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金銭の提供を申し出て誘ったという限度では被告人の
供述は一貫しているが,その具体的態様については,上記のとおり,金銭の提供の
有無を含め,大きく変遷しているのである。抽象的には趣旨が一貫しており,かつ
被告人の立場における供述であることを考慮しても,その述べる具体的態様がこれ
ほどに大きく変遷している場合,客観的に明白な裏付けがあるなどの事情がなけれ
ば信用性を認めるのは困難である。なお,女性に手淫等をさせている写真等がある
としても,すべてが金銭の提供を約束してさせていたものということはできない。
Aに手淫をさせたという状況についても,被告人は,床に出すので携帯で撮影さ
せてほしいといって手淫させ,実際はコートのポケットに入れた包みが空であるこ
とが直ちに確認されないようにするため,Aの右手の手のひらに射精し,撮影した
と弁解するが,手淫をしている手である右手の手のひらで精液を受けさせるように
射精するということが可能か疑問である上,Aは,被告人が床に射精するものと考
え,手のひらに射精されることを予期していなかったことになるから,反射的に手
を離すのが自然と思われ,精液を受けさせた右手を撮影するということも想定し難
い。また,手のひらのみならず,コートの袖口にも掛かったのであるから,被告人
が述べるような経緯であれば,Aは,抗議や苦情を言うのが自然であるところ,そ
のような状況は被告人の供述からも現れない。
その他にも,被告人の供述は,原審が詳細に指摘するように,重要な点の変遷が
随所に見られる。総じて,被告人は自己に不利益と考える事実は当初は述べようと
せず,状況を見ながら弁解を転々と変更している様子が顕著にうかがえ,また,不
自然な点が多々あり,このような被告人の供述に信をおくことはできない。被告人
の原審供述が,当時の状況や客観的事実と積極的には矛盾しないとしても,それ
は,被告人が嘘であった旨を自認する様々な供述についても同様にいえることであ
る。被告人の供述に積極的,具体的に信用性を認めるべき事情はなく,その弁解が
客観的状況によく整合するというような評価には無理があると思われる。