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昨年の総選挙の愛知9区で落選し、政界を引退した自民党の海部俊樹元首相(79)が回顧録
「政治とカネ」を出版した。「札束は300万円積んで初めて(横に)立つ」「デパートの紙袋
に入るのはせいぜい2億円」などと、自民党総裁選や野党工作の生々しい体験をつづっている。
海部氏は名古屋市の写真館に生まれ、1960年から衆院議員。冷戦終結の89年から2年、首相を務めた。
自民党では三木武夫氏や後継の河本敏夫氏の派閥に属し、クリーンな政治を唱えたが、三木氏が
田中角栄氏に敗れた72年の党総裁選などで、同僚議員らに対し、「金の運び屋」も経験した。
派閥のボスに信頼される中堅の役目で「必要悪」と割り切ったが、金を受け取っても票を入れない
裏切りも目の当たりに。悔しくてカメラの前で泣いた。
当時は国会が紛糾し、審議に応じずに「寝る」野党に対し、「寝起こし賃」も配った。相手のメンツ
をたて、忘れたふりをして部屋に置いてくるなど、芸も必要だった。
「表ざたになったらどう思われるか」。そんな悔いから金のかからない政治への改革をめざした。
ただ、自民党が他党と連立する時も金が動いたといい、「金権政治を批判してきた者が、金の力で
連立してしまう。政界は魔界」。 リクルート事件などの後、自身が選出された89年の総裁選では、
「(中心になった)竹下派も金を撒(ま)いていない。さしもの竹下氏も、この頃にはすでに金を
使い果たしたというか、むしり取られたというか……」と振り返った。
いまも金の話題に独特の反応をする。小沢一郎元民主党代表の資金管理団体をめぐる事件で、
秘書が「(4億円を)紙袋で受け取った」と供述した、というニュースを聞き、すぐ考えたのは、
「何袋だろう」。デパートの紙袋は2億円の札束が入るが、片手で運ぶならせいぜい1億円、
と知っていたからだ。
[朝日新聞]2010年12月1日12時49分
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