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新聞・テレビは、私たち国民が知りたいことをわかりやすく報じているの
だろうか。3月11日に起きた東日本大震災、そして福島第一原発事故後、
メディアから流れてくるのは、「ただちに健康に影響はありません」
「確認中です」等々、国民を不安がらせる官僚用語の垂れ流し。新聞は
事故の責任より政局のお家事情と、原発事故のわけのわからない用語と
データで読者を翻弄しているのではないか―エッセイストの神足裕司
(こうたり・ゆうじ)氏が解説する。
* * *
私が一番ビビった瞬間は、3月12日。大地震翌日の午後4時過ぎ頃。NHKの
スタジオで2人の男が「ありえませんねぇ」とのんきに(そう見えた)言い合った時だ。
映し出された写真で、福島第一原発1号機の建屋が鳥かごのように骨組みだけに
なっていた。チャンネルを替えると、裏で日テレが爆発シーンを何度も流していた。
現場にいた東京電力社員でなくともこの世が終わったと感じた。「爆発だ」
「チェルノブイリだ」「それ逃げろ」「いや、今は外に出るな」と関東圏の住人が
恐怖のどん底に陥った一番大事な時にメディアは「ありえませんねぇ」かよ。
これでは何も言わないに等しい。
『福島第一原発事故と放射線』(NHK出版新書)に、あの時スタジオにいた
水野倫之解説委員が心境を書いている。「この時の放送を見ていた国の関係者に
言われました。『踏み込んだ発言だったね』と。彼が言いたかったのは、少しでも
状況が違えば、私の口走ったことは後々に『パニックを助長しかねなかった』
などと言われ、問題にならないか心配したのです」「踏み込んだ発言」とは、
屋外にいる人に屋内退避を、原発10km圏より外にいる人に原発から離れろと
呼びかけたことだそうだ。
チェルノブイリ原発事故では事態収拾に当たった作業員5万5000人が亡くなった。
ウクライナの市民団体は死者150万人と推定する。それだけの危険にさらされた
「視聴者のみなさま」を前に、「踏み込んだ」とか「後々問題に」と、自分らの
対面ばかりを彼らは気にする。
>>2以降に続く
ソース:URLリンク(www.news-postseven.com)