06/12/19 02:18:49 UHeofn160
「清一郎?」
慌てて平太は手を離した。
「ごめん、つい力が入りすぎて。肩、痛かったか?」
「ああ、うん、肩は別に」
清一郎は、顔をしかめたままわずかに身じろいだ。
腰を微かに浮かし、臀部を庇うように前かがみになる。
その動作と姿勢には、見覚えがあった。
「清一郎、まさか、おまえ、それって」
平太の呟きに、清一郎は顔を真っ赤に染めて、必死に被りをふった。
「違う、そんなんじゃない」
叫んだ拍子に、ソファに深く座り込む形になり、清一郎は低く呻いた。
その様子に、平太は確信を深めた。
「清一郎、隠さなくていい。おまえ、あれだろ」
平太の脳裏をよぎったのは、平太たちを育ててくれた神主の老人の持病だった。
平太は、祝詞の最中に痛みを堪えるように腰を浮かせる老人の姿を何度も見てきた。
清一郎の今の仕草はまさしくそれだ。間違いないと、平太は思った。
「痔は別に恥ずかしいことじゃない、我慢していたらますます酷くなるぞ」
声を潜めて続けた平太の言葉に、清一郎はぽかんと口をあけた。
「ジ?」
「ああ、おまえ、尻の穴が痛むんだろ。それは痔の症状だ。な、そうだろ?」
平太がそう断言すると、清一郎は決まり悪げに、
だが、どこかほっとした様子で、小さく頷いた。
「うん、そうだね……そうなんだ。恥ずかしくて誰にも言い出せなくて」
「マスターさんだっけ、あの人にも言ってないのか?」
「ああ、うん、まあ」
「相談した方がいいんじゃないか。あの人、とびきりの名医なんだろ?」
「それは……」
清一郎は口ごもった。自分で告げるのは恥ずかしいのだろうと平太は察した。
「わかった。なら俺からマスターさんに言ってやるよ」
清一郎を励ますように告げた時だった。
「我に何を告げると?」
突然に響いた声に、平太は慌てて声のした方を振り返った。<続>