肉奴女王、永遠への旅路 完結編at SM
肉奴女王、永遠への旅路 完結編 - 暇つぶし2ch113:肉奴女王、永遠への旅路 完結編85
07/09/24 13:42:44 3IkQUVw0
二人の日本人女性が、OWQのクイーンオブクイーンの座についたニュースは
衝撃をもって日本のSM界に報じられた。
収監されてるコギャル達4人には美香が真っ先に知らせた。
また、かつて二人とともに聖隷館との死闘を戦った九州SM界の女王たちは帰郷
していたエミーを始め、歓喜に沸きたった。中華街の李の元にも朗報が届き、
店の前では季節はずれの爆竹が響く。また救愛会のメンバーや、元タイトマダム
の従業員達も、かつての友の栄誉を我がことのように喜んだ。古くは彼女たちが
在籍した東京のSM店など「世界のクイーンが元在籍していた店」などという商魂
露な広告を掲載した。
世界のSM誌などのメディアもプラハに取材に駆けつけ、OWQは一時営業に支障が
でるほどの喧騒が続いた。しかしその営業も東洋人の新女王誕生の宣伝効果は
抜群で、連日の盛況が続き、他の女王たちのスケジュールもびっしり埋まっていた。
夏美と洋子は雑誌グラビア用の撮影等で、しばらくは朝から晩までボンデージ
衣装のまま過ごさねばならなかったが、その疲労さえも今は至福に感じた。
(瑠璃香さん、見ていてくれるかしら 私たちの晴れ姿を‥‥‥)


114:肉奴女王、永遠への旅路 完結編86
07/09/24 13:44:20 3IkQUVw0
時を同じくして瑠璃香も、しあわせな時を過ごしていた。
模範囚として出所してきたルリと、二人で暮らし始めていたのだ。
スーパーマーケットのパートという以前の瑠璃香からは考えられない
仕事をしながら‥‥‥。
「お母さん、私も働くわ」 ルリも、仕事を選ばず一心不乱に汗を
流して働いた。
そんなある日、ルリが雑誌に掲載された夏美と洋子がクイーンオブ
クイーンの座についた記事をもってきたのだ。
「見て!お母さん 夏美さんと洋子さんよ!」
「夏美! 洋子!」 瑠璃香は懐かしさで涙が溢れた。
「ふたりとも 本当によく がんばったわね すごいわ‥‥‥」
ルリは感涙にむせぶ瑠璃香をニコニコしながら見つめていた。
「でも、二人ともかっこいいわね 日本にいた時とは別人みたい 
 昔のお母さんと どっちがかっこいいかしら?」
屈託のなく笑うルリを見て 瑠璃香も涙を拭きながら笑った。
「もう‥‥‥。ルリったら‥‥‥」


115:名無し調教中。
07/09/24 23:50:58 5ZvXtA3E
mattetayo


116:恭一
07/09/27 22:59:58 NLUiSEAw
koreijoumatasunayo

117:秀明
07/10/03 21:28:45 nNEXoH+1
まだやってねえのかよ

118:畑山伸二
07/10/15 22:38:06 2Tx9wozZ
いつまで待たせんだよ!

119:肉奴女王、永遠への旅路 完結編87
07/10/16 06:56:17 QJLAWRwA
夏美が過労で倒れたのは、新女王誕生のフィーバーが収まってから1ヵ月後だった。
プレイ中に気分が悪いと部屋を出た夏美は、廊下で倒れているのを発見された。
「夏美 しっかり! 」キャンセルが出て空き時間になった洋子も飛んできた。
救急車でプラハ市内の病院に運ばれた夏美に、支配人が気を利かせて洋子を付き添いに
つけてくれた。
 医者の話によれば夏美の容態は、貧血と極度の緊張の連続からくるストレス障害と
いうことだった。
「1週間ほど安静にしていれば、元の健康体になります」という医師の説明に洋子は
ほっとした。病室で息をたてて眠ってる夏美の横にそっと座った洋子は、夏美の額を
そっとなでた。
「夏美‥‥‥ しばらくは仕事を忘れてしっかり休んでね」
洋子は次の日から、夏美の分もという気持ちで仕事を精力的にこなした。
ダイアナ女王が、その様子を見て。
「ヨーコ、あなたまでたおれたら、クイーンオブクイーンが不在になるんだから
 少しセーブしなさい」とブレーキをかけるほどだった。


120:肉奴女王、永遠への旅路 完結編88
07/10/16 06:57:55 QJLAWRwA
夏美が倒れて5日後、洋子はダイアナ女王のすすめもあって、休暇をとって夏美の見舞いに行った。
夏美が好きなお菓子を買い込んだ洋子は、病院につくなり、夏美が病院の売店で買い物をしてる
のを見て、かけよった。
「あら 洋子 どうしたの? こんな時間に?」 洋子が買ってきたものと同じお菓子を買って
笑う夏美に洋子はあきれて言った。
「もう夏美。 安静にしてなさいよ。 今日はお休みをいただいたのよ」
二人は表のベンチでしばし談笑した。そして病室へ帰り、明日に控えた退院を前に
夜の料理の話でしばし盛り上がった。
「ソフィーたちOWQの若手全員が、あなたの快気祝いに家に来るっていうのよ 
楽しみにしてて」
「洋子の料理が楽しみね 私はワインを1本病院の帰りに買っていくわ」
そういいあって別れた洋子はドアをあけると、夏美の担当医師が立っていた。
「申し訳ありませんが、退院が少しのびそうです」と医師は言った。
「‥‥‥え?」 洋子は驚いた、過労ではなかったのか?
「来週もう一回検査をします。一週間後の今頃の時間ににどなたかご家族が来ていた
  だけないでしょうか?」
洋子は胸騒ぎを覚えた。
「それは、‥‥‥‥ 夏美は 他の病気なんですか?」
病室の夏美に聞こえぬよう洋子は、声を殺して聞いた。
「その時に、お話します。 ご家族は‥‥‥‥」
「いません。 ‥‥‥‥私が来ます」 洋子はきっぱり言った。
それからの一週間、洋子は仕事が手につかなかった。 見かねたダイアナ女王が
 洋子に理由を聞いたが、洋子は夏美の病気のことは話せなかった。
「あなたも疲れがたまってるのね、明日は夏美の病院に行く日ね ちょうどいいから
一日休みなさい」というダイアナの声に
「わかりました。 すみません」と洋子は、うなだれて言うしかなかった。

121:肉奴女王、永遠への旅路 完結編89
07/10/16 07:00:38 QJLAWRwA
病院についた洋子は、重い足取りで医師の部屋を訪ねた。医師は待っていたと
ばかりに、すぐにレントゲン写真を見せながら説明に入った。
「癌です 」
洋子は奈落に突き落とされる自分を感じた。
(あああ   夏美  夏美  夏美!!)
「‥‥‥‥先生、夏美は、夏美は助かるんですか?」
「‥‥‥‥残念です。 もって あと1年でしょう」

洋子の目の前から地上すべてが崩れ落ちた、いや正確には、そう感じた。
そのあとの医師の話はほとんど洋子の耳には聞こえてこない。医師の部屋を出た
洋子は、幽鬼のように彷徨い、病院の庭に出た まだ昼間だというのに何故こんなに
あたりが暗く感じるのだろう。 洋子は人気の少ない、木陰に行って地面にがっくり
膝をついた。
(夏美! 夏美! 神様!!! あんまりです なぜ なぜ? 夏美が!)
激しい慟哭が何度も突き上げてくる。洋子はひとしきり泣いた。一生分の涙をすべて
使い果たすかのように泣いて泣きじゃくった。
 1時間も泣いただろうか、洋子は夏美の病室に向かった。医師によれば夏美にはまだ
 知らせていないそうだ。
夏美には泣き顔だけは見せまい‥‥‥洋子は、全身全霊をこめた普通の表情を作った。
「あら 洋子 遅かったわね」
夏美の声がはずんでいた。病室に閉じこもって退屈していた様子だった。
「そうよ、けっこう忙しいのよ、夏美がいないからよ」
洋子は精一杯の演技で、いたずらっぽく笑った。
「先生に聞いたら、明日退院できるって やっとうちに帰れるわ」
「あ、 そ そうだっけ‥‥‥」洋子はあわてた 
「何よ、さっき先生と話してたんじゃないの?」夏美はふくれる
「あ、ごめん肝心なとこ聞いてなっかたわ‥‥‥‥」と取り繕う洋子を疑いもせず
「もう、あの先生って男前だからね~ 洋子好みの感じだしね」と夏美は笑う。
洋子は怒ったふりして、
「何よ、その言い方、まるで私が浮気もんみたいじゃない」と夏美をにらんだ。
洋子は、ともすれば ほとばしりそうになる夏美への激情を必死に抑えた。


122:肉奴女王、永遠への旅路 完結編90
07/10/16 07:02:55 QJLAWRwA
翌日、退院した夏美は、洋子の待つアパートへ帰ってきた。
「あ~先週の快気祝いやりたかったなあ~ 結局みんなの都合がつかなくて中止か~」
残念そうに夏美が言う。
「みんなごめんっていってたわよ、また近いうちにやりましょう まだこれから先、  
  時間はいっぱいあるんだから」
と自分で言ったセリフに洋子は思わず衝撃を受け、心の中の涙があふれ出た。

(夏美、もう私たちには時間が無いのよ‥‥‥‥ああ 夏美 )

「洋子どうしたの?」夏美が料理の手を止めた洋子に聞いた。
「あ、そうか、だいじょうぶよ 今日は好き嫌いなくなんでも食べるわ
 だって愛する洋子が私のために作ってくれるんだもの」夏美が笑う
「夏美 ありがとう 腕によりをかけて作るからね」洋子は夏美の声に
  救われたように笑った。

食後に、洋子の料理の腕を褒めた夏美は、ポツリと言った。
「洋子の料理が食べられるのも‥‥‥あと、何回かしら‥」
「‥‥‥‥な、‥‥‥何言ってるの 夏美」洋子の顔から血の気が引いた。
「隠さないで洋子、自分の体のことだもの よくわかるわ。 
本当は倒れる前からわかっていたのよ」
「やめて 何、言ってるの夏美 へんなこと言うと怒るわよ」
「今日、私は洋子が来たのを窓から見ていたわ、それから先生の部屋に
  入っていくのも、そしてあなたがそこから出てきて、私の病室に来ないで、なぜか
  中庭で泣いていたのも、すべて病院の窓から見ていたのよ」
「‥‥‥‥‥な、なつみ‥‥‥‥」
「洋子、あなただけは私に隠し事はしないで、例えそれが私に対する思いやりでも」
ついに洋子は顔を覆って泣き出した。こんなむごい定めがあるのだろうか、ようやく
愛する夏美と幸せな日々を手に入れることができたのに‥‥‥‥。
「洋子 ああ洋子 愛してるわ洋子」夏美が洋子に抱きついてきた。
「夏美 夏美 わたしの夏美‥‥‥‥」


123:としふみ
07/10/19 21:58:11 MdBX17eY
この後どうなる?

124:ごう
07/10/22 20:12:37 RPbGaGNT
matuzo

125:肉奴女王、永遠への旅路 完結編91
07/10/27 11:45:59 GFpeukFJ
3ヵ月後、二人はアパートを引き払った。短い期間に買い揃えた家具や食器は
すべて世話になった大家に託し、ほとんど荷物をもたたなかった。
その足で、二人はチェコに来て以来 二年半を過ごしたOWQに向かった。
すでに1ヶ月程前にOWQを退く意思を伝えてある。理由は体力的な限界を感じた
ということだった。たしかに夏美は復帰を果たしたが体調不良にため休みがちに
なっていた。ダイアナは何度も引き止めたが、二人の意思が固いのを見て、慰留
をあきらめた。他の女王もみな残念がった。その中には彼女たちに憧れて入って
きた女王もいた。

朝のOWQは一番早い総支配人が来ているだけだ。
「お世話になりました。みなさんによろしくお伝えください」
「しかし、これから先どうするつもりだね 日本に帰るのかい?」
支配人は聞いた。夏美の病気のことはOWQに人には誰にも話してない。
「ええ、そのつもりです。」
「でも、その前に見ておきたい所があるんです。支配人はチェスキー
 クロムロフって街知ってます?」
「ああ知ってるよ、モルダウ河をさかのぼったところにある世界遺産の街
 だろう?‥‥あそこはいいところだよ」
「行き方がちょっとわからないので教えていただけますか?」
支配人はバスの時刻と、乗り場などを調べてくれた。
「ありがとうございます。このOWQのことは忘れません、支配人もお元気で」
二人は丁重な挨拶をして、城をでた。



126:肉奴女王、永遠への旅路 完結編92
07/10/27 11:49:31 GFpeukFJ
表に出た瞬間、二人を大歓声がつつんだ。
「ナツミ ヨーコ ナスフレダノウ!」(※さようならの意)
「ナスフレダノウ!!!」 妹のようなソフィー女王が二人に抱きつく。
OWQの女王たちが勢ぞろいしていた。ダイアナ女王が夏美と洋子に抱擁してきた
「あなた達こそ 真のクイーンだったわ 元気でね」
二人の目から大粒の涙がこぼれた
「みんな ジェクイ ジェクイ」(※ありがとうの意)
全員と抱擁をかわした夏美と洋子は、チェコに来てOWQに来て本当によかったと
思った。二人は、いつまでも古城とその前で手を振り続ける女王たちにむかって
日本語で「さようなら―」と手を振り返した。


チェスキークロムロフは、支配人が言ったようにモルダウ河をさかのぼった
南ボヘミア地方というところにある、小さい宝石のような街だった。
街をつらぬいて流れるモルダウ河(ブルタバ河)が大きく湾曲したところに
旧市街という街区があり、そこには高い塔のついた古城があり、この複雑で
魅力的な小都市を見下ろしている。
夏美と洋子は、この街に来ていた。かわりものの神父がいるという話を聞い
たからだ、3日間探しあるいた二人は、ようやく場所を聞きその神父をたずねた。
崩れ落ちそうな教会の庭を掃除してるおばさんに聞くと、神父は昼から酒をくら
って寝ているという。
「ずいぶん型破りの神父さまね」二人は笑いあった。
「でも、わたしたちにはぴったりかも」
昼でも暗く埃くさい教会に入っていくと、大きないびきが聞こえてきた。
そのボルキ神父が聖壇の前で寝ていたのだ。二人が神父を揺り起こすと、神父は大きな
あくびをして不機嫌そうに体を起こした。
「ドブリー・デン」二人はあいさつをして、神父にあるお願いをし始めた。
神父は、たどたどしいチェコ語で必死に頼むこの東洋人の女性に興味を引かれたらしく
OKというように指で○のマークを作ると、また根っころがって寝てしまった。
「ほんとうに大丈夫なのかしら? この神父さん」
二人は、不安げに顔を見合わせた。


127:肉奴女王、永遠への旅路 完結編93
07/10/27 11:53:46 GFpeukFJ
その次の日の夜、二人は、ブルタバ河を見下ろす古城にたっていた。
二人ともプラハで買った純白の花嫁衣裳を着て。
「夏美‥‥‥‥ やっと私たち‥‥」
「洋子‥‥ ずっとこの日を待っていたわ‥‥‥‥」 
青白い月光が二人のウエディングドレスを鮮やかに照らし出す。
そのとき、後ろから咳払いが聞こえた。
「あ、神父様よ」二人が振り返ると、そこには昨日とは見違える正装をして
神々しいばかりの端正な顔立ちの神父がたっていた。驚く二人をにっこりと笑い
ながら手をとり城のかつての聖壇の残骸のところまで導く。
このボルキ神父は、どんな祈りでも捧げてくれる神父としてチェコでは、一部
の人の間では有名だった。その行為は異端とみなされ教会組織から締め出しをく
ってはいたが。一部の人というのは同性愛者である。普通の教会では執り行って
もらえない同性同士の結婚式をどこでもあげてくれる神父として有名なのだ。

チェコの片隅の町の古城で、日の光を浴びることもなく、まして祝福する客もなく、
しかし彼女たちにとってかけがえのない儀式は終わった。 
二人は神父の前で永遠の愛を誓った。
「ありがとう‥‥‥‥神父様」
「世の中にはいろいろな愛の形がある 大切なのは相手が誰かではない、
  相手をどう思うかだよ‥‥」
そう言い残して、静かに神父は去っていった。

あとには静寂が残された。

「夏美‥‥‥」「洋子‥‥‥」
もう、二人にとって言葉さえも無意味だった。二人は静かに抱き合い、
床に身を倒した。
たった今着ていたウエディングドレスをベッドがわりにして、二人は
お互いの女自身に顔を埋めあい、何度も何度も愛し合った。そこにはもはや
性別も年齢もなかった。生も死も超えた不思議な感動だけが二人を包んでいた。


128:肉奴女王、永遠への旅路 完結編94
07/10/27 12:05:26 GFpeukFJ
OWQの門の前に一人の若い日本人女性が立っていた。
ドアが開き城内に案内された、その日本人女性をダイアナ女王が待っていた。
「ようこそ ルリ 」
ルリは、数ヶ月前に夏美と洋子の記事を見て以来、SM女王に深い興味を持ち始めていた。
母にその気持ちを打ち明けて、SM女王に成りたいと申し出た時に瑠璃香は当然反対したが、
その後元気の無いルリを見るたびに、瑠璃香は己の血がルリにもまた色濃く流れていること
を思わずにはいられなかった。ルリの決意が本物であることを確かめた瑠璃香はついに娘が
自分と同じ道を歩むことを許したのだった。
ルリは瑠璃香のつてを使わずに六本木の老舗「女王の椅子」に入店し、メキメキ頭角を
顕していった。そして、大手SM雑誌が企画した都内の有望新人女王の海外研修に応募し
見事その座を勝ち取っていた。研修の中には、もちろんOWQも含まれていた。ようやく
今日そのOWQにやってきたのだ。
「夏美と洋子に、私の近況を伝えて」という母のメッセージをたずさえて。

「あの‥‥夏美女王様と洋子女王様には、本日はお会いできますか?」
圧倒的なOWQの雰囲気に呑まれながらも、もともと語学が得意なルリは流暢な
英語でダイアナ女王に聞いた。ダイアナは少し寂しそうな表情になって。
「‥‥残念だったわね、彼女たちは引退したわ」
「‥‥‥‥え!‥‥‥?」大きな目を見開くルリの顔を見て、ダイアナは
「あなたは、彼女たちのファンなの?」と聞いた。
事態がすぐに飲み込めずとまどうルリは
「‥‥‥はい、‥‥あ、あと 母から近況を報告するように言付かって
  きたんです」
「母? お母さんはなんておっしゃるの?」ダイアナは、もしやと思った。
「あの‥‥‥瑠璃香といいます。わたしと1文字違いの」


129:肉奴女王、永遠への旅路 完結編95
07/10/27 12:07:44 GFpeukFJ
ダイアナは感嘆した。
「そう、あなたが‥‥‥。 お母さんのことはナツミとヨーコからよく聞いていたわ
 日本一の女王様だったそうね‥‥‥」
「はい、‥‥‥あ、いえ そんな‥‥‥」

ダイアナはしばらく、目をおとして何かを考えている風だったが、やがて
「いい ルリ よくお聞きなさい、ナツミはもうあとわずかの命だと思うの‥‥‥‥」
「えっ!!!‥‥‥‥‥」ルリは絶句した。

ダイアナは夏美の病気のことを、最後まで洋子から聞かされなかったが、そこは長年
人間を見てきたカンで、よくわかっていた。二人が絶頂期の今何故引退を申し出てきたのか、
そして夏美を気遣う洋子の態度すべてが、そのことを意味していた。そう思ったからこそ、
二人の退店に同意せざるをえなかったのだ。夏美の検査の結果は、3ヶ月も前にわかって
いたはずだ、それを私たちOWQの人々に隠し通したのは、彼女たちが出したある結論を
誰にも干渉されたくなかったからに違いない。それにしてもOWQに迷惑をかけまいと
3ヶ月もその苦行をやりとげた夏美と洋子の精神力にSMに対する深い愛をを感じた。
そして二人がだした結論は、二人を貫く愛という感情から来ていることは、ダイアナには
わかっていた。

「二人は、深く愛しあってるわ‥‥‥ナツミがいなくなったらヨーコもきっと‥‥‥」

ルリは、目の前がぐるぐる回っている気がした。 このことを母が聞いたら‥‥‥。

「‥‥‥ルリ、二人がここを出たのは3日前よ、今ならまだ間に合うかも‥‥
チェスキークロムロフに行くと言ってたわ。悔いを残さぬよう行ってらっしゃい」

ダイアナの好意で、ルリはすぐにチェスキークロムロフに向かった。


130:肉奴女王、永遠への旅路 完結編96
07/10/27 12:09:43 GFpeukFJ
古城で神父と二人だけの結婚式をあげた夏美と洋子は、朝日の光を白い裸身いっぱいに
受けて目をさました。二人は、しばし相手の顔を見て、微笑みながら静かに服を身に纏た。
古城を出て古い街並みの中 二人はゆっくりと歩を進め始めた。
旧市街のはずれまで来た時に、目前に若い日本人とおぼしき女性が立っているのが見えた。
「ル‥‥‥‥ルリちゃん‥‥?」
「夏美さん 洋子さん‥‥‥‥会えた 会えたわ‥‥‥」

そう言うと、ルリは目に涙をためて泣き出した。
夏美と洋子は、もう誰にも会わないだろうと思っていた矢先に、瑠璃香の分身でもある
ルリに今こうやって邂逅が出来たことに、運命的なものを感じた。
「ずいぶん立派になったわね‥‥‥」
「瑠璃香さんは どう? 元気かしら?」

二人の悟りきったかのような静かな笑顔からは、せっぱ詰まったものは感じられない、それが余計にルリの不安をかき立てた。

「夏美さん 洋子さん 私には本当のことを言ってください! 
 二人は、このまま 死ぬ おつもりなんですか?」


131:肉奴女王、永遠への旅路 完結編97
07/10/27 12:14:25 GFpeukFJ
夏美と洋子は、ルリが泣き崩れながら訴える姿を見て、ルリを静かにかかえ路傍に
腰をおろした。そこでルリは、女王になったことや、海外研修でOWQに来たこと、
OWQでダイアナ女王に言われたことを包み隠さず話した。
 夏美と洋子は、ダイアナがすべて見通していたことに、少し驚いたが、ダイアナ
の眼力を知っている二人には、それも当然のことのように思えた。
「でもねルリちゃん、私たちは死ぬためにここに来たのではないのよ」
と夏美がルリの涙を拭きながら優しく言った。
「‥‥‥‥で、‥‥でも」
目を真っ赤に腫らして泣くルリに、瑠璃香譲りの無償の愛の姿を見た洋子がにこやかに言った。

「私と夏美は、長い長いSMという道を旅してきたわ。 
 でも‥‥‥それも、ようやく終わったの。 ここに来たのは、二人で新しい旅に出るため。」
そこまで言うと洋子は遠くを見つめる目つきになった。
「本当に、本当に‥‥‥ 長い旅だったわ‥‥‥‥」

洋子の言う 「新しい旅」 の意味がわからないルリは、しゃくりあげながら聞いた。
「今度の旅は、新しい旅は‥‥‥永遠の旅路よ、私と夏美と二人だけの‥‥‥」
(それは‥‥‥つまり、二人で) と言おうとしてルリは、二人の笑顔を見て言えなかった。
二人の愛の強さが、生や死を超えた所にあるということなのか、それとも二人は未だ何かを
求めて、この異国の地を旅していこうとしているのか。 ルリには、その答えこそが永遠の
中に息づいているように思えた。
ルリは、母の近況を熱心に話した。そうすることで二人が旅立つのを少しでも引き留めようとするかのように‥‥‥。
「ありがとう ルリちゃん あなたにあえて良かったわ」
「瑠璃香さんには手紙を書いて、昨日ポストに投函したの、もう少ししたら日本に届くかもね」
その手紙は、おそらく別れの手紙なのだろう、 そう ルリは思った。


132:肉奴女王、永遠への旅路 完結編98
07/10/27 12:16:09 GFpeukFJ
「これ‥‥‥‥、あなたに、もらっていただけるかしら‥」 

そう言って二人は自分達の首から、それぞれネックレスをはずし、ルりの手に渡した。
「じゃあ私たちは、もう行くわね‥‥‥‥。がんばってねルリちゃん」 

 腰をあげて、涙にくれるルリを優しく抱擁した夏美と洋子は、そのまま後ろを振り
返らずに歩み出していった。ルリはその後ろ姿を涙を湛えた目で悄然と見送るしかなかった。 

(さようなら‥‥ 夏美さん 洋子さん ‥‥いえ 夏美女王様 洋子女王様 )



「夏美、ルリちゃんは いい女王になりそうね」
「そうね、 瑠璃香さん‥‥洋子‥‥そして私  
次の世代の女王である彼女に何か大切なものを伝えることが出来たのかしら‥‥‥‥?」
「あのこはきっと わかってるはずよ ‥‥わたしたちが何を求めて歩いてきたか‥‥」

夏美と洋子の中で、長い歳月の出来事が脳裏に明滅した。

「多くの人との 出会い、別れ‥‥‥そして、やっと私たち 二人になれたわね‥‥」
二人は、深い南ボヘミアの漆黒の森の中に足を踏み入れていく。
「夏美‥‥‥‥、この森を抜けたら、きっと私たちの新しい旅が待ってるわ‥‥‥」
「洋子‥‥私たちは、永遠に一緒よ‥‥‥‥」
手を握り合った二人は、永遠の旅路を求めて、ボヘミアの森の中へ消えていった。

それ以降、二人の女王の姿を見たものはいない。


133:肉奴女王、永遠への旅路 完結編99
07/10/27 12:22:50 GFpeukFJ
「瑠璃香様

このお手紙が日本に着く頃には、私たちはもう次の旅路へ歩き出していると思います。
私は病気になってしまいました。その病気は現在の医学では治癒することが難しく、
私に残されている時間は、あまり無いということでした。それを聞いた時は洋子と
アパートで三日三晩泣き通しました。ようやくおだやかな日が私たちに訪れようと
していたのに、と神様を恨みました。でもその後に、あることに想いいたったのです。
実は私たちにとってSMというゆりかごの中で過ごしていた日々こそが穏やかな日
だったのでは、と。 そう思った時に、自分を愛してくれた人々のことが無性に
愛おしくなりました。多くの人たちの愛が私の中に息づき、今も私を内側から支えて
くれていることに気がつきました。その中で瑠璃香さんから受けた愛はとても大きく、
私を、このように考える事の出来る人間に成長させていただきました。そんな大事な
瑠璃香さんと最後にお会い出来ないのは心のこりです。私は今、無償の愛を注いで
くれる最も大事な人と人生の残りを過ごせることに、本当の幸せと感動を噛みしめて
います。洋子と行くこれからの旅がどのようなものであるか、私にはわかりません。
ですが、どうか私が最後まで幸福な人生を送れたことを信じていてください。
瑠璃香さんとルリちゃんの人生もきっとそうであると信じています。 最後に李さん
を始め、日本のみなさんに、どうかよろしくお伝えください。
二人は今、幸福への旅路を歩いていると。    
                        ──夏美       


134:肉奴女王、永遠への旅路 完結編99
07/10/27 12:23:23 GFpeukFJ
瑠璃香様

瑠璃香さん、今の私たちが最もお会いしたいのは瑠璃香さんです。今、夏美と二人で
手紙を書いていますが、日本を出る時にこのような手紙を書くことになるとは想いも
しませんでした。私達は、これから新たな旅へ出ようとしています。できれば瑠璃香
さんに見守られながら出発したかったけど、それは無理な願いです。でも瑠璃香さんに
どうしてもわかっていただきたたかったのは、現在の私たちが、本当に幸せな日々を
過ごしているということです。ずっと一緒にいたい人とともに過ごせる時間って、
こんなに幸福なのですね。私も一時は夏美を失う恐怖ばかり考え、その苦しみから
逃れたいという想いを持ったこともありますが、その苦しみの中から、夏美のことを
永遠に想い続けるという選択を自分ができるということに気がつきました。それから
は1日1日が二人にとってのかけがえのない時間になっていきました。こんなに幸福
で安らかな時間を自分に与えてくれた、瑠璃香さん、そして李さんを始め、みなさん
に本当に感謝したい気持ちで一杯です。心残りはその感謝をじかにお会いして、お伝
えすることができないことです。今日私たちはチェコのある町で婚礼を済ませる予定です。
瑠璃香さんに私たちのウエディング姿を見ていただきたかったです。でもきっと瑠璃香
さんはこの空のどこかで私たちを見てくれていると信じています。  
瑠璃香さん 本当にありがとうございました               ──洋子


135:肉奴女王、永遠への旅路 完結編100
07/10/27 12:25:56 GFpeukFJ

瑠璃香は涙を滂沱と流しながら、何度も何度も手紙を読み返した。
遠い異国の地で、永遠の旅路に出なければならなかった二人の運命が
瑠璃香の胸を激しく打つ、

(あなた達は、最高の女王よ‥‥ありがとう 夏美 洋子  さようなら‥‥)


人の噂は45日と言うが、一時は世界のSM界の頂点に上り詰めた夏美と洋子に
対してマスコミは当時の喧噪も過ぎると忘れ去ったように報道しなくなった。
もちろん彼女たちが行方不明になったことなど知る由もなかった。
 しかし、同時代にSMの世界に生きた人々にとっては、鮮烈な生き様と深い
感銘を残して消えた二人の女王の伝説は、SMという世界がこの世にある限り
永遠に語り伝えられるだろう。
その人々の記憶の中で二人は今も永遠の旅路を続けている。
 
 そして‥‥‥‥六本木のホテルの一室で、新世代女王として欧州の研修を
終えて帰国したルリの鞭が、鋭い音とともに新たな時代を刻みはじめていた。
ルリの汗に光る首には、ふたつのネックレスが煌いていた。


肉奴女王、永遠への旅路



               2007.10.27    


136:肉奴女王、永遠への旅路
07/10/27 12:28:56 GFpeukFJ
ありがとうございました。

137:紘一
07/10/27 22:39:23 KY1UvoE4
すばらしいラストでした。

138:名無し調教中。
07/10/29 00:15:58 d0EuetPj
大長編SM大河ドラマお疲れ様でした。
興奮以上に感動しました。
(モノからは変な汁が目からは変な汗が…)


139:名無し調教中。
07/11/03 12:23:24 fhj2p+zV
SM小説の範疇を超えた名ラストシーンでしたね。
ありがとうございました。
次は初期のようなエロ度の濃い新作を期待します!

140:名無し調教中。
07/11/04 15:02:03 jjBZlOK6
長年に渡る連載、本当にお疲れ様でした。
投げ出す人も多い中、最後まで続けられた精神力に感服です。
個人的にはナベジュンよりも、余程プロに感じました。


141:名無し調教中。
07/11/12 19:17:03 gdyUpkHU
ずっとROMってましたが、エロに涙したのは初めてです。


142:たくろう
07/11/18 08:52:02 mX943NRq
俺もマジ感動しました。 ラストシーンの余韻にまだ浸っています
架空の話って分かっていても、最後の哀切感と荘厳さが交差する展開は
泣けたって言葉じゃ表現しきれないぐらいの素晴らしいラストでした。
SM板に永久に残しておきたいッス‥‥‥。


143:名無し調教中。
07/11/25 22:57:33 PVm5dUud
遅ればせながら長期連載お疲れ様でした。
最初の頃はただエロ目的で読んでいましたが、いつしか惹き込まれてしまいました。
ログを永久保存させてもらいます。


144:名無し調教中。
07/12/01 12:02:53 Uwa5sLl/
いい映画、一本見終わったくらいの感動をありがとう。


最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch