16/06/12 13:27:20.53 CAP_USER.net
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近頃、トヨタ自動車の「プリウス」のタクシーを見かけることが多くないだろうか? 従来のタクシー車両といえば、LPガスを燃料とするセダン型の専用車と相場が決まっていた。
ところが、数年前から都内の繁華街などでプリウスのタクシーが急増。最近は、都内以外でも目にすることが多くなっている。
1997年に登場した世界初の量産ハイブリッドカーであり、トヨタを代表する人気モデルのプリウスが、なぜタクシー車両に使われるのか。
タクシー車両をめぐる自動車メーカーの事情について、自動車に詳しいライターの呉尾律波氏に話を聞いた。
タクシー車両のトヨタ独占はバブル崩壊が原因だった?
--プリウスに限らず、タクシー車両にはトヨタの専用車「コンフォート」が非常に多く、業界シェアは実に9割といいます。
なぜ、ほかの自動車メーカーはタクシー専用車を積極的につくらず、トヨタの独占を許しているのでしょうか。
呉尾律波氏(以下、呉尾) そもそも、自動車メーカーにとってタクシー車両というのは、あまりうまみがない事業です。なぜなら、街中でタクシーを見て、
「同じクルマを買いたい」とは思いませんよね。一般層への販路はもちろん、買い替え需要もほとんど見込めません。
その一方で、部品は供給し続けなければならないので、利益率も高くないのです。
メリットがあるとすれば、公共事業と同じで「自動車業界内で大きな顔ができる」ことぐらいでしょう。タクシー事業は、自動車メーカーにとって
「何がなんでもやりたい」ものではなく、むしろ地力のある企業しか手が出せない難しい分野。そのため、トップメーカーであるトヨタの独占状態になっているわけです。
--トヨタがコンフォートの販売を始めたのは、95年です。うまみがないとすれば、なぜトヨタはタクシー事業に参入したのでしょうか。
呉尾 90年代の後半まで、日産自動車がタクシー車両を独占していました。日産のタクシー専用車「クルー」が、現在のトヨタのコンフォートのように、
タクシー車両の8割を占めていたのです。それがトヨタに代わったきっかけは、バブル崩壊です。
タクシー事業の存続には企業としての体力が必要ですが、日産の営業利益を追ってみると、撤退した理由が一目瞭然。バブル崩壊以前、
日産の営業利益は89年の3月期が92億円、90年は138億円、91年には119億円と、好調が続いていました。
しかし、バブル崩壊後の92年になると33.8億円に下降し、93年には一気にマイナス33.6億円、94年にはマイナス36.6億円にまで落ち込みます。こ
れは、俗に「日産の三大天皇」と呼ばれる一部経営者たちによる企業の私物化も原因とされ、この厳しい状況が、99年にカルロス・ゴーン氏を最高執行責任者(COO)に迎えるまで続きました。
--営業利益の落ち込みによって、日産はタクシー事業などの不採算事業をカットせざるを得なくなったわけですね。トヨタには、バブル崩壊の影響はなかったのでしょうか。
呉尾 トヨタは海外展開に力を注ぐグローバル企業で、バブル経済下で日本中が浮かれていた時も、不動産投資などの余計なことは行わなかった。
そのため、バブル崩壊のダメージが少なかったので、日産が撤退したタクシー事業という穴に「儲けはないが、せっかくだから」と滑り込んだのでしょう。
これが、今日まで続く「トヨタによるタクシー事業の独占」の構図です。
プリウスのタクシーは乗り心地が最悪?
--そのなかで、プリウスのタクシー車両が増えているのはなぜでしょうか。一説には、トヨタが4年前に発表した「LPガスを燃料とするタクシー専用車の生産を2017年に中止する」
という事業展開が理由とされていますが、エコカーはプリウスに限らず、ほかの自動車メーカーにもたくさんあります。
呉尾 車両をLPガス燃料車から切り替えていくにあたり、各タクシー会社が燃費のいいエコカーに注目するのは当然です。プリウスは、そのエコカーの
代表格ともいえる存在で、耐久性などの性能面でも他メーカーのものと比べて一日の長があります。また、プリウスが「エコカーにしては安っぽくない」ということも大きな理由でしょう。
例えば、ホンダのフィットの場合、エンジン音は静かですが、内装がプラモデルのようなプラスチック製なので、加速すると「ポーン」と安っぽい共鳴音が鳴ります。
これでは、タクシー車両に向いているとはいえません。