19/06/02 11:39:26.81 X6R2CuVL.net
>>556
つづく
数学と他の科学,という分化が成立しないような例も多くあります: ニュートン (1642/43~1727) や, ライプニッツ (1646~1716) の時代には,物理学と数学は未分化で, たとえば,ニュートンは彼の力学理論を確立する過程と平行して,そこで 縦横に使われることになる,微分積分学の基礎を作っていったのです.
20世紀に入って数学と物理学が研究分野としてはっきりと分離した後でも, 数学者自身が,物理学の研究をしたり, 経済学の研究をしたりというような例も多くあります.
たとえば, フォン・ノイマン (Johann Balthasar Neumann, 1903~1957) , 量子力学という, 今世紀になって確立された,分子原子以下のマクロの世界にも適用できる, 新しい力学の数学的基礎づけに関する仕事や,数理経済学の確立などの 仕事や,コンピュータの設計原理に関する仕事(ノイマン型コンピュータという 言い方をどこかで聞いたことがあると思いますが,
これは, このノイマンにちなんだ命名です)などを行っています.
もともとは数学者ではない人が,その人の研究の必要から, 新しい数学理論を作ってしまう,ということもあります. チョムスキー (Noam Chomsky, 1928~) は, 彼の作った生成文法の理論により,現代言語学で画期的な仕事をしています.
チョムスキーの生成文法の理論は, もともとは自然言語を理解するために作られたものだったのですが, この理論は,現在では,コンピュータ言語 (コンピュータのプログラムを書くのために作られた人工的言語)の 理論の数学的基礎理論として,幅広く応用されています.
ノイマンやチョムスキーの例でも,ニュートンでの場合と同じように, 数学とその応用,あるいは,数学を道具として使った他の分野の研究, というような分化は,成り立たっていなくて,
一つの理論として, 量子力学とその数学的基礎を記述するための数学的枠組の整理, 経済学と経済現象を記述するための新しい数学理論,あるいは, 言語理論とその基礎理論を記述するための新しい数学, というような複合物