえているのに、部屋の隅に蹲ったあいつは
髪をかきむしりながら絶叫している。うるさい。なんでお前が喚く?
今つらい思いをしているのはこの俺だ。黙れよ。うるさい。
聞きたくなくて耳を塞いだけど、絶叫は容赦なく俺の耳に突き刺さってくる。
勘弁してくれ。気が狂いそうだ。
649:明日はまた来る・2
07/01/26 12:24:17 SCXYWEIS0
たっぷり2時間遊んで、客は帰って行った。俺の今日の仕事はこれでおしまい。
シャワーを浴びて部屋に戻ると、あいつの姿はもうなかった。
いつものことだから気にしないで、俺はさっさと汚れたものを片付けていった。
厨房で暖かい飲み物を作って、俺は庭に出た。月がきれいだ。
いつもの場所にあいつはいた。花壇の端っこに腰を下ろして足下を見ている。
俺は隣に腰を下ろした。目も向けてもらえないことは知っていたけど。
明るい月の下で見ると、こいつがここに連れてこられた理由が一層よくわかる。
真っ白い肌、薄い色の髪、目だけは真っ黒くて、本当にきれいだ。
「なあ、お前、もう俺の部屋に来んなよ」
声をかけてみた。どうせ俺の言うことなんか聞きゃあしないけどさ。
「嫌なんだろ。だからあんなにひいひい喚くんだろ。
来なきゃいいじゃんか。俺だって嫌だし」
ずっとここにいりゃいいんだよ。庭にさ。誰に命令されてるわけでも
ないんだろうに、どうして俺の部屋に来るんだろう。
やっぱ、頭がおかしいから、嫌な場所に来ちまうのかな。
たぶんこいつ、頭がおかしくなったから仕事できなくなったんだ。
誰に聞いても本当のことは教えてくれないんだけど。
つか、うるさいって殴られるだけだけど。
650:明日はまた来る・3
07/01/26 12:25:02 SCXYWEIS0
今日の客は俺の大嫌いな客だ。縛り上げて痛い思いをさせるのが好きで、
こいつに玩具にされたあとは体が痣だらけになる。
痣が付いて商品価値が落ちるような、そんなお上品な店じゃないから、
もう本当にこいつらやりたい放題だ。
後ろ手に括られた手首が、ギリギリの長さしかない鎖で首輪に繋がれている。
腕が痛くて下ろそうとすると、首が絞まって息ができない。
仰け反ったまま後ろから突っ込まれて、メチャクチャに振り回される。
尻や背中に幾度も拳を振り下ろされるのは、その度に息が詰まって、
無意識に尻を締め付けて、客が気持ちいいかららしい。
痛くて苦しくて泣きながら、それでも俺は客が喜ぶ反応を選んで返している。
少しでも早くこの客が帰ってくれるように。
あいつはまた部屋の隅で蹲って、泣き喚いている。
こういうの、さぞかし客が喜ぶんだろうな。特にこの手の客は。
だから、こいつも今の俺と同じような目にあったに違いない。
別に同情なんてしないけど。今死にそうなのは俺なんだから。
651:明日はまた来る・4
07/01/26 12:25:34 SCXYWEIS0
気を失っていたらしくて、目を覚ますともう客の姿はなかった。
部屋の隅を見たけど、あいつもいない。何だか腹が立った。
こんな惨めな状態の俺に目もくれないで、あいつはまたお庭にとんずらかよ。
血を拭いてくれとか、拘束を解いてくれとか、そんな無茶は言わないけど、
せめて側にいてくれてもいいんじゃないか。
俺が目を覚ますまでここにいて、目を覚ました俺に何か一言、
優しい言葉でもかけてくれたらいいじゃないか。
そうしたら俺たち、仲良くできるかもしれないじゃないか。
誰も味方がいないこの家の中で、俺たち二人、一緒にいればいいんだ。
俺の側にいるくせに、どうして俺を見ないんだよ。
652:明日はまた来る・5
07/01/26 12:28:10 SCXYWEIS0
客が入ってきた時、俺はおやっと目を見張った。一目見てなんか違うなって
わかるくらい、そいつは、なんつーか、崩れたところがなかった。
こんな店に来る男は、どこか崩れて歪んでるもんなんだ。
普段がどうでも、ここに入った瞬間に、そうなってるもんなんだ。
でも、若くて、きれいな目をしていて、なんとなく寂しそうなその客は、
俺を見て、ちょっと困ったような顔をした。慣れてないってわかる。
何をしに来たんだろう。そんな疑問が、一瞬で解けた。
客は、部屋の隅にいるあいつに目を向けたんだ。
誰も見なかったあいつを、初めて来た客が見たんだ。
俺がびっくりして動けないでいる間に、客はあいつに向かって
脚を踏み出していた。あいつがびくっと体を震わせて客を見た。
あいつが、人に目を向けて、その存在を認めたんだ。
俺は慌てて二人の間に飛び込んだ。
「あんた、こいつに何する気だよ!」
怒鳴った俺に、客は更に困った顔を向けてくる。
「君の、友達なのかい?」
静かで柔かい声が耳を打った。こんな声、初めて聞いた。
「友達なんかじゃねーよ。喋ったこともないんだからな。
でも俺はこいつとずっと一緒なんだよ。勝手なことするなよな!」
俺には、客が何をしに来たのか何となく想像が付いた。
だって、ものすごく優しそうで、悲しそうだから。