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「安全だって言うから信じていたんだけど」
「でも、私ら仕事もらえたの、原発のおかげでないの?」
5月下旬の東通村。公共施設で草刈り中の日雇いの女性5人が談笑を始めた。だが、記者が名前や年齢を聞こうと
すると、5人の顔がこわばった。「原発のこと話したと知れたら、会社に迷惑をかけてしまう」
原発や関連施設が集積する下北半島。福島第一原発の事故で住民の不安は高まる。だが、多くは口をつぐんだままだ。
むつ市の電気工事会社の社長(61)は、仕事の9割を原発関連など村で受注してきたという。「仕事が減ってもいい。
安全が確認できるまで原発建設は中断した方がいい」と社内では語っている。ただ、外部には言わない。「村ではなかなか
理解されない」
原発を1基誘致すれば、県や周辺市町村に入る電源三法交付金は50年で1384億円。立地市町村への固定資産税は
20年で244億円。国などが示すモデルケースだ。漁業補償金や関連工事の地元発注もある。
「原発の恩恵は計り知れない。めざせ東海原発、めざせ福島第一だった」。東通村で原発誘致にかかわった
元村総務課長(66)は振り返る。
退職後の1999年、原発建設の作業員を当て込んで予定地近くでコンビニ経営を始めた。今年1月に東京電力1号機の
建設が始まると、客足は1日100人から500人に伸びた。だが、工事中断で元に戻った。
知事選では、東通の原発4基計画を見直すと訴える候補もいる。元課長は「4基ならメンテナンス業者が常駐してくれる。
1基や2基ではたまに業者が来るだけ」。昔の寒村に戻ってしまうことを心配する。
「村では、いま反対も賛成も言うことはタブー」。このコンビニの女性店長(62)の口は重い。自宅で東通原発と大間原発から
半径20キロの円を下北半島の地図に描いてみた。「逃げ場がない。海に逃げるしかない」。新しい知事には、身近に原発を
抱える恐怖をわかってほしいと思う。
asahi.com:原発不安、口重く 現場から-下北半島-マイタウン青森
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