07/12/24 22:50:01 0
「お前なんか、昔はこの辺りまでしかなかったくせに」
不機嫌そうな声で彼女はそう言って、自分のバストの下辺りをとん、と叩いた。
なにも「そういえば俺たち、身長同じくらいだな」とか言っただけでそんなに機嫌悪くならなくてもいいのに。
まあ確かに、最初に遭遇した時点じゃ俺は相当チビだったし向こうは随分と大きく見えてた。
何せ、獣人とはいえ兄貴より背の高い女の人を見たのは初めてだったから驚いたし―
それ以上に、すごく怖かった。
人間と似てるのによく見れば全然違うその姿、大きな手と鋭い爪とか、ずらりと並んだ尖った牙とか
ぎらぎらした目とか、肉食獣そのものみたいな身のこなしとかが気味悪くて、
そして振り回す刃物が、駆るガンメンが容赦も躊躇いも無く人間の命を刈り取ろうとするのがとにかく恐ろしくて。
すっかりビビって逃げ出しかけて、兄貴やヨーコに気合入れられた事もあったっけ。
だけど、何度も戦いを重ねるうちに力が追いついて。
七年の歳月を重ねた頃には背も追いついて。
今こうして、すぐ側に立って不機嫌そうな顔をしている彼女はほとんど等身大の存在だ。
だいたい同じくらいの位置に肩が並び、顔を見合わせればいとも簡単に視線が合う。
お互い強いところも弱いところも沢山見たし、見せた。背中を預けても安心できる。もう怖くはない。
「たかだか7年かそこらでやたらと縦に伸びたからと言っていい気になるな。
背の高さが並んだ程度で対等になったと勘違いされては困る」
「身長が並んだだけでそんなにムキになられても困るよ。別にいいじゃないか、
同じくらいだと話したり顔見たりするのに楽だしそれに」
「それに、何だ」
まだまだ不機嫌そうにギロリと睨んでくるヴィラルに、中途半端な笑い顔で誤魔化して残りの言葉を濁す。
だって「キスとかしやすそうだよね」とか言ったら絶対、半殺しにされるに違いないし。
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年上のお姉さんを身長で追い越すのは男のロマンだと思うわけで。