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馭戎慨言 - 日本外交史 本居宣長 (著), 山口志義夫 (翻訳)
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卑弥呼は神功皇后(じんぐうこうごう)の不正確な伝聞
『後漢書』にある「一女子がいた。名を卑弥呼と言った」とは、息長帯姫尊
(おきながたらしひめのみこと)=神功皇后の御事を、三韓などから誤り
混じりに伝え聞き申し上げて書いたものである。「卑弥呼」は姫児(ひめご)
と申すことで、神代の巻に「火之戸幡姫児千々姫命」(ひのとばたひめご
ちぢひめのみこと)、また「万幡姫児玉依姫命」(よろずはたひめごたまより
ひめのみこと)などと書かれている姫児と同じである。
姫を比弥(ひみ)と言っている用例も古い書物に見られる。だからこれは、
御国人(日本人)が常日頃尊んでこのように申し上げていたのを、韓人などが
聞いて伝えたものを御名と思い込んだのであろう。
「妖気で大勢の人を惑わすことが出来た」
などと言っているのは、戎人(からびと)が大御国の神の道を知らないために、
このような妄言を言うのである。