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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に日本が加盟した場合の経済効果をめぐり、政府が示した
「10年間で2.7兆円」という数字が波紋を呼んでいる。年平均では2700億円にすぎず、
農業などへの悪影響を懸念する慎重派は小さすぎると批判。一方で実際の経済効果は試算を大きく
上回るとする見方もあり、混乱を助長している。
「試算通りなら経済効果は国内総生産(GDP)の0.54%にすぎない。あまりに小さすぎる」。
民主党内の慎重派は政府試算を踏まえて、交渉参加に向けた動きにくぎを刺した。
これまでTPPの経済効果については、内閣府が2.4兆~3.2兆円のGDP引き上げ効果が
あるとしたほか、旗振り役の経済産業省はTPPに加盟しなければGDPが10.5兆円減少する
との数値を発表。逆に農林水産省は農業関連のGDPが7.9兆円減少するとの試算を公表し、
大きな混乱を招いていた。
このため政府は25日、経済効果は10年間で2.7兆円だとする統一見解を公表した。これにより
TPPの経済効果をアピールする狙いだったが、実際には効果の小ささばかりが際立ち、交渉参加への
批判をさらに強める“逆効果”を生んでいる。
もっとも、内閣府の客員主任研究官として、当の政府試算にも携わった野村証券金融経済研究所の
川崎研一・主席研究員は「規制緩和やサービス自由化がビジネスを生み、試算の3~10倍の効果が
出ることも予測されている」と指摘。こうした見方への理解が進んでいないことは確かだ。
さらにTPPには単純な経済効果だけにとどまらない意義もあり、経済産業省幹部は「世界貿易機関
(WTO)の自由化交渉が行き詰まる中、TPPは自由貿易圏を拡大するための重要な手段だ」と話す。
政府内には、11月12日から始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で交渉参加を
表明できなければ、「次のタイミングがいつになるか分からない」(関係者)との危機感があり、
TPP加盟の意義をよりていねいに説明することが求められている。
▽産経ニュース
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