10/02/28 01:28:36 0PyfJ9ln0
ストリート全体がピンク色の照明に、文字通り染まっていた。
3年前、タイのパタヤビーチ。その夜も、ベトナム戦争が遺した欲望渦巻く町は、熱とネオンで強烈な非日常性を帯びていた。
軒を連ねるゴーゴーバーの中では多くの女性達が客を待ちながら退屈そうな顔を覗かせていた。
客は彼女たちと言葉が通じる必要はない。ただ店と二言三言、女を連れ出すことを伝え金を払えば良いのだ。
それでどちらもハッピー、ウィンウィンの関係。貫徹したビジネスの成立を、至る所で見ることができる。
私はその夜、乾季の空気の違いを感じながら、日本人団体客の到着を待っていた。
当時私は、ヤクザ時代に築いた地元警察とのつながりを利用して、ありがちなビジネスを行っていた。
日本人観光客向けの食事の手配、ホテルの手配、移動手段の手配、そして女性の手配をしていたのだ。
実際に私自身が行っていたのは、最後の女性の手配だけだったが。
タイ人の女性のうち、日本人の好きそうな顔立ちの子を、彼らに変わって店主に「とっておいて」もらうわけだが、
それは政治力と金の作用だった。警察にどれだけ賄賂を渡したか…、それが巡り巡って良い女のキープ権に
影響を及ぼした。最も、パタヤは都落ちをした女達が多かったわけだが、裏市場はバンコクと同一ではなかった。
携帯に出ると、大きなオカマ声が聞こえてきた。ゴーゴーバーの店主だ。不貞腐れた口調で彼は話し始めた。
「今日あんたがキープした子が逃げたの。それで代わりの子建てるけど確認してほしい」
私はため息混じりに、わかった、とだけ言って電話をきった。
到着時刻までだいぶ余裕があった。店まで近いが、どうせ碌でも無い女を建てたのだろうと、私は苦い顔をしながら
急ぎ足で店に向かった…。
みたいなのどっか作って欲しい。