16/01/25 18:32:19.34 CAP_USER.net
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日本は今、空前のIT技術者不足。ユーザー企業のIT部門も、SIerも、下請けベンダーも、
そしてブラック企業も「必要な頭数を確保せよ」と、まるでモノか何かをかき集めるかのような
口調で技術者の“調達”に奔走している。この私にさえ技術者不足への対策を聞いてくる人がいるが、
そんな時は必ず「諦めてください。それが日本や大勢の若者のためです」とだけ答えることにしている。
なぜ、そんな木で鼻をくくったような態度をとるかと言うと、これまで抜本的な対策を打とうともせず
、周期的に「技術者が足りない。大変だ!大変だ!」と騒ぐ浅薄な連中が大嫌いだからである。
それに、モノか何かのようにかき集められる若者の将来よりも、国や大企業などのシステムのほうが大事だと思っている
点もゲンナリする。そんなものは圧倒的に小事である。
そもそも、「技術者不足への対策は技術者を増やすこと」と脊髄反射的に考えるのは、
何とかならないものだろうか。ご存知の通り、システム開発の需要は景気などの影響を受けて大きく変動する。
今のように需給が逼迫している時にかき集めた技術者の多くは、不況になり需要が大きく落ち込むとお払い箱になる。
技術者を増やすという対策は、人でなしの所業である。
「モノか何かのように」と書いたが、本当のモノだと、人のようにはかき集めることができない。憶えているだろうか。
日中関係が緊迫したのを受けて、中国がハイブリッド車のモーターなどの製造に
不可欠なレアアース(希土類)の対日輸出を、一方的に停止したことがあった。
なんせ中国はレアアース生産量の9割を握っていたから、日本の主力産業が大打撃を受けると、
それこそ「大変だ!大変だ!」と大騒ぎになった。
その結果、どうなったかと言うと、何事も無かった。代替素材の開発などが一気に進み、
中国産レアアースへの依存を大きく減らしたのだ。まさにモノ不足がイノベーションを引き起こしたわけだ。
で、普通はこうだろう、と思う。なぜハイテク産業であるはずのIT業界では「技術者不足→大変だ!大変だ!→若者をにわか技術者に仕立てろ」
になってしまうのか。あまりに安直である。
ITベンダーは日頃、顧客に向かっては「これからはITを活用したイノベーションが必要」とご宣託を語る。
これはもう悪い冗談にしか思えない。自分たちはというと、そんな“お告げ”に自ら耳を傾けず、
人海戦術の労働集約型産業からいつまでたっても“イノベーション”しようとしない。そして技術者が足らないとなると、
「素人でもいいから、人をかき集めろ」となる。
まさに人月商売、IT業界の多重下請け構造の恐ろしさである。SIerをはじめとする
ITベンダーは人月商売にどっぷりとつかっているから、需要に対する技術者の頭数でしか
ビジネスを考えることができなくなっている。しかもSIerなど大手ITベンダーは、技術者不足だからといって
正社員を増やす必要はない。業界の多重下請け構造により、外部の技術者を安く“調達”できるのである。
さらに人月商売が始末に負えないのは、技術者不足だからといってもITベンダーは本質的には何も困らない点だ。
モノ不足の場合、先ほどの例で言うと、もしレアアース不足の問題が解決していなかったら、
高性能モーターなどを造れず、自動車産業をはじめ多くの製造業が苦境に陥っていただろう。
製品を造れないのだから、下手をすると経営破たんといった最悪のケースもあり得る。
人月商売のITベンダーの場合、作るものは一品モノの情報システム。技術者不足で外部調達もままならないのなら、
官公庁や金融機関などの上客の案件に技術者を回して、それ以外の客の案件は断ればよいだけだ。
客は困るだろうが、知ったことでない。しかもSIerなど大手ベンダーは不景気になっても、
下請けベンダーを切り内製率を上げれば、容易にしのぐことができる。
まさに労働集約というローテク産業の特権。人月商売万歳、多重下請け構造さまさまである。
「火中の栗作戦」などとアホなことを言って危ない案件を取りにさえ行かなければ、生きるか死ぬかといった
他の産業のような苦境に陥る心配が無い。そんな経営者がノホホンとしていられるような環境では、
イノベーションなどどだい無理な相談なのである。