16/09/06 13:00:24.64 CAP_USER.net
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黒田東彦日銀総裁は5日、都内での講演で、「量・質・金利の各次元での拡大は、まだ十分に可能」と述べ、改めて金融緩和に限界はないとの認識を示した。
ところが、金融市場では「失望のドル売り・円買いが強まった」(FX業者)とされ、講演後にはドル安・円高が進み、日経平均株価は伸び悩んだ。
「黒田総裁がいくら金融緩和の限界を否定しても、実際には限界が近い」(大手邦銀)と金融市場は見透かすためだ。緩和限界を突破する手段は、日銀による「外債購入」だが、今のところ実現の見込みは極めて薄い。
黒田総裁はこのほか、「2%の物価目標をできるだけ早期に実現するコミットメントを堅持することが重要」と指摘し、早期のデフレ脱却に取り組む方針を確認。
金融緩和の効果と副作用を慎重に見極めた上で、「なお思い切った措置が必要になることは十分考えられる」とも述べ、追加緩和実施に含みを持たせた。
こうしたアピールは残念ながら金融市場を納得させるには至らず、物価の2%達成も信用されていない。
金融市場が日銀を見透かすのは、政策運営の矛盾が目立つためだ。具体的には「金融緩和に本当に限界がないなら、
毎回の金融政策決定会合でどんどん緩和するのが筋」(銀行系証券アナリスト)であるからだ。実際には、1月にマイナス金利を決め、
続く数カ月は円高・株安、物価低迷を座視して現状維持を決めた。7月には追加緩和したが、中身はETF購入の増額だけ。なぜかマイナス金利と量的緩和は温存した。
これに加えて解せないのは、「3次元緩和」の「総括的な検証」に入ったことだ。緩和手段の組み合わせを見直す、というのは一見するともっともらしいが、
よくよく考えれば3次元での同時緩和が一番強力なのだから、「検証する暇があったら早くそうすればいい」(外資系証券エコノミスト)と言えるからだ。
あえて検証することにしたのは「限界が近いからで、戦力を逐次投入したいのだろう」(同)と勘ぐらざるを得ない。
緩和の限界を見透かされると、日銀の政策運営は一段と窮地に立たされる公算が大きい。なぜなら、「追加緩和を講じると、限界がさらに近くなり、
緩和余地はますますなくなった」(FX業者)と受け止められ、さらなる円高・株安を招く恐れがある。手持ちの戦力が乏しく、
連戦するほど敗退しやすくなったようなもので、「日銀はどうあがいても勝ち戦に持ち込めない」(同)というわけだ。
では、緩和の限界を突破する手段は何もないのか、と言えばそうでもない。前回のコラムで、為替介入権を持たない日銀の悲劇を解説した。
この為替介入権に相当するのが「外債購入」で、浜田宏一・内閣官房参与が先日、「選択肢の一つ」と評価した。浜田氏は米イエール大名誉教授で、
安倍晋三首相の経済ブレーンだ。ロイターとのインタビューで、「穏やかな(介入の)形として、日銀が外債を買うことも選択肢」と語った。
日銀が外債(例、米国債)を市場から買うと、見返りに円資金が供給される。これは為替介入の「円売り・ドル買い」と同じ資金の流れとなり、
「介入とほぼ同等の効果が得られる」(大手邦銀)わけだ。為替を所管する財務省が為替介入すると、露骨な通貨安政策とみなされ、国際的な批判を浴びる。
この点、日銀の外債購入は、円資金を供給する手段と位置付け、「穏やかな形(の介入)」(浜田参与)となると考えられる。
外債購入は介入とほぼ同等の効果があるが、日銀はなお否定的
ただし、日銀は十数年前に外債購入を検討したことがあるが、結局は財務省の反対もあって実現しなかった。
浜田参与の発言があった直後、布野幸利日銀審議委員は会見で、「外債は日銀が金融会合で決定すれば、購入できると思います。
ただ、(日銀の金融政策は)為替を動かす、というたてつけになっていないので、(外債購入は)実際に政策として遂行できるかは難しい」と否定的な見解を示した。
布野審議委員の会見要旨(日銀ホームページより)
前回のコラムで、為替市場への関与ができない日銀を「対空戦力を持たない軍隊」に例えた。これは「対空砲を持たない戦艦大和」とも言っていいだろう。外債購入は、そんな日銀にとって唯一の対空砲となり得る。
3次元緩和を見直す範囲での緩和強化は、早晩、行き詰まり、戦艦大和は座礁する。本気で物価を上げたければ、実現は厳しいが、外債購入を真剣に検討するしかないように思われる。