08/12/13 01:37:00 gnSDgCGE0
畏れ多くも新人の分際で言わせていただけるなら「そんなん俺のせいじゃねえよ」って
ところですが、まあ言えませんよね。初日だし。ぺーぺーだし。相手、日和子さんだし。
狩男 「ほう……では鷲介よ、おまえには完全に非がないと申すか」
鷲介 「な、ないですよ」
日和子「……きっ!」
ぞっとするほど冷たかった日和子さんの目が、いきなり火花を散らすように燃えあがり
ました。
狩男 「あるみたいだぞ」
鷲介 「うそーん」
俺はしょぼくれた仔犬のように鳴いてマスターの背中に隠れました。
しかし狩男氏は、俺と彼女のそんな一触即発ぶりを察していながら平然と言うのです。
狩男 「ところで玉泉君。仕事の話に戻るのだが、君を千歳鷲介の教育係に任命する」
日和子「えええっ!?」
それはとても大きな声─ていうか、すでに悲鳴でした。こんなに分かりやすい嫌われ
方は久しぶりです。思わず俺も聞こえよがしな泣き言を漏らしていました。
鷲介 「うわあ、日和子さんったら、なんて感情を隠せないひとなんだろう」
狩男 「うむ。おそらくベッドの上でも凄いのだろうな」
ばんっ!
日和子さんがカウンターテーブルの上に平手を貼りつけて俺を睨んでいます。
鷲介 「ち、違うこっち! いまの発言こっち!」
俺は慌ててセクハラ上司の体を前に押しだしましたが、いまさら彼女の気色ばんだ表情は
和らぎません。
日和子「……店長」
狩男 「なんだ、玉泉トレーナー」
日和子さんの苗字には、早くも新たな役職名がくっついていました。
日和子「そのお話、慎んで辞退させていただきます」
言葉ばかりで、慎みのかけらも感じられない確答でした。