07/12/08 17:23:32 0
ここでアスカに「ごめん」と一言謝ってシンジを抱きしめたりできるような打算的な小賢しさや感情制御能力があれば、
シンジは依存的で少しばかり愚かな子供なので、案外簡単に元鞘に収まったりするのだろうが
アスカも大人になれていない子供で、そういった誤魔化し、自分に嘘をつき、自分を殺す、大人の特有の弱さと汚さは持ち合わせていなかった。
大人子供関係なく、それ以前に自分がそういう誤魔化しをされるのが大嫌いだからやらない。
自分が大嫌いなそれをするような汚い自分をきっと、アスカは許せないだろう。
「…」
アスカは痺れた手を握った。
いい加減、いつまでもその時間空間が続くわけではないから、何か次の行動を起こさなければならない。
喉が疼くような感覚がして、アスカに行動を急かす。
少なくともここで逃げだすことなどできない。
それもアスカにとって汚いことで、プライドが許さない。
一番精神の奥底にある、最低限の自己正義で妥協などできないものだった。
それに今逃げ出せば、シンジに対する自分の気持ちを全て否定することになってしまう。
いつの間にか、こんなにも、気が狂いそうなほど、愛していて、この憎らしいほどの感情がなかったのと同じになってしまう。
わりと悲惨な人生の中で満たされた幸せを感じて過ごした時間は嘘になって、今日、自分が嫉妬に苦しんだ意味も、シンジを打った意味すらなくなってしまう。
アスカの暴挙の理由がシンジの言う「言うことをきかないから」というとんでもなく傲慢なものを真実にしてしまう。
それも全く入っていないとは言えないが、絶対にそれだけではないからアスカは逃げない。
少し意地にもなっているのかもしれない。
しかし事実として逃げ出せば、本当にどこまでも何にもならない。
それを理解しているアスカは死んでも逃げ出したくなかった。
この気持ちは簡単にそんなことが出来る程軽いものではない、決してその程度のものではない。