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水没コンピューター その可能性は|NHK NEWS WEB
URLリンク(www3.nhk.or.jp)
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「熱を発するコンピューターをそのまま水に沈め、冷ます」。
コンピューターと言えば水に弱いというのが、これまでの常識ですが、それを覆すような研究が今、進められています。ポイントになるのが防水性です。どのようにすれば水の侵入を防ぐことができるのか。研究の最前線を取材しました。
(ネット報道部 副島晋記者)
コンピューターの敵は熱
東京北区にある国内でも最大規模のデータセンター。企業から業務用のコンピューターを預かり、24時間動かしています。預かっているコンピューターは、数万台にも上ります。3年前から運用が始まったこの施設では、最新鋭の空調機器を使って、企業のコンピューターを冷やし続けています。冷却には一般家庭の3000世帯ほどの電力が必要で、電気代は年間で1億円を超えるといいます。
このデータセンターを運営するNTTコミュケーションズの瀬尾浩史主査は、「コンピューターは冷却できないと熱で止まったり、場合によっては壊れてしまうので、冷却には非常に気を遣っている」と話しています。
水槽で3か月稼働
コンピューターを水に沈めることができれば、空調施設を使わなくても冷やすことができるのではないか。こうした発想で新たな研究に取り組んでいるのが、国立情報学研究所の鯉渕道紘准教授と藤原一毅特任准教授です。目指すのは、水に沈めたままでも長時間動き続ける、名付けて「水没コンピューター」です。
鯉渕准教授は「携帯電話の防水サービスを見て、これはコンピューターも同じように防水をすれば、水の中に沈めることができるのではないかと考えた。空気よりも冷却の効率がいい水を使えば、効果的に冷やすことができ、冷却コストを抑えられると思った」と話します。
研究を始めて3年。水道水を入れた水槽の中で、コンピューターを3か月連続で動かし続けることに成功しました。カギになったのは、コンピューターの基板に施した「パリレン樹脂」という特殊なコーティングです。通常、複雑な計算などコンピューターに大きな負荷をかけるとあっという間に温度が上がりますが、水につけた状態ならすぐに温度が下がることが確認できました。
たび重なる失敗の末
コンピューターの防水性を高めるため、2人は、それまでも、さまざまな防水方法を試してきました。
最初に目をつけたのは、液体のエポキシ樹脂です。電気を通さない「絶縁性」が高いうえ、水をはじく特性があり、まさに防水加工にはうってつけの素材だと考えました。しかし、実際に塗ってみると、どうしても塗りムラが出てしまいました。水がしみこんで基板がショートし、水の中でうまく動かすことができませんでした。
続いて試したのは、アルミ製の箱。コンピューターの基板に合う形のアルミの箱を製作して、箱のつなぎ目を防水剤でコーティングしましたが、つなぎ目からの水の侵入を防ぐことはできませんでした。
このほか、新開発の防水スプレーも使ってみましたが、思うような結果は得られませんでした。
「どうしたら、うまくいくのだろうか」。防水技術に関する情報を集める中で、見つけたのが「パリレン樹脂」でした。
パリレン樹脂=パラキシリレン樹脂は、今から約70年前にイギリスで発見されました。これも、エポキシ樹脂と同じく絶縁性と耐水性に優れた素材ですが、エポキシ樹脂にない特徴があります。樹脂を液体ではなく、気体の状態にしてから素材に貼り付けるため、より薄くムラがなく、基板の上に塗ることができるのです。
(以下略)