【陵辱】鬼畜作品を創作して20thプレイ【SM】 at 801
【陵辱】鬼畜作品を創作して20thプレイ【SM】 - 暇つぶし2ch450:柿手
07/01/09 20:16:53 9g/uC0mi0
(あれ……)
予想に反して、指はすんなりと清一郎の中へと入った。
平太は拍子抜けした。
もちろん、肛門に指を入れるなど初めての経験だったが、
なんとなく、もっときつく締まっているものだと思い込んでいたのだ。
清一郎も特に痛みを訴えるような仕草はしていない。
人差し指を回すようにして薬を壁に塗りつけて滑りをよくしてから、
少しためらってから中指も入れてみる。
指を二本に増やしたというのに、それほどの抵抗もなく、
清一郎は平太の指を飲み込んだ。
「どうですか、感触は?」
カワホリが問いかける。平太は曖昧に小首をかしげた。
「すみません。患部の位置とかは、俺、よくわかりません、ただ……」
「ただ?」
「あの、なんか思ってたより、ゆるいっていうか、締りがないっていうか」
平太が正直に思ったことを口にすると、
カワホリは何がそんなに可笑しいのか肩を揺すって笑い転げた。
「マスター、セイイチロウさまのお体をもう少し労わってあげませんと」
「我のせいにするな。毎晩無駄に抵抗するセイイチロウが悪いのだろう」
「ですが、そう手荒に扱っていては、気に入りの玩具もすぐに壊れてしまいますよ」
窘めるようなカワホリの言葉に、男は憮然とした表情で低く唸った。
「……自重はしよう」
どこか拗ねたような男の声に、カワホリは苦笑しながら清一郎を振り返った。
「よかったですね、セイイチロウさま。ご友人の協力の賜物ですよ」
口元に笑いをとどめたまま清一郎の顔を覗き込んだカワホリは、
だが、次の瞬間、やや意外そうに眉根を寄せた。
「おや、先ほどから随分と大人しいので妙だと思っていたのですが、
 声を封じていらっしゃるのですか。せっかくの珍しい出し物の最中なのに味気ない」
 男は小さく舌打ちした。
「ああ、しまった、忘れていた。セイイチロウ、もう口を開いてもよいぞ」
男の言葉に、清一郎の体がびくりと跳ね、
平太の指の動きに合わせるように、清一郎の口から呻きとも吐息ともとれる声が漏れた。<続>

451:風と木の名無しさん
07/01/09 20:27:39 zQMcY2tQ0
柿手タンGJ
清一郎がどんな調教をされていたのか気になる…

452:風と木の名無しさん
07/01/09 20:58:40 7YRv8PuiO
柿手さんGJです
これから天然平太の行動が気になるww

453:風と木の名無しさん
07/01/09 22:38:59 TqnIqWIxO
柿手タソGJ!!!
平太最強ww

454:風と木の名無しさん
07/01/10 00:41:11 XdlA1bTG0
待ってたー。
あーもう平太ってば、頼むよ!

455:風と木の名無しさん
07/01/10 08:08:30 R7eLkYS4O
平太が一番鬼畜ktkr!
このまま天然鬼畜でどこまで行くんだ?
超期待!

他の書き手さんも待ってる!


456:風と木の名無しさん
07/01/11 12:18:22 PknsTDjP0
平太!この鬼畜が~~~!!

457:吸血鬼5
07/01/11 17:10:49 m6ymn8ao0
逃げる舌を強引に絡めとり唇で吸ってやると、クラウスの体が一瞬硬直してから
脱力していく。その間にヤンが体をずらして下半身の衣服を取り払い、
半ば立ち上がりかけたモノを上下に扱いた。
「んうっ‥‥んんっ」
喉をそらせて、与えられる刺激に身をくびくつかせるクラウスに、
アドルフとヤンの興奮も高まっていく。
「おい、アドルフ、そいつの声ききてぇ」
唇をしゃぶっていたアドルフの口が糸をひきながら離れると
突然肺を満たした過剰な酸素にクラウスが咳き込む。
その合間にも、もれる甘い声にヤンが満足げに口を歪めた。
すっかり脱力したクラウスの腕を解放して、アドルフが脇へ移動し、
先ほどまでヤンが舐めていたのとは別の胸を貪りはじめる。
「‥っ、う‥‥‥‥ああっ」
「感じてやがる」
ヤンの言葉と、先走りでクチャクチャと音がなり、心とは裏腹に、
快感で今や欲望をほとばしろうとしている自分のそれに追いつめられる。
手の甲を噛んでせめて声だけでも押さえようとするが、
気づいたアドルフがあっさりと腕をとっぱらった。
「ヤン、そろそろいかせてやれや。我慢できないってよ」
「了解」


458:吸血鬼6
07/01/11 17:12:34 m6ymn8ao0
「あああっ」
手の動きを一気に早められると、あっけなくはじけて
ヤンの手を白い飛沫で濡らす。
しかしヤンは手を止めず萎えたそれを扱きながら、
もう片方の濡れた人差し指と中指を尻の窪みにうずめていく。
「‥っ、う、い‥たい」
「もう一回な」
相棒の欲望もあらわな様子に苦笑しながら、アドルフもまた、
息をはずませ射精の衝撃に体をびくつかせている少年を
もっと鳴かせたいという加虐的な気持ちがつのっていくのをとめられない。
「ひ、あうっ、あっ、はっ、あ‥ああっ」
指を抜き差しされると、どうしようもなく声が高まった。
前を扱かれ、後ろは粘膜をまさぐられ、胸をしゃぶられる刺激に
膝がガクガクと震える。萎えていたそれは固さを持って、もう一度
立ち上がっていた。
ヤンが抜き差ししていた指を止め、ゆっくりと粘膜をかきまわしてやると
クラウスが髪を振り乱して、甲高い声をあげる。
それを心地よく思いながら、見つけた一点に振動を与えると、
クラウスは瞠目して、背を弓なりに曲げ、腰を跳ね上げた。
「やあぅ、ああっ、ああぁぁぁっ」
振動を与える指をキュっと締め付け、二度目の精を吐き出した
クラウスから指を引き抜き、手を振りながら「すげえ、締め付け」
とアドルフにおどけてみせると、アドルフが口を吊上げ、
ぐったりとしたクラウスをよつばいにさせ、すっかり立ち上がった
己のそれを突き立てた。途端にあがる悲鳴も無視してアドルフが
動き出す。ほどよく締め付ける暖かい内部にうめき声をあげつつ、
さらに強く打ち付けた。


459:吸血鬼7
07/01/11 17:13:41 m6ymn8ao0
内部を掘られ、先ほど探られた一点を強く擦られる刺激に
クラウスの目から涙が止めどもなく流れ、ハアハアと淫らに
喘ぎ続ける。
もはや体をささえる事も出来ずに、つかまれた腰だけをあげた状態で、
肩と顔は冷たい床に横たわっている。

先ほど男の口からもれた言葉を思い出す。
認めたくないが自分は感じていた。
痛みの方が強かった刺激も、今や腰に欲望がつのるための
甘いものとなっていた。
何も考えられない。
頭がぼうっとして、ただただ、この行為が早く終わる事だけを
祈るしかなかった。



暗闇のなか、陶磁のような瞼がかすかに震え、金色に輝く瞳が
ゆっくりと現れる。完全に瞳が現れると、それを待っていたように
壁にしつらえた燭台に灯がともった。音も無く棺のふたが開き、
人にしてはひどく端正な顔があらわになる。
その瞳に壮絶な赤を宿し、しかし、瞬きひとつで元の色に戻ると、
闇色の衣装をまとった姿がふっと掻き消えた。

闇の時間が訪れていた。
今日はここまで

460:風と木の名無しさん
07/01/11 18:36:26 ZhwyOymd0
吸血鬼オキタ━━(゜∀゜)━( ゜∀)━(  ゜)━(  )━(  )━(゜  )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━!!!!!


461:風と木の名無しさん
07/01/11 23:16:46 orNutiERO
吸血鬼タソGJ!!
今後の展開が楽しみ

462:風と木の名無しさん
07/01/12 01:40:51 aQfDKO9f0
吸血鬼タン、おおっつ!
救出劇と報復に期待!

463:風と木の名無しさん
07/01/13 04:15:38 aPfJu5FwO
URLリンク(l-w.jp)

パスない…ランキングアップさせたいだけか

464:風と木の名無しさん
07/01/13 10:53:48 2UNbHXiMO
>>463
いまどきこんな騙しサイトにひっかかるバカいるのかね?

465:風と木の名無しさん
07/01/13 11:51:08 aPfJu5FwO
バカです………………

466:風と木の名無しさん
07/01/13 11:59:30 hqORTDSEO
2にアドレス貼って興味本位の人にクリックさせてランキングを狙うわけか
典型的な厨行動だな

467:風と木の名無しさん
07/01/13 12:12:51 LxF481BK0
凄まじくどうでもよくね?
ageた挙句どうでもいいもの貼るような子はこれ以上書き込まずに半年ROMれ。

468:風と木の名無しさん
07/01/13 12:16:19 aPfJu5FwO
嫌じゃカス

469:テュランの筏1/12
07/01/15 12:02:22 QLszGM7g0
十日目

僕が観察して報告した内容を、クリフは真剣な表情で、床に書きこみはじめた。
器用にボトルのキャップを利用している。数値と線で、僕には暗号にしか見えないが。
「ありがと、な。また明日も頼む」
そう言い、クリフはタープを広げはじめた。僕はあわてて、彼の腕をとった。
「待ってよ。話したい事あったんだ。
まず手始めに、クリフが手に入れた分は返さなくちゃ、僕の気がおさまらない」
クリフはそれに答えず、僕の手をすりぬけて、タープの中に入りこむ。
このまま僕を無視して、眠ってしまうのかな……
そう思っていると、クリフは不思議そうに見上げた。
タープの空いた一人分の隙間を指さす。
「寒いだろ。立ち話も何だから、一緒に包まろうぜ」
僕は喜びに躍り上がらんばかりだった。意気揚揚と隣に座りこむ。
開口一番の話題は、その喜びに水がさすような、盛り上らないものだったけれども。

「水と食料は智士のものだ。俺が酔っ払った時……食い荒らした分。
そうでもしなきゃ、俺の気がすまない。お前より……先に、な。
もし、足りなければ言ってくれ。これ以上この件は、言いあいなし。いいか?」
それはあまりにも一方的であったが、彼の信念は、僕に揺るがす事は出来ない。
「分かった……もう十分。必要以上僕に渡したりしないなら、了承する」
クリフは黙ってうなづく。タープの中は、暖かな空気がたまりはじめていた。
僕らは食料の件に蹴りがついたのをいい事に、この過酷な国の現実からも目をそらそうと、楽しかった思い出ばかりした。

470:テュランの筏2/12
07/01/15 12:03:16 QLszGM7g0
明け方頃、タープの表面をたたく音に気付いたのはクリフだった。
「容器を!」
叫ぶが早いが、空ボトルのキャップを開けながら、天に向かってかかげている。
僕もすぐに悟った。天からの水の恵み、雨。
スコールはない季節だと言っていたけれども、やっぱり神様はいるものだ!
ありったけのボトルを並べ、高く持ち上げて、どんよりたたずむ暗雲に近づけた。
生まれてはじめてだ。雨の日がうれしいなんて事。
クリフは二の腕をごしごしとこすっている。
ずっと海水で洗っていたせいか、真水に磨かれ、白い肌はよみがえったように輝いた。
僕もそれにならって、首筋と、それから頭をわしわしと掻いた。
髪の毛をつたい落ちる、水の感覚がこれほど気持ちいいとは!
「あ、そうだ。楊玲にも教えなくちゃ」
「もう、起きている」
クリフが指さす先には、トランクにもたれて空を見あげる楊玲の姿があった。
顔をうつ細い雨粒。ぼんやりとうつろに開いている口。
身体はタープにくるまったまま、顔には表情らしいものはない。
その脇では、傘を広げて、不愉快そうに眉をひそめる藤吾の姿があった。
黒い紳士用折りたたみ傘を肩に乗せ、舌打ちせんばかりの勢いで、曇り空を見上げる。
あの剣幕じゃ、そのうちに雨雲も逃げていってしまいそうだ。
僕の予感はあたり、日が完全に昇りきる前に雨は止んでしまった。
それでもたまった水を集めると、ボトル一本分にはなった。

471:テュランの筏3/12
07/01/15 12:04:07 QLszGM7g0
なんていとおしいのだろう。屈辱にあまんじる事なく、手に入れた水は。
だが、喜びもつかの間。明るくなった海上を、楊玲の喘ぎ声が支配する。いかだが軋む。
こぼれる熱い息の音に、僕は逃げ場もないのにそれを探してしまう。
クリフがタープを広げて隙間を作る。僕はその中に逃げこんだ。
「雨、降ったのにっ……楊玲だって気付いてたのに。
今日は何もしなくても、よかったのに。なんでなんだろう……楊玲」
僕はどうにも理解出来ない疑問と、それから深い悲しみにただただ胸がつまった。
「あと少しで助かるのに……もう自分をおとしめる事ないのに。
雨が降って何するかも考えられないくらい、心が壊れちゃってるっ……
ねぇ、クリフ。楊玲はもとに戻るよね。
僕たちは何も出来なかったけど、助かって、日常の生活にもどれば……」
ピタ、とクリフの手がとまる。
「その事なんだけど、智士……何から話せばいいのか。
あまりいいニュースは与えられそうにない。でも、話しておかなくちゃいけない。
最初は……頼みごとからだ。聞いてくれるか?」
「そんな言い方されたら、断れないよ。何?」
「今ある水と食料で、今日をいれて四日間耐えてほしい」
僕の意に反して胃袋がギュウと鳴った。生唾がゴクリと喉を落ちていった。
この返事をするには……鉄製の意思が必要だった。
「……分かった」
「悪いな。俺の勝手な頼みで」

472:テュランの筏4/12
07/01/15 12:05:25 QLszGM7g0
「ううん、でも何か計画しているなら話して欲しいな。心構えが、違うからね」
計画、のところで僕は声をひそめる。
「……いや、別に。もう小細工は、なにもない」
「そうなんだ。それならそれでいいけど」
意外な気もしたが、僕はそれ以上追及しなかった。
なのにクリフは口を開きかけては閉じ、
視線をそらしては、あらぬ方向へ泳がし、落ち着かない。
「……どうしたの、クリフ?」
僕の問いに、言いづらそうな表情をしていたクリフは、ささやくように発した。
「智士が汚されるのを見たくない……俺の勝手な頼みだ」
「え、あ……」
口をついて出るのは、意味不明なきれっぱしばかり。
胸はコトン、コトンと沸騰する鍋のようにやかましく、
頭の中に真っ白なゆげを吹き立てて、考えがまとまらない。
僕は、心があふれそうなほどの歓喜を抱いていた。
固形食料の箱を取り出す。内の片方をクリフに差しだした。
「じゃ、僕もクリフに勝手な願いをするよ。これ受けとって。
あと数日間を一緒に乗り切ろう……僕も見たくない。クリフが汚されるのを」
長い長い沈黙の後、クリフは手を伸ばして、受け取ってくれた。
白く並ぶ歯を見せ、チャームポイントの八重歯を輝かせて。
「分かった……二人でがんばろう。乗り切ろう」
僕は嬉しさのあまり、クリフの手をぎゅっとにぎりしめていた。

473:テュランの筏5/12
07/01/15 12:06:46 QLszGM7g0
その後の会話も、タープにくるまったままだった。
太陽は燃えさかり、昼間に近づくにつれて蒸してきたが、
そうでもしなければ、とても話せた内容ではなかったのだ。
「……藤吾が、選んでいた?」
そうだ、と真剣な顔でクリフはうなづく。
「海に投げ出され……板のきれっぱしにしがみ付いたり、
救命胴衣で浮かんでいる乗客の間を、藤吾はいかだで渡っていた。
少年の頭部を見かけると、近づき持ち上げ、見定めて……そのまま海に沈められた。
誰も浮き上がってこなかった。何人か見た、そうして殺されている乗客を。
コンタクトをなくしてぼやけていた風景だけど、あの白いスーツの腕だけは忘れない。
俺のところに来たとき……ああ、もうだめだなって、そこで意識を失った」
クリフは言葉を切って、水平線の向こうを強い瞳で見た。
僕は答えるすべを失っていた。それがどういう意味なのか……考えたくなかった。
いやでも遅かれ早かれ分かるのだろう。でも少しでも先にのばしたかった。
僕が青ざめ押し黙ったのを見て、クリフはいたわるように髪をなでてくれた。

唇をしめらせるていどの水をふくみ、四等分したクッキーの一片を放りこみ、
後はお互い無口ぎみに、エネルギーを消耗しない行動をとった。
黙ってタープにくるまり、身体を横たえる。
なかなか訪れない眠りの中、藤吾の時計の音を聞き、僕は星座の観察を行なった。
忘れないうちに、クリフに告げ、彼は厳しい表情で床の模様をふやしていった。

474:テュランの筏~海市6/12
07/01/15 12:11:29 QLszGM7g0
*  *  *
成熟過程の性器を含ませられた藤吾は、朝小一時間かけてセットする髪を乱暴につかまれ
左右に引かれ、頬を挟まれ、顎を押さえられた。
黒髪の少年から、舌を使え、歯を立てるななどの指示はない。
己で好きなように藤吾の頭部をもてあそび、快感を得ているようだ。
紅潮して、目を細めている。
藤吾は忌まわしい行為を強いられる現状と、卑猥なものを咥えさせられる恥辱に、
当然怒りも覚えたし、抵抗も考えた。
だが、彼には最後の一線があった。
教師と生徒。この場で「正当防衛」を行い、生徒らの将来をつぶす権利を、
果たして自分は持ち合わせているのか。
結論などは出ない。ただただその時は、されるがままになっていた。
熱気をまとったものとこすれあい、藤吾の口内には蒸気か何かで水気が現れている。
律動的に腰を動かし快楽を求める少年の動作は、
そのたびにジュプジュプと淫靡な音を立てた。
膨れ上がるペニスに、気管をふさがれかけ、藤吾は苦しげに息を吐きだした。
「それそれ、その顔。絶対教壇じゃ拝めない表情だね……っ!」
同時に藤吾の口蓋に、熱くねっとりした迸りがはりついた。
わずかに粘質を持ちあわすも、非常に緩慢に垂れるその動きは、藤吾を嫌悪感に陥らせた。

475:テュランの筏~海市7/12
07/01/15 12:12:22 QLszGM7g0
「ちゃんと飲んでくれよ、おっさん。
あんたほんとうに、それしか飲むものないんだから」
ペニスもしまわず、黒髪は藤吾の鼻をつまみ、手の平に顎を乗せて、大きく傾かせた。
「ぐ……っ、ん、ぐぅ」
首を振って拒否を示す仕草すら、許されない。
少年はニヤニヤと笑って、藤吾の喉が動くのを待ち構える。
傾きにそって、落ちてくる。熱を口内にはりつけて、ねっとりと形を変えながら、
喉を焼きつかせてくだるそれを……藤吾は、この先何度も飲まされる事になる。

一度尿意を訴えた時、防空壕の間取りは理解していた。
縄と見張りつきで歩きまわされた通路は、非常に狭い。天井も低く圧迫している。
閉鎖された扉が多く、使える部屋の数は少ない。
入口は、崩れた土砂と折れた木材で完璧に埋もれていた。
彼らが排泄に利用している部屋は、手前に浅い穴が、
部屋の奥には黒々とした底の見えない空洞が横たわり、冷たい風が吹き込んでいた。
その先は、自然の洞穴なのだろう。
窒息死の不安は拭われたが、逃れられない事に代わりはなかった。
最初の部屋に戻り、再び拘束される。藤吾は再び喉の渇きを覚え始めていた。
部屋の少年二人は、飲料のボトルを傾け、スナックや駄菓子をかじっている。
棚上の古びた時計は、金曜日の深夜であると告げている。
盤で時間の経過を知ると、空腹もまた襲い掛かってきた。

476:テュランの筏~海市8/12
07/01/15 12:13:12 QLszGM7g0
扉の開く音がした。藤吾はまだ閉じ込められた生徒が居たのだと、そちらを向いた。
「クニちゃ……じゃない、おい、国山、おせーぞ」
黒い髪の少年が立ち上がり、口汚く罵った。ヨウも視線をやっている。
「すみません、榊さん」
小柄な国山少年はペコペコと頭を下げた。
他二人の少年と違って、制服のボタンはきっちり止められ、襟もピンとしている。
物腰や口調から連想するのは気品や優等生といった単語だ。
はっきり言ってこの三人のつるむ理由が分からない。藤吾は教師の視点から思った。
「先生、足の方は大丈夫ですか」国山少年は藤吾を見た。
「後、コiーラのフタ、開けておいたんです。炭酸抜けたから、これならどうかと思って」
屈み込む少年の瞳は、光の加減か青く澄んで見えた。藤吾はつい見入った。
視線に気付いたのか苦笑いし、少年は小さく、クォーターなんです、と答える。
職員の噂で聞いたことはなかったが、別段目立つハーフ、帰国子女の類でもない。
目の色程度なら、噂にものぼらないだろう。
それはとにかく、半日放置した炭酸も、藤吾は受け付けなかった。
弱まった二酸化炭素の泡は、それでも喉の奥をチクチクと刺した。
吐き出して苦しむ藤吾の背中を、国山少年は優しく撫でた。
振って気が抜けるのを早め、数時間おきに試して、藤吾の渇きを癒そうとしてくれた。
熱く焼け付く喉に苛まれながら、白濁の液体だけしか喉を下す手段がない藤吾に、
それでも国山少年は、心を潤してくれるオアシス的存在であった。

477:テュランの筏~海市9/12
07/01/15 12:14:11 QLszGM7g0
土曜日の、まだ夜も明けていない早朝。
藤吾の恐れていた事態は、黒髪の榊少年の言によって引き起こされた。
「なぁ、おっさん。おっさんが偏差値最低ラインの
ここの教師になったのって……あの噂ほんとうなのか?
配属先を決める担当が『女子生徒が多い学校だと、問題が起こりそうだから』って」
興味津々な三人の少年が、それとなく藤吾に視線を向けた。
藤吾は目を閉じ、答えなかった。疲れていた。返事する気力もなかった。
自分がどんな美の水準にあるかなど、考えた事もなかったし、興味もなかった。
無機質な鏡に映る像で、己に評価を下すのなどは馬鹿らしかった。
ただ、人に「センスが良い」と言われたことはあった。
こだわるブランド等はないが、無意識に自分を高める品を選択する内に、
装飾品により自分が「洗練」されていたのかもしれない。
そういう雰囲気で好かれるのなら……元から持っている素材ではなく、
自分の伸ばした才能が認められるようで、嬉しく思えない事もない。
だが、そんな誇りも、次の一言で打ち砕かれる。
「その担当の気づかいも、ムダだったわけだ。
だっておっさん、俺たちに向けても、放射してるよ? フェロモンってヤツ」
ハッと顔を上げる藤吾の瞳に映ったのは、欲望をギラギラと目に灯して立ち上がる、
制服姿の少年だった。
「国山、首と足解いて、腕を押さえろ」

478:テュランの筏~海市10/12
07/01/15 12:15:09 QLszGM7g0
榊の命令に、国山少年は明らかに戸惑っていた。
だが、二度目の命が荒々しく下されると、泣く寸前の表情で、藤吾の縄をほどき、
地面にあお向けに倒すと、両手首を頭上で押さえた。
「……っく、先生、ごめん、ごめんっ……」
しばらく放心していた藤吾は、ボロボロと顔にこぼれ落ちる涙で、現状を把握した。
抵抗すべきか……しかし縛られたままの足は痺れ、重い荷物のようだった。
ならば教師として、説得すべきか……だがざらついた喉は、呼吸すらも苛んでいた。
ならせめて、目の前で泣く一人の少年の、心を癒すくらいは出来ないだろうか。
彼は、自分の為に泣いてくれているのだから……
教師としての理念、使命。それは今や薄れ、被害者と加害者と、
その中間で苦しむ少年を、ただただ案じる気持ちに陥った時。
唐突に下着ごとスラックスを剥がれ、両足を持ち上げられ、その間に制服姿の少年が割って入った。
榊は舌なめずりしながらボトルを傾ける。藤吾の股間に気泡の感覚が降り注いで、弾けた。
奇妙な感覚に思わず身を捩る。
さらさらした液体は、手近な後孔へと流れ込み、腸内でまたあぶくが弾けた。
「……ッ! ……ッグ」
目に涙を浮べて、内側の痛痒感に耐える藤吾を、にやにやと榊は見下ろす。
「そっちからなら、飲めるじゃん。炭酸飲料。んじゃ、こっちもよろしくー」
すでにたぎっていたペニスを、榊は飲料のぬめった糖分に乗せて、挿れる。
「……ッ……ァァ……ァ゙ア゙!」
瞳を限界まで見開き、枯れた喉から吐き出す悲鳴は、しわがれていた。
身体が裂けるほどの強い痛みを逃がすには、全く足りない。

479:テュランの筏~海市11/12
07/01/15 12:19:01 QLszGM7g0
榊はしっかりと両足を掴み、国山少年も命令に忠実に固定しつづけた。
藤吾が出来るのは、ただ乾いた歯を噛み、神経を遮断しようと努力する事だけだった。
だがそれもむなしく、押し広げる少年のペニスは、藤吾の努力が間に合わない速さで膨張した。
炭酸の残りかすを纏いながら、乱暴に動かされる。
奥のくぐもった水音の中に、泡のはじける音が響き……まもなく吐き出される熱いドロッとした塊に、支配された。
藤吾はおぞましい感覚に、瞳の色を失い……それを見て愉快そうに榊は腰を引いた。
「次、ヨウだろ。最後は国山、お前だ」
細目の少年が、頭の後ろで組んでいた手をほどき、立ち上がる。
彼もすでに股間をたぎらせており、そして国山少年は、ひたすら涙をこぼしつづけた。
絶望より、痛みよりその熱い飛沫が、何より藤吾に印象深かった。

三人にまとめて陵辱されたのは、それ一度きりであった。
後は各自が、気が向いた時、その時の気分で口か尻か、犯されるのかが決まった。
黒髪と細目と、どちらが多かったかなど、意識が朦朧としていた藤吾は、覚えていない。
けれど、命令されて嫌々ながら、行為に取り掛かる国山少年。
犯しながらも泣きじゃくる、青い目の少年だけは、強く記憶していた。

480:テュランの筏~海市12/12
07/01/15 12:19:49 QLszGM7g0
時間は…土曜日と日曜日の間くらいだろう。他二人の少年は毛布にくるまり眠っていた。
国山は藤吾のために、必死にボトルを振っていた。
ほとんど出ない唾液で舌を湿らし、藤吾は尋ねてみた。
どうしてあの二人と、行動を共にしているのか。脅されているのなら、教師に相談してみるといい、と。自分は空き時間、進路相談室に詰めている、とも。
声は枯れ、途切れ途切れで、たっぷり時間がかかった。
それがかえって、国山少年の心を解いたのだろう。薄幸そうな笑みを浮べる。
「他に、僕と話してくれる人、いないから。あの二人だけです。相手してくれるのは」
悲しそうに横を向く。
ランプに照らされ淡く光る青い眼は、この一種族しか存在しない島国での苦難を容易に想像させた。
閉鎖された学校という場ならば、なおさら。
藤吾は決意を秘めた瞳で、国山が差し出したボトルを、飲んだ。
一口だけでも、喉が未だピリピリするが、我慢して飲み下した。
「私が、手助け出来る事なら、なんでもしよう。私は、教師だから。
教えるのが仕事だから。いや……使命、だからだ。
ここから脱出したら、もう一度相談に来るがいい。
教えるのは君じゃない……固定観念に縛られ、異物は排除しようとする、
島国根性を持つ輩……それは遠く、果てしなく長い教育になるだろうが……」
ゼイゼイと喘ぎながら理念を喋る藤吾に、国山は目を細めた。
笑みではなかった。目尻からポロ、と水滴が流れ落ちたが、それは悲しみでもなかった。
*  *  *

481:風と木の名無しさん
07/01/15 15:12:01 M53f9FX20
テュランさん乙です。
過去編も現在編も、先の展開を楽しみにして待ってます。

482:風と木の名無しさん
07/01/15 15:30:59 yyJRuv11O
テュランタンキテタ━━━(゚∀゚)━━━!!
待ってた、待ってたよ~。
すんげぇ嬉しい!

やはし藤吾の目的は過去への復讐なのかな…。
国山少年が気になるぞ。

続き超期待!


483:風と木の名無しさん
07/01/15 19:00:51 7QBRJlaH0
テュランタン待ってたー!
一体何がどうなって藤吾がああなったのか、早く知りたい!
そして、クリフ&智士がんがれ!

484:風と木の名無しさん
07/01/15 21:39:12 5WlIs2q6O
テュランタソ待ってました!!!
クリフ

485:風と木の名無しさん
07/01/15 21:46:57 5WlIs2q6O
テュランタソ待ってました!!!
クリフ&智士の関係も気になるところ

486:風と木の名無しさん
07/01/15 23:06:15 8BrzAOa10
テュランタソキター!
クリフと智士のさわやか二人組みが
とてもいとおしいです…

487:柿手
07/01/16 01:48:06 YBc3vYDI0
>>450
「指を少し曲げてみよ」
荒い息を吐く清一郎を見下ろしながら、長椅子の男が、
悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべて、平太に告げた。
「あの、この程度でよろしいでしょうか」
平太は心持ち指を曲げ、鰹節を削るような仕草で指を出し入れしてみせた。
「ああ、なかなか飲み込みがはやい」
満足そうに頷いた男の後を、カワホリが引き継ぐ。
「少し掘り進んだ所に、小さなしこりがあるはずです」
 そこが患部ですので、指で何度も丁寧にこすって薬を塗ってあげてください」
「なっ」
カワホリの言葉に、清一郎の唇から掠れた悲鳴が漏れた。
「平太、違う、そこは……」
「ほら、セイイチロウさまが痛がっておいでです、早く患部を見つけてあげてください」
ひどく切迫した清一郎の声を訝しく思ったものの、
カワホリに急き立てられ、平太はわけもわからず指を闇雲に動かした。
「……あっ!」
他の部分とは明らかに違う小さな硬い膨らみに平太が手を触れた刹那、
平太と清一郎の口から同時に声が漏れた。
「ここだな、待ってろ、今、薬を塗ってやるから」
探し当てた場所に軟膏を塗りこめるように、指で何度もこすると、
清一郎の背がのけぞり、膝ががくがくと震えだした。
「やっ、だめ……だ、待て……ああっ、やっ……」
普段の落ち着いた清一郎からは想像もできない、甲高い悲鳴がこぼれる。
平太は顔をしかめた。
日本男児たるもの、どんな痛みや困難も歯を食いしばって堪え、
みだりに騒いだり泣き言を言ってはならない。
常日頃、そう言って己を律してきたのは清一郎自身なのに。
肺病を患って吐血した時だとて、毅然とした態度で弱音一つ吐かなかったのに。
なのに、たかが痔の薬を塗るだけのことに、こんな情けない声を発するとは。
「……っ、おねが……平……太、そこは……」
清一郎が漏らす途切れ途切れの哀願が、平太の気持ちを更に不快にさせた。

488:柿手
07/01/16 01:48:50 YBc3vYDI0
「みっともない声をあげるなよ」
押さえようとしても声が尖るのを止められなかった。
「痛いのは当たり前だ。少しぐらい我慢したらどうだ」
無様な清一郎の態度に落胆を禁じえない。
高潔で誇り高い清一郎は、戦禍で何もかも無くしてしまった平太の唯一の自慢だったのに。
自分でも正体のわからぬ憤りをそのままに、わざと乱暴に指を動かす。
清一郎が呻き声をあげたが、平太は構わずぐいぐいと指でしこりを押した。
くすりと背後から忍び笑いが漏れた。
「おやおや、セイイチロウ様のご友人は、マスターに劣らず手厳しいご性格のようで」
からかうようなカワホリの声音に、男は不満げに鼻を鳴らした。
「我は、気に入りのものに対しては、それなりに甘やかしてやるほうだぞ」
「セイイチロウさまへの仕打ちはとてもそうは見えませんが」
「それはセイイチロウが。……我に対してもあんな声で縋ってみせれば、我だとて」
そう言いかけて、どこか悔しそうに口を噤む。
そんな男を苦笑交じりに見やったカワホリが、平太に視線を移した。
「充分ほぐれた頃合ですので、もうそろそろよろしいですよ」
「は、はい」
平太が清一郎の中から指を引き抜くと、清一郎が安堵したように息を吐き出した。
カワホリがワゴンの上の箱を開けながら、小さく笑った。
「まだ終わりではありませんよ、セイイチロウさま」
小指程度の紡錘状の塊を取り出して、男に見せるように並べていく。
「マスター、坐薬はどれにいたしましょう?」
「ざやく?」
聞きなれない言葉に首を傾げる平太に、カワホリが傍へ来るようにと手招きをする。
「この国ではまだ馴染みのない薬でしたね。尻穴に入れて使う薬ですよ」
「尻にって……。でも、それ固形ですよ、そんなものを入れたら」
「植物性の樹脂を使っているので、人肌で蕩けて患部を包み込むんですよ」
半信半疑で、平太はワゴンの上に並べられた小さな塊を見つめた。
「これを全部入れるんですか?」
「まさか。いくらセイイチロウさまの穴がゆるくてもそれは無理ですよ」
マスターが選んだものを一つだけ使用するのだと、カワホリは笑いながら告げた。
「で、どれになさいますか? マスター」

489:柿手
07/01/16 01:49:23 YBc3vYDI0
男はしばらく考える素振りをしたあと、平太に向かって顎をしゃくった。
「これに選ばせてみよ」
平太は慌てて首を振った。
「ちょっと待ってください。なんで俺なんですか」
「おまえが選んだ薬なら、セイイチロウは否やは言うまい」
「でも、俺、そんな薬の種類なんてわかりません」
「構わん。副作用に多少の違いがあるだけで、治癒効果には変わりはない」
「かしこまりました、マスター」
困惑も露な平太を他所に、カワホリが男に恭しく一礼した。
カワホリは平太に向き直ると、並べられた薬を指差しながら、順に薬の名前を告げていく。
平太は目を白黒させた。
舌を噛みそうな長ったらしい外国の薬の名前など教えられても、
何がなにやら、平太にはさっぱりわからない。
先ほどの話しでは坐薬は植物性の樹脂からできていると言っていた。
ならば体に良さそうな植物のものを選べばいいのだろうと思うのだが、
肝心な言葉が全く聞き取れないのだからどうしようもない。
どれになさいますかと促されて、平太は辛うじて聞き取れた一つをおずおずと指差した。
「あの……これ、えっと、『ヒノキの』って名前の……」
日本のひのきと同じものとは限らないが、もしもひのきであれば体にも害はないはずだ。
平太が選んだ薬をみて、男は訝しげに片眉をつりあげた。
「はて、これは何処で手に入れたものだったか?」
男の問いに、カワホリの表情が緩んだ。
「フィレンツェへ行かれた際に郊外の貴族の館で譲り受けられたものでございます。
 嘘ばかりつく木偶の少年を調教するために用いたとの逸話をいたく気に入られて」
ああ、と男は頷いた。
「なるほど、あの呪か。……これはいい、セイイチロウにはぴったりではないか」
「ええ、さすがご友人ですね。セイイチロウの様のことをよくわかっていらっしゃる」
カワホリは平太が選んだ一つをピンセットでそっと摘むと、清一郎の前にしゃがみこんだ。
紡錘状の薬の先を清一郎の入口にあてがうと、ぐにゃりと薬が不自然に歪んだ。
ひしゃげた薬は、まるでそれ自身が意思を持つて這うかのごとく、
ずるりずるりと清一郎の中へと入っていく。
平太は目をしばたいた。

490:柿手
07/01/16 01:50:06 YBc3vYDI0
(なんだ、あれ、まるでナメクジみたいな……気持ち悪い)
ぞわりと鳥肌がたった。
見間違いだ。
カワホリが摘んで押し込んだだけだ。
それがたまたま変なふうに見えただけだ。
平太の理性は、己が見たものをそう解釈する。
だが、その一方で、本能的な感覚が全身で嫌悪を訴える。
あんな得たいのしれないものを体に埋め込まれて清一郎は平気なのだろうか。
清一郎は、先ほど声をあげたことを平太が咎めだててから一言も発していない。
上半身を曲げて臀部を突き出したままの姿勢を保ち、俯いたままの表情は不明だ。
「清一郎、大丈夫か? まだ痛むか?」
背中を撫でながらおずおずとそう問いかけると、清一郎は心持ち顔をあげ微笑した。
「心配かけてごめん平太。大丈夫、平太が塗ってくれた薬がとてもよく効いて、
 もうどこも痛みなんてない、ありがとう、平太のおかげ……だ……っ……くっ」
いつもの穏やかな口調で語り始めた清一郎の声が、突然途切れた。
訝しむ平太の目の前で、清一郎の体が瘧のように戦慄き、背中が弓なりにしなる。
「……やっ、なっ……っ」
腰をくねらせ、首をのけぞらせて、何かから逃れるように清一郎はもがき出す。
「どうしたんだ、清一郎?」
突然の清一郎の狂態に、平太はどうしてよいかわからず、
縋るように背後の男たちをふりかえった。
「大変です、清一郎が……」
言いかけた平太の舌が凍った。
二人は哂っていた。
まるで、街で評判の出し物を観賞するような眼差しで、清一郎を見つめながら。
「セイイチロウ、その体勢では辛いだろう。もう好きに体を動かしていいぞ」
男の言葉とともに、清一郎が両膝を床についた。
四つんばいのまま、尻を突き出すように揺らして清一郎は獣のように喘ぐ。
そんな清一郎を眺めながら、男は心配する素振りも見せず、
長椅子に体を埋め、肩を揺らして哄笑している。
「嘘をおつきになるからですよ、セイイチロウさま」
笑みを佩いたまま、カワホリが窘めるように清一郎に告げた。<続>

491:風と木の名無しさん
07/01/16 02:39:54 9TXkB7Yu0
平太wwwwwwww
マスターちょっとカワイス

492:風と木の名無しさん
07/01/16 02:42:05 RFWM6XF20
平太ー、「みっともない声あげるな」なんて、
ちょっと厳しいぞw。
嬉しくなるじゃないか。

493:風と木の名無しさん
07/01/16 03:26:12 452coh0j0
カワホリさんが一番ノリノリな件に関してw

494:風と木の名無しさん
07/01/16 07:16:52 HdUXKIo0O
ちょww平太マジ鬼畜wwwww
清一郎カワイソスw


もっとやれ。


495:風と木の名無しさん
07/01/16 09:18:16 8Ftj7SgZO
平太強ぇーーーーー!!!!!!
新たな鬼畜誕生!!!!


496:風と木の名無しさん
07/01/16 11:33:22 xeThbB80O
こんな種類の鬼畜があるなんてw


497:風と木の名無しさん
07/01/16 11:44:13 1BTGAyYoO
テュランたん柿手たんGJ!!

498:テュランの筏1/11
07/01/16 12:03:16 4SwKWfB10
十一日目

楊玲の悲鳴がなかったら、僕は目を覚まさなかったかもしれない。
クリフは起きて、相変わらず水平線を見つめていたが、方向が全く逆だったし、彼の視力じゃ発見出来ないに違いなかった。
ガバと飛び起き、立ったまま悶える楊玲を日常の風景として目線を通りすぎた、その先。
僕は黒く煙をたなびかせる、水平線上の小さな小さな船影を僕はとらえた。
「船だ、船だよっ!」
誰もが声の主である僕を見、そして指がしめす方向へ頭をめぐらせた。
楊玲は……胸にピアスをつけ、後ろ手に鎖で拘束され、尻に何かグロテスクな物体を
くわえこんでいたが、それでも恍惚一色だった目に、正常の光がともった。
僕はかけつける。楊玲の脇を抜け、いかだの端へ、身を乗り出した。
間をおかずにクリフもかけつけ、横に並んだ。
楊玲が分からない言葉で叫んだ後、鎖のジャラリという音とともに倒れ、呻き声をあげた。
鎖の端を藤吾ににぎられ、行動の自由を奪われているのだ。
助け起こしてあげたいが、今はそれどころではない。船影は、遠ざかっていってしまう!
「おーいっ! おーい」
僕は枯れた喉を酷使し、叫んだ。両手をめいっぱいに振りあげる。
「それじゃ、無理だ」
クリフはにべもなく言い、僕にタープを持たせた。大きく振るように指示される。
旗のように、僕は頭上にかかげたそれを、ふりまわした。
その間にクリフは、つかつかと藤吾のもとへ歩み寄った。

499:テュランの筏2/11
07/01/16 12:04:26 4SwKWfB10
鎖の端をにぎり、犬の散歩のように、優雅にトランクに腰かける藤吾。
彼だけは、船の影も僕らの行動も、目に入らないかのように薄い笑いを浮かべている。
「持っていたら鏡、なければ金属製のたいらな物を貸してくれ」
焦るクリフをじらすように、ゆっくりと藤吾は視線を向けた。
「鏡はある」胸ポケットから櫛のついた鏡を取りだす。
「スパンキング三十回と引きかえだ。もちろん、あれを挿入して」
落ち着き払った藤吾が指さすのは、楊玲の後孔だった。
「な……なに考えているんだっ!? 船が通りかかったんだぞ?
あんた、助かりたくないのかよ」
一瞬絶句しかかったクリフは、それでも両手を広げ、怒りをおさえて藤吾に話しつづけた。
しかし藤吾は鏡をちらつかせるだけで……決して渡そうとはしなかった。
クリフが命令にしたがう意図がないのを見抜いたのか、
鎖を引き、楊玲を悶えさせては冷たい笑いを見せる。
「っ……!」
ムダだと悟ったのか、クリフはきびすを返してこちらに戻ってくる。
舌打ちをこらえたその顔は、まるで炎のように怒りをかもしだしていた。
しかし、もう遅かった。
船は僕の目でもとらえられないほど遠くへ、
水平線でキラキラ輝く光の一端へ飲みこまれてしまっていた。

500:テュランの筏3/11
07/01/16 12:05:28 4SwKWfB10
楊玲は一声唸った後、また目の色を恍惚に染め、喘ぎ声をあげはじめた。
それは異様だが、ここでは日常である。
十メートル四方の王国が健在である事を示す、何よりの証拠だった。

「たぶん、藤吾は俺たちを救う気はない」
タープにくるまった密談の体勢で、開口一番にクリフは宣言した。
僕は苦い顔でうつむいた。今日の出来事を見ていれば、分かる。
「俺の頭に色々考えはあるがまだ、まとまっていない。
多分、今日で結果が出ると思う。智士、今夜も星を見てくれ」
僕は言われた通り、藤吾の時計が示した時報で起きあがり、見た結果をクリフに伝えた。

501:テュランの筏~海市4/11
07/01/16 12:06:18 4SwKWfB10
*  *  *
唯一の飲み物であるコiーラ。残りは半分の一ダースになった。日曜の深夜の事だ。
藤吾はほとんど飲めないし、ガブガブと飲み干し消費するのは主に榊少年であった。
だから、彼が最も先に口にしたのだろう。生来の気質、乱暴さと共に。
本来なら藤吾がそれを耳にする事はなかった。
全身白濁液にまみれ、時折、後孔からの出血に痛みを覚え、喉の渇きはずっと傍にあった。
与えられた毛布と、水なしで飲み下せる睡眠薬で、ぐっすり寝込んでいる筈だった。
だが、薬が体質に合わなかったのか。それとも薬の使用条件を越える程に、
喉が乾燥していたからか、しわがれた咳と共に吐き出してしまっていた。
「……大丈夫なのかよ。クニちゃん。
ほんとーに、あのおっさん、完全に落とせるまでここに篭もるのかよ」
「どうせお前らは『友達の家に泊まる』で一週間以上の外泊は可能なんだろ?
俺の所は両親長期不在だし。
矢野島名義で作った休暇届は、金曜日に投函したから、明日には校長の所へ届く
……榊、お前がしゃにむに消費しなければ、十日以上持つ計算だった」
強い調子で諌められ、口答えしていた榊は、鋭い視線に射竦められると、
唇を結んだ後にゴメンと小さく言った。
「国山さん。外からの補充は?」
これは細目のヨウ少年だった。

502:テュランの筏~海市5/11
07/01/16 12:07:23 4SwKWfB10
「基本的には無理だ。土砂崩れの仕掛けが予想以上に大きすぎた。
非常脱出用に作ったルートも塞がれた。外から掘り出してもらうしかない。
ただ連絡用の通信穴は使える。朝決まった時間に俺の部下が、そこを訪れる」
「ほんとーに、おっさん、落ちるかなぁ」
榊少年の視線が向いたので、慌てて藤吾は寝息に沿った肩の動きを作った。
「……落とさなくちゃならない。ここまで来たら。いや、最初にやると決めた時から。
心まで打ち砕いて、俺たちのものにする……持久戦になっても……」
暗く低い声色には、それに相応しい目の色が灯っていただろう。闇の色、漆黒。
聞きとがめた藤吾の身体がピクリと震えた。ヨウは更に目を細め、何か国山に耳打ちした。
「ああ、また、コンタクトつけなくちゃ。面倒だな。痛いし。カラーは体質に合わない」
「しかし、おっさんもまぬけだなぁ。カラコンと作り話で、あっさり信じるんだから」
榊はまた眠る藤吾へ視線を向ける。小さく笑いながら、国山は装填した。
「体質に合わないお陰で……用意した目薬は出番をなくした。
演技じゃない、ほんとうの涙だから……まぁ、信じざるを得ないだろう。
教師として……なぁ、藤吾先生」
声は、あやまたずに藤吾に向けられていた。
肩を揺らし、寝息を立てるその背中へ。
「え、何、何っ? 起きてるの、起きてるのかよ、おっさん!?」
すっとんきょうな声で、榊は二人の仲間と、藤吾の間で顔を動かしている。
「今、目を見開いた」
ヨウが指摘した瞬間、確かに藤吾は瞳孔をめいいっぱいに、開いていた。驚愕で。

503:テュランの筏~海市6/11
07/01/16 12:10:44 4SwKWfB10
「いいんですよ、起きても。先生。聞こえているんでしょう。
狸寝入りなんて、意地が悪いなぁ。
二日と半日分の信頼たしかに頂きました。
それが打ち壊される時が……心を支配するのに丁度いいんだけど。
ちょっと早すぎましたかね。別にこっちは構いませんですけど。
俺たちには、これからもまだまだ耐える時間は沢山……あるんですから。藤吾先生」
挑発口調で投げかける国山に、藤吾は乗らなかった。ただただ寝た振りを続けた。
ガクガク震える手足はどうしようもなく、それに連なり心も乱れていた。
誰もが藤吾の目覚めを確信して、離れた位置から薄い笑いを浮かべていた。
それでも動いたのは榊少年一人であった。毛布を剥ぎ取られ、乱暴に髪を掴みあげられる。
そこで初めて藤吾は覚醒した演技をしたが、誰もそんなものは気にしていなかった。
「では、お目覚めの一杯。いくぜ、おっさん」
たぎりかけたペニスが、騒いで飛び出そうとする藤吾の胸の内を、物理的にふさいだ。

犯される藤吾に、涙を流す者はもう誰も居なかった。藤吾自身も含めて。
身体中のあちこちをなぶられ、押し挿れられ、残酷な言葉を投げかけられながら、
藤吾はどこかでヒビ割れる音を聞いていた。
自分の中の音だと分かると、藤吾は笑い転げたい衝動に駆られた。
ヒビ。ヒビだなど、誰が言ったのだろう。自分の中の何が割れると言うのだろう。
これは卵の殻を破るのと同義。
枷から解き放たれ、飛翔するのは今をおいて他にはないのに。
壊れはしない。そう簡単に、心は打ち砕かれない。

504:テュランの筏~海市7/11
07/01/16 12:11:45 4SwKWfB10
……彼らはそれを知っているのだろうか。若く、まだ社会にも出ていない彼らは。
……教えてやらねばならない。身も心もものにするとはどういう事か。
……自分は、教師だ。師の立場で教えを施す者。別に内容が教科と決まった訳ではない。
……必要だと思った事は、何だって……教えてやらねばならない義務が、権利がある。
それがこの職を選んだ自分の使命なのだと、強く心に刻み込まれる。
どんよりと濁っていた藤吾の瞳に、暗い炎が灯った。
藤吾をもてあそんで笑う少年達は、誰もそれに気付かなかった。

声は出なくとも、身体で十分教育を施せた。最初のターゲットはヨウ少年であった。
細い目の奥で、犯される藤吾にどこか焦がれるような瞳の色があるのを、教師である藤吾が見逃す訳がなかった。
ヨウと一対一になった時、大仰に快楽の顔を作り、喘いで見せた。
彼にはもともとマゾっ気があったのかもしれない。
立場を入れ替えるのに、そう労は費やさなかった。
藤吾のものを受け入れた少年は甲高い悦びの声をあげ、
最初に被っていた、まやかしのSの仮面は粉々に砕けた。
排泄と偽り、出かけ、二人は適当な部屋で身体を交わした。
勘聡い国山が気付く前に、すでに支配する者とされる者の関係にあった二人は、行動を起こしていた。
生活の糧であるコiーラを、全て奪い、支配下に置いた。月曜日の夕方であった。

505:テュランの筏~海市8/11
07/01/16 12:12:59 4SwKWfB10
予想通り、次に脱落したのは榊少年だった。
苛立ちに紛れてスナックを漁り、暇さえあれば、ヨウに「裏切り者」と罵り言葉をかける。
これで、喉が渇かない訳はないのだ。
藤吾にとって幸運だったのは、ヨウが空手の有段者であった事だ。
国山はボディガードをも兼ねて、彼を傍に置いておいたらしい。
それが逆に今は、暴力的解決を選べない窮地に追い込まれているのだから、皮肉なものだ。
榊は渇きを忘れようと、足音高く歩き回っている。視線をコiーラの箱に釘付けに。
国山は腕を組み、藤吾から最も離れた位置で注意深く窺っている。
時折、榊に「無駄な動きはするな」「構うな」など短く檄を飛ばす。
だが、青褪めた顔色は、ついに戻らなかった。
火曜日の早朝、根を上げた榊は、ボトル一本と引き換えに、二人に組み伏せられた。
上も下も同時に犯され、身体中を白濁液にまみらせながら、榊はうつろな目を作った。
それでも交代交代に責めつづけると、少年は割れ鐘のような声で笑い始めた。
早まりすぎたか、と藤吾は少し後悔した。
食への欲望は貪欲でも、性に関しては、それほどではなかったのだろう。
たまに意識が正常に戻る事はあったが、それ以外は幼児のような行動で、
榊はずっとコiーラのボトルをしゃぶりつづけた。
火曜日の深夜の事である。助けはおろか、掘り出しが開始された様子すら、なかった。

506:テュランの筏~海市9/11
07/01/16 12:14:05 4SwKWfB10
水曜日の朝。取引を持ちかけてきたのは国山の方だった。
「降参する。だが、身体はあけ渡さない。交渉だ。
助けを呼ぶ。外へ声が繋がる通信穴は、俺しか知らない。
だけど土砂の量が多く、掘り出すまでに半日はかかるだろう。その間持たせる。
ボトル一本と引き換えに、助けを呼ぶ」
ほんとうに限界だったのだろう。
これだけ紡ぐにも、何度も空気を求めて喘ぎ、ひびわれた唇を手の甲でぬぐっていた。
ダンボールに腰掛けた藤吾は、腕を組んでにやにやと笑う。
「……何故、私が助けを欲しいと、そう、思うのかね?」
「あんたは、炭酸が飲めない。もう、限界だろう。俺は、まだしばらく持つ。
だから、この駆け引きは俺に分がある」
嘘だった。国山の精一杯の虚勢だと、藤吾は見抜いていた。
彼は駆け引きなどに出ず、黙って時刻になったら助けを呼び、半日だけ待てばいいのだ。
その半日も持たない程……国山は限界なのだ。藤吾は唇の端を吊り上げた。
「別に……どうだって、いい。助けなんて」
「……っ!?」
遠い目をして呟く藤吾に危険を感じたのか、見開き、国山は一歩後ずさった。
「君に、きちんと『教え終えた』ならば、助けを、考えてもいい」
ギクリと顔を強張らせた国山は、しかし動揺を押し隠した。震える唇で何とか紡ぐ。
「あんたは……狂ってる」
「そうかね」

507:テュランの筏~海市10/11
07/01/16 12:15:23 4SwKWfB10
短い藤吾の返答を、最後まで待たず、国山は時計にチラと視線を這わせた後、一目散に部屋を飛び出した。
足取りはふらついているが、目的を持った瞳だった。
藤吾はヨウの肩を押した。忠実な猟犬のように彼は駆け出す。
残った藤吾は部屋を見渡し、戸棚にボトルをしまった。鍵をポケットに落とす。
鍵が一本しかないのは、確認済みだった。そして榊を引っ張るようにして、後を追う。
この鍵が数奇な運命を辿り、海に投げ込まれて生涯を終えるなど、まだ誰も知らない。

「助けてっ! 早く、今すぐっ!」
土の廊下に出た途端、その悲痛な声は響き渡った。
出入り口近くの、工事用品などを置く棚から、国山は枯れた喉を震わせていた。
追いついたヨウが間もなく彼の動きを、固めて封じた。
身をよじって抵抗する国山に、藤吾は威厳を持ち、悠々と近づいていく。
青褪めた唇を結ぶ国山の前で、外へ繋がるパイプに、藤吾は握り締めた土塊を押し込んだ。
「無粋なまねを……」
怒りを押し殺した藤吾の口調に、怯む様子もなく、国山は足をばたつかせ「狂人」と罵りつづけた。
何故、教育をやり遂げようとするだけの、熱い教師の魂が分からないのか。
急に怒りに駆られた藤吾は、はがい締めにされている国山の制服を乱暴に剥ぎ取った。
「やめろっ、この変態教師」
狂人よりはマシであったが、それでもありがたくない呼び名に、藤吾は憤慨した。

508:テュランの筏~海市11/11
07/01/16 12:21:21 4SwKWfB10
ヨウに言いつけ、国山を押し倒す。はだけた胸を、ひたすら舐め続けるよう、榊に命じた。
「お前らっ……触るなっ……っ、ひ……っ、ひぁっ」
糖分の混じった舌が這い回る感触に、背筋を震わせ国山は悲鳴をあげた。
その間に藤吾は、国山の股間を観察し、卑猥な言葉も浴びせていたが、
果たして聞いていたのかどうか。彼はひたすら暴れて、喚いて、もがくだけだ。
さっさと身体に教え込んだ方がいい。判断した藤吾は、国山の足を広げ、後孔を晒した。
再び激しい罵り言葉が轟くが、ヨウに口への責めを命じると、まもなく止んだ。
ファスナーをおろし、いざ挿入しようという時に、潤滑の代わりが何もないのに気付いた。
取りに行くには遠かった。三人がかりで押さえつけている今、離れる訳にもいかない。
忌々しく藤吾は舌打ちした。ほんとうに、何もかもが足りなさすぎる。
藤吾の心に浮かぶ、いくつかの思考。
(このまま挿入……榊のように壊れるか? だが時間が)
(終らせなくては、教育を。心を支配する……)
(壊れても、支配には代わりない……最終手段だが)
その迷いが運命を分けた。国山と、藤吾の人生を。
「誰か、居るのかっ?」
四人の誰でもない、第三者の声が響いた。懐中電灯の薄い明かりが、差し込んでくる。
背後の出入り口の土砂は、それが透けるほどに薄くなっていた。
誰も返事はしなかったが、まもなく最後の土が取り払われ、外気と陽光が満ちた。
*  *  *

509:風と木の名無しさん
07/01/16 12:42:05 +jSR9GcK0
テュランタソ乙!!
この展開激しく萌えた。。。

510:風と木の名無しさん
07/01/16 13:56:30 8Ftj7SgZO
テュランタソGJ!!!!
藤吾逆転萌え!!!

でもこの後の展開でどうなるのか楽しみ(*´Д`)

511:風と木の名無しさん
07/01/16 22:27:14 71suZ/iL0
面白い…。
本当に面白い。萌えとか関係なく、ただただ面白い。
続き楽しみにしてます。

512:風と木の名無しさん
07/01/16 23:20:08 HdUXKIo0O
すげぇ…。
萌えとか通り越し手ハラハラドキドキしとる。

この過去が現在にどう繋がるんだろう…。
激しく続き期待!

513:風と木の名無しさん
07/01/17 00:30:40 tlcQcWbI0
こういう表現が適当かどうかわからないが、翻訳物のような面白さだ>テュラン

514:風と木の名無しさん
07/01/17 00:49:04 JlK6TOteO
何この乙の嵐…気持ち悪い。本気で面白いとか思ってるんだろうか…。
もっとレベル高い作品頼むよ!!

515:風と木の名無しさん
07/01/17 01:08:14 K7lpWDMrO
テュランタン乙!!!
ものすごく萌え&ハラハラする展開で続きが気になるよ

516:風と木の名無しさん
07/01/17 03:03:19 TBJKzqAH0
 

517:テュランの筏1/9
07/01/17 12:05:05 FyI39WtK0
十二日目

「動いていない……このいかだは」
それがクリフの出した結論だった。
僕は、呆然としていたのもあるが、頭の回転がおいついていなかった。
説明を求めて、クリフの肩をゆらす。
「星座の位置が全く変わっていない。
季節の傾きを計算に入れても……このいかだは初日の位置のまま移動していない」
床につけた傷だか数字だかつかないものを指で示し、クリフは目つきを鋭くした。
「だ、だって……二週間で助かるって。東の方に島があるって」
「客船が座礁した位置から、確かに東経に諸島はある。他は……全部でたらめだろう。
最初から希望をもたせる為だけに……十四日間という数値を設定したんだ」
僕は……顔面蒼白になっていただろう。
紙のように真っ白な色をして、激しくなりつつある鼓動を聞いていた。
……それじゃ、耐えても何にもならないじゃないか……
ポロポロ、ボロボロとまらず、僕はまた貴重な水分をムダにしてしまっていた。
クリフが目を閉じ、僕の髪に手の平を乗せた。
その温かみをもってしても、僕のこぼれる涙を止める事は出来なかった。

518:テュランの筏2/9
07/01/17 12:05:57 FyI39WtK0
「そんなにショックを受けるなら……俺の心だけにしまっておけばよかった」
ぽつりとつぶやくクリフに、僕はぶんぶんと頭を振った。
「ううん、そんな事はない。クリフが一人で心に抱え込まなくて、よかった。
心の構えが出来て、よかった。島影が見えなくても、絶望せずにすむ」
少しだけ表情をやわらげたクリフは、動きが止まった僕の頭を、ていねいになであげた。
「……藤吾をどうにかしなくては……いよいよトランクを奪わなくちゃならない。
締めあげ、何を考えているか聞き出さなくちゃならない。
今度は平和的にはすまない。暴力も辞さない」
独り言のように「明日」と唇を震わすクリフ。僕は呆然と、端正な横顔をながめていた。
タープを持ちあげ、太陽が昇る方向へ視線をやるクリフの目が、ふと僕を見下ろした。
「いつまで、泣いてるんだよ」
からかい気味にふわりと微笑むと、タープを持つ手を離せなかった為、
顔をやや斜めに近づけてきて……舌で僕の涙をなめとった。
「ん、あ……」
あまりに突然だったのもある。
クリフの顔がこれだけ接近するのに、身構えが出来なかった事もある。
鼓動は急激にやってきて、急カーブをえがいて最高潮に達していた。
耳まで一気に赤く染まるのも、下半身に血が集るのも、どちらも防げはしなかった。

519:テュランの筏3/9
07/01/17 12:07:53 FyI39WtK0
深刻な話をしているのに、なんで節操なしなんだ、僕は。
そう自分を叱ると、ますます恥ずかしくなって、紅潮するのをおさえられない。
唇を離したクリフは、不思議そうに、体温の高まった僕の顔を凝視する。
「辛いのか? ……大丈夫だ」
それは不安そうに泣いていた僕が、涙をこらえているのだと思って、安堵させようとかけた声なのだろう。
優しい吐息が、包まれたタープの中をかけめぐり……思い出させた。
強制的に行なわれた口での刺激。僕のがクリフの唇を割って入り、熱い息を絡められた中で、快楽を得た……思い出すな。
けんめいに止めようとしたが、勃起という生理現象は、もう僕の手にはおえなかった。
下半身でむくむくと起きあがる僕のペニスに気付き、クリフは目を丸くする。
見られてしまった! その恥ずかしさで、僕はまた全身の血液を下肢へと流れこませる。
「ごめん、思い出さないでっ……違う、違うんだ。ごめん、ごめん、クリフ」
文章になってない事を、僕はさんざんにわめきたてた。それこそクリフが呆れるまで。
「ごめんっ、違うのは分かってるのに、そんな場合じゃないのも、肌で感じてるのにっ……クリフ、ごめん」
顔を手で覆うのは、こぼれる涙をおさえる意味もあったし、赤面する頬を隠す意味もあった。
ただ、中途半端に燃え立ち、そのまま刺激を与えられずに放置された僕のペニスはたぎり、
マグマの噴火を直前にしながらも、きっかけがなく静まる火山のようになってしまっていた。

520:テュランの筏4/9
07/01/17 12:08:49 FyI39WtK0
「っ……ううっ」
どうすればいいのだか。このままじゃ苦しいだけだ。
けれど手はふさがっているし、場所を移動しようにも、この半端な持ち上がり状態では、とても歩けない。
爆発寸前の爆発物を抱えたように、僕はただ震えて呻いた。
しょうがないな、と苦笑する音が、頭上で聞こえた。
「辛いのは、そっちだったのか……まったく」
からかうような口調だった。それがかえって僕を救った。
「仕方ないっ……生理現象だし……空気こもって、熱いんだから、この中
……クリフは、突然だいたんな行動に出るし」
それこそ、自分をたなにあげて、クリフを責めるくらいには。
クリフは微笑んだ。きれいな八重歯を見せて。
「苦しいだろ……出しちゃえよ」
あ、と声をあげるひまもなく、暖かな手が、僕のペニスを包んだ。
さっきまで髪をなでていたそれは、口とは違う温度と、やわらかさを持っていた。
ぬくくて、しっとりしている。さらさらで、持っている球面の全てがなめらかだ。
その感触が全てクリフのものだと認識したとき、僕の背に走った電流は、
身体を反らせ、強い力で僕の下半身を前に押し出した。
「ん、う……んっ」
クリフは、ほんの二、三度、囲む手の平を動かしただけだった。

521:テュランの筏5/9
07/01/17 12:09:59 FyI39WtK0
それだけで、十分だった。僕の興奮は白濁となって、発される。
「ああ……っ」
ねっとりした液体が、タープに飛んだ。濃い緑色の表面に、
音を立てて着地し、白い染みとなってはりついた。
「あ……っ」
今度は、後悔の声。何しているんだ、僕は。
冷静さが戻ってきて、自分の行為を手ひどくなじった。
クリフのタープに、節操もなく、欲望の残滓をなすりつけるなんて、この恥知らず。
自分の頭をぽかぽか殴りつけたい。いや、それこそ今から実行に移そう。
両拳をつくり、すさまじい勢いで耳の上に向かっている最中、クリフは言った。
「……俺は、智士がほんとうにいやがってるのかと、そう思ってた……」
うつむきがちに、ぼそりとつぶやくその言葉を、理解するのに時間がかかった。
のんびりしすぎていたのだろう、僕は。
クリフはそれ以上なにも言わずに背を向け、白いものがこびりついたタープにもぐりこみ、くるまった。
「あ、あのっ……取り替えるよ、タープ。僕のと」
「いや、いい」
短く答えたクリフは、タープの中から手をひらひらと振った。
まもなく寝息とともに、規則正しく肩が上下しはじめた。

522:テュランの筏6/9
07/01/17 12:14:33 FyI39WtK0
彼を起こしてまで、話し合う事じゃない。
僕は自分のタープに戻り、彼の言葉の意味を、取り替えなくてもいいと言ったその心理を、おさまらない鼓動の中で考えつづけた。

疲労もあったのだろう。僕はぐっすり眠りこけてしまった。
目覚めたのは夕方だった。沈む太陽が海をオレンジ色に染めている。
見渡す四方、全部海と空だった。
すでに起きて水平線をながめていたクリフは、僕を見ていつも通りに接してきた。
黙々と、残り少なくなった水と食料を口に運ぶ。
これが全てなくなる前に……どんな形であれ、決着はつくのだ。

523:テュランの筏~海市7/9
07/01/17 12:15:29 FyI39WtK0
*  *  *
土中の彼らに知るすべはなかったが、日曜日から火曜日にかけて豪雨に見舞われていた。
防空壕の、崩れていた土砂は大分流され、湿った土は柔らかくなっていた。
その反省点としてか、藤吾は外出時には必ず雨傘を携帯するようになった。
だが、まだ反省すべき点はあった。
攻勢に出てから、余りにも短く足りない時間。
それに伴う、消化順序の誤った選択。助けが偶発的にも訪れやすい場所。
下準備も不十分だった。
教職を辞してからの藤吾は、反省点に拘りつづけ、その正体は何なのだろうと自問自答すると、答えは簡単。
終らなかった教育への未練、だった。
残りの人生を全て賭けても、彼は中途の教えをやり遂げねば、と抱いていた。
あの狂った閉鎖空間で過ごした為か、藤吾は既に同性、それも苦しみ悶える少年にしか勃たなくなっていた。
弊害と呼ぶよりは、むしろ目的を真っ当するには好都合であった。
藤吾はありとあらゆる準備を整え、選び抜かれた教材と共に、海を再教育の舞台に選んだ。
風の噂に聞いた、三人の少年のその後。

524:テュランの筏~海市8/9
07/01/17 12:17:05 FyI39WtK0
一人は、防空壕のあの深い空洞から身を投げた。埋め立て工事が始まる前日だったと言う。
一人は病院から未だに出てこず、一人は歌i舞伎町で名を馳せていると聞く。
あれから数年過ぎ、既に少年でなくなった彼らに、藤吾は全く興味を持たなかった。

藤吾は、五メートル近い幅の巨大な板を積荷とし、
教材道具の詰まった黒いトランクを手に、船へ乗り込み、乗客を検分した。
(赤毛の少年、一つに結んだ髪と目の細い所が似ている。最初に落ちるだろう。
腕っ節は細くボディガードは無理そうだが、今回は抵抗に対する準備も万全だ。彼が一人目)
(旅慣れている。金髪の少年、ああ、青い目。そっくりだ。意思の強そうな所が。
最後までてこずるなら彼だ――もっとも、今回は負けやしない。もし敗北する時は……)
(黒髪の、優等生面の日本人の少年。二人を足して割った感じだ。
欲望に忠実と言うよりは、むしろ意思畢竟の問題か。
扱いを間違えなければ、彼もすぐ落ちるだろう)
藤吾は何年もこうして、乗客に教え子を見出し、危険な航路客船に乗り込み、失望と共に目的地に着いてきた。
だが、今回は十分に沈没の危険性が高かった。

525:テュランの筏~海市9/9
07/01/17 12:18:20 FyI39WtK0
魔の海域と呼ばれる航路。建造八年。
船級協会には加入していない。積荷は綿花三万ポンド。
五十すぎた船長は、ベテランではあったが心身ともに衰えている。
藤吾は教えがいのありそうな少年たちから目を離さず、汽笛の音に身を委ねた。
*  *  *

※海市(かいし)~しんきろうの意※

藤吾の精神は……いや、正か異であるかなど、誰にも断定はできない。
ただ、一つ言える事はある。
彼の精神はどす黒く、闇の中にあった。
彼にとっては、救いの光も助けの手も、幻にすぎなかった。
彼はまだ、暗い穴の中に居た。
冷え切った土の中に置いてきぼりのままだった。
身体が光をまぶしく受け止める色のスーツをまとおうとも、
切り離された心は、黒々と丸まってうずくまっていた。

526:風と木の名無しさん
07/01/17 12:33:26 HnGBFRKC0
テュランタンGJ!
すがっていた希望はガセ!?
どどどどーするのー!?((((;゚Д゚)))

527:風と木の名無しさん
07/01/17 14:07:51 F1GxcnjW0
榊が病院、ヨウが歌i舞i伎i町で、国山が飛び降り…かな?
いずれにしろザマアミロだが。
藤吾は穏やかに発狂していたのだな。
絶望的な鬼畜展開もさる事ながら、ストーリーが素で面白い。

528:風と木の名無しさん
07/01/17 15:02:09 y3v2CtGVO
テュランタソGJ!!
極限に迫った展開…凄い!!
智士達の運命はどうなるんだろ……
はげしく期待。

静かに狂気になる藤吾GJ

529:風と木の名無しさん
07/01/17 16:55:55 eQlx4DvgO
クリフと智士萌えたw
智士の反応がかわいすぎる

530:吸血鬼8
07/01/17 18:01:32 kAXhyptF0
暖炉横のサイドボードに乗っている二つの銀の短剣が仄白く輝き、
城を囲む木々の影に覆われた部屋の黒をほんの少し弾いている。
見事な彫刻をあしらった一本の猫足で支えられた丸い天板の上には、
木製のコップに入った酒が横に置いたランプの灯に、
その琥珀色を際立たせていた。
干し肉をナイフで削って口に含み、アドルフは酒を
流し込んだ。どちらも、狩りが成功した時の祝杯用に持ち込んだものだ。
「おい、ほどほどにしとけよ。売る前に壊してしまうつもりか」
ランプの灯が届かない奥のカウチに腰かけ、
抱えた少年を未だ飽きもせず突きあげてる
相棒に苦笑して、酒をコップにつぎたす。
「わかっ、てる、って。‥‥‥ほら、しっかり、受け止め、ろよっ」
内部をかきまわすような激しい突き上げに、クラウスは
首をのけぞらせて悲鳴をあげる。擦られるたびに下半身に
痺れがはしり、中を突いてくる熱いヤンのモノのリアルな
感触にどうしようもなく体がうずき、心が翻弄される。
イかされて吐き出された精液と、だらだらと流れ続ける
先走りでグショグショのクラウスのモノはまたも弾けんと
膨張していた。


531:吸血鬼9
07/01/17 18:02:38 kAXhyptF0
「っ、あ‥はっ、ああっ」
「いい顔だ」
快感に押されて自分から腰を振りだしたクラウスの汗ばんだ体を
ヤンが片手で支え、もう片方で前を強く扱く。
「ひっ、あっ、ハッ、あああぁぁ‥‥!!」
部屋に満ちる少年の喘ぎ声が一際高まる。
体の中で弾けた衝撃にクラウスはすがるものを求めて、
無意識にヤンの背に爪をたててしがみつき、
少し遅れて達した。
強く締め付けてくる粘膜の心地よさを惜しみながら、
浅い息でビクビクと痙攣している体から己のモノを引き抜いた。
あっ、と小さくクラウスの口から声がもれる。
ヤンは脱ぎすてた服を拾って身にまとい始めた。


532:吸血鬼10
07/01/17 18:03:30 kAXhyptF0
さてどうするか。
アドルフはコップに残った酒を一気に呷り手の甲で口を拭った。
日も暮れて来た事だし、この闇にまぎれて村を突き抜け、
街に戻るのが一番良い。闇を恐れていたのに、今はその闇
が自分たちにとって好都合とは皮肉なものだ。
「んんっ」
少年の声がしたのでそちらに目をやると、
服を身につけたヤンが少年の口を覆っていた。
「おい、いいかげんにしろ」
さすがにあきれて嘆息した。
仕方ない。
明日の朝一番に村で馬車でも買って帰るか。
荷馬車でもいいが少年を隠すには屋根付きの馬車のほうがいい。
高額だが、少年の値段を考えればどうってことはない。
しかし‥‥‥。
改めて室内を見回して、見た目は古いがほとんどホコリの
かぶっていない整頓された家具を、今更ながらに不思議に思った。
「貴族どもの隠れ家ってとこか」
それとも‥‥‥いや、それはないか。
一瞬よぎった物騒な考えを、頭を軽く振り打ち消した。
だいたい少年が一人でいるくらいだ。
迷って困っているというふうではなかった。
よくここに来ているのだろう。
闇の支配者の住処であるわけがない。
何をおじけているんだか。
自嘲して、酒を飲みなおそうと空のコップを手に取った。
そんなに飲んではいないと思うのだが、目に翳みがかかっている

533:吸血鬼11
07/01/17 18:05:24 kAXhyptF0
「!?」
ちがう。
目が翳んでいるのではない。
これは霧だ。
霧が自分の体を覆っている。

ヴァンパイアの霧。

アドルフは戦慄した。
ヤン!と相棒を呼ぼうとするが声が出ない。
首に何か冷たいものが触れている。
体に力がはいらない。
そこから生気が奪われているのだ。
自分を覆っている霧がゆらっとゆらめき、
ゆっくりと人を象っていく。
首に触れているものが指だと理解したのを最後に
アドルフの呼吸が停止した。


534:吸血鬼12
07/01/17 18:06:35 kAXhyptF0
少年の口をしゃぶり、胸の飾りを転がしていたヤンは
ドタッという音がしたので振り返った。
そして、瞠目する。
暖炉の前、丸テーブルの横。
アドルフが仰向けに倒れている。
その脇に青年が立っていた。
白いうなじにかかるくせのない金髪と闇色の衣装を
仄かに輝かせて照らすランプの灯が大きく揺れる。
少し長めの前髪の合間にみえる金色の瞳は
異様な光をはなっていた。
どっと冷や汗が流れた。
人の域を超えた端正な顔立ち。
ヤンは今までの狩りで見慣れている。
昼間の狩りしか経験はなく実際に動いている
のは初めて見るが‥‥‥
間違えるはずがない。あれは‥‥

「ヴァ‥ンパイア‥!!」

今日はここまで

535:風と木の名無しさん
07/01/17 19:04:07 B/O3KG1fO
ウヒョー!(・∀・)
テュランタンも吸血鬼タンもGJ!


テュランタンはそろそろ佳境なのだろうか。
スレ覗く度に続きがあるよ。
続き期待!


536:風と木の名無しさん
07/01/17 20:02:20 bAYKXhOl0
吸血鬼タンも来てた!
ヴァンパイアついに登場でwktk


537:風と木の名無しさん
07/01/17 22:11:45 Bm2XPGetO
吸血鬼たんktkr(・∀・)!

ところでヤンは吸血鬼を見慣れてるの?

538:風と木の名無しさん
07/01/18 00:00:02 eQlx4DvgO
吸血鬼たんGJ!ヤンかなり気に入ったのなw

539:風と木の名無しさん
07/01/18 00:28:56 pf7UuINSO

したらばで厨設定に萎えるって言われてた。

540:風と木の名無しさん
07/01/18 00:41:08 9kxc/0w/0
>>537
棺桶の中で眠ってる無害の吸血鬼は見慣れてるんだよ。
戦闘ゲージMAXの動いてる吸血鬼は初めて見たんだよ。

801チンピラも、吸血鬼タンの前では、可愛くアンアン言わされて
しまうのだろうかw

541:テュランの筏1/15
07/01/18 12:02:52 qg4wNRbU0
十三日目

昼近くまで、僕とクリフは、水平線に目をこらしつづけた。
楊玲の喘ぎ声を、日常の延長として、耳にとらえながら。
けれど、どこまでも空と海は完璧に二分された青を見せていた。
クリフは立ち上がった。僕もそれにつづく。
トランクに腰かけた藤吾が、接近に気づいて顔を上げた。
ポケットから奇怪な道具を取り出し、にやりと笑う。
この何日か、恥辱にあまんじず、耐えてきたからこそ、それは忌々しく禍禍しいものと一層感じられた。
「俺は、命令にしたがいに来たんじゃない」
クリフはぴしゃりと言った。藤吾は少しだけ眉をひそめる。
しかし、いやな笑いは、もう彼の顔の一部と化していた。
「十四日目に助かると、あんたは言った。けれど……まったく陸が見えてこない。
あんたの言葉がほんとうなら、とっくに見えてなければおかしい」
疑いを抱いた強い調子で、クリフは挑んだ。藤吾はくっと笑って、目を細めた。
「……俺はいかだが全く動いていないのを知っている」
真実を暴露するクリフを、藤吾は前髪を払ってあしらった。
彼は明らかに、嘲っていた。僕らを愚か者だと見下していた。
左手の甲を顎にあて、手首に光る腕時計に話しかけるように、小さく唇が動いた。
それは誰にも聞き取れなかった。僕はおろか、飛びかかろうと距離をつめるクリフにさえ。

542:テュランの筏2/15
07/01/18 12:04:08 qg4wNRbU0
「甘い希望をもたせて……最後にそれを打ち砕いて、懐柔しやすくする。
それがお前の狙いだったのかっ! もう俺たちは言いなりにならないっ!
これは、正当防衛だっ……」
自分に言い聞かせるのか、拳を振り上げながら叫ぶクリフ。
僕はあわてて加勢しようと駆けつける。作戦などなきに等しい。
身一つの僕らが上位に立てるのは、人数。
楊玲はとりあえず無視して、僕とクリフ。
藤吾を海に突き落として、水中に引きずり込めば……交互に呼吸して、勝てる。
もう殺人を厭っている場合ではなかった。
藤吾が降伏すれば、それで生きる道はあるが……可能性は非常に低いだろう。
そんな事を考えていたから、僕は藤吾のテュランたるゆえに気付けなかった。
その時には遅かった。
右ポケットに手をいれたままの、藤吾の危険を……最終兵器を。
バチン! といかだ全体が轟いた。昼間の陽光よりさらにまぶしく、海上を照らした。
焦げくさい匂いが、一瞬鼻先をかすめた。
まずい、と思ったが突進する足は止まらず、そのまま僕は餌食になってしまった。
藤吾が無造作に手を伸ばして向けるのは……スタンガン。
再びいかだ上で炸裂する閃光。胸の表面をビリ、と走った衝撃に全身がはじけた。
頭の芯がスパークする。膝から力が抜ける。
床に倒れたというのは……顎をぶつけた感覚で知った。

543:テュランの筏3/15
07/01/18 12:05:01 qg4wNRbU0
マヒして不自由な顔を、それでも動かすと……離れた位置でクリフも倒れていた。
うつぶせに、しかし鉄の意志で頭だけは起こし、憎憎しく藤吾をにらみつけている。
しびれる腕に力をこめ、起き上がろうと懸命になっている。
僕ら二人を見下ろし、藤吾はにんまりと唇を歪めた。
「楊玲」
そう言って、顎をしゃくった先は倒れ伏す僕だった。
飼主に忠実な番犬のように、楊玲はうなづき返し、僕の背中に馬乗りになった。
ズン、と圧迫され僕の内臓は無理やり歪められた。
背骨が折れそうに痛み、呼吸も満足に出来ない。
体格は同じくらいなのに、栄養状態がよく、肌も血行がめぐっている彼と、
ここ数日絶食に近い食生活を送ってきた僕との決定的差がここに現れた。
僕は、もがいても彼を振り落とす事が出来なかった。
「……、……」
楊玲は分からない言葉で、僕にささやきかける。
……何なんだ、その達観したような笑みは?
僕は怒りが湧きあがるのを感じた。
全身全霊をこめて腕を持ちあげようとするが、栄養不足の身体は気力についていかない。
その時、カシャリと鎖の音が響いた。

「クリフ君か……君は思ったより克己が強すぎた……はかどらない」
藤吾はそう言いながら、身動き出来ないクリフに、革の首輪を巻いた。

544:テュランの筏4/15
07/01/18 12:06:03 qg4wNRbU0
正面には長い鎖がつき、端は藤吾の手ににぎられている。
ちらりと僕の方を見、クリフに向き直る。
「意志の弱い二人は簡単におとせると思ったが……ま、朱に交われば赤くなる、と言ったところか」
鎖を乱暴に引くと、クリフは苦しげに呻きながら、引かれるままに身を起こす。
藤吾の前にさらけだされたクリフの胸の先端。そこに透明な二つの何かがつけられた。
透けるプラスチック製の……吸盤だ。
「なっ……」
絶句したクリフは、振り外そうとマヒの残る身体を左右に揺らした。
が、それはとても弱弱しく、胸の突端に吸いついたものは、びくともしない。
クリフの抵抗など意にも介さず、藤吾は片手でさぐったトランクから、手馴れた様子で品を取り出す。
「君のおかげで、日程がだいぶん狂ったよ。
楊玲はいいが、君たちは五日分も消化していない。
意志の弱そうな智士君の方は、一日でもかなり進められるだろうが……君は、ね。
短時間に集中して教えこむしか、あるまい?」
決して藤吾は質問し、意図をたずねたのではなかった。
鼻が近づくほど、顔が接近して行なわれた、威圧。脅し。
クリフが怯んだすきに、藤吾は手の中のものを突っこんだ。クリフの口に。

545:テュランの筏5/15
07/01/18 12:07:00 qg4wNRbU0
ゴルフボールより一回り小さなボールに、両端に黒いゴムがのびている。
指先でつついて口内に押し込むと、藤吾は手早くゴムを首の後ろに巻きつけ、結んだ。
「んぅ!」
口を強引に開かれたまま、閉じられない状況に陥り、クリフは大きく目を見開き、何かを発した。
もうそれは、誰にも聞きとる事ができない。
トランクから新たな品を取りだし、藤吾は鎖を引いて、クリフを物理的に大人しくさせた。
「サイズが小さいが……まぁ、がまんしろ」
藤吾は袋のラベルに目を通した後、不吉な事を口にした。
けれど、決して中断しようとはしなかった。
表面が黒光りする、皮のパーツ。革ひもで装着する、衣服の部品は、とても禍禍しかった。
肩と二の腕、手首、足、脛、腿、腰などと言った部分が、黒皮に包み込まれていく。
いや……強引に押し込まれていく。
サイズが小さいなんてものじゃない。伸びない素材を強引に、身体に合わせているだけだ。
その証拠に、クリフは身をよじり、呻き声をあげ、割れんばかりに目を見開き、皮膚が苛まれる苦痛を訴える。
黒い皮と白い肌、美しいコントラストにクリフは包まれ、苦悶の表情を見せている。
よほど苦しいのか脂汗が流れ、それはよりいっそうクリフを扇情的に見せた。
その皮の衣服は何せ……胸や股間を隠すパーツが、最初からないのだから。
にやにやと観察をしながら藤吾は、革ひもを結びあげていく。

546:テュランの筏6/15
07/01/18 12:11:11 qg4wNRbU0
「なかなか……ボンデージの似合う肌の色じゃないか……」
感想なのか、それとも嘲っているだけなのか。
クリフは後者にうけとり、頬を恥辱に赤く染めた後、んんっ、とわめいた。
「ええと……あとは」
藤吾はまだトランクを探っている。
僕は押さえつけられている腹で懸命に呼吸して「やめろ!」と叫んだ。
それはむなしく海上にこだまするだけだった。
小さな箱を取りだし開ける。藤吾の手には小さなリング状のものがあった。
近づいていくその先は……クリフのペニスだった。
手がふれた瞬間、クリフは嫌悪に顔を歪める。
が、藤吾はおかまいなしに一通りさすりあげ、それからゆっくりとリングを通しはじめた。
根元にしっかり収まると、藤吾は満足そうに手を離す。
「では、仕上げだ」
鎖の持ち方を変えると同時に、クリフの向きを仰向けからうつぶせにする。
抵抗むなしく、藤吾に尻をつきだした、卑猥な体勢をとらされる。
容赦なく、なめるような視線で見まわしクリフの羞恥をさそった後、藤吾はポケットからもったいぶって取り出す。
男根を模した……口に出すのもおぞましい……道具であった。
ゴムだかプラスチックの素材で、毒々しい色をしている。
藤吾はもう、よけいな口をはさまず、右手のそれを、あやまたずにクリフの後孔へ進めた。

547:テュランの筏7/15
07/01/18 12:12:17 qg4wNRbU0
首をめぐらせ、その様子を見ていたクリフの抵抗は……悲痛なものだった。
前進して逃れようとする行為は、鎖を引かれ、激しい呼吸困難とともに引き戻される。
咳きこむ声は、口枷にふさがれ、奇妙な色にくぐもっている。
咳きこみ力が抜けたところで、藤吾は力をこめて、突き入れる。
「ん、んむっ!」
クリフは限界まで目を見開き、その後痛々しく瞳は閉じられた。
僕はもう見ていられなかった。
無理やり蹂躙された後孔からしたたる血の音だけでも、卒倒してしまいそうだった。
水気をまったくもたない、無理やりに突き進む音。
内壁をえぐって、傷つけることもお構いなしに、藤吾は道具の挿入を終えた。
鎖を手に立ち上がる藤吾は、クリフの無残な後孔を気にした様子もなく、さて、と呟きポケットを探った。
痛みに呻くクリフの身体が、ビクンと音を立ててはねた。
そして身をよじり、何かをふるい落とそうとする無為な努力がつづく。
藤吾は無慈悲に鎖の幅を制限したし、刺激を高める胸の責め具は、外れることはなかった。
「これが、ローターか。じゃ、こっちが」
そう一人つぶやき、藤吾は反対側のポケットに触れる。
「んぁっ!」
クリフの身体は大きく、のけぞるように動いた。
首といわず、上半身といわず、鎖が許すかぎりその身を振る。

548:テュランの筏8/15
07/01/18 12:13:04 qg4wNRbU0
藤吾がつけ加えなくとも、クリフが腰を振り、
それを落とそうともがかなくても、僕にはその淫靡な音の発生源が分かった。
クリフの後孔にくわえこまれた、道具……バイブレーターだ。
敏感な二点を同時に責められる刺激に……クリフは目を閉じ、必死に唸り、
身体中から汗を流すほどの必死さで振りほどこうとしていた。
しかしそれをあざ笑うかのごとく、藤吾はポケットに入ったリモコンを操作する手を決してとめない。
残酷な言葉を投げかけ、鎖を引き、強弱、大小のリズム、時間差をおいた責めで、クリフの抵抗を一蹴する。
どのくらい時間がすぎただろうか。
数分かもしれないし、もしくは一時間と言われても、納得してしまったかもしれない。
口枷にはばまれてくぐもっていた声が、ただの熱い息と化した。
クリフの冴えた瞳は、にごり、うるみを帯びている。
上下していた肩は、その場所を腰にうつしたようだった。
全身汗ばむ肌は、上気して色っぽいピンクをしていた。
だが、その快楽も一瞬。すぐにクリフの声は恐ろしさに怯える色をもった。
「……んぐ、んん!」
身をよじり、痛みの表情を隠そうとしない。
左右に振られる腰、その間で揺れるクリフのペニスは……
生理的反応の勃起を、その根元にはめたリングによって拒否されていた。

549:テュランの筏9/15
07/01/18 12:14:03 qg4wNRbU0
「ぁあ、んんっ!」
興奮など人の意思で止められるものではない。
下半身に集まり、止らない血流を、むりやり収める輪に、
クリフは苦痛の全てを支配されてしまっている。
「ぐ、ぐっ、んんんんっ!」
いやいやと頭を振り、目尻からこぼれる涙。
口枷がなければ、その唇は懇願を作っただろうし、
両手は床についていなければ、胸の前で祈りの形に組まれただろう。
藤吾はしばらくその様子を、にやにや笑いで観察しつづけた。
尻にさわり、リモコンで刺激を増し、さんざんに悪魔のような所業でいたぶった後、
涙の跡を残すクリフに、耳を近づけささやいた。
「外してほしいか?」
クリフに、他になにができただろう。彼は涙のたまった瞳で、こくりとうなづいた。
その素直な反応に、藤吾は満足そうに首を振り、乱暴とも呼べる手際で、後孔をいたぶる道具を抜きとった。
「んぁ! んっ」
一瞬痛みに顔をしかめたクリフは、それでも片方の責めから解放され、息を吐いた。
が、ほんとうに恐ろしいのはこの後だったのだ。
「かわりに、これを挿れてから、だ」
クリフの腰に手をおき、もう一方の手でスラックスのファスナーを引き下げる藤吾。

550:テュランの筏10/15
07/01/18 12:15:05 qg4wNRbU0
彼の股間はすでに昂ぶっており……僕はその後の凄惨さを想像して……想像して……想像など、許されない。
許されるはずがないっ! お前みたいな奴が、クリフを汚す権利など、持っているものかっ!
とうとつに僕を支配したのは、強い怒り。心の底から憤怒が立ち上ってくる。
「どけっ、楊玲!」
僕の乱暴な口調に、ぽかんとした表情を作る、その一連でさえ、スローモーションだった。
神経から分泌されるアドレナリンが、時間も動作も、ぎゅっと縮めていたのかもしれない。
振り回した手は、僕の怒号をすべて含めて、楊玲の顎にヒットした。
彼が倒れるのも確認しないまま、僕は駆けた。タープに手を入れて、一番重い容器を拾う。
両手で抱え、キッと藤吾をにらみつけた。
白いスーツの男は、敵役にふさわしい笑みで、すでに右手にスタンガンを用意していた。
クリフの鎖は放していたが、さんざんに責めさいなまれた彼は、意識を失っているようだ。
……僕が、僕がクリフを救わなくちゃ!
僕は意思を強く灯した。今なら瞳の炎で、藤吾を炎熱地獄へも送ってやれるはずだ。
『……君は意思が弱そうだから……』
『……意思の弱そうな智士君……』
……お前が、お前がそう言った。違うって事を、今、見せてやる。
……弱くなんてない、クリフを守るためなら、お前だって打ち砕いてやる!

551:テュランの筏11/15
07/01/18 12:19:23 qg4wNRbU0
十メートルわずかの対角線をひた走るその間、気合の雄叫びが、勝手に口からもれていた。
藤吾は慢心と余裕で、動作が鈍かった。
いや、僕の体内に分泌される、アドレナリンの作用でそう見えるだけかもしれないが。
それは回避可能だった。けど僕はギリギリ避けた振りをする。藤吾の油断をさそう為だ。
一撃目が外れた藤吾は、忌々しそうに舌打ちをしたが、すぐに体勢を立て直す。
右手を伸ばして距離をおき、僕をけん制する。だが、それこそが望んでいた隙だった。
圧倒的な身長差は、クリティカルなダメージを与える頭部への攻撃を防ぐ。
他の部分は、僕の力で打ちかかっても、たいした打撃を与えられない。
何せ、水のつまったガラス瓶。それが唯一の武器なのだから。僕は狙いを絞っていた。
……藤吾のウィークポイントは何だ?
……何度も見せた。触れられると怒りとうろたえを露にした。
……左腕の時計だっ!
……あわてて体勢を崩せっ! そこを打ち砕いてやるっ!
右手のけん制を大回りして、僕は瓶をふりかざし、左手首に突進する。
藤吾は反応が遅れた。まさか、そんなところに攻撃をしかけるとは、予想だにしなかったのだろう。
このテュランの国で初めて、藤吾の表情がこわばった。
黒い瞳がめいいっぱい見開かれ、ギュッと閉じられた後、彼は意外な行動に出た。
ただガラスと共に砕けるはずだった腕時計を……彼はかばったのだ。

552:テュランの筏12/15
07/01/18 12:20:24 qg4wNRbU0
左腕を背に隠すため、身体をひねり、
その結果、僕の振りかざしたガラス瓶を、頭部で受け止める事になってしまった。
正確には右こめかみのななめ上。
そこで叩きつけたガラスは千にも万にも、破壊音を立てて砕けた。
キラキラと光る粉が空中を舞ったのは一瞬、まもなく吹き出す鮮血が混じり、
ドウと倒れる音と共に、いかだが大きく震えた。
僕の手には、瓶の首部分しか残っていなかった。
誰も動くものはない。いかだ上はただただ静寂に満ちていた。

どのくらい、すぎただろうか。
関節がこわばってしまった指をほぐすと、残った瓶の口が落ちて、音を立てて割れた。
それで動き出したのは楊玲だった。彼は動作の開始に、僕をなじる事を選んだ。
訳の分からない言葉で僕を指さし、顔を真っ赤にし、涙をこぼして訴えつづけた。
「……戮! ……挂……」
「何を言ってるか、分からないよ、楊玲」
僕は感情のこもらない口調で、そう答えた。
楊玲は半狂乱に首を振り、泣き顔で倒れた藤吾のところへ駆けていく。
僕はただただ冷ややかにそれを見送った。心に浮かんだのは、軽蔑の感情だったと思う。
だが、それに構っている暇はない。
僕は倒れふすクリフのもとに屈み、彼の身体を包む忌まわしいものを剥ぎとっていった。

553:テュランの筏13/15
07/01/18 12:21:30 qg4wNRbU0
革の拘束着は彼の白い肌にいくつも赤い痣を作っていた。
口枷は外したが、彼の顎は閉じ方を忘れてしまったみたいに、あいたままだった。
胸の責め具をそっと外す。彼の胸の先端はピンク色をすぎて、無残な赤となっていた。
最後に、ゆっくりとペニスを苛むリングを、抜いた。
「……んぅ……っ」
かすかにクリフは身じろぎした。目はまだ閉じられているが、唇がかすかにうごめいた。
かさついた表面がなにを欲しがっているかは、すぐ分かった。
「水だね、クリフ」
僕は、番人のいなくなった黒いトランクを一気に開放した。
……思えば、それが絶望のはじまりだったのではないか。
……開けてはいけないパンドラの箱。
トランクには、何もなかった。少なくとも僕らが必要とするものは。
忌まわしい性具は見覚えあるものから、そうでないものまで、まだ箱の半分を占めていた。
そして残り半分は、空っぽだった。
今まで僕らが飲み食いしてきた品物をつめれば、ちょうど収まるくらいの間。
呆然としていた時間はそれほど長くないと思う。クリフの呻く声が、聞こえてきたからだ。
意識を切りかえ、倒れている藤吾に近づく。
脇で泣きじゃくっている楊玲を邪険にどかすと、背広の内側からボトルを取り出した。
飲み口を気が済むまで手でこすってから、クリフの唇に当てる。
舌が水を求め、喉が小さくうごめきはじめた。

554:テュランの筏14/15
07/01/18 12:22:14 qg4wNRbU0
眉をひそめたクリフは、まもなくその冴えた青い瞳を開いた。
水平線に太陽が沈む。長い長い一日が終わろうとしていた。

暗くなって出来る事は限られていた。とりあえず、服を着込む。
藤吾は脈も呼吸も確認して……死んでいると分かった。
背広からめぼしい物だけ取り、死体は海に捨てた。
僕は殺人の罪悪感に苛まれるより、むしろ泣き止まない楊玲に苛立っていた。
思い出したように僕を睨みつけては、分からない言葉で僕をののしる。
「いったい、何が言いたいんだよっ!」
僕は耐え切れず叫び、楊玲を激しく揺さぶった。
クリフが止めようと間に割ってはいるが、僕は楊玲につめよった。
「解放されたんだっ、僕たちは。
テュランから自由になって、これから正真正銘、ほんとうに救われるんだっ!」
怒鳴った言葉が伝わっていないと思い、僕は楊玲の手の平を強引につかまえ、
指で「助」「救」と文字を書いた。
漢字の意味は理解したのだろう。
手の平をじっと見つめていた楊玲は、ふと僕に視線を向けた。
宝石のような見事な茶色。僕は彼の顔を正面から見るなんて初めてだった。
「アハ……」

555:テュランの筏15/15
07/01/18 12:23:14 qg4wNRbU0
そして、見とれていたためか、楊玲の発した意味が分からなかった。
きょとんとした表情をする僕の目の前で、楊玲は笑い顔のまま、床に座りこみ、
両手両足が弛緩した体勢で、ただ腹と喉を震わせた。
「アハハハハハハハハ……」
笑い声は万国共通だった。
どこか幼児めいた甲高さをふくめて、楊玲はただただ海上を、己の笑い声で支配する。
僕とクリフは、ただ顔を見合わせるだけだった。

闇の中、笑い声は止まず、それが耳にさわって、クリフと話し合えたのはこれだけだった。
「食料と水は、見当たらなかった」
「十四日目は、藤吾に『確実』な何かがあったんだろう。
食料と水を使い果たしても構わないような。
それが何だかは分からないが……明るくなったらトランクを探ってみよう。
位置を知らせる発信機か無線があるのかもしれない。海上自衛隊に連絡出来るだろうし」
「うん」
ほんとうはもっと話したい事があった。
けれども楊玲は一晩中笑いつづけた。
涙が途切れても、声が枯れても、ただただ横隔膜から発した音を空気に震わせ……
そして、いつの間にか発狂していた。

556:風と木の名無しさん
07/01/18 13:57:30 t9xbvcrxO
クリフ…(*´Д`)ハァハァ
タュランタンGJ!!

557:風と木の名無しさん
07/01/18 15:11:18 uC+YEhcm0
息を詰めて読んだよ……すげー盛り上がりだった。
しかしこれからどーなるの…。

558:風と木の名無しさん
07/01/18 18:28:30 NRduy+9JO
マジで藤吾死んだん?(゜Д゜;
テュランが居なくなったにも関わらず、ちっとも希望が見えてこないぞ。

早く…早く続きをぉぉぉぉノ(´Д`)ノ

559:風と木の名無しさん
07/01/18 22:03:39 dmp2/7pdO
テュランタソGJ!!

死亡…発狂……

どーなんのーー!!??
無事に生還出来ればいいけど…

560:風と木の名無しさん
07/01/18 22:23:30 /cYVGwko0
絶望の始まり……?
あの、こ こ から絶望が始まるんですか!?

561:風と木の名無しさん
07/01/18 23:36:43 DU3/1trK0
え・・藤吾は死んだの・??
すげぇ気になる
テュランタソGJ!!続きwktkしながらまってます

562:テュランの筏1/3
07/01/19 07:41:05 wAuYIsiB0
十四日目

……僕が、意思を強く持とうなんていうのが、おこがましかったのだ。
……弱いものは、弱いままでいればよかったのだ。弱いものが、人を馬鹿にするから。
……楊玲を、心が弱いものだと決めつけていたから。だから、気付けなかった。
……楊玲は、知っていたのだ。甘えた時に、聞かされたのかもしれない。
……それとも、いつだったか。トランクの中を見せてもらった時に、食料の量から逆算し、悟っていたのかもしれない。
……とにかく、楊玲の心は、僕がおよばないほど強かったのだ。
……悟った彼は、ただ十四日を安全に生き延びようと思い、実行しただけなのだ。
……そして、クリフ。孤高に生きる、誰より誇り高い意志を持つ彼。
……僕が彼に憧れ、まねしようとする事。それ自体がすでに間違えだったのだ。
……僕は弱い。意思が弱い。それを受け入れればよかったのだ。
……なまじ強くなろうと思った心は、誤った方向へ働いた。
……みんなを、犠牲にして。
……トランクには発信機も、無線もなかった。

563:テュランの筏2/3
07/01/19 07:42:01 wAuYIsiB0
ただあったのは手紙。「矢野島藤吾」宛。
死者の名前など、いまさら意味を持たないが。
発信者には全く聞いたことのない、メーカーの名前があった。
藤吾が左手首にはめている腕時計の機種名だ。
びんせんを開く前から、すでにいやな予感はあった。
……パンドラの箱から、絶望は飛び出している。
……用意周到で、狡猾な藤吾。
……最初に彼は何て、名乗った?
……「船長」だ。そして彼はテュランでもある。

「スイッチを入れますと、発信信号が送られます。
十四日間経過後、お客様との打ち合わせ通り、ヘリを遣わせます。
この機能はお客様の脈拍と連動しております。
万が一にも時計を外したりして脈拍が途切れてしまいますと、
発信は途絶え、以後位置を追う事は不可能となります。
どうか、ご注意ください」

564:テュランの筏3/3
07/01/19 07:43:12 wAuYIsiB0
……船長がいない船など、ただ死の波間をただよう板だ。
……暴君といえども、治めるものがない国は、崩壊する。

「なぁ、智士。そこには何て書いてあるんだ?」
日本語が読めないクリフは、僕にたずねる。
僕は答えられる訳もなく、ただ震える手で、手紙を持ちつづけていた。

――水も食料もない。
いかだに乗っているのは狂った一人と、もうすぐそうなる二人。

水平線はどこまでも続いている。
残酷に空と海とを二分しながら。

-------------------


565:風と木の名無しさん
07/01/19 08:53:47 VjmQXeFc0
うそおおおおおお!?
嘘だろ!?嘘だよね!?



………orz
言葉もありません…
大作をありがとうございました…

566:風と木の名無しさん
07/01/19 09:56:51 hfjbvz7FO
ええぇぇーーー!!!!!!?????
嘘ーー!!!

テュランタソGJです……


最終的に『教育』に繋がったね。ある意味藤吾は正常だったんだ。人間の限界まで迫り、緊迫の作品でした。本当にスバラチイ!!!
テュランタソ乙です!!

567:風と木の名無しさん
07/01/19 10:10:34 CwSAPvbW0
ぎゃーーーーー!
これほど恐ろしい結末だなんて思わなかったよ!
テュランタン、最後まで読み手を引っ張り回してくれてありがとう。
大作、お疲れ様でした!

568:風と木の名無しさん
07/01/19 11:06:51 yQryG8Re0
ススススイッチはもう入ってたから
その時点での大体の位置は判明してると思うの。
そこが海の上だし海難事故があったんだから
しししし信号が途絶えたらきっと海上保安庁に連絡してくれてると思うの。

569:風と木の名無しさん
07/01/19 11:24:25 hfjbvz7FO
藤吾が時計をかばって殴られた衝撃で不意にスイッチ入ったとか………


救助が来るまでその電波は持続しなければいけないなんて事……………(゜Д゜)

570:風と木の名無しさん
07/01/19 11:31:43 OgrwL19T0
テュランタソ乙!!
藤吾の行動の理由にすごく納得がいって
最後まで楽しんだよ。
どうもありがとうございました!!

571:風と木の名無しさん
07/01/19 11:34:29 hfjbvz7FO
全てピッタリ!!!
登場人物の心情をリアルに表していて大作でした。

テュランタソ乙です!!!!

572:風と木の名無しさん
07/01/19 11:37:07 su7G3MmX0
>「スイッチを入れますと、発信信号が送られます。
>十四日間経過後、お客様との打ち合わせ通り、ヘリを遣わせます。

スイッチは事故があった当日に入れてるんだよ。
で、14日経ってから信号が出てるところまで迎えに行くんでしょ。

573:風と木の名無しさん
07/01/19 11:38:12 su7G3MmX0
ごめん、572は569宛てね。

574:風と木の名無しさん
07/01/19 12:00:22 hfjbvz7FO
>>573
あぁ~~
納得!!!

でも信号が出ていて、その場で消えたからめやすは付くのかなぁ?

575:風と木の名無しさん
07/01/19 12:29:47 6oErWxGK0
目安ついてて欲しいよ
こんな怖い終わり方いやだー

576:風と木の名無しさん
07/01/19 12:45:19 T5h9vte/0
空から大海原の救命ボートとかを発見するのは
難しい場合もあるらしいぞ。
前にドキュメンタリーで見たのだが、
捜索の飛行機が遭難者たちの頭上を飛んでいたのに
気付けなかったんだって。
太陽光が水面に反射して海全体がキラキラし過ぎていて、
ボートのような小さな物はそれに紛れ込んでしまうらしい。
つーことは、目安が付いていて迎えに来てもらっても、
信号がなきゃ発見してもらえないかもだ。

577:風と木の名無しさん
07/01/19 12:46:02 T5h9vte/0
あ・・・あげちまった
スマソ
今夜もVIPPERの襲撃はあるんだろうか

578:風と木の名無しさん
07/01/19 13:26:26 tmVQ4krwO
テュランたん乙!面白かったよ
智士とクリフが無事生還して友情を育むハッピーエンドだと思ってた
予想外のEDでした/(^0^)\

579:風と木の名無しさん
07/01/19 14:18:47 ZNkK/dNf0
だがいかだの位置は変わっていないんだよな?
14日間同じ位置から信号が出てればおおよその見当はつくはず。
海と空から探せば・・・大丈夫だと思いたい。

だが鬼畜らしい最後でした、テュランたん有難うございました


580:風と木の名無しさん
07/01/19 16:46:09 d60yvoJTO
そろそろ雑談は

581:風と木の名無しさん
07/01/19 17:01:23 7h181if/0
なんで遭難用の道具なのに
2週間経過後救出なんだろうか?
元から藤吾が打ち合わせていた遭難だったの?

582:風と木の名無しさん
07/01/19 17:07:50 vYoXAj4/0
>>581
「十四日間経過後、お客様との打ち合わせ通り、ヘリを遣わせます。」

遭難自体は事故だが、遭難しそうな機会を探していたんだろう。
で、かねてより準備していた秘密兵器を使ったんだよ。
信号発信開始から14日後に来るってのが契約内容だった、と。

でもホントにそろそろしたらばに行った方が良さそうだね。

583:醜い吸血鬼 3ー1
07/01/20 04:07:42 30ARg730O
キャベツはキャベツ畑に住んでいる。
畑の脇にぼろいハリエニシダの家があって、ずっと、ずっと、ずーっと独りで暮らしてる。
キャベツはキャベツしか食べない。だから、ちびでやせっぽっちだ。
膝がちょっと隠れるか隠れないかしかない、短くてつぎはぎだらけの
黒いチュニックをたった一着だけ持っている。
擦り切れた袖口からは細っこい手首が覗いてて、
手首の先には小枝みたいな、いまにも折れちまいそうな指のついた小っちぇえ手がある。
ほつれて糸がはみだしてる裾からは、ガリガリで骨張った棒きれみてぇーな裸足の脚がのぞいてる。
膝はいつもひび割れてて、肌はカサカサ。かかとはガサガサだ。
お日さまにあたれねー病気のせいで血色は悪いし、こけた頬と落ち窪んだ目は
友達、略してダチの俺から見てもキモい。
真っ白な顔に、真っ黒な白目のあんまねぇー目だけが、ぐりぐりしてる。
唇は冬じゃなくても荒れて乾いてるし、とにかくキモい。
背なんか俺様の肩より低いんだ。俺はいつもキャベツのつむじを見下ろしてる。
キャベツの長い髪は真っ黒でバザバサで薄汚いけど、つむじだけはカワイイ。
村のみんなは、森の奥の先に、キャベツ畑があることも、キャベツが住んでることも知らない。
俺とキャベツだけの秘密だ。ガキの頃、森で迷子になってキャベツに会った。
出会ったときは同じぐらいだった背も、いまじゃ俺のがずっと高い。
キャベツは、ちっとも大きくならない。ガリガリでやせっぽっちで、ちびのまんまだ。



584:醜い吸血鬼 3ー2
07/01/20 04:09:11 30ARg730O
キャベツの家には大きな黒い煤けた鍋がひとつだけあって、
キャベツは細いからだで喘ぎながら汲み上げた、汲みたての澄んだ井戸水と
畑から抱えてきたキャベツをまるごとその鍋に入れて火にかける。
キャベツのキャベツ畑のキャベツはでかい!村一番のキャベツづくり名人(俺のおやじ)も
きっと「見事な結球だ!」って誉めるだろう。
鶏がらのスープもねえ。塩さえねえ。ただ真水でまるごと一個、ことこと茹でるだけ。
それだけなのに、超うまいのはなんでなんだろう。
キャベツらしいほんのりとした甘味が溶け込んだスープが◎。キャベツは芯まで喰えるんだ。
夜中、村を抜け出し会いにいくとキャベツは俺に、採れたてのキャベツを食わせてくれた。
食後のデザートは、すぅーっと吸い込むと胸がしんしん凍りそうな、でもそれがいい、氷菓子みてぇーな
冬の空気と、きらきら光る夜空のキャンディー。
キャベツ畑でふたりオリオンを見上げるのが超好きだった。
キャベツはあんまり、自分のことを話さない。
なんでそんなにキャベツが好きなのか尋ねたら、ミドリがキレイだからと小さくくすっと笑ってた。
ちらっと覗く八重歯に注目。醜い顔も笑うと、まあまあ見れた。


585:醜い吸血鬼 3ー3
07/01/20 04:10:43 30ARg730O
冬の終わり、街から吸血鬼狩りの一行がやって来た。
ハンターのダイスが森に吸血鬼が居るとゆれたとのこと。
森には近づくなと云われ、キャベツが心配になった。けどキャベツの小屋は森の外れだし、
あんな鶏ガラみたいなやせっぽっちには、吸血鬼もそそられないだろう。
一週間後、ハンターたちが安心しろ。吸血鬼はもう殺したと言って去って言った。
襲われてなんかねぇーとは思うけど、キャベツが吸血鬼の餌食になってないか気になって、
日が落ちてからキャベツ畑目指して駆けた。月の明るい夜だった。
小屋の戸を開けたら、やたらとニンニク臭かった。
部屋の隅にキャベツがうつぶせに倒れてて、捲れあがったチュニックから
肉のついてない平べったいケツがのぞいてた。ケツの割れ目にぶっとい杭が深々と刺さってる。
枯れ木みたいな手足は変な方向にボキボキ折れ曲がってて、
ガバッと顎が外れたみたいに開かされた口に、長い十字架がかまされてた。
まるでつっかえ棒だ。閉じたくても絶対に閉じられねぇー。
牙って呼ぶにはちびすぎる八重歯が見えてる。糞ッ!!
痛かったよな。苦しかったよな。きゅっと寄せられた眉間のしわ。
見開かれた真っ黒な目。涙の筋はきっともう乾いただけだろう。
木の床に残った爪痕や、爪と肉の隙間に入り込んでる木屑を見ていたら、
いっぱい泣いて、いっぱいもがいてたキャベツが見えた。
口の十字架を外して目蓋をおろし、ケツの杭を引き抜いた。
赤く腫れ上がって膿んでるキャベツの孔があまりにも痛々しかったから、口で膿を吸い出した。
吸って吸って全部、吸い出した。ちょっとでもキレイにしてやりたくて、擦過傷を舐めてたら、
孔の奥が臭った。むわぁ~っと臭ってくる臭さに覚えがあった。もしかしてと思って指を忍ばせさぐったら、
いびつな白い塊がごろっと出てきた。ニンニクだ。
細っこいからだをギュッとしながら、ばさばさの黒い髪をただ撫でた。

おしまい


586:風と木の名無しさん
07/01/20 06:08:52 bCBGH/Tg0
ちび吸血鬼タン、超GJ!
哀切で、いいですね。
いいと言うか、嫌と言うか。
悲しくなるつらいお話なので…。

で、ニアミスですが私も同じネタで↓

587:ハント 1
07/01/20 06:09:33 bCBGH/Tg0
慎重に口付けながら、私はミハイルの背中に手を回した。私の腕の中に
すっぽりと治まってしまうミハイルは、男相手に言うのもおかしいかも
しれないが、たおやかという言葉がしっくり来る。ミハイルもまた、
私の背中におずおずと手を回し、私たちの体は密着した。私は、昂ぶった
下半身をミハイルに押し付けた。今から、この華奢で美しい体を
我が物とできるのだ。私がどれほど感動しているか、ミハイルに
伝えようもないのがもどかしい。まして、その美しい体の内にある
ものこそが私を惹き付けて止まないのだとは。裏通りの安ホテルでことに
及ぶのがもったいない。こんな美しい生き物と一晩を過ごすのであれば、
町一番の高級ホテルのロイヤルスイートこそが似合いだろう。
だが今になってそんなことを嘆いてみても仕方ない。私たちはお互いを
食らうことに夢中で、セッティングに凝る余裕もなかったのだから。
私は唇をミハイルの柔らかな頬へ、そして耳へとずらしていく。
ミハイルが私の首筋に口付けようとしている。熱い息が首筋にかかった
その瞬間に、私は隠し持っていた銀の鎖をミハイルの首に巻きつけた。
ミハイルがはっと目を見開いた。素早く、驚くほどの力で私を
突き飛ばそうとする。だが私はそれを許さず、鎖を手繰ってミハイルを
床に引き倒した。ミハイルの愛らしい顔に浮かぶ驚愕と恐怖の表情が
いとおしい。大きく開いた口からのぞいているのは、歯と呼ぶには
あまりにも長い―牙が2本。
私の目に狂いはない。

588:ハント 2
07/01/20 06:10:16 bCBGH/Tg0
ミハイルは逃れようと激しく身を捩った。銀の鎖が巻き付いている以上、
蝙蝠だの鼠だのに化けて逃げることは叶わない。単に力と力の勝負だ。
こうなれば、実年齢はともかく肉体的には未だ少年の域を出ないミハイルが
私に逆らっても、時間と体力の無駄でしかなかった。
私はミハイルに馬乗りになって素早く拘束を進めていった。
両手を背中の後ろに捩り上げて、銀の手錠で繋ぐ。それから、右の足首を
捕えて同様に銀の手錠で右手首に繋いだ。左足一本では反撃もできまい。
私は自分の迅速な仕事に満足して、笑みを浮かべながらミハイルを見下ろした。
深緑色をしていたはずのミハイルの目が、赤く光っている。美しい。
ミハイルの薄茶色の髪には、緑よりも赤がよく似合う。
「縛めを外せ!」
ミハイルが私に命じた。なんという気の強さだろう。こうでなくてはいけない。
酒場で私と「親しくなった」ミハイルは、場慣れしていない引込み思案の
仔兎だった。それはそれで男たちの食指を動かすに充分な魅力ではあったが、
私の好みではない。ではなぜ声をかけたかって?
彼が誇り高く冷徹なヴァンパイアであることを、私が知っていたからだ。

589:ハント 3
07/01/20 06:11:10 bCBGH/Tg0
この国で幾人もの同性愛者が行方知れずになっている。そのうち幾人かは
変死体となって発見されている。そう私に連絡をしてきたのは、
旧い友人テオだった。だが、行方知れずになった彼らを誰も本気で探しては
くれないのだと、テオは電話の向こうで泣いていた。
どの国でも基本的には同じだが、ここ、森の彼方の国では、同性愛者は
ひどく肩身が狭い存在だった。人々は、それこそ吸血鬼を忌み嫌うのと
同じほどの悪意を込めて、我々を蔑んでいる。
それは別に構わない。心の葛藤は15年ほど前に済ませているし、だいたい、
ここは私の国ではないのだから。だが、テオからの便りを無視できるほど
私は孤高でもない。テオとは日が出ずる国で知り合った。私たちは、
その都の大変に開放的な町の2丁目で身を寄せ合い、お互いの青い春の
ひとときを捧げた仲なのだ。それに、テオと知り合わなかったら、
今の私はない。テオの国に残る伝説は、エメラルドの島の作家の妄想を通して、
世界中の人を魅了した。あれは良くできたフィクションで、私も楽しんだが―
決してただのお伽話ではないのだと教えてくれたのがテオだ。
そこから私の趣味と実益を兼ねた特殊技能開発が始まったと言える。
この国で過ごした何年かが、私の人生の岐路だったのだ。

590:ハント 4
07/01/20 06:11:40 bCBGH/Tg0
私はミハイルと名乗ったヴァンパイアの髪を掴んで引き摺り起こすと、
ベッドの上に放り投げた。弾んだ体が跳ね起きる前にのしかかり、
首の鎖をベッドヘッドに縛り付ける。左脚が蹴り上がってくるのを
ひょいと捕え、膝の上に座ってしまう。
ミハイルは赤い目を爛々と輝かせて私を睨み付けている。色々と、
不本意なのだろう。騙しているつもりで騙されていたことも、人間なんぞに
してやられたことも、捕らわれて体の自由を奪われたことも。
それに、どの国でもそうだと言うわけではないが、ここいらでは
ヴァンパイアは、よほど気に入った人間でなければ仲間にしないらしい。
おかげさまで、この辺りで私の獲物となってくれるのは揃いも揃って
気品ある美形ばかりだが、逆に言えば私がミハイルのお気に召すはずもない。
革のジャケットに擦り切れたジーンズといういでたちで、砂まみれになって
バイクを転がしている粗野な男など、虫けら以下の扱いだろう。
嬉しくて背筋がゾワゾワする。私の存在自体でもって彼を痛めつけることが
できるのだ。私は、腰の辺りまで足首を持ってこられているせいで
ストレッチでもしているかのように曲げられているミハイルの右脚に
手を伸ばした。膝からゆっくりと付け根まで撫で上げる。
「触るな! 下種!」
ミハイルが私に向かって唾を飛ばした。気の毒なことに、それは私にかからず
床に落ちていったが。
「触るなとは、随分ムチャを言う。私たちはこうすることを同意したはずだよ」
酒場で声をかけたのは私の方だ。彼に魅せられたという私をミハイルは
信じてくれた。いや、その言葉に嘘はないのだから、信じて当たり前なのだ。
私は今、ミハイルに猛烈に恋している。アンティークの硝子細工のような
ミハイル、冬の夜空から星を集めて練り固めたような不滅の存在。
君を汚して引き裂くことができる私は、世界一の幸せ者だ。

591:ハント 5
07/01/20 06:13:55 LL66XtoV0
ミハイルをひっくり返した私は、両手首を繋いでいた手錠を外して、
左手首と左足首に付け替えた。よくあるポーズだが、上体を起こさない限り
両膝を大きく開いたままになるこの格好を、私は、プライドが高い相手や
自制心が強い相手によく強いる。ミハイルも、白い頬に血の色を上らせている。
怒りか屈辱か羞恥か、その全部か。私は殊更ゆっくりとミハイルのシャツの
ボタンを外していった。
「その汚い手で私に触れるな! 虫唾が走る!」
ミハイルが怒鳴って暴れる。君に触れる手は汚ければ汚いほど好ましいと、
どう説明したらわかってもらえるだろうか。
シャツの中から現われた薄紅色の乳首に、私はそっと口付けた。
ミハイルが狂ったように身を捩る。下種、蛆虫と、罵倒の限りを尽くしてくれる。
「その蛆虫に体を舐め回されるご気分はいかがです、殿下」
舌先で珊瑚の粒のような突起を突つきながら言うと、ミハイルがぎりぎりと
歯ぎしりした。だが、私が珊瑚粒をチュッと吸ってやると、喉の奥で
可愛い声を立てる。さすがに、こういう方法で餌を引っかけていただけはある。
決して、初めてではないはずだ。指と舌とで胸を愛撫しながら、
膝でスラックスの上から性器にリズミカルに振動を与えていると、
肌がしっとりと汗ばんでくる。あれほどうるさかった口を閉じて、
ミハイルは奥歯を噛み締めている。声が、出てしまいそうかい?

592:ハント 6
07/01/20 06:14:58 LL66XtoV0
顔を下にずらしていき、スラックスの上から性器にほお擦りすると、ミハイルが
また大きな声で私を恫喝した。きっと後悔することになると。今さらだ。
ヴァンパイアを1人追う度に、私はこの生き物―生き物と言えるのかどうか、
よくわからないが―に心底魅せられてしまった自分を、呪わずにいられない。
それでなくても茨の道を歩くしかない性癖の持ち主だと言うのに、
ヴァンパイアを追い回すことが何よりも好きだなどと。知らずにいれば良かった。
彼らの魅力も、いや、彼らが実在する事実を、知らなかったら良かった。
私はベッドサイドに置いておいた鞄からナイフを取り出した。
いささかの恨みをこめて、乱暴に、スラックスとシャツを切り刻んでいく。
ミハイルは自分が裸に剥かれるのを、大きな目をいっそう大きく見開いて
睨み付けている。喚き散らさない、その気位の高さが好きだ。今までに
追いかけたヴァンパイアたちの中でも、ミハイルはずば抜けて上物だ。
銀の縛めより他に纏うものをなくしたミハイルの体は、内側から光を放つかと
思うほどに美しい。私が感嘆の溜息をついて見蕩れていると、ミハイルが
炎でも凍らせてしまいそうな声で声で呟いた。
「今までも―こうしてきたのか」
今まで。私が今までに狩ったヴァンパイアたちのことか。
「カーミラであれば、しなかったよ」
否定の言葉で肯定を伝える。何しろ同性愛者だからね。
だが、ヴァンパイア・フリークとしての私は雑食だ。
白髪が混じり始めた痩せぎすの紳士然としたヴァンパイアも、
筋骨逞しい戦士のようなヴァンパイアも、手に入れたものは一通り楽しく味わってきた。
違うのは料理の仕方くらいのものだ。
毅然としたヴァンパイアには尊厳ある最期を。
命乞いするヴァンパイアにはむごくおぞましい最期を。
私はどちらも本当に大好きだ。


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