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テラヘルツ光照射による高次構造変化を実現 | 理化学研究所
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テラヘルツ光照射による高次構造変化を実現 | 60秒でわかるプレスリリース | 理化学研究所
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テラヘルツ(THz)光は、周波数が1兆Hz付近(0.1~100THz)にある電磁波です。電波と光の間の周波数で、両方の特性を持っています。かつては“未踏の光”と呼ばれていましたが、近年、世界的に光源開発が進み、日本でも自由電子レーザーなど高強度THz光源が開発され、それらの装置を活かした応用研究が始まっています。なかでも、高強度THz光と物質の相互作用の解明は、物理、化学、生物分野における新しい現象の発見につながると期待されています。
THz光の周波数は、高分子の高次構造の運動や高分子鎖間の水素結合の振動運動の周波数に相当します。そのため、高強度THz光の照射は高分子の高次構造やその運動状態を変える可能性があります。したがって、高分子の高次構造の変化をTHz光によって誘導できれば、高分子の機能や物性を変える新しい手段が生まれると考えられます。
理研の科学者を中心とする共同研究グループは、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)のクロロホルム溶液からポリマー膜を作製する際、大阪大学の自由電子レーザーによって発生した周波数3~8THzのTHz光を照射しました。レーザー共焦点顕微鏡によって、ポリマー膜表面の結晶構造を観察した結果、数マイクロメートル(μm、1μmは1,000分の1mm)サイズの大きな結晶構造をしていました。このときの結晶化度は57%で、THz光を照射しなかった場合の値である37%に比べて、20%の増加がみられました(図参照)。結晶化度とは、高分子中に結晶が占める割合のことで、高分子の融点や硬さなどの物性を決めるパラメータです。
このようなポリマーの構造変化は、一般的には熱の影響で生じます。しかし、今回の実験条件では、THz光照射による温度上昇を1℃以下に抑えているため、単なる温度の違いが結晶化をもたらしたとは考えられません。THz光が、ポリマー分子や周囲の溶媒分子の運動状態になんらかの影響を与え、それが結晶化へつながったと考えられます。
今後、今回の高次構造変化のメカニズムの解明が進めば、THz光による機能性材料の開発や機能制御など、高分子を対象とした新たなテクノロジーの確立につながると期待できます。