08/10/29 20:43:25 ZdnYTLE40
>>432
「俺は俺だからな」
何やら新しい定理でも発表するかのようにこいつは宣言した。
漸く気づいたらしい。何と言う効率の悪さだ。
本当に以前の私は全く信じられん。
こんな頭の悪いヤツとこれからも付き合っていかなければいけないとは。
「…………」
私は盛大に溜息を付いた。
バカ進矢、という単語が唐突に頭に浮かんだ。
だが、口から出たのは違う言葉だ。
「ふん。使えそうなうちは置いてやる」
そう。使えそうなうちは。
「さっさとこい。愚図が」
こんなやつの背を追いかけるのも癪なのでわたしは追い抜いた。
後ろで馬鹿が軽く笑ったようだった。
すぐに追いついてきた馬鹿は言った。
「手でも繋いでいくか?」
「調子に乗るな馬鹿」
私は差し伸べてきた手をすぐに払った。
無視すれば無理矢理にでもこの馬鹿は手を握ってくる。
そんな事は自明の理だ。
「いいじゃん、たまにはそうしようぜ」
「死ね」
全く堪えていない。すぐに私の横に並んできた。
前に出られると癪なので私は速度をあげる。
使えるうちは置いてやる。
負けずに速度を合わせてくる馬鹿を一瞥した。
そう。使えるうちは置いてやる。
それが以前の私との契約。
徐々にお互いの速度を上げながら私は馬鹿と並んで歩く―。