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★東日本大震災:福島・二本松産米セシウム検出 コメ農家「収穫も出荷もしない」
◇無念さにじませ
福島県二本松市産の新米予備検査で国の暫定規制値と同じ1キロ当たり500ベクレルの
放射性セシウムが検出された問題で、生産農家の男性(56)が24日、毎日新聞の取材に応じ、
本検査の結果にかかわらず、「周囲に迷惑をかけるから出荷はしない」と話した。
「何も悪いことはしてないのに。初めから作らないほうがよかった」と無念さをにじませた。【山田毅】
男性の水田は同市小浜地区の山間部にある。
稲穂をつけた田んぼが広がり、遠くには磐梯山を望む静かな農村地帯だ。
祖父の代に山を買って、田んぼを切り開いた。
16歳のころから農業を手伝い始め、すでに40年がたつ。
大工のかたわらに農薬などを極力使わない安全なコメの生産に努めてきた。
予備検査の結果を知らされたのは23日夕。県の4月の調査で近くの土壌から
1キロ当たり4600ベクレルを超える値が検出されていた。
「ある程度高い値が出ることは予想していたが、500という値にはびっくりした」という。
作付けにあたっては、市から「大丈夫」との連絡をもらっていた。
「手間ひまと肥料などの経費は無駄になった」と、今年の収穫も出荷も断念した。
「本検査で400になっても、消費者は安全と思わない。生産者の責任でうちのコメは絶対出荷しない。
ほかの安全な福島県のコメに迷惑をかけるから」。7頭の肉牛も飼育しているが、稲が収穫できなければ、
餌の稲わらも用意できない。今後の飼育もあきらめるつもりだ。
同居する次女夫婦に7月、初孫が誕生した。外の物干しに干された孫の服を指さして
「本当は外に干すのも心配。原発から遠いはずなのに、理由は分からないけど線量は高いんだ。
でも避難の指示や特別な補償もない地域。いったいどうしろというんだろうか」とつぶやいた。
生活基盤を奪われようとしている現状に「東電は生きていくための最低限の補償をすみやかにしてほしい」と訴えた。
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