【陵辱】鬼畜作品を創作して19thプレイ【SM】at 801
【陵辱】鬼畜作品を創作して19thプレイ【SM】 - 暇つぶし2ch400:風と木の名無しさん
06/11/15 00:27:25 UMxgnuId0
従兄弟が向けた視線の先には、侍の開いたばかりの花を慈しむ男どものまぐわいがあった。

「我にしか出来ぬ乗り様を、御覧じろ」
侍の尻を穿つ、先ほど一物を貶された男は、小兵ではあったが騎馬の名手であった。
目線で促し、侍の陰茎を自由にさせ、ぐっと両腕を後ろへ引き寄せたかと思うと、
軽やかに背を落として、まるで馬に乗り上げるが如く、後背から侍の尻を叩き、嘶かせた。
「うっうぐ……グァッ……っああっっ」
ぐらりと体は揺れて、その隙を逃さず、細身ながらも腹側へと叩き込む。
侍は雄叫びを上げてからは肩から畳に突っ伏し、ひゅーひゅーと喉元より呼気を吐いた。
尻はあらゆる角度で突き上げられ、その度に両脚の間から垂れ下がる陰茎は、
先ほどよりの尺八のせいで全身が濡れて滴り、だが先端からは明らかに滑りの違う透明な液が滴った。
「やや、これは中々の名馬であります。ほれ、このように」
侍の両腕を咎人の縛りのように背に束ね、引いて、背を反らさせ、ぐっと落とし込むように
小刻みに細身の突きを刻む。
腰だけを掲げられ、鍛えられた背中の肉がぐっと反り返る。
その曲線は紛れもなく歴戦の軍馬であった。
稚児や小姓のあえやかな骨や肉とは違う、逞しき鎧の武士。
だが今はその体はうっすらと朱に染まり、震え、受け入れる内部の腑は怪しく蠢いて、誘う。
何より、畳へと垂れていた侍の男根は、先端を真っ赤に膨らませて、ゆっくりとその角度を変え、
田の字が分かるほど張り詰めた下腹部に、ぴたりと重なっていた。
後ろより、突き入れる動きに合わせて、侍の陰茎は僅かに腹を叩いて、鈴の口は解放を求めて
ぱくぱくと開いて、白濁と混じった液を垂れ零す。
「前を弄らずとも、啼いてみせましょう」
初鞍に恵まれたものなれば、手柄は誰ぞと、囃し立てる男達の狂乱を余所に、
御前と従兄弟だけは静かに、だが質の違う熱さを纏い、侍を注視する。
体勢が変わり、侍の表情は伺えぬ。
震え、突きの度に前にずり上がる肩が、逆らうかのように横に振られる首や、顎が、侍の最後の矜持で
あったか。
だが、本人も気づいていないのであろう、僅かだが迎合する腰の振れが、御前の先ほどの予兆を
何より顕していた。

そのすべてを、従兄弟は凝視した。

401:風と木の名無しさん
06/11/15 00:28:59 UMxgnuId0
行が入らなかった。ソマソ。
続きよろしくです。

402:風と木の名無しさん
06/11/15 00:53:07 IgeaztSc0
リレー最高っす。皆さん文章がうめえ。萌える。

403:風と木の名無しさん
06/11/15 01:19:25 FrOBspDGO
程なくして侍は後ろの刺戟だけで達した。侍の口は快感と苦痛で半開きだ。
その口の端から伝う涎を舌で舐めとる男。
飛び付くように侍にのしかかる、先程、順を抜かされた男。
鯉のように鈴口をぱくつかせている前をしゃぶる男。
亀頭のように過敏な乳首を摘む男。三味線を手に唄う男。手を叩く男。
誰もが、もっこりと股間を膨らませていた。
座敷で其処を猛らせていないのはただひとり。侍の従兄だけだった。
御前は、にたりと嗤うと従兄に侍を抱くよう命じた。
「近しい者同士が交わる様を見せてたもれ」
御前は、従兄の股間に優美な手を伸ばすと、指をひらめかせ、
息を潜めていた其処を揉みしだいた。
「っ、うぅ、はぁ」
御前の巧みな指使いに煽られ、眠っていた唐獅子が目を覚ます。
冷艶な従兄の冷なる部分が、艶に押されゆく様に御前は微笑み、
右の手で従兄の唐獅子を撫でながら、ねっとりと囁いた。
「梅に鶯。牡丹に唐獅子。どうもこの唐獅子は、あの牡丹に気があるようじゃ」「ご冗談を」
やんわりと御前の手を制しながら、従兄は苛立った。
腰のあたりにボッと火が着いている。熱い。
目の前では、過ぎた快楽に狂いはじめた侍が、うわごとのように、
あにさま、あにさまと繰り返していた。
再度それを耳にした瞬間、烈火が従兄の記憶の中の仔侍をめらめらと飲み込んだ。
憤りは大火となって、遠い日の笹舟を焼き尽くしてゆく。

御前は、意を決した従兄の手が袴の帯にかかる様にほくそ笑んだ。

続きお願いします。

404:風と木の名無しさん
06/11/15 01:22:25 FrOBspDGO
↑リレーです。
書き忘れました……orz
ごめんなさい。

405:風と木の名無しさん
06/11/15 03:09:07 aTbAHTUQ0
あにさまキターー!
乙です
続きwktk

406:風と木の名無しさん
06/11/15 04:13:34 8qyUlIdTO
(´д`;)ハァハァ
続きを…

407:テュランの筏1/8
06/11/15 12:07:40 CkVkdxcC0
投下します。
---------------

「私が、君たちを助けたんだ」
恩きせがましく、白いスーツの男は言った。
「だから、この『船』の長は私だ。皆、私の指示にしたがっていただきたい」
腕を広げ、衆人をかき抱く神像のようなしぐさを取る男に、僕たちは白けた目をむける。
船、とはよくいったものだ。
ただの巨大な板。かろうじてマストがついて、海に浮かんでいるだけの「いかだ」。
乗っていた客船が沈没し、気がついたらここにいた。
あたり四方はずっとずっと海がつづいている。陸なんてどこにも見えやしない。
座礁した船の残骸や、他の救命艇が見えないかと視線をめぐらせたが、それらしいものはない。
もしかして生き残りは、ここにいる四人だけなのだろうか………
不安を、頭を振って追い出し、改めていかだの中に目をむける。
白いスーツと対比するような真っ黒で巨大なトランクを手元に引きよせる、男。
歳は二十代後半から三十といった所だろうか。
黒く強い眉と瞳と自己主張の激しい黒髪が、スーツの白さを引き立てているようだ。
左手首の銀色の腕時計も合わせて洗練されている。
流暢な日本語から、僕と同国で間違いはないだろう。


408:テュランの筏2/8
06/11/15 12:08:30 CkVkdxcC0
そして彼の「指示」とやらにしたがわなければならない、僕のほかに二人の少年。
一人は、さっきから睨みつける表情を崩さない金髪の少年だ。瞳は空のように冴えたブルー。
唇をかみしめ、拳を握っている。
もう一人は、赤毛のオリエンタルな雰囲気をまとう少年。
まだ現状に意識が追いついていないのか、呆然とした目の色をたたえている。
僕が一通り見まわした直後、その指示はくだされた。
「では君たち、服を脱ぎたまえ」

僕は目を丸くした。日本人だとの認識は間違えで、実はどこか異国の人で、異国の言語を使ったのだと………思いたかった。
男は誰も指示にしたがわないのを見て、眉をひそめる。
「そこの、日本人の君。翻訳して伝えてくれないかね、今の命令を」
「あ、えと、智士です。僕は新郷智士」
なに、自己紹介をしているのだろうと、僕はまぬけな気分に陥った。
「そうか、私は藤吾だ」藤吾は顎をしゃくる。「智士君、したがってくれたまえ」
「え、えと………」
英語で伝わるだろうか。ジェスチャーでも分かるだろうけど、その内容は………僕の聞き間違えではないのか?


409:テュランの筏3/8
06/11/15 12:09:10 CkVkdxcC0
「聞こえてる。日本人のおっさん」
僕は横をむく。金髪の少年だった。フーセンガムをふくらませ、ポケットに手を入れて、ふてぶてしい態度だ。
「だがなんで、俺たちがあんたにしたがわなくちゃならない?」
ペッと吐きだすガムの残滓が、水柱を立てて海に落ちた。
「服を脱げだって? 誰がそんな事するかよ。船長ごっこは一人でやってな」
まくし終えた少年は、藤吾に背をむけ、いかだの端に座りこんだ。
巨大な面積をもついかだは、それくらいで傾いたりはしない。
藤吾は目を細め、左手を持ちあげる。
なにをするのかと見守っていると、時計盤の脇のネジを押し、しばらく盤面を注視しつづけ、それからおもむろに口を開いた。
「大西洋まっただ中だが、赤道からは離れている。吹く季節風も冬のものだ。
日焼けの心配はいらない。日差しが強いときは、そこの防水タープにくるまっていればいい」
白いスーツの指先が示す、緑色の巨大なカバーを、僕はただ呆然と見つづけた。
今のは、したがわない僕らを、納得させるための説明だったのだろうか?
だとしたら、あまりに外れている。空気を読めていやしない。
日焼けがいやで、脱がないとでも思っているのかこの同国人は。


410:テュランの筏4/8
06/11/15 12:10:08 CkVkdxcC0
ぽかんとあいた口がふさがらないまま、僕は金髪少年の横にしゃがみこんだ。
彼はこちらを見もしない。端正な横顔で、水平線に視線をやっている。
「………十四日間だ」藤吾の声が潮騒にまじる。
「偏西風と、それから潮流の関係で、このいかだは一日三十キロ南下し、五キロほど西に流される。
夜中に十キロ程度押し戻される。東経三十五度の諸島までの距離が約百五十キロ。
助けられるのは二週間後で間違いない」
時計を見ながら語る藤吾の弁に、僕はどう判断していいやら迷った。
身ひとつで、このいかだの上で気付いて………食料もなにもなく、二週間というのは絶望的な数字なのだろう。
けれど、いまいちピンとこなかった。
他に舶影も見えないが、大きな客船の沈没だ。
今ごろ海上自衛隊が出動し、マスコミのヘリもあちこちに飛んでいるはず。
こんな訳のわからない「船長」にしたがう必要もなく、すぐに助けが来ると思っていた。
僕は生来ののんき者なのかもしれない。
隣で彫りの深い横顔を見せる少年は、そんな甘い考えをうち砕くような、厳しい眼をしていたから………

411:テュランの筏5/8
06/11/15 12:10:56 CkVkdxcC0
金髪の少年はクリフと言った。赤髪の少年は宰楊玲と言うらしい。
らしい、と言うのも、彼の日本語はかたことで、ほとんど聞き取れなかったからだ。
今や僕たち三人は、藤吾の陣取るいかだの隅の、対称の位置で身を寄せ合っていた。
周りの景色は、ちっとも変わっていない。
高い冬の太陽が、すこしずつ位置をずらしていく。
陽光の角度で、海の色が変わっていくのが、唯一の時間を知るすべだった。
ほんとうに、身につけている物以外、何もなかったのだ。
感覚的には、半日ほどだったと思う。
暑くもないのに額をぬぐった直後に、その軽やかな音は起こった。
キュ、プシュンと、プラスチックの部品をちぎる。
タプンと豊かなひびきが耳に届き、僕は思わず身を乗り出す。
僕より大きく乗り出したのは、楊玲だった。
見ると、対角線上で座る藤吾が、プラスチックのボトルを傾け、うっとりするくらい透明な液体を、自分の喉に流しこんでいるところだった。
二人分の視線を感じとったのだろう。藤吾はトランクに手を差しいれ、未開封のボトルを手に乗せた。水音を立てて、見せつけるように揺らす。
催眠術にかかった被験者のように、楊玲はふらふらと近づいて行く。

412:テュランの筏6/8
06/11/15 12:11:52 CkVkdxcC0
「………水………」
僕の知らない東洋の言葉で、うつろに呟いている。
「水」の単語だけ聞きとれたが、そんなの、聞かなくたって分かっていた。
遠いけれども、しかし暑さはたしかに感じる太陽。
強く、濃い潮風。半日ちかくそれにさらされ、喉はからからだった。
楊玲が瀕死の舞台役者のように両腕を伸ばす。藤吾はボトルを頭上高くに差しあげた。
「命令にしたがえ。服を脱げ」
たぶん、打ちひしがれていた彼は、誰よりも心身の消耗が激しかったのだろう。
それに僕は楊玲を止める権利も、義務もない。
ボタンを外すのももどかしいのか、引きちぎらんばかりの勢いで、楊玲は上衣を脱ぎさった。
折れてしまいそうなほどに細い腰、ほとんど日焼けしていない肌、お香なのか、オリエンタルな匂いをまとった上半身が露わになる。
おそらく楊玲は、ボトル一本のために全てをさらす気でいただろう。
すでに右手はベルトにかかっていた。
だが、藤吾は脱ぎ捨てた上衣を拾いあげると、ペットボトルを差し出した。
両手で受けとり、大きく見開いた楊玲は、同じ単語を繰り返す。
その晴れ晴れとした顔からして、お礼の言葉なのだろう。


413:テュランの筏7/8
06/11/15 12:12:38 CkVkdxcC0
服を脱がせる命令を出した奴に、よく言うよ………と僕は憎憎しく思っていたが、それも楊玲が喉を鳴らして水を飲みはじめるまでだった。
ピンク色の唇が、水にひたって瑞々しく輝いている。
傾けた中身はみるみると、生気をもってうごめく喉に吸いこまれていく。
端からこぼれおちる水滴が、喉につたい落ち、軌跡をなにより美しくみがきあげた。
肌がよみがえったようにツヤツヤとしている。
ああ………と僕は言葉にならない感嘆を、生唾にしてのみこんだ。
それは苦く、塩の味しかしなかった。
日が沈むころ、僕は負けた。「上半身だけなら………」と譲歩を決めてしまったのが、敗北の最大の原因だった。
それでも薄青い水の容器を手にしたとき、震えんばかりの喜びを味わった。
量は五百ミリリットル。日本製でコンビニにも売っている、なじみあるメーカーだった。
キャップは未開封だったし、僕はよく分からない警戒をするよりも、とっととこの喉をうるおしてやりたかった。

414:テュランの筏8/8
06/11/15 12:13:29 CkVkdxcC0
傾ける。スポンジ状態になった身体は、たちまちその三分の二を空にしていた。
胃袋が突然の水圧にたぷんと鳴るくらいだった。
それでもからからに乾いた末端には届いていないような気がする。
それだけ僕は渇いていた。
が、全身全霊をこめて僕は容器をもとに戻した。鉄の意思が必要だった。
隅々まで水分はいきとどかず、喉の細胞はとくに文句を張りあげる。
「半分以上、飲んじゃったけど、君も………」
飲み口をぬぐいながら、僕はしわがれた声で言った。ああ、まだ足りない。
「いらね」
クリフは水平線に沈む夕陽から、視線をそらさず答える。
心のどこかで待ちわびていた返事に、僕は残りの水を一気にむさぼった。


415:風と木の名無しさん
06/11/15 12:24:34 5TKVKIPA0
これまた喉が渇くような遭難が…(;´Д`)ハァハァ

ジュース片手に禿しく乙!

416:風と木の名無しさん
06/11/15 12:34:22 eFacDYdq0
も、もしやもしや、、、と思いつつ
おもしろすーーーーー人体生理に訴えまくる「渇き」とはこれまた禿萌えな。
ろーどおぶふらい展開も希望しつつ続きwktk!

417:風と木の名無しさん
06/11/15 13:09:43 vhMLdC8a0
筏タン乙!
これからどうなるか楽しみです。

418:風と木の名無しさん
06/11/15 20:38:43 KLTV0FcuO
リレー&筏乙乙

419:初仕事29
06/11/16 01:29:09 ePZ3TYgd0
ガゴン!という激しい音で目が覚めた。倒れこんで見る景色。視界を誰かの足が通り過ぎる。
ツメカミがうれしそうにゼリーを手にしていた。
前に食事を受け取ってからもう一日たったのだろうか。いや、食事を受け取るのは別に
一日一回と決まっているわけではないけど。これは単に僕らが無事で生きています、食欲も
ありますって意思表示なだけだから。なにしろ時間の感覚がなくなっていた。普通に暮らして
いたって、時計もなく、ぼんやり白い壁に囲まれているんだから、ぼけてくるのは当然だ。
その上僕はツメカミに痛めつけられて、気を失うように寝入ってしまうのを繰り返しているから。
僕も取りにいかなくちゃな。この部屋にいて、これだけが最初に決められてる務めなんだから。
一応お金貰うバイトの立場だしね。
這うようにして、ドア際にある血圧計を目指した。本当なら前に置かれた椅子に座るはずが、
今はとてもそこに乗れそうにない。地べたにへたったままテーブルの上に手を伸ばし、血圧計に
手をかけた。カターン、とけたたましい音を立てて機械が落ちた。血圧計本体はかろうじて
椅子にひっかかって止まった。けれど短いケーブルで繋がれたプリンターは、その命綱を
失って床へ転がった。
拾わなくちゃなあ…。何秒くらいだろう、僕はぼんやりとかわいそうなプリンターを見つめて
いた。横から手が伸びて、プリンタを掴む。その手は、そこに座って血圧を測るはずの椅子の
上に血圧計をまっすぐ置くと、プリンタを繋いでくれた。
「ありがと…」
僕はその手の主―ヒッツレに礼を言った。ヤツは少しも表情を変えずに、黙って座り込んだ。
もぞもぞと袖を引き抜いて、ベルトを巻く。ほんとにこれで正常に測れてるもんなんだろうか。
まあ、そもそも最初っからいい加減なもんだけど。僕らが欲しいのはエサを取り出すための
紙っぺら、雇い主が欲しがってるのは僕らがちゃんと生きてる証。
壁にもたれてじっと見ているヒッツレの目を見る。普通に暮らしてたら、すごくぶしつけで
失礼な視線だ。けど、おりの中で同居してるような僕らには、それこそが会話にほかならない。
この視線だけで通じ合う、気持ちのリズムみたいなものが出来上がってる。


420:初仕事30
06/11/16 01:31:53 ePZ3TYgd0
じっと見合っていると、怒りでも不快感でもない、かといって馴れ合ってくるでもないヒッツレ
の、体温みたいなものが体を包んでくるような気がするんだ。
この目。そういえばどこかで見た目だ。いつからか、ヒッツレと目が合うたびそう思ってた。
きついけど、もっと向こうを見透かしているような目。少し寂しそうで、かといって慰めを
待っているわけでもなさそうな。誰だろう、タレントかな。少し切れ長の目、あごは細く、
不満を噛み締めているような口元、ちょっと幼い顔。まだ、ヤツの声を聞いたことがない。
プリンタから紙が排出される。ビッとちぎると同時にヒッツレが立ち上がり、機械を両手で
持ち上げた。きちんと、落っことす前の位置に戻してくれる。
「ありがと…」
ヤツの足元にへたり込んだまま、礼を言う。瞬きだけで、いいよとヤツが言った気がした。
僕の手からそっと記録紙を抜き取ると、ヒッツレはそれを壁の口に差し込んだ。
しばらくしてガン、と音がする。受け口には僕のほうが少し近い。いざって行って、開いた。
目に飛び込んできたのは、赤。キャンディの赤い色。いちごか、チェリーか。いや、そんな
愛らしいものとは違う。含みのある、少し深い赤。ぶどうかな、ワインかもしれない。
それを見たときなぜか僕は、終わりだ、と思った血のような赤。何かたくらみを思わせるような赤。
反射的に思ったから、なぜかは説明できない。でも、今まで届けられてた少し黄色がかった白い
キャンディとは明らかに違う。ライチみたいなあの味とも、きっと違ってるんだろう。味よりも、
この深い赤は僕に最後って意味を示してる気がする。破滅の色。もう、おしまいが近づいてるんだ。
何もかもの、おしまいが。
ちょっとだけ、僕は苦笑いした。何がおしまいだよ。そんな妄想、みじめさが増幅するだけだ。
僕はここでさらにツメカミにいたぶられ、犯されて、傷だらけになって、ぼろきれみたいに
なるまで暮らすんだよ。僕は笑うかわりに、フン、と鼻を鳴らした。


421:初仕事31
06/11/16 01:34:22 ePZ3TYgd0
力の入らない手で、キャンディの包みをガサガサいわせながら開ける。いくつか掴んでヒッツレに
滑らせた。じっと見つめてくるその目元が、すこし切なそうにゆれた気がした。何を考えてる? 
いくら見つめても、ヤツの思いは少しも読めない。でも要らなくはないよね。食べてよヒッツレ。
僕からの、ささやかなプレゼントだ。破滅の夢のおすそわけ。
袋の口をぎゅっと掴んで、ハイハイをする。そうしないと進めない。もたもたと手足を運ぶ。
がさがさとセロハンの袋が鳴る。
ガチャメの近くで僕は少し躊躇したけど、やっぱり立ち止まって袋の中に手を差し入れた。
二個、三個…ガチャメに向かって床をすべらせる。あんたにも分けてあげるよ、僕の狂気のかけら。
こういう仕事ってないかな、商品名を考えるような仕事。今の僕に考えさせたら、世界一いい
ネーミングをひねり出してあげられるのにな。
心の中の混沌とは裏腹に、実際の僕は不甲斐ないの一言に尽きた。赤ん坊にさえ追い越されるよ、
こんなハイハイじゃ。つなぎの下半分は全開のまま、胸までめくり上げられた名残で、左右に
開けっ放しだ。のそのそ這いながら、背後にツメカミの気配を察している。ヤツは僕より先に
血圧を測り、またゼリーを手にしていた。飲みもしないゼリーのパックを両手に抱えて、
嬉々としていた顔。きっと思いついたばかりの次の悪戯にわくわくしてたんだろう。そして、
その相手は僕だ。もっとひどい目に遭わされて、悲鳴を上げさせられるのは、他ならぬ僕。
ゼリーのパックを床に投げ出す音がした。そう思った途端、僕は悲鳴を上げていた。
「ぎゃぁっ」
突然脚の間に痛みが走った。痛み? いや、なんと言うんだろう。抜ける!かな。ちぎれる!かも。
「こーんなフリフリしちゃって、遊んで下さいって言ってんだよなあ」
むき出しのままの脚の付け根。そりゃ、後ろから見てれば手も出したくなるね。僕の脚の付け根に
生る卑猥な実。ガキの目には、思わずひっぱりたくなる代物だったろう。力任せに握って、その
根元から引きちぎるつもりなのか、むやみにひっぱるんだ。僕は悲鳴をあげながらのたうつ。


422:初仕事32
06/11/16 01:39:29 ePZ3TYgd0
脚の間を通して後ろ向きにひっぱられるのって、かなり辛い。痛いっていうんじゃないんだよ、
もうじっとしてられないって言うか、世も末だって感じ。ちぎれる、ちぎれる!
ぱっとその手が離れる。急に解放されて、僕は息を荒げて体を丸める。でもこの姿勢、後ろにいる
ツメカミから見れば、かえってそこがあらわになってそそるかもしれない。
「突っ込んで欲しいなら早くいいなよ、ホクロちゃーん」
たぶん丸見えになってる僕の中心に、ツメカミが平手打ちを浴びせる。その音は、皮膚がぶつかる
ものだけではない、濡れたような響きを含んでいる。きっとツメカミの手には、ヤツ自身が僕の
中に吐き出した体液がへばりついたにちがいない。
ちょうど、血圧計から出た記録紙をヒッツレが手にとったところだった。ツメカミは大またで
近づくと、一言もなくすいっとその紙を取り上げる。腕の影から盗み見ると、ヒッツレがそんな
ツメカミをじっと目で追っていた。いつものように、無表情のまま。
「おーもしろいこと考えたー」
ツメカミが歌うように言う。ご機嫌だな。いやな予感しかわいてこないよ。
ヤツは、ヒッツレの手から奪い取った薄い記録紙をちゅるちゅると撚って、こよりのようにしている。
「なあ、これどうすると思う?」
壁際に戻ったヒッツレが、僕の渡したキャンディを口に入れるのが見えた。記録紙を取り上げられ
たんだ、引き換えに出てくるはずのエサにはありつけなかったらしい。赤いアメの怪しい色が、
ヒッツレの舌を染めていくんだな。想像したら、身震いが背を走っていく気がした。
「ぎゃあっ!」
乱暴に脚を開かされた僕は、絶叫していた。ツメカミが、僕の先端に硬いこよりを突き合わせて
きたんだ。
「痛い!いやだぁっ!いた…!」
めちゃくちゃに暴れる。また殴られるんだろうな。でもこれは痛いよツメカミ。ひどいって。
あんまりだ。
「やめてよっ!痛いっ痛いっ」

423:初仕事33
06/11/16 01:40:21 ePZ3TYgd0
ツメカミはかなり嬉しそうに、ひゃっひゃと声を上げて笑っている。細いこよりだけど、ほんの
少しも僕の中には入ってこない。わざとそうしてるのか、それともやっぱり入らないものなのか、
先端でちくちくと抜き差ししている。
「痛え?なあ、すげえ痛え?」
「痛いっ…痛いっ…痛いよっ、いた…」
大きな声を出すと余計に痛みがひどくなりそうで、僕はそろそろと声を絞った。床を手で打ち、
脚を突っ張る。暴れるとかえって怪我をさせられそうで、どこにも力を入れられない。
「ぎゃああー!」
まっすぐにツメカミが差し込んできた。ぐっと尖った感触が、僕の一番やわらかいはずの粘膜を
こそげて進む。
「すげえ、入った。入ったぞホクロ。痛え? なあっ」
ハッ、ハッ、と浅く息を逃しながら、僕は耐えた。痛い。そこから血が噴き出しそうなほど熱い。
手も足も、指先を床に吸い付かせるようにしてもがく。けれど、余分な痛みが怖くて、体を大きく
動かすことは出来ない。
「ぐあっ…! な、に、すんだよ…っ!」
いきなりツメカミが横へ飛んだ。飛んだんじゃない。飛ばされたんだ。
僕の脚の間にいたはずのヤツは、離れたところに転がっている。なんだろう、何が起こった?
見上げると、代わりに僕の脚の間に立っていたのは、ヒッツレだった。
なんだろう。相変わらず冷静な顔だけど、目の下あたりがほんの少し上気したように見える。
ただ興奮してるだけなのか? カラリ、とヒッツレの口の中が鳴る。ああ、僕のあげたキャンディだ。
今までのより大粒だったから、まだ口に残ってたんだな。
「てめ…なんだよ!」
不意打ちで転がされたのが、よほど腹立たしかったんだろう。ツメカミの顔は真っ赤だ。怒りと
苛立ちとで目がつりあがってる。床にダンっと手をついて立ち上がると、ほぼ同時に突きを打った。

ここまでです。

424:風と木の名無しさん
06/11/16 04:35:36 rizc9I8K0
痛ぇ――!!!! (*´Д`)ハァハァ

425:リレー
06/11/16 08:08:34 WvGeZKspO
能面の方がまだ雄弁に感情を語るだろう。何を考えているか読み取れない表情で、
従兄弟は侍に歩み寄ると男どもから侍を取り上げた。
半狂いの侍は従兄弟に焦点を合わせることなく、あにさま、あにさま、と
音の無い声で繰り返している。従兄弟は侍の両脚の間に腰をおろし、
股をおっぴろげた。よどんだ白濁が侍の尻の狭間から腿に伝い、流れ落ちてゆく。
従兄弟は侍の奥を濡らしている分を掻き出すべく、
ほっそりとした長い指を三本侍の菊座に突き刺した。中を開き指を蠢かす度、
侍はぬめったものを吐き出し、襞から下垂らせながら、
陰道をひくつかせて従兄弟の指に吸い付いた。あにさま、あにさま、と
繰り返しながら侍は丸出しの尻で従兄弟の指をねぶる。
自分の右の指と濡れそぼった侍の孔が立てる粘ついた音を聞きながら、
従兄弟は左の指先で、そこだけ日に焼けていない丁字の白抜きをなぞり、掌で撫でた。
御前や他の男どもの名残をあらかた掻き出した従兄弟は、指を引き抜き
熱い塊をぐずぐずの襞に押しあて、亀頭を潜り込ませると無言で貫いた。
中心を猛らせ先端をしとどに濡らしながら、もはや誰に何をされているのか
頭で追えなくなっていた侍は、中を犯す太さと熱さにあ、あ、と息をつまらせた。
突き上げられ、揺らされ、切ない疼痛に悶える侍の、半開きの口から涎が伝う。
うるみきった眼からは、涙が溢れ紅潮した頬を濡らす。
従兄弟が侍の痴態を見おろし、何を思い腰を振っているかまでは、
さすがの御前もわからない。わらないが御前は、
優美な男が軍馬のような武士を穿っている絵的な面白さを、
血の繋がりのある者同士が交わっている生々しさを、心から楽しんでいた。

バトンお渡しします。

426:風と木の名無しさん
06/11/16 09:11:13 7fJf0JngO
初仕事タンGJ
リレー侍GJ
(;´Д`)ハァハァハァハァ

427:テュランの筏1/6
06/11/16 12:05:19 tityRqBT0
二日目
床になにかを叩きつける音で、僕は目覚めた。
防水タープにくるまった身を起こし、音のほうを見る。
クリフが忌々しさを隠しもせず、上着を藤吾の目の前に投げ捨てたのだ。
態度はでかいが、クリフの体躯は華奢と呼べるものだった。
筋肉がつきにくい体質なのだろうか、全体的にすらりと締まっている。
腰まわりの造けいは、そのまま彫刻の題材にしても構わないくらい整っている。
「水だ」
言い放つクリフに、藤吾はうやうやしく水を差しだした。
嫌味がふくまれた動作である事は、その表情を見ていれば分かる。
奪い取り、クリフは足音荒く、いかだの隅へと戻ってきた。
彼の分のタープは………ほとんど使われていないままだった。
夜中に何度か、横で寝苦しそうにしているクリフに、僕は気付いていた。
その原因が………喉の渇きである事も。
もっと強く勧めて、分ければ良かっただろうか。
そんな罪悪感を抱いた僕の視線を感じたのだろう。
クリフは振りかえり、舌打ち一つすると、乱暴にひねって開けたボトルを一口で飲み干した。

428:テュランの筏2/6
06/11/16 12:06:10 tityRqBT0
「では今日は下を脱いでもらおうか」
藤吾はその言葉を鞭とし、トランクから取り出した品を飴とした。
水のボトルと、それから黄色いパッケージのブロック型食料だ。
楊玲は、多少はプライドとかそう言ったものを取り戻していたのだろうが………それでも昼前に脱落した。
言ったら悪いけど、たぶん彼は節度とか節制とか、そういった部分が抜け落ちている。
楊玲は育ちきったばかりの下半身を露わにして、せわしなく開封した固形食品をほおばった。
粉と甘い香りがまじってあたりに広がる。
それを嗅いだとき、僕の胃袋はみじめに鳴ったし、傾けるボトルを見たときには、やはり喉がざわついた。
クリフはずっと藤吾にも楊玲にも背を向けたままだった。
藤吾は………にやついた笑いを隠そうともせず、楊玲の足の間をただただ直視する。
それを見ていると、僕はまだしばらくは我慢できそうな気がしたものだった。


429:テュランの筏3/6
06/11/16 12:07:14 tityRqBT0
空腹と渇きをごまかすため、僕は色々考え事をした。
四方の景色はまったく変化が現れず、どこまでも海と空。
見ているだけで気が狂ってしまいそうだったから。
最初はクリフに話しかけてみたが、彼はつっけんどんだし、
僕が一方的にしゃべりつづけて、喉が渇くだけのオチだった。
だから、頭の中でめぐらせるのがいい。
藤吾の黒いトランクを、今回はテーマにしてみた。
水と食料のほかに、何が入っているのだろう。大きさは軽自動車のボンネット部分くらいある。
ペットボトル数ダースと、固形食糧を詰めこんでも、まだ余裕はありそうだ。
脱ぎ捨てた僕らの上着を、ていねいに畳んでしまいこんだのも、このトランク。
何を考えているのだろう、持ち主ともども。
傷一つない革の表面は、陽光を浴びてギラギラと輝いている。
それはまるで、楊玲の全裸を凝視した藤吾の瞳の色にも似て………僕は思考を中断した。

430:テュランの筏4/6
06/11/16 12:08:16 tityRqBT0
日が沈んだが、昼間中太陽に温められた海の水は、ぬるいままだった。
喉が渇きすぎて、感覚がおかしくなってしまったのかもしれない。
タープの上に横たわり、海水にひたす手は、ちっとも渇きに喘ぐ身体を癒さない。
僕の身体が、海の水の塩気だけ抜きとって、真水を吸いこむスポンジだったらなぁ、と考えるあたり、すでに朦朧としていたのかもしれない。
月のない夜だった。いかだの上に明かりはなく、なびく帆の影も、闇にまぎれて判別できないほどだ。
胃袋が鳴りそうになり、僕はうつぶせになり、腹をおしつけた。
聞いてしまったら、きっとくじける。
渇ききって唾液もわかない口の中は、それでも楊玲が食べていた甘い香りを記憶していた。
最後に食べたのは客船の夕食。
内容は何だったっけ………もう、記憶もあやしい。
脳からも水分が消しとんでいるのだろう。
と、横で身動きする気配があった。クリフだ。
すでにいかだの端に固まっているのは僕と彼だけだった。


431:テュランの筏5/6
06/11/16 12:09:16 tityRqBT0
楊玲はいかだの中央、マストのそばで安らかに寝息をたてている。
赤毛の少年の居場所が、黒いトランクの脇になるまで時間はかかるまい。
僕とクリフは別に話し合ったわけでもなかったが、そう確信していた。
起きだしたクリフは海に向かって立つ。
まもなく放尿の音があたりに響いた。
僕は起こしかけた身を、ふたたび横たえる。
何の感情が僕をとらえ、動かしたのか。よく分からなかった。
もしクリフが、僕より先に二つ目の「命令」にしたがったなら………
たぶん、僕は間をおかず、嬉々として下の服を脱ぎ去るだろう。
けど、おそらく僕はクリフの「プライド」とか「誇り」に勝つ事は出来ないだろう。
弱弱しく胃が鳴った。吐きだす息には、水気がまったくなかった。

時間的に、真夜中前だと思う。つまり、まだ二日目。
僕の決心は、二十四時間を越えられなかったのだ。
海に落ちないよう、足元に注意を払いながら、藤吾の前へ立つ。
トランクに肘をのせ、その上に頭部をもたせている男に、僕は残りの衣服を全部差しだした。
受け取った藤吾がそれをしまうまでの間、引き換えの食料と水を取りだすまでの時間が、何と長く感じられたことか。

432:テュランの筏6/6
06/11/16 12:13:09 tityRqBT0
ボトルと、てのひらサイズのパックを胸に抱えると、もう前を隠す事は出来ない。
それでも姿勢をくずさず、背筋をまっすぐに、恥じ入っているところなんて、まったくないとばかりに僕は堂々と歩いた。
自分のタープに戻るまでの間、鋭く執拗な視線が追いつづけたが、闇夜だ、真っ暗だ、見えるわけがない、と自分に言い聞かせる。
そう。明日になって日が昇り、誰の目にもさらされる状態になってしまったら、行動に出ない、いや出せないだろう。僕の事だから。
しかし厳しい日差しを、長い長い昼間を、今夜の状態の続行ですごすのは………とうてい無理に思えた。
自分の事は自分がよく分かっている。
僕は、だめな奴なんだ。心が弱すぎるんだ。
泣きたいのか叱りたいのか、困惑した気分を抱えたまま、僕はタープの上にあぐらをかき、こわばった胃袋を溶かし、ひび割れた喉をうるおした。
意思を総動員したおかげで、今度は半分をボトルに残す事が出来た。
固形食糧も、パックの半分は手つかずのままだ。
二つの品をタープの奥にしまいこみながら、ちょっとだけ僕にも誉められた部分があるじゃないか、と誇らしい気分になった。

433:風と木の名無しさん
06/11/16 12:48:32 P3xGcCeg0
筏タン乙!
クリフはどうするんだろう・・・

434:風と木の名無しさん
06/11/16 13:17:42 67IAAdgeO
侍タン乙

435:風と木の名無しさん
06/11/16 14:27:49 JJ8p2ztH0
筏タンGJ。
喉が乾いてお腹がすいてきました。

436:風と木の名無しさん
06/11/16 19:13:33 llymx+2WO
初仕事タン&筏タン&リレー職人さん達GJ!

初仕事タンも筏タンも先が読めねぇ…。
こーゆー設定・展開考えられるってすげぇなぁ。

続き超待ってる!


437:風と木の名無しさん
06/11/16 22:05:47 D0lXCxcc0
リレーのことで、ちょい質問というか相談です
自分、オチまで書いてしまったんだけど書いた分量はせいぜい5レスくらいにおさまる程度な上に
まだまだ読みたい書きたい人もいると思うので、分岐エンディングみたいな形で投下してもよかですか?


438:風と木の名無しさん
06/11/16 22:11:36 7dBcq8FP0
ROMですが。
>437さん よか1 ノシ

439:風と木の名無しさん
06/11/16 22:17:21 EWFW9fpD0
>437
You投下しちゃいなよ
ノシ2

440:初仕事34
06/11/16 22:41:56 ePZ3TYgd0
拳がヒッツレの顔を直撃した。と思ったが、当たらない。空を切り飛んできた拳をヒッツレは
ふわりと横にかわして、逆にツメカミの腹を突く。そして逆の手でほとんど同時に喉を突いた。
静止。腹と喉を突いたヒッツレと、突かれたツメカミが動きを止める。喉を捕らえられたまま、
ツメカミは目を見開いている。どれくらいそうしていたんだろう。1秒、2秒…いや、秒にも
満たない間か。きっと一瞬のことだったに違いないけど、すべての音が遠ざかって、世界が
止まったように僕には思えた。
ヒッツレがツメカミの喉元に押し当てた手をひねるようにして一気に倒した。どうっと重い音が
床を伝ってくる。さっきまで威勢よく立っていたヤツが、支えのない人形みたいに倒された。
本当に見事なほどあっけなく。グハァッと濁った音を立ててツメカミが咳き込む。ヒッツレが、
倒れて咳き込んでるツメカミの手首を軽く持ったと思うと、それをくい、と回した。ただ回した
だけに見えたのに、ツメカミは悲壮な声を上げて、手首をひねられた方へ易々体を裏返される。
相当痛いらしい。なんでだろう、ヒッツレは片手でかるく持ってるだけにしか見えないのに。
「いええっ…!でえ!」
痛い、とまともに言えないらしい。手首ひとつで体を裏返されて、しっかりホールドされて
しまった。わき腹に一発蹴りを入れられると、とたんにツメカミはおとなしくなった。
というより、声も出せなくなった、と言った方がいいか。かなり苦しいんだろうな。
ヒッツレは、ひねった腕をツメカミの背中にぴったりとつけて押さえつけている。背後にまわり、
膝立ちになってその体ににじりよっていく。ふと僕のほうへ視線を向けるとさっと手を差し出した。
なに、と僕は目で聞く。するとヒッツレはチャッ、と音がしそうな振りで人差し指を出した。
その先をたどると、ツメカミが投げ散らかしたゼリーのパックが転がっている。ああ、これね。
僕は這いずって手を伸ばし、それをヒッツレに向かって滑らせた。


441:初仕事35
06/11/16 22:42:45 ePZ3TYgd0
ヤツの頬がかすかに上がった気がした。笑ったよね、今。よかった、お礼になったかな。
ねじ伏せたツメカミの脚の間に陣取って、ヒッツレはアイツのボタンをばりばりと外していく。
ツメカミが僕にやったように、ゼリーを絞りだしながらパックを高々と掲げていく。
「やっめ…ゴホッ…っざけんなよてめえっ!」
頬を床におしつけられていながらも、ツメカミは叫ぶ。けれど。
両手の親指でツメカミの尻の肉ひだを無理やり押し開くと、ヒッツレは躊躇なく硬くなった
ものを押し込んだ。喉が裂けるような声でツメカミが叫ぶ。ヒッツレ、かわいい顔に似ず
信じられないほどデカい。先端から根元までひたすら太く、しかも反り返っている。
ああ、ツメカミ、かわいそうに。それは痛いよね。だってヒッツレは少しも止めずにぐいぐい
突っ込んでいくんだ。尻にかけていた手をまたツメカミの手首に戻すと、その両腕をひっぱる。
うわ、ひどい。背をそり返されて、両腕を後ろにひっぱられて。穴、裂けてるんだろうな。
きっと血が噴き出してる。ガン、ガン、と音がしそうな勢いで突き上げていくヒッツレ。
思いやりのかけらもないね、若いからきっとたまってたんだろうな。ツメカミ、よだれが
垂れてるよ。腰も反り返らされて苦しそうだな。え、今度は引き抜き始めたよヒッツレ。
すごい太さのそれを、ヤツはずるずると引っぱり出す。3分の2ほど飲み込まれていたそれは、
ツメカミの腸液だろうか、ねばりのある艶をまとって、さらにそこへ赤い彩をそえて―これは
まあ、ツメカミの流した血の色だけど、べたべたになって姿を現す。なんていやらしいんだろう。
あんなあどけない、愛想のない顔の下でこんな張り詰めた形のべたべたが脈打ってるなんて。
ツメカミを見下ろしているヒッツレの表情は相変わらずだ。冷静な目、少し上気した頬、すねた
ような口元。ああ思い出した。映画で見たアイツだ。敵方に一人で立ち向かう、特殊部隊の青年。
あの目に似ている。やっとひらめいた、っていうささやかな喜びにほくそ笑んだ僕に気づいたのか、
ヒッツレはちらとこっちに目を向けた。僕はにこりとしてやる。ヤツはまたかすかに頬を上げ、
そして視線をツメカミに落とすとまた一気に怒張を突きこんだ。


442:初仕事36
06/11/16 22:43:23 ePZ3TYgd0
「いっぎゃあー!」
裂けたな。たぶんびりびりと。狭い入り口はヒッツレのサイズに合わせるため、限界を超えて
押し開かれてる。四方に向かって裂け目が走ったはずだ。ああ、痛いねツメカミ。考えただけで、
僕も痛いよ。あんたに突っ込まれて僕も痛かった。今もぴりぴりしてる。でもぴりぴりどころ
じゃないね、痛いねツメカミ。考えただけで興奮してくるよ。
僕は無意識に息をつめていたのか、胸がどきどきと鳴っていた。そっと呼吸を整えながら、
自分の体に目を向ける。うなだれた先端に、ツメカミに入れられたこよりが突き刺さってる。
痛てて。思い出したら急に痛くなってきた。指をかけて引き抜こうとするけど、もう触れるか
どうかという時点で信じられない痛さだ。考えられない。これを引っこ抜くなんて。1センチ
くらいは入ってるんだろうか。そんなに深くはないかな。でもここは体の中でも一番痛い場所
のはず。手を触れることを考えただけでも、無理っぽい。
僕は深くため息をついた。このまま寝ちゃおうかな。隣で絶叫しながらあうあう泣いてるツメ
カミの声を子守唄にして。ひさびさに気分よく寝られそうだけど。コン、と頭を床に下ろした。
天井が見える。ああ、やっぱり天井も白いんだ、この部屋って。いつ終わりが来るのかな、
この実験は。ツメカミはカオスの中にいるみたいだけど、なんだか僕はかえってつまらなく
なった。ツメカミにいたぶられて泣いてる僕は、みんなに見られて、いわばこの部屋の主役
だったのに。なんだかつまらないなあ。そう考えると、今まさにヒッツレの精液注ぎ込まれて、
床によだれと涙の池を描いてるツメカミが羨ましくなる。痛いね、ツメカミ。かわいそうに。
でも、それは本来、僕の姿だったんだよ。


443:初仕事37
06/11/16 22:44:05 ePZ3TYgd0
「ああ…ああ…あああー…」
ツメカミが泣いてる。ヒッツレが体を離すと、ヤツの腰は力なく床に倒れこんだ。きっと
ヒッツレのサイズに無理やり広げられて、ヤツのうしろの穴はパカンと開きっぱなしに
なってるだろう。その大きさを受け入れるのに耐え切れず、裂けて血を流しながら。
見てやりたい。ヤツの間抜けな口を覗き込んで、腸壁を見てやりたい。でも、本当にそう
したら僕は、悔しくて仕方なくなってしまいそうだ。そんな醜い姿をさらして、泣いて、
わめいて、そしてみんなに見つめられて。きっとカメラでもしっかり撮られて、その向こうの
人たちにも嗤われた挙句、録画されたものを世の中のあちこちで回し見られるんだ。
ツメカミが羨ましくてたまらない。許せない、僕がその立場だったのに!
ツメカミの醜態をあれこれ想像するうちに、体の中が熱くなってきていた。知らぬうちに
僕の中心は硬さを増している。
「った…た」
痛い。これ、早く抜かないと。傷がついてそこからばい菌がはいったりしたら…なんて、
勃たせていながらそんな子供みたいなことを考える自分がおかしくて、僕はまた無意識に
頬を緩ませていたらしい。ふと、視界を人影がさえぎった。
「余裕だな。ヤツが犯られて満足か」
ガチャメが僕の目の前にいた。その向こうに、もうつなぎも脱ぎ捨てて、ツメカミの血と
なんかの汚れにまみれたものをだらんと提げたヒッツレがうろついている。勃ってなくても
デカいな。ツメカミは…床にへばりついてひぃひぃ言ってるだけ。
ガチャメが僕の体に手を伸ばしてくる。ああ、この匂い。胸の奥まで忍び込んで、僕を
しびれさせる。僕がもてあましていたこよりを彼はふいっ、と抜いてしまった。


444:初仕事38
06/11/16 22:44:41 ePZ3TYgd0
「…あっ…た」
沁みるように痛い。根元をぎゅっと掴んで、僕は痛みに耐える。でもそうすると、かえって
まずいことになるっていうのは経験済みだ。案の定、僕は徐々に硬さをもち始めるそこを、
ガチャメの目にさらすことになった。
「なんだ。あんなことされて歓んでんのか」
しゃべるたび、彼の口がカロン、と鳴る。あのキャンディ食べたんだな。その目が少し
潤んでいるように見える。なんだ、この人も近くで見るとけっこう若いじゃないか。
目つきの悪さと中途半端な髪の色が、くたびれてるように見せてただけか。
「あんただって…」
うん? と訊くように彼が眉を寄せる。
「犯ればいいじゃないか。僕のこと…」
俯いていた顔を、僕は徐々に上げる。そうだよ、次にあんたの目を捉えるときは、
もう逃がさないって決めてたんだ。
「僕ん中に突っ込みたいだろ? それとも、アイツの出したものにまみれるのは
いやだって? アハァ、シャワーでよく洗わないとさわれないケッペキさんなのか。
しょうがないねえ」
そう言って僕は上目遣いでにやりとしてやった。彼の口がまた、カロンと鳴る。


445:初仕事39
06/11/16 22:46:22 ePZ3TYgd0
その口に僕は指を差し入れて、赤い玉を取り出した。それを自分の口に入れて、
一緒に指をしゃぶる。彼が僕の手を掴み、濡れた指を口に含んだ。
「…名前、教えてよ」
指をしゃぶられながら僕は言った。
「…そんなもん」
「教えてよ、呼び名だけでもいいから」
もうそのときには、彼の手が僕のつなぎをバリバリと音を立てて脱がせ始めていた。
僕も彼のつなぎのボタンを外し、胸に手を滑らせる。左の肩口にタトゥーがあった。
梵字。なんて読むのかはわからない。こんなもん彫って、愚かなヤツ。不思議と、
この人の匂いがここから発せられているように思えて、僕はその字に舌を押し付けた。
「名前なんて、必要ないだろ」
「だって、名無しのままじゃ…抱かれにくい」
僕は文字を彫り込んだ肌をきつく吸う。彼は僕の脚に手をかける。
「なら、カーンでいい」
「…カーン?」
僕の問いかけには答えず、彼は体を重ねてくる。

ここまでです。 >437さんお先にすみません。

446:風と木の名無しさん
06/11/16 23:13:25 iju5D8HjO
初仕事タン キタ━(゚∀゚)━!!!!
乙です!!
まさかツメカミがやられるとは……巨根ヒッツレ萌えす(;´Д`)ハァハァ


>>437
全然よかですよ!ノシ3
投下楽しみにしてます!

447:リレー 分岐エンディング437 1/5
06/11/16 23:33:27 D0lXCxcc0
では投下させていただきます。




"あれは生真面目に過ぎるが、それが返って良きところでもあるか"
遠い日、侍とたった一日だが子供らしく遊んだ日から幾日か過ぎた頃か。
父が分家の叔父に向かって侍をそう褒めそやしていたのを耳にした。
そのときは、滅多に褒め言葉などかけてもらえない我が身を思い、僅かばかりの嫉妬を覚えたものだが、
笹舟を作る自分の手元を必死にのぞき込んでいた子供の姿に、さもあらんと納得した。
したが次の言葉に、その時淡く抱いていた仔侍への好意のようなものが跡形もなく消え失せてしまった。
褒められるどころか、頭でっかちで小賢しさばかりが目立つ、かわいげがないと散々な言われよう。
それでもそれだけならば我慢もできたが、続いた父の言葉に血の気が引いた。

"あれを引き取ることも考えねばならぬかもしれんな"

一瞬それはどういう意味だと呆け、次には嫌な考えに捕らわれた。
廃嫡。
自分を廃嫡し、あの子供を跡取りとするつもりなのでは。
でなくば分家の妾の子を引き取るなどと言い出すわけもない。
だが待て、自分に何か落ち度があっての上ならばまだしも、瑕疵なくして簡単に廃嫡などできるはずもないと
思い直した。
しかし、次の瞬間には心の臟が凍り付くような冷え冷えとした怒りに支配されることとなる。
ふと襖の陰から見た父の手首の辺りにある痣。今まで気づきもしなかった物だが、その形に見覚えがあった。
出来上がった笹舟を嬉しそうに受け取った子侍の手首にも、同じところに同じ形の痣が確かにあった。
ただの分家の妾の子ならば、自分を廃嫡してあの仔侍を新たな跡取りにすることなど容易ではない。
だが、痣の意味するところが自分の考え通りであるならば。

父はやりかねぬ。

その瞬間、自分の心は未来永劫溶けることのない氷の檻に捕らわれることとなった。

448:リレー 分岐エンディング437 2/5
06/11/16 23:34:36 D0lXCxcc0
今こうして、勃起した一物を埋めてはならぬ孔に埋めても、何の感慨も従兄の胸にはない。
ないと思っている。
あの日、心の臟を凍り付かせた日から、従兄にとっては全てが己の栄達を求めるための手段に過ぎないのだ。
突き上げるほどに一物が膨れあがるのに反して、心はますます凍り、顔からは表情が削げ落ちていく。
機械的と表したいような動きは、まるで責めるためのからくり人形かと見まごうような不気味な様子だった。
その身体が一端離れたかと思うと、四つん這いにしていた侍の身体を仰向けにさせ、再び一物を口を開けて
いる孔に突き刺し、そのまま身体を倒した。
そして、その人形のような顔を侍の耳元に寄せる。御前からは見えぬ側で何を囁いたのかは知らぬが、次の瞬間
侍の目がかっと見開かれ、だけでなくぽっかりと開けた口から、まるで血を吐くような叫びが上がった。
「あああああ───っ」

熱い……、痛い……、膝が肩が辛い……、動かしてもいないのにどうして身体がこんなに揺れているのだろう。
ゆっくり休みたいのに。せめて身体を仰向けにさせてはくれないだろうか。
ああ、なんだか回りがうるさい。何を言っているんだ?休みたい、眠りたいのだ。寝かせてくれ。
……やっと、仰向けになれた。
何だろう、あれは。木目のように見えるから天井だろうか。でも、ずいぶん歪んだ木目だ。
我が家の天井はこんなに歪んでいたか?
……誰かいる?
誰かが目の前にいるようだ。誰だろう。確かめたいのに、その人も顔が歪んでいる。
ふ、おかしい。何故か分からぬが妙におかしくてならぬ。
なに?
今、なんと言った?

449:リレー 分岐エンディング437 3/5
06/11/16 23:35:49 D0lXCxcc0
「あああああ───っ」
現からほとんど離れかけていた侍の心がその一言で一気に引き戻され、それが、それでもぎりぎりのところで
踏みとどまっていた侍の精神に強烈な一撃を与えた。そして、皮肉にもそれがもっとも強い快楽となって侍を襲う。
陰茎からはとめどなく精を吹き出す。ごぼりとまるで川の底か水が湧くかのように。
従兄の一物を締め上げ絡みつき舐め上げる、精を搾り取らんとばかりに。
馬のように身体をのたうたせ、手足を童のようにばたつかせ、従兄が渾身の力で押さえようとしても、激しい痙攣は
鎮まらない。
従兄も、先ほどまでの緩みが嘘のような締め具合に表情を崩され、ここにいたって顔を紅潮させた。
そして侍にとどめをさそうというのか、出すぞと一言。
「い…………いやだぁぁぁっ!!」

血のような赤が見える。狂気のような黄が、目を射抜くような冷たい青が、裁きのような厳しい白が。
極彩色の光が飛んでいる……。
目が回る。立っているのか寝ているのか、わからぬ。
ここはどこだ?
ああ、うしろは崖だ。手招いている。底の見えぬ、唯一光のない谷底が呼んでいる。
この光は嫌だ、目が痛い、頭が痛い。訳が分からなくなる。
闇の中に行けば、ゆっくり休めるだろうか。そうだそうしよう。

侍は、襲いかかる色の乱舞に背を向け、まるで鳥が飛ぶように谷底へ向かってその身体を踊らせた。

ああ、なんといい心地か……。

ごぼっと音を立てて最後の精を吐き終えると、侍の身体がごとりと音を立てて、畳の上に転がった。
それは人とは思われぬ、糸の切れた人形が転がったような倒れ方だった。
その異様さに周囲が静まりかえる中、ただ一人御前はうむと頷き、にたりと笑った。
「人形の仕上げ、見事」

450:リレー 分岐エンディング437 4/5
06/11/16 23:37:09 D0lXCxcc0



昇進の挨拶にと訪問を願い出たところ、指定されたのは別邸だった。
いささか気が進まぬ思いがしたが、今更なにを気後れするものかと、奮い立たせてそこへ向かうと
案内されたのは屋敷の最奥、お気に入りの人形と戯れている最中のところであった。
「奉行が褒めておったぞ、なかなかに優秀な人材だと。
わしも紹介した甲斐があったというものだ」
人形の孔に赤黒い怒張を抜き差ししながら、御前は上機嫌で声をかけてきた。
それに平伏しながら、従兄はかつての雄々しい面影をすっかりと失った侍に目を向けた。
ご禁制の薬、荒淫、そして従兄の言葉が作り上げた、抱かれるための生き人形。
言葉を忘れ物思う術を失い、自らのことまでを忘れ果てた人形。
鍛えることのなくなった身体からは、すっかりと筋肉が落ちて身が細り、鬢はほつれ、
御前の手管に翻弄されてやつれ果てている。
だが、童が物をねだるように愛撫をねだるさまは、怖気を震うほどに美しいと思わされた。
「んー、んー」
「どうした?もっと突いて欲しいのか。欲張るでないぞ、よい子にしておれば、もっと
気持ちようしてやるほどに」
「ん」
だらしなく開けた口から涎を垂らしながら、嬉しげに笑ってみせる。
何のためらいも憂いもなく、快楽に素直に浸るそのさまに、従兄は失礼いたしますると腰を上げた。
引き留めようとした御前が身体を離しかけたのが不満なのか、あーと抗議の声を上げた侍を
御前がなだめている内に、従兄はそそくさと別邸を後にする。

451:リレー 分岐エンディング437 5/5
06/11/16 23:39:23 D0lXCxcc0
別邸の裏には、小さなせせらぎほどの川がある。その畔に立った従兄だが、彼の胸に去来するものはなにもない。
風が吹き抜ければただからからと音を立てそうなほどに、からっぽだった。
何かを見たいわけではなく、だがそこを離れがたく立ちつくしていた従兄の目にふと止まったものがある。
淀みに生えた丈高い草に引っかかっているそれ。
無意識に従兄の手がそれに伸び、流れから拾い上げてみる。
最初は何かは分からなかった。
だが、気づいた。
「─笹舟」
舟らしい形にすらなっていないが、それは間違いなく笹舟だった。
五つ六つの童の方がもう少し上手に作れるだろう、不格好な笹舟。
その川は別邸の庭にある池から流れ出る水が作っている。
ならばこれを流したのが誰か、自ずと知れた。

「─下手くそめ、教えてやったではないか……」

凍り付いた心にぴしりとひびが入ったような気がしたが、従兄はそれを無視した。
取り戻せぬものを求めることのむなしさと、ただ愚かなだけの意地で、従兄は広がろうとする亀裂を
凍り付かせた。
ただ、これくらいならいいだろうと手にした笹舟を折り直し、元の流れに戻してやる。
さらさらと流れていく舟を見送り、従兄はけして振り返ることなく去っていった。



以上です。

452:風と木の名無しさん
06/11/16 23:53:40 BACc7RjqO
分岐侍タソ、禿萌えだ…!!受けが壊れる過程がもう最高! 乙!大好き!

453:風と木の名無しさん
06/11/16 23:54:59 +qOmf9l20
侍GJGJ!!!切ない終わり方にテラモエです!
人形になった侍の描写にもぞくぞくきました!

454:風と木の名無しさん
06/11/16 23:55:16 6iQsHosi0
バッドエンディング乙!
鬱展開も(・∀・)イイ!!

455:風と木の名無しさん
06/11/17 00:04:46 XJ+Qgi2Q0
うおおお、泣ける。リレー乙です。


456:風と木の名無しさん
06/11/17 00:33:57 TO1XI06z0
笹舟がこんなに重要になるとは思って無かったよ…
お互いの思いのすれ違いがさっくり書かれてて凄く素敵でした。
最後に兄様は何を言ったのだろう。
含みの在るエンドにGJです。

457:風と木の名無しさん
06/11/17 00:34:22 AEpxHt3aO
侍437たん乙です!
こんなぞくぞくくるラストを先に書かれたら、
他のリレー職人さん苦しいねw
でも違うエンディングも見たい!
職人さん方、ハードル高いかもだけど宜しくお願い致します!!

458:風と木の名無しさん
06/11/17 10:23:09 WaPrGZKW0
>>456
「ボク達、リアル兄弟なんだよ☆」じゃね。

459:テュランの筏1/8
06/11/17 12:03:58 FeKqKjGS0
三日目
「これを十分間、つければいい」
藤吾が取りだしたのは、二つのクリップを紐で結んだ、奇妙な品だった。
遠まきに「船長」の命令を待つ僕たちは、楊玲が一番近い位置で、僕はタープを引きずった奇妙な格好で、何故かクリフも前の方に進みでていた。
手持ちのものをすべて吐きださせ、その後一体何を命令するのか、純粋な好奇心だろうか。
三人三様に疑問を顔にしていたのだろう。
藤吾はもっとも近くにいた楊玲を指さし、つけ加えた。
「ここに」と、人差し指は今にも楊玲の胸の先端に触れそうだった。
「はさむ。初めてだから、刺激は強くしないように………努力は、しよう」
反対の手にもつ小さなリモコンを握ると、クリップがブルブルと震えだした。
楊玲は怯えたように後ずさりし、端に行き当たっても、目を大きく見開いたままだった。
小さく舌打ちして、肩をすくめて離れていくのはクリフ。
僕は彼の為に道をあけ、それからじわじわと入りこんでくる恐怖を自覚した。
………あれを、胸につける、だって………?
文房具屋に売っているような金属のあれを………痛いに決まってるじゃないか。
それどころか潰してしまわないか? 最悪の場合切………
恐ろしくなってきたので、想像は途中で打ち切った。
藤吾に背を向け、いつもの対称位置の角へと戻ってくる。
クリフはいつもの場所で、水平線を見つめつづけていた。
空を横切るものはなく、海を行く影も、なにも変化のない風景。
飽きないのだろうか、彼は。不思議に思いながら、横に座った。


460:テュランの筏2/8
06/11/17 12:05:01 FeKqKjGS0
「いい天気だね」
返事はない。
「今日は暑くなりそうだね」
現に、水平線上にその全貌を出した太陽は、いつもより黄色く、まぶしく海面を照らしていた。
その跳ねかえりで輝くクリフの唇は、結ばれたままだった。
言葉は通じるのに、コミュニケーションが取れないとは、どういう事だろう。
これじゃ、せっかく取って置いた水も、渡すチャンスがない。
ギラつき、頂天に向かいつつある燃えさかる陽光は、もう構うのやめて、自分で全部食べちゃおうかな、と僕を誘惑した。
「お前、一日目のペットボトル、どうした?」
去りかける僕の背に、声がかかった。
おそらく、クリフからの質問は、これがはじめてだろう。
嬉しさに振り返る僕は、間もなく顔を赤く染めた。
一日目と言うからには………彼は知っているのだ。
僕が服を全部手放して、欲に負けて、二日目のを手に入れた事を。
いや、タープなんかずるずる引きずっているし、それで一目瞭然だろうけど。
対して、ジーンズに包まれたスラリとした足を組むクリフは、まさしく「孤高」だ。
彼は欲望に負けない。だらしない僕たちの、その倍も誇り高いのだ。
怖気つき、指をモジモジ絡ませる僕に、痺れを切らしたのだろうか。
クリフは手を突いて振り向き、こっちを睨んだ。空よりも澄んだ青い瞳で。
僕はビクリと震え、その拍子にまいていたタープを落っことした。
何とも気まずい沈黙の時間がおりた。


461:テュランの筏3/8
06/11/17 12:06:06 FeKqKjGS0
「悪ぃ………」口を開いたのはクリフだった。
「見てない、というか、見えてないから。
海に落ちたときコンタクトなくして、それからずっとやぶ睨み状態なんだ」
なるほど、彼の視線が強いのは、焦点を合わせようと努力した結果なのか。
僕は納得し、前を隠すのも忘れた。
「それに、薄ぼんやりとだけど、お前のは標準だと思うぜ、年頃の平均値って奴。別に隠す必要ないだろ。この暑さじゃ、蒸れるぜ」
「ち、違う」僕はすぐに訂正した。
「そんな、コンプレックスのように決めつけないでよ。
そんな理由で隠してた訳じゃないんだから!」
思わず大声になった僕を、珍しいものを見るように、目を丸くするクリフ。
「日本の少年の、思春期の悩み定番かと思ってた。
じゃ、お前何で隠してるんだよ。堂々としてろよ」
「それは………」
言いよどむ。欲に負けた自分が悔しいから。
それを知られたくなかったから。
結局自分の自信のなさを隠す、という点では同じではあるまいか。
「お前の意思で決めたんだろ? なら堂々としてろよ。
誰もお前を笑う奴なんか――少なくとも、俺はしないから」
クリフは破顔した。首筋で切りそろえられた金髪が、背に太陽をうけてキラキラ輝く。
白く並んだ歯の、ちょっと長い八重歯がチャーミングで、僕は胸がコトンと鳴った音を聞いた。


462:テュランの筏4/8
06/11/17 12:07:17 FeKqKjGS0
僕の名前を覚えてもらうまでの紆余曲折は省く。
午前中たっぷり発声訓練して、納得できる「智士」を教えこんだつもりだ。
そして、たっぷりの遠回りの末、当初の質問に戻った。
「えーと、ペットボトルは捨てちゃったけど」
とたんに、ゴツンと拳固がやって来た。
「お前、じゃない、智士。何考えてるんだよ。普通に考えて、海汚すなよ。
ガムていどなら分解するけど、石油製品は海底につもるだけだぞ。
それに、サバイバル的に考えて、手紙を流すのに使うとか、雨が降った時に溜めるとか、ちっとは頭を働かせろよ!」
クリフはすっかり憤慨していた。そして彼の言う事はもっともだったので、僕は後頭部を抱えて涙目になりながらも、うなづいた。
頬を膨らませていたクリフは苦い顔をし、それからしぶしぶといった様子で、手を伸ばした。
僕の前髪からつむじにかけて、白くて優しい手の平が何度か往復した。
えへへ、とゲンキンに微笑む僕に、クリフは呟いた。
「まぁ、この辺の気候じゃスコールはありえない。
飲料用の天の恵みは望めないな」
どこか暗い調子に、僕の笑顔もみるみる萎んでいく。
その瞬間、飛び込んで来たのは喘ぎ声だった。
僕は肩をビクリとさせ、振り返った。クリフも眉をひそめて視線をやる。
音のみなもとは、藤吾のところだった。
黒いトランクの横で、立ちひざ状態になっているのは楊玲。
胸をみだらに突きだして、背中を欲情的に反らしている。
胸の先端には、銀色の鈍い光が輝いている。


463:テュランの筏5/8
06/11/17 12:08:32 FeKqKjGS0
右と左をつなぐ紐が、揺れて止まらないのは、上半身を反らす楊玲の動きの為か、それともリモコンを楽しげに操る、藤吾が与える刺激によるものか。
東洋の言葉で、歓声とも苦悶ともつかない声がとびだし、海上に響き渡る。
あまりに激しく肩が上下し、せわしく息を吐きだすので、さすがのいかだのギシギシと歪んでいる。
クリップを外そうと身をよじるのか、それとも彼の恍惚とした顔が示すとおりに、背筋を走る感情の奴隷となっている為か………いつまでも声と軋みは止まなかった。
「テュランが………」
憎憎しげにクリフ呟く単語を僕がたずねても、彼はただ唇を噛みしめるだけだった。

やけに長い十分間だった。僕の感覚ではそれ以上がすぎていた。
クリフとの会話はそのまま途切れ、盛り返す事はなかった。
僕はさりげなく、取っておいた水と食料を出して、すすめた。
「智士が手に入れたものだ。自分で食べろ」
初日のつっぱね方からすれば、大した進歩であるが、拒否は拒否だ。
僕はクリフが癇癪を起こすまで、すすめ続けた。が、彼の意思は変わらない。

464:テュランの筏6/8
06/11/17 12:12:04 FeKqKjGS0
クリフをこんなに頑迷にしたのも、日差しの強さと、
それから藤吾の訳の分からない思惑があったからかもしれない。
昼間はほんとうに辛かった。
楊玲の喘ぎ声、つられてギシギシ鳴るいかだ。
どこにも逃げ場はなかった。
防水性完璧のタープで日よけをする気にもなれず、
薄い胸をさらし、太陽を見あげて溜息ついた時だ。
「使え」
声がし、何かが手元に落ちた。トランクの閉まる音がする。
声で分かったし、いかだ上で物流のすべてをになっているのは、彼だけだ。
拾いあげると、それは日よけ止めクリームだった。
こんなものより、もっと切実に欲しいものがあるのに………。
僕は愚痴つぶやきながらも、それをぬった。ここでは何より物は貴重だ。
それに僕は日焼けすると、肌が真っ赤になり、ピリピリ痛みをともなうタイプだったから。
クリフに渡そうとしたが、彼は短く悪態をつき、受け取りもしなかった。

465:テュランの筏7/8
06/11/17 12:13:12 FeKqKjGS0
日が沈んだ。僕はタープを頭からすっぽりかぶって、その中でボトルを傾けた。
昼間の熱気と、それから弾んだおしゃべりで、喉はからからだった。
けれど、一口にとどめた。
口内に含んだ水を、細胞に行き渡らせ、分泌された唾液で生暖かくなるまで我慢して我慢して、それからやっと飲み込んだ。
残った量を見て胸をはり、僕は日々日々意思が鍛えられているのを誇らしく思った。
しかし、こんな場所で………と疑問をいだくと、それもすぐ萎んだ。
それより今はクリフだ。昼間も気になったけど、彼の唇は乾いてひび割れていた。
昨日の朝飲んで、それきりのはずだ。
聞こえている寝息は断続的で、辛そうに思えた。
僕はクリフの脇にかがみこむ。
左頬をいかだの床に接し、枕にした左腕は、白い手の平がしどけなく開いている。
人の気配がおおいかぶさっても、クリフは起きる様子もない。


466:テュランの筏8/8
06/11/17 12:14:26 FeKqKjGS0
安心してボトルの飲み口を、彼の唇にあてた………がうまくいかない。
横向きで気管に入る心配はないと分かっていたが、
米より、金より貴重な水を、一滴でも失ってたまるか、
そんな気持ちが僕に働いたのかもしれない。
こぼさず、うるおす。それはこの容器では無理だ。
そう悟った僕は、指先を水にひたし、クリフの唇をなぞった。
指をすべらせた部分が、新鮮なさくらんぼのような色につやめく。
僕はうれしくなって、したたる水を何度も何度も彼の唇に運んだ。
落ちた水滴が、クリフの舌に届き、ピンク色したそれがうごめくように飲み込むのを確認して、僕は立ち去った。
ボトルの底にはもう、小指の爪ていどの量しか残っていなかった。
僕は気にしなかった。
「おやすみ、クリフ」


467:風と木の名無しさん
06/11/17 12:26:08 c7IjGSB+0
キタキタキタキタ━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━!!!!
これから何されるのか楽しみ!乙!

468:風と木の名無しさん
06/11/17 15:47:24 b4ef1atz0
テュランでぐぐってみた。wktkだ!

469:風と木の名無しさん
06/11/17 17:01:14 AEpxHt3aO
テュランってティラノサウルスとかの
ティラン(暴君)のラテン語読み??
クレフが暴君になって、日本人のオッサンを掘ってくれないかな!

470:風と木の名無しさん
06/11/17 17:31:15 o7ymhjPzO
つーか、こうリアルで面白い作品読むと「鬼畜萌え!」よりも
「そんな変態、三人で力合わせてボコッてやれ!トランクを奪い取れ!」という気になってしまうww

471:風と木の名無しさん
06/11/17 17:36:45 AEpxHt3aO
同意!
少年よ大志を抱けって気分。
You達やっちゃいなよ。
三人で力を合わせれば大人の男ひとりぐらい、まわせるってww

472:風と木の名無しさん
06/11/17 17:51:33 gkUVxIisO
今、リレー読み終えた。乙。良かったよ!

473:風と木の名無しさん
06/11/17 18:51:55 UuMRrbHsO
リレー侍分岐ED乙。
そして別バージョンもハゲしく読みたいので
お待ちしています

474:リレー
06/11/17 19:48:17 F8I1wHh/0
 幾人もの男を快楽地獄に落としては楽しんできた御前だが
まだ叶わぬ望みがあった。
 我が意のままになる艶やかな抱き人形を作ることだ。
 この男こそ仕立ててみたいと思う者は多くいた。実行に
移したこともあるが、みな壊れる前に進んで肉杭を銜え、
媚びへつらうただの淫売になり下がっただけだ。
 淫売なだけならばまだしも、床勤めで出世を狙う者まで
でる始末。
 そうなると興味も面白味も失せ、適当な金を握らせて
放り出す。
 中には恨んで強請ってくる愚か者もいたが、御前にとっては
そのような輩を、芥を捨てるごとく始末することに何の痛痒も
感じない。
 数年来の念願をかなえられず、不満を囲っていた中、見つけた
この侍ならば念願の抱き人形を作れるのではと、御前は期待に
胸を高鳴らせていた。
 身分は低からず高からず。
 係累はいるが、妾の子であり家族とは疎遠気味で妻も子もない。
 勤める役も低いゆえ、同輩に騒がれる恐れもなし。
 そして、何よりの強みといえば、侍にとっては本家筋の縁戚のものが
手引きを買って出てくれたこと。
 策略に長けたこの男ならば、外に秘密を漏らすことなく目的を
果たせると夢想して、御前は目の前の絡み合いに再び股間を
膨らませていた。

475:風と木の名無しさん
06/11/17 20:04:33 TqYmITRtO
別EDキタキタキタキタ━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━!!

476:風と木の名無しさん
06/11/17 20:28:38 KBMJ+X9W0
リレーキテター!!!!
激しく乙です。続き頼みます。

477:風と木の名無しさん
06/11/17 20:48:50 9we6vOkQ0
リレー
分岐ED、乙!乙!
別バージョン、GJGJ!

478:リレー
06/11/18 00:14:06 TumftH8sO
なまじ体力のある侍は、疲れを覚えながらも、精根尽き果て臥すに至らず、
白く澱むものを吐き続けながら、汗をかき息を乱していた。
痛みと快感が飽和し、ただただ体が燃えるように熱い。
半狂いの侍はもう、己が犯されている事すら、わからなかった。
御禁制の薬で頭の奥をも蝕まれた侍には、
後孔を灼く熱く大きな塊が魂のように思えた。
己が孕んでいるのは力の源。失いたくはない。抜かれたくはない。
侍はその一心で、締まりの良さが売りの陰間のような力強さで、
下の口を窄め、従兄弟の猛りをむさぼった。
丈夫な体を持ち、百俵に満たない禄を喰み、
誉められもせず、苦にもされず生きてきた侍が、
じわりじわりと、抱き人形に姿を変えてゆく。
頭の中は灼熱のマラでいっぱいだ。
侍の痴態に御前はにたりと嗤い、膨らんだ御前自身を軽く揉んだ。
従兄弟は「誰に抱かれているかもわからず」喘ぎ、
虚空を見つめながら、下の口で従兄弟の屹立をしゃぶりあげる侍に眉を寄せた。
己が何を口走っているかわかっていないであろう侍が、
声にならない声で、あにさま、あにさまと唱えるのも従兄弟の苛立ちを誘う。
飲みすぎた翌朝のようなむかつきを覚えながら、
従兄弟が一際深く侍の後孔を抉った刹那!
「そなたの事であろう?」
聡い御前が、さらりとそう言った。

続きお願いします。


479:風と木の名無しさん
06/11/18 00:36:02 p4Ix0JW0O
リレー乙!
何か切ない…(うДT)

480:風と木の名無しさん
06/11/18 00:48:56 de80CMhQ0
リレー超GJ!禿萌え!
侍の哀れさがいとおしくなってきた。

481:テュランの筏1/12
06/11/18 12:07:14 A6MrKfG80
四日目
「今日は、二十分耐えてもらおう」
藤吾に顔向けているのは楊玲だけだった。
しかしその声は背を向けている僕にも届く。
だんだんと、ルールが飲み込めてきたような気がする。
「船長」の要求は、日々日々過酷になっていくのだ。
服の時だけは例外で、僕たちは選ぶ権利を持っていた。
けどもう身一つの今は、エスカレートする彼の命令を受け入れるか、受け入れないかの選択肢しかない。
キリンの、首を伸ばす実験のようなものだ。
高い木の枝葉を餌にして、それは毎日十センチずつ上へあがっていく。
毎日、律儀に食べていれば、一日に伸ばす首は十センチで済む。
けど我慢して食べない日の翌日は、二十センチ伸ばす苦しみを味あわなければならない。
明日は三十になるか、それとも木の枝が針になるような道具を、藤吾は黒いトランクから取り出すかもしれないのだ。
どのみち、心は後悔にしばられるだけだ。
僕は残り少ない水と食料を考え、不安をぬぐえないまま、クリフの隣にしゃがみこんだ。
わずかだが彼の顔色はよくなっている。押しつぶされそうないかだの生活で、こうして彼が元気にしているのを見るのだけが、僕のうるおいだった。


482:テュランの筏2/12
06/11/18 12:08:00 A6MrKfG80
「テュランめ………」
水平線から目をそらさず、クリフは唇を歪めていた。
藤吾の命令が聞こえていたのは、たずねずとも明らかだった。
「昨日も言ってたよね。それって何て意味」
クリフは僕を振り向きもせず答えた。
「暴君」
その時、日も昇りきらない海上に、楊玲の喘ぎ声が響き渡りはじめた。

僕たちは声に押し出されるように小さく、いかだの端で身を縮めた。
クリフが話し始めた時、もう話題は変わっていた。
「………あいつ、楊玲の事だけどさ」
「うん」
僕はあいまいに返事した。
楊玲に対する僕の感情は、色々複雑だったから。
「智士は、楊玲の言葉、分かるか?」
「ううん、全然だめ。母国語はお手上げ、日本語は単語で聞きとるていど」
「筆談は、どうだ?」
クリフは海水に指をひたし、乾いた緑色のタープにアルファベットを記した。


483:テュランの筏3/12
06/11/18 12:09:19 A6MrKfG80
「あ、それなら。漢字つづって、何とか意思疎通出来るかな………」
「俺、会話は出来るけど、読み書きの方は全滅だから」
クリフが肩をすくめるのを、僕がからかう一連のじゃれあいの後、会話は再開した。
「でも、どうして楊玲に? 何を話せばいいんだろう」
「何でもいい………とにかく、あのままじゃあいつ、心が壊れる」
「そうかな」
僕は疑問だった。
彼は自分の欲望に忠実に、暴君にしたがっているだけだ。
飢えて渇いた僕たちより少なくとも身体は満足しているはずだ。
心も………あの声を聞けば、どう思うかは言うまでもない。
僕にとって楊玲は戒めの存在でもあったし、また同時にうらやましい存在でもあったのだ。
「智士、お前だったら、突然連れて来られて、こんな場所で恥辱的な行為をせまられて………それで周りにいる誰とも、言葉が通じない。
そんな状態に、耐えられるか?」
僕は黙りこんだ。クリフの言う事はもっともだった。
僕はたぶん、楊玲のさみしさなんて、考えてもみなかった。
「分かった………」
答えながらも、僕は心にもやもやした気分がわきあがるのを、抑えきれなかった。


484:テュランの筏4/12
06/11/18 12:10:48 A6MrKfG80
結論から言うと、僕はベストをつくした。けどだめだった。
喘ぎ声と、いかだの軋みが止んでから、しばらくして、僕は楊玲のいる辺りに向かった。
徐々に、藤吾の方へ近づいているとは言え、赤毛の少年はまだ中間地点、マストの下にいた。
僕は歩み寄る。たぶん、ここで第一の過ちをおかした。
痛々しいであろう胸の跡を見ないように、視線を上に固定していたのだ。
異国の人間に、上段構えに近づいて来られ、パニックになるな、と言うのが無理だ。
楊玲は手に入れたばかりの水と食べ物を抱え、威嚇めいたうなり声をあげる。
「あの」
二、三言強い調子の見知らぬ単語が、楊玲の口から飛び出した。
「大丈夫?」
彼は胸に二品抱えたまま、座ったままで後ずさりした。
僕はクリフの案を思い出し、筆談を試みようと床をさした。
が、考えてみればいかだのど真ん中だ。
端まで何歩か歩かなくてはならない。海水をひたした指さえも乾く、この暑さで。
考えた挙句、自分の舌でしめらす事にした。
セレクトした漢字は「友」だったが、二画目の途中で文字はうすれた。
しめらし方が足りなかったのだ。
思いきり不審な視線で見あげ、楊玲はさらに一歩下がった。
ここまでだろう、と僕は思った。
今はこれ以上強引に出ても、いい結果は生まない。
「何かあったら、力になるから」
僕はそれだけ告げ、クリフの元へ戻った。

485:テュランの筏5/12
06/11/18 12:12:15 A6MrKfG80
「タイミングが、悪かったんだと思う」
反省点を口にして座りこむ僕に、クリフは何も言わなかった。
黙って手を伸ばし、僕の髪を撫でる。
「食べている時で、しかもこんな状態で、僕は略奪人か強盗かって感じで、見られても仕方ないっ………」
心に思った事を話すうちに、何故かボロボロと涙がこぼれおちた。
「僕たちは、楊玲の身体を満たすものを何もあげられないっ………
でも、言葉は通じなくても、心は伝えたいと思ってるのに………」
なんで、自分がこんなに泣いたのか、後になってもよく分からなかった。
頭に乗ったクリフの手の平が、温かくて優しかったからかもしれない。
そして反面教師にしている楊玲の姿が、いつか自分に重なる時が来るのを想像して、恐ろしくなったのかもしれない。
「こんな、こんな状態っ………」
クリフは何も言わず、つむじと前髪の間で、手の平を往復させた。
僕はただただ貴重な水分を流しつづけた。

486:風と木の名無しさん
06/11/18 12:12:53 kMANStIFO
待ってましたよ…御前のその一言待ってました。GJデス!

487:テュランの筏6/12
06/11/18 12:14:11 A6MrKfG80
最悪の事態になった。
ボトルに残ったわずかな量では、僕の渇きは満たなかった。
中途半端に水を与えられた細胞が、おかわりを催促して、激しく暴れる。
それでも意思を総動員して半分残し、眠るクリフの唇をひたした。
指先を数度すべらせただけでは、昨夜のようなつやは戻ってこなかった。
僕は空のボトルを閉め、タープの中にしまった。
手つかずの食料パック半分が残っているが、こんなに口がパサパサの状態では、とても喉を通らないのは分かりきっていた。
水。ただそれしか考えられない僕の頭に、嫌味たらしく波音が入りこむ。
明日になったら………過酷さを増した責めが待っている。
キリンは死にものぐるいで首を伸ばさなくちゃならなくなる。
頭上に浮かぶ細い月は、雲ひとつない夜空で、間もなく頂天にのぼろうとしていた。
薄闇を透かして、見る。黒くどんよりとたたずむトランクを。
あの中には僕のすべてを癒すものが入っているというのに、
こんなに近いのに、どうして手に入らないのだろう。
そんな事をぼんやり考えながら、僕は足音立てずに歩き出した。
いかだは広い面積をもつが、それでも二桁も歩かない内に、辿りついてしまった。
トランクの上に右腕の肘をつけ、頭をもたせていた藤吾が目を開く。


488:テュランの筏7/12
06/11/18 12:15:21 A6MrKfG80
………いつか、自分に重なる時? 今すぐ切羽詰っているのに、何をのんきな事を………
過去の自分を自嘲しながら、僕は小さくささやいた。
「水を」
「まだ五日目には入っていない」藤吾は時計を見ながら言った。「二十分だ」
差しだされたクリップを震える手で受け取り、僕はぎゅっと目を閉じた。
「智士君、だっけか。君は意思が弱そうだからこれを使ったほうがいい」
ジャラリと音がして、僕の手の平に冷たい感触のものが追加された。
薄い月の光をあびて、鈍く輝く手錠だ。
「な、なにを、なんで………」
「二十分間。途中で故意でも自然にでも外れたら、最初からカウントし直す」
左手首の時計を見せびらかすように、藤吾は続けた。
「彼、楊玲君だったっけ? 彼は三回外した。今日は二回」
藤吾の指さす先には、タープにくるまって眠る楊玲の姿があった。
僕の背筋を冷たいものが通りすぎていった。
………楊玲の声がやけに長く感じられたのは、気のせいではなかったのだ。
「後ろ手に拘束するのが、おすすめだ。
前では心理的枷にしか働かない」
「っ………こんなもの、いらない」
僕は手錠を投げた。床から拾いあげた藤吾は、丁寧に埃を払い、トランクにしまう動作を見せかけ、途中で止める。
上衣の前ポケットにそれを落としこみ、僕の上半身に視線をそそいだ。
「カウントはこちらでしよう。では、見せてくれ」

489:テュランの筏8/12
06/11/18 12:16:15 A6MrKfG80
僕の心にあったのは「朝になる前に」「誰かが起きる前に」済ませてしまいたい。
それだけだった。
急かすものがなければ、僕はただ手を震わせ、恐ろしい凶器を胸にはさむなんて出来ないまま、夜を明かしてしまっただろう。
闇の中で目を透かす。自分の胸にぷくりと浮きでた桜色の突起を見下ろす。
左手で周辺を押さえながら、右手でクリップを開き、ゆっくりと近づけていく。
鋭利で冷たい金属の感覚が、敏感な先端の上下を包み………こまずに噛みついた。
「っ、ひぃ!」
全部の神経が左胸に集ったような痛みだった。
左手はもはや支えていられず、右手は噛みきられる苦悶に暴れた。
紐でつながったクリップのもう一片はだらりと下がり、左胸に食いこむそれのおもりとなった。
「い………っ、っく」
身をよじったせいか、それとも両手が胸のあたりをかきむしったためか、軽い金属の音を立てて、床に落ちた。
「まだカウントもはじまっていない」
藤吾は短く呟き、拾いあげたそれを僕に手渡した。
僕は手の平で鈍く輝くクリップを、たった今噛みついてきた凶器を、海に投げ捨てたい衝動にかられた。
想像の中で僕はなんども投球フォームをとり、闇の海のはるか遠くに投げてやった。
あわてふためく藤吾を見て、溜飲を下げた。
けれど現実の僕は、震える手で、右でもない左でもないと迷いながら、
忌まわしいクリップを敏感な突起に噛みつかせる位置を探っていた。


490:テュランの筏9/12
06/11/18 12:17:26 A6MrKfG80
二度目は、手がこわばりすぎた。
突起の表皮だけを噛んでしまい、すぐに外れてしまった。じんわりと内出血するような痛みだけが残った。
三度目は、目をつぶっていたのがまずかった。
肌色の皮膚部分まではさんでしまい、痛みはそれほど強くなかったものの、藤吾にいらだちの舌打ちをさせてしまった。
彼はポケットの手錠を取り出しながら近づいてくる。
怯えてしまい、逃げるなんて思いつかなかった。
藤吾は僕の両腕をとり、背中でひとまとめにする。
肩の関節に鈍い痛みが走り、僕は悲鳴をあげた。
が、そんなの意にも介さずカシャン、カシャンと手錠の機能が発動する音が響いた。
手馴れた様子で藤吾はそのまま、胸のクリップをあやまたず、しっかりと噛みつかせる。
右と左の胸に一度に痛覚が集中し、目の裏で何かがはじけた。
「っ………くぁ、ああっ」
自分では暴れようとする意思はないが、勝手に胴体が左右に揺れる。
両胸の突起をつなぐ紐がぶらぶらと合わせて揺れた。
腕にも無意識に力がこもっているのだろう。
鎖がガチャガチャと鳴り響き、手首が鉄の輪にすれて痛かった。
「カウントを開始する」
トランクに腰かけた藤吾は、時計の盤面を眺めたあと、別のポケットから小さな機体を取りだした。
胸への責めに喘ぎを押し殺す僕は、それが何だが悟り、大きく目を見開いた。
楊玲の声を大きくも小さくも調整した………刺激を与える、リモコンだ。


491:テュランの筏10/12
06/11/18 12:19:25 A6MrKfG80
「ぃ、や………」
やめてと叫ぼうとした僕は、その行為がまったく意味ない事に気付いた。
訴えて、やめる相手ではない。
そして、大声出して皆が起きだしてしまったら、今まで声を殺していた意味も、深夜を選んだ意味もなくなる。
奥歯を噛みしめた。同時に藤吾の指先がうごめいた。
「っぅ、あ、………っ」
上下に挟まれた内側で、舌のような感覚が這った。
生暖かく全身がぶつぶつに覆われ、どこかぬめっているもの。
桜色の小山のふもとからてっぺんにかけて、同時に、舐め、はさみこまれる。
その瞬間は噛みつかれる痛みも忘れた。
ただただ背筋を震わせる、怖気悪さだけが立った。
しかし、何より恐ろしいのは、それが規則的にくりかえされる事だ。
「あ、っ………っううっ」
藤吾が指の位置を変える。とたん、振動がくわわり、なぶる動きが変化した。
取り囲んだぶつぶつがランダムに、間をおかずに位置を変え、軽く触れて去っていく。
微弱といえば微弱であるが、先端、厚みと覚悟も出来ない責め方に、僕は歯をくいしばるのがやっとだった。
僕はさっきから気付いていた。
視界の端、マストのそばで盛り上がっている楊玲のタープ。
規則正しい動きがなくなった。寝息もとぎれた。
彼は、目を覚ましてしまったのだ。


492:テュランの筏11/12
06/11/18 12:21:37 A6MrKfG80
恥辱が僕を襲う。耳まで真っ赤にそまった。
胸をつきだし、背中を反らして声を噛みしめる………昼間の彼のように。
声を聞かれているのだと思うと、身体中の血が一点に集中した。
それは、自分でも信じ難かったが、下半身の方へだった。
「五分経過だ」
なにもかもが悪夢だった。にぶい流れの泥沼に落ちこんで、足の踏み場もなく、手にふれるものすべてが、ドロドロとくずれおち、悪臭をはなつ。
だが決して、意識は失えなかった。

493:テュランの筏12/12
06/11/18 12:22:42 A6MrKfG80
決して思い出したくない二十分が終った。
手錠が外されたが、両腕はこわばっていた。
頭をあげる事が出来ない僕の前に、無造作におかれたペットボトルと、ブロッククッキーの箱。
涙が、こみあげる。
みじめだった。ほかに言葉がいらないほど、みじめだった。
しびれが抜けるのを待って、クリップを外して床に叩きつけ、手に入れた品を胸に抱く。
すでに、涙を止めようとする努力はやめていた。
しゃくりあげながら、僕は黒いトランクに背を向け、もっとも離れた場所へ戻った。
涙で失われた水分を補給し、新しい食品はしまって、前の残りをたいらげた。
鼻につく甘味が、また涙をボロボロと落とさせた。
ボトル残り三分の二のところで、最後の一口をふくみ、味わってから飲み下した。
鼻をすすり、クリフの脇にかがみこむ。ボトルを傾ける。
僕はなんどもしゃくりあげながら、彼の唇をうるおした。

494:風と木の名無しさん
06/11/18 13:59:06 s8W4caUv0
リレーは孤島たんが頑張ってたから面白かったのはみんなこのスレの人は
気づいてるよね。で、孤島たん、さっさと結末書いてマンセーもらって
去っちゃった。これでリレーはつまんなくなっちゃった。

さて、リレーで孤島たんをまってた皆で孤島さんの新作をまちましょうか。
孤島たん、サイトつくってもここが好きよね? マンセーたくさんくるから。

495:風と木の名無しさん
06/11/18 14:27:02 l9b1RJj3O
筏タン乙
リレーのマルチEDは面白い試みだと思う。
ともかく投下者さん方乙

496:風と木の名無しさん
06/11/18 14:44:11 TumftH8sO
筏タン乙です!
続き楽しみ。頑張れクリフ!!
藤吾が凌辱されたら、嬉しいなww
リレーのマルチED、自分も面白いと思う。
リレーにも参加させてもらってるけど、
それとは別に437タンみたく
分岐バージョンも書きたくなったよ!

497:風と木の名無しさん
06/11/18 15:32:57 de80CMhQ0
>>496
ぜひ書いてくれ。>分岐ED
マルチEDは大歓迎!

498:テュランの筏1/7
06/11/18 17:02:32 9Dk/AZ7d0
五日目
黒いトランクを開けかけた「テュラン」は、ふと思いついたようにその手をとめた。
「今日もこれにしよう。四十分だ」
その声を、僕はタープにくるまったまま聞いていた。
昨夜の屈辱を思い出し、涙がこぼれそうになった。
いったいどこまでいたぶれば気が済むのか。
じんじんと胸の芯が痛んだ。物理的なものだけじゃ、なかったはずだ。
頭上では、今日もうんざりするほど揺れるかげろうをまとった、太陽が昇っていた。
まだ朝方だというのに、昼間の熱気を予想させる蒸し暑さだった。

楊玲の喘ぎ声は、今日もいかだを揺らした。
風に乗って耳に届くたびに、僕は肩がびくついたし、背筋をこわばらせたし、唇を噛んだ。
クリフの前で、全くポーカーフェイスはできていなかっただろう。
言葉数少なく、僕とクリフはいかだの上を掃除していた。
ここ数日晴れ間が多く、頑丈な板を組んだ床は、塩がこびりついていたのだ。
辺りの海は波も激しくなく、風も少ない。
それでもしみこんだ海水や、水浴びした時のしたたった海水が蒸発し、いかだ上を塩まみれにしていたのだ。

499:テュランの筏2/7
06/11/18 17:03:20 9Dk/AZ7d0
マストにかかっていたホウキを取り、クリフと交代に掃いていく。
僕たちは、僕たちの陣地――いかだをマスト中心に斜めに切った半分――を、藤吾にも黒いトランクにも背を向けたまま、清める。
ホウキと床がすれる音が広がると、とたんに白い粉が目の前をおおった。
さすがに五日間、海水にひたっていただけあり、ものすごい塩の量だった。
生臭い塩が鼻につく。潮風も急に、息苦しいものに感じられた。
顔をしかめる。
舞いあがる粉から顔をそむけ、海面のさわやかな風を肺にいれようとしたが、そこはあいにく風下だった。
すでに占領されている。生臭い塩にも、楊玲の喘ぎ声にも。
くらり、と頭の奥で濃い闇がかかった。
吐き気がする。胸がむかむかする。
「おい、智士。顔色悪いぞ」
クリフの声がした。それはとても遠く感じられた。
意識が遠ざかる。いけない、クリフに返事をしなくちゃ。
なんともない、ちょっとめまいがしただけ、だって。
声を出そうと深呼吸した。しかし肺を占めるのは、濃い潮風だけだ。
容赦なく内部の水分を奪う、塩が入りこんでくる。
生臭い、生々しい、喘ぎ声………。

500:テュランの筏3/7
06/11/18 17:03:59 9Dk/AZ7d0
鎖骨のやや上がズキンと痛みを発した。喉の後ろが妙に熱くなる。
舌がこわばって、正座の直後のようなしびれ初めの状態になっている。
………まずい、と僕は思った。発作の兆候だった。
もう何年も出てなかったのに、喘息。
吸入器なんて、客船にも持ちこまなかったし………いや、いや大丈夫だ。
落ち着いて、姿勢を楽にして、腹式呼吸をとれば………
だが、浮かべる事何一つ実行に移せないまま、僕は咳の発作に襲われた。
「智士?」
クリフがホウキを投げ捨て近づいてくる。
それより早く、僕は床にくずおれた。
止まらない。頬の後ろの筋肉をひきつらせ、喉がひりひりと赤くなるまでからまった呼吸をしつづける。
その呼吸も弱弱しく、断末魔のような木枯らしのようなヒューとか細いものだった。
目がうるむ。ぼやけた景色はまもなく、目の後ろではじけた赤い閃光で一色に染まり、僕は呼吸困難の苦しみの中で意識を失った。


501:テュランの筏4/7
06/11/18 17:05:14 9Dk/AZ7d0
………ぬるいうるおいが、喉を下っていった。
それは口をぬらすていどの、ほんのわずかな量で、何度も何度も繰り返された。
胃袋に到達する前に、それはからからに乾いた喉で、吸収されてなくなってしまう。
もっと、欲しいのに。思うが、じれったいほどに、わずかな水が注ぎこまれるだけだ。
まるでスプーンで池の水を汲みだそうとするようだ。
僕はねだるように、次にあてがわれた注ぎ口を、唇で包みこんだ。
吸いつくすように、ちゅうちゅうと音を立ててねぶる。
注ぎ口はとても熱く、びっくりしたように震えもした。
それでも赤ん坊をあやすように、僕の気がすむまで、されるがままになっていた。
口の筋肉が疲れてしまい、それを解放する。
今度は、やや間があってから、注ぎ口があてられた。
僕は舌をうごめかせて、再びむさぼる。
先端の味らいが、甘味を感じ取った。
何日ぶりだろうか。
舌の奥をぴりっと刺激する、すっぱさをともなって、ずっと僕の身体に欠けていた栄養素を、満たしてくれる。
うっとりと、全身が弛緩するほど、感動に包まれる。
鼻がオレンジの香りをかぎとり、僕は五感を取り戻していった。
注がれる果汁を決して逃さないよう、舌を絡め、唇をすぼめながら、両腕を何かを求めてさまよわせ、絶え間ない潮騒を耳にとらえ、最後にゆっくりと目が開いていった。


502:テュランの筏5/7
06/11/18 17:06:06 9Dk/AZ7d0
………鼻のすぐ先に、クリフの顔があった。
僕は開いたばかりのまぶたを酷使し、さらに大きく見開いた。
頭を………動かして自分が何をしたかったのは不明だが、身動きならなかった。
頭の下は柔らかく、そして耳の後ろはしっかりと包みこまれ、支えられている。
あ、と短く呟き、僕は「注ぎ口」を解放した。同時にクリフの顔が遠ざかった。
「今、口の中にあるものを、飲みこんでから身を起こせ。気管に入るから」
耳の後ろを支えた感覚が消えうせた。
僕は忠告通り、頬にたまった唾液をも喉にくだしてから、ゆっくりと上半身を起こす。
「僕………」
呟いた言葉は、まだかすかにかすれていた。
クリフはオレンジ色のラベルがついた、ガラス瓶を差しだした。
「アミノフィリン合剤は、さすがにもっていなかった。
症状は軽度だから、糖分とビタミンの補給で大丈夫らしい………飲んでおけ」
まだ僕の頭はぼんやりしていたのだろう。
押しつけられたそれを、傾け、半分ほど一気に飲み干してから、やっと思考が回転しはじめた。
「え、って、クリフ、これ?」
腰をひねって振り返る………そんな事、しなければよかったのだ。
僕は、あんなに辛そうなクリフの表情は見た事がなかった。
そして………見たくなかった。

503:テュランの筏6/7
06/11/18 17:06:55 9Dk/AZ7d0
日焼け途中なのか、白い肌に薄いピンク色が浮きかけているクリフは、上半身も下半身もすべて夕日の下にさらけだしていた。
しげみの薄い股間、そこを隠すように下りている両手には、短い鎖の枷が。
そこから上へ視線をはわせる勇気は、僕にはなかった。
床に置いてある、開封途中のペットボトル、手のつけられていない食品、僕の手にあるオレンジ飲料。
答えは明らかだった。
「ッ、あ、くぁ………っ」
クリフが短く叫んで、背を反らせた。
ビクンビクンと身体中の関節が跳ねている。
まだぼんやりしている視界の端に、そこだけくっきりと映った人物。
リモコンを持つ藤吾。
薄笑いを浮かべ、スイッチを次々切りかえる藤吾。
視線は獲物をいたぶる、肉食動物のようだった。
「や、やめろっ………まだっ」
苦しそうに発するクリフの口からは、同時に熱い息も漏れていた。
胸の先端の、銀の鈍い光が、夕日に照らされるより早く、僕は誇り高い彼に、命を救ってくれた彼に報いらなければならない………身をひるがえして、タープの中にくるまった。


504:テュランの筏7/7
06/11/18 17:08:04 9Dk/AZ7d0
緑色の内部に身体を丸め、耳をふさいだ。目も閉じた。
それでも、甲高い声はシートを通して鼓膜を震わせた。
いかだの軋む音は、決しておだやかな波のせいではなかった。
握ったこぶしを噛みしめると、ハラハラと涙がこぼれてきた。
自分の発する嗚咽が、すべての聴覚を遮断してくれないかと期待したが、蛇口をひねったように、涙はただ無機質に流れ落ちるだけだった。
目の後ろと鼻の奥をぬける熱いものを感じとりながら、僕は呪った。
すべてのものを。
海の上を漂ういかだ。それを支配する暴君。なすがままにされる乗客。
沈没した客船。穏やかな死を迎えた故人。
マスコミか自衛隊に救われ、今ごろ生還談を語っているであろう人々。
なんで、なんで僕たちだけが、こんな理不尽な目に遭わなくちゃならないんだ………。
テュランの筏に乗らなければならない、何か咎でもあるというのか………。
神様なんていやしない………いるならば、僕はその存在すら呪ってやる。
緑色のタープが、涙の海と化しても、それでも僕はあらゆるものに対して、呪いの言葉をはきつづけた。

505:風と木の名無しさん
06/11/18 18:51:04 GPU4Gtt/O
乙乙!激しくGJ!
とうとうクリフが……(ノД`*)これをきっかけに堕ちて逝けばいいよ。

506:リレー 分岐エンディング506
06/11/18 19:03:15 TumftH8sO
478から分岐

御前の言葉に従兄弟の腰の動きがぴたりと止まった。
夕焼け、笹舟、小川のせせらぎ。
仔侍に「あにさま」と呼ばれた遠い日が従兄弟の脳裏をよぎった。
「あにさま」
虚ろだった半狂いの侍の目が、従兄弟の小袖にそそがれ、
奇しくもそこに染め抜かれていた笹舟紋様を見つめる。
「あにさま」
弱々しく伸ばされた指の先が、小袖の中の笹舟に触れたとき、
従兄弟は言葉を亡くし、侍の後孔から
いつのまにか萎えていたそれを抜こうと腰を引いた。
抜かないでくれとばかりに、下の口を窄める侍を突き飛ばし、
しんなりとした一物を引き抜くと
誰もが呆気に取られる中、従兄弟は韋駄天のように駆け、廁へ飛び込んだ。
飲み明かした朝のように胸がむかつく。
口からもののけを産めそうな吐き気に襲われ、従兄弟は嘔吐しようとした。
誰かが口から手を突っ込み、はらわたをたぐり寄せている。
そんな気がしたが、従兄弟の口からは何も出てこなかった。
なぜこうも酷い気分になるのか従兄弟は、わからなかった。
分家の妾腹の男など、御前から話を持ちかけられるまで、散りや芥に等しかった。
ただ一度だけ川辺で遊んだ幼き日は遠い昔。
思い出と呼ぶより、「おぼろげながら覚えている出来事」に過ぎないのに。
従兄弟は、自分が冷艶と称されている事を知っている。
そうでありたいと思い、そのように振る舞ってきた。
その自分が身内をひとり、狂わすことに、こんなにも吐き気を覚える事が解せず、
従兄弟は廁にしゃがみ続けた。


507:リレー 分岐エンディング506
06/11/18 19:05:12 TumftH8sO
御前は、座敷を出ていった従兄弟の弱さを嗤い、侍を引き寄せると、
三枚目の絹布を手にし、愉しげに侍の後孔に押し当てた。
「一枚目は初々しい小梅。二枚目は咲き誇る牡丹。これは何に見えるや?」
絹布を広げ一座を見渡したた御前に、侍を剃毛した男が言った。
「落椿(おちつばき)に見えまする」
枝についていた時と、そう変わらぬ姿で、地面に転がっている赤い椿を
男は絹布に見た。御前は満足気に、にこにこと笑い、三枚の絹布で
従兄弟と交わした約定より、やや多い金子を包むと自分が座していた場所に置き、
従兄弟が廁から戻るその前に、侍を連れ、供の者を従え去って行った。
戻ってきた従兄弟は誰も居ない座敷に息を飲んだ。
金子と侍の後孔を押隈した絹布が目に飛び込んでくる。
気が付いたとき、従兄弟は絹布に顔を埋めていた。
鼻と口を押しつけ、其処に侍の匂いを探したが何も嗅ぎ取れない。
其処に残された、生々しいあとをまじまじと見つめながら、
従兄弟は絹布を握り締め啜り泣いた。所縁(ゆかり)ある者を売るには、従兄弟は柔(やわ)過ぎた。
御前は心に永久凍土を持っている。
だが、従兄弟のそれは薄氷(うすらい)だ。
「あにさま」の響きに容易(たやす)く溶ける薄氷(うすらい)だ。

仕立て上げた抱き人形で遊びながら、御前は思う。
人は蛇の道に踏みいるべからず。鬼に成りきれぬ者は、人らしく生きるべし。

以上です


508:風と木の名無しさん
06/11/18 21:30:19 kMANStIFO
クリフ格好良すぎ。筏タン、投下中に邪魔してゴメンナサイ...リロッタノデワザトジャナイデス。。
分岐ED乙です。過去スレの箱庭思い出した。文章綺麗で萌ッス。

509:風と木の名無しさん
06/11/19 00:14:00 NHbXpIcSO
>>508
リロったけどわざとじゃない、の意味がよくわからない
支援のつもりだったってこと?
筏タンの投下は名前欄みれば全何レス予定なのかわかるんだし
リロ忘れか支援以外で投下中にレス挟む理由が思いつかないんだけど

運悪く邪魔しちゃうこともあるだろうけど
キチンとリロって明らかにまだ投下中だとわかる状態なのに
支援目的以外でレス入れるのは控えてホスィ…と思った
細かいこと言ってゴメン

510:風と木の名無しさん
06/11/19 05:36:37 rOzODeEG0
>>506 乙!
やっぱりバッドEDなのか…OTL
尻拓の絹布で金子を包ませる姐さんの感性が好きだw

511:とらわれの螺旋 1/6
06/11/19 12:33:05 BBsRGb4v0
投下します。今回過去編のみです。ムチあり。
子どもがムチを持つのが嫌という方、スルーして下さい。

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―流が同級生を殴り、傷を負わせた夜。
 流の父親はその話を聞いても特に表情を変えることなく、流に「弱いもの虐めをしてはいけないよ」と言っただけだった。
 流自身も後悔を押し殺すように「はい」と答えただけであり、以後この事を誰も口にするものはなかった。
 しかし流にとって父親の台詞は絶対も同然である。もう二度とは繰り返すまいと誓いを立て、拳を他者に向けることを良しとはしなかった。
 元々護身術のために軽く格闘技は習っていたのだが、それに集中することにより流は心身を鍛えようとした。

 こうして同じ事をしないようにしてはいたのだが……流はまたやってしまった。
 それは流が少六に上がった後のことである。試合の最中、ルール違反をした相手に殴りかかり、徹底的に再起不能になるまで殴り続けた。
 審判は勿論、周囲のものも必死になって止めたのだが流はそれらをことごとく振り払ったのだ。
 その間流の口元は喜悦に歪み、最早当初の目的など忘れ去っているようだった。
 いくら腕が立つとはいえまだ12歳の少年に、大人たちは本気で震え上がったという。

 試合相手はあの時と同じく病院送りになり、その晩流は父親に呼び出された。
「……流、またやってしまったのだね、弱いもの虐めをしてはいけないと言ったのに」
「はい……」
 とても穏やかで優しい父親のことを、流は心の底から尊敬していた。
 滅多に怒ることはなく、声も決して荒らげること無い父親を落胆させたくはないと、今まで努力していたのだ。
 しかしこれでは……自分が情けない。
「いいかい流、弱いもの虐めをしてはいけないよ。ルール違反をしたらからと言って、それを罰するのは良いが、やり過ぎも良くない。それではただの暴力でしかない」


512:とらわれの螺旋 2/6
06/11/19 12:33:49 BBsRGb4v0
 言って父親は、流の顔を正面から覗き込んだ。
「流、答えなさい。相手を殴っているとき、どんな気分だった?どう思った?さあ」
「それは……」
 言って良いのだろうか、この事を。だが父親は常に正直を美徳としている。黙っているのは、罪悪感があった。
「……気持ち良かったです」
 相手が反則をしてまで自分に勝とうとしたことに腹を立て、思わずルールも無視して殴りかかった。だがしかし、殴られて痛みに顔を歪める相手を見た瞬間、頭がすうっと冷えた。
 泣き叫ぶ顔が見たいと、本能が囁く。流はそれに逆らうことなく、拳を繰り出した。
 拳が肉を穿つ音も、殴られたことにより泣き言を漏らす相手の声も、全てが快感だった。
 それに我を忘れ、流は相手を痛めつけたのだ。
「……俺は」
 言いかけた流の頭に、父親の掌がポンと置かれる。顔を上げると、優しげな目が自分を見下ろしていた。
「正直によく言った。だが……それではいけない。それではただの暴力でしかない。そんな本能に負けてはいけない。支配しなくては」
「支配……」
「付いてきなさい」
 流の父親は、そう言って流に背を向けた。流も慌てて、後を追い掛ける。
「私達は、何物にも支配されてはいけない。全てを支配し、コントロールする。ましてや自分を見失うなど、あってはならないことだ」
 流の父親はそう言いながら、この屋敷のもっとも奥まった部屋へと来た。ここは、確か絶対に立ち入ってはいけないと言われている。
 中に入って辺りを見渡すと奇妙な形をした器具があちこちにあり、中でも流の目を引いたのは、囚人を磔にするような台だった。
 冷たい石造りの部屋の中で、それは確かな存在感を持ってそこにあった。
「ここは……」
「仕置き部屋だ」


513:とらわれの螺旋 3/6
06/11/19 12:34:34 BBsRGb4v0
 言って父親は、ムチを手に取り鋭く振るった。ヒュン、とムチが空気を切り裂く音が、当たりに響く。
「いいかい、流。ルールを守れぬもの、過ちを犯したものは処罰されなければならない。しかしそれは、やりすぎればただの暴力だ。暴力と躾を、取り違えてはいけないよ」
「はい……」
 答えながら流は身震いした。それでは自分も仕置きを受けなければならないのだろうか。あのムチを、受けなくてはならないのだろうか。
「いや違う、お前は……躾をする側だ」
 父親がそう言うと同時に、部屋にあるもう一方のドアが開いた。
 見るとまだ若い男が、全裸に向かれ、両腕を後ろ手に拘束された状態で引きずられるようにして歩いてくる。あれは確か、最近入った給仕じゃなかったか。今日……食器を下げようとしてうっかり取り落としてしまっていた。
 その男を連れてきた執事は手慣れた様子で先程の台に男を拘束すると、恭しく頭を下げて出て行った。
 その姿に、流は己の気分が高揚するのを感じていた。口に猿轡を噛まされた男は、不安そうに震えながらこちらを見詰めている。
 その手に流の父親がムチを握らせた。革の感触に、背筋がゾクリとするのを感じる。
「振り下ろしなさい、真っ直ぐに」
「え……」
 思わず流が躊躇すると、流の父親は、流のその手をそっと包み込んだ。
「今日、彼は私達の目の前で過ちを犯した。それは、罰せられなければならないことなんだよ。そしてこれは……暴力じゃない」
「躾……」
「そうだ、だから、さあ振り下ろしなさい彼に」
「はい……」
 心臓が痛いくらい鼓動が早くなる。目の前に迫ってきた快感に、酔いそうだ。
 きっ、と目の前にいる男を見上げ、その肩口めがけてムチを振り下ろした。
「光栄に思いなさい。我が息子の、最初のムチを受けられることを」


514:とらわれの螺旋 4/6
06/11/19 12:35:23 BBsRGb4v0

―パシーン!

「ぐうっ!」
 ムチの痛みに男が顔を歪める。その表情に、頭がすうっと冷え、心臓の鼓動が跳ね上がるのが分かった。
 今度は横に、真っ直ぐ振るう。鮮やかな痕が、直線に男の胸に刻まれた。次にやや角度を変え、再度横方向に。歪なクロスが、男の胸に浮き上がる。
 後はもう、夢中だった。ムチを振るたび、男の体が左右に揺れる。恐怖と苦痛、怯えに歪むその顔を、もっと見たい。
 ゾクゾクした。自分より背も高く、年齢も上な男が自分の意のままになる。それはたまらない、快感だった。
―もっと。
 そう思ってムチを頭上に振り上げたとき、その手首をがっしりと掴まれた。まるで万力のような力で締め付け、離さない。
「……つっ」
 思わず手に握ったムチを、取り落としてしまった。すかさずそれを、父親が取り上げる。
「いけないな、流。またやりすぎてしまいそうになっただろう。それではただの暴力だ。暴力は……私達に相応しくない」
「はい……」
「ただ力任せに振るだけではダメだ。もっとムチの使い方を学べ。さて……」
 言って父親は男に近づくと、ムチの柄で男の顎を持ち上げ、猿轡を外した。
「どんな気分だ? 私の息子のムチを受けたのは」
「あ……うあ……」
 怯えのためか答えられない男の顎をぐいと掴み、その目を覗き込む。
「私は君に言ったはずだ。『君は正直者かね?』と。君はそれに頷いたのだから、答えなければならないよ。言いなさい」
「い……痛かった……です」
 男の頬を涙が伝う。それを目にして、流の背を電撃が走った。ゆっくりと、流の中に眠っていた怪物が目を覚ます。
 しかし今は、ぐっと押さえ込むときだ。拳を握り締め、男の顔を見上げる。それが一瞬、かつて出会った少年に重なった。


515:とらわれの螺旋 5/5
06/11/19 12:36:44 BBsRGb4v0
「痛かっただけかね? 自分よりもずっと幼くて、体格も劣る相手に痛めつけられたんだ。屈辱は感じなかったのか? 一切」
 流の父親の言葉に男は答えるのを躊躇したようだが、やがてゆっくりと頷いた。
「はい……」
「そうだ、それで良い。良いかな、君は今日だけじゃない。これまでにも何回か、似たようなことをしているだろう。もう二度と、過ちは犯してはならない。これはその、戒めだ」
「はい……」
 男が頷くのを確認し、父親はムチを構え直した。
「よろしい。ここからは私の仕事だ。流、お前はもう部屋に戻りなさい」
「はい、分かりました」
 父親の言葉に頷き、退出する。
 真っ直ぐに自分の部屋に向かうと、ベッドに倒れ込んだ。
 奇妙な興奮が、身体中を包んでいる。今までにないくらい、快感だった。
 身体が熱い。特に、下半身が痛いくらい脈打っている。
 わけも分からぬままとにかく熱を吐き出そうとそこに触れた。
 ジンジンと痺れる頭の中で、脳裏に浮かんだ幻影を追う。
「舜……」
 無意識の呟きが、空気中に溶けて消えた。


-----------------------------------------------------------------------------------


今回ここまで。
また、分数計算間違えたorz

516:風と木の名無しさん
06/11/19 12:42:00 cvOCdJSxO
乙乙!
流がムチ打たれる側じゃないってことは、まさか親父さんが自ら…!?
とか先走りしちゃったよorz


517:風と木の名無しさん
06/11/19 13:33:26 nnJy7Ew0O
螺旋たん萌えーっ!
鞭いいねぇ~。ぞくぞくしたよ。
流タンもお父様も格好よすぎ!
今回、舜タンの出番がなかったのが寂しかったけど、
鞭ふるってる流タンの過去話読めたから大満足!
もしかしたら、もう来てくれないんじゃって思ってたから、
続きが読めて本当に嬉しい。雰囲気あるし、キャラも、ストーリーも超好み!
文才ってある人にはあるんだなぁ…。オンでもオフでも、
こんな心惹かれる話は、読んだことがないよ!!
続きwktk!



518:風と木の名無しさん
06/11/19 18:40:20 tiY5AtZMO
>>509
は?誰アンタw 生理中かノイローゼ?

519:風と木の名無しさん
06/11/19 19:33:23 ElCu4Qw80
螺旋タン乙です!!
お父さんもドSなのかww
パパンの給仕調教も気になるよ(*´Д`)ハァハァ
続きwktkしながら待ってます!

520:リレー 分岐エンディング520 1/2
06/11/19 21:52:12 E9bpbYOU0
ハピEDで書いてみた
478から分岐

「お目覚めですか」
かけられた声に、はいと答えて居住まいを正すとこの寺の住職が顔を見せた。
「旅に耐えられる程度には回復したとはいえ、まだ完全に本調子とも言えない
のですから、どうか十分にお体を労られますよう」
今日まで親身になって世話をしてくれた住職に、礼の言葉と共に深々と頭を下げる。
そして、迎えを待つべく出立の支度を急いだ。
最近になってようやく取り乱すことなく思い起こせるようになった、あの忌まわしい出来事。
意地も誇りも、路傍の草のごとく無惨に踏みにじられ、あまりの辛さに意識を飛ばしていた
侍が気づいたときには、既にこの寺に身を置かれ、一体何があったのかとしばらくは混乱の
中にいた。
親切に接してくれた住職のことも当初は信じられず、手負いの獣が近づくものを威嚇する
ように神経を尖らせていた中、事情を明かしてくれたのは自分を地獄に落とした張本人だった。
あのとき、御前の屋敷に捕り方が踏み込んできたのだと。
以前から内偵が進められていた御前の不正の証拠が集まり、ご禁制の薬を始めとした品々の密貿易、
横領などのあまたの罪状で、現在、御前と一味は厳しい詮議を受けているという。
御前がおまえ目的で自分に近づいてきたのは偶然だが、隠密として御前の調べを進めるためには懐に
潜り込むのが最も早く、そのためにおまえを巻き込むのは断腸の思いだった、だが、おまえが自分を
恨むのは当然のこと、自分のことはおまえの好きなようにしてくれと頭を下げる従兄に、侍は混乱した。
役目上仕方なくと言われても、はいそうですかと簡単に納得できるほどの、生やさしい目にあわされた
のではない。
泣き叫んで従兄を打ち据え、顔も見たくないと背を向けた。
絶対に許さないとかたくなに殻に閉じこもっていた侍だが、それを破ったのもまた従兄。
多忙な役目の合間を縫って、この山深い寺まで足繁く通って侍の様子を伺い、都度に住職に頭を下げて
いたという。
そうして一月二月と経つうち、侍の硬い心はほぐれ、従兄とようやく平静に向き合えるようになった。
心の内を明かし合い、二人きりでしばらく旅をしないかと誘われたのを嬉しく思い、その夜、身体を
繋いだ。

521:リレー 分岐エンディング520 2/2
06/11/19 21:53:41 E9bpbYOU0
『無理はするな』『嫌ならば嫌と言ってくれ』『お前の良いようにしてやりたいのだ』
ただただ侍の心を、身体を気遣ういたわりに満ちた交わり。
従兄の楔ははち切れんばかりであったのに、繋がろうとせず身体を引こうとした従兄を誘ったのは侍だった。
飲み込んだ従兄の楔が愛おしく、奥へ到達した瞬間には自らを弾けさせてしまった。
あまりのことにうろたえる侍を宥め、始めはゆっくりと動いていたが、我慢できなくなったのか、強く
突き上げて来る従兄の背にすがりつき、堪えきれずに声を上げた。
すれ違った日々を埋めるかのように、一時も離れずに腰を揺すった。
楔を食いちぎらんばかりに締め上げたかと思うと、やわやわと舐め上げる。従兄の最初の精を奥深くで
受け止めると、回した手で背に爪を立てて達した。
その後はあまり記憶がないが、何度か身体を離そうとした従兄に、抜かないでくれと取りすがって、
一晩中繋がったままでいたことだけは覚えている。

それを思い起こして、侍は頬を染めた。
そこへかけられた従兄が来たと告げる声に、慌てて顔を取り繕って外へ出る。
ここにいる間、決して絶やさぬ優しげな笑みを向ける従兄と並び、住職に今日までの礼を述べると、二人は
肩を並べて寺の下を流れる川へ向かった。
「まだ無理は禁物だからな。隣の宿場町までは船で川伝いに下ろう。」
肩に手を回されたが、一瞬従兄の顔が曇ったのを侍は見逃さなかった。
それなりに体力がついたとは言え、以前の鍛え上げられた身体からは比べものにならぬほど、侍はやせ細り、
筋肉が戻ることもなかった。
従兄は知らぬことだが、医術にも通じているという住職から元のような頑丈な身体を取り戻すのは、おそらく
無理と言われている。
あの地獄の仕打ちの中、含まされたご禁制の薬が侍の身体を壊してしまったのだろう。
だが、そのことを従兄に告げる気はない。引き替えにかけがえのないものを手にすることが出来たのだから。
殊更に明るい声で、侍はどんな町だろうか、楽しみだと答えた。

あにさまと共に居られるのなら、他には何も要りません。

以上です

522:風と木の名無しさん
06/11/19 22:24:48 u8Akw1vY0
あぁ…こんなほのぼのな終わりもまたイイ…。きゅんとする。

523:風と木の名無しさん
06/11/19 23:13:47 ieuYLOpc0
>>520
乙です
ハッピーエンドも(・∀・)イイ!

524:風と木の名無しさん
06/11/19 23:15:07 e9gIDv5F0
ほんまや。
あの鬼畜な世界が浄化されちまっている‥、ぽわ~ん。

525:風と木の名無しさん
06/11/19 23:25:37 v+7PwQI60
いろんなENDが見られるのもリレーならではで嬉スィ

526:風と木の名無しさん
06/11/19 23:33:21 XVU1PovV0
新たな別EDキテター!!
>>520
乙でした。ハッピーエンドみたかったので嬉しかったです。

またリレーの続きまってます。

527:リレー 分岐エンディング527
06/11/20 00:53:32 cwhzHyksO
478から分岐

「そなたのことであろう?」
…まで読んで俺は、エロが濃ゆいなと思った。山田氏らしい。
山田氏は、弱小腐兄サークル・ヴィッパーの字書きで、俺は絵描きだ。
もうすぐ、冬コミ。印刷所さんの締切がせまっている。
だがしかし、俺は侍を犯す従兄弟の表情を描きあぐねていた。
山田氏曰く、「侍は武人、従兄弟は凡人、御前は変人」らしい。
わかるようで、わからない。俺的には、従兄弟は気がつこうとしていないだけで、
絶対、侍が好きだと思うのだが。違うのか!?
俺は従兄弟の目元にアセロラティアーズを描き込みたい気分なのだが……。
「山田氏、ラストはどうなるのだ?」
尋ねた俺に山田氏は言った。
「侍も御前も従兄弟も死ぬ」
「何故だ!?死亡フラグなど立っていないではないか」
「大火だよ。後に明暦の大火と呼ばれる大火事で、
江戸の町は突如、炎に包まれる」
「巻き込まれるのか!?」
「そうだ。御前はとっとと逃げ出すが、お気に入りの人形を見捨てられず引き返し、
侍を連れ出そうとする。御前と侍の上に落ちてくる炎に包まれた梁。
二人をかばう従兄弟。従兄弟の命と引き替えに、座敷から脱出するも、
外は火の海。煙に巻かれ御前も侍もあぼんだ」
絶句した俺に、山田氏は付け加えた。
「ラストに、大きな笹舟に乗って談笑しながら、
三途の川を渡っている三人の絵をキボンヌ」

おしまい


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