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福島第1原子力発電所の事故で、今後懸念される最悪の事態の1つは、原子炉の
圧力容器内の底に溶融した核燃料が集まるなどして、再び核分裂反応を始める
「再臨界」だ。平成11年に茨城県東海村で起きた臨界事故では、再臨界によって、
放射性物質(放射能)が拡散したとされるが、今回のケースでは、再臨界の可能性は
限りなく低く、仮に起きたとしても汚染拡大の可能性は低い。
その理由は、原子炉内での臨界がどういう状態で起きるかを考えると分かりやすい。
臨界は、(1)直径約1センチの核燃料棒を0.5センチ間隔で並べた核燃料集合体を
約1センチ間隔で配置し、(2)水で満たした上で、(3)それぞれの核燃料集合体の隙間に
挿入した制御棒を引き抜く-という3つの条件がすべてそろわないと起きない。
今回のケースでは、地震直後に制御棒がただちに挿入されたので、(3)の条件を満た
しておらず、再臨界は起きないと考えられる。
制御棒が抜ける可能性は極めて低いが、仮に抜けたり、核燃料棒が溶融したりして、
再臨界が起きた場合はどうなるのか。
その際のエネルギーは、炉心の水が、高さ約20メートルの圧力容器の天井に届くか
どうかのレベルで、爆発して圧力容器が破損し、放射性物質が一気に拡散するなどという
事態にはならない。
運転中の原子炉内の臨界では、100万キロワットもの電気を放出する力があるにも
かかわらず、一度、原子炉が停止した後の再臨界では、その程度のエネルギーしか
発せられないわけだ。
もう一つ、再臨界が起きる可能性として、使用済み核燃料プールがある。東京電力は
「4号機の核燃料プールが再臨界となる可能性は否定できない」との見解を示したが、
これについても可能性は極めて低い。
つづっく