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要介護の老親とその息子や娘が同居する世帯の苦境が、深刻になっている。子がワーキングプアで経済状態が厳しく、
介護サービスを削って親の健康を害しているケースが、県内でも目立つという。親の年金が頼りの世帯が多く、介護
関係者は「介護分野の支援だけでは救えない。親子共倒れの恐れもある」と心配している。
県西部にある訪問介護などの事業所によると、約百十件担当している世帯のほぼ一割に当たる十件が、要介護の親と
収入が不安定な子の世帯という。
一人息子(53)と暮らす母親(86)はひざを手術して、七段階の四番目に重い要介護2。週一回のヘルパーによる家事
援助を受けているが、入浴介助を受けると利用料の二百六十円が四百円になるため、シャワーで済ます。
世帯月収は、母の年金約八万円と息子のアルバイト十二万円。対人関係が苦手な息子はパートや期間従業員など職を
転々とし、現在の仕事は雇用保険もないという。
家賃は七万円で、母は介護サービス利用を控えている。配食サービスの弁当を親子で二日に分けて食べることも。介護
事業所の担当者は「息子が経済的に自立しない限り、母は十分なサービスを受けられない」と話す。
要介護3の認知症の八十代父親と暮らす四十代前半の息子。精神疾患のため荒れることがあり、ヘルパーは父の介護で
暴力を受けた形跡を見つけた。介護保険では息子のケアまでできないが、週二、三回の家事援助では、こっそり二人分の
食事をつくるという。
この介護事業所は「介護保険だけでは何ともならない深刻な事例が、ここ数年増えている」と指摘。「長引く不況で、独り
立ちできる仕事を得られない子が、親の足を引っ張っている」とする。
介護分野では、独居高齢者のケアや、高齢の子が老親を介護する「老老介護」が支援の課題とされてきた。あるケアマネ
ジャーは「要介護の親と子の同居世帯は、福祉制度の谷間に落ちている」と言っている。
※続きます。
東京新聞 2011年10月23日
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