06/06/04 21:12:25 IJu+Gs65
心の傷は、時間が経てば癒えるのかと思ったけど、膿はますますひどくなるばかりで、
ますますアナタが恋しくなった。
それに、これ以上、奈々のそばにいたら、自分がなにするか分からないのが怖くなった。
キスだけじゃなく、なにか、もっととんでもない過ちを犯してしまいそうで…。
どんどん可愛くなっていく奈々を傍で見ているだけで、アタシの感情の風船は
今にも破裂しそうだったから。―だから、アナタの前から消えていなくなるよ。
『………瞳っ!』
「奈々は、受かってるといいね桜女に…。うん…。………それじゃ、バイバイ。」
溢れてくる涙に堪えきれなくなって、それだけ言うと、携帯の電源を切った。
そのままべットに投げ捨てる。
思い切り投げたせいで携帯はスプリングに弾んで壁に激突した。凄い音。
壊れちゃったかもしれない。壊れちゃったんじゃなく、わざと壊したんだ。
ずっと大事に築き上げてきたやさしい関係をこの手で壊してしまった…。
急激に力が抜けてきて、膝からがくんと崩れ落ちる。
こみ上げてくる涙が、ひっきりなしに溢れ出た。
しまいには、「わー」と大声を張り上げて迷子になった子供のように泣きじゃくった。
ベットに突っ伏して、しゃっくりのように喉をしゃくりあげながら、強く想う。
きっといまごろ、自分を責めているだろう奈々のことを。
泣いているかもしれない…。そういえば、ずいぶんと奈々の涙を見たことがなかった
ことを思い出した。
子供の頃は、奈々を泣かせる男の子から彼女を守るためのナイトだったはずなのに、
とうとう自分が泣かせるようなことをしてしまった。
もう、傍にいる資格なんてないよね。
137:瞳×奈々
06/06/04 21:15:19 IJu+Gs65
でも、彼女は知らない…。
どうしてアタシが、奈々にあそこまで桜女を薦めたのかを…。
制服も可愛かったのもあるけど、桜女は、伝統あるお嬢様高だった。
そこらへんの女子高よりも規律が厳しくて…あそこならば、まだ男の子と出会う
チャンスは少ないだろうと思った。
大学までずっと女の子だけだから、奥手な奈々に彼氏ができないように、男の子
から少しでも遠ざけようと画策したんだ。
そんな勝手な独りよがりな思いで、アタシは奈々を陥れた。
奈々、アタシを許さなくていいよ。アタシを恨んで、嫌っていいから…。
でも、奈々がそんなことをできる子じゃないということは、誰よりもこのアタシが、
一番よく分かっていた。
奈々は、この先、自分のせいだと悔やみ続けるだろう…。
そんなふうに彼女を傷つけるとわかっていて、どうして、アタシはこんな真似をして
しまったのか。いや違う…。アタシは、奈々の心に傷を負わせたかったんだ…。奈々の
真っ白で汚れを知らない純真な彼女にアタシという染みを作りたかった。
好きよ、奈々。こんな不器用な形でしか表現できなかったけど、今でもアタシは、
アナタのことが大好き。
138:瞳×奈々
06/06/04 21:18:28 IJu+Gs65
新しい高校は、たった一人で不安かもしれないけど、アナタならきっと大丈夫よ。
素直で、明るくて、誰にでもやさしい奈々のことだものすぐに友達もできるって。
それに新しい環境に馴染めば、アタシとのことなんて、そのうち忘れちゃうよ…。
アタシの告白を簡単に忘れられたようにね……。
そう思うと悲しくて悔しくて、きつく唇を噛み締めた。ツーと、頬に新しい涙が
零れ落ちる。
そこは、アタシだけの指定席だったはずなのに……。奈々の隣はアタシの……。
その大切な場所が誰かのものになるのかと思ったら、堪らなかった。
壊れてしまった携帯はもう鳴らない。
奈々とももう二度と逢えないかもしれない。
でも両方とも壊したのは自分だ。自分で選んだ結末なのにどうしてだか涙が止ま
らなかった。
この涙を止められるのは奈々だけ…。他には誰もいない。
ねぇ、奈々。視界がぼやけて、明日なんかみえないよ…。
奈々が居ない世界に生きている意味なんてあるのかな…?
139:ハルヒ
06/06/04 21:22:02 IJu+Gs65
『ともだちじゃなくても。』へ…続くな感じで。
最後まで読んでくれた人ありがとうございます。
微妙な終わり方ですいません…。力不足です…。
瞳×奈々は、特に大好きなカプで、瞳の切ない顔がなんか好きです。いろいろと妄想
しちゃって遊んでます。
次は…、って自分のスレみたいにしちゃってますがぁ、「くすりゆびにキスしたら」
の暗転部分。(よーするに初エッチあたり?)をやってみたいなぁとか思ってるんです
けど、この二人で、どこまでエロをしちゃってよいものかと…。(;´д`)
まぁ、やるからにはガッツリな感じでいきますけどね。(*>_<*)
では、また近いうちに。
140:名無しさん@秘密の花園
06/06/04 21:30:30 DJ+PLEk6
GJGJ!
お疲れ様でした
141:名無しさん@秘密の花園
06/06/04 22:02:51 ojm1w3Ol
GJ!待ってた甲斐がありました!
つ、次はエロですか?!
ガッツりな感じ・・・すごく楽しみだ~
142:名無しさん@秘密の花園
06/06/05 01:47:03 lADfvJnb
乙です!
読みながらマジ泣きしてしまいました・・・
自分の昔とみごとにはまっちゃってw
エロとんでもなく期待してます、頑張ってくださーい
143:名無しさん@秘密の花園
06/06/06 19:03:10 By7BI9ak
GJGJGJGJGJGJ!!!!!!個人的に終わり方微妙とは思わん
144:名無しさん@秘密の花園
06/06/06 20:32:54 vpjrlKUp
GJ!!
クオリティ高ス!!
145:名無しさん@秘密の花園
06/06/07 19:37:21 sV83NQc1
うわわ~っ、すげー良かったです!
GJ!
全米が泣けた
146:名無しさん@秘密の花園
06/06/09 05:50:04 ei0Ys8Ca
需要あるかわからないけど、「硝子の艦隊」パロ投下してもよろしいですか?
147:名無しさん@秘密の花園
06/06/09 22:32:55 7s0uCGyp
是非とも
148:名無しさん@秘密の花園
06/06/09 23:27:23 yvMpUJ6e
ばっち来い
149:名無しさん@秘密の花園
06/06/15 19:22:24 LAs1F1Cu
ここ凄過ぎ!!!
150:ハルヒ
06/06/15 20:33:33 sQwKtc7C
瞳×奈々の第二弾が出来たので投下します。
>146さん お先に失礼しま-す。(笑
151:臆病な恋心
06/06/15 20:37:07 sQwKtc7C
ほんのりと汗ばむ肌は、透き通るように白く。
さらさらの黒髪に指を通すと、ふわりとシャンプーの甘い香りが漂った。
可愛いつむじにキスをして…恥ずかしそうに俯く顔をそっと持ち上げる。
「………なーな?」
そうして、愛しい子の名を呼ぶ。
彼女は、泣きそうに眸を潤ませながら、ジッとアタシをみた。
吸い込まれてしまいそうな大きな水晶。ちょっと不貞腐れたように唇を尖らせて。
「………いい?」
短い単語だけでも十分に真意が伝わったのか、真っ黒な眸が戸惑うように虚ろに揺れた。
あぁ、だいじょうぶよ。
そんなに怖いことしないわ。
心配しないで…ねっ、奈々?
このままでも十分ドキドキするけど、まだ、物足りなかった。
こんな邪魔なもの脱いじゃいましょうよ。そうしたら、お互いの境目がわからなく
なるまで強く抱きしめられる…。
想いが伝わったのか、こくんて小さく頷いてみせる少女に微笑み掛けながら、華奢な
背中に手をまわした。まるで着ぐるみでも脱がすみたいにじりじりとワンピースの
チャックを下ろしていく。
最後まで行き着く前に、ストンと二人の足元に落ちていった…。
ブラは着けていなかった…。
薄い水色のボーダーのパンツ姿の少女が、落ちつかなそうに立っている。
まだ、膨らみきれていない幼い胸をばってんで隠すように腕を組む。それだけでも
十分に扇情的だけど、もう一つの薄い布が邪魔だった。
目の前でモジモジと脚をクロスしている少女に視線を向ける。
152:臆病な恋心
06/06/15 20:40:32 sQwKtc7C
無言のまま首を傾げて問いかけると、眉間に皺を寄せて、今度こそ泣きそうに
顔を歪ませた。「大丈夫よ…」安心させるようにとびきりの笑顔を向けて、有無
を言わせぬままゴムに手を掛けた。
彼女が怯えないようゆっくりと脱がせるつもりが、感情が抑えきれなくなって
性急になってしまった。
すらりと伸びる二本の脚の間に、うっすらと翳る秘密の場所が現れた。
思わずごくんて、喉がなる。
ほんのりと立ち込める甘酸っぱい匂いを深呼吸でもするように深く吸い込んで。
奈々、そう、いい子ね…。
もう、そんなに怖がらなくていいの…。
怖いことなんてなにもしないわ。
いまから、アタシが、気持ちいことしてあげる。
小刻みに震える手を取って、ベットに座らせてからそっと唇を合わせた。
ゆっくりと舌を差し込んで、怯えるように奥に隠れるそれを絡めとる。
キスで徐々に緊張を解しながら、胸をひた隠そうとする両手をやさしく包んで、
そっと、シーツに横たえさせた。
体重をかけないよう気を使いながら、そのままちいさな身体に覆いかぶさる。
すべすべの肌が自分の肌とよく馴染んで気持ちよかった。
彼女のちいさな胸が、アタシの心臓に当たって二人の鼓動が呼応する。
さっきからドキドキが止まらない。
「奈々、奈々、好き、好きよ。やさしくするから……。」
「……んっ。瞳、瞳っ、あっ、アタシも……好きぃ…。」
「うれしい……。すごく可愛い奈々……。」
彼女の息遣いをもっと感じようと心臓に手をあてた瞬間、頭の上でじりじりと
けたたましい音が鳴り響いた――
153:臆病な恋心
06/06/15 20:44:43 sQwKtc7C
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・
「ハッ!!!…………なっ、うっそぉ、夢~っ?!!」
ピンク色の薄手のカーテンから眩しい光が差し込んでいる。
チュンチュンとBGMのようにスズメの合唱が始まっている。時折、「カーァ」と、
カラスが間抜けな鳴き声の合いの手を入れる。
アタシは、枕に突っ伏しながらがっくりと大きくうな垂れた。
そんな~、うそでしょう~。
いまのが夢オチだなんて…。
そんなのありぃ~~っ!!!
あれが、夢だったなんて……。
ていうか、あまりにもリアルすぎよっ!
まるで、奈々がここにいたみたいなさ……。
小学一年生のときに初めて奈々と出逢ったときから、彼女を想い続けてちょうど10年。
長いこと想い続けた初恋だった…。でも、それを彼女に伝えるつもりはなかった。
アタシは女だし、相手も女の子…。それだけで、はなっから恋愛対象に見られて
いないの分かっていたし、いくら好きでも、女の子と普通に恋愛ができるとは
アタシ自身思っていなかった。
それでも、日増しに膨らんでいく奈々への想いに堪えられなくなって…。友達と
して心に偽ってまで一緒にいるのがだんだん息苦しくなってきた。
とうとう中三の夏、その想いが一気に爆発した。
勢いのまま彼女に告白をしたけど、あっさりと玉砕。
それからは絶望の日々を送っていたのだけど……。
154:臆病な恋心
06/06/15 20:47:54 sQwKtc7C
でも、神様はいたんだ。
いったいいままでどこに隠れていたのよ! いるならもうちょっと早く現れて欲しか
った…なんて言ったらバチが当たるかもしれないけれど。バスケで言うなれば、
試合終了時間ぎりぎりのスリーポイントシュートが決まったときみたいに、とに
かくあれは、大逆転勝利だった。
紫陽花の咲き誇る季節、アタシは、「親友」から「恋人」へと格上げされた。
そして、早いものであれから6ヶ月が経つ。
アタシの頭のなかは、毎日、夢でみたことばかりを考えている…。
「……はあぁ…。」
なんだ夢か……。
しかも、超いいところで…。どうせならもう少しくらい待ってくれてもいいのにぃ。
もうっ、夢でもなんでもいいからあの続きを見させてよっ!
もう一度寝れば続きから見れるかなと思い、枕に突っ伏すけれど、そうしたら、
どうせママが叩き起こしに来るに違いないと思い直して早々に諦めた。
だんだん音が大きくなっていく目覚まし時計を恨めしげに叩くと、ベットから
這い出して大きく伸びをした。
関節がポキポキとなる。なんか、また身長が伸びているような気がする…。
パジャマを乱暴に脱ぎ捨てて、その状況にアタシは、カーと赤面した。
下着の大事な部分が、粗相をしてしまったようにぐっしょりと濡れていたから。
想像だけで、こんなになってしまう身体が恥ずかしいよ…。
実際に、奈々とそういう状況になったらアタシはどうなっちゃうんだろうって思う。
そう……。付き合って半年になる私たちは、まだ、キス止まりの関係だった――。
155:臆病な恋心
06/06/15 20:50:57 sQwKtc7C
◇ ◇ ◇ ◇
「おはよっ、瞳っ!」
ううっ!!! 笑顔が眩しいよ。
お願いだからそんな天使のような顔して、笑いかけないで。
今朝、あんな夢をみてしまった疚しさからか、恋人の顔がまともに見られない。
夢の中の奈々は、やけにリアルで、それは、自分でも感心するくらいのものだった。
はあぁ…。やっぱりこれって願望なんだよね…?
だって、こうしている今も……。
奈々とキスしたくて。
奈々をギュっと抱きしめたくて。
奈々を裸にして、いろんなところを触りたいなんて、不埒なことを朝っぱらから考え
ているんだよ。
人がいなければ、キスくらい軽くチュってしちゃっていたかもしれない。
ちょっとくらい遅刻してもいいから、トイレに付き合ってといってヤッちゃおう
かななんて。
四六時中そんなことばかり考えているアタシって異常者なのかな? 変態??
でも、ここのところ電話もメールも控えていたからフラストレーションが溜まっ
ているんだわ…なんて、そんなの言い訳にすぎないか…。
「おはよっ、奈々。ごめん、ちょっと出るの遅くなっちゃって…。」
高校は別々だけど、同じ路線の電車を利用するので、いつも駅で待ち合わせしていた。
「ゼイゼイ」と走りこんできたアタシに、奈々は、ハンカチでおでこを拭ってくれる。
156:臆病な恋心
06/06/15 20:55:34 sQwKtc7C
すごくよく似合っているセーラー服は、何度見ても可愛い。
ほんとうならば、アタシもそれを着て同じ高校へ行くはずだった。けれど、残念な
がら適わなかった…。もうちょっと早くに二人の気持ちが通じていれば、こんな
ことにはならなかったのに…と思うと、複雑な心境であるけど。
でも、いまは、それでよかったと思っている。
修学旅行に一緒に行けなくても、体育祭も学園祭もお昼の時間も…離れ離れだけど、
ずっと奈々の傍にいたらば、アタシは、一日中、いやらしいことを考えて過ごさな
ければいけなかっただろうから。そんなの精神上にもよくないと思うし…。
うん…。だから、この距離感が、いまのアタシにはちょうどよかったんだよね…?
会えない時間の分だけ、奈々のことを考える時間が長くなる…。それも幸せ。
なーんて、どう考えても負け惜しみか…。
「ところで、奈々。昨日のテストはどうだったの…? 数学はちゃんとできた?」
「うっ…。もう、その話はしないでよっ。数学は捨てたからいいの……。」
自信がないと昨日言ってたことを思い出して尋ねると、バシッと腕を叩かれた。
桜女は、ただいま中間テストの真っ最中で。
東峰は、二期制の高校なので、テストは年に四度しかなくてラッキーだったけど、
奈々たちは大変そうだ。なんか、日に日にやつれていってるような気がするけど…
ホントに大丈夫ぅ?
今日も夜遅くまで勉強してたのかな? 一夜漬けが大得意の彼女のことだから、ちょ
っと心配なんだ。
157:臆病な恋心
06/06/15 21:00:16 sQwKtc7C
「でも、今日で終わりなんだよね? 今日の教科はなんだっけ…?」
「………リーダーと、世界史と、古文……ひどいよ、苦手なのが全部…。」
「あはっ。そりゃ大変だぁ…。」
「もうっ、瞳ったら、そんな人事みたいにぃ~っ!」
う~~ん。でも、所詮人事だからさ…。
アタシも一緒にテスト受けてたらば、なにかしら奈々の手助けできたかもしれない
けど、いまは、なにもできないし。同じ教科書をやっているからって進み具合とか
もぜんぜん違うだろうしね…。こういうとき、ちょっと、疎外感を感じて切なくなる。
でも、それも今日で終わり。
アタシに取ってもこの二週間は長かった…。朝だけしか奈々に逢えないなんて地獄の
ようなものだ。
これで、やっと、通常生活に戻れる。奈々に負けないくらいうれしいよぅ。
滑り込んできた黄色い電車に乗り込みながら、自然と奈々をガードする格好になる。
可愛い恋人が痴漢に遭わないように…というよりも、誰の目にも触れさせないようにだ。
だって、奈々ったら、こんなに可愛いんだもの。
誰にいつ目を付けられるかわからないじゃない。
どさくさに紛れて、奈々の身体をギュと抱きしめると、甘いいい匂いがした。
「ふぅ~、込んでるね。そうだ、今日って瞳、部活の日だっけ?」
「うんん…。今日は、木曜日だから休みだよ?」
大きな大会が終わったばかりだから、そんなに忙しくはないんだ。
「じゃあさ、駅で待っててもいい? 久しぶりにどこか行こうよ!」
「えっ…。でも、アタシ、授業あるから、2時間くらい待っているようじゃない?」
「いいよー、そのくらい学校で時間潰してるし…。だって、久しぶりに瞳とゆっ
くりしたいんだもんっ。」
「えっーー!!」
158:臆病な恋心
06/06/15 21:03:20 sQwKtc7C
思わず大きい声出しちゃって、奈々のちいさな左手に口元を覆われた。
みんなの視線が痛い。
ご、ごめん…。でも、だって、奈々ったら、急に可愛いこと言うんだもの…。
恥ずかしいこと言ってしまったという自覚があるのか、少女は、耳まで真っ赤に
染めながら、ぷいと顔を背けて車窓を眺めている。
あぁ、どうして、こんなに可愛いのよ。
もともとちいさくて可愛い女の子だったけど、最近、日に日に可愛さが増している
ような気がする。
なんか、こうしている間にも、誰かが奈々に目をつけて狙ってるんじゃないかって
疑心暗鬼にもなる。
だってさ、世の中には半分の男がいて、その中の誰が奈々に目をつけるか分かっ
たものじゃないじゃない?
いや、半分どころじゃないかも…。アタシみたいなのも中にはいるだろうから
女だって、侮れないよ。アタシの知らない学校の中にだって、奈々を好きな子とか
いるかもしれない。
小動物みたいな彼女は、先輩とかに可愛がられるタイプだし、明るくて可愛い少女
は、同級生とかにだって、好かれるだろう…。よく会話に出てくる“安倍ちゃん”
だっけ? 桜女の学祭でお姫様役をやった可愛い子だ。一番の友達になったとか
奈々は言ってたけど妖しいものだよ。奈々に気持ちはなくても、相手は、どう思
っているかなんて分からないじゃない? 奈々、そういうの鈍そうだし…。
159:臆病な恋心
06/06/15 21:04:48 sQwKtc7C
奈々の気持ちを信じてないわけじゃないけど、いつまで経っても不安は拭えない。
いつか誰かが奈々の前に現れて、ひょっこり持ってかれちゃうじゃないかって思う
と夜も眠れなくなるほど怖くなる。
これまでの自分を考えたら、今の関係でも十分にシアワセだけど…。
最近、ちょっと欲張りになってきているのかなぁ…。
だからこそ、二人の間にもっと、確かなものが欲しいのかもしれない。
そのいち早い手段がエッチで、だから奈々としたいのかなと考えて、自分の感情
なのによく分からなくなる――。
◇ ◇ ◇ ◇
160:臆病な恋心
06/06/15 21:08:58 sQwKtc7C
晴れて、親友から恋人になったアタシたち。
毎朝、駅で待ち合わせして学校に行く。放課後は、大抵部活があるから帰りは
バラバラだけど、週に3日くらいは、奈々のおうちに寄って、一緒に晩御飯を
いただいたりもする。
隔週で部活のない日の日曜日は、おもいきりデートする。
映画に行ったり、街に冷やかしに行ったり、カラオケは…二人のときはあまりしな
いかな?
お互い親からお小遣いをもらっている身分だし、なかなかバイトする時間もなくて、
そんなにお金を掛けた交際はできないけれど、それはそれでうまくいっていた。
友達のだった頃の関係とどう違ってるのかなってときどき思うことあるけど、やっぱ
りこういうとき。
「………っ、」
甘い唇。
なんか、ふわふわのお菓子みたい。
お菓子は辛いほうが好みだけど、奈々は別格。
「大好き奈々。会いたかった…。ずっと会えなくて寂しかった…。」
「………んっ。」
駅ビルの本屋さんで待ち合わせして、家の近くの大きな公園を手を繋ぎながら散歩
した。女の子同士が手を繋いでいても、仲のいい友達同士だという目でしかみられ
ない。これが、男の子同士だったらば、そうはいかなかっただろうとありもしない
ことを考えて一人ほくそ笑んだ。ただの散歩は、仲良くウォーキングする老夫婦と
たいして変わらないようだけど、気持ちがぜんぜん違うからこれもデート。
奈々といると愉しい会話は絶えなくて…。でも、あまりに無邪気に笑顔を振りまく
ものだからとうとう堪えきれなくなって、部屋に誘っちゃった…。
だって、公園じゃさすがに人目があって、こんなことできないものね。
161:臆病な恋心
06/06/15 21:12:28 sQwKtc7C
ドアを閉めたとたん、ギュっと抱きしめた。
唇を交わしながら、背中に腕が回ってくるのがうれしくてなんだか涙が出そうになる。
もっと、もっと…と、自分の中の足りないなにかを埋めるように貪りあっていくうち
に口の中に溜まった唾液が、どちらのものなのか分からなくなった。
息が続かなくなってようやく唇を離すと、彼女を見下ろした。
白い頬が、さーとピンク色に染まっている。耳の中まで真っ赤っかだ。いつまで
も初々しい反応に胸の中がきゅんてする。
ほんとに可愛いなぁ…。いつになったら慣れてくれるのだろう。
もう一歩で零れそうな涙が、寸前で我慢してた。
キスしただけで、いつも泣きそうになってしまうちいさな恋人が愛しかった。
もっといろいろと触れてみたくて、そうなったら奈々がどうなるのか知りたくて。
うっすらと染まるピンク色に頬に手を伸ばした。
でも、アタシの気持ちの変化を敏感に察したのか、彼女は、ふいと視線を逸らせてしまう。
アタシは、バレないように内心大きく息をついて、名残惜しげに彼女から離れた。
今日もおあずけ…。あぁ、なんかアタシって、さかってる犬みたい…?
奈々はそういう気持ちになったりしないのかな。
可愛い顔を見ているとまた襲いたい気分になっちゃうからと、気分を一心させる。
「あーなんか、アタシ、喉渇いちゃった! 奈々は? なにか飲む?」
「あ……うん…。」
一瞬だけ、ひどくがっかりしたように見えたのは気のせいよね?
「なんにする? コーヒー、紅茶、オレンジ、アップル、コーラ、おーいお茶。今日は、
なんでもありますよ?」
「あははっ。喫茶店みたいだね…。ん~、じゃ、紅茶で…。」
「かしこまりました。―あっ、今日は、レモンあるんだ。レモンティにする?」
「うん。ありがとー。」
162:臆病な恋心
06/06/15 21:15:53 sQwKtc7C
笑いながら、明らかにホッとしたような顔に、ちょっと傷ついた。
でも、悟られないように作り笑顔を振りまく。奈々は、アタシの感情になんて
気づかない。
同じ過ちは二度と繰り返したくない。衝動でキスをして、あんなことになったのだ
からと自分に自制を掛ける。
後ろ手にドアを閉め、部屋の前で佇みながら、まだ濡れている自分の唇を指先でな
ぞった。
奈々の温もりが残っていた。人差し指についたそれを口に含むと、ほんのりと甘い
味がした。
キスは、だいじょうぶで。
最近は、ちょっとくらいハードなものをしても許してくれる。
でも、それ以上アタシが踏み込もうとすると、奈々は、さっきみたいな虚ろな表情
をする。最初は、未知の世界を体験するのが怖いのかなと思ったけど、なんかそう
でもないみたいで…。
奈々は、アタシとそういうことをするの厭なのかな?
まだ高校一年生だし、関係を持つには早いのかも…とも思うけれど、人と比べるの
とかはなんか違うのはわかってるけど、経験した子なんて周りにいっぱいいる。
相手のことが好きならば、キスしたいと思うし、抱きしめたいと思うのはごく自然
なことだと思う。
大人とか子供とか関係ないよ。じゃあ、どうして奈々はダメなんだろう……。
やっぱり、アタシのことなんて好きじゃないのかな?
それとも、女だからとか?
このことを考え出すと、思考が堂々巡りになっていつも暗く落ち込んでしまう。
163:臆病な恋心
06/06/15 21:19:45 sQwKtc7C
自分には負い目があった。
奈々と再会したあの日、彼女の部屋で二人の写真がまだ飾ってあるのを見たとき、
奈々が、まだアタシのことを忘れていないと確信した。だから、ラストチャンスに掛けた。
アタシの気持ちをもう一度気づかせたかった。
奈々と会えなくなって数ヶ月、一日たりとも奈々のことを忘れた日などなかったから。
『瞳がアタシの知らない子といるのも、アタシの知らないうちに髪が短くなって
いるのも…毎日、瞳のことばかり考えているのに……こんなに長く会えないのは…いや』
だから、彼女の悲痛な叫び声を聞いたとき、泣きたいほどうれしかった。
アタシは、ずっと云えなかったこれまでの気持ちを洗いざらいぶちまけて、出逢っ
て初めて奈々の前で涙をみせた。彼女は、驚いていたけど、うれしそうだった…。
自分の感情を剥き出しにしながら、でも、心のどこかで、アタシは、こうなるように
仕向けたんだ。
“押してもだめなら引いてみな”昔からよく言われる技法を使って。
こんなに見事に成功するとは思っていなかったけど。
涙を流しながら、心の裏側では、そんな疚しい駆け引きがあったなんて奈々は
知らないから…。
好きな人を手に入れるためなら手段を選ばない。アタシは、そういう人間なんだよ。
なんか寂しいよ奈々…。
奈々がこんなに近くにいるのに、ひどく遠く感じるんだ。
◇ ◇ ◇ ◇
164:臆病な恋心
06/06/15 21:22:34 sQwKtc7C
ようやく桜女の試験が終わって、お疲れさま会と称して、遊園地にでも誘おうかな
と、日曜日のデートプランをあれこれ考えていた矢先のことだった。
部活の休憩時間、奈々からメールが入っていたことに気づいて慌てて連絡を入れた。
「ええっ、再試?」
『……うん。来週の水曜日だから、ごめん土日会えなくなっちゃった……。勉強し
なきゃ…。」
「えっ、だったら一緒に勉強すれば……」
英語ならば、ちょっとくらい見て上げれるかもしれない。
だって、土日まで潰れちゃったらさ……。
二週間もお預けをくらって、ずっと、これだけを楽しみにしてきたんだよ。
『ごめん…。一人で勉強したいから…またメールするね?』
どこか落ち込んだような声は追試のせいなのだろうか。
用件だけ言って早々と切ろうとする奈々に、「待って」と慌てて問いかける。
よいしょとかばんから手帳を広げながら。
「あっ、じゃ水曜日がテストだったら次の日の祝日とかは?」
再試終了祝いとかさ。
うん。いい考え。
でも彼女は……どこまでもつれなかった。
『あっ、ごめん電車来ちゃったから、部活の邪魔してごめんね。またね…。』
プツリと電話が切れた。ガーン。
後ろから、アタシを呼ぶチームメイトの声がする。
アタシは、声を発することも、しばらくそこから動くこともできなかった。
165:臆病な恋心
06/06/15 21:26:08 sQwKtc7C
ほんとに再試のせいなのかな…?
もしかして、アタシに会いたくないとか?
最近、いつも奈々に迫ろうとするから怖くて避けられたりとか…?
考え出すと止まらなくなって、どんどんマイナス思考に陥っていく。
せっかく両思いになれたのに、なんでこんなに不安になってばかりいるんだろう。
奈々の気持ちがわからない。
でも、みんなもそうなのかな…?
世の中には、ちゃんとバランスが取れたカップルなんて、もしかしたらいない
のかもしれないね。
子供の頃、よく奈々とシーソーで遊んだことを思い出す。大きかったアタシと
小柄だった奈々とでは、ぜんぜん釣りあっていなかった。
アタシが必死にジャンプしてようやく均衡が保てたようなものだった。じゃないと
地面にいつまでもいるのは自分のほうだった。
想いが釣りあっていないから、こんなに不安になるのかな…。
板の上でもがいてた幼少期といまの自分がシンクロして、ひどく悲しくなった。
お風呂上がり。濡れた髪をバスタオルで乾かしながらメールを打つ。
『勉強はかどってる? 奈々に会えない土日は部屋のそうじをすることにしたよ。
会えなくて寂しいけど、テスト頑張ってね! 分からないことあったらメールして。
明日もメールするね。おやすみ。 大好きだよ。』
いつもすぐに返信があるけど、なかなか来ない。
お風呂にでも入っているのかなと思い充電器に携帯を差し込んでベットに入った。
朝起きてみて、一番に携帯を開いたけれど返信は返っていなかった…。
166:臆病な恋心
06/06/15 21:28:50 sQwKtc7C
「……はああぁ…。」
ねぇ奈々、アタシ、奈々のことこのまま好きでいてもいいんだよね?
恋人と思っていいんだよね…?
ここのところ毎晩のように観ていたのに、今日は、奈々が夢にも現れてきてくれ
なかったことが、余計に切なさを募らせていた。
◇ ◇ ◇ ◇
長かった五日間。
邪魔にならない程度にメールを打ったけど、一度も返信はなかった。
一つのことに集中すると周りが見えなくなってしまう奈々のことは誰よりも理解
しているつもり。再試なんて初めての事だし、ショックだったんだろうと思う。
そんなときになにもしてあげられない自分が歯がゆくて、気を紛らわすために
アタシは部活に勤しんだ。それでも、なかなか集中できなくて、頭のなかは常に
奈々のことばかりだった。
好きって、なんなんだろう…。
アタシは奈々が好きで。ずっと好きなのは奈々だけだった。
奈々に会えばキスしたいし、いろいろしてみたくなる。
でも、それは好きだからしたくなるのかな…?
奈々を独占したいから、他の人と自分は違うのだと証明したくて、そんな気持ち
に駆られるのだとしたら…。
奈々がどうしても厭なら、アタシは、そんなことしなくてもいいよ。
それで気まずくなっていまの関係が壊れちゃうくらいなら、我慢できる。
今度会ったときに、それとなく伝えよう。
167:臆病な恋心
06/06/15 21:31:57 sQwKtc7C
今日は、再試の日だって言ってた。
一時間前にメールしたけど、まだ返信はない。
疲れちゃって、もう寝ちゃったのかも…と思いながらそれでも携帯電話とにらめっこ。
来ないメールを待っているほど悲しいことはなかった。
ときどき投げてやりたい衝動に駆られるけど、もう、そんな子供っぽい真似はしない。
明日は祝日だから今夜はもう寝て、朝になったら電話でもしようと心に決めた。
「あ、そうだ。牛乳が切れてるから買っといてって、ママに言われたんだった…」
言い訳がましく誰も聞いていないのにぼそっと呟くと、アタシは、携帯とお財布だけ
持って、玄関を飛び出した。
人通りの少ない夜道をひた走る。
夜遅くでも煌々と明るい店内。とりあえず目的のコンビニで牛乳パックを掴んだ。
このコンビニと奈々の家は反対方向だけど、せっかく出てきたからちょっとだけと、
白々しい言い訳を口先で繰り返しながら脚を進めた。
閑静な住宅街の一角に奈々の家はあった。
この先の国道にときどき車が通るくらいで、この時間はほとんど人通りがない。
コンビニのビニール袋をがさごそさせて走ると、そのたびに犬が、「わおーん」とp
鳴いて、アタシをビクつかせる。
二階の奈々の部屋は、まだ明かりがついていた。
疲れて寝ちゃってるのかと思ったけど、まだ起きてるみたい。
わざわざ遠回りしてここまで来てみたけど、さすがにこの時間じゃ、ピンポンを
押す勇気はなかった。
168:臆病な恋心
06/06/15 21:34:54 sQwKtc7C
もう少しだけ近くで奈々の存在を感じたくて、外壁をよじ登った。
女子高生でも簡単に侵入出来ちゃうのって、ちょっと無用心じゃないの?
深呼吸するようにひんやりとした空気を「スー」と吸い込む。奈々の甘い匂いがした
気がしてうれしくなる。って、これじゃ、アタシ、完璧な変質者だわ…。
しかも、人様の家に家宅侵入だしぃ……。
「一分、あと一分だけね…」と、思いながら時計の針は、どんどん過ぎていった。
奈々は、いまなにをしているのかな…?
すぐそこにいるはずの彼女がひどく遠くて感じて、切なくなった。
なんだか奈々に片思いしていたときを思い出して余計に落ち込みそうになる。
来なければよかったよ…。
寂寥感に耐え切れなくなってもう帰ろうと振り返った瞬間、けたたましく着メロが響いた。
奈々専用のアニソン。驚きすぎて手の中でお手玉しながら、慌てて切ると、勢い
余って電源まで落としてしまう。
と、同時に奈々の部屋の窓ガラスがガラリと開いた。
「――瞳っ?!!」
植え込みに隠れるようにするけど、バレバレ…。
アタシは、ゆっくりと起き上がって、呆れたような顔で見下ろす奈々に「えへへ」
と愛想笑いを浮かべた。
彼女は、心底呆れたように冷たい目を向けて、長い息をおもいきり吐きだした―。
169:臆病な恋心
06/06/15 21:37:48 sQwKtc7C
◇ ◇ ◇ ◇
奈々の部屋は、なぜだかいつ来ても甘い匂いがする。
それは、奈々の身体が甘いせいなのだろうと思った。
パタンと部屋のドアを閉じると。
「――もう、瞳ってば、いつからいたの?!!」
ビックリするじゃないのっ! と、すごいの剣幕で怒られた。
「やっ、アタシは、コンビニに買い物に行った帰りにちょっと通りかかっただけで…。」
「そのコンビニうちとは逆方向だし……。」
コンビニの袋を持ち上げて苦しい言い訳をするアタシに、彼女もすかさず反論する。
アタシは、すぐに押し黙った。
アタシって、どうしていつもこうなのかな?
自分で自分のことが恥ずかしいよ。
奈々のことになると周りが見えなくなるんだ…。
目の前に奈々がいた。
お風呂に入ったばかりなのか、ほやほやと頭から煙を立てている。
「もう危ないじゃないのォ…こんな時間に一人で……!」
「………。」
「それに、そんな薄着で…風邪引いちゃうでしょ…?」
ここのところ奈々の気持ちを疑ってばかりいたけど、その態度はいつもと変わり
なかった。それよりも深い愛情が感じられて、ふいに泣きたくなった。
嫌われてないならそれだけでいいよ。多くは望みとバチがあたる。
今の関係でもアタシは、十分シアワセだから…。と、自分の心に言い聞かせた。
170:臆病な恋心
06/06/15 21:40:14 sQwKtc7C
「……ごめんね、アタシってこんなんで…。」
「えっ…?」
「奈々、今日テスト終わるって言ってたし…でもメールこないし…つかれて寝ちゃ
ったかなって思って…明日休みだし、今夜メールしといて、明日、電話掛けよう
かなって……思ったんだけど…なんか我慢できなくって…」
奈々のふかふかのベットに並んで腰掛ながら、自分の愚かさに居た堪れなくなった。
しどろもどろになりながら言い訳を繰り返す。奈々、呆れてるよね?
「ばっかみたいでしょ…みっともなくてホントごめん……。」
アタシって、こんなやつでさ。
でも、部屋にジッとしていられないくらいどうしてもアナタに……。
「会いたくて……。」
会いたくて会いたくて、堪らなかった…。
こんなの奈々には迷惑なだけだよね?
気持ちが重いとか思われたかな? 自分だって思うもん。こんな女、ウザイって。
なんでアタシは、後先考えないで、いつも行動しちゃうんだろう…。奈々に嫌わ
れたくないのに…嫌われるようなことばかりして。
自分の気持ちをすべて言い終えても顔が上げられなかった。
なにを言われるのか怖くて、奈々がアタシをどう思ったのか怖くて。
ほんと死にたい気分…。
171:臆病な恋心
06/06/15 21:43:11 sQwKtc7C
膝の上でだらんとしていた左手をふいに取られた。
絡めた指を、そのまま温かい場所へ誘われる。
「ハッ」と驚いて顔をあげると、うつむき加減の奈々が、アタシの手を取って
自分の頬に当てていた。
なっ、奈々……?
けぶるように長い睫がゆっくりと起き上がる。
奈々の綺麗な眸はしっとりと濡れていた―。
「アタシも…アタシも瞳に会いたかった…瞳が好き。だから、瞳にもっと触りた
いし、……さ…っ、さわって欲しいの……」
「……えっ?」
なんか、とんでもなく信じられないようなことを言われた気がした。
頭が真っ白になるとは、こういう状態のことを言うんだと漠然と思った。
でも、耳の中にぐるんぐるんとこだまする声は、確かに奈々のもので。
いい終えてから、恥ずかしそうに俯いてしまった彼女を呆然と見下ろした。
頭の中で、奈々の言葉を反芻しながら、触れちゃいけないと思っていたあのことに
触れてみた。
「な、奈々は、そういうの、い、いやなのかと思っていた…けど……。」
「い、いやじゃないよ…ただアタシは、瞳みたいに綺麗じゃないから……。」
「えっ??」
ていうか、はいっ?
ハテナ?
それは、なんのこと?
頭のなかが、一瞬フリーズする。
奈々が、綺麗じゃないって、いま言った?
はぁあ?? なにそれ。んな、バカな~っ。
172:臆病な恋心
06/06/15 21:46:28 sQwKtc7C
「や、やだ、なに言ってるの…奈々は、アタシがいままで会ったコのなかで一番
かわいいし、一番きれいだよ?」
誰がそんなこと言ったのよ。
絶対にありあえないわ!!
テレビで歌っているアイドル見てても奈々のほうがぜんぜん勝っているし、雑誌
のモデルなんて目じゃないくらい奈々のほうが綺麗だよ。
そう、あっさりと告げると、彼女は、ぽっかりと口を開いた。
「ていうか、最近すごくかわいくなっちゃって……」
アタシは心配なんだ。
だって、だって…。
「奈々の学校に男の教諭とかいたらどうしようって、体育の先生って男だって
言ってたよね?」
「……お、男って言ったって、50過ぎのおじちゃんだよっ!」
「でも、そんなの分からないじゃない。…ロリコンの男なんてこの世に五万と
いるんだし…。電車の中だって、痴漢のおっさんとかさ…。」
朝はアタシがガードしているからいいけど、帰りは一人じゃない?
夕方に痴漢が現れる確立は少ないだろうけど、こんなに可愛ければわからないじゃない。
最近は、物騒な事件とかも多いし…。
「それにそれに、そんなに可愛かったら女の子にだって……。」
もー、心配で心配で、後をつけて周りたくなるよって言う前にやわらかい手の
ひらに口元を押さえられちゃった。
「もういいから」と恥ずかしそうにする奈々があまりに可愛くて、鼓動が跳ねあがる。
173:臆病な恋心
06/06/15 21:52:34 sQwKtc7C
ずっと、奈々はそういうことするの厭だと思ってたけど、それは、アタシの思い
込みだったんだ。
それに、アタシが一人で勝手に悩んでいたように、奈々もそのことを悩んでいたの…。
自分が綺麗じゃないとか言って、そんなことあるはずないのに…バカね…なんて、
奈々のことを笑えないよ。
だって、アタシも同じだから…。
奈々の気持ちが分からなくて不安になって、夜も眠れなかった。
でも、相手のことを思いすぎていろいろ考えちゃうのは、きっと恋をしているからで。
悶々と悩んだり、一人で勝手に傷ついたり臆病になりながら、そうやって、だん
だんに恋人なっていくものなのかなって、なんか、わかった気がした。
もともと可愛いかったけど、最近、すっかり綺麗になった奈々。
彼女が変わったのは、いま恋をしているせいなのだとしたら…。
それは誰に? アタシに?
こんなうれしいことはないよ。
「アタシも、アタシも、ずっと奈々に触りたかった…。ホントに触ってもいいの?」
心が、体中が、奈々のことを好きだと叫んでいる。
「…ん。触ってほしい…。いっぱい。恥ずかしかっただけだから…。いまも恥ず
かしいけど、瞳にだけなら恥ずかしい姿も見せられるよ……。」
「……もう奈々、奈々…かわいい、だいすきっ。だいすき……奈々、あいしてるよ。」
いままで云えなかったありったけの言葉で伝える。
両手でちいさな身体を引き寄せて、熱を測るときみたいにおでこをつきあわせた。
チュっと軽く口付けを交わす。
彼女は、うれしそうににこりと笑って、それからじわりと涙を浮かべた。
目のふちで溜まっていたそれが、堪えきれなくなったのか、とうとう一滴だけ
頬に零れ落ちた。
174:臆病な恋心
06/06/15 21:55:47 sQwKtc7C
奈々の涙にほんの少し胸が痛くなって、そこが、じわりじわりと熱くなった。
チュっと吸い上げると、赤くなった目元に唇を押し付けた。
親友から恋人の関係になってからも、奈々とはいろんな話をしてきたけど、大事
なことをちゃんと話せていなかったね…。
もっと早くそうしていれば、こんなに遠回りせずにすんだのに…って、後悔するけど。
でも、アタシたちには、この時間が必要だったんだとすぐに思い直した。
見つめあって、自然と口づけを交わしあう。
久しぶりの感触。奈々の唇は砂糖菓子のように甘かった。
樹液を求めるように夢中で舌を吸いながら、あの日、夢でみたときみたいに目配せした。
「奈々、奈々……いい?」
「…っ…ん、瞳っ、瞳ぃ、好き……。」
彼女の返答は答えになっていなかったけど、それだけで蕩けてしまいそうになる。
「アタシも…好きよ奈々。」
「………ん。」
言われるのは恥ずかしいのか、ちいさく頷きながら、アタシの胸に顔を埋めてしまう。
そんな恋人があまりにも可愛いくて、なんだか頭がふわふわしてきた。
あの日、夢でみた状況と現実の世界がごっちゃになった。
でも、手を伸ばせばそこに奈々がいて、確かな温もりに、重みを感じた。
これは、夢なんかじゃないよね?
175:臆病な恋心
06/06/15 21:58:31 sQwKtc7C
思い出深いパジャマのボタンに手を掛ける。全部外し終えると桃の皮を剥くみた
いに肩口からするりと脱がせた。
久しぶりにみる成長した少女の裸体に、胸がバクバクと破裂しそうなほど高鳴った。
恥ずかしそうに俯く奈々は、いくら呼んでも、もうアタシをみようとはしない。
これが、また夢オチだったら本気でシャレにならないぞと思いながら…、ちいさな
身体をそっとシーツに横たえさせた。
身体のあちこちにキスを散らばめながら。
アタシは、奈々を独占したいからこうしたかったのでも、淫らな行為に耽いり
たかったのでもなかったんだなぁと思い直した。
アタシは、奈々のことを…奈々の身体ごと、丸ごとすべて愛したかっただけなんだって。
奈々を抱き締めながらしみじみとそう思ったんだ……。
176:ハルヒ
06/06/15 22:04:19 sQwKtc7C
ここで終わりでもいい感じがしますが、一応続きがありまして。(^o^;)
短編は、どうも自分にはできないみたいです。
この先は、多少エロ描写が入ると思われ(ノω`*)今度は奈々視点になるかもと。
では、続きは後日。<ドモデシタ。(ゝω・)v
177:名無しさん@秘密の花園
06/06/15 22:15:38 irt4HPhP
リアルタイムGJー!
あなたのSS読んだ後はコミック再読したくなる。
奈々視点の続き楽しみにしております。
178:名無しさん@秘密の花園
06/06/15 22:18:03 7mA7GrxK
おもしれーリンクしまくってんな漫画と
何より違和感が全くない!!!!
更に期待GJ
179:名無しさん@秘密の花園
06/06/15 22:20:38 LAs1F1Cu
藻前凄過ぎ
180:名無しさん@秘密の花園
06/06/15 23:19:00 BEr2S96u
GJ!GJ!最高ッス!
百合姫発売までの1ヶ月、ハルヒさんのSSだけで
ご飯3杯はいける。
181:名無しさん@秘密の花園
06/06/16 00:21:32 b0G4HZRE
神降臨!!!
182:名無しさん@秘密の花園
06/06/17 01:50:00 dRDnKDy8
一気にupするから
次が待ち遠しくてたまらねぇだろう!!!
183:名無しさん@秘密の花園
06/06/17 08:42:38 9FE6hf0l
gjすぎる
自分も書きたくなってきた。
ギガドラの結衣×エレンだけどおk?
184:名無しさん@秘密の花園
06/06/17 09:58:43 OfMRnkp2
もちろんおk
185:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:04:08 xCTceMI6
三咲重工の本社ビルから眺める千丈の夜景は美しい。
ヴォルガーラとの死闘を生き抜いた千丈。守られた地上の星々。
その輝きを守ったのは私、月岡結衣。
まあ残念ながら、地上200メートルのこの本社ビルそのものは、
何度かヴォルガーラに破壊されて、そのたびに建て替えて今に至るんだけどね。
そして、私が今いるのは四十二階にあるイベントホール。
なんともけったいなことに、三咲勝の誕生パーティだそうだ。
最近経営が悪化したとはいえ、財界の中心的存在の三咲重工の跡取りのパーティ。
コネを売りたいのか、あるいは買いたいのか。
財界の中心的人物や、大物政治家なども多く招待されていた。
当然、文明保全財団の理事長でツキオカグループの総帥である私も招待されたんだけど、
実のところ、三咲勝の加齢を祝う気持ちなんか、さらさらなかった。
私がここに来た理由は、彼女に会えるから。
その人は向こうのテーブルで若い男性に囲まれて食事もほどほどに談笑をしていた。
いや、談笑というよりは男の方が一方的に話しかけてきて彼女はそれに答えているだけだ。
そこに社交辞令以上の意味はない。……はず。
っていうかエレンの半径2メートル以内に近づくな! オスブタども!!
そんなにパイロ・バーナーで焼きブタにされたいの?
それとも30mm機関砲でミンチになるのがお好みかしら?
……貴様ら、許さん!
186:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:07:53 xCTceMI6
話が逸れた。
彼女はエレン・ブルノーズ。フランスがブルノーズ重工の一人娘。
そして、私の親友。
エレンはドレスに合わせたのか、いつもはアップにしているブロンドの髪を下ろしていた。
その髪型を見るのは久しぶりな気がする。
ヴォルガーラ戦争のときは活動的な避難誘導隊の制服姿ばかりだったから、
彼女のこういう女の子している格好はけっこう珍しい。
そのときには、彼女ともいろいろあった。
彼女がいたから、私はあの逆境のなかを戦ってこられたんだ。
彼女がいたから、千丈は試練の場所であっても地獄じゃなかった。
彼女と一緒に戦えることが、とても頼もしかった。
187:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:09:32 xCTceMI6
エレンは私を見つけると、一瞬その青い瞳を丸くして驚いたしぐさをみせた。
そして、言い寄る若い男性をやんわりと遮って、グラスを片手に私の方へ近づいてくる。
「お前もきてたのか、月岡」
「やあ、エレン」
「楽しんでるか?」
「あははは、ぼちぼちかな」
エレンとたわいもない会話を交わす。
その内容はありきたりだけど、こんなに心が弾むのはなぜだろう。
「フランスに帰るのは後でいい。お前と、もっと一緒にいたいな。
千丈に骨を埋めるのも悪くはないかもしれない。
幼少期、お前と過ごした土地だし、
親に反抗して逃げてきたときは、ここで死ぬのもやむなしと思っていたからな」
なんだか、うれしいことを言ってくれるなぁ。
本当に、この平和は幸せだ。苦労してヴォルガーラを倒して、手に入れた平和。
もっと長く、ううん、永遠に、この平和がつづけばいい。
そう思った。
188:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:13:59 xCTceMI6
そのとき、壇上のほうを見やったエレンが、はっとした表情をした。
私は理由を尋ねる。
「どうしたの?」
「お父様……、なぜあんなところに。それも三咲勝と一緒に」
みると確かに、あれはブルノーズの叔父様だ。
その隣にいる、ホストみたいな雰囲気の軽薄そうな青年。
軽薄そうとはいったけど、そんな外見とは裏腹に彼はけっこうなやり手だ。
ヴォルガーラ戦争の被害で経営が傾いた三咲重工をここまで立て直したのは、
彼の手腕によるところが大きい。
ただのぼんぼんって訳じゃないらしいのだ。
そこが結構むかつくんだよね。
『本日は私の誕生を祝って、これだけの方々にご来場いただき、
誠に感激の極みであり、この場で御礼を申し上げます』
勝があの鼻についた声でマイクを通して話しだす。
それを聞いて会場の客はみんな壇上に注目した。
189:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:15:06 xCTceMI6
『実は、この場を借りて、ブルノーズ重工の社長のブルノーズ様から、
重大なお知らせがあるらしいので、
ご来場の皆様方には今ひとつご静聴を賜りたく存じます』
「なにか……いやな予感がする」
うん、エレン。私もそう思ったよ。
なぜか会場の照明が落とされて、
一筋のスポットライトがステージ上のスタンドマイクを照らし出した。
そこに、つかつかと、ブルノーズの叔父様が、歩いていく。
『只今ご紹介に預かりました、ブルノーズです。
みなさま、本日は三咲勝氏の誕生パーティというめでたい席でございます。
人間がこの世に生れ落ちた日というのは有史以来すべての人類が祝ってやまない、
記念日といいますか、人生を彩る行事の一つでありましょう。
しかし、人生を彩る行事は誕生日だけではございません』
190:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:17:03 xCTceMI6
私の心に不安が広がる。
さっきまで、あんなに楽しくエレンと話せてたのに。
悪い予感が的中しないことを、心のそこから祈っていた。
『人生の終焉、新たな世界への旅立ちという意味でも、
葬式は外せないところでございましょう。
まあ、誕生会の席でこのようなことを申し上げるのもなんですが』
三咲勝さっさと死んでくれ。
この次のことを叔父様が言う前に。私の、私の、私の……!
となりでエレンが息を飲む音が聞こえた。
『やはり、人生の大きな行事として外せないのは「結婚」でございます。
本日、誕生日を向かえ、より一層立派になられたこの三咲勝氏。
恐縮ながら、この三咲勝氏とうちの一人娘エレンが婚約を結んだことを
この場を借りて皆様にご報告させていただきたいと思います』
いま、なんて?
いや、予測はできてた。でも、認めたくない。
壇上の叔父様を照らしていたライトが、ふた筋に分かれ、
部隊袖の三咲勝と、私の隣にいるエレンを照らし出した。
聴衆の喝采。
191:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:18:41 xCTceMI6
私の心臓が、一度大きく脈打った。一瞬目の前が真っ白になる。
でも、ヴォルガーラとの戦いで鍛えた精神力で、意識はなんとか踏みとどまらせた。
「聞いてないぞ! どういうことだ!!」
エレンの怒声に、会場は再び静まり返った。
「聞いていないはずはなかろう。エレン、これは前々から決まっていたことじゃないか」
「いや、勝との婚約は一旦白紙に戻したはず。三咲とブルノーズの業務提携解消と共に」
『そうです、みなさん!
私は一度は三咲勝とエレンとの婚約を白紙に戻しました』
ブルノーズの叔父様はエレンには答えず、マイクに向かって話しかけた。
『しかし、この青年、三咲勝がエレンを愛する心は本物であり、
エレンも、気持ちは同じでありました。
そんななか、この私に、業務提携解消などという俗な理由によって、
愛し合う二人の中を引き裂くことが出来ましょうか!?
ですから私は、二人の結婚を許すことにいたしました!』
192:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:21:51 xCTceMI6
叔父様の宣言に聴衆たちは安心したのか、再び会場一杯の拍手を鳴らす。
私は、どうしてか今にも砕けそうな思いでエレンにたずねる。
「エレン、これは?」
「確かに言ったよ。三咲勝が好きだと。だが昔の話だ。
それにそんな意味じゃない。まさかお父様がこんな手に出てくるなんて」
叔父様が壇上を降りて、勝を連れて私たちのところに近づいてくる。
「エレン、お前は政略結婚に利用されることが気に入らなくて家を出た。
だが、ヴォルガーラを倒したあとで、戻ってきた。
ならば、政略結婚ではなく、だ」
「お父様、しかし……!」
近くで眼を見てわかった。エレンと同じ、海みたいに蒼い眼。
この人には全部分かってる。だって自分の娘のことだもの。
分かった上で、やってることなんだ。
何を企んでるの?
193:エレンといる明日 前編
06/06/18 02:24:00 xCTceMI6
そこでエレンははっとした。そして私も。
ここには政財界の大物が集まっているんだ。
もし、ここでブルノーズの親子に亀裂があることが分かったら、
もし、三咲重工に恥をかかせでもしたら、
それはきっと、ブルノーズにとって大変なことになる。
エレンだって、親子で対立していても、
ブルノーズが潰れていいと思っているわけじゃない。
だから、この場は……。
「すまん、月岡」
エレンはなぜか、私に謝った。
「後できっとなんとかするから、この場は合わせてくれ」
エレンのもとに、勝が近づく。
「愛してるよ、エレン」
手を差し伸べる。
やめろ、やめろ、やめろ。
エレンはその手を握って、微笑を見せる。聴衆は大きな喝采を送る。
叔父さまは笑う。
私は、とても、なぜだか、痛くて、
見ていられなかった。
気がついたら、私はパーティ会場を後にしていた。
194:183
06/06/18 02:28:25 xCTceMI6
えーと、前編はこれで終わりです。
やっぱりハルヒさんには敵わないな。
逆に恥ずかしいかも・・・orz
あの……あきらめないでください!
まだ、機人がいる!
Hanger Labolatry Save&Load Option Exit →Nextmisshion
195:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:09:38 xCTceMI6
―きっと、なんとかする
エレンはそう言った。
でも、後日私の元に届いたのは、結婚式の招待状だった。
エレンが結婚する。
その事実は、なぜだか私の心を強く打ちのめした。
財団に帰っても、仕事が手につかない。
学校に行っても、ぼーっと、窓の外を見ているだけ。
なにも、やる気が起きなかった。
「ねぇ、大丈夫なの?」
奈々穂が心配そうに聞いて来る。
でも、どう答えればいいんだろう。
自分でもなぜだか分からないのに、どうして奈々穂に説明できるだろう。
196:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:10:10 xCTceMI6
「ごめん。分からない」
「分からないって?」
「自分でも分からないの」
「自分……でも?」
「ごめんね、奈々穂」
「ううん、気にしないで。整理がついたら話してね。
私でよければいつでも相談に乗るよ」
「ありがとう」
彼女には、いくら感謝しても足りない気がした。
197:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:12:06 xCTceMI6
エレンの結婚式の当日。
私は財団地下の格納庫にいた。
ここには私やみんなとともに、ヴォルガーラとの戦いを乗り越え、
次の出番までその身を休ませている私の分身、機人がいる。
リモコンを持って、ヴァヴェルたちの前に立つ。
このリモコンは、ヴォルガーラ戦争で使ったものだ。
このリモコンで機人と対話して、あの日々を戦い抜いた。
そうして、頭に思い浮かべる。
そうすれば、きっと私の心を締め付けるものの正体が分かると思ったから。
彼らと共に戦った、日々のことを。
198:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:15:00 xCTceMI6
『早く避難するんだ!
訓練だからっていいかげんにやってると、ヴォルガーラが来た時に後悔するぞ』
エレン……?
『ええ、そうです。はい。あいつ……なかなかやります』
だって、エレンが危なっかしいから。
『生きて帰れたら、お前と話したいことがあったのに。残念だ』
嫌! 絶対一緒に生き残る。エレンと一緒に。
『最後くらい、一緒に居てもいいだろ?』
ありがとう
199:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:15:32 xCTceMI6
「これは……?」
私は目を開けた。ただ眠っているだけに見える機人たちを見やる。
これは私とエレンと、機人の記憶。
あのヴォルガーラとの死闘の日々の記憶だった。
「私に、これを見せたかったの?」
機人たちは答えない。
いや、もともと私たちの間に言葉はいらないんだ。
でも、分かった。
この気持ちの正体が。
わたしのそばには、いつもエレンが居たんだ。
「理事長」
ウィルツ博士が呼んだので私は振り向いた。
「奈々穂君が、君と話がしたいそうだ」
博士の後ろからひょこっとお下げ髪がのぞく。
そしてひょいっと奈々穂が私の前に現れた。
200:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:16:03 xCTceMI6
「答えは見つかった?」
「うん、だけど……」
どうしようもない。
「好きなんでしょ? エレンさんのことが」
奈々穂の突然の言葉に私は驚く。
「そりゃあなたの考えてることくらい分かるよ。私たち幼馴染でしょ」
うん。そうだった。
やっぱり奈々穂にはすべて最初からお見通しだったらしい。
そういえば……。
「奈々穂は結婚式行かなくていいの?」
私が聞くと、奈々穂は微笑みながら言った。
「親友がふさぎこんでるのに、自分だけおいしい思いはできないよ」
ほんとに……。
「ほんとに奈々穂には、いくら感謝してもしきれないくらい!」
「じゃあ、今度おいしいものでも奢ってよ」
奈々穂もなかなか上手になった。
201:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:17:08 xCTceMI6
「それで、結局どうするの?」
奈々穂が尋ねる。
「それは……」
「ねぇ、自分の気持ちに正直になりなよ」
「でも」
「それだけつらいってことは、うまくいえないけどきっとそれだけのことがあるんだよ」
「だって、私は―。それにエレンも」
「そういう思いを抱えちゃうのは、あなただけじゃないよ。だから、大丈夫。
エレンさんが大企業の令嬢だからって引け目を感じるなら、
あなたも大企業の令嬢みたいなものでしょ」
「それは、そうだけど」
「思いを伝えられずに、そのまま自分の中に押し込めるのはつらすぎるよ」
そういって奈々穂は俯いた。
もしかしたら、奈々穂も私と同じような思いを誰かに抱いているのかもしれない。
「恋は盲目、当たって砕けろ! あなたがつらい思いをするのは私が許さないんだからね。
悲劇のヒロインはあたしだけで十分。告ってこい!」
そういって、奈々穂はばしっと私の背中を叩く。
ちょっとむせた。奈々穂、もしかして前よりアグレッシブになった?
202:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:18:21 xCTceMI6
そうして私が機人の前でむせていると、
京野さん、薫子さん、博士、みんなが集まってきた。
そして博士はいきなり言った。
「くだらんな」
さっきの話を聞いていたらしいウィルツ博士が、
そんな言葉をいきなり言ったことに驚くとともに、
その内容にちょっとむっとする。
くだらないって、それは余りにもひどいんじゃないか。
博士は続けた。
「所詮恋愛感情など、粘液の作り出す幻想に過ぎん。
子孫を繁栄させるために人類にあらかじめプログラムされたことだ。
その結果が、人類の過剰増加につながり、
だからこそジェネシスプロジェクトが必要とされた」
周りのみんなも私と博士の間の張り詰めた空気を感じたのか一言もしゃべらない。
「と、蓬莱博士なら言うだろうな」
ふう、とため息をつきながら、険しい顔から一転、博士は表情を緩ませる。
いつもの不敵な笑みだけど、なんだろう、いつもの自信から来るものじゃなくて、
もっと違うものに感じて、なぜかさっきまでの張り詰めた気持ちがほころんだ。
冗談だったと分かると、周りのみんなも構えをといたみたいだった。
203:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:20:17 xCTceMI6
「私は、人の想いが、人を愛する心が、ふさがった未来を開けたのだと思っている。
この封鎖された地球のなかで、ヴォルガーラとの戦いから我々が生き残ったのも、
最後まであきらめずに、人を信じ機人を信じ、そして愛するもののために行動に移した。
そのことのお陰だと思っている」
そういわれて、私は思い出す。
ヴォルガーラとの最終決戦で、アスモダイの圧倒的な戦力に絶望し、
戦いをあきらめかけたときのことを。
そのとき、エレンが来てくれた。
エレンが来て、一緒に戦ってくれた。
エレンのためなら、まだ自分はがんばれるって、気づかせてくれた。
そのときにはもう、私は彼女に心を奪われていたのかもしれない。
204:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:21:27 xCTceMI6
「だから私は下らんと言ったのだ。
同性だから、相手が良家の令嬢だから。それが何だ。まったく下らんな。
そんな程度の障害が、まさに人類を救った感情をとめられると思うか?
自分を信じろ理事長。あのとき機人を信じたように」
「ウィルツ博士……」
そして、博士は笑った。
口はいつものように不敵に歪んでいるけれど、
それは巣立ちをする我が子を見守る親鳥のような喜愛に満ちた表情で。
「覚えておけ理事長。愛とは……ためらわないことだ!」
「はいっ!」
なぜかその言葉に、すごく勇気付けられた気がする。
いけそう。
エレンに気持ちを伝える。
うん、きっとうまくいくよ。
もし、その気持ちがエレンに伝わなくても、きっと私たちなら親友のままでいられるよね。
私、エレンを信じる。
205:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:22:54 xCTceMI6
っていうかそういうことにしないといけなそうな空気だった。
カッコつけた台詞をキメて、
うっとりと自己陶酔に浸っている博士を見ちゃうと、どうもね。
「それって、某宇宙刑事の丸パクりじゃないかしら」
「某機動戦士のOVAにでてくるお兄様の台詞もそのままパクってますね」
あえて、京野さんたちのツッコミは聞かなかったことにした。
「ああ、もう時間がないよ! いこう!」
私は決めた。
頭に想い浮かぶのは、エレンの戸惑った表情。
一旦は解消した婚約を再びもどすと、社交界で宣言されたときの。
結局自分が政略結婚に利用されるだけだと絶望し、悲しんでるに違いない顔。
そして、自分の父親に言い負かされ、社交界の皆が見守る中で、
勝との結婚を承諾させられたときのあの表情。
エレンは勝が嫌いなわけじゃない。でも、あの目は違うって言ってた。
こうなるのは違うって。
今なら私へのエレンの心の叫びを、ためらわずに聞き入れることができる。
なによりも、彼女は笑ってなかったから、
私がヴォルガーラとの戦いで一番守りたかったのは彼女の笑顔だったから。
だったらこんなところで、もたもたしている暇はない。
206:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:23:27 xCTceMI6
決心したときには、体が勝手に動いていた。
「薫子さん、ライオールの発進準備を!」
「理事長!?」
薫子さんが声を上げる。
「やるというのだな。さすがは、我々の理事長だ」
ウィルツ博士が不敵に笑う。
「ああ、頭痛が胃痛が胸焼けが。
ついでに腰痛水虫リウマチまで再発してきた気がするわ……」
京野さんが嘆く。
「がんばってね。私、応援してるから」
奈々穂が背中を押してくれる。
207:エレンといる明日 中編
06/06/18 10:24:06 xCTceMI6
「アルケミックドライブ始動! ライオール発進準備」
「風元素転換率ミリタリーレベル! メガモーター、パワーオン!」
「フロートシステム、セット!」
「ライオール発進口へ」
「ライオール、すべての発進準備を完了」
いつもと何も変わらない。なにも。
機人と一緒に、また戦うだけ。
「ライオール発進!!」
エレンの笑顔を守るために。
208:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:28:29 xCTceMI6
「三咲勝。病めるときも健やかなる時も、
汝はこの者、エレン・ブルノーズを愛し、敬い、
死が二人を永久に分かつまでともに歩むことをここに誓いますか?」
「誓います」
「では、エレン・ブルノーズ。病めるときも健やかなる時も、
汝はこの者、三咲勝を愛し、敬い、
死が二人を永久に分かつまでともに歩むことをここに誓いますか?」
「私は、私は」
「エレン、この期に及んで、お前のわがままを通すわけにはいかんぞ」
「お父様……。っく、誓い……ま……す」
「では、この結婚に意義のあるものは、この場で名乗り出るか……」
『意義あり!!』
リモコンのマイクを通して、ライオールの外部スピーカーで音量全開にして叫んでやった。
このリモコンはヴォルガーラ戦争のときのものから改良されていて、ヌンチャクのように二本に分かれてコードでつながっている。そして、手元にマイクが新しく取り付けられているのだ。
機人のマイクがスピーカーから来た自分の音を拾ってキィィィンと大音量の悲鳴を上げた。
それを聞いてしまった神父や教会にいる招待客たちはみな自分の耳を両手でふさぎもだえている。
209:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:29:57 xCTceMI6
私はためらうことなく、右手のヌンチャクを前に突き出した。
そのリモコンからの信号を受けて、ライオールの巨大な右腕が教会のステンドグラスを突き破る。
そして私はその腕を伝って、教会の祭壇前まで突っ込んでいるライオールの手の平まで移動した。
「月岡……」
「エレン」
私の呼びかけに、いや、突然の進入に彼女は驚いたような表情をして、
エレンは私が今いるライオールの手の平に近づいてきた。
「なんてことを、無茶をする」
砕け散ったステンドグラス。
いまだかろうじて窓枠に残っている分の色ガラスから透けて見える機人、ライオール。
その五十メートルの巨体を見やって、エレンは困ったようなうれしいような笑顔を見せた。
「結婚しないで、エレン」
私は心の中から声を絞り出して彼女に呼びかける。
「嫌な結婚をどうしてしようとするの? それなら私と一緒に逃げよう」
ちがう、こんな子供みたいなことを言いたかったんじゃなくて、
「勝は三咲の跡取りだけど、私だって月岡の総帥だよ。
そりゃ一時は破産同然まで落ちぶれたけど、ヴォルガーラから地球を守った報酬には、
まだエレンを養うだけの余裕があるよ!」
確かにそれだけの甲斐性とお金があるなら、いいだろうけど。でもそうじゃなくて。
210:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:31:37 xCTceMI6
「ええと、ええと、、」
「っははははは」
私が何を言っているのか自分でも分からなくなってきていると、エレンがおなかを抱えて笑っていた。
「いいだろう、月岡。
私も幼い頃は、こういうときには白馬に乗った王子様が助けに来てくれるものだと、
そう思っていたが、巨人にのったお姫様が来るというのも悪くない」
そういって機人の手のひらに乗る。
「あっと」
「あ、足元気をつけて」
エレンは純白のウェディングドレスの裾を、
ライオールの指の間接に引っ掛けて転びそうになった。
彼女を支えようと伸ばした手が、その手を握った。
もう離したくないから、しっかりと。
211:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:32:41 xCTceMI6
「いくのか、エレン」
「勝!?」
怪音波(?)攻撃からいち早く立ち直ったらしい。
三咲勝が、祭壇から機人の手のひらにのった私たちを見ていた。
「三咲勝、すまないが、私はお前とは結婚できない。他を当たってくれ」
エレンが言った。
「どうしてもか」
「ああ。私は、自分の心に正直であるべきだ。
いや、正直でありたい」
エレンははっきりと、ここに宣言した。
212:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:35:27 xCTceMI6
「そうか、なら仕方ないな。月岡!」
勝は私に向かって呼びかけた。
私はいやみたっぷりに返してやる。
「なあに?」
「俺は振られたみたいだ」
「いまさら気づいたの?」
「月岡! 俺にはせいぜい会社の経営を立て直すことぐらいしかできない。
おまえは、エレンを幸せにしてやってくれ」
「当然!」
私は勝に向かって親指を立てた。
それを見届けると、勝はまだ耳押さえて苦しんでる他の人たちを置いて、教会の外に出て行った。
213:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:41:58 xCTceMI6
ステンドグラスに突っ込んだ腕に私とエレンをのせたまま、それをゆっくりと戻す。
私たちは手のひらから、機人の頭部近くに降りた。
そして、ヴァーティカルモードから飛行形態のフォートレスモードにライオールを変形させ、
花嫁をのせて飛び立った。
214:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:42:34 xCTceMI6
「まさか、お前があんなことをするなんてな」
ライオールに乗って、上空200メートルを千丈に向かいながらエレンと話す。
エレンにそういわれると、私は苦笑いするしかなかった。
「あはは……」
「教会のステンドグラスを吹き飛ばして、三咲に恥をかかせ、
ブルノーズの顔に泥を塗ったんだぞ? ただではすまないだろうな」
「まあ、なんとかなるよ。月岡には優秀なスタッフがいるし。
予算だって、ヴォルガーラ殲滅の報奨の残りがたくさんあるしね」
「博士達も苦労が絶えないだろうな」
「博士はヴォルガーラがいなくなって張り合いがないっていつもいってたから、
久しぶりに暴れられて喜んでるよきっと。死にそうなのは京野さんかな?」
「あの人、こんどこそ入院するんじゃないか?」
そういって、二人で笑った。
215:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:44:20 xCTceMI6
千丈上空につく頃には、太陽は傾いて、空の顔を赤く染めていた。
空の風は気持ちよくて、
ライオールの上で二人で寝そべったら、あっといまに時間が過ぎてしまった。
ウェディングドレス姿のエレンをみやる。
どこか満たされたような表情。パーティのときには絶対見せなかった。
いや、ヴォルガーラ戦争で彼女と再会してからずっと、
小さい頃に一緒に遊んだころ以来見てなかった表情だった。
私は起き上がる。
エレンもそんな私を見て、頭にはてなマークを浮かべながら、体を起こした。
見つめあう。
エレンの青い瞳が私をそのなかに捉える。
その言葉は、自然に、本当に何気なく、私の口から出ていた。
「好きだよ。エレン」
「知ってる」
「ずっとずっと前から」
「ああ」
「エレン……」
言っちゃった。
ムードはばっちり確保したはずなんだけど。
エレンは、私の方を見られずに、
ライオールフォートレスモードの機首の先端を見つめている。
そして、押し黙っている。私の胸のドキドキは最高潮に達した。
216:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:45:17 xCTceMI6
私はエレンの横顔をずっと見てた。彼女の長い睫が、何かを決心したように一回瞬く。
「私もだ。月岡」
「えっ?」
「お前が好きだ」
エレンは白く化粧をした鼻の頭を掻く。照れたときに彼女がよくする仕草だ。
「これだけだ。そんなにたくさんは言わさないでくれ」
エレンは耳まで赤くして、プイとそっぽを向いた。
こういうところが、本当にかわいい。
217:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:45:59 xCTceMI6
「実はな、ヴォルガーラを倒してフランスに帰ってから、
私は、すでにお父様に自分の気持ちを伝えてたんだ。お前へのね。
そしたら大激怒さ。『ブルノーズの娘が、神を冒涜する気か!?』だと。
それで、三咲との婚約をもとに戻したんだろうな。勝にも迷惑かけて」
「両想いだったんだね、私たち」
「そういうことに、なるな」
エレンは頬を染めて、青い瞳で私の方をそっと見つめる。
それがとてもいとおしくて、
だからかも、少しだけ意地悪してみたくなった。
「じゃあ、いつまでも月岡~じゃなくて、『結衣』って呼んで?」
甘えた声でおねだりしてみた。
エレンはそっぽを向いたまま、む~と唸る。ほんとにがんばってるみたいで、微笑ましい。
すっかり日が落ちて、空には金色の満月が輝いていた。
月光が、彼女の睫を光らせる。横顔が青く縁取られて、まるで幻を見ているよう。
でも、彼女は確かにここにいる。私が少し手をのばせば触れられる距離に。
218:エレンといる明日 後編
06/06/18 10:46:34 xCTceMI6
そうして、エレンは決心がついたのか、ゆっくりと私のほうを向いて、
お化粧の上からでも分かるくらいに、真っ赤にした顔で言った。
「好きだよ。結衣」
ライオールのフォートレスモードから見下ろした千丈の夜景はとても綺麗だった。
ヴォルガーラとの死闘を生き抜いた千丈。守られた地上の星々。
その輝きを守ったのは私たちだ。
それを思い浮かべると、なぜだかとても幸せで、安らかな気持ちになった。
私の傍らで柔らかな笑顔を浮かべながら、一緒に星を眺めている人が、大好きなエレンだからかもしれない。
219:183
06/06/18 10:49:13 xCTceMI6
以上です。
つたない文章に長らくお付き合いありがとうでしたm(_ _)m
wiiコンなのは、まあ続編希望ということでw
スクエ二さんお願いします
220:名無しさん@秘密の花園
06/06/18 10:52:55 Z1I89x3X
良作GJ!!
221:名無しさん@秘密の花園
06/06/19 22:04:13 yTzSQfPQ
レスがないのは、みんなでせっせとギガドラをプレイ中だからだと予想。
そして奏也とヴァルドルがでてきてコントローラーを二重の意味で投げてるとw
222:名無しさん@秘密の花園
06/06/21 00:20:28 /6m7sB8T
おぉぉぉぉぉっ!!!神光臨!!!
大量投入だから暫く間、無いのかと思ってましたよ。。。
223:名無しさん@秘密の花園
06/06/21 00:36:29 TCXzfxSa
神は一人じゃなかった
224:名無しさん@秘密の花園
06/06/22 16:45:47 8hpi1Jkl
URLリンク(goshrink.com)
225:名無しさん@秘密の花園
06/06/23 01:54:41 Ma3lV9Up
エレンかわいいよエレン
面白かったです、GJ
226:ハルヒ
06/07/01 19:56:53 njI/yncr
エロ描写が含まれますが、苦手な方はスルーしてください。
227:溺れる恋心
06/07/01 20:00:23 njI/yncr
恋愛は先に好きになったほうの負けだって言うけど、あれって嘘だと思う…。
確かにこの恋をはじめたのは瞳のほうで、彼女が気持ちを打ち明けてくれてなか
ったら、たぶんこういう関係にはなっていなかった。
瞳とは小中とずっと一緒に過ごした一番仲のいい親友だった。昔から背が高くて、
美人で、頭がよくて、明るくて、誰にでもやさしくて…いいとこだらけ。
クラス委員長に推薦でなるようなタイプだ。実際に小学生のときには、児童会長
とかやっていたし。
そんな少女に好きだと言われて、毎日のようにカワイイとかキレイだよって甘い
声音で囁かれて…。
ウソよ…。こんなアタシのどこが? アタシなんかを本当に?
大好きなはずの恋人の言葉が信じられなくて、いつも不安で、胸が苦しくて…。
でも、アタシを見つめる彼女の眼差しは、いつだって真剣だったことを思い出した。
人がどう思うかよりも、恋人がどう見てくれているかのほうが、もっとずっと大切な
ことだった…。地味でなんの取り得もない自分と、いつもキラキラしている瞳とでは、
ぜんぜん釣り合っていないとか、引き立て役になっているとかぐちゃぐちゃと勝手
に思い込んで卑屈になったりしていたけど……。
そんな後ろ向きな性格のアタシでも、彼女は、好きだと言ってくれる。甘やか
してくれる。
瞳が素敵なのは、容姿だけじゃなかった…。
心が澄んでいて、とても温かい人だ。そんな恋人にこんなにも大切に想われているのに
気持ちを疑うようなことをして…本当にごめんね…。
こう言ったら、アナタは、ムキになって反発するだろうけれど心の中だけで云わせて。
いまは、絶対にアタシのほうが瞳のことを大好きだよ…って。
228:名無しさん@秘密の花園
06/07/01 20:03:57 njI/yncr
そんな少女をちいさな頃からずっと見てきて知っているけど、どうしてかな…?
今日の瞳は、なんだか、ものすごくカッコよく見えるんだ…。
こんなの初めてで、なんだか知らない人がいるみたいでちょっとドキドキしちゃう。
「…ふ…っんく…っ…」
灯りをつけたまま唇の境目が分からなくなるまで長いキスをした。
半年もすれば、瞳のやり方もずいぶん覚えた。でも、いつまで経っても恥ずかしさ
は一向に消えなくて、いつになったらこのキスに慣れるのかなって思っちゃう…。
今日のキスはいつものそれとはぜんぜん違う、なんかやらしいキス…。
二人の甘い吐息が籠もって、部屋の酸素が薄くなっていた。
明るい蛍光灯の下で、ギュっと抱き合うように夢中になって口付けを交わす。
何度も何度もスタンプを押すみたいに押し付けられた。強くされて、そこがぐ
にゅりと変形する。瞳の唇は、熱があるみたいに熱かった…。唇がこんなに熱く
て、やわらかいものなんだって、キスを覚えて初めて知った…。
もしかして、アタシもそうなのかなって…。アタシの唇の感触を感じながら、
いま瞳も同じように思っているのかもしれないと思ったら、急に忘れかけていた
羞恥心がこみ上げてくる。
「……あぁ…っん。」
にゅるりと舌が入ってきて、思うままに奪われる。
舌を味わうように捉えられて、激しく絡めあう。息が上がる。
ぼうっとしながら瞼を開いた。
日本人にしては独特な薄茶色の眸は、いまはぴたりと閉じられている。
リップを塗っているみたいに綺麗な色の唇は塞がれて。高い鼻腔。一筆書きで
描いたようなスッとした眉。顔のどのパーツをとってもすべて整っていて、
それが、ピタリと決まった配置に収まっていた。
美人っていうのは、きっと、こういう顔のことを言うんだろうなぁと舌を吸わ
れながらそんなふうに思った。
229:溺れる恋心
06/07/01 20:08:02 njI/yncr
上向きの長い睫がピクっと震えて、ふいに瞼が開かれた。至近距離で視線が合う。
キスしながらうっとりと見蕩れていたのをバレたのが恥ずかしくなって、プイと
顔を背けると、ようやく唇を離した彼女は、ふっと色っぽく甘い吐息を漏らした…。
「…な~な?」
熱くなった唇を押さえるように背を向けてしまったアタシに飼い猫でも呼ぶように。
そういうときの瞳は、大抵恥ずかしいことを言うときで、アタシは背中を固くして
なにを言われるのか身構えた。
「ふふっ。かわいい奈々…。俯いたってだーめ。ほら、耳たぶまで真っ赤だよ?」
「ヤダぁ…。もう、かわいいとか、そんなにたくさん言わないでよっ!」
昔からそうだけど、今日の瞳はなんか言いすぎなんだもんっ。そんなに何回も
言われたら恥かしいって!
なのに彼女は相変わらず動じない。
「エーッ、どうして? これからは、もっといっぱい言うよ。だって、いつも言って
るのにぜんぜん信じてもらえてなかったんだもん、アタシ、ショックだったよ…。」
「う…っ。だから、そのことはもう言わないでよォ~」
それは、アタシだって反省してるんだから。
「やーだ。ほら怒った顔も超かわいいよ、こっち向いてよ奈々。もっと可愛いい顔
よくみせて?」
「もうっ、意地が悪いよ、瞳っ!!」
キスしているときなら平気で見れていたのに、唇を離したとたん恋人の顔を見る
ことが出来なくなった。
230:溺れる恋心
06/07/01 20:10:39 njI/yncr
それよりもギュっと身体を押し付けてくるから背中に胸が圧し掛かって、ツンと
する感触に、ますます顔を赤らめる。
瞳はブラをしていないみたいで、そんな格好で、夜道をウロついていたのかなと
思ったら、なにか一言言ってやりたくなる。
だいたい、なんでアタシだけ裸になってるのよ! 彼女は、シャツの上にパーカー
まで着ているっていうのに…。これじゃ不公平だよっ。
「ねぇ、もう、ねぇってばっ、ヤダよ一人だけ裸は…。瞳も脱いでっ!」
「ん~~」
さっきから言ってるのにぜんぜん聞いてくれない。
曖昧に返事しながら、爪先で剥き出しの背中をツーって撫でられた。
釣り上げられたばかりの魚のように、思い切りビクンと反応する。
そんな姿を見下ろしながら、彼女がくすくすと愉しそうに笑う。
なんか、さっきから遊ばれてるみたいで悔しい…。こんな状況なのに、なんでそ
んなに余裕しゃくしゃくなの?
アタシは、緊張と不安と恐怖で吐き気が出そうなほどなのに…。
「ず、ずるいよ。脱いでよっ、脱いでくれないなら、もうしない…」
いじけたように壁のほうをぷいと向いて、身体を丸めた。
ふと、覆いかぶさってくる温もりが薄れて、ベットが大きく軋んだ。
バサリと音がして、ようやく顔を上げると、美術室の石膏像のように均整のとれた
裸体が目の中に飛び込んでくる。
231:溺れる恋心
06/07/01 20:13:31 njI/yncr
括れたウエストに縦長のお臍がカッコいい。
肉感のある張りのある胸の上にはピンク色の可愛い乳首がひっそりと飾られていた。
初めて見たわけじゃないのに、まるで初めて見るように胸がドキドキした。
なんで、瞳なのにアタシの心臓こんなになっての…?
お互いの家に泊まりっこするときには、一緒にお風呂に入ったことだってあるし、
瞳の裸なんて見慣れてたはずなのに…。
自分にそう言い聞かせるけど、最後に目にしたときよりもずいぶんと成長した姿に
だんだん面白くなくなってくる。
勝手に大人になっちゃって、いつだってアタシは置いてきぼりだ。なんかズルイよっ!
「これで、いい?」
上半身を惜しげもなく見せつけながら、堂々と言ってのける少女。そりゃ自慢の
ボディだもんねと拗ねたくなった。
同い年なのにこの差に、自分の貧弱な身体を見せるのが余計に恥ずかしくなる。
でも、もう互いを比べて卑屈になるのはよそうと反省したばかりだから、アタシは、
言いたいことをお腹に収めてコクンと頷いてみせた。
「いいけど…。でもやっぱりズルイよ。自分で脱ぐより、脱がされるほうが絶対
恥ずかしいもんっ…。」
「フッ…。可愛いー、奈々。アタシ、奈々のそういうとこ大好きよ?」
唇を尖らせて恨めしげに睨み付けると、ギュっと抱きつかれて、直にあたる感触に
「ひいっ」と悲鳴を上げそうになるのをなんとか飲み込んだ。
ますます赤く染まる頬を手の甲で執拗なほど撫でられる。
たったそれだけの行為でも、瞳に触れてもらっていると思うだけで陶酔してしまう。
あれ? なんか、さっきから、身体がおかしい。
お臍の下の辺りがジンジンしてるんだ。
232:溺れる恋心
06/07/01 20:17:16 njI/yncr
「…なーな?」
瞳の飼い猫を呼ぶみたいに。なんか、ホントに猫になっちゃった気分だよ。
顔を上げると、彼女がにっこりと笑んだ瞬間、ふいに目の前が真っ暗になった。
顔のあちこちに唇が押し当てられる感触に肩を窄める。左の頬、耳の後ろ、こめ
かみ、おでこ、鼻の頭、右の頬、そして唇へと…。
そうされるたびに瞳の長い髪が頬をこすって、それがくすぐったくて…。
でも、そんなのもめちゃくちゃに唇を奪われるうちに気にならなくなった。
顔中を舌で舐められて背筋がゾクゾクした。
アタシが猫というより、瞳が子猫になったみたいだよ…?
ピチャピチャと音を立てて首筋を舐めている少女の様子はミルクを飲んでいる
子猫そのものだった。
夢中になって、瞳の愛撫に応えていると、ミシミシと階段を上る音に身体がぎく
っと竦みあがった。
「………!!!」
なんか瞳の涙と甘いムードに押されてうっかり忘れてたけど、下にはお母さんが
いるんだった。彼女もその音に気づいたのか、アタシの上で腕立て伏せのまま
硬直する。
「わっわっ! ちょ、お、お母さんだよ。ど、どうしよう、瞳、電気、電気消してっ!」
「えっ…う、うん。あれ、ちょ、奈々、か、鍵、閉めてなくない!!?」
「そんなの間に合わないよう! いいから布団、早くっ!!!」
瞳が、手を伸ばして蛍光灯の紐を引張る。
アタシは、慌てて端に避けていた布団を掴んで頭から被った。と、同時にドアの
向こうから母親の声がして、心臓が口から飛び出そうになる。
233:溺れる恋心
06/07/01 20:20:32 njI/yncr
「奈々、奈々、もう寝たの?――ちょっと、アナタたちバタバタとなにしてるのよ?」
「―ご、ごめん…。ええと、その…テレビでヨガやってたんで、ちょっとやっ
てみてた…。うるさった?」
どうかドアを開けないでくれと、両手をすりすり合わせる。こんなことで神頼み
をするなんてバチあたりもいいところだろうけど。
薄い板一枚隔てた先で、娘が裸でいるなんて知ったら、お母さん脳卒中で倒れちゃうよ。
二人の姿を見れば、いくら能天気な母親でもなにをしていたのかなんて一目瞭然だろう…。
「もう、遅いんだからほどほどにしなさいよ!」
「う、うん…。もうヤメルよ。ていうか、アタシたちもう寝るところだからさ…」
「―そう。……あのね奈々、さっき瞳ちゃんのママに電話したら、いま、みんな
で、カラオケしてるんですって…。お母さんも誘われちゃったんだけど、行って
来ていいかな?」
「い、いいよー。今日は瞳もいるし、だいじょうぶだから。アタシのことは気に
しないで愉しんできて?」
瞳とは、小一から中三までずっと同じクラスだったこともあってか、必然的に
お母さん同士も仲良しになった。お父さんたちはゴルフ仲間だし。ずっとそんな
感じだったから、小学生の頃までは、よく両家で旅行に出掛けたりもしてた。
お母さんは専業主婦だけど、瞳のママは、自分の会社を持っているようなバリ
バリのキャリアウーマンで。
まるっきり正反対の性格だけど、娘たち同様、結構気があっているみたい…。
「そうよね…。瞳ちゃんがいれば安心よね。奈々ひとりじゃ心配だもの…」
「なっ、それ、どういう意味っ!」
「ちゃんと戸締りしていくから……それじゃ、瞳ちゃんよろしくね?」
「はーい。おやすみなさーい」
そう言って、遠ざかる足音を聞きながら大きくうな垂れた。
瞳も同じように枕に顔を埋めて息を殺している。
234:溺れる恋心
06/07/01 20:23:16 njI/yncr
「はあぁ…。焦ったぁー」
「ホント、寿命が縮むかと思ったよ…」
まったくだよ。10年は確実に縮んだね。
すごい心臓の音がする。ふたり同時にげっそりとため息をつく。
しばらくベットに並んで天井を見ながら、早打ちする心臓の鼓動が収まるまで
なにもしゃべれなかった。
「ククッ。……でも、ヨガって、奈々ったら最高っ!」
「だ、だってぇ……。あー、でも、ホント開けられなくてよかったぁー」
思い出したように瞳が笑う。アタシは、ムッと唇を窄ませながら、ベットの下をみた。
脱ぎ散らかした服までは隠せていなくて、あれを見られたらどうなっていたかと思う
と、ゾッとする。
「あれ? そういえば、今日、おじさんは…?」
「今日は、夜勤の日」
「そうなんだ…。うちのママ、奈々のママのこと大好きだから絡みだすとしつ
こいよ。きっと、帰ってくるの午前様だね」
「フフッ。そうかも…」
おでこをつき合わせてクスクス笑う。
でも、お母さんの思わぬ出現でなんだか気が逸れちゃったよ。そう言うと、
彼女は、あからさまにガッカリした顔をした。
それが、スーパーでお菓子を買ってもらえなかった子供みたいで、すごく可愛くて。
すっかり拗ねてしまったちいさな顔を両手で挟むと、そっと顔を引き寄せる。
途中で目を瞑っちゃったからちゃんと唇にあたっていたかどうかは不明だけど…。
まぁ、変なところにあたっていても瞳みたいに慣れてないから許してよね…?
目を開けると、きょとんとしながらその白い肌はサーとピンク色に染まっていった。
235:溺れる恋心
06/07/01 20:27:05 njI/yncr
「――なんで、そんな顔してるの?」
アナタのさっきの科白じゃないけど、耳たぶまで真っ赤っかだよ?
瞳がそんな顔をするの珍しくて、なんだかこっちにまで伝染してきて余計に恥ず
かしくなった。
「だ、だって、奈々からキスされるとは思わなかったから……」
「さっきもアタシからしたじゃない……」
「そ、そうだけどォ……」
赤くなったのを言い訳するようにしどろもどろ。
こういうところは、女の子なんだなぁって思う。カッコいい瞳もドキドキするけど、
なんかこっちのほうが安心するよ。
それに……。
「アタシだって瞳を気持ちよくしてあげたいよ? アタシだけなんて絶対いやだから…」
「うん……。ありがとう奈々。すっごくうれしいよ…」
同じ体。同じ染色体。そして、同じ年に生まれて。
どっちかがどっちかを…なんて関係は絶対に厭だった。瞳とは、いつまでも対等で
いたい。
昔からアタシがイジメっこに揶揄られると、でんと立ちはだかって守ってくれた。
でも、瞳だって、女の子なんだからホントは守ってもらいたいと思っていたかも
しれない。
アタシは瞳よりも腕力もないし、チビだけど…。だからって、彼女に男役を求め
たいわけじゃ決してない。瞳が女の子だったから、アナタを好きになったんだよ?
そう、アタシが思っていることをちゃんと知っていて欲しかった。
それくらい好きなんだよって…言いたかった。
カッコよくて、可愛いアタシの“カノジョ”。
この身体もこの心もすべて丸ごと自分の物だと思うと、眩暈がするように頭が
くらくらした。
236:溺れる恋心
06/07/01 20:31:43 njI/yncr
◇ ◇ ◇ ◇
せっかく電気を消したんだから、このままでしようよという提案はあっさりと
却下され。「初めての日だからこそ、ちゃんと奈々の顔をみていたいよ…」逆に、
甘い言葉を耳の中に吹き込まれて、すっかり歯向かう言葉に窮してしまった。
あぁ、どうして、いつも瞳はこうなんだろう…。
照れもなく、腰が砕けてしまいそうなことを簡単に言ってくれる。
先に大人になってしまった恋人のことが、やっぱりちょっとだけ悔しかった…。
10年前に買った使い古しのベットがきしきしとなっている。
無造作に飾られたぬいぐるみにジッと見られているみたいでなんだか落ち着かなかった。
いつも生活している自分の部屋で、こんな淫らな行為に耽っているのが、かえって
いけないことをしているように思えて。
「うあ……ぁ……。」
キスをしながら胸の先端を弄られる。
初めて人に触れられた感触に背中が大きく仰け反った。
上を向いた顎を噛まれて、舐められて、動く喉仏にまで舌を這わせる。
汗なのか涙なのかわからない露が目に入ってきて痛い。
「………ねぇ、奈々、すごい、ここ勃ってきたわよ…?」
「やあぁ……そ、そういうこといちいち言わないでってっ!!」
三本の指でちいさな膨らみをマッサージされながら、残った親指と人差し指で乳首を
グリグリと摘まれた。引張るようにされたり、指の腹で転がされたりして、アタシは、
そのたびにシーツに大きな皺を作った。身体を捩って抵抗すると、「もう、動かない
でよ」って瞳に笑われるけど、そんなのは聞けやしない。
ふいにちりっと痛みが走って思わず視線を向けると、愉しそうに悪戯する少女と視線
がかち合った。
指先でコリコリとアタシのそこを弄んでいる姿は、小学生のとき粘土遊びに夢中にな
っていたちっちゃい瞳の姿を連想させる。
237:溺れる恋心
06/07/01 20:35:29 njI/yncr
あの子に、そんなことをされているのかと思ったら余計に恥ずかしさがこみ上げて
くる。
すっかり茹で上がった顔を逸らすようにぷいと背けながらきつく唇を噛みしめた。
そうでもしないと、なんだか恥ずかしい声が出てしまいそうで。
恥ずかしいと告げることさえ、いまはただただ恥ずかしかった…。
「ん~~。奈々の身体、石鹸の匂いがする……肌、すべすべで気持ちいいねぇ?」
「お、お風呂入った…ばかりだから…瞳っ、くすぐったっ、…あっ、やだっ…。」
首筋に鼻を押し付けながらクンクンと匂いを嗅ぐ仕草をする。そのまま鎖骨にキス
されて、熱いくらいの唇が徐々に下りてくる。
目的の場所に到達すると、彼女は唇にするみたいにキスをした。
ビクンと跳ねる腰。感じてるって身体で言ってるみたいで、すごく恥ずかしい…。
アタシの胸は、彼女のおもちゃになってしまった。
右手は相変わらず指先で戯れて、左は、くちゅっといやらしい音を立てながら飴玉
を舐めるように舌を転がした。すっかり敏感になってしまったところを両方一辺に
されると、ビリビリと背筋が痺れて、脳みそが一気に蕩けだす。
口を開ければ、自分のとは思えないほどの甘い嬌声に、本気で泣きたくなった。
だって、なんだか、一人だけ舞い上がっているみたいで恥ずかしいよ…。
そんな顔を彼女に見られたくなくて両手で覆う。でも、すぐに手を取られて、そのまま
バンザイの格好にさせられた。
瞳は片手でアタシの両手首を一纏めにしてから、上からジッと覗き込んでくる。
「隠しちゃだめよ、奈々?」
「や、もう、やだよ~~」
なんで、アタシばかりこんな恥ずかしい思いをしなくちゃいけないの?
一人はイヤだって言っても、彼女は聞いてくれない。手を伸ばしても触らせて
くれない。ひどい。ズルイ。
238:溺れる恋心
06/07/01 20:37:46 njI/yncr
「奈々、恥ずかしくないから、声、出してもいいのよ?」
そうして、わざと声を上げさせるみたいに、胸に悪戯を繰り返す。舌先で周りを
舐めながら、口を窄めながらチューチューと吸い込まれると、もう、どうしていい
のかわからなくなった。
「…ひゃっ、やだっ、やだっ!!」
「もっと…、ねぇ、もっと気持ちよくなって、奈々?」
「んんっ、もう、ひ、とみ……あんっ、やだっ、それ、恥ずかしいよう……」
なんか、すごく変な気分だった。
瞳におっぱいを吸われているなんて…。
大好きな人にそんなことされて恥ずかしくてたまらないよ。皮膚に感じる直接的な
刺激もさることながら、視界から入ってくるビジュアルのほうに全身がカーっと熱
くなった。
あの幼馴染にこんな淫らなことをされていると思うと変なふうに呼吸が乱れて、息が
上手く繋げないんだ。
それに反するように、身体のほうは初めて感じる刺激に敏感に反応していた。唇で
愛撫されたところが、見るまでもなく固くしこっていくのがわかった。
「奈々、奈々、可愛いよ。いっぱいアタシで感じて……」
低く甘く耳元に囁いたと思ったら、そのまま耳の中に舌を差し込まれた。
ぞわっと鳥肌が立つ。
ぴちゃぴちゃと卑猥な音が、鼓膜を揺する。甘い吐息に煽られて、耳たぶを嬲る。
体中のいろんなところを舐められ、上がり続けた熱は体温計を振り切るほどに。
239:溺れる恋心
06/07/01 20:40:39 njI/yncr
ふと、愛撫の手が止まったのに気づいた。
喘ぎすぎてぜいぜいになりながら、ぎっちりと瞑っていた瞼をおそるおそる開く。
いつの間にか瞳は、下の方へ移動していた。Vの字に大きく開かれたの二本脚の間に
自分の身体を入れて閉じられないようにしながら、内腿のあたりをさらさらと撫であげる。
熱っぽく細められた彼女の眼差しの先にあるものに気づいて、ハッと目を剥いた。
「……ひ、ひとみッ!!」
彼女が次になにをしようとしているのかが分かって、思わず声を荒げた。
瞳は、意味ありげな視線を向けながら、爪先で内腿の敏感なあたりを擽り続ける。
「ねぇ、脱がせてもいい?」
コテンて、首を傾ける仕草が可愛くて、一瞬だけときめいたけど、言われた言葉に
ぶるぶると音が立つくらい激しく首を振った。
「だ、だ、だめっ! ま、待って、そこは………」
セックスがそういうものだってことは、拙い知識しか持っていないアタシでも
分かっていた。
自分だって、そのつもりで彼女を誘ったのだから、ココまできて、いまさら怖気
づくのもどうかとも思う…。
でも、こんな煌々とした灯りの下で、大好きな彼女の目にそこを晒されるのは、
予想外だし、やっぱり、それは怖かった。
その場所が、まだ触れられてもいないのにどんな状態になっているかわかるだけ余計に…。
「エーッ、どうして…?」
アタシの声に、彼女は可愛い唇をむうと尖らせる。
そういうところは、こんな行為をしていても同じ高校一年生なんだなと思った。
240:溺れる恋心
06/07/01 20:43:52 njI/yncr
「やっ、だって、そこは……。」
「ねぇ奈々、パンツすごい染みてるみたいよ…、いっぱい感じてくれたんでしょ?」
「……そ、そんな、言わないでよっ、瞳のバカっ!」
あぁ、恥ずかしくて死んじゃいそう…。
なんでも正直で、すぐに言葉に出すところがある彼女だけど、こういうのは、
すっごく嫌。
言われて恥かしいの瞳だって、女の子なんだから分かるでしょうに…もぉ~!!!
「なんでぇ? いいのォ…。だって、アタシ、すっごくうれしいもん今ぁ…。
ねぇ、奈々、もっともっと気持ちよくしてあげる。―うんん、違うね。アタシ
が奈々のこといっぱい気持ちよくしてあげたいんだぁ…。奈々の全部を愛して
あげたいの…。ねぇ、だから、いやって、言わないでよ、奈々?」
「…………」
もう、ズルイよ瞳は…。
そんなふうに言われたら断れないじゃない。
いつもいつもそうやって、言葉巧みに丸め込もうとする。
アタシのすべてを知り尽くしている彼女には、どうすれば落ちるかなんて簡単な
ことなのだろう。
悔しいけれど、その潤んだ眸は、ウソを言っていないことが分かるから…。
「お願い、瞳……分かったから…電気、電気だけは消してよ…」
か細い声で、そう懇願した。
ここまで来て「恥ずかしいからいやだ」なんて子供みたいなことは言いたくない。
恥ずかしいけど我慢する変わりに、条件を出した。
なのに、子供のような顔で「だーめ」と言われてしまい、遊園地で迷子になった
ときのように「ふえん」と泣きそうになる。
241:溺れる恋心
06/07/01 20:47:34 njI/yncr
「どうしても…」と懇願しても、ぜんぜん取り合ってくれないで。
どうしてこんな意地悪をするのかと、ひどく悲しくなった。
でも、巧みな話術と愛撫にすっかり懐柔されて、気づいたときには、ゴムに手が
掛かっていた。
最後の一枚だった布が足首に落ちていったとき、こみ上げてくるいろんな感情で
頭がグラグラした。
手で隠そうとするけど、すばやく取り払われて適わない。隠すことも許されない。
「……奈々?」
呼ばれても返事なんか出来ないよ。目を開けられない。
自分の身体の一部なのにアタシだってよく知らないところを恋人に見られてしまった
ことがショックだった。泣く寸前のときのように唇がへの字に変形しているのがわかる。
なんか、心のどこかで瞳とえっちしても、女同士だからだいじょうぶとか、お風呂
にだって一緒に入ったこともある仲だし恥ずかしくないとか、始まる前までは思っ
ていた気がする。
でも、それは、間違いだったと、いまはっきりと自覚した。
同じ身体を持っていて、でも、実際には大きさも色も形もぜんぜん違くて、相手
が女の子だからこそいろいろ比べて考えちゃったりもして…。
これならば、男の子とするほうがよっぽど恥ずかしくないんじゃないかなとさえ
思えてくる。
すっかり力が抜けてしまいだらんと伸ばしっぱなしだった脚が、九の字に折り畳
まれた。腰をぐいっと引き寄せられて、されるがままに。
「…ねぇ奈々、奈々とは一緒にお風呂に入ったこともあって、奈々の身体は知って
るのに、ここは、まだ見たことなかったね?」
脚の間で、そう独り言のように呟いた。
アタシは、聞いていないフリをしながら、赤く染まる瞼の裏を眺めていた。
242:溺れる恋心
06/07/01 20:51:13 njI/yncr
「うわっ…。女の子のって…こんなふうになってるんだぁ…。奈々、もうちょっと
脚の力抜いて、もっとよく見せて?」
彼女の指先が、熱くなったところに触れてくる。
閉まった扉をこじ開けるように両手で、そっと押し広げられた。
間近で息を感じて、たじろいた瞬間、中からなにかどろっとしたものが流れ出す。
彼女の見ている目の前で…。恥ずかしくて死にそうになる。
「ううっ、やぁだっ!!!」
「ねぇ奈々、すごい綺麗よ。艶々しているの……それに、いっぱい蜜が溢れてる…」
「やあぁ、言っちゃやだっ、もう、みないでよっ!」
強い口調で言ったつもりが、実際は、蚊の泣くようなか細い声だっだ。
身を捩って、彼女の視線から逃れたいのに、どうしてだか動けない。
かろうじて動いた腕で、その手を這おうとするけど、あっさりと彼女の手に掴ま
って、元通りの位置に戻された。
何度も何度もそれを繰り返しているうちに、だんだん力が入らなくなっていって…。
とうとうされるままになった。
焼け焦げるような熱い視線を感じる。彼女の綺麗な眸に自分の一番汚い場所が
いま映っているのかと思ったら、悲しくて死にたくなった。
「や、やだぁ……お願い、みないでぇっ……」
「ん~? どうして? ずっと見てたいよ、奈々のここ、すごく可愛いー」
その言葉に堪え切れなくて、ツーと涙が零れた。
いつも掛けられている言葉を使われたことがショックだった。
だって、そんなところが可愛いいはずがないもん。瞳が嘘をついたと思ったから…。
243:溺れる恋心
06/07/01 20:54:22 njI/yncr
「やだ、奈々、泣かないで? アタシ意地悪なことしてる? 奈々を気持ちよく
してあげたいだけだよ?」
「…………う…ぅぅ」
やさしい声音が小雨のように降ってくる。そうなのかもしれないと思った。
こんなことで恥ずかしがっている自分のほうが、どこかおかしいんだ。
みんなだってやっていることをどうして、アタシは出来ないのだろう…。
涙を拭いて、脚の力を抜く。
それでも泣いた名残で喉がひくひく言っていたけど。
身体を預けることで、瞳はアタシの気持ちを気づいてくれたみたい。
くすりとちいさく笑う声がして、指先がゆっくりと触れてきた。
最初は形を確認するようにやさしく、アタシが怯えないように…。そのうち呼吸に
合わせるように大胆になっていった。
片手でその部分を押し広げるようにしながら、上のほうの粒をやさしく弄られる。
その場所が気持ちいいことは知っていた。人には言えないけれど、たまに自分で
も弄ることがあったから…。
一人ですることを覚えたのは、中学三年の夏休みのときだった。
友達の家で、生まれてはじめてアダルトビデオをというものをみたときに出て
いた女の子がさせられていて、家に帰ってからこっそりやってみたのが最初だった。
瞳には死んでも言えないけど、最近は、恋人を想いながらこっそり触ることもある。
そんなときは、彼女を汚してしまったような気がして、ひどく申し訳ない気持ちで
いっぱいになって、朝に会うときとか、なんとなく気まずくて彼女の顔が見られな
かったり…。
いま、夢のとおりされているんだと思ったら、たまらずに肌が上気した。
244:溺れる恋心
06/07/01 20:58:14 njI/yncr
そういえば、あのときのビデオの中で女の子が男の人にされて、すごい声で喘いで
いるのみて、演技なのかなとかちょっと疑ったりしたけど、こういう声って、
ホントに出るんもんなんだと思った。
自分のじゃないみたいなこんなにいやらしい声をどこに隠し持っていたのかと思っちゃう。
もしも、お母さんが下にいたらば、いまごろ卒倒してるよ。
出掛けてくれてよかったと心底思った…。
「……ああぁっ、ゃっ、もっ、だめだよっ……」
何度も何度もその場所を擦り上げる。
爪先で自分でもしないくらい激しくされて、痛いような、むず痒いような感触が
背筋を一気に走りぬけた。
と思ったら、急に緩慢になって…。
さっきから、彼女のペースについていけないでいる。
ハァハァとマラソンを終えたような脱力感が襲った。
「うわっ、奈々、すごいまた溢れてきてるよ? ほら、音…。クチュクチュって
言ってるの聞こえる?」
「…っ…んも、瞳のバカッ……」
そんなことを言わないでよと、朦朧としながら声にならない声で泣いて叫んだ。
彼女の愛撫はとにかく執拗だった。自分でしているときだったらとっくに終わって
自己嫌悪しているところなのに、なかなか終わりにしてくれない。
中途半端に熱を放り投げて、今みたいに、アタシが乱れる様子を楽しそうに眺めている。
意地悪なのか、やさしいのか、わからない愛撫に心がひどく掻き乱れる。
アタシは辛くてしんどいのに。もう、我慢できないよ。早く終わりにしたい……。
もう許してよ瞳…。お願いだから…。いろんな感情が、涙となって溢れ出した。
「アタシ、奈々のこと泣かせてばかりで、なんか苛めてるみたいだね?」
「…………」
245:溺れる恋心
06/07/01 21:01:40 njI/yncr
視界が揺れて、はっきりと彼女の顔が確認できない。
瞳の甘い声とクチュクチュと淫らな音が入り混じって、それさえも快感を呼び起こす。
「小学生のとき、奈々を苛めてた男子みたいよね…。でもいま、ちょっとアイツら
の気持ち分かるかも…。奈々の泣き顔可愛いから、もっとしたいって…。奈々の
こと苛めちゃいたいって……ごめんね、奈々…」
手を休めぬまま訥々と語るように言う。
どう聞いても謝っているような口調じゃなかった。
でも口を開けば、妖しい喘ぎ声が洩れちゃうような気がして、非難の声もグッと
飲み込んだ。
「ごめんね…。ちょっと弄りすぎて赤く腫れちゃった…。もう弄るの痛いだろう
から舐めてあげるね?」
「……えっ?!」
なんか、また、とんでもないことを言われた気がした。
でも、頭が混乱していて、急な展開についていけないでいる。
足首を持たれて、ぐいっとさっきよりも大きく開かされる。その場所に彼女の
ちいさな頭が近づいてきたとき、瞳が、なにをしようとしているのかようやく理解した。
「なに、なに、ちょっ、やだって、瞳っ!!」
「だいじょうぶ。きっと気持ちいいよ?」
変なところでにこやかに微笑みかけられても、そんなの聞けないよ。
ちいさな頭を避けようと懸命にもがく。
「そ、そういうことじゃないよ! ちょ嫌っ、そんなことしちゃ、だめっ!!!」
思わず張り上げてしまった声に、彼女は脚の間からぴょこんと顔を上げた。
246:溺れる恋心
06/07/01 21:04:35 njI/yncr
「どうしたのよ奈々? だいじょうぶよ。みんなすることよ?」
「…………」
その言葉は、アタシの抵抗を失わせるには十分な効果をもった。
人と同じことができないのは恥ずかしいことだ。瞳に嫌われたくない。
がっかりされたくなかった。こんなことを恥ずかしがって変な子だって思われたく
なかった。
しゅんとしたまま身体の力を抜いて抵抗するのをやめると、彼女は、手を伸ばして
「いい子ね」と赤ちゃんにするみたいにアタシの頭をよしよしと撫でた。
本当に瞳の赤ちゃんになっちゃったみたいに、まるで、おしめを替えるような
卑猥なポーズを取らされて、頭がぐらぐらと煮えたぎる。
このまま、消えちゃいたいくらい恥かしいよ…。
あぁ…。ホントにみんなこんなことしてるのかな?
こんな格好までして、世界で一番好きな人に一番されたくないところをキスされて、
どうして、みんなは、平気でいられるの?
漫画やドラマとかで、こういうシーンときどきあるけど、こんなの一つも描いて
いなかった。恋愛は、ハッピーなことばかりじゃない。みんなこんな辛くて恥ず
かしいことを我慢しながらしているんだ。
それとも、そんなふうに感じるのはアタシだけなのかな?
「……んっ、んんっ、ああぁっ、あんっ、いやっ………」
でも、実際に舌でされてみれば、指でされるのとは比べ物にならないくらい強烈な
ものだった。
綺麗な唇を汚してしまったという罪悪感がスパイスになって。
なんかもう、頭も身体もグチャグチャだった。
247:溺れる恋心
06/07/01 21:08:25 njI/yncr
「おいしいよ、奈々?」
「……いや、言っ、言わないでよっ…」
わざとやってるとしか思えないくらいピチャピチャと卑猥な音を立てられて、
なにも見えないようにギュって目を瞑る。
おへその下が引きつって、痙攣みたいなのを起こしていた。腕で顔を覆う。
なのに…。
「なーな、ほらだめよ。顔隠さないで? 見せて?」
「……やだー」
もう、お願いだからそんなところからしゃべりかけないで欲しい。
尋常じゃないほど身体が熱くなっていた。湯あたりしてしまったときのように頭が
ボーっとなった。急にお腹の辺りが苦しくなって、ハッと顔を向けると、あまり
にも間近で瞳と目が合ってギョっとする。
両脚が不自然なほどに折りたたまれていた。おかげでお尻が浮いて、そこに正座
した彼女の膝が埋まると。
「ちょ、なにこれ~!!!」
「ん~? 舐めてると奈々の可愛い顔が見れないのが寂しいから……」
なにか言い訳のように告げながら、さっきの体制よりも少し上に向いた性器に
再び顔を近づけた。彼女が顔を寄せる寸前の、あの部分が視界に映る。
二つに裂けた皮膚の間のどぎついピンク色した粘膜がドロドロと蜜を垂れ流していた。
アタシは、唇をわなわなと震わせながら、とうとう堪えきれず涙を零した。
うそ…。アタシのそこって、あんなふうになっているんだ…。
気持ち悪いものを見たというよりは、なにか、ものすごくいやらしいもののように
映った。
248:溺れる恋心
06/07/01 21:11:25 njI/yncr
そんな場所を瞳にジッと見られて、舐められているのかと思ったら本気で抵抗した
かったけど、「これなら、舐めているところと、舐められている奈々の顔が同時に
見れて一石二鳥でしょ?」16歳の少女にくったくのない笑顔で言われてしまえば、
これ以上、なにも言い返せやしなかった。
「ううっ、だめ、そんなとこ、す、吸っちゃ…やだぁ………っ。」
なんどもなんども「やだ」と言うのが、実は反対の用語だと聡明な彼女はすぐに気づ
いて、アタシが口走るたびに執拗に続ける。
泣いて叫んで、許しを請うても彼女の愛撫の力は一向に衰えない。まるで、数年分の
想いを取り戻すかのようにやさしく苛められる。
あぁ…こんなのは知らない…。
夢の中の瞳はこんなことまでしなかった。ここにいるのは、本当にあの瞳なの…?
あまりにも彼女の行為が強烈過ぎて、まるで終わらないジェットコースターを乗っ
ている気分だった。
ふいに鈍痛を感じて、目を開けると頬を赤らめた少女と視線がぶつかった。
うっすらと陰る濡れた下生えの下に瞳の長い人差し指が突き刺さっているのを見て、
思わずギョッと目を剥きだす。
「痛い、奈々?」
でも、さっきとは一転、心配そうに尋ねてくる恋人に、思わずうんんとちいさく
首を振った。
痛みは、最初にズキっとしただけで、すぐに感じなくなった。
それよりもアタシの身体の中に、いま瞳の指が入っているのかと思ったら、そっち
のほうが驚きだった。
249:溺れる恋心
06/07/01 21:14:10 njI/yncr
「ごめんね奈々…。アタシ、なくて………」
「……え?」
寂しそうな目で、フッと瞳が笑う。一瞬、彼女がなにを言っているのか分からなくて、
でも、すぐに、いつかみたビデオのことをまた思い出した。
フツウのセックスは、男の子とするものだった…。
でも、アタシたちは、両方とも女の子で同じ身体で。あの行為をするには足りない
ものがあった。
だからって、瞳がそんなふうに言うのは意外な気がした。
胸の辺りが、針で刺されたみたいにチクチクと痛くなる。
お願いだからそんな寂しいこと言わないで欲しい…。二人の関係が間違っていると
認めるようなこと言わないでよ。
アタシたちがこうなったのは必然であって、間違いなんかじゃないでしょ?
たまたま好きになったのが女の子だっただけで…。
好きな気持ちが、彼らに劣っているわけでもない。
急にそんなことを言い出す恋人を怒鳴って叱りつけたかったけど、自分が男の子
じゃないことで、ずっと気持ちを伝えられなかったと言っていた言葉を思い出して、
アタシの上で儚げに笑う少女をギュっと抱きしめてあげたい衝動に駆られた。
こっちのほうもいろんな意味で辛い体制だったけど、自由になる両手を伸ばして、
彼女の肩をやさしく掴んだ。
「キスして、瞳?」
「……えっ?」
まっすぐに見つめながら。
一瞬、驚いたような顔をして、でも、すんなりと顔を寄せてくる。
やわらかい唇は、少し生々しい味がしたけど、そこは、目を瞑って我慢した。